説明

軸受装置の共振周波数測定方法

【課題】実際の使用状態と同様に軸受装置にダミーマスを接着剤で固定するとともに、測定後の軸受装置からのダミーマスの取り外しを容易にし得る軸受装置の共振周波数測定方法を提供する。
【解決手段】この共振周波数測定方法は、軸受装置4に、その共振周波数を低下させるためのダミーマス23を、電圧を加えると剥離する接着剤である通電剥離性接着剤によって固定し、その後に共振周波数を測定し、その後、前記通電剥離性接着剤に電圧を加えてこれを軸受装置4から剥離させてダミーマス23を取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置の共振周波数測定方法に係り、例えばハードディスクドライブ装置(以下、HDDともいう)等の磁気ディスクドライブ装置を構成するスイングアームを揺動変位自在に支持するための軸受装置等、各種の精密回転機構に組み込まれる軸受装置の共振周波数を測定する上で好適な軸受装置の共振周波数測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばHDDを構成するスイングアームを揺動変位自在に支持するための軸受装置等では、軸受装置の共振周波数を測定しながら軸受装置各部の締め付けトルク、各部の重量、はめあい公差等を管理して、共振周波数を予め設定された所定の範囲内に収めるようにした軸受装置の管理技術が開示されている(例えば特許文献1ないし2参照)。
ここで、この種の軸受装置の共振周波数測定に際しては、軸受装置にダミーマスを固定して共振周波数を測定している。軸受装置にダミーマスを固定することにより、例えばラジアル剛性に起因する共振周波数を下げ、共振ピークの振幅を上げて共振周波数の検出を容易にすることができる。また、軸受装置にダミーマスを固定して慣性モーメントを増加させることにより、軸受装置が持つコニカルモードの共振周波数を効果的に下げてラジアル並進モードの共振周波数との差を広げることができ、これにより、共振周波数をより正確に測定することも可能となる。なお、ダミーマスの質量は、軸受装置が他の装置(例えば上記HDD)に組み込まれたとき、該軸受装置に負荷される質量と同等にする。これにより、測定時の共振周波数を実機の共振周波数に近づけて、他の装置の性能を向上させることができる。
【0003】
例えば特許文献1に記載の技術では、軸受装置に対してダミーマスを接着等によって固定して軸受装置の共振周波数の測定を行っている。
また、例えば特許文献2に記載の技術では、ダミーマスを複数の部品によって構成し、軸受装置に対してダミーマスを径方向から締め付け可能な構造として軸受装置の共振周波数の測定を行っており、ダミーマスの着脱を容易としている。
【特許文献1】特開2001−194223号公報
【特許文献2】特開2004−198318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ダミーマスを軸受装置に固定するに際し、例えば接着剤を用いた場合には、一度接着したダミーマスを軸受装置から分離することが難しく、共振周波数を測定後に、軸受装置からダミーマスを解体することが困難になる。
これに対し、特許文献2に記載の技術では、ダミーマスを複数の部品によって構成し、径方向から締め付け可能な構造の治具としたので、その着脱は容易なものの、径方向から締め付ける事によって軸受装置に装着されるようになっているので、その締め付けによって僅かながらもラジアル剛性の変化が認められ、実際の使用状態(例えばHDD等の磁気ディスクドライブ装置でのスイングアーム基端部に固定された状態)に対して測定値に差が生じることもあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、実際の使用状態と同様に軸受装置にダミーマスを接着剤で固定するとともに、測定後の軸受装置からのダミーマスの取り外しを容易にし得る軸受装置の共振周波数測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、内輪および外輪をそれぞれ有して軸方向に互いに離間する一対の軸受を備えるとともに予圧を付与した状態で設けられる軸受装置に適用して、当該軸受装置の予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定する方法であって、前記軸受装置に、その共振周波数を低下させるためのダミーマスを、電圧を加えると剥離する接着剤である通電剥離性接着剤によって固定するダミーマス固定工程と、該ダミーマス固定工程でダミーマスを固定した後に前記共振周波数を測定する共振周波数測定工程と、該共振周波数測定工程で前記共振周波数を測定した後に前記通電剥離性接着剤に電圧を加えてこれを前記軸受装置から剥離させて前記ダミーマスを取り外すダミーマス取外し工程と、を含むことを特徴としている。
