軽軸力杭を用いた基礎構造
【課題】軟弱地盤上に建造物を構築する際に、従来よりも外径の小さい軽量な軸力杭を用いて、低コストで、比較的短期間に施工することが可能な基礎構造を提供することを目的とする。
【解決手段】表層の直下に軟弱層が形成された地面上に建てられる住宅の荷重を支えるべた基礎、及び倉庫、工場その他の、床面が広い建物1階の荷重のみを支える床部それぞれの沈下を防止する基礎構造であって、上記荷重のうちの鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートル以下であるときは、上記べた基礎及び前記床部の直下に所定本数設置した、外径が7mmから32mmの丸鋼若しくは外径が10mmから41mmの鉄筋又は外径が21.7mmから101.6mmの鋼管からなる単体の軽軸力杭により、該べた基礎又は該床部に加わる荷重を支持地盤に伝達することを特徴とする。
【解決手段】表層の直下に軟弱層が形成された地面上に建てられる住宅の荷重を支えるべた基礎、及び倉庫、工場その他の、床面が広い建物1階の荷重のみを支える床部それぞれの沈下を防止する基礎構造であって、上記荷重のうちの鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートル以下であるときは、上記べた基礎及び前記床部の直下に所定本数設置した、外径が7mmから32mmの丸鋼若しくは外径が10mmから41mmの鉄筋又は外径が21.7mmから101.6mmの鋼管からなる単体の軽軸力杭により、該べた基礎又は該床部に加わる荷重を支持地盤に伝達することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基礎を杭で支持する基礎構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の基礎を支持する支持杭に建造物の鉛直力と地震時の水平力とを負担させるのが一般的である。そのため、軟弱地盤の場合には大きな水平耐力が要求され、支持杭の本数を増やすか、高耐力の支持杭を用いる必要が生じ、コスト高となるうえ、施工性が低下にし、工期が長くなるという問題があった。それを解決するため、支持杭よりも短尺の補助杭を用いて水平力を分担させる方法が多数開示されている(特許文献1から3参照)。一方、建造物の鉛直荷重と水平荷重を杭基礎で支持する基礎構造は、杭本数が多くなりがちであることから、杭基礎と、建造物の重量の一部を地盤の地耐力で支持する直接基礎とを併用する併用基礎(パイルド・ラフト工法)が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、液状化層や圧密沈下の可能性がある軟弱地盤においては、全ての荷重を杭基礎が負担することになるため、その利点が失われる。そこで、杭基礎と杭基礎との間の直接基礎に、中間層まで達する補助基礎体を設置し、建造物の荷重を中間層に伝達し、建造物の荷重で建造物が沈下するのを防止する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−171924号公報
【特許文献2】特開平4−228727号公報
【特許文献3】特開2003−301469号公報
【特許文献4】特開2007−113202号公報
【特許文献5】特開2002−129584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、建築物における基礎の支持機構が異なる工法は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮した構造計算又は実験によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合を除き、原則的に禁止されている。そこで、軟弱地盤などに建造物を構築する場合は、沈下防止などのため、全荷重を杭基礎で支持するように設計するのが一般的である。しかしながら、場所打ちの杭は工期がかかるうえ割高になり、既製のコンクリート杭は、外径が300mmと比較的細いものでも、重量が500kgを超え、また外径が114mmの比較的軽量な鋼管でも、重量が120kgを超えるので、現場に杭を搬入するのも容易ではない。さらに、施工には重機が必要となり、特に狭隘な敷地においては、重機の搬入や設置が不可能なため、施工が困難である。
本発明は、上記事情に鑑み、軟弱地盤上に建造物を構築する際に、従来よりも外径の小さい軽量な軸力杭を用いて、低コストで、比較的短期間に施工することが可能な基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の基礎構造は、表層の直下に軟弱層が形成された地面上に建てられる住宅の荷重を支えるべた基礎、又は倉庫、工場その他の、広い床面を有する建物における1階の荷重のみを支える床部それぞれの沈下を防止する基礎構造であって、前記荷重のうちの鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートル以下であるとき、上記べた基礎及び上記床部の直下に所定本数設置した、外径が7mmから32mmの丸鋼若しくは外径が10mmから41mmの鉄筋又は外径が21.7mmから101.6mmの鋼管からなる単体の軽軸力杭により、該べた基礎又は該床部に加わる荷重を支持地盤に伝達することを特徴とする。
このように、べた基礎や床コンクリートに加わる荷重を、直下に所定本数設置した軽軸力杭でおおむね均等に支持するので、表層の直下に軟弱層が形成された地面上に建てる場合においても、外径の細い丸鋼、異形鉄筋、小口径鋼管を軽軸力杭として用いることができる。また軽量な杭を用いれば、人力で運搬し、設置することが可能であり、狭隘な敷地における施工が容易である。さらに、べた基礎や床コンクリートに加わる荷重を概ね均等に支持することにより、べた基礎や床コンクリートの厚さを小さくすることができる。また、1階の荷重を他の荷重とは別個に支えるので、それぞの荷重が小さくなり、杭基礎のサイズダウンを図ることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の基礎構造によれば、軟弱地盤上に倉庫又は工場などの床面積の広い建物を構築する場合の1階床コンクリートや、軟弱地盤上に住宅を建てる場合のべた基礎を、従来よりもさらに外径の小さい軽量な軸力杭を複数設置して沈下防止を図ることができるので工期の短縮やコスト削減が図れるほか、重機による施工や重機による杭材運搬が困難な狭い敷地や取付け道路が狭隘な場所でも、人力により施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、軟弱地盤を含む三層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、第一の実施形態の基礎構造の一例を示す図である。
【図2】図2は、軟弱地盤を含む二層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、第一の実施形態の基礎構造の一例を示す図である。
【図3】図3は、軟弱地盤を含む三層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、従来の基礎構造の一例を比較例として示す図である。
【図4】図4は、軟弱地盤を含む二層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、従来の基礎構造の一例を比較例として示す図である。
【図5】図5は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(墨出し)の一例を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(表層先行掘削)の一例を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(リーダ設置)の一例を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(杭建込)の一例を示す図である。
【図9】図9は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(杭打込)の一例を示す図である。
【図10】図10は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(施工終了)の一例を示す図である。
【図11】図11は、軟弱地盤を含む三層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、第二の実施形態の基礎構造の一例を示す図である。
【図12】図12は、軟弱地盤を含む二層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、第二の実施形態の基礎構造の一例を示す図である。
【図13】図13は、軟弱地盤を含む三層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、従来の基礎構造の一例を比較例として示す図である。
【図14】図14は、軟弱地盤を含む二層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、従来の基礎構造の一例を比較例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第一の実施形態]
