説明

軸流ファン

【課題】ハブと複数の羽根とが樹脂一体成形された軸流ファンにおいて、羽根の外周部分における成形不良を抑えつつ、羽根の付け根部に肉盗み部を形成する。
【解決手段】軸流ファン(70)は、ハブ(71)とハブ(71)の外周縁から突出するように形成された複数の羽根(72)とが樹脂一体成形された軸流ファンである。そして、羽根(72)のハブ(71)との付け根部(73)には、外周側に向かって放射状に延びる放射状リブ(75)が残置されるように第1羽根肉盗み部(74)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファン、特に、ハブとハブの外周縁から突出するように形成された複数の羽根とが樹脂一体成形された軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置の室外ユニット等において、ハブと、ハブの外周縁から突出するように形成された複数の羽根とが樹脂一体成形された軸流ファンが使用されている。
【0003】
このような軸流ファンとして、特許文献1(特開2011−74817号公報)に示すように、羽根のハブとの付け根部に肉盗み部が形成されたものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、羽根の付け根部に肉盗み部を形成することは、軸流ファンの成形時において、金型に注入される樹脂が外周側に向かって流れる空間を狭めることにつながる。このため、羽根の付け根部に肉盗み部が形成された軸流ファンでは、成形時に肉盗み部よりも外周側の部分に樹脂が流れ込みにくくなり、羽根の外周部分において成形不良が発生するおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、ハブと複数の羽根とが樹脂一体成形された軸流ファンにおいて、羽根の外周部分における成形不良を抑えつつ、羽根の付け根部に肉盗み部を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点にかかる軸流ファンは、ハブとハブの外周縁から突出するように形成された複数の羽根とが樹脂一体成形されたものである。そして、羽根のハブとの付け根部には、外周側に向かって放射状に延びる放射状リブが残置されるように第1羽根肉盗み部が形成されている。
【0007】
本願発明者は、羽根の付け根部に肉盗み部を形成するにあたり、肉盗み部よりも外周側の部分に対する成形時の樹脂の流れ込みを考慮して、肉盗み部を形成する際に残置されるリブの形状について研究を行った。その結果、本願発明者は、上記のように、外周側に向かって放射状に延びる放射状リブが残置されるように第1羽根肉盗み部を形成することを見いだした。
【0008】
このような放射状リブは、成形時に金型に注入される樹脂が外周側に向かって流れるのを促進するため、成形時における第1羽根肉盗み部よりも外周側の部分に対する樹脂の流れ込みを良好なものにすることができる。また、放射状リブは、放射状に延びていないリブを残置する場合に比べて、成形時に金型に注入される樹脂が外周側に向かって流れやすくなる。
【0009】
これにより、この軸流ファンでは、羽根の外周部分における成形不良を抑えつつ、羽根の付け根部に肉盗み部を形成することができる。
【0010】
第2の観点にかかる軸流ファンは、第1の観点にかかる軸流ファンにおいて、放射状リブが、周方向に複数配置されている。
【0011】
上記のように、放射状リブを周方向に複数配置すると、成形時において、第1羽根肉盗み部よりも外周側の部分に樹脂が流れる部分を周方向に増やすことができる。
【0012】
これにより、この軸流ファンでは、成形時において、金型に注入される樹脂が外周側に向かって流れるのをさらに促進することができる。また、成形時において、第1羽根肉盗み部よりも外周側の部分のどの周方向位置においても、樹脂が均等に流れ込みやすくすることができる。
【0013】
第3の観点にかかる軸流ファンは、第1又は第2の観点にかかる軸流ファンにおいて、放射状リブが、ハブ及び羽根を軸方向から見た際に、ハブの軸心から外周側に向かって放射状に延びる直線上を延びている。
【0014】
上記のように、放射状リブをハブの軸心から外周側に向かって放射状に延びる直線上を延びるものにすると、成形時に金型に注入される樹脂が外周側に向かって真っ直ぐに流れるようになる。
【0015】
これにより、この軸流ファンでは、成形時において、金型に注入される樹脂が外周側に向かってさらに流れやすくすることができる。
【0016】