【0007】
本発明に係る軸受装置の共振周波数測定方法によれば、ダミーマス固定工程では、軸受装置にダミーマスを固定するに際し、電圧を加えると剥離する接着剤である通電剥離性接着剤によってダミーマスを固定するので、ダミーマスを実際の使用状態と同様に軸受装置に接着剤で固定し、精度の高い測定を行うことができる。そして、ダミーマス取外し工程では、通電剥離性接着剤に電圧を加えてこれを前記軸受装置から剥離させて前記ダミーマスを取り外すので、測定後の軸受装置からのダミーマスの取り外しが容易である。
【0008】
ここで、本発明に係る軸受装置の共振周波数測定方法において、前記軸受装置が、磁気ディスクドライブ装置のスイングアームに用いられる軸受装置であり、当該軸受装置のラジアル方向での予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定することは好ましい。また、本発明に係る軸受装置の共振周波数測定方法において、前記軸受装置が、磁気ディスクドライブ装置のスイングアームに用いられる軸受装置であり、当該軸受装置のアキシアル方向での予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定することは好ましい。このような構成であれば、所定の予圧が付与された状態での軸受装置の予圧剛性を確認して、軸受装置全体としての剛性、つまり、この軸受装置を用いる磁気ディスクドライブ装置のスイングアームの支持剛性を適正範囲内に収めるように管理する上で好適である。
【0009】
さらに、本発明に係る軸受装置の共振周波数測定方法において、前記ダミーマス取外し工程は、前記通電剥離性接着剤への通電時に極性を切換えることによって、前記ダミーマス側および前記軸受装置側の両面を剥離させることは好ましい。このような構成であれば、通電剥離性接着剤への通電時に極性を切換えることによって、ダミーマス側および軸受装置側の両面を剥離させれば、ダミーマスからも軸受装置からも通電剥離性接着剤が剥離する。そのため、接着剤の除去作業が不要であり、ダミーマスを繰り返して使用することが容易であり、また、軸受装置にも疵(傷)が付かず、汚れることもない。
【発明の効果】
【0010】
上述のように、本発明によれば、実際の使用状態と同様に軸受装置にダミーマスを接着剤で固定するとともに、測定後の軸受装置からのダミーマスの取り外しを容易にし得る軸受装置の共振周波数測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
ここで、本実施形態の軸受装置は、HDDを構成するスイングアームを揺動変位自在に支持する例なので、まず、このHDDについて図1および図2を参照して簡単に説明する。
図1に示すように、このHDDは、モータによって高速で回転するハードディスク1と、先端部にヘッド2を設けたスイングアーム3とを有している。このスイングアーム3の基端部は、図2に示すように、基板5上に固定された軸受装置4で支持される。
【0012】
つまり、この軸受装置4によって、スイングアーム3(図1参照)の基端部を、支持軸6に対して揺動自在に支持するには、図2に示すように、支持軸6の周囲に内筒7を配置するとともに、この内筒7を、支持軸6の基端部に設けた段部17と、支持軸6の先端面にねじ18によって結合固定した抑え板19との間で挟持する。また、スイングアーム3の基端部を、上記外筒8に結合する。これにより、この軸受装置4によって、ハードディスク1の回転軸と平行な支持軸6に対して、スイングアーム3が揺動変位自在になっている。そして、このスイングアーム3の先端部に支持されたヘッド2は、スイングアーム3の揺動に伴って、ハードディスク1の表面に近接した状態のまま、この表面を倣うように移動しつつ、信号の読み取り並びに書き込みが行なわれるようになっている。
【0013】
次に、軸受装置4について図2を参照してより詳しく説明する。
この軸受装置4は、図2に示すように、軸方向に互いに離間して設けられる一対の軸受である玉軸受9を有している。これら一対の玉軸受9は、内方部材である内筒7の外周面と外方部材である外筒8の内周面との間に、所定の予圧が付与された状態で設けられている。各玉軸受9は、外周面に軌道10を有する内輪11と、内周面に軌道12を有する外輪13と、相互の軌道10、12間に転動自在に介装された複数の転動体14とを有する。なお、これら転動体14は不図示の保持器で保持されている。また、外輪13の両端部内周面には、シールド板15の外周縁をそれぞれ係止して、転動体14が介装された空間内のグリースの漏洩を防止するとともに、塵芥等の異物が入り込むことを防止している。