図1及び図2は、表層の直下に軟弱層が形成された三層構造又は二層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、第一の実施形態の基礎構造の一例を示す図であり、図3及び図4は、比較例として、従来の基礎構造の一例を示す図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の基礎構造が適用される倉庫又は工場1は、1階床2の固定荷重と積載荷重及び1階床2に加わる水平荷重のみを支えるように、建物の1階床2が壁面や柱等3との繋がりを断ち、構造上独立させてある。また、1階床2を除いた柱、壁、及び屋根を含む、建物の2階以上の部分の固定荷重、積載荷重及び水平荷重は、地中梁4、基礎5及び杭6で支えるように構成されている。そして、倉庫又は工場の広い1階床2の直下には、一平方メートル当たり所定本数の小径の軽軸力杭10が人力で設置され、地上に突き出した軽軸力杭10の周囲に、例えば断熱部材を敷き詰め、その上に、鉄筋コンクリートの床2が形成される。軽軸力杭10は、杭頭がその鉄筋コンクリートに固定されている。軽軸力杭10は、軟弱層100の直下に形成されたN値が35程度の中間層200あるいは支持層300まで打ち込まれ、それらの摩擦力で1階床に加わる固定荷重及び積載荷重を支える。
ここで、軽軸力杭10は、例えば地上に突き出した杭頭部分を30mm以上、鉄筋コンクリートの床2に飲み込ませて固定することができる。このように、杭頭の一部を鉄筋コンクリートに飲み込ませるので、地盤が沈下し、軽軸力杭に負の摩擦力が生じても、床の鉄筋コンクリートから軽軸力杭が外れることはない。また、予め実施した地盤調査の結果に基づいて、軽軸力杭の長さが決まるので、一本の丸鋼若しくは鉄筋、又は鋼管では、長さが不足する場合には、圧接、重ね継手、ねじ込み継手、食い込み継手、継手溶接などの方法で接続し、必要な長さを確保することができる。
【0009】
次に、図1及び図2に示す本実施形態の基礎構造の特徴を、図3及び図4に示す従来例の基礎構造と対比して説明する。
従来例の倉庫又は工場は、図3及び図4に示すように、建物の荷重を、1階床2及び小梁7で受け、1階床2及び小梁7を含む全荷重を地中梁4で受け、その地中梁4に加わる荷重を基礎5で受け、基礎5に加わる荷重を杭6が支持層に伝達するという構造になっている。これに対し、本実施形態における基礎構造は、1階床2の荷重と、1階床以外の荷重とを、それぞれ別個に支えるので、建物全体を基礎5と杭6で支える場合に比べると、それぞれが支える荷重は軽くなる。したがって、地中梁4、基礎5及び杭6それぞれがサイズダウンできる。また、1階床2に加わる荷重も、床面全体で均等に支えるので、床厚を小さくすることができ、一平方メートル当たりの重量は、軽くなり、人力で施工可能な小径の軽軸力杭10を複数本設置することにより、その摩擦力で支えることができる。
【0010】
図5から図11は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法の一例を示す図である。
先ず、図5に示すように、墨出しを行い、建物を建てる規準線を引いておく。次に、図6に示すように、比較的硬い表層に、ドリルなどで孔をあける。そして、図7に示すように、孔付近の地面に垂直にリーダを設置する。次に、図8に示すように、リーダに沿わせて軽軸力杭10を建込み、図8に示すように、ハンマーなどの打撃具で杭頭を打ち、図9に示すように、中間層200又は支持層300に軽軸力杭10の先端が所定長食い込むまで続ける。ここでは、孔付近の地面に垂直にリーダを設置しているが、必ずしもこの方法に限定する必要はなく、孔の真上にやぐらを組んで、杭頭にモンケンを落下させる方法など用いることもできる。
【0011】
次に、本実施形態の基礎構造において、設置される軽軸力杭の本数と、軽軸力杭で支える荷重との関係について説明する。
軽軸力杭10の許容支持力Ra(キロニュートン)、1階床の固定荷重と積載荷重の和W(キロニュートン/平方メートル)とすれば、一平方メートル当たりの設置本数XがW/Ra以上であれば、軽軸力杭10によって1階床の沈下を防ぐことができる。
いま軽軸力杭10の先端の支持力は0と見做せるので、軽軸力杭10の極限支持力Ru(キロニュートン)は、軽軸力杭10の極限周面摩擦力Rf(キロニュートン)に等しい。また、軽軸力杭10の極限周面摩擦力Rf(キロニュートン)は、砂質土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)、と粘性土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)との和である。
したがって、安全係数3を見込み、軽軸力杭10の許容支持力Raは、(1)式で求められる。
【数1】
また、砂質土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)は、砂質土の杭周辺地盤の平均N値Ns、杭の周長Φ(メートル)、杭の砂質土部分の長さLs(メートル)とすれば、Rsは、(2)式で求められる。
【数2】
さらに、粘性土部分の限界周面摩擦力Rc(キロニュートン)は、砂質土のせん断強さCu(キロニュートン/平方メートル)、軽軸力杭10の周長Φ(メートル)、粘性土部分の長さLc(メートエル)とすれば、(3)式で求められる。
【数3】
また、水平地盤反力係数Kh(キロニュートン/立方メートル)、軽軸力杭10の外径D(メートル)、曲げ剛性EI(キロニュートン・平方メートル)、としたとき、軽軸力杭10と地盤との相対剛性β(1/メートル)は、(4)式で与えられる。
【数4】
さらに、定数α、群杭の影響を考慮した係数ε(単杭の場合は1)、変形係数Eo(キロニュートン/平方メートル)、杭径D(メートル)とすると、水平地盤反力係数Kh(キロニュートン/立方メートル)は、(5)式で与えられる。
【数5】
また、水平荷重をQ(キロニュートン)、杭頭が地上に露出している長さをh(メートル)としたとき、杭頭の曲げモーメントMo(キロニュートン・メートル)は、(6)式で求められる。
【数6】
さらに、地上に突き出した高さh(メートル)の部分における水平方向変位yo(メートル)は、(7)式で、地表面における水平方向変位yGLは、(8)式でそれぞれ求められる。
【数7】
【数8】
【0012】
以上の算出式をもとに、地上に突き出した高さh(メートル)の部分における水平方向の変位yo(メートル)が高さh(メートル)の120分の1以下になること、及び軽軸力杭が引張り力と曲げモーメントを受ける場合の組合せ応力の許容引張応力度に対する比が1以下となることを条件に、砂質土及び粘性土のN値Ns、Nc、砂質土層及び粘性土層の長さLs、Lc、建物の床面積、床荷重、積載荷重、軽軸力杭の規格値をパラメータとして一平方メートル当たりの所要本数、さらには均等に打ち込むための設置本数を求めることができる。
ここでは、1階床面積が1000平方メートルの倉庫又は工場の1階床の鉛直荷重が10(キロニュートン/平方メートル)、30(キロニュートン/平方メートル)、50(キロニュートン/平方メートル)それぞれの場合を想定し、各鉛直荷重の1階床を、外径7mmから32mmの丸鋼、最大外径10mmから41mmの異形鉄筋、外径21.7mmから101.6mmの鋼管それぞれで支える場合に、床面一平方メートル当たり何本の杭を設置すればよいかを求め、杭頭部における水平方向の変位yoが杭の地上部分の高さh(メートル)の120分の1以下であるか否か、さらに許容引張応力度に対する曲げと引張との組合せ応力の比が1以下となっているか否かによって、各外径の軽軸力杭それぞれの適否を判定した。
【0013】
表1から表9は、軟弱層を含む二層構造の地盤上に、1階床面積が1000平方メートルの倉庫又は工場を建てる場合を例として軽軸力杭の所要本数と、実際に設置する設置本数Nとの算出結果を示す表である。表1から表3は、軽軸力杭が丸鋼の場合、表4から表6は、軽軸力杭が異形鉄筋の場合、表7から表9は、軽軸力杭が鋼管の場合それぞれの、各床荷重に対する算定結果である。
なお、地盤が軟弱層を含む三層構造である場合も、砂質土及び粘性土のN値Ns、Nc、砂質土層及び粘性土層の長さLs、Lc、が同じ場合には、軽軸力杭が長くなるだけで、所要本数、及び設置本数は変わらないので、表及び説明は省略する。
【表1】
表1から、1階床の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、16mmのものは5本、19mmのものは4本、22mmから28mmのものは3本、32mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数Nは、16mmのものは5本、19mmから22mmのものは4本、32mmのものは2本である。
【表2】
表2から、1階床の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、13mmのものは17本、16mmのものは13本、19mmのものは11本、22mmのものは9本、25mmのものは8本、
28mmのものは7本、32mmのものは6本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、13mmのものは25本、16mmと19mmのものは16本、22mmのものは9本、25mmと28mmのものは8本、32mmのものは6本である。
【表3】
表3から、1階床の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmのものは15本、25mmのものは13本、28mmのものは12本、
32mmのものは10本であることがわかる。ちなみに、設置本数Nは、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmと25mmのものは16本、28mmと32mmのものは12本である。
【表4】
表4から、1階床の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmのものは4本、22mmから29mmのものは3本、32mmから41mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmから29mmのものは4本、32mmから41mmのものは2本である。
【表5】
表5から、1階床の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、13mmのものは17本、16mmのものは13本、19mmのものは11本、22mmのものは9本、25mmのものは8本、29mmのものは7本、32mmと35mmのものは6本、38mmと41mmのものは5本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、13mmのものは18本、16mmのものは16本、19mmのものは12本、22mmから35mmのものは9本、38mmと41mmのものは5本である。
