説明

軽量気泡コンクリートの製造方法

【課題】圧縮強度および断熱性能の少なくとも一方を向上させた軽量気泡コンクリートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、珪酸質原料および石灰質原料を含む原料スラリー中に気泡を内在させた状態で半硬化体を形成したのち、その半硬化体をオートクレーブ養生して得られる軽量気泡コンクリートの製造方法である。本発明は、起泡剤を用いることにより気泡を含む気泡液を作製する気泡液作製工程と、珪酸質原料および石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えて攪拌してなる第1のスラリーに、気泡液作製工程で作製した気泡液を添加して攪拌した後、アルミニウム粉末を混入して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る工程と、原料スラリーを型内に打設する工程と、を実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量気泡コンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリート(ALC)の製造方法としては、珪酸質原料及び石灰質原料を含む主原料に起泡剤を用いて作製した気泡を導入する工程を経てALCを製造する方法(たとえば特許文献1および2を参照:プレフォーム法)や、珪酸質原料及び石灰質原料を含む主原料とともにアルミニウム粉末を発泡剤として用いることによりALCを製造する方法(アルミ発泡法)などが知られている。
【0003】
プレフォーム法により製造したALCは、アルミ発泡法により製造したALCよりも気泡径の小さい独立気泡が内在するため高い断熱性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−42565号公報
【特許文献2】特開平7−69754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プレフォーム法では上述したように微細な気泡が形成されるので、半硬化体をオートクレーブ養生する際に蒸気が半硬化体の内部の深いところまで浸透し難い。そのため、プレフォーム法によりALCを作製する場合には、養生時間を長くしないと、製品の内部に亀裂が生じたり、養生不足によりトバモライトの生成が悪くなり、圧縮強度が低下するだけでなく断熱性も低下してしまうという問題があった。
【0006】
オートクレーブ養生に要する時間を短縮する方法としては、アルミニウム粉末を発泡剤として用いるALCの製造方法において、高温高圧蒸気養生に先だって、釜内部を大気圧以下に減圧(以下「真空引き」という)して、予め気泡内の余剰水分や気体を除去することが知られている。しかしながら、プレフォーム法において、高温高圧蒸気養生に先立ち真空引きを行うと、プレフォーム法により作製した半硬化体中に形成された微細な気泡は密閉性が高いため、外部からの真空引きの圧力により気泡が破裂して半硬化体に亀裂が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、圧縮強度および断熱性能の少なくとも一方を向上させた軽量気泡コンクリートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、起泡剤とアルミニウム粉末(発泡剤)とを用いて作製した気泡を内在させた半硬化体を用いることにより、圧縮強度および断熱性能の少なくとも一方を向上させたALCが得られるという知見を得た。本発明は、かかる新規な知見にもとづくものである。
【0009】
すなわち、本発明は、珪酸質原料および石灰質原料を含む原料スラリー中に気泡を内在させた状態で半硬化体を形成したのち、その半硬化体をオートクレーブ養生して得られる軽量気泡コンクリートの製造方法であって、起泡剤を用いることにより気泡を含む気泡液を作製する気泡液作製工程と、前記珪酸質原料および前記石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えて攪拌してなる第1のスラリーに、前記気泡液作製工程で作製した気泡液を添加して攪拌した後、アルミニウム粉末を混入して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る工程と、前記原料スラリーを型内に打設する工程と、を実行することを特徴とする軽量気泡コンクリートの製造方法ところに特徴を有する。
【0010】
