説明

軽量構造材の廃材利用方法。

【課題】コストがかからない軽量構造材の廃材利用方法を提供する。
【解決手段】軽量構造材として一次利用された軽量合金廃材の塊または破片を用い、高圧容器2内に入れて水素加圧下でレーザーによって表面の酸化膜を破壊し合金表面を水素に接触させ、水素化反応によって水素を吸蔵させることで粉砕した水素化物の粒子を生成した後、水素化物の粒子はフィルター性の袋に詰めパックにして、または、圧着あるいは結合剤で固めて、金属反応(加水分解)またはイオン化反応(電極活物質)の機能材料として、サイホン式または電池式の水素発生装置で二次利用した後、残った水酸化物を回収し、三次利用をする軽量合金の廃材利用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄並みの強度とプラスチック並みの軽量な特徴を持つ、おもにマグネシウム(Mg)を主とする複数金属から合金された軽量構造材の廃材有効利用に関し、コストを掛けないで複数回の廃材利用から利用価値を高めることで軽量構造材の製造の低コスト化ができるもの。
【背景技術】
【0002】
ジュラルミンなど高機能な軽量合金が産業に役立ってきたが、廃材の再生利用という二次利用では、環境負荷などリサイクルにおいての課題がある。
一方、マグネシウムを主に用いる軽量合金は、近年、新たな機能性も見出され、構造材として広く提供されている。マグネシウムの廃材の二次利用は、再生にも環境に優しいと言う優位性からも注目されている。
【0003】
マグネシウムを主とする軽量合金の廃材は、一般的に、アルミ合金に比べてはるかに少ない電力で再生できるため都合がよい。しかし、少ないながら電力を投入することから、再生費用もかさむ。
【0004】
他方、水素化する装置のほか、水素化したマグネシウムの金属反応やイオン化反応を利用した、水素発生やマグネシウム電池の分野では、次世代エネルギーの材料として提供されている。
【0005】
このような文献資料としては、以下が知られている。
【特許文献1】特許公開2003−229134
【特許文献2】特許公開2006−97061
【特許文献3】国際特許公開WO/2008/015844
【特許文献4】国際特許公開WO/2006/011620
【0006】
これら水素吸蔵材料を導電性基体に固着してなる負極と空気極からなる正極と電解質を有し、金属水素化物を燃料源とする燃料電池でも、また、金属を反応物質として有する反応電極と、金属よりも貴な標準電極電位を有する金属で構成された対極間の電位差での酸化反応を利用した水素発生の、どちらにおいても、構造材としての軽量合金の金属配分から水素吸蔵合金種からは除外され廃材の水素化利用はない。
【0007】
また、マグネシウムや水素化したマグネシウムをサイホン式または電池式の水素発生においても、軽量構造材としての金属配分から水素吸蔵合金種からは除外され、廃材の水素化利用もされていない。
【0008】
軽量構造材として用いられる金属のほとんどが、サイホン式または電池式の水素発生において、酸化反応によって水酸化物に変わるので三次利用の際は、廃材をそのまま使うことができるので都合がよい。例えば、二次利用後のマグネシウム合金であれば他に含まれる金属も水酸化物となるものが多く、各種の工業原料/触媒、土壌/海水の改良材料、蓄熱の材料などに三次利用もでき、悪影響はない。
【0009】
また、水素化物の製造装置においても、温調部のレーザーによる超高温な水素化方法は、水素吸蔵合金の製造が目的から予め粉砕した粒子を用いている。このため新しい合金種の軽量構造材の塊や破片を用いる水素化は、検証例もなく記載されていない。これを従来方法の脱気と水素化圧を繰り返す方法では、高コストで手間もかかる課題もある。
【0010】