【表6】
表6から、1階床の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、13mmのものは28本、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmのものは15本、25mmのものは13本、29mmのものは12本、32mmと35mmのものは10本、38mmのものは9本、41mmのものは8本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、13mmのものは28本、16mmのものは25本、19mmのものは20本、22mmと25mmのものは16本、29mmから35mmのものは12本、38mmと41mmのものは9本である。
【表7】
表7から、1階床の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、27.2mmのものは3本、34mmから60.5mmのものは2本、76.3mmから101.6mmのものは1本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、27.2mmのものは4本、34mmから60.5mmのものは2本、76.3mmから101.6mmのものは1本である。
【表8】
表8から、1階床の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、27.2mmのものは8本、34mmのものは6本、42.7mmのものは5本、48.6mmと60.5mmのものは4本、76.3mmから89.1mmのものは3本、101.6mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、27.2mmのものは9本、34mmのものは6本、42.7mmのものは5本、48.6mmから89.1mmのものは4本、101.6mmのものは2本である。
【表9】
表9から、1階床の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、27.2mmのものは12本、34mmのものは10本、42.7mmのものは8本、48.6mmのものは7本、60.5mmのものは6本、76.3mmのものは5本、89.1mmのものは4本、101.6mmのものは3本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、27.2mmと34.0mmのものは12本、42.7mmのものは9本、48.6mmのものは8本、60.5mmのものは6本、76.3mmのものは5本、89.1mmから101.6mmのものは4本である。
【0014】
[実施例1]
1階床面積1000平方メートルの倉庫又は工場を建てる場合に、外径48.6mm(厚さ3.2mm)の鋼管を、1平方メートル当たり4本設置して1階床面を支える本実施形態の基礎構造による場合と、従来の杭基礎による場合とに要する概算費用を算定した結果は、表10に示す通りである。その結果、本実施形態の基礎構造によると、約240万円のコストダウンできることがわかる。
【表10】
【0015】
[第二の施形態]
第二の実施形態は、第一の実施形態に比べて、建物がべた基礎の上に建てる住宅であり、軽軸力杭の軸頭がべた基礎に完全に飲み込まれ、地上における露出部分がない点が相違する。
図11及び図12は、表層の直下に軟弱層が形成された三層構造又は二層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、第二の実施形態の基礎構造の一例を示す図であり、図13及び図14は、比較例として、従来の基礎構造の一例を示す図である。
図11及び図12に示すように、本実施形態の基礎構造が適用される住宅11は、表層の直下に軟弱層100が形成された三層構造又は二層構造の地盤上に、べた基礎12を築き、その上に建てられている。べた基礎12が築かれる地面には、小径の軽軸力杭10が一平方メートル当たり所定本数、人力で設置され、地上にわずかに突き出した杭頭部分(30mm以上)を飲み込んで、鉄筋コンクリートのべた基礎12が構築されている。したがって、第一の実施形態の場合と異なり、第二の実施形態における軽軸力杭10は、地上に露出した部分がない。
軽軸力杭10は、N値が35程度の中間層200あるいは支持層300まで打ち込まれ、それらの摩擦力で住宅11の荷重を支える。なお、軽軸力杭10をべた基礎12に飲み込ませておけば、地盤が沈下し、軽軸力杭10に負の摩擦力が生じても、べた基礎12の鉄筋コンクリートから軽軸力杭10が外れることはない。また、予め実施した地盤調査の結果に基づいて、軽軸力杭10の長さが決まるので、一本の丸鋼若しくは鉄筋、又は鋼管では、長さが不足する場合には、圧接、重ね継手、ねじ込み継手、食い込み継手、継手溶接などの方法で接続し、必要な長さを確保することができる。
次に、図11及び図12に示す本実施形態の基礎構造の特徴を、図13及び図14に示す従来例の基礎構造と対比して説明する。
従来例の住宅は、例えば図13及び図14に示すように、建物の荷重は、基礎梁13で受け、その基礎梁13に加わる荷重を布基礎14で受け、木杭や小口径の鋼管杭15などで布基礎14に加わる荷重を支持層に伝達する構造になっている。一方、本実施形態における基礎構造は、建物全体の荷重を、べた基礎で概ね均等に受け、さらにべた基礎に均等に加わる荷重を、人力で施工可能な小径の軽軸力杭を複数本バランスよく設置し、その摩擦力で支える。
【0016】
次に、本実施形態の基礎構造において、設置される軽軸力杭の本数と、軽軸力杭で支える荷重との関係について説明する。
軽軸力杭の許容支持力Ra(キロニュートン)、住宅の固定荷重と積載荷重の和W(キロニュートン/平方メートル)とすれば、第一の実施形態と同様に、一平方メートル当たりの設置本数Xが、W/Ra以上であれば、軽軸力杭によって1階床の沈下を防ぐことができる。従って、砂質土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)、粘性土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)とすれば、安全係数3を見込み、軽軸力杭の許容支持力Ra(キロニュートン)Raは、第一の実施形態と同様、(1)式で与えられる。また、砂質土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)、粘性土の限界周面摩擦力Rc(キロニュートン)も、第一の実施形態と同様に、(2)式、(3)式でそれぞれ求めることができる。
ただし、第一の実施形態の場合と異なり、軽軸力杭の杭頭が地上に突き出した部分の長さh(メートル)は、ゼロとみなせるので、杭頭部の曲げモーメントMoは、(9)式で、杭頭の水平方向変位y1は、(10)式でそれぞれ与えられる。なお、βは、第一の実施形態と同様、(4)式で求めることができる。
【数9】
【数10】
【0017】
以上の算出式をもとに、杭頭部における水平方向の変位y1(メートル)が10mm以下になること、及び軽軸力杭が引張り力と曲げモーメントを受ける場合の組合せ応力の許容引張応力度に対する比が1以下となることを条件に、砂質土及び粘性土のN値Ns、Nc、砂質土層及び粘性土層の長さLs、Lc、建物の床面積、床荷重、積載荷重、軽軸力杭の規格値をパラメータとして一平方メートル当たりの所要本数、さらには実際に、均等に打ち込む際の設置本数を求めることができる。
ここでは、1階床面積が100平方メートルの住宅の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートル、30キロニュートン/平方メートル、50キロニュートン/平方メートルそれぞれの場合を想定し、各鉛直荷重に対して、外径7mmから32mmの丸鋼、最大外径10mmから41mmの異形鉄筋、外径21.7mmから101.6mmの鋼管それぞれで支える場合、べた基礎直下に一平方メートル当たり何本の杭を設置すればよいかを求め、さらに杭頭部における水平方向の変位y1(メートル)が10mm以下であるか否か、許容引張応力度に対する曲げと引張との組合せ応力の比が1以下になっているか否かによって適否を判定する。
【0018】
表10から表18は、軟弱層を含む二層構造の地盤上に、1階床面積が100平方メートルの住宅を建てる場合を例として軽軸力杭の所要本数と、実際に設置する設置本数Nとの算出結果を示す表である。表10から表12は、軽軸力杭が丸鋼の場合、表13から表15は、軽軸力杭が異形鉄筋の場合、表16から表18は、軽軸力杭が鋼管の場合それぞれの、各床荷重に対する算定結果である。
なお、地盤が軟弱層を含む三層構造である場合も、砂質土及び粘性土のN値Ns、Nc、砂質土層及び粘性土層の長さLs、Lc、が同じ場合には、軽軸力杭が長くなるだけで、所要本数、及び設置本数は変わらないので、表及び説明は省略する。
【表11】
表11から、住宅の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、9mmのものは9本、12mmと13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmから28mmのものは3本、32mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数Nは、9mmのものは9本、12mmと13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmから28mmのものは4本、32mmのものは2本である。
【表12】