また、本発明は、珪酸質原料および石灰質原料を含む原料スラリー中に気泡を内在させた状態で半硬化体を形成したのち、その半硬化体をオートクレーブ養生して得られる軽量気泡コンクリートの製造方法であって、前記珪酸質原料および前記石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えるとともに、起泡剤を添加し攪拌した後、アルミニウム粉末を添加して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る工程と、前記原料スラリーを型内に打設する工程と、を実行するところに特徴を有する。
【0011】
本発明のALCの製造方法においては、起泡剤とアルミニウム粉末とを使用して作製した原料スラリーを打設して半硬化体を作製する。当該半硬化体中には、起泡剤の使用に起因すると考えられる気泡(気泡径が小さく、密閉性が高い気泡)、ならびに、アルミニウム粉末の使用に起因すると考えられる気泡(気泡径が大きく、連通性がある気泡)および毛細管空隙が生成される。
【0012】
その結果、本発明の方法によれば、オートクレーブ養生の際の蒸気の浸透性が向上してトバモライトの生成が促進されるので生産性が向上するうえに、圧縮強度および断熱性能の少なくとも一方を向上させたALCが得られる。なお、本発明の方法において作製した半硬化体を、仮に、オートクレーブ養生の前に真空引きしたとしても、気泡自体が破裂し難くなるので半硬化体の爆裂を防止することができる。
【0013】
本発明は以下の構成とするのが好ましい。
前記固形成分100質量部に対して、前記起泡剤を0.05質量部以下、および前記アルミニウム粉末を0.09質量部以下添加すると、圧縮強度および断熱性能をともに向上させたALCを得ることができる。
【0014】
前記気泡液に増粘剤を混合すると、増粘剤が作用して起泡剤により生成した気泡の周りに膜ができ、これにより気泡を壊れにくくするとともに、気泡の合体を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧縮強度および断熱性能の少なくとも一方を向上させた軽量気泡コンクリートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造方法により作製したALCのマイクロスコープ写真
【図2】従来の製造方法により作製したALCのマイクロスコープ写真
【図3】従来の製造方法により作製したALCのマイクロスコープ写真
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、珪酸質原料および石灰質原料を含む原料スラリー中に気泡を内在させた状態で半硬化体を形成したのち、その半硬化体をオートクレーブ養生して得られる軽量気泡コンクリート(ALC)の製造方法である。
【0018】
本発明は、起泡剤とアルミニウム粉末とを使用して作製した原料スラリーを打設して半硬化体を作製するところに特徴を有する。本発明のALCの製造方法としては、以下の2つの方法があげられる。
【0019】
本発明の第1の方法は、起泡剤を用いることにより気泡を含む気泡液を作製する気泡液作製工程と、珪酸質原料および前記石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えて攪拌してなる第1のスラリーに、気泡液作製工程で作製した気泡液を添加して攪拌した後、アルミニウム粉末を混入して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る工程と、原料スラリーを型内に打設する工程と、を実行することにより得られる半硬化体をオートクレーブ養生してALCを製造する方法である。
【0020】
本発明の第2の方法は、珪酸質原料および石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えるとともに、起泡剤を添加して攪拌した後、アルミニウム粉末を添加して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る工程と、原料スラリーを型内に打設する工程と、を実行することにより得られる半硬化体をオートクレーブ養生してALCを製造する方法である。
以下、第1の方法および第2の方法について、それぞれ、具体的に説明する。
【0021】
(第1の方法)
珪酸質原料および石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えて攪拌して第1のスラリーを作製する工程(第1のスラリー作製工程)を実行する。
