説明

軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化するための触媒および方法

軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化するための触媒および方法を提供する。本発明の触媒は再生後に、通常の選択的水素化触媒より高い活性および選択性を保持する。本発明の触媒は無機支持体上に支持された第1成分と第2成分を含有する。無機支持体は少なくとも1種のジルコニウム、ランタニド、またはアルカリ土類の塩または酸化物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願
本出願は、2004年6月23日出願の米国特許仮出願第60/582,559号、2004年6月23日出願の米国特許仮出願第60/582,747号、2004年6月23日出願の米国特許仮出願第60/582,568号、および2004年6月23日出願の米国特許仮出願第60/582,534号に基づく優先権を主張し、これらの全ての仮出願は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化するための触媒および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
軽質オレフィンはポリマーおよび化学品を生産するための重要な原料である。軽質オレフィンは一般的に石油精製ガス、エタン、プロパン、ブタン、または同様な原料の熱分解または接触分解を介して、または原油留分の流動接触分解により製造される。これらの方法により生産されるオレフィン原料は少量のアセチレンおよびジエン類を含有する。
【0004】
軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類は重合触媒の被毒を起こしうるかまたは望ましくない化学副産物を生成しうる。従って一般的にアセチレンおよびジエン類は、銀成分、パラジウム成分、およびシリカまたはアルミナ担体を含有し促進剤を伴うまたは伴わない触媒上の選択的な水素化を介して、軽質オレフィン原料から除去される。通常、触媒は実質的に全てのアセチレンおよびジエン類をモノオレフィン類に選択的に水素化する一方、わずかな量のオレフィンしかパラフィンに転化しないことが望ましい。
【0005】
選択的水素化触媒は経時的に活性を失うが、これは恐らく触媒上のオリゴマー析出が原因であると思われる。続いて水蒸気と空気を高温にて触媒上を通過させることにより選択的水素化触媒を再生すると、ある程度まで触媒活性と選択性は回復する。再生した選択的水素化触媒の触媒活性と選択性は一般的に新しい選択的水素化触媒より低い。再生後に通常の選択的水素化触媒より高い活性と選択性を保持する選択的水素化触媒組成物が必要である。
【0006】
通常の選択的水素化触媒に使用されるパラジウムは高価である。通常の選択的水素化触媒より安価である選択的水素化触媒が必要である。
【0007】
通常の選択的水素化触媒より高い活性と長い寿命をもつ選択的水素化触媒も必要である。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の一態様は、軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化するための触媒を提供する。本発明の触媒は、銅、金、銀、およびそれらの混合物からなる群より選択される第1成分;ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される第2成分;無機支持体;ならびにジルコニウム、ランタニド、アルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の無機塩または酸化物を含んでなる。
【0009】
好ましくは、無機塩または酸化物を含浸、混練、または粉末化により支持体に加える。ある実施形態においては、無機塩または酸化物、第1成分、第2成分、および支持体をいずれの順序で加えることもできる。触媒は少なくとも1種のフローライト(fluorite、蛍石ともいう)を含有することができる。好ましくは、フローライトは触媒の焼成、使用、または再生後に形成される。
【0010】
一実施形態においては、第1成分はパラジウムを含有しかつ第2成分は銀を含有する。無機塩は硝酸塩、酢酸塩、塩化物、炭酸塩、およびそれらの混合物からなる群より選択することができる。無機塩または酸化物の重量%は、重量でほぼ0.01%〜ほぼ50%の範囲であってもよい。有利な触媒は多相触媒である。多相触媒は、銅、金、銀、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、ジルコニウム、ランタニド、アルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも2種の水溶性塩の水溶液を用いて調製することができる。
【0011】
本発明の他の態様は、軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化する方法を提供する。上記方法は、本発明の触媒の存在のもとで上記原料を水素と接触することを含む。好ましくは、軽質オレフィン原料はC2〜C6の炭素数を有する少なくとも1種のオレフィンを含有する。例えば、軽質オレフィン原料は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、およびヘキセンからなる群より選択される少なくとも1種のオレフィンを含有してもよい。好ましくは、軽質オレフィン原料はエチレン原料である。