従って本発明は、従来技術の課題である、軽量構造材としての金属が含まれた合金でも、一次利用後に、コストや手間を掛けずに従来装置のサイホン式または電池式の水素発生において、高効率な二次利用ができ、且つ、利用後においても低コストで手間もかけず三次利用ができることにある。他の目的は、地球環境保全の観点からも、自然または再生可能なエネルギーからの電気エネルギーを、一旦、金属製造に用いることで、安全でクリーンなエネルギーの貯蔵・輸送を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明は、従来技術の課題である軽量構造材としての金属が含まれ配分された合金でも、二次および三次の利用にコストを掛けずに用いることで、軽量合金の製造コストを低コスト化することである。他の目的は、安全でクリーンなエネルギーの貯蔵・輸送を提供することで地球環境の負荷削減をすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、軽量構造材として一次利用された軽量合金廃材の塊または破片を用い、高圧容器内に入れて水素加圧下でレーザーによって表面の酸化膜を破壊し合金表面を水素に接触させ、水素化反応によって水素を吸蔵させることで金属結晶の膨張により粉砕した水素化物の粒子を生成した後、水素化物の粒子はフィルター性の袋に詰めパックにして、または、圧着あるいは結合剤で固めて、金属反応(加水分解)またはイオン化反応(電極活物質)の機能材料として、サイホン式または電池式の水素発生装置で二次利用した後、残った水酸化物を三次利用をする軽量合金の廃材利用を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
手間を掛けずに一環利用することで軽量構造材の合金製造の低コスト化を可能とする。且つ、自然界に存在する人体に無害な材料で安全な水素エネルギーの利用ができる利点がある。次世代の社会においては、完全なゼロエミッションサイクルが可能となり、資源の枯渇もなく、地球温暖化防止にも功を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
既存の軽量合金材のマグネシウム合金組成は、マグネシウム(Mg)が大部分で、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zu)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、など、少量の複数金属が混入した合金であり、水素加圧をした圧力容器内に廃材の塊または破片を入れて、水素加圧下で合金の表面の酸化膜を取り除けば、直接合金と水素を接触させることで、水素化反応が自走して水素化(水素吸蔵)を容易に行うことができる。
【0015】
この水素化は、高圧容器にフランジおよびジャケット並びに温調部を設けた単数または複数の処理容器手段と、前記高圧容器に脱気装置および水素吸蔵放出装置を配した水素充填手段と、前記高圧容器および水素吸蔵放出装置にそれぞれ加熱装置および冷却装置を配した加熱冷却手段と、前記処理容器手段および水素充填手段並びに加熱冷却手段を自動制御する電子制御手段とで構成した処理装置で行う。
【0016】
また、この装置の温調部には、レーザー放射プラグ以外にも電熱線、電熱プラグ、などを選択して設けることによって、材料によって一端を高温加熱して着火をすることで、水素化反応による自己発熱を利用した反応でナノメートル域の金属結晶を含む金属の水素化微粉体が低コストで容易に得られる。
【0017】
軽量構造材の合金塊でも、レーザー特有な超高温の4000℃以上の照射加熱により表面の酸化膜を取り除き、合金と直接水素を接触させて水素化(水素吸蔵)反応を行うことができるので、合金結晶が膨張する水素脆性効果にもより水素化合金の粒子が容易に得られる。この水素化したマグネシウム合金は、マグネシウムの混入率が多いため自体重の7wt%以上の水素を吸蔵することができる。
【0018】
この水素化したマグネシウム合金は、水素発生装置において、水素発生容器内部に水または水溶液を注入することで、マグネシウムの加水分解で発生させる水素ガスと、そのマグネシウムが反応して水酸化マグネシウムに変質することで金属の結晶間に定着している水素原子が開放され、原子2つ同士が結合して水素分子を生成することで発生する水素ガスの双方からの大量の水素ガスを得ることができる。