【0014】
そして、上述の一対の玉軸受9のうち、内輪11は、上記内筒7の両端部に締まり嵌めによって外嵌固定している。また、外輪13は、上記外筒8に内嵌するとともに、互いに対向する端面を、上記外筒8の中間部の内周面に形成した段部16に突き当てている。そのため、上記一対の外輪13相互は、図示の状態よりも近づき合うことはない。また、上記一対の内輪11は、互いに近づき合う方向に押圧された状態で、上記内筒7の両端部に外嵌固定している。これにより、一対の玉軸受9には、所定の予圧が付与されるとともに、上記内筒7の周囲に外筒8を、回転自在に支持するようになっている。
【0015】
つまり、図2に示すように組み立てられた、軸受装置4のうち、各玉軸受9の剛性、および互いに並列に組み合わされたこれら両玉軸受9の剛性は、設計によって定められた既知の値となる。なお、上記内筒7に対する上記各内輪11の嵌合状態を隙間嵌めとし、これら各内輪11の内周面と上記内筒7の外周面とを接着する場合もある。勿論、この様な場合でも、各玉軸受9の剛性および互いに並列に組み合わされた両玉軸受9の剛性の値は既知となる。
【0016】
ところで、この軸受装置4によるスイングアーム3の支持剛性は、スイングアーム3の揺動変位に伴う位置決め精度への影響が大きい。そのため、スイングアーム3の揺動変位に伴う位置決め精度等を十分に確保し、ヘッド2による信号の読み取り並びに書き込みのエラーを防止するためには、軸受装置4全体としての剛性(この軸受装置4によるスイングアーム3の支持剛性)を適正範囲内に収める必要がある。したがって、上記所定の予圧が付与された状態での軸受装置4の予圧剛性を確認して、軸受装置4全体としての剛性(この軸受装置4によるスイングアーム3の支持剛性)を適正範囲内に収めることが重要である。
【0017】
ここで、軸受装置全体としての剛性と、この軸受装置全体としての共振周波数との間には、密接な関係があることが知られている。したがって、軸受装置全体としての共振周波数を管理(適正範囲内に規制)すれば、軸受装置全体としての剛性を適正範囲内に収めることができる。
すなわち、本実施形態の例では、この軸受装置4全体としての共振周波数を管理すべく、上記共振周波数を測定するために、図3に示す測定装置20によって、上記軸受装置4全体としてのアキシアル方向の共振周波数を測定している。
【0018】
詳しくは、同図に示すように、この測定装置20は、支持軸21、加振器22、ダミーマス(重錘)23および振動検出器24を備えて構成されている。
そして、上記軸受装置4は、この測定装置20に対して、鉛直方向に配置した支持軸21(支持部材)の中間部に外嵌されて支持される。つまり、軸受装置4を構成する内筒7は、上記支持軸21に隙間嵌めによって外嵌するとともに、支持軸21の下端寄り部に形成した鍔部25と、この支持軸21の上端部に外嵌固定した円環状の固定具26との間で挟持することによって、上記支持軸21に支持固定されている。また、この支持軸21の下端面は、加振器22の上面に突き当てられており、支持軸21に支持した軸受装置4全体を、アキシアル方向(図3での上下方向)に加振自在としている。
【0019】
そして、ダミーマス23は、軸受装置4の使用時において、軸受装置4を構成する外筒8に外嵌する部材と同等の質量を有している。そして、このダミーマス23は、外筒8に外嵌させて接着剤で固定して用いるようになっている。また、このダミーマス23の上端面には、振動検出器24の測定端子27を当接若しくは近接対向させて、加振器22によって加振された軸受装置4の外筒8のアキシアル方向の振動を検出自在としている。
【0020】
次に、この測定装置20を用いて軸受装置4の共振周波数を測定する方法について説明する。
この測定装置20を用いて、軸受装置4の共振周波数を測定するには、まず、ダミーマス23を、上記外筒8に外嵌して接着剤によって固定する(ダミーマス固定工程)。これにより、ダミーマス23の内周面と軸受装置4の外周面とが固定される。
【0021】
ここで、このダミーマス固定工程において、ダミーマス23を外筒8に固定するに際して用いる接着剤には、電圧を加えると剥離する接着剤である通電剥離性接着剤を使用している。この通電剥離性接着剤は、解体を前提とした接着に用いられる解体性接着剤であり、電気通すと簡単に剥離するエポキシ系の接着剤を採用している。特に、この通電剥離性接着剤は、低電圧(例えば5V)による電流を短時間(例えば十秒)流すと、被着体と接着剤の界面において電気化学反応が起こり陽極側で選択的に剥離するものである。
【0022】