【0012】
ある実施形態においては、接触する温度はほぼ0℃〜ほぼ250℃である。好ましくは、接触する圧力はほぼ0.01bar〜ほぼ50barである。
【0013】
本発明のさらなる他の態様は、軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化する多相触媒を調製する方法を含む。本方法は、銅、金、銀、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、ジルコニウム、ランタニド、アルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも2種の水溶性塩の単一水溶液を作るステップを含む。本方法はまた、上記単一水溶液をシリカおよびアルミナからなる群より選択される無機支持体と接触するステップ、ならびに上記多相触媒を形成する条件のもとで無機支持体と単一水溶液を焼成するステップを含んでなり、ここで該多相触媒はジルコニウム、ランタニド、およびアルカリ土類からなる群より選択される少なくとも1種の無機塩または酸化物を含有する。
【0014】
好ましくは、本発明の方法は焼成前に単一水溶液から水を除去するステップも含む。ある実施形態においては、水を除去するステップは単一水溶液を乾燥するステップを含む。好ましくは、無機支持体はシリカまたはアルミナであり、かつ水溶性塩は硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、水酸化物からなる群より選択される塩である。
【0015】
説明
軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化するための通常の触媒は再生すると活性および選択性を失う。従って、本発明の目的は改善された活性および選択性を有する触媒を提供することである。
【0016】
それに応じて、本発明の一態様は無機支持体上に第1成分および第2成分を含有する選択的水素化触媒を提供する。第1成分は銀、銅、金、または銀、銅および金のいずれかの混合物を含むことができる。第2成分はパラジウム、ニッケル、白金、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウムまたはそれらの混合物を含むことができる。無機支持体はシリカまたはアルミナを含むことができる。
【0017】
一実施形態においては、第2成分の少なくとも一部分は、通常の選択的水素化触媒中の第2成分として用いられるパラジウムに加えて、またはその代わりにニッケル、鉄、コバルト、ロジウム、またはルテニウムを含有するすることができる。第2成分として用いるニッケル、鉄、コバルト、またはルテニウムは通常の選択的水素化触媒中の第2成分として用いられるパラジウムより安価でありうる。ニッケル、鉄、コバルト、ルテニウム、およびロジウムはパラジウムより被毒に対する感受性が小さい。硫黄、ヒ素、およびその他の無機物質は触媒に毒性を有しうる。
【0018】
本発明の発見は、シリカまたはアルミナ支持体をジルコニウム、1種以上のランタニド、1種以上のアルカリ土類金属、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の無機塩を加えて改変することによって、選択的水素化触媒を再生した後の選択的水素化触媒の活性および/または選択性を増加しうることにある。一実施形態においては、本発明の無機塩は、無機塩の%を酸化物基準で計算した場合、触媒上にほぼ0.01〜ほぼ50重量%、またはより好ましくは0.05〜ほぼ20重量%の量で存在することができる。少なくとも1種の無機塩または酸化物はフローライトであってもよいしまたは焼成、使用、もしくは再生後にフローライトに転化されてもよい。無機塩は硝酸塩、酢酸塩、塩化物、炭酸塩、その他のそれらの好適な塩、または混合物であってもよい。
【0019】
本発明の目的に対して、イットリウムおよびランタンはランタニド類であるとみなされる。本出願および添付せる請求項における用語ランタニドには、元素ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、およびイットリウムがいずれも含まれる。
【0020】
本発明の第1成分、第2成分、および無機塩は、いずれの好適な方法により支持体に加えてもよく、その方法としては、限定されるものでないが、支持体を1種以上の塩の溶液を用いて含浸すること;または第1成分、第2成分、および1種以上の無機塩を支持体と共に混練もしくは粉末化することが挙げられる。
【0021】
第1成分、第2成分、および無機塩を、支持体にいずれの順序で加えてもよい。第1および第2成分を一緒にまたは別々に加えてもよい。無機塩を支持体に、第1成分および/または第2成分と同時に加えてもよい。
【0022】
1種以上の無機塩を焼成するとき、1種以上の無機塩を、少なくとも部分的に酸化型に転化してもよい。同様に、第1および/または第2成分を焼成して酸化型に転化してもよい。酸化物は単一塩の酸化物であってもよく、または酸化物は混合した金属酸化物であってもよい。いくつかの事例では、酸化物は焼成後にフローライトを形成してもよい。形成される酸化物の形態は焼成条件に依存しうる。触媒の活性および/または安定性も焼成条件に依存しうる。
【0023】
1種以上の無機塩および/または第1および第2成分は、使用または再生中に、対応する1種以上の酸化物に転化しうる。