第1のスラリーの材料である珪酸質原料としては、珪石、珪砂、スラグ、フライアッシュなどのSiOを含む原料として公知のものの粉末または粒状物を一種類または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
石灰質原料としては、生石灰、消石灰、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、その他の各種ポルトランドセメント等の粉末または粒状物を一種類または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
第1のスラリーの材料としては、珪酸質原料、石灰質原料以外に、石膏、補強用繊維、繰り返し原料(原料スラリーを発泡硬化させて得られる半硬化体を、ピアノ線で切断した際に発生する不要な部分)や、不要となったALCの粉末(半硬化体を養生して得られるALCを切断した際に発生する不要な部分)を用いてもよい。これらの材料を用いると、原料スラリーの発泡が安定する上に、原料費を節約できるので、好ましい。
また、第1のスラリーの材料としては上記固形成分や水以外に、整泡剤や減水剤などを用いることができる。
第1のスラリーは、上記固形成分に所定量の水(水の量については後述する)を加えて攪拌することにより得られる。
【0024】
第1のスラリー作製工程の前後、または第1のスラリー作製工程と同時に、起泡剤を用いて気泡を含む気泡液を作製する工程(気泡液作製工程)を実行する。起泡剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、高級アルコール硫酸塩、タンパク系化合物等を用いることができる。
【0025】
気泡液作製工程においては、起泡剤と必要に応じて水を用いて、公知の気泡発生装置により気泡を発生させ気泡を含む気泡液を作製する。気泡液には増粘剤を混入してもよい。増粘剤が作用して気泡液中の気泡の周りに膜ができ、これにより気泡を壊れにくくするとともに、気泡の合体を防止することができる。
【0026】
第1のスラリー作製工程および気泡液作製工程において使用する水の総量は、全固形成分(珪酸質原料、石灰質原料、アルミニウム粉末、および石膏などの固形成分)100質量部に対して、50〜90質量部とするのが好ましい。
【0027】
次に、第1のスラリー作製工程で得られた第1のスラリーに、気泡液作製工程により得られた気泡液を添加して攪拌した後、アルミニウム粉末を混入して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る工程を実行する(原料スラリー作製工程)。
アルミニウム粉末としては、一般的なALCの製造に用いられるものを用いることができる。
【0028】
原料スラリー作製工程において、全固形成分100質量部に対して、起泡剤を0.05質量部以下添加するとともに、アルミニウム粉末を0.09質量部以下添加するのが好ましい。起泡剤およびアルミニウム粉末の添加量を上述の範囲とすると、アルミ発泡法やプレフォーム法だけで製造された同密度のALCに比べて圧縮強度と熱伝導性をともに向上させたALCが得られるからである。
【0029】
次に、原料スラリー作製工程を経て得られた原料スラリーを所定形状の型内に打設する工程(打設工程)を実行する。
打設工程を実行した後、発泡が完了し高さが変わらなくなり、かつ、ハンドリングが可能となるまで、原料スラリーを半硬化養生させることにより半硬化体を作製する(半硬化体作製工程)。
【0030】
次に、半硬化体を、180℃〜190℃、0.9MPa〜1.2MPaで4時間〜24時間オートクレーブ養生する(オートクレーブ養生工程)。なお、本発明の製造方法においては必ずしも必要ではないが、オートクレーブ工程に先だって、真空引き(30分〜120分、0.001MPa〜0.004MPa)を行ってもよい。真空引きにより生産性が向上する。
【0031】
オートクレーブ養生工程を経た後、本発明のALCが得られる。
本発明の第1の方法によれば、気泡液を第1のスラリーとは別に作製してから攪拌するので、気泡作製時間が短くてすむ。
【0032】
(第2の方法)
まず、珪酸質原料および石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えるとともに、起泡剤を添加して攪拌した後、アルミニウム粉末を添加して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る(原料スラリー作製工程)。
珪酸質原料、石灰質原料、起泡剤、アルミニウム粉末としては、それぞれ、第1の方法と同様のものを用いることができる。