【0019】
また、水素化物の粒子が、フィルター性の袋に詰めパックにしたことで、サイホン式の水素発生の装置に用いられる場合、パイプを介し落差を持たせた2つの液体容器を設け、下の液体容器内に入れて、容器内で発生する水素ガスの圧力によるサイホン現象を利用して、上の液体容器内に水または水溶液(または電解液)を押し上げて水素発生が自動的に制御される。
【0020】
この場合、フィルターでは水または水溶液(または電解液)および水素気体は通過し、水酸化マグネシウムはろ過されるように内部に留められるため、装置内に流出分散することもなく、パックを入れた籠ごと引き上げれば回収の手間が容易となる。
【0021】
また、このフィルター性の袋でパックにしたことで、水素化物を風呂水、洗浄水、養殖水などに直接投入することで、加水分解による発生水素ガスを直接水に溶解させ還元電位と弱アルカリ性Ph値を与えた機能水の製造材として用いることができる。
【0022】
また、製造されたマグネシウム合金の水素化物の粒子は、電池式の水素発生装置の場合、電池要素の負極の活物質として用い、電池要素によって起電する電流を負荷装置で制御することにより負極の活物質のイオン化および金属反応を制御し、金属の結晶間に定着している水素化物および加水分解からの水素ガスを発生することができる。
【0023】
また、この水素化される金属種は、多くの金属が含まれるため、述べている金属種に限定せず、多くの金属も水素化物の粒子として、フィルター性の袋に詰めパックにして、他にも圧着あるいは結合剤で固めて、金属反応(加水分解)またはイオン化反応(電極活物質)の機能材料として、サイホン式または電池式の水素発生装置で二次利用した後、残った水酸化物を回収して三次利用ができる。
【0024】
ほかにも水素精製の目的で、水素精製膜の場合、マグネシウム合金の水素化粒子は、パイプ状またはシート状に成形して、予め活性化してから装置へ装着することができる。あるいはメタンガスなどを選択吸着させるほか精製や貯蔵をする装置にも応用できる。
【0025】
また、ヒートポンプの目的で、水素化発熱および水素放出吸熱を回収する装置の場合、マグネシウム合金の水素化粒子は、結合材とを混合して固形化し、予め活性化してから装置内または装置内のパイプの内側または外側に詰め込んで装着することができ、あるいは装置内または装置内のパイプの内側または外側、波形プレートの溝内に固形接着することも容易で、大型装置へ装着後に活性化を要しないことから、圧力に対し頑丈な容器である必要がない。
【0026】
また、マグネシウム合金の水素化粒子は、水溶解性や有機溶剤溶解性の高分子の樹脂は、水や有機溶剤によって容易に薄い成膜工程が可能である。比較的低温域で作動する装置では、例えば、化学合成法によって乳酸を重合した水溶解性有機高分子の樹脂である脂肪族ポリエステル系樹脂またはポリオレフィン系の樹脂などを水に分散したエマルジョンタイプを用いることができ、他にも一般の有機高分子の樹脂も使用できる。
【0027】
これらの機能性として、具体的には、装置に装着され運転時間の経過と共に被膜の表面にクラックが生じた場合、高分子機能が低温熱可塑性から運転時の発熱等により被膜の亀裂を自己修復できる。
【0028】
これらの機能性の応用において、マグネシウム合金の水素化粒子の場合、水素貯蔵の目的で水素コンテナや水素貯蔵施設などの大型な水素貯蔵容器の場合でも同様に、被膜化した粒状の様々な金属の水素化粒子と、結合材とを混合して固形化したものを装置内のパイプの内側または外側に詰め込んで装着する場合、被膜化したマグネシウム合金の水素化粒子を、予め活性化してから結合材とを混合して有機溶剤によるペースト化したものを固形化して、装置内のパイプの内側または外側に詰め込んで装着するか、ペースト化したものを波形プレートの溝内に固形接着すると、後から活性化を要しないために大型装置が圧力に対して頑丈な容器である必要がない。
【0029】