表12から、住宅の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、9mmのものは26本、12mmのものは18本、13mmのものは17本、16mmのものは13本、19mmのものは11本、22mmのものは9本、25mmのものは8本、28mmのものは7本、32mmのものは6本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、9mmのものは30本、12mmと13mmのものは25本、16mmと19mmのものは16本、22mmのものは9本、25mmと28mmのものは8本、32mmのものは6本である。
【表13】
表13から、住宅の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、9mmのものは43本、12mmのものは30本、13mmのものは28本、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmのものは15本、25mmのものは13本、28mmのものは12本、32mmのものは10本であることがわかる。ちなみに、設置本数Nは、9mmのものは45本、12mmのものは30本、13mmのものは28本、16mmのものは25本、19mmのものは18本、22mmと25mmのものは16本、28mmのものは12本、32mmのものは10本である。
【表14】
表14から、住宅の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、10mmのものは8本、13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmのものは4本、22mmから29mmのものは3本、32mmから41mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、10mmと13mmのものは9本、16mmのものは5本、19mmから29mmのものは4本、32mmから41mmのものは2本である。
【表15】
表15から、住宅の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、10mmのものは23本、13mmのものは17本、16mmのものは13本、19mmのものは11本、22mmのものは9本、25mmのものは8本、29mmのものは7本、32mmと35mmのものは6本、38mmと41mmのものは5本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、10mmのものは25本、13mmのものは18本、16mmのものは16本、19mmのものは12本、22mmから35mmのものは9本、38mmと41mmのものは5本である。
【表16】
表16から、住宅の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、10mmのものは38本、13mmのものは28本、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmのものは15本、25mmのものは13本、29mmのものは12本、32mmと35mmのものは9本、38mmのものは9本、41mmのものは8本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、10mmのものは40本、13mmのものは28本、16mmのものは25本、19mmのものは18本、22mmと25mmのものは16本、29mmから35mmのものは12本、38mmと41mmのものは9本である。
【表17】
表17から、住宅の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、21.7mmのものは4本、27.2mmのものは3本、34mmから60.5mmのものは2本、76.3mmから101.6mmのものは1本であることがわかる。
ちなみに、設置本数は、21.m7mmと7.2mmのものは4本、34mmから60.5mmのものは2本、76.3mmから101.6mmのものは1本である。
【表18】
表18から、住宅の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、21.7mmのものは10本、7.2mmのものは8本、34mmのものは6本、42.7mmのものは5本、48.6mmと60.5mmのものは4本、76.3mmから89.1mmのものは3本、101.6mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、21.7mmのものは12本、27.2mmのものは9本、34mmのものは6本、42.7mmのものは5本、48.6mmから89.1mmのものは4本、101.6mmのものは2本である。
【表19】
表19から、住宅の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、21.7mmのものは16本、27.2mmのものは12本、34mmのものは10本、42.7mmのものは8本、48.6mmのものは7本、60.5mmのものは6本、76.3mmのものは5本、89.1mmのものは4本、101.6mmのものは3本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、21.7mmのものは16本、27.2mmと34.0mmのものは12本、42.7mmのものは9本、48.6mmと60.5mmのものは8本、76.3mmのものは5本、89.1mmから101.6mmのものは4本である。
8.6mmのものは8本、60.5mmのものは6本、76.3mmのものは5本、89.1mmから101.6mmのものは4本である。
【0019】
[実施例2]
1階床面積が75平方メートルの2階建て住宅を建てる場合に最大外径22mmの異形鉄筋を、1平方メートル当たり4本設置してべた基礎を支える本実施形態の基礎構造による場合と、従来の鋼管杭による場合とに要する概算費用を算定した結果は、表10に示す通りである。その結果、本実施形態の基礎構造によると、約50万円から60万円のコストダウンできることがわかる。
【表20】
【符号の説明】
【0020】
1 倉庫又は工場
2 1階床
3 壁面や柱等
4 地中梁
5 基礎
6 杭
7 地中小梁
10 軽軸力杭
11 住宅
12 べた基礎
13 基礎梁
14 布基礎
15 鋼管杭
100 軟弱層
200 中間層
300 支持層
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基礎を杭で支持する基礎構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の基礎を支持する支持杭に建造物の鉛直力と地震時の水平力とを負担させるのが一般的である。そのため、軟弱地盤の場合には大きな水平耐力が要求され、支持杭の本数を増やすか、高耐力の支持杭を用いる必要が生じ、コスト高となるうえ、施工性が低下にし、工期が長くなるという問題があった。それを解決するため、支持杭よりも短尺の補助杭を用いて水平力を分担させる方法が多数開示されている(特許文献1から3参照)。一方、建造物の鉛直荷重と水平荷重を杭基礎で支持する基礎構造は、杭本数が多くなりがちであることから、杭基礎と、建造物の重量の一部を地盤の地耐力で支持する直接基礎とを併用する併用基礎(パイルド・ラフト工法)が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、液状化層や圧密沈下の可能性がある軟弱地盤においては、全ての荷重を杭基礎が負担することになるため、その利点が失われる。そこで、杭基礎と杭基礎との間の直接基礎に、中間層まで達する補助基礎体を設置し、建造物の荷重を中間層に伝達し、建造物の荷重で建造物が沈下するのを防止する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−171924号公報
【特許文献2】特開平4−228727号公報
【特許文献3】特開2003−301469号公報
【特許文献4】特開2007−113202号公報
【特許文献5】特開2002−129584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、建築物における基礎の支持機構が異なる工法は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮した構造計算又は実験によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合を除き、原則的に禁止されている。そこで、軟弱地盤などに建造物を構築する場合は、沈下防止などのため、全荷重を杭基礎で支持するように設計するのが一般的である。しかしながら、場所打ちの杭は工期がかかるうえ割高になり、既製のコンクリート杭は、外径が300mmと比較的細いものでも、重量が500kgを超え、また外径が114mmの比較的軽量な鋼管でも、重量が120kgを超えるので、現場に杭を搬入するのも容易ではない。さらに、施工には重機が必要となり、特に狭隘な敷地においては、重機の搬入や設置が不可能なため、施工が困難である。
本発明は、上記事情に鑑み、軟弱地盤上に建造物を構築する際に、従来よりも外径の小さい軽量な軸力杭を用いて、低コストで、比較的短期間に施工することが可能な基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の基礎構造は、表層の直下に軟弱層が形成された地面上に建てられる住宅の荷重を支えるべた基礎、又は倉庫、工場その他の、広い床面を有する建物における1階の荷重のみを支える床部それぞれの沈下を防止する基礎構造であって、前記荷重のうちの鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートル以下であるとき、上記べた基礎及び上記床部の直下に所定本数設置した、外径が7mmから32mmの丸鋼若しくは外径が10mmから41mmの鉄筋又は外径が21.7mmから101.6mmの鋼管からなる単体の軽軸力杭により、該べた基礎又は該床部に加わる荷重を支持地盤に伝達することを特徴とする。