【0024】
他の実施形態において、塩または塩の混合物を支持体に加えて1種以上の塩を酸化物に転化するよりもむしろ、またはさらに、第1成分、第2成分、または無機塩の酸化物または酸化物の混合物を触媒に直接加えることができる。全ての触媒の成分をいずれの順で加えることもできる。
【0025】
本発明の触媒は単相触媒または多相触媒であってもよい。多相触媒は2以上の相を有する触媒である。一実施形態においては、多相は緻密に混合されている。多相触媒(MPC)は、複数の水溶性塩の単一水溶液を作り、その水溶液を無機支持体と接触させ、水を除去し、そして支持体と水溶性塩を焼成して多相触媒を得ることにより調製することができる。多相触媒は一般的に、同じ組成物を有する単相触媒より高い活性と安定性を有することがわかっている。
【0026】
理論により限定されることを欲しないが、水溶性塩の混合物を焼成することにより多相触媒を形成すると、多相触媒の2以上の相の緻密な混合物が形成されると思われる。多相触媒の多相の緻密な混合物は、多相触媒が高温に曝されたときに多相の凝塊もしくは焼結を抑制すると思われる。
【0027】
多相触媒を形成する水溶性塩は、銀、銅、金、パラジウム、ニッケル、白金、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、ジルコニウム、1種以上のランタニド、1種以上のアルカリ土類、またはそれらの混合物の少なくとも2種の水溶性塩でありうる。それ故に、多相触媒は第1成分および第2成分に加えて、支持体を安定化する成分を含むことができる。多相触媒は、ジルコニウム、ランタニド、アルカリ土類、およびそのいずれかの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の無機塩または酸化物を含有する。上記本発明の多相触媒の少なくとも1種の無機塩または酸化物は、水溶性塩の水溶液を形成する水溶性塩の少なくとも1種であってもよいしまたはなくてもよい。
【0028】
いずれの方式の水溶性塩を用いて水溶性塩の水溶液を形成してもよい。好適な水溶性塩としては、限定されるものでないが、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、酸化物、炭酸塩などが挙げられる。
【0029】
一実施形態においては、水を水溶性塩の水溶液から多相触媒を形成する前に除去してもよい。水は、溶液を加熱することにより蒸発を介して除去することができる。あるいは、水は、水溶性塩の水溶液上に空気を吹き込むことにより除去することができる。
【0030】
多相触媒を形成するために用いる水溶性塩は沈降剤を用いて沈降させることができる。沈降した水溶性塩を焼成して多相触媒を形成させることができる。
【0031】
沈降剤はいずれの好適な沈降剤であってもよい。いくつかの好適な沈降剤としては、限定されるものでないが、水酸化アルカリ、水酸化アンモニウム、クエン酸、およびシュウ酸が挙げられる。
【0032】
水溶性塩または沈降した水溶性塩の混合物を焼成前に乾燥することができる。
【0033】
多相触媒は、乾燥した水溶性塩の混合物または乾燥した多相触媒前駆体から、水溶性塩の混合物または多相触媒前駆体を多相触媒の所望の相化学を形成するのに十分な温度まで加熱することにより形成することができる。十分に高い温度は形成する多相触媒に依存するが、水溶性塩を一般的にほぼ600℃〜ほぼ900℃、より好ましくはほぼ700℃〜850℃の温度まで加熱して多相触媒を形成する。
【0034】
本発明の実施形態に従い、水溶性塩の混合物をほぼ1〜ほぼ100時間、ほぼ2〜ほぼ50時間、またはほぼ3〜ほぼ10時間加熱して多相触媒を形成するが、その時間は多相触媒の処方に応じて変わりうる。当業者は、多相触媒を形成するための好適な条件を過度の実験をすることなく本発明の教示を考慮して決定することができる。
【0035】
本発明の触媒は軽質オレフィンと混合したアルキンおよびジエンの選択的水素化に好適である。本出願の文中で用いる用語「軽質オレフィン」は、C2〜C6の炭素数を有するオレフィンの全てを意味すると解釈される。用語「軽質オレフィン」には、それ故に、エチレン、プロピレン、ブチレン類、ペンテン類、およびヘキセン類が含まれる。用語「ブチレン類」「ペンテン類」、および「ヘキセン類」にはブチレン、ペンテン、およびヘキセンの異性体の全てが含まれる。
【0036】
水素化は気相で、液相で、または気/液混合物として行うことができる。使用する水素の量は、ジエンおよび/またはアセチレンとの反応に必要な量のほぼ0.8〜ほぼ5、好ましくはほぼ0.95〜ほぼ2倍である。
【0037】
選択的水素化は、ほぼ500〜ほぼ10,000m3/hrの空間速度で、ほぼ0℃〜ほぼ250℃の温度で、かつほぼ0.01〜ほぼ50barの圧力で行う。
【実施例】
【0038】
実施例1
触媒Aは次のように調製する。シリカ支持体に硝酸セリウム、酢酸ジルコニウムおよび硝酸ランタンの水溶液を含浸した。含浸した支持体を乾燥した後に焼成した。焼成した支持体を次いで水溶性パラジウム塩および水溶性銀塩を含有する水溶液を用いて含浸した。その触媒を乾燥しかつ焼成した。
【0039】
実施例2
触媒Bはシリカ支持体を、硝酸セリウム、酢酸ジルコニウムおよび硝酸ランタンの水溶液を用いずに硝酸ストロンチウムを用いて含浸したことを除いて、触媒Aと同じ方式で調製した。
【0040】
実施例3