また、被膜材に可塑性高分子の樹脂を用いてニッケル水素電池やリチウム金属電池などの電池の電極箔に装着すると、活物質が水素やリチウムの吸蔵および放出による膨縮から微紛化して脱落することが防止でき、負極と正極と分離膜からなる電池要素を接合して絶縁膜で覆って一体化すると、より機能性が高まり電池の長寿命化も実現できる。
【0030】
マグネシウム合金の水素化粒子は、常温水での酸化反応が持続できないことは知られているが、高圧環境で140℃以上の加熱をすれば水との自走酸化反応は可能であって、自然界に存在し人体にも有用な、一般にはにがり(塩化マグネシウム/MgCl)を水溶液(電解液)として用い、排熱などを加熱源とすると常温常圧域で加水分解を行うことができる。
【0031】
この反応は、粒子の局部電池の短絡による自己放電現象から、これを利用して容器内に電池要素を形成すれば起電することができる。電池要素の構成は、例えば、負極の活物質にマグネシウム合金の水素化粒子を装着して、電解質に塩化マグネシウム(MgCl)水溶液(電解液)、高分子固体電解質と、陽極の拡散層には、Ni、Ti系などの金属、合金、金属化合物の粉末、粉末活性炭やグラファイトおよび触媒などをフッ素樹脂に混ぜ合わせたマグネシウム合金の水素化微粉体を電極に装着して酸素、水酸化ニッケル等の複数の活物質を有する電池を構成すると、多価のイオンを含む複数イオンでも単位面積が拡大され界面反応を促進できる拡散層で受け止めることができ、分極抵抗を低減した加水分解を兼ねるマグネシウム電池として機能できる。
【0032】
また、この密閉な電池ではない場合では、電解質に水素ガス流出を遮蔽する機能を持たせる必要から高分子固体電解質のほか毛管現象機能を持つ不織布などとゲル体を併用して電解液を含ませると、水素発生容器内で発生する水素ガスを陽極面の開放部から外部に流出させず水素需要体へ送ることができ、容器の破裂も防止できる。これは、板状電池やボタン電池のように携帯機器の小型化な電池分野へも応用することができる。
【0033】
また、これを密閉型の電池とする場合でも、陽極には水素およびマグネシウム合金の各イオンが受け止められるNi、Ti系などの金属、合金、金属化合物の粉末および触媒など活物質材料を混在させ電池要素を構成すると、単位面積を拡大して界面反応を促進し、多価のイオンを含む複数イオンを受け止めることで分極抵抗を低減した電池として機能できる。
【0034】
また、容器の電池要素で起電した電力を負荷装置へ通電して負荷を流れる電流量を変動させることによって、例えば、負極のマグネシウム合金の水素化粒子のイオン化を増減させると、それに応じて水素化物の表面側から金属結晶が水酸化物に変性する量も比例的となる。このとき、金属の結晶間に定着場所を失った水素原子は、原子の2個が結合して水素分子となるため水素ガスを生成する。この生成量は負荷電流量による反応から水素ガスの発生も電流で制御ができる。
【0035】
また、容器や電池要素のセルを積層して構成すると燃料電池自動車など高電圧で水素消費量の変動も大きい水素需要装置を用いる分野でも水素発生の制御が容易にできる。
【0036】
また、容器を活物質に酸素(O)を用いる二次電池(充放電)として構成する場合は、マグネシウム合金の粉体に可塑性高分子あるいは金属でコーティングし負極に固形装着して、電解液にアルカリ性水溶液または非水溶液等と、陽極の拡散層には水素およびマグネシウム合金の各イオンが受け止められ分極抵抗を回避するために、Ni、Ti系などの金属、合金、金属化合物の粉末、粉末活性炭やグラファイトおよび触媒などをフッ素樹脂に混ぜ合わせた機能物質を装着させると、充放電させることができる。
【0037】
この電池構成の場合、陽極が大気中の酸素を活物質として用いるため正極側では放電できる電気量が制限されず、電気容量を飛躍的に増大させることができるほか、充電に電気または水素の両方を用い供給して充電を行うことができる。
【0038】
また、陽極の活物質が酸素、塩化チオニル、水酸化ニッケル以外にも金属酸化物またはコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等の遷移金属酸化物を用い、電解質と、負極の機能物質に様々な物質が用いられて電池要素を容器内に構成すると、複数イオン(水素イオン、金属イオン、リチウムイオン等)による分極抵抗を回避した複合電池ができる。