そして、上記ダミーマス固定工程でダミーマス23を固定した後、共振周波数を測定する(共振周波数測定工程)。この共振周波数測定工程にて、軸受装置4のアキシアル方向の共振周波数を求める場合には、軸受装置4を加振器22によってアキシアル方向に加振しつつ、振動検出器24を構成する測定端子27によって、外筒8のアキシアル方向の振動を検出する。そして、この振動の検出値を、振動検出器24を構成する周波数分析器によって周波数分析する。
【0023】
軸受装置4全体としてのアキシアル方向の共振周波数は、上記周波数分析の結果に、周波数成分のピーク値として現われる。したがって、この周波数分析の結果から、上記アキシアル方向の共振周波数を求めることができる。
そして、上記共振周波数測定工程で共振周波数を測定した後、上述した通電剥離性接着剤に所定の電圧を加え、陽極側で軸受装置4からダミーマス23剥離させて、これにより、ダミーマス23を軸受装置4から取り外す(ダミーマス取外し工程)。
【0024】
このダミーマス取外し工程では、ダミーマス23および軸受装置4に、それぞれ外部電源を接続して電気回路を形成し、スイッチを使用して同回路を閉じて上記通電剥離性接着剤に電圧を加えている。これにより、まず、現在の陽極側となる軸受装置4側において通電剥離性接着剤の接着力が低下して軸受装置4の外周面から通電剥離性接着剤が剥離する。次いで、上記電気回路に接続する外部電源の極性を切換えて、流す電流の向きを逆にする。これにより、極性を切換えることで陽極側となるダミーマス23側において通電剥離性接着剤の接着力が低下してダミーマス23の内周面から通電剥離性接着剤が剥離する。つまり、本実施形態の例では、通電剥離性接着剤への通電時に極性を切換えることによって、ダミーマス23側および軸受装置4側の両面を剥離させている。
【0025】
次に、上記共振周波数測定方法の作用・効果について説明する。
この測定装置20を用いた、軸受装置4の共振周波数測定は、軸受装置4が、上記HDDのスイングアーム3に用いられる軸受装置であり、この軸受装置4のアキシアル方向での予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定しているので、所定の予圧が付与された状態での軸受装置4の予圧剛性を確認して、軸受装置4全体としての剛性、つまり、この軸受装置4を用いるHDDのスイングアーム3の支持剛性を適正範囲内に収めるように管理することができる。
【0026】
そして、この共振周波数測定方法によれば、ダミーマス固定工程では、軸受装置4にダミーマス23を固定するに際し、電圧を加えると剥離する接着剤である通電剥離性接着剤によってダミーマス23を固定するので、ダミーマス23を実際の使用状態と同様に軸受装置4に接着剤で固定し、続く共振周波数測定工程で、精度の高い測定を行うことができる。そして、ダミーマス取外し工程では、通電剥離性接着剤に電圧を加えてこれを軸受装置4から剥離させてダミーマス23を取り外すので、測定後の軸受装置4からのダミーマス23の取り外しが容易である。
【0027】
特に、上記ダミーマス取外し工程は、通電剥離性接着剤への通電時に極性を切換えることによって、ダミーマス23側および軸受装置4側の両面を剥離させるので、ダミーマス23からも軸受装置4からも通電剥離性接着剤が剥離する。そのため、通電剥離性接着剤の除去作業が不要であり、ダミーマス23を繰り返して使用することが容易であり、また、軸受装置4にも疵(傷)が付かず、汚れることもない。
【0028】
以上説明したように、この軸受装置の共振周波数測定方法によれば、実際の使用状態と同様に軸受装置にダミーマスを接着剤で固定するとともに、測定後の軸受装置からのダミーマスの取り外しが容易である。
なお、本発明に係る軸受装置の共振周波数測定方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態では、軸受装置のアキシアル方向での予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定する例で説明したが、これに限定されず、図4に例示するように、軸受装置4のラジアル方向での予圧剛性を確認するために、例えば内筒7を左右一対の支持部材36の段部37で支持しつつ両側から挟持し、この一対の支持部材36をラジアル方向に振動させることによって、軸受装置4のラジアル方向での共振周波数を測定するようにしてもよい。
【0030】
そして、図4に示すようにラジアル方向での予圧剛性を確認するに際しても、上記実施形態同様に、軸受装置4に、その共振周波数を低下させるためのダミーマス23を、電圧を加えると剥離する接着剤である通電剥離性接着剤によって固定し、その後に共振周波数を測定し、その後、前記通電剥離性接着剤に電圧を加えてこれを軸受装置4から剥離させてダミーマス23を取り外すようにする。これにより、ラジアル方向での予圧剛性を確認するに際しても、上記実施形態同様に、実際の使用状態と同様に軸受装置4にダミーマスを接着剤で固定するとともに、測定後の軸受装置4からのダミーマス23の取り外しが容易である。