このように、べた基礎や床コンクリートに加わる荷重を、直下に所定本数設置した軽軸力杭でおおむね均等に支持するので、表層の直下に軟弱層が形成された地面上に建てる場合においても、外径の細い丸鋼、異形鉄筋、小口径鋼管を軽軸力杭として用いることができる。また軽量な杭を用いれば、人力で運搬し、設置することが可能であり、狭隘な敷地における施工が容易である。さらに、べた基礎や床コンクリートに加わる荷重を概ね均等に支持することにより、べた基礎や床コンクリートの厚さを小さくすることができる。また、1階の荷重を他の荷重とは別個に支えるので、それぞの荷重が小さくなり、杭基礎のサイズダウンを図ることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の基礎構造によれば、軟弱地盤上に倉庫又は工場などの床面積の広い建物を構築する場合の1階床コンクリートや、軟弱地盤上に住宅を建てる場合のべた基礎を、従来よりもさらに外径の小さい軽量な軸力杭を複数設置して沈下防止を図ることができるので工期の短縮やコスト削減が図れるほか、重機による施工や重機による杭材運搬が困難な狭い敷地や取付け道路が狭隘な場所でも、人力により施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、軟弱地盤を含む三層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、第一の実施形態の基礎構造の一例を示す図である。
【図2】図2は、軟弱地盤を含む二層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、第一の実施形態の基礎構造の一例を示す図である。
【図3】図3は、軟弱地盤を含む三層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、従来の基礎構造の一例を比較例として示す図である。
【図4】図4は、軟弱地盤を含む二層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、従来の基礎構造の一例を比較例として示す図である。
【図5】図5は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(墨出し)の一例を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(表層先行掘削)の一例を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(リーダ設置)の一例を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(杭建込)の一例を示す図である。
【図9】図9は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(杭打込)の一例を示す図である。
【図10】図10は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法(施工終了)の一例を示す図である。
【図11】図11は、軟弱地盤を含む三層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、第二の実施形態の基礎構造の一例を示す図である。
【図12】図12は、軟弱地盤を含む二層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、第二の実施形態の基礎構造の一例を示す図である。
【図13】図13は、軟弱地盤を含む三層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、従来の基礎構造の一例を比較例として示す図である。
【図14】図14は、軟弱地盤を含む二層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、従来の基礎構造の一例を比較例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第一の実施形態]
図1及び図2は、表層の直下に軟弱層が形成された三層構造又は二層構造の地盤上に倉庫又は工場を建てる場合に適用される、第一の実施形態の基礎構造の一例を示す図であり、図3及び図4は、比較例として、従来の基礎構造の一例を示す図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の基礎構造が適用される倉庫又は工場1は、1階床2の固定荷重と積載荷重及び1階床2に加わる水平荷重のみを支えるように、建物の1階床2が壁面や柱等3との繋がりを断ち、構造上独立させてある。また、1階床2を除いた柱、壁、及び屋根を含む、建物の2階以上の部分の固定荷重、積載荷重及び水平荷重は、地中梁4、基礎5及び杭6で支えるように構成されている。そして、倉庫又は工場の広い1階床2の直下には、一平方メートル当たり所定本数の小径の軽軸力杭10が人力で設置され、地上に突き出した軽軸力杭10の周囲に、例えば断熱部材を敷き詰め、その上に、鉄筋コンクリートの床2が形成される。軽軸力杭10は、杭頭がその鉄筋コンクリートに固定されている。軽軸力杭10は、軟弱層100の直下に形成されたN値が35程度の中間層200あるいは支持層300まで打ち込まれ、それらの摩擦力で1階床に加わる固定荷重及び積載荷重を支える。
ここで、軽軸力杭10は、例えば地上に突き出した杭頭部分を30mm以上、鉄筋コンクリートの床2に飲み込ませて固定することができる。このように、杭頭の一部を鉄筋コンクリートに飲み込ませるので、地盤が沈下し、軽軸力杭に負の摩擦力が生じても、床の鉄筋コンクリートから軽軸力杭が外れることはない。また、予め実施した地盤調査の結果に基づいて、軽軸力杭の長さが決まるので、一本の丸鋼若しくは鉄筋、又は鋼管では、長さが不足する場合には、圧接、重ね継手、ねじ込み継手、食い込み継手、継手溶接などの方法で接続し、必要な長さを確保することができる。
【0009】
次に、図1及び図2に示す本実施形態の基礎構造の特徴を、図3及び図4に示す従来例の基礎構造と対比して説明する。
従来例の倉庫又は工場は、図3及び図4に示すように、建物の荷重を、1階床2及び小梁7で受け、1階床2及び小梁7を含む全荷重を地中梁4で受け、その地中梁4に加わる荷重を基礎5で受け、基礎5に加わる荷重を杭6が支持層に伝達するという構造になっている。これに対し、本実施形態における基礎構造は、1階床2の荷重と、1階床以外の荷重とを、それぞれ別個に支えるので、建物全体を基礎5と杭6で支える場合に比べると、それぞれが支える荷重は軽くなる。したがって、地中梁4、基礎5及び杭6それぞれがサイズダウンできる。また、1階床2に加わる荷重も、床面全体で均等に支えるので、床厚を小さくすることができ、一平方メートル当たりの重量は、軽くなり、人力で施工可能な小径の軽軸力杭10を複数本設置することにより、その摩擦力で支えることができる。
【0010】
図5から図11は、本実施形態の軽軸力杭を地中に設置する方法の一例を示す図である。
先ず、図5に示すように、墨出しを行い、建物を建てる規準線を引いておく。次に、図6に示すように、比較的硬い表層に、ドリルなどで孔をあける。そして、図7に示すように、孔付近の地面に垂直にリーダを設置する。次に、図8に示すように、リーダに沿わせて軽軸力杭10を建込み、図8に示すように、ハンマーなどの打撃具で杭頭を打ち、図9に示すように、中間層200又は支持層300に軽軸力杭10の先端が所定長食い込むまで続ける。ここでは、孔付近の地面に垂直にリーダを設置しているが、必ずしもこの方法に限定する必要はなく、孔の真上にやぐらを組んで、杭頭にモンケンを落下させる方法など用いることもできる。
【0011】
次に、本実施形態の基礎構造において、設置される軽軸力杭の本数と、軽軸力杭で支える荷重との関係について説明する。
軽軸力杭10の許容支持力Ra(キロニュートン)、1階床の固定荷重と積載荷重の和W(キロニュートン/平方メートル)とすれば、一平方メートル当たりの設置本数XがW/Ra以上であれば、軽軸力杭10によって1階床の沈下を防ぐことができる。
いま軽軸力杭10の先端の支持力は0と見做せるので、軽軸力杭10の極限支持力Ru(キロニュートン)は、軽軸力杭10の極限周面摩擦力Rf(キロニュートン)に等しい。また、軽軸力杭10の極限周面摩擦力Rf(キロニュートン)は、砂質土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)、と粘性土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)との和である。
したがって、安全係数3を見込み、軽軸力杭10の許容支持力Raは、(1)式で求められる。
【数1】
また、砂質土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)は、砂質土の杭周辺地盤の平均N値Ns、杭の周長Φ(メートル)、杭の砂質土部分の長さLs(メートル)とすれば、Rsは、(2)式で求められる。
【数2】
さらに、粘性土部分の限界周面摩擦力Rc(キロニュートン)は、砂質土のせん断強さCu(キロニュートン/平方メートル)、軽軸力杭10の周長Φ(メートル)、粘性土部分の長さLc(メートエル)とすれば、(3)式で求められる。
【数3】
また、水平地盤反力係数Kh(キロニュートン/立方メートル)、軽軸力杭10の外径D(メートル)、曲げ剛性EI(キロニュートン・平方メートル)、としたとき、軽軸力杭10と地盤との相対剛性β(1/メートル)は、(4)式で与えられる。
【数4】
さらに、定数α、群杭の影響を考慮した係数ε(単杭の場合は1)、変形係数Eo(キロニュートン/平方メートル)、杭径D(メートル)とすると、水平地盤反力係数Kh(キロニュートン/立方メートル)は、(5)式で与えられる。
【数5】
また、水平荷重をQ(キロニュートン)、杭頭が地上に露出している長さをh(メートル)としたとき、杭頭の曲げモーメントMo(キロニュートン・メートル)は、(6)式で求められる。
【数6】
さらに、地上に突き出した高さh(メートル)の部分における水平方向変位yo(メートル)は、(7)式で、地表面における水平方向変位yGLは、(8)式でそれぞれ求められる。