触媒Cはシリカ支持体を、水溶性パラジウム塩および水溶性銀塩だけを含有する水溶液を用いて含浸したことを除いて触媒Aと同じ方式で調製した。この触媒はジルコニウム、ランタニド、またはアルカリ土類を含有しない。
【0041】
実施例4
触媒Dはシリカ支持体を、水溶性パラジウム塩の代わりに硝酸第二鉄を含有する水溶液を用いて含浸したことを除いて触媒Aと同じ方式で調製した。
【0042】
実施例5
触媒Eはシリカ支持体を、水溶性パラジウム塩の代わりに硝酸コバルトを含有する水溶液を用いて含浸したことを除いて触媒Aと同じ方式で調製した。
【0043】
実施例6
触媒Fはシリカ支持体を、水溶性パラジウム塩の代わりに硝酸ルテニウムを含有する水溶液を用いて含浸したことを除いて触媒Aと同じ方式で調製した。
【0044】
実施例7
触媒Gはシリカ支持体を、水溶性パラジウム塩の代わりに硝酸ロジウムを含有する水溶液を用いて含浸したことを除いて触媒Aと同じ方式で調製した。
【0045】
実施例8
触媒Hはシリカ支持体を、水溶性パラジウム塩および水溶性銀塩に加えて硝酸コバルトを含有する水溶液を用いて含浸したことを除いて触媒Aと同じ方式で調製した。従って、触媒Hは第2成分としてパラジウムとコバルトの両方を含有する。
【0046】
実施例9
触媒Iは、硝酸セリウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ランタン、水溶性パラジウム塩および水溶性銀塩を別々に支持体に加え、そして各溶液を加えた後にその支持体と水溶液を焼成したことを除いて触媒Aと同じ方式で調製した。
【0047】
触媒Aは多相触媒を含有することを見出した。触媒Iは単相触媒である。
【0048】
試験
約1%アセチレンを含有するエチレン原料を、水素の存在のもとで圧力10bar、温度ほぼ45〜120℃にて触媒Aと接触させた。該触媒はアセチレンを選択的に水素化した。別の実験において、約1%アセチレンを含有するエチレン原料を触媒B、触媒C、触媒D、触媒E、触媒F、触媒G、触媒H、および触媒Iと同じ条件下で接触させると、選択的に水素化した。選択的水素化の後に、触媒A、B、C、D、E、F、G、H、およびIを水蒸気/空気再生プロセスを介して別々に再生した。
【0049】
触媒A、B、D、E、F、G、H、およびIは再生後に触媒Cより高い%の活性を保持した。ジルコニウム、1種以上のランタニド、1種以上のアルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される無機塩が触媒A、B、D、E、F、G、H、およびIの支持体上に存在すると、再生後の選択的水素化触媒の活性を改善することを見出した。
【0050】
触媒Cはジルコニウム、1種以上のランタニド、1種以上のアルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される無機塩を支持体上に含有しない。触媒Cは、無機塩を支持体上に含有する触媒より再生能が低い(less regenerable)。
【0051】
多相触媒Aは同じ組成物を有する単相触媒Iより活性が高い。多相触媒が形成されると、単相触媒の活性を超えて活性が改善される。
【0052】
他の試験を、上記のエチレン原料の代わりにプロピレン、ブチレン、ペンテン、およびヘキセンの原料を用いて実施した。該原料は全てほぼ1%アセチレンを含有した。試験は水素の存在のもとで、圧力10bar、温度ほぼ45〜120℃にて実施した。様々な原料を用いたA〜Iの触媒に対する傾向は、エチレン原料を用いて得た傾向と類似した。
【0053】
本発明の実施形態は、その本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の形態における実施形態でありうる。記載した実施形態は説明だけのためであって制限するものでないと考えなければならない。本発明の実施形態の範囲は、従って、以上の説明よりもむしろ添付した請求項により示される。請求項と同等の意味であるおよび範囲内にある全ての改変は本発明の範囲に包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化するための触媒であって、
銅、金、銀、およびそれらの混合物からなる群より選択される第1成分;
ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される第2成分;
無機支持体;ならびに
ジルコニウム、ランタニド、アルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の無機塩または酸化物
を含んでなる上記触媒。
【請求項2】
上記少なくとも1種の無機塩または酸化物を支持体に含浸、混練、または微粉末化により加えた、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
無機塩または酸化物、第1成分、第2成分、および支持体をいずれの順序で加えてもよい、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
上記触媒が少なくとも1種のフローライトを含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
上記フローライトが上記触媒の焼成、使用または再生後に形成される、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
上記第1成分がパラジウムを含みかつ上記第2成分が銀を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