第4の観点にかかる軸流ファンは、第1〜第3の観点のいずれかにかかる軸流ファンにおいて、付け根部のうち放射状リブよりも羽根の前縁側の部分には、羽根の前縁に連続する前縁リブが形成されている。そして、前縁リブと放射状リブとの周方向間には、第1羽根肉盗み部よりも大きい第2羽根肉盗み部が形成されている。
【0017】
上記のように、この軸流ファンでは、放射状リブよりも羽根の前縁側の部分において、羽根の前縁に連続する前縁リブを形成することによって、羽根の前縁における強度を向上させている。しかし、このような前縁リブを形成すると、成形時に前縁リブ及びその付近が冷却されにくくなるおそれがある。
【0018】
そこで、この軸流ファンでは、上記のように、前縁リブを形成するとともに、前縁リブと放射状リブとの周方向間に第1羽根肉盗み部よりも大きな第2羽根肉盗み部を形成するようにして、成形時に前縁リブ及びその付近が冷却されにくくなるのを抑えるようにしている。
【0019】
これにより、この軸流ファンでは、放射状リブだけでなく前縁リブが形成されているにもかかわらず、成形時のヒケが発生するのを抑えることができる。
【0020】
第5の観点にかかる軸流ファンは、第2〜第4の観点のいずれかにかかる軸流ファンにおいて、放射状リブが、周方向に等間隔に配置されている。
【0021】
上記のように、放射状リブを周方向に等間隔に配置すると、成形時において、複数の放射状リブに対して、樹脂が均等に流れ込みやすくなる。
【0022】
これにより、この軸流ファンでは、成形時において、第1羽根肉盗み部よりも外周側の部分に樹脂が周方向にさらに均等に流れ込みやすくすることができる。
【0023】
第6の観点にかかる軸流ファンは、第1〜第5の観点のいずれかにおいて、羽根の後縁に、羽根の前縁側に向かって凹んだ凹み部が形成されている。そして、第1羽根肉盗み部は、ハブ及び羽根を軸方向から見た際に、凹み部よりも羽根の前縁側に位置している。
【0024】
上記のように、この軸流ファンでは、羽根の後縁において、羽根の前縁側に向かって凹んだ凹み部を形成することによって、送風性能の向上や騒音の抑制を図っている。しかし、このような凹み部を形成すると、成形時において、凹み部及びその付近に樹脂が流れ込みにくくなり、凹み部及びその付近の成形不良が発生するおそれがある。
【0025】
そこで、この軸流ファンでは、上記のように、第1羽根肉盗み部が凹み部よりも羽根の前縁側に位置するようにして、成形時において、樹脂が第1羽根肉盗み部を通過することなく凹み部及びその付近まで流れ込むようにしている。
【0026】
これにより、この軸流ファンでは、第1羽根肉盗み部及び凹み部の両方が形成されているにもかかわらず、成形時の凹み部及びその付近への樹脂の流れ込みを確保して、凹み部及びその付近の成形不良を抑えることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0028】
第1の観点にかかる軸流ファンでは、羽根の外周部分における成形不良を抑えつつ、羽根の付け根部に肉盗み部を形成することができる。
【0029】
第2の観点にかかる軸流ファンでは、成形時において、金型に注入される樹脂が外周側に向かって流れるのをさらに促進することができる。また、成形時において、第1羽根肉盗み部よりも外周側の部分のどの周方向位置においても、樹脂が均等に流れ込みやすくすることができる。
【0030】
第3の観点にかかる軸流ファンでは、成形時において、金型に注入される樹脂が外周側に向かってさらに流れやすくすることができる。
【0031】
第4の観点にかかる軸流ファンでは、放射状リブだけでなく前縁リブが形成されているにもかかわらず、成形時のヒケが発生するのを抑えることができる。
【0032】
第5の観点にかかる軸流ファンでは、成形時において、第1羽根肉盗み部よりも外周側の部分に樹脂が周方向にさらに均等に流れ込みやすくすることができる。
【0033】
第6の観点にかかる軸流ファンでは、第1羽根肉盗み部及び凹み部の両方が形成されているにもかかわらず、成形時の凹み部及びその付近への樹脂の流れ込みを確保して、凹み部及びその付近の成形不良を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかる軸流ファンとしての室外ファンが採用された室外ユニットの天板を取り外した状態を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる室外ファンが採用された室外ユニットの前面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる室外ファンの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる室外ファンの正圧面側平面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる室外ファンの負圧面側平面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる室外ファンの側面図である。
【図7】図5の羽根の付け根部及びその付近の拡大図である。
【図8】図7のI−I断面図である。
【図9】図6の前縁リブ及びその付近の拡大図である。
【図10】室外ファンの成形工程を説明するための金型の側面断面図である。
【図11】室外ファンの成形工程を説明するための金型の羽根の付け根部及びその付近を形成する部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明にかかる軸流ファンの実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる軸流ファンの具体的な構成は、下記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。また、以下の説明では、室外ユニットを構成する軸流ファンに本発明を適用した例を説明するが、これに限定されるものではなく、他の用途に使用される軸流ファンにも適用可能である。
【0036】
(1)室外ユニットの全体構成
図1及び図2は、本発明の一実施形態にかかる軸流ファンとしての室外ファン70が採用された空気調和装置の室外ユニット2を示す図である。ここで、図1は、室外ユニット2の天板57を取り外した状態を示す平面図である。図2は、室外ユニット2の前面図である。尚、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」や「前面」、「側面」、「背面」、「天面」、「底面」等の方向や面を示す文言は、特にことわりのない限り、図2に示される室外ユニット2を前面とした場合における方向や面を意味する。
【0037】
室外ユニット2は、ユニットケーシング51の内部空間を鉛直方向に延びる仕切板58で左右に分割することによって送風機室S1と機械室S2とを形成した構造(いわゆる、トランク型構造)を有するものである。室外ユニット2は、ユニットケーシング51の背面及び側面の一部からユニットケーシング51内に室外空気を吸い込んでユニットケーシング51の前面から室外空気を吹き出すように構成されている。室外ユニット2は、主として、ユニットケーシング51と、圧縮機21、室外熱交換器24、及び、これらの機器を接続する冷媒管を含む冷媒回路構成部品と、室外ファン70(軸流ファン)と、ベルマウス80とを有している。尚、ここでは、送風機室S1がユニットケーシング51の左側面寄りに形成され、機械室S2がユニットケーシング51の右側面寄りに形成された例を説明するが、左右が逆であってもよい。
【0038】
ユニットケーシング51は、略直方体状に形成されており、主として、圧縮機21、室外熱交換器24、及び、これらの機器を接続する冷媒管を含む冷媒回路構成部品と、室外ファン70とを収容している。ユニットケーシング51は、底板52と、送風機室側側板53と、機械室側側板54と、送風機室側前板55と、機械室側前板56と、天板57とを有している。
【0039】
底板52は、ユニットケーシング51の底面部分を構成する金属製の板状部材である。底板52の下側には、現地据付面に固定される2つの基礎脚59、60が設けられている。
【0040】
送風機室側側板53は、ユニットケーシング51の送風機室S1寄りの側面部分を構成する金属製の板状部材である。送風機室側側板53は、その下部が底板52に固定されている。送風機室側側板53には、室外ファン70によってユニットケーシング51内に吸い込まれる室外空気の吸入口53aが形成されている。
【0041】
機械室側側板54は、ユニットケーシング51の機械室S2寄りの側面部分の一部と、ユニットケーシング51の機械室S2寄りの背面部分とを構成する金属製の板状部材である。機械室側側板54は、その下部が底板52に固定されている。ここでは、機械室側側板54は、機械室S2の側面のうち背面寄りの部分を覆っている。送風機室側側板53の背面側の端部と機械室側側板54の送風機室S1側の端部との間には、室外ファン70によってユニットケーシング51内に吸い込まれる室外空気の吸入口53bが形成されている。
【0042】
送風機室側前板55は、ユニットケーシング51の送風機室S1の前面部分と、ユニットケーシング51の機械室S2の前面部分の一部とを構成する金属製の板状部材である。送風機室側前板55には、室外ファン70によってユニットケーシング51内に吸い込まれた室外空気を外部に吹き出すための吹出口55aが設けられている。吹出口55aの前側は、ファングリル55bによって覆われている。送風機室側前板55は、その下部が底板52に固定され、その左側面側の端部が送風機室側側板53の前面側の端部に固定されている。
【0043】
機械室側前板56は、ユニットケーシング51の前面側から機械室S2にアクセスして機械室S2内に配置された機器の点検等を行うために、試運転やメンテナンス時に取り外される金属製の板状部材である。機械室側前板56は、ユニットケーシング51の機械室S2の前面部分の一部と、ユニットケーシング51の機械室S2の側面部分の一部とを構成する金属製の板状部材である。機械室側前板56は、その送風機室S1側の端部が送風機室側前板55の機械室S2側の端部に固定され、その背面側の端部が機械室側側板54の前面側の端部に固定されている。尚、ここでは、ユニットケーシング51の機械室S2の前面部分の一部が送風機室側前板55によって構成されているが、機械室側前板56によって構成されていてもよい。また、室側前板55送風機室側前板55と機械室側前板56とが一体の部材であってもよい。
【0044】
天板57は、ユニットケーシング51の天面部分を構成する金属製の板状部材である。天板57は、送風機室側板53や機械室側側板54、送風機室側前板55に固定されている。
【0045】
仕切板58は、底板52上に配置される鉛直方向に延びる金属製の板状部材である。仕切板58は、ユニットケーシング51の内部空間を左右に分割することによって、左側面寄りの送風機室S1と、右側面寄りの機械室S2とを形成している。仕切板58は、その前後方向の中央部分が送風機室S1側に突出するように湾曲した形状をなしている。仕切板58は、その下部が底板52に固定され、その前面側の端部が送風機室側前板55に固定され、その背面側の端部が室外熱交換器24の機械室S2側の端部に固定されている。
【0046】
室外ファン70は、主として、ハブ71と、ハブ71の外周から突出するように形成された複数(ここでは、3枚)の羽根72とが樹脂一体成形されたプロペラファンである。室外ファン70は、送風機室S1内において、ユニットケーシング51の前面に対向するように設けられている。より具体的には、室外ファン70は、室外熱交換器24の前面側の位置において、送風機室側前板55に形成された吹出口55aに対向するように設けられている。ここでは、羽根72の後縁には、送風性能の向上や騒音の抑制のために、羽根72の前縁側に向かって凹んだ凹み部72aが形成されている。室外ファン70は、室外ファン70と室外熱交換器24との前後方向間に配置されたファンモータ79によって回転駆動される。ファンモータ79は、天板57と底板52との間を鉛直方向に延びるファンモータ台61によって支持されている。尚、室外ファン70の詳細な構成については、後述する。
【0047】
ベルマウス80は、中央が開口したベル形状の開口部81を有する部材であり、室外ファン70の外周側に設けられている。すなわち、ベルマウス80は、室外ファン70と同様に、送風機室S1内において、ユニットケーシング51の前面に対向するように設けられており、その開口部81が室外ファン70の外周を取り囲んでいる。ベルマウス80は、ユニットケーシング51の前面に固定されている。そして、ベルマウス80の送風機室側側板53寄りの部分は、室外熱交換器24の前側端に接近して配置されている。また、ベルマウス80の機械室S1寄りの部分は、仕切板58に接近して配置されている。
【0048】
室外熱交換器24は、略L字形状の熱交換器パネルであり、送風機室S1内において、ユニットケーシング51の左側面及び背面に沿うように底板52上に配置されている。
【0049】
圧縮機21は、縦型円筒形状の密閉式圧縮機であり、機械室S2内に配置されている。
【0050】
尚、ここでは図示を省略するが、圧縮機21以外の機器や冷媒管等の冷媒回路構成部品も機械室S2内に配置されている。
【0051】
(2)室外ファンの詳細構成
次に、図3〜図9を用いて、本実施形態にかかる軸流ファンとしての室外ファン70の詳細な構成について説明する。ここで、図3は、室外ファン70の斜視図である。図4は、室外ファン70の正圧面側平面図である。図5は、室外ファン70の負圧面側平面図である。図6は、室外ファン70の側面図である。図7は、羽根72の付け根部73及びその付近の拡大図である。図8は、図7のI−I断面図である。図9は、図6の前縁リブ76及びその付近の拡大図である。尚、以下の説明において、室外ファン70の軸心(回転中心)を軸心Oとし、その軸線を回転軸線O−Oとする。
【0052】
室外ファン70は、上記のように、主として、ハブ71と、ハブ71の外周から突出するように形成された複数(ここでは、3枚)の羽根72とが樹脂一体成形されたプロペラファンである。尚、羽根72の数は、3枚に限定されるものではなく、4枚以上等であってもよい。
【0053】
羽根72は、前進及び前傾した羽根形状を有している(図4及び図5参照)。そして、羽根72の肉厚は、ハブ71との付け根部73において大きくなっており、外周側に向かうにつれて小さくなっている(図9参照)。羽根72の後縁に形成された凹み部72aは、付け根部73よりも外周側に配置されている(図3、図5及び図7参照)。ここで、室外ファン70を回転させたときに空気が流入する側(空気の流通方向の上流側)の面を負圧面72bとし、その反対側(空気の流通方向の下流側)の面を正圧面72cとする。
【0054】
羽根72の付け根部73には、外周側に向かって放射状に延びる放射状リブ75が残置されるように第1羽根肉盗み部74が形成されている。また、付け根部73のうち放射状リブ75よりも羽根72の前縁側の部分には、羽根72の前縁に連続する前縁リブ76が形成されている。そして、前縁リブ76と放射状リブ75との周方向間には、第1羽根肉盗み部74よりも大きい第2羽根肉盗み部77が形成されている。
【0055】
具体的には、羽根肉盗み部74、77は、羽根72の負圧面72bに形成されている。尚、羽根肉盗み部74、77は、負圧面72bに形成されるものではなく、正圧面72cだけに形成されていてもよいし、負圧面72b及び正圧面72cの両面に形成されていてもよい。
【0056】
放射状リブ75は、付け根部73と同等の肉厚を有しており、その軸方向端部が羽根72の翼面になめらかに連続している(図8及び図9参照)。放射状リブ75は、周方向に複数(ここでは、4つ)並んで配置されている。すなわち、第1羽根肉盗み部74は、羽根72の後縁側から前縁側に向かって、放射状リブ75の周方向両側に位置するように、複数(ここでは、4つ)配置されている。そして、第2羽根肉盗み部77は、複数の放射状リブ75のうち最も前縁側に配置されている放射状リブ75の周方向前縁側に配置されている。このため、第1羽根肉盗み部74を周方向に挟んで隣り合う2つの放射状リブ75は、その軸方向端部がなめらかに連続している。尚、放射状リブ75の数は、4つに限定されるものではなく、3つ以下や5つ以上でもよい。
【0057】
また、放射状リブ75は、ハブ71及び羽根72を軸方向から見た際に、ハブ71の軸心Oから外周側に向かって放射状に延びる直線L上を延びている(図7参照)。また、放射状リブ75は、周方向に等間隔に配置されている。すなわち、第1羽根肉盗み部74はいずれも、どの径方向位置においても同じ周方向寸法を有しており、これにより、放射状リブ75が周方向に等間隔に配置されている。
【0058】
これに対して、第2羽根肉盗み部77と第1羽根肉盗み部74との間の周方向の間隔は、第1羽根肉盗み部74間の周方向の間隔よりも大きくなっている(図5及び図7参照)。すなわち、第2羽根肉盗み部77は、同じ径方向位置における周方向寸法が第1羽根肉盗み部74よりも大きくなっている。
【0059】
また、前縁リブ76は、羽根72の前縁における強度を向上させるために、付け根部73の前縁において、羽根72の翼面から軸方向に突出するように形成されている。前縁リブ76は、ここでは、略三角柱形状を有しており、羽根72の負圧面72b及び正圧面72cの両方に形成されている。前縁リブ76の周方向の幅は、同じ径方向位置における放射状リブ75の周方向の幅よりも大きくなっている(図5及び図7参照)。前縁リブ76のハブ71寄りの部分には、ハブ71及び羽根72を軸方向から見た際に略三角形状の窪み76aが形成されている。尚、前縁リブ76は、負圧面72b及び正圧面72cの両面に形成されるものではなく、負圧面72b又は正圧面72cだけに形成されていてもよい。
【0060】
さらに、付け根部73の第1羽根肉盗み部74よりも後縁側の部分には、羽根72の翼面から軸方向に突出する後縁リブ78が形成されている。後縁リブ78は、羽根72の負圧面72b及び正圧面72cに形成されている。すなわち、第1羽根肉盗み部74及び放射状リブ75は、付け根部73の前縁寄りの部分に形成されており、後縁寄りの部分には形成されていない。そして、第1羽根肉盗み部74は、ハブ71及び羽根72を軸方向から見た際に、凹み部72aよりも羽根72の前縁側に位置している(図7における最も後縁寄りに配置された第1羽根肉盗み部74から外周側に延びる直線Mを参照)。
【0061】
(3)室外ファンの成形
次に、図10及び図11を用いて、本実施形態にかかる軸流ファンとしての室外ファン70の成形工程について説明する。ここで、図10は、室外ファン70の成形工程を説明するための金型90の側面断面図である。図11は、室外ファン70の成形工程を説明するための金型90の羽根72の付け根部73及びその付近を形成する部分を示す断面図である。
【0062】
まず、金型90を有する射出成形装置(図示せず)を準備する。金型90は、第1金型91と、第1金型91に対して移動可能な第2金型92とを有している。そして、第1金型91と第2金型92とを組み合わせることによって、室外ファン70の形状を構成するキャビティ93を形成する(図10参照)。
【0063】
次に、第1金型91に設けられた湯口94から樹脂を注入する。湯口94は、キャビティ93の軸心Oに近い位置(ここでは、室外ファン70のハブ71を形成する部分)から樹脂をキャビティ93内に注入するように設けられている。すると、樹脂がキャビティ93の内周部分から外周側に向かって流れて、樹脂がキャビティ93内に行き渡る。このとき、樹脂は、キャビティ93のうち羽根肉盗み部74、77、放射状リブ75及び前縁リブ76を形成する部分等を通過して外周側に流れ込むことになる。
【0064】
次に、金型90を冷却水等で冷却して樹脂を固化させる。
【0065】
次に、第1金型91と第2金型92との組み合わせを解除することによって金型90の型開きを行う。そして、成形された室外ファン70を金型90から取り出す。
【0066】
(4)室外ファンの特徴
本実施形態の軸流ファンとしての室外ファン70には、以下のような特徴がある。
【0067】
まず、本実施形態の室外ファン70では、上記のように、羽根72のハブ71との付け根部73に、外周側に向かって放射状に延びる放射状リブ75が残置されるように第1羽根肉盗み部74を形成している。ここでは、放射状リブ75は、ハブ71及び羽根72を軸方向から見た際に、ハブ71の軸心Oから外周側に向かって放射状に延びる直線L上を延びるものとしている(図5及び図7参照)。
【0068】
この放射状リブ75は、本願発明者が、羽根72の付け根部73に肉盗み部を形成するにあたり、肉盗み部よりも外周側の部分に対する成形時の樹脂の流れ込みを考慮したリブ形状の研究を行ったことによって見いだされたものである。
【0069】
このような放射状リブ75は、成形時に金型90に注入される樹脂が外周側に向かって流れるのを促進するため、成形時における第1羽根肉盗み部74よりも外周側の部分に対する樹脂の流れ込みを良好なものにすることができる。また、放射状リブ74は、放射状に延びていないリブを残置する場合に比べて、成形時に金型に注入される樹脂が外周側に向かって流れやすくなる。特に、ここでは、放射状リブ75を直線L上を延びるものにしているため、成形時に金型90に注入される樹脂が外周側に向かって真っ直ぐに流れるようになり、樹脂が外周側に向かってさらに流れやすくなっている(図11参照)。
【0070】
これにより、本実施形態の室外ファン70では、羽根72の外周部分における成形不良を抑えつつ、羽根72の付け根部73に肉盗み部を形成することができる。
【0071】
また、本実施形態の室外ファン70では、上記のように、放射状リブ75を周方向に複数(ここでは、4つ)配置している(図5及び図7参照)。
【0072】
このため、成形時において、第1羽根肉盗み部74よりも外周側の部分に樹脂が流れる部分を周方向に増やすことができる(図11参照)。
【0073】
これにより、本実施形態の室外ファン70では、成形時において、金型90に注入される樹脂が外周側に向かって流れるのをさらに促進することができる。また、成形時において、第1羽根肉盗み部74よりも外周側の部分のどの周方向位置においても、樹脂が均等に流れ込みやすくすることができる。
【0074】
また、本実施形態の室外ファン70では、上記のように、付け根部73のうち放射状リブ75よりも羽根72の前縁側の部分に、羽根72の前縁に連続する前縁リブ76を形成している。そして、前縁リブ76と放射状リブ75との周方向間に、第1羽根肉盗み部74よりも大きい第2羽根肉盗み部77を形成している(図5及び図7参照)。
【0075】
ここで、前縁リブ76は、上記のように、羽根72の前縁における強度を向上させるために形成したものであり、その周方向の幅が放射状リブ75よりも大きくなっている(図5及び図7参照)。このため、成形時に前縁リブ76及びその付近が冷却されにくくなるおそれがある。
【0076】
これに対して、本実施形態の室外ファン70では、上記のように、前縁リブ76と放射状リブ75との周方向間に第1羽根肉盗み部74よりも大きな第2羽根肉盗み部75を形成している。このため、前縁リブ76及びその付近の冷却されにくくなるのが抑えることができる。
【0077】
これにより、本実施形態の室外ファン70では、放射状リブ75だけでなく前縁リブ76が形成されているにもかかわらず、成形時のヒケが発生するのを抑えることができる。
【0078】
また、本実施形態の室外ファン70では、放射状リブ70を、周方向に等間隔に配置している(図5及び図7参照)。
【0079】
このため、成形時において、複数(ここでは、4つ)の放射状リブ75に対して、樹脂が均等に流れ込みやすくなる(図11参照)。
【0080】
これにより、本実施形態の室外ファン70では、成形時において、第1羽根肉盗み部74よりも外周側の部分に樹脂が周方向にさらに均等に流れ込みやすくすることができる。
【0081】
さらに、本実施形態の室外ファン70では、羽根72の後縁に、羽根72の前縁側に向かって凹んだ凹み部72aを形成している。そして、第1羽根肉盗み部74は、ハブ71及び羽根72を軸方向から見た際に、凹み部72aよりも羽根72の前縁側に位置している(図7参照)。
【0082】
ここで、凹み部72aは、上記のように、送風性能の向上や騒音の抑制を図るために形成したものであり、成形時において、凹み部72a及びその付近に樹脂が流れ込みにくくなっている。このため、成形時に凹み部72a及びその付近の成形不良が発生するおそれがある。
【0083】
これに対して、本実施形態の室外ファン70では、上記のように、第1羽根肉盗み部74が凹み部72aよりも羽根72の前縁側に位置するようにしている。このため、成形時において、樹脂が第1羽根肉盗み部74を通過することなく凹み部72a及びその付近まで流れ込むようにすることができる。
【0084】
これにより、本実施形態の室外ファン70では、第1羽根肉盗み部74及び凹み部72aの両方が形成されているにもかかわらず、成形時の凹み部72a及びその付近への樹脂の流れ込みを確保して、凹み部72a及びその付近の成形不良を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、ハブとハブの外周縁から突出するように形成された複数の羽根とが樹脂一体成形された軸流ファンに対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
70 軸流ファン
71 ハブ
72 羽根
72a 凹み部
73 付け根部
74 第1羽根肉盗み部
75 放射状リブ
76 前縁リブ
77 第2羽根肉盗み部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2011−74817号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ(71)と前記ハブの外周縁から突出するように形成された複数の羽根(72)とが樹脂一体成形された軸流ファンにおいて、
前記羽根の前記ハブとの付け根部(73)には、外周側に向かって放射状に延びる放射状リブ(75)が残置されるように第1羽根肉盗み部(74)が形成されている、
軸流ファン(70)。
【請求項2】
前記放射状リブ(75)は、周方向に複数配置されている、
請求項1に記載の軸流ファン(70)。
【請求項3】
前記放射状リブ(75)は、前記ハブ(71)及び前記羽根(72)を軸方向から見た際に、前記ハブの軸心から外周側に向かって放射状に延びる直線上を延びている、
請求項1又は2に記載の軸流ファン(70)。
【請求項4】
前記付け根部(73)のうち前記放射状リブ(75)よりも前記羽根(72)の前縁側の部分には、前記羽根の前縁に連続する前縁リブ(76)が形成されており、
前記前縁リブと前記放射状リブとの周方向間には、前記第1羽根肉盗み部(74)よりも大きい第2羽根肉盗み部(77)が形成されている、
請求項1〜3のいずれかに記載の軸流ファン(70)。
【請求項5】
前記放射状リブ(75)は、周方向に等間隔に配置されている、
請求項2〜4のいずれか1項に記載の軸流ファン(70)。
【請求項6】
前記羽根(72)の後縁には、前記羽根の前縁側に向かって凹んだ凹み部(72a)が形成されており、
前記第1羽根肉盗み部(74)は、前記ハブ(71)及び前記羽根(72)を軸方向から見た際に、前記凹み部よりも前記羽根の前縁側に位置している、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の軸流ファン(70)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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