【数7】
【数8】
【0012】
以上の算出式をもとに、地上に突き出した高さh(メートル)の部分における水平方向の変位yo(メートル)が高さh(メートル)の120分の1以下になること、及び軽軸力杭が引張り力と曲げモーメントを受ける場合の組合せ応力の許容引張応力度に対する比が1以下となることを条件に、砂質土及び粘性土のN値Ns、Nc、砂質土層及び粘性土層の長さLs、Lc、建物の床面積、床荷重、積載荷重、軽軸力杭の規格値をパラメータとして一平方メートル当たりの所要本数、さらには均等に打ち込むための設置本数を求めることができる。
ここでは、1階床面積が1000平方メートルの倉庫又は工場の1階床の鉛直荷重が10(キロニュートン/平方メートル)、30(キロニュートン/平方メートル)、50(キロニュートン/平方メートル)それぞれの場合を想定し、各鉛直荷重の1階床を、外径7mmから32mmの丸鋼、最大外径10mmから41mmの異形鉄筋、外径21.7mmから101.6mmの鋼管それぞれで支える場合に、床面一平方メートル当たり何本の杭を設置すればよいかを求め、杭頭部における水平方向の変位yoが杭の地上部分の高さh(メートル)の120分の1以下であるか否か、さらに許容引張応力度に対する曲げと引張との組合せ応力の比が1以下となっているか否かによって、各外径の軽軸力杭それぞれの適否を判定した。
【0013】
表1から表9は、軟弱層を含む二層構造の地盤上に、1階床面積が1000平方メートルの倉庫又は工場を建てる場合を例として軽軸力杭の所要本数と、実際に設置する設置本数Nとの算出結果を示す表である。表1から表3は、軽軸力杭が丸鋼の場合、表4から表6は、軽軸力杭が異形鉄筋の場合、表7から表9は、軽軸力杭が鋼管の場合それぞれの、各床荷重に対する算定結果である。
なお、地盤が軟弱層を含む三層構造である場合も、砂質土及び粘性土のN値Ns、Nc、砂質土層及び粘性土層の長さLs、Lc、が同じ場合には、軽軸力杭が長くなるだけで、所要本数、及び設置本数は変わらないので、表及び説明は省略する。
【表1】
表1から、1階床の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、16mmのものは5本、19mmのものは4本、22mmから28mmのものは3本、32mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数Nは、16mmのものは5本、19mmから22mmのものは4本、32mmのものは2本である。
【表2】
表2から、1階床の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、13mmのものは17本、16mmのものは13本、19mmのものは11本、22mmのものは9本、25mmのものは8本、
28mmのものは7本、32mmのものは6本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、13mmのものは25本、16mmと19mmのものは16本、22mmのものは9本、25mmと28mmのものは8本、32mmのものは6本である。
【表3】
表3から、1階床の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmのものは15本、25mmのものは13本、28mmのものは12本、
32mmのものは10本であることがわかる。ちなみに、設置本数Nは、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmと25mmのものは16本、28mmと32mmのものは12本である。
【表4】
表4から、1階床の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmのものは4本、22mmから29mmのものは3本、32mmから41mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmから29mmのものは4本、32mmから41mmのものは2本である。
【表5】
表5から、1階床の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、13mmのものは17本、16mmのものは13本、19mmのものは11本、22mmのものは9本、25mmのものは8本、29mmのものは7本、32mmと35mmのものは6本、38mmと41mmのものは5本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、13mmのものは18本、16mmのものは16本、19mmのものは12本、22mmから35mmのものは9本、38mmと41mmのものは5本である。
【表6】
表6から、1階床の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、13mmのものは28本、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmのものは15本、25mmのものは13本、29mmのものは12本、32mmと35mmのものは10本、38mmのものは9本、41mmのものは8本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、13mmのものは28本、16mmのものは25本、19mmのものは20本、22mmと25mmのものは16本、29mmから35mmのものは12本、38mmと41mmのものは9本である。
【表7】
表7から、1階床の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、27.2mmのものは3本、34mmから60.5mmのものは2本、76.3mmから101.6mmのものは1本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、27.2mmのものは4本、34mmから60.5mmのものは2本、76.3mmから101.6mmのものは1本である。
【表8】
表8から、1階床の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、27.2mmのものは8本、34mmのものは6本、42.7mmのものは5本、48.6mmと60.5mmのものは4本、76.3mmから89.1mmのものは3本、101.6mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、27.2mmのものは9本、34mmのものは6本、42.7mmのものは5本、48.6mmから89.1mmのものは4本、101.6mmのものは2本である。
【表9】
表9から、1階床の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、27.2mmのものは12本、34mmのものは10本、42.7mmのものは8本、48.6mmのものは7本、60.5mmのものは6本、76.3mmのものは5本、89.1mmのものは4本、101.6mmのものは3本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、27.2mmと34.0mmのものは12本、42.7mmのものは9本、48.6mmのものは8本、60.5mmのものは6本、76.3mmのものは5本、89.1mmから101.6mmのものは4本である。
【0014】
[実施例1]
1階床面積1000平方メートルの倉庫又は工場を建てる場合に、外径48.6mm(厚さ3.2mm)の鋼管を、1平方メートル当たり4本設置して1階床面を支える本実施形態の基礎構造による場合と、従来の杭基礎による場合とに要する概算費用を算定した結果は、表10に示す通りである。その結果、本実施形態の基礎構造によると、約240万円のコストダウンできることがわかる。
【表10】
【0015】
[第二の施形態]
第二の実施形態は、第一の実施形態に比べて、建物がべた基礎の上に建てる住宅であり、軽軸力杭の軸頭がべた基礎に完全に飲み込まれ、地上における露出部分がない点が相違する。
図11及び図12は、表層の直下に軟弱層が形成された三層構造又は二層構造の地盤上に住宅を建てる場合に適用される、第二の実施形態の基礎構造の一例を示す図であり、図13及び図14は、比較例として、従来の基礎構造の一例を示す図である。
図11及び図12に示すように、本実施形態の基礎構造が適用される住宅11は、表層の直下に軟弱層100が形成された三層構造又は二層構造の地盤上に、べた基礎12を築き、その上に建てられている。べた基礎12が築かれる地面には、小径の軽軸力杭10が一平方メートル当たり所定本数、人力で設置され、地上にわずかに突き出した杭頭部分(30mm以上)を飲み込んで、鉄筋コンクリートのべた基礎12が構築されている。したがって、第一の実施形態の場合と異なり、第二の実施形態における軽軸力杭10は、地上に露出した部分がない。
軽軸力杭10は、N値が35程度の中間層200あるいは支持層300まで打ち込まれ、それらの摩擦力で住宅11の荷重を支える。なお、軽軸力杭10をべた基礎12に飲み込ませておけば、地盤が沈下し、軽軸力杭10に負の摩擦力が生じても、べた基礎12の鉄筋コンクリートから軽軸力杭10が外れることはない。また、予め実施した地盤調査の結果に基づいて、軽軸力杭10の長さが決まるので、一本の丸鋼若しくは鉄筋、又は鋼管では、長さが不足する場合には、圧接、重ね継手、ねじ込み継手、食い込み継手、継手溶接などの方法で接続し、必要な長さを確保することができる。
次に、図11及び図12に示す本実施形態の基礎構造の特徴を、図13及び図14に示す従来例の基礎構造と対比して説明する。
従来例の住宅は、例えば図13及び図14に示すように、建物の荷重は、基礎梁13で受け、その基礎梁13に加わる荷重を布基礎14で受け、木杭や小口径の鋼管杭15などで布基礎14に加わる荷重を支持層に伝達する構造になっている。一方、本実施形態における基礎構造は、建物全体の荷重を、べた基礎で概ね均等に受け、さらにべた基礎に均等に加わる荷重を、人力で施工可能な小径の軽軸力杭を複数本バランスよく設置し、その摩擦力で支える。