【実施例1】
【0039】
図1の実施例によって説明すると、マグネシウム合金の水素化の処理装置1の全体系統線図であって、高圧容器2、脱気装置5、水素吸蔵放出装置6、水素または不活性ガス補給装置9、加熱装置7、冷却装置8のほか、電磁弁12、13、13b、14、14b、減圧調整弁11、熱媒体ポンプ18、19、各センサーを含む制御機器で構成され、金属還元、または金属の水素化粉砕、または機能体の活性化、あるいは水素貯蔵容器の水素充填等が行われている。
【0040】
高圧容器2は、30kg/cm以上の高圧に対応する容器で、側面周囲に熱媒体のジャケット4と、フランジと、電熱線、電熱プラグ、レーザー放射プラグ等必要に応じた器具が取り付けられた温調部が設けられ、金属、水素貯蔵容器などの出し入れをするフランジには、フランジ蓋3を油圧式または電動式で開閉できるように備えられている。
【0041】
また、ジャケット4は、配管して接続される加熱装置7および冷却装置8からの加熱媒体および冷却媒体を配管に接続される電磁弁14、14bが電子制御されることによって、高圧容器2の内容物を、たとえば、脱気行程であれば80℃程度に加熱し、水素加圧行程であれば5℃程度に冷却される。
【0042】
また、ガスソケットは、配管して接続される脱気装置5および水素吸蔵放出装置6からの脱気系統16および水素または不活性ガス系統17の配管に接続される電磁弁13、13bが電子制御されることによって、高圧容器2の内容物を脱気行程であれば脱気装置5の真空ポンプで3Toor程度に真空引きし、水素加圧行程であれば水素吸蔵放出装置6によって30kg/cm以上の水素加圧が行われ、金属還元であれば不要ガスを外気放散する。このように構成した高圧容器2は、単体または複数を設けて運転される。
【0043】
水素吸蔵放出装置6は、積層体の両端の熱媒体ノズルに配管される加熱装置7および冷却装置8からの加熱媒体および冷却媒体を配管に接続される電磁弁14、14bが電子制御されることによって、高圧容器2の内容物が水素加圧を必要とすれば装置内に装着される水素吸蔵材を80℃程度に加熱して水素放出圧30kg/cm以上で水素加圧を行い、逆に高圧容器2の内容物が水素放出をする場合であれば、水素吸蔵材を5℃程度に冷却して水素を吸蔵させる。
【0044】
水素または不活性ガス補給装置9は、水素吸蔵放出装置6へ水素を、あるいは高圧容器2へ水素または不活性ガスを補給するものであり、圧力調整弁11が介されて高圧な水素または不活性ガスのボンベが配されている。
【0045】
電子制御は、温度、圧力などの各センサー値と予め設定された値によって適宜熱媒体のポンプ、電磁弁、油圧機器のポンプなどの電源が電子制御されている。
【0046】
このように装置が構成されたことで、マグネシウム合金の廃材を高圧容器内に入れ高圧水素を導入しておき、マグネシウム合金の廃材表面の酸化膜をレーザー照射によって破壊することで、合金と水素を接触させ水素化(水素吸蔵)反応を利用してマグネシウム合金廃材の金属結晶の膨張から粉砕ができ、特に金属単結晶の微紛体が容易に得られる。あるいは、この処理装置のレーザー放射プラグによって、ガス化分離させて冷却する方法で金属の還元をすることができる。金属還元は、たとえば、高圧容器内に電極を設けておき、酸化マグネシウムなどの粗粒子を入れてレーザー放射プラグによってレーザー照射して酸化マグネシウムを高温加熱してガス化させ、酸素は外気放散させマグネシウムのガスは、内部に設けられる電極によって金属を還元して金属の製錬ができる。
【0047】
この場合、レーザー放射プラグのレーザー源は、太陽光をレンズや反射鏡で直接集光したもの、または太陽電池での光変換、風力変換、バイオマス燃料等を利用して発電した電力によって、必要な波長の電磁波を発生したものを増幅励起して利用されることで再生可能なエネルギーの有効利用も実現する。
【実施例2】
【0048】