【0031】
また、例えば、上記実施形態では、軸受装置が、磁気ディスクドライブ装置のスイングアームに用いられる軸受装置であり、当該軸受装置の予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定する例で説明したが、これに限定されず、本発明に係る軸受装置の共振周波数測定方法は、各種の回転機構に組み込まれる軸受装置の共振周波数を測定する際に用いることができる。しかし、各種の精密回転機構に組み込まれる軸受装置のうち、特に、例えばHDD等の磁気ディスクドライブ装置を構成するスイングアームを揺動変位自在に支持するための軸受装置に対して、本発明に係る軸受装置の共振周波数測定方法を用いることは好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態の軸受装置を備えるHDDを説明する斜視図である。
【図2】図1のスイングアームの基端部を説明する図であり、同図は、スイングアームの基端部をその軸線を含む断面図にて図示している。
【図3】本発明に係る軸受装置の測定装置、および共振周波数測定方法(アキシアル方向での共振周波数測定)を説明する図であり、同図は、軸受装置および測定装置をその軸線を含む断面図にて図示している。
【図4】本発明に係る軸受装置の測定装置、および共振周波数測定方法(ラジアル方向での共振周波数測定)を説明する図であり、同図は、軸受装置および測定装置をその軸線を含む断面図にて図示している。
【符号の説明】
【0033】
1 ハードディスク
2 ヘッド
3 スイングアーム
4 軸受装置
5 基板
6 支持軸
7 内筒
8 外筒
9 玉軸受(軸受)
10 軌道
11 内輪
12 軌道
13 外輪
14 転動体
15 シールド板
16 段部
17 段部
18 ねじ
19 抑え板
20 測定装置
21 支持軸
22 加振器
23 ダミーマス(重錘)
24 振動検出器
25 鍔部
26 固定具
27 測定端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪および外輪をそれぞれ有して軸方向に互いに離間する一対の軸受を備えるとともに予圧を付与した状態で設けられる軸受装置に適用して、当該軸受装置の予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定する方法であって、
前記軸受装置に、その共振周波数を低下させるためのダミーマスを、電圧を加えると剥離する接着剤である通電剥離性接着剤によって固定するダミーマス固定工程と、該ダミーマス固定工程でダミーマスを固定した後に前記共振周波数を測定する共振周波数測定工程と、該共振周波数測定工程で前記共振周波数を測定した後に前記通電剥離性接着剤に電圧を加えてこれを前記軸受装置から剥離させて前記ダミーマスを取り外すダミーマス取外し工程と、を含むことを特徴とする軸受装置の共振周波数測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記軸受装置が、磁気ディスクドライブ装置のスイングアームに用いられる軸受装置であり、当該軸受装置のラジアル方向での予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定することを特徴とする軸受装置の共振周波数測定方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記軸受装置が、磁気ディスクドライブ装置のスイングアームに用いられる軸受装置であり、当該軸受装置のアキシアル方向での予圧剛性を確認するために、その共振周波数を測定することを特徴とする軸受装置の共振周波数測定方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記ダミーマス取外し工程は、前記通電剥離性接着剤への通電時に極性を切換えることによって、前記ダミーマス側および前記軸受装置側の両面を剥離させることを特徴とする軸受装置の共振周波数測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−8615(P2009−8615A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172403(P2007−172403)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】