【0016】
次に、本実施形態の基礎構造において、設置される軽軸力杭の本数と、軽軸力杭で支える荷重との関係について説明する。
軽軸力杭の許容支持力Ra(キロニュートン)、住宅の固定荷重と積載荷重の和W(キロニュートン/平方メートル)とすれば、第一の実施形態と同様に、一平方メートル当たりの設置本数Xが、W/Ra以上であれば、軽軸力杭によって1階床の沈下を防ぐことができる。従って、砂質土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)、粘性土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)とすれば、安全係数3を見込み、軽軸力杭の許容支持力Ra(キロニュートン)Raは、第一の実施形態と同様、(1)式で与えられる。また、砂質土部分の限界周面摩擦力Rs(キロニュートン)、粘性土の限界周面摩擦力Rc(キロニュートン)も、第一の実施形態と同様に、(2)式、(3)式でそれぞれ求めることができる。
ただし、第一の実施形態の場合と異なり、軽軸力杭の杭頭が地上に突き出した部分の長さh(メートル)は、ゼロとみなせるので、杭頭部の曲げモーメントMoは、(9)式で、杭頭の水平方向変位y1は、(10)式でそれぞれ与えられる。なお、βは、第一の実施形態と同様、(4)式で求めることができる。
【数9】
【数10】
【0017】
以上の算出式をもとに、杭頭部における水平方向の変位y1(メートル)が10mm以下になること、及び軽軸力杭が引張り力と曲げモーメントを受ける場合の組合せ応力の許容引張応力度に対する比が1以下となることを条件に、砂質土及び粘性土のN値Ns、Nc、砂質土層及び粘性土層の長さLs、Lc、建物の床面積、床荷重、積載荷重、軽軸力杭の規格値をパラメータとして一平方メートル当たりの所要本数、さらには実際に、均等に打ち込む際の設置本数を求めることができる。
ここでは、1階床面積が100平方メートルの住宅の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートル、30キロニュートン/平方メートル、50キロニュートン/平方メートルそれぞれの場合を想定し、各鉛直荷重に対して、外径7mmから32mmの丸鋼、最大外径10mmから41mmの異形鉄筋、外径21.7mmから101.6mmの鋼管それぞれで支える場合、べた基礎直下に一平方メートル当たり何本の杭を設置すればよいかを求め、さらに杭頭部における水平方向の変位y1(メートル)が10mm以下であるか否か、許容引張応力度に対する曲げと引張との組合せ応力の比が1以下になっているか否かによって適否を判定する。
【0018】
表10から表18は、軟弱層を含む二層構造の地盤上に、1階床面積が100平方メートルの住宅を建てる場合を例として軽軸力杭の所要本数と、実際に設置する設置本数Nとの算出結果を示す表である。表10から表12は、軽軸力杭が丸鋼の場合、表13から表15は、軽軸力杭が異形鉄筋の場合、表16から表18は、軽軸力杭が鋼管の場合それぞれの、各床荷重に対する算定結果である。
なお、地盤が軟弱層を含む三層構造である場合も、砂質土及び粘性土のN値Ns、Nc、砂質土層及び粘性土層の長さLs、Lc、が同じ場合には、軽軸力杭が長くなるだけで、所要本数、及び設置本数は変わらないので、表及び説明は省略する。
【表11】
表11から、住宅の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、9mmのものは9本、12mmと13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmから28mmのものは3本、32mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数Nは、9mmのものは9本、12mmと13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmから28mmのものは4本、32mmのものは2本である。
【表12】
表12から、住宅の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、9mmのものは26本、12mmのものは18本、13mmのものは17本、16mmのものは13本、19mmのものは11本、22mmのものは9本、25mmのものは8本、28mmのものは7本、32mmのものは6本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、9mmのものは30本、12mmと13mmのものは25本、16mmと19mmのものは16本、22mmのものは9本、25mmと28mmのものは8本、32mmのものは6本である。
【表13】
表13から、住宅の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の丸鋼の所要本数は、9mmのものは43本、12mmのものは30本、13mmのものは28本、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmのものは15本、25mmのものは13本、28mmのものは12本、32mmのものは10本であることがわかる。ちなみに、設置本数Nは、9mmのものは45本、12mmのものは30本、13mmのものは28本、16mmのものは25本、19mmのものは18本、22mmと25mmのものは16本、28mmのものは12本、32mmのものは10本である。
【表14】
表14から、住宅の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、10mmのものは8本、13mmのものは6本、16mmのものは5本、19mmのものは4本、22mmから29mmのものは3本、32mmから41mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、10mmと13mmのものは9本、16mmのものは5本、19mmから29mmのものは4本、32mmから41mmのものは2本である。
【表15】
表15から、住宅の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の異形鉄筋の所要本数は、10mmのものは23本、13mmのものは17本、16mmのものは13本、19mmのものは11本、22mmのものは9本、25mmのものは8本、29mmのものは7本、32mmと35mmのものは6本、38mmと41mmのものは5本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、10mmのものは25本、13mmのものは18本、16mmのものは16本、19mmのものは12本、22mmから35mmのものは9本、38mmと41mmのものは5本である。
【表16】
表16から、住宅の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、10mmのものは38本、13mmのものは28本、16mmのものは22本、19mmのものは18本、22mmのものは15本、25mmのものは13本、29mmのものは12本、32mmと35mmのものは9本、38mmのものは9本、41mmのものは8本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、10mmのものは40本、13mmのものは28本、16mmのものは25本、19mmのものは18本、22mmと25mmのものは16本、29mmから35mmのものは12本、38mmと41mmのものは9本である。
【表17】
表17から、住宅の鉛直荷重が10キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、21.7mmのものは4本、27.2mmのものは3本、34mmから60.5mmのものは2本、76.3mmから101.6mmのものは1本であることがわかる。
ちなみに、設置本数は、21.m7mmと7.2mmのものは4本、34mmから60.5mmのものは2本、76.3mmから101.6mmのものは1本である。
【表18】
表18から、住宅の鉛直荷重が30キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、21.7mmのものは10本、7.2mmのものは8本、34mmのものは6本、42.7mmのものは5本、48.6mmと60.5mmのものは4本、76.3mmから89.1mmのものは3本、101.6mmのものは2本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、21.7mmのものは12本、27.2mmのものは9本、34mmのものは6本、42.7mmのものは5本、48.6mmから89.1mmのものは4本、101.6mmのものは2本である。
【表19】
表19から、住宅の鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートルの場合の鋼管の所要本数は、21.7mmのものは16本、27.2mmのものは12本、34mmのものは10本、42.7mmのものは8本、48.6mmのものは7本、60.5mmのものは6本、76.3mmのものは5本、89.1mmのものは4本、101.6mmのものは3本であることがわかる。ちなみに、設置本数は、21.7mmのものは16本、27.2mmと34.0mmのものは12本、42.7mmのものは9本、48.6mmと60.5mmのものは8本、76.3mmのものは5本、89.1mmから101.6mmのものは4本である。
8.6mmのものは8本、60.5mmのものは6本、76.3mmのものは5本、89.1mmから101.6mmのものは4本である。
【0019】
[実施例2]