【0033】
固形成分としては、珪酸質原料および石灰質原料以外に、石膏、補強用繊維、繰り返し原料(原料スラリーを発泡硬化させて得られる半硬化体を、ピアノ線で切断した際に発生する不要な部分)や、不要となったALCの粉末(半硬化体を養生して得られるALCを切断した際に発生する不要な部分)を用いてもよい。これらの材料を用いると、原料スラリーの発泡が安定する上に、原料費を節約できるので、好ましい。また、原料スラリーの材料としては上記固形成分や水以外に、整泡剤や減水剤などを用いることができる。
【0034】
固形成分に対して加える水の量は、全固形成分(珪酸質原料、石灰質原料、アルミニウム粉末、および石膏などの固形成分)100質量部に対して50〜90質量部である。
【0035】
原料スラリー作製工程における、起泡剤およびアルミニウム粉末の添加量は、全固形成分100質量部に対して、起泡剤を0.05質量部以下添加するとともに、アルミニウム粉末を0.09質量部以下添加するのが好ましい。起泡剤およびアルミニウム粉末の添加量を上述の範囲とすると、圧縮強度と断熱性能をともに向上させたALCが得られるからである。
【0036】
次に、原料スラリー作製工程を経て得られた原料スラリーを所定形状の型内に打設する工程(打設工程)を実行する。
【0037】
打設工程を実行した後、発泡が完了し高さが変わらなくなり、かつ、ハンドリングが可能となるまで、原料スラリーを半硬化養生させることにより半硬化体を作製する(半硬化体作製工程)。
【0038】
次に、半硬化体を、180℃〜190℃、0.9MPa〜1.2MPaで4時間〜24時間オートクレーブ養生する(オートクレーブ養生工程)。なお、本発明の製造方法においては必ずしも必要ではないが、オートクレーブ工程に先だって、真空引き(30分〜120分、0.001MPa〜0.004MPa)を行ってもよい。真空引きにより生産性が向上する。
【0039】
オートクレーブ養生工程を経た後、本発明のALCが得られる。
本発明の第2の方法においては、起泡剤は原料スラリーの材料に混合されるので、気泡発生装置を必要とせず設備費がかからない。
【0040】
<実施例>
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。本発明の製造方法および比較の製造方法により、種々の密度のALCを作製し、評価試験を行った。
(1)本発明の製造方法(第2の方法)によるALCの作製
[実施例1:第2の方法による密度0.30×10(kg/m)のALCの作製]
ミキサー中に、5質量部の石膏と、繰り返し原料(実施例1に対応する半硬化体の切断の際に発生する不要部分)を水と混合してスラリーとしたもの(固形成分20質量部)と、60質量部の水と、を入れた後、起泡剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)を、有効固形分換算で0.0039質量部添加し、3分間攪拌することにより起泡させ一次スラリーを得た。
【0041】
この一次スラリーに、珪石粉末45質量部、生石灰粉末10質量部、セメント20質量部およびアルミニウム粉末0.1256質量部を加えて1分間混合することにより原料スラリーを得た。
次に、原料スラリーを型枠に打設して、発泡・硬化させ半硬化体を作製した。発泡が完了し高さが変わらなくなり、かつ、ハンドリングが可能となったところで、型枠から脱型した半硬化体を、ピアノ線で所定形状に切断した。
【0042】
次に、半硬化体をオートクレーブで、30分間、0.002MPaの条件で真空引きした後、1.024MPa(10気圧)、180℃で、4時間の養生を行うことにより、密度が0.30×10(kg/m)の本発明のALC(実施例1のALC)を得た。
【0043】
[実施例2〜97]
繰り返し原料として、その実施例に対応する半硬化体の切断の際に発生する不要部分を水で溶かして用い、起泡剤およびアルミニウム粉末を、表1、表2および表3の該当箇所に記載した量で用い、かつ、表1〜表3に記載の密度となるようにALCを作製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜97のALCをそれぞれ作製した。表1〜表3に記載の起泡剤の量は、有効固形分に換算した量である。
【0044】
(2)本発明の製造方法(第1の方法)によるALCの作製
[実施例98:第1の方法による密度0.30×10(kg/m)のALCの作製]