既存の流通している軽量合金の主な種類を以下に示す。
【表1】

この平均配合のマグネシウム合金「AM50A」の廃材を用いて、水素化マグネシウム合金の金属反応(加水分解)およびイオン化反応(電極活物質)の検証を説明する。
【0049】
自然に存在する溶質の水溶液による加水分解の最短自走反応実験を試みた。試料は、試料1:水素化マグネシウム合金の粒子の粒径200μm以上1g、試料2:水素化マグネシウム合金の粒子の粒径50μm以下1g、の2種類を用いた。
【0050】
水溶液には、水溶液1:水(H2O)、水溶液2:クエン酸(C6H8O7)8%水溶液、水溶液3:にがり(6水和塩化マグネシウムMgCl2・6H2O)5%水溶液の3種類を用いた。
【0051】
実験方法は、3種類の常温(20℃)水溶液各5ccを、試験管内の試料に注ぎ入れてスタートし、自走反応が遅い場合は、徐々に水溶液を加熱しながら観察および計測をした。
【0052】
試料1の場合、水溶液1:水(H2O)では、まったく反応せず、加熱90℃で粒子表面に少し気泡を確認した。水溶液2:クエン酸(C6H8O7)8%水溶液では、激しく反応し温度上昇とともに2分足らずで反応が終了した。水溶液3:にがり(6水和塩化マグネシウムMgCl2・6H2O)では反応が遅く、加熱とともに反応が早まり90℃で気泡の上昇が確認できた。
【0053】
試料2の場合、水溶液1:水(H2O)では、気泡が確認でき、加熱90℃で気泡の上昇を確認した。水溶液2:クエン酸(C6H8O7)8%水溶液では、激しく反応し温度上昇とともに1.5分足らずで反応が終了した。水溶液3:反応が早く、時間とともに自己発熱で温度が上昇しながら90℃で激しく気泡の上昇が確認できた。
【0054】
水素ガスの最終の収集量は、各水溶液とも同様で、試料1:800cc(マグネシウム重量比8wt%)、試料2:1400cc(マグネシウム重量比14wt%)であった。
【0055】
次いで、陽極の活物質に空気(酸素)を、負極に水素化マグネシウム合金の粒子を用いる電池要素による起電実験を試みた。市販のマグネシウムバッテリーを分解し、負極に装着されているマグネシウムを取り外して、水素化マグネシウム合金の粉末と水溶性の可塑性高分子剤を有機溶剤で解き混ぜ、電極サイズの枠を接続して圧縮しながら加熱して電極箔に固形接着した。
【0056】
その他セパレーター、正極集電体等は製品部材の単セルを用い組み立て、電解液ににがり(6水和塩化マグネシウムMgCl2・6H2O)5%水溶液を用いた。製品の正極集電体では、粉末活性炭やグラファイト、触媒などをフッ素樹脂に混ぜ合わせたものを銅箔に塗って焼成して網状に形成されている。
【0057】
実験の反応式と起電圧の計測値は、正極反応式:2Mg→2Mg2++4e、負極反応式:O+2HO+4e→4OH、全反応式:2Mg+O+2HO→2Mg(OH)↓で、初期の起電圧は、2.7Vである。
【0058】
負極に水素化マグネシウム合金の粒子を用いると、リチウム電池に匹敵する電池が得られる事がわかった。空気とマグネシウムの理論上の起電力は、2.7Vであるが、同時に加水分解の反応(反応式:MgH2+2HO→Mg2++2OH+2H↑)による複数のイオンによる分極抵抗によって次第に低下する。
【0059】
この検証には、一次電池として電解液に塩素系化合物の水溶液を用いて加水分解反応を優先させたが、水素化マグネシウム合金の粒子を用い二次電池として採用する場合は、電解液に水酸化カリウム(KOH)などアルカリ性電解液や有機溶剤を用いるとよい。
【0060】
水素ガス発生量の計測値は、約650cc/g(マグネシウム重量比6wt%)であった。電気量とマグネシウムの減少量は、比例関係にあるので、表2に電気量とマグネシウム合金の廃材の減少量、および負極面積と電流の関係を計測結果からファラデーの法則を用いて割り出した数値のグラフを示す。
【表2】

ファラデーの法則は、理論上の電気量Q(単位はCまたはAs)Q=Fmn/Mで求められる。Fはファラデー定数、mは活物質の質量、Mは活物質の式量、nは反応に関与する電子の数で、電気量は活物質の質量に比例する。