1階床面積が75平方メートルの2階建て住宅を建てる場合に最大外径22mmの異形鉄筋を、1平方メートル当たり4本設置してべた基礎を支える本実施形態の基礎構造による場合と、従来の鋼管杭による場合とに要する概算費用を算定した結果は、表10に示す通りである。その結果、本実施形態の基礎構造によると、約50万円から60万円のコストダウンできることがわかる。
【表20】
【符号の説明】
【0020】
1 倉庫又は工場
2 1階床
3 壁面や柱等
4 地中梁
5 基礎
6 杭
7 地中小梁
10 軽軸力杭
11 住宅
12 べた基礎
13 基礎梁
14 布基礎
15 鋼管杭
100 軟弱層
200 中間層
300 支持層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層の直下に軟弱層が形成された地面上に建てられる住宅の荷重を支えるべた基礎、及び倉庫、工場その他の、広い床面を有する建物における1階の荷重のみを支える床部それぞれの沈下を防止する基礎構造であって、
前記荷重のうちの鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートル以下であるとき、前記べた基礎及び前記床部の直下に所定本数設置した、外径が7mmから32mmの丸鋼若しくは外径が10mmから41mmの鉄筋又は外径が21.7mmから101.6mmの鋼管からなる単体の軽軸力杭により、該べた基礎又は該床部に加わる荷重を支持地盤に伝達することを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
前記支持地盤は、前記軟弱層の直下に形成された支持層又は該支持層よりN値の低い中間層であることを特徴とする請求項1項記載の基礎構造。
【請求項3】
前記軸力杭の杭頭それぞれは、前記べた基礎又は前記床に固定されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の基礎構造。
【請求項4】
前記べた基礎又は前記床部の直下に設置された前記軽軸力杭の許容支持力がRaキロニュートンであり、前記鉛直荷重がWキロニュートン/平方メートルであるとき、一平方メートル当たりに設置される前記軽軸力杭の本数Xは、W/Ra以上であることを特徴とする請求項1から3のうちの何れか1項記載の基礎構造。
【請求項5】
前記軽軸力杭が前記丸鋼である場合の前記本数Xは、前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、少なくとも2本、該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、少なくとも6本、該鉛直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、少なくとも10本であることを特徴とする請求項4記載の基礎構造。
【請求項6】
前記軽軸力杭が前記鉄筋である場合の前記本数Xは、前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、少なくとも2本、該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、少なくとも5本、該鉛直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、少なくとも8本であることを特徴とする請求項4記載の基礎構造。
【請求項7】
前記軽軸力杭が前記鋼管である場合の前記本数Xは、
前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、少なくとも1本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、少なくとも2本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、少なくとも3本であることを特徴とする請求項4記載の基礎構造。
【請求項8】
前記軽軸力杭が丸鋼又は鉄筋である場合の前記本数Xは、
前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、外径19mmのものが4本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、外径22mmのものが9本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、外径28mmのものが12本であることを特徴とする請求項5又は6記載の基礎構造。
【請求項9】
前記軽軸力杭が鋼管である場合の前記本数Xは、
前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、外径42.7mmのものが2本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、外径42.7mmのものが5本、
該直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、外径76.3mmのものが5本であることを特徴とする請求項7記載の基礎構造。
【請求項1】
表層の直下に軟弱層が形成された地面上に建てられる住宅の荷重を支えるべた基礎、及び倉庫、工場その他の、広い床面を有する建物における1階の荷重のみを支える床部それぞれの沈下を防止する基礎構造であって、
前記荷重のうちの鉛直荷重が50キロニュートン/平方メートル以下であるとき、前記べた基礎及び前記床部の直下に所定本数設置した、外径が7mmから32mmの丸鋼若しくは外径が10mmから41mmの鉄筋又は外径が21.7mmから101.6mmの鋼管からなる単体の軽軸力杭により、該べた基礎又は該床部に加わる荷重を支持地盤に伝達することを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
前記支持地盤は、前記軟弱層の直下に形成された支持層又は該支持層よりN値の低い中間層であることを特徴とする請求項1項記載の基礎構造。
【請求項3】
前記軸力杭の杭頭それぞれは、前記べた基礎又は前記床に固定されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の基礎構造。
【請求項4】
前記べた基礎又は前記床部の直下に設置された前記軽軸力杭の許容支持力がRaキロニュートンであり、前記鉛直荷重がWキロニュートン/平方メートルであるとき、一平方メートル当たりに設置される前記軽軸力杭の本数Xは、W/Ra以上であることを特徴とする請求項1から3のうちの何れか1項記載の基礎構造。
【請求項5】
前記軽軸力杭が前記丸鋼である場合の前記本数Xは、前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、少なくとも2本、該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、少なくとも6本、該鉛直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、少なくとも10本であることを特徴とする請求項4記載の基礎構造。
【請求項6】
前記軽軸力杭が前記鉄筋である場合の前記本数Xは、前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、少なくとも2本、該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、少なくとも5本、該鉛直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、少なくとも8本であることを特徴とする請求項4記載の基礎構造。
【請求項7】
前記軽軸力杭が前記鋼管である場合の前記本数Xは、
前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、少なくとも1本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、少なくとも2本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、少なくとも3本であることを特徴とする請求項4記載の基礎構造。
【請求項8】
前記軽軸力杭が丸鋼又は鉄筋である場合の前記本数Xは、
前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、外径19mmのものが4本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、外径22mmのものが9本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、外径28mmのものが12本であることを特徴とする請求項5又は6記載の基礎構造。
【請求項9】
前記軽軸力杭が鋼管である場合の前記本数Xは、
前記鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートン以下のときは、外径42.7mmのものが2本、
該鉛直荷重が一平方メートル当たり10キロニュートンを超え、30キロニュートン以下のときは、外径42.7mmのものが5本、
該直荷重が一平方メートル当たり30キロニュートンを超え、50キロニュートン以下のときは、外径76.3mmのものが5本であることを特徴とする請求項7記載の基礎構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−140802(P2012−140802A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294620(P2010−294620)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【出願人】(310024398)株式会社 野田設計 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【出願人】(310024398)株式会社 野田設計 (1)
【Fターム(参考)】
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