ミキサー中に、5質量部の石膏と、繰り返し原料(実施例1に対応する半硬化体の切断の際に発生する不要部分)を水と混合してスラリーとしたもの(固形成分20質量部)と、60質量部の水と、を入れて混合攪拌した後、珪石粉末45質量部、生石灰粉末10質量部、セメント20質量部を加えて1分間混合することにより第1のスラリーを得た。
【0045】
この第1のスラリーに、起泡剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩水溶液)を使用して気泡発生装置で気泡を含む気泡液を作製して、有効固形分換算で0.0078質量部の起泡剤に相当する量の気泡液を注入して二次スラリーを得た。
この二次スラリーにアルミニウム粉末0.1190質量部を添加し、1分間攪拌混合することにより原料スラリーを得た。
【0046】
次に、原料スラリーを型枠に打設して、発泡・硬化させ半硬化体を作製した。発泡が完了し高さが変わらなくなり、かつ、ハンドリングが可能となったところで、型枠から脱型した半硬化体を、ピアノ線で所定形状に切断した。
【0047】
次に、半硬化体をオートクレーブで、30分間、0.002MPaの条件で真空引きした後、1.024MPa(10気圧)、180℃で、4時間の養生を行うことにより、密度が0.30×10(kg/m)本発明のALC(実施例98のALC)を得た。
【0048】
[実施例99〜112]
繰り返し原料として、その実施例に対応する半硬化体の切断の際に発生する不要部分を水で溶かして用い、起泡剤およびアルミニウム粉末を、表4の該当箇所に記載した量で用い、かつ、表4に記載の密度となるようにALCを作製したこと以外は実施例98と同様にして、実施例99〜112のALCをそれぞれ作製した。表4に記載の起泡剤の量は、有効固形分に換算した量である。
【0049】
(3)比較の製造方法によるALCの作製
[比較例1:アルミ発泡法による密度0.30×10(kg/m)のALCの作製]
ミキサー中に、5質量部の石膏と、繰り返し原料(比較例1に対応する半硬化体の切断の際に発生する不要部分)を水と混合してスラリーとしたもの(固形成分20質量部)と、60質量部の水と、を入れた後3分間攪拌することにより一次スラリーを得た。
【0050】
この一次スラリーに、珪石粉末45質量部、生石灰粉末10質量部、セメント20質量部およびアルミニウム粉末0.1322質量部を加えて1分間混合することにより原料スラリーを得た。
【0051】
次に、原料スラリーを型枠に打設して、発泡・硬化させ半硬化体を作製した。発泡が完了し高さが変わらなり、かつ、ハンドリングが可能となったところで、型枠から脱型した半硬化体を、ピアノ線で所定形状に切断した。
【0052】
次に、半硬化体をオートクレーブで、30分間、0.002MPaの条件で真空引きした後、1.024MPa(10気圧)、180℃で、4時間の養生を行うことにより、密度が0.30×10(kg/m)の比較例1のALCを得た。
【0053】
[比較例3,5,7,9,11,13,15,17:アルミ発泡法による種々の密度のALCの作製]
繰り返し原料として、その比較例に対応する半硬化体の切断の際に発生する不要部分を水で溶かして用い、アルミニウム粉末を、表1〜表4の該当箇所に記載した量で用い、かつ、表1〜表4に記載の密度となるようにALCを作製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例3,5,7,9,11,13,15,17のALCをそれぞれ作製した。
【0054】
[比較例2:起泡剤を用いた方法による密度0.30×10(kg/m)のALCの作製]
ミキサー中に、5質量部の石膏と、繰り返し原料(比較例2に対応する半硬化体の切断の際に発生する不要部分)を水と混合してスラリーとしたもの(固形成分20質量部)と、60質量部の水と、を入れた後、起泡剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)を、有効固形分換算で0.0778質量部添加し、3分間攪拌することにより起泡させ一次スラリーを得た。
【0055】
この一次スラリーに、珪石粉末45質量部、生石灰粉末10質量部、セメント20質量部を加えて1分間混合することにより原料スラリーを得た。
【0056】
次に、原料スラリーを型枠に打設して、発泡・硬化させ半硬化体を作製した。発泡が完了し高さが変わらなくなり、かつ、ハンドリングが可能となったところで、型枠から脱型した半硬化体を、ピアノ線で所定形状に切断した。
【0057】
次に、半硬化体をオートクレーブで、30分間、0.002MPaの条件で真空引きした後、1.024MPa(10気圧)、180℃で、4時間の養生を行うことにより、密度が0.30×10(kg/m)の比較例2のALCを得た。