【実施例3】
【0061】
図2、図3を用いて説明する。図2は、マグネシウム合金または水素化マグネシウム合金の粒子をフィルター性のチューブを用いて内部に詰め、両端を加熱ローラーで圧着した圧着部52によって、ソーセージのように袋状にパック50にして、封じ込められている。図3は、サイホン式の水素発生装置100である。
【0062】
サイホン101は、下部に反応容器129を設け容器内部の籠の中に、マグネシウム合金または水素化マグネシウム合金の粒子を入れたパック50が、さらに連通パイプを介して上部に液体容器128を設けて、中に水溶液(電解液)121を入れて構成している。このサイホンの複数が並列にして設けられてサイホン式の水素発生装置100が構成されている。
【0063】
また、それぞれのサイホン内部の液体容器128と反応容器129の間に連通パイプには逆止弁137が設けられ、反応容器129の底部と液体容器128の上部との連通パイプには逆止弁138が設けられ、反応容器129の上部には水素需要体130と連結連通する水素パイプ112が設けられて、サイホン101と同様な101a,101b、101cの複数が並列に接合されて構成されている。水素需要体130とは、水素精製装置、機能水製造装置、水素ポンプ、水素バーナー、水素機関、燃料電池など水素ガスを必要とする機材一切を示す。
【0064】
また、マグネシウム合金または水素化マグネシウム合金の場合、水溶液(電解液)121は、塩化マグネシウム(MgCl)を用いると反応で有害物の発生がなく水酸化物も泥状でなく粗粒子として残るので都合もよく、その他公知の水溶液(電解液)を選択し用い、水素需要体の排熱で加熱して反応を促進することもできる。
【0066】
また、水素化マグネシウム合金は、加水分解と水素化物の双方から大量な水素ガスを発生させるため、水素需要体で生成して回収される水量は、大気放散して減少することを考慮しても、加水分解に必要以上の水量が確保できることから、生成水を再度液体容器内へ循環させると外部から水を補給する必要がない。つまり、飛行機や自動車などの移動体が用いる場合、出発の時に大量な水を搭載する必要がなく、軽量な装置となり都合がよい。
【0067】
このようにサイホン式の水素発生装置が構成された運転の一連動作は、サイホン現象を利用して発生した水素ガスの圧力で水溶液(電解液)121を押し上げ(流出)させて反応を停止しておき、水素ガス利用時には、発生水素ガスを水素需要体130が消費することで圧力が降下し水溶液(電解液)121を落水(流入)させて水溶液(電解液)121とマグネシウム合金または水素化マグネシウム合金との加水分解の反応を開始させ、電子制御装置を必要とせずに水素の発生制御が自動的に行われる。
【0068】
また、反応が終了した場合、残った水酸化物は、そのまま籠ごと引き出し、パックの内部に閉じ込められている水酸化物が回収でき、三次利用の際の手間がかからない。
【0069】
本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、二次および三次の利用にコストを掛けずに用いることで、軽量構造材の製造の低コスト化を可能とする。且つ、自然界に存在する人体に無害な無尽蔵な材料で安全な自然エネルギーをモノに変えて次世代のエネルギー源として、貯蔵・輸送ができる利点がある。また、クリーンなゼロエミッションサイクルが可能となり、資源の枯渇もなく、地球温暖化防止にも功を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施例の全体概念図を示している。(実施例1)
【図2】本発明の一実施例を示している。(実施例3)
【符号の説明】
【0072】
1 処理装置
2 高圧容器
5 脱気装置
6 水素吸蔵放出装置
7 加熱装置
50 パック
52 圧着部
100 水素発生装置
128 液体容器