上記無機塩が硝酸塩、酢酸塩、塩化物、炭酸塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
上記無機塩または酸化物の重量%がほぼ0.01%〜ほぼ50%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
上記触媒が多相触媒である、請求項1に記載の触媒。
【請求項10】
上記触媒を、銅、金、銀、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、ジルコニウム、ランタニド、アルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも2種の水溶性塩の水溶液を用いて調製する、請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化する方法であって、上記原料を、銅、金、銀、およびそれらの混合物からなる群より選択される第1成分;ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される第2成分;無機支持体;ならびにジルコニウム、ランタニド、アルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の無機塩を含んでなる触媒の存在のもとで水素と接触することを含んでなる上記方法。
【請求項12】
上記軽質オレフィン原料がC2〜C6の炭素数を有する少なくとも1種のオレフィンを含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記軽質オレフィン原料がエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、およびヘキセンからなる群より選択される少なくとも1種のオレフィンを含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記接触がほぼ0℃〜ほぼ250℃の温度で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
上記接触がほぼ0.01bar〜ほぼ50barの圧力で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
上記触媒が少なくとも1種のフローライトを含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
上記触媒が多相触媒である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
上記第1成分が銀を含みかつ上記第2成分がパラジウムを含むものである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
上記軽質オレフィン原料がエチレン原料である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
軽質オレフィン原料中のアセチレンおよびジエン類を選択的に水素化する多相触媒を調製する方法であって、銅、金、銀、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウムジルコニウム、ランタニド、アルカリ土類、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも2種の水溶性塩の単一水溶液を形成するステップ;上記単一水溶液をシリカおよびアルミナからなる群より選択される無機支持体と接触するステップ;ならびに上記無機支持体と上記単一水溶液を上記多相触媒を形成する条件下で焼成するステップを含んでなり、ここで上記多相触媒がジルコニウム、ランタニド、およびアルカリ土類からなる群より選択される少なくとも1種の無機塩または酸化物を含んでなる上記方法。
【請求項21】
さらに、上記単一溶液から焼成前に水を除去するステップを含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
水の除去は上記単一溶液を乾燥することを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記無機支持体はシリカまたはアルミナである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
上記少なくとも2種の水溶性塩が硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、および炭酸塩からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2008−504117(P2008−504117A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518170(P2007−518170)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/021740
【国際公開番号】WO2006/009988
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(506423741)カタリティック ソリューションズ,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】