説明

軸系の立上げ方法及びその方法を実施するための装置

軸系(10,14,21,22)の立上げ方法であって、この軸系は、共通の主軸(21)を介して互いに連結された、タービン、特にガスタービン(10)、発電機(22)及び励磁機(14)を有し、この方法では、始動プロセスの間に、立上げ装置を用いて、タービンが立ち上げられる。立上げ装置として、励磁機(14)を使用することによって、設備の簡略化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気エネルギーの生産分野に関する。この発明は、請求項1の上位概念にもとづく、軸系の立上げ方法並びに請求項10の上位概念にもとづく、この方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法及びそのような装置は、例えば特許文献1から周知である。
【0003】
電気エネルギーを生産するために、ガスタービンが、益々利用されて来ている。この場合、ガスタービンで燃焼された油又はガスは、機械的な運動エネルギーに、そして次に発電機によって電気エネルギーに変換される。ここでは、ガスタービンと発電機は、互いに連結されて、軸系を構成している。ガスタービンは、所定の回転数からようやく稼動させることができる。軸系は、別の構成要素によって、この回転数にまで加速しなければならない。引き続き、この構成要素は、なおも広い範囲の回転数に渡って、ガスタービンを支援しなければならない。
【0004】
今日、この始動プロセスに対しては、発電機自身が使用されている。この場合、発電機は、発電機としてではなく、電動機として動作する。しかしながら、発電機を電力網に直接接続することは、始動プロセスに必要な高い制御品質並びに電力網と発電機の負荷のために、考慮の対象とはならない。そのため、今日では、このプロセスの間に、静止形周波数変換器(Static Frequency Converter; SFC) を介して、発電機に電力を供給するのが一般的である。この場合、特に中間から高い回転数までの所要の回転モーメントが、SFCの容量を決める。発電機の励磁を制御するためには、この始動又は立上げ装置に追加して、第二の装置が必要である。発電機の界磁巻線は、スリップリング或いはブラシレス励磁機のどちらかを介して、電力を供給される。ブラシレス励磁の場合、周波数変換のために、第二の装置が必要な場合もある(これに関しては、最初に述べた特許文献1を参照)。
【0005】
しかし、ガスタービンは、主軸に係合する独立した駆動部によって始動される場合もある。これは、様々な方法で実現することができる。その場合、例えば相応の周波数変換器を有する非同期電動機が使用される。
【0006】
始動プロセスに関する周知の解決法では、比較的高い負担が欠点である。発電機による立上げの際、周波数変換器を、固定子の主回路の電圧レベルに適合させなければならず、そして発電機としての動作と分離するための開閉手段を備えなければならない。独立した駆動部の場合、軸系の機構がより複雑となる。
【特許文献1】米国特許出願第5,097,195号公報
【非特許文献1】M. Leijon - Powerformaer - a radicaly new rotating machine, ABB Review 2 (1998) pp.21-26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のとおり、この発明の課題は、従来技術の欠点を回避した、軸系を立ち上げるための方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1及び10の特徴部全体によって解決される。この発明の核心は、立上げ装置として、軸系に据え付けられている励磁機を利用することにある。こうすることによって、さもなければ立上げ時に発電機に電力を供給していた、従来のSFC設備を削減することができる。
【0009】
この発明の有利な実施形態では、この励磁機は、回転子巻線を持つ励磁回転子と固定子巻線を持つ励磁固定子を有する。立上げ時には、この回転子巻線に可変周波数の交流を、この固定子巻線に一定周波数、特に電力網の周波数の交流を供給する。特に、励磁機の回転子巻線に電力を供給するために、電力網と接続された周波数変換器を使用する。しかし、これとは逆に、固定子巻線に可変周波数の交流を、回転子巻線に一定周波数の交流を供給することもできる。
【0010】
この発明の別の有利な実施形態にもとづき、発電機が界磁巻線を有することと、始動プロセスの終了後に、励磁機の回転子巻線が、発電機の界磁巻線に電力を供給することと、励磁電圧を制御するために、周波数変換器が、励磁機の固定子巻線に接続されるか、接続されたままであることとにより、一層の簡略化が達成される。
【0011】
励磁機の回転子巻線によって、発電機の界磁巻線に電力を供給することは、有利には、電子部品、特に回転整流器の形式の電子部品によって実現され、その際励磁機の回転子巻線は、この電子部品を介して、発電機の界磁巻線と継続的に接続されており、この電子部品は、軸系を立ち上げるのか、発電機を励磁するのかに対応する信号によって、スイッチ・オン又はスイッチ・オフされる。
【0012】
この発明にもとづく装置の有利な実施形態は、励磁機の回転子巻線が、制御可能な電子部品を介して、発電機の界磁巻線と接続されており、この制御可能な電子部品が、制御信号導線によって、スイッチ・オン又はスイッチ・オフすることが可能であり、そしてこの電子部品が回転整流器で構成されることによって特徴付けされる。
【0013】
別の実施構成は、従属請求項において明らかにされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、実施例にもとづき、図面と関連して、この発明をより詳しく説明する。
【0015】
図1には、この発明の有利な実施例が、簡略化した接続図の形で図示されている。ガスタービン10、発電機回転子11だけが図示された発電機22、並びに励磁機14は、共通の主軸21を介して連結されて、軸系を形成している。この励磁機14は、固定子巻線25を持つ励磁固定子16と、回転子巻線23を持つ励磁回転子15とを有する。固定子巻線25は、二つの開閉器S1とS3によって、電力網24又は電力網24と接続された周波数変換器20の出力と選択的に連結することができる。回転子巻線23は、回転整流器13の形式の電子部品を介して、発電機回転子11内の界磁巻線12と接続される。回転整流器13は、制御信号導線18によってスイッチ・オン及びスイッチ・オフすることが可能な電子部品(例えば、サイリスタ)を有する。この電子部品をスイッチ・オンした場合、回転子巻線23は、界磁巻線12と接続される。それに対して、この電子部品をスイッチ・オフした場合、この接続は、遮断される。回転子巻線23は、別の開閉器S2によって、周波数変換器20の出力と接続される。可変変圧器19は、電力供給回路内に挿入することができる。
【0016】
標準又は連続運転中は、開閉器S2とS3は開いており、一方開閉器S1は閉じている。励磁機14の固定子巻線25は、周波数変換器20から電力を供給される。回転子巻線23に誘導された電圧は、回転整流器13で整流されて、発電機22の界磁巻線12に供給される。発電機22の(図示されていない)固定子巻線において、発生した電力を利用することが可能である。この場合、周波数変換器20は、励磁電圧を制御するために使用することができる。
【0017】
始動プロセス時において、軸系を立ち上げるために、開閉器S2とS3を閉じて、開閉器S1を開ける。即ち、励磁機14の固定子巻線25は、電力網24から、回転子巻線23は、スリップリング26を介して、周波数変換器20から電力を供給される。可変変圧器19と回転子巻線23間の導線内にある変流器17によって、相応の制御信号が検出されて、制御信号導線18を介して回転整流器13に伝えられ、その電子部品をスイッチ・オフする、即ち回転子巻線23と界磁巻線12間の接続が切断される。このように、励磁機14は、軸系の駆動電動機として動作する。この場合、この始動に関する挙動は、周波数変換器20によって制御することができる。ガスタービン10を稼動させるのに必要な回転数が達成されたら、前述した連続運転に切り換えることができる。可変変圧器19は、周波数変換器の負荷を緩和するためのタップ設定にすることが可能であり、その際タップの切換は、有利には電子的に行うことができる。この始動プロセスの枠組みにおいて、回転数が低い場合には先ず、励磁機14の固定子巻線25に、特に電力網24に接続された周波数変換器20から、可変周波数の交流を供給するとともに、この励磁機14の固定子巻線25に可変周波数の交流を供給する際における励磁抵抗を、負荷として利用するのが有利である場合がある。
【0018】
図1とは逆の始動が、図2に示されている。この場合、回転子巻線23は、スリップリング26、開閉器S2及び場合によっては可変変圧器19を介して、電力網と接続されており、一定周波数、特に電力網の周波数の交流を供給される。それに対して、固定子巻線25は、周波数変換器20から、可変周波数の交流を供給される。
【0019】
様々な場合における、立上げの際の回転速度rにもとづく電圧の推移U(r)が、図3に描かれている。曲線Aは、可変変圧器19を使用しない場合の回転子電圧URを示しており、曲線Bは、可変変圧器19を使用した場合の回転子電圧URを示しており、曲線Cは、可変変圧器19を使用しない場合の固定子電圧UStを示しており、曲線Dは、可変変圧器19を使用した場合の固定子電圧UStを示している。
【0020】
全体的に、この発明による解決法に関して、以下の特徴的な特性、特徴及び利点が得られる。
【0021】
・ブラシレス発電機の励磁機の回転数を可変とする実施形態によって、励磁機を立上げ装置として使用することができる。さもなければ発電機に直接電力を供給していた、従来のSFC設備が削減される。
【0022】
・そのような立上げ励磁装置により、周波数可変による電力供給を、段間変成器を介して、発電機の電圧レベルにまで昇圧することなく、並びに負担のかかる補助巻線を必要とすることなく、発電機が高圧巻線を有する(例えば、所謂「パワーフォーマー」、これに関しては、非特許文献1を参照)、発電機タービンの始動が可能となる。
【0023】
・立上げ励磁装置は、これによって、発電機と変換器を、電動機としての動作に対してではなく、発電機としての動作に対してだけ設計すればよいこととなるので、回転数が可変の発電機を使用することを支援するものである。
【0024】
・発電機の固定子巻線は、もはや始動の間に、始動装置の高周波のピーク電圧に曝されない。このため、発電機の絶縁が損傷される恐れが低減される。同様に、ピーク電圧によるリップル電圧が低減される。
【0025】
・この解決法は、軸系の減速に対しても適している。
【0026】
・このブラシは、運転中における、励磁の促進、即ち短時間での励磁電流の増進に適している。
【0027】
・このブラシは、運転中に引き上げることができる。
【0028】
・この方法及び設備は、軸系を遅く回転させる、ターン運転に対して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】立上げ時に、回転子巻線に可変周波数の交流を、固定子巻線に一定周波数の交流を供給する、この発明の第一の有利な実施例の簡略化した接続図。
【図2】立上げ時に、固定子巻線に可変周波数の交流を、回転子巻線に一定周波数の交流を供給する、図1と比較可能な、この発明の第二の有利な実施例の接続図。
【図3】可変変圧器を持つ場合(曲線BとD)と持たない場合(曲線AとC)における、この発明にもとづく立上げの際の回転子電圧UR(曲線AとB)と固定子電圧USt(曲線CとD)の曲線の例。
【符号の説明】
【0030】
10 ガスタービン
11 発電機回転子
12 界磁巻線
13 電子部品(回転整流器)
14 励磁機
15 励磁回転子
16 励磁固定子
17 変流器
18 制御信号導線
19 可変変圧器
20 周波数変換器
21 主軸
22 発電機
23 回転子巻線(励磁機)
24 電力網
25 固定子巻線
26 スリップリング
S1,S2,S3 開閉器
A〜D 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸系(10,14,21,22)の立上げ方法であって、この軸系は、共通の主軸(21)を介して互いに連結された、タービン、特にガスタービン(10)、発電機(22)及び励磁機(14)を有し、この方法では、始動プロセスの間に、立上げ装置を用いて、タービンが立ち上げられる方法において、
立上げ装置として、励磁機(14)を使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
当該の励磁機(14)が、回転子巻線(23)を持つ励磁回転子(15)と固定子巻線(25)を持つ励磁固定子(16)とを有することと、立上げ時に、この回転子巻線(23)に可変周波数の交流を、この固定子巻線(25)に一定周波数、特に電力網の周波数の交流を供給することとを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該の励磁機(14)が、回転子巻線(23)を持つ励磁回転子(15)と固定子巻線(25)を持つ励磁固定子(16)とを有することと、立上げ時に、この固定子巻線(25)に可変周波数の交流を、この回転子巻線(23)に一定周波数、特に電力網の周波数の交流を供給することとを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
当該の励磁機(14)の回転子巻線(23)又は固定子巻線(25)に電力を供給するために、電力網(24)に接続された周波数変換器(20)を使用することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
当該の発電機(22)が、界磁巻線(12)を有することと、始動プロセスの終了後に、当該の励磁機(14)の回転子巻線(23)が、発電機(22)の界磁巻線(12)に電力を供給することと、当該の周波数変換器(20)が、励磁電圧を制御するために、励磁機(14)の固定子巻線(25)に接続されるか、或いは接続されたままであることとを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
当該の励磁機(14)の回転子巻線(23)による発電機(22)の界磁巻線(12)への電力供給が、電子部品(13)、特に回転整流器の形式の電子部品(13)によって行われることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
当該の励磁機(14)の回転子巻線(23)が、当該の電子部品(13)を介して、発電機(22)の界磁巻線(12)と継続的に接続されていることと、当該の電子部品(13)が、当該の軸系(10,14,21,22)を立ち上げるか、或いは発電機(22)を励磁するかに対応する信号によって、スイッチ・オン又はスイッチ・ オフされることとを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回転数が低い場合に先ずは、当該の励磁機(14)の固定子巻線(25)に、特に電力網(24)と接続された周波数変換器(20)から、可変周波数の交流を供給することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
当該の励磁機(14)の固定子巻線(25)への電力供給時における励磁抵抗が、負荷として使用されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法を実施するための装置であって、この装置は、軸系(10,14,21,22)を有し、この軸系は、共通の主軸(21)を介して互いに連結された、タービン、特にガスタービン(10)、発電機(22)及び励磁機(14)を有し、並びにこの装置は、この軸系(10,14,21,22)を立ち上げるための手段(17,18,20;S1〜S3)を有する装置において、
この立上げ手段が、電力網(24)と接続された周波数変換器(20)を有し、この周波数変換器は、励磁機(14)の回転子巻線(23)と選択的に接続することが可能であることを特徴とする装置。
【請求項11】
当該の励磁機(14)の回転子巻線(23)が、制御可能な電子部品(13)を介して、発電機(22)の界磁巻線(12)と接続されていることと、この制御可能な電子部品(13)は、制御信号導線(18)によって、スイッチ・オン及びスイッチ・オフすることが可能であることとを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
当該の電子部品(13)が、回転整流器(13)で構成されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
当該の周波数変換器(20)と励磁機(14)の回転子巻線(23)との間に、可変変圧器(19)が配置されていることを特徴とする請求項10から12までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
当該の励磁機(14)が、固定子巻線(25)を有し、この固定子巻線は、当該の周波数変換器(20)又は電力網(24)と選択的に接続することが可能であることを特徴とする請求項10から13までのいずれか一つに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−503536(P2006−503536A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544309(P2004−544309)
【出願日】平成15年10月13日(2003.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050713
【国際公開番号】WO2004/036731
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【Fターム(参考)】