129 反応容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量構造材として一次利用された軽量合金廃材の塊または破片を用い、高圧容器内に入れて水素加圧下でレーザーによって表面の酸化膜を破壊し合金表面を水素に接触させ、水素化反応によって水素を吸蔵させることで粉砕した水素化物の粒子を生成した後、水素化物の粒子はフィルター性の袋に詰めパックにして、または、圧着あるいは結合剤で固めて、金属反応(加水分解)またはイオン化反応(電極活物質)の機能材料として、サイホン式または電池式の水素発生装置で二次利用した後、残った水酸化物を回収し、三次利用をする軽量合金の廃材利用方法。
【請求項2】
前記軽量合金材は、マグネシウム(Mg)を主に、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zu)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、など、いずれか一種類以上の複数種類で合金された材料であり、塊または破片あるいは粉体または粉体を固形化したものであることを特徴とする請求項1記載の軽量合金の廃材。
【請求項3】
前記サイホン式の水素発生は、パイプを介し落差を持たせた2つの液体容器を設け、下の液体容器内に軽量合金またはその水素化物の粒子を入れて、容器内で発生する水素ガスの圧力によるサイホン現象を利用して、上の液体容器内に水または水溶液(または電解液)を押し上げて用いることを特徴とする請求項1、2記載の二次利用する軽量合金の廃材。
【請求項4】
前記電池式の水素発生は、電池要素の負極の活物質として軽量合金またはその水素化物の粒子を用い、電池要素によって起電する電流を負荷装置で制御することにより負極の機能物質のイオン化および金属反応を制御し、金属の結晶間に定着している水素化物および加水分解からの水素ガスの発生量を制御することを特徴とする請求項1、2、3記載の二次利用する軽量合金の廃材。
【請求項5】
前記水素化反応は、耐圧容器にフランジおよびジャケット並びに温調部を設けた単数または複数の処理容器手段と、前記耐圧容器に脱気装置および水素吸蔵放出装置を配した水素充填手段と、前記耐圧容器および水素吸蔵放出装置にそれぞれ加熱装置および冷却装置を配した加熱冷却手段と、前記処理容器手段および水素充填手段並びに加熱冷却手段を自動制御する電子制御手段とで構成した処理装置で水素化されたことを特徴とする請求の範囲1、2、3、4記載の水素化物。
【請求項6】
水素化物の粒子は、次の(1)〜(6)のいずれかの目的に用いられることを特徴とする請求の範囲1、2、3、4、5いずれか記載の水素化物の粒子。
(1)成形品または塗装材あるいは被覆材あるいは注入剤で消臭、環境改善等の触媒の目的であり、水素化物の粒子を分散させたもの。
(2)機能水製造目的であり、水素化物の粒子を洗浄、医療、美容、養殖等の目的で、利用装置に充填したもの。
(3)自然エネルギーの貯蔵・運搬目的であり、水素化物の粒子を防水された容器または袋に不活性で密封にして保存されたもの。
(4)物質の精製または貯蔵(吸着・吸蔵)あるいはヒートポンプまたは水素加圧の目的であり、各々装置内等に用いられるもの。
(5)二次電池の電極の目的であり、機能物質を用いた電極による電池要素を接合して一体化で形成されるもの。
(6)燃料電池または水電解装置の目的であり、MEA(膜−電極接合体)の膜層または電極等の電池要素に用いるもの。
【請求項7】
二次利用後の水素化物の粒子は、水酸化物として、各種の工業原料/触媒、土壌/海水の改良材料、蓄熱の材料、胃腸薬として三次利用されることを特徴とする請求の範囲1、2、3、4,5,6記載の水素化物の粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−17700(P2010−17700A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207467(P2008−207467)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000126137)株式会社テクノバンク (5)
【Fターム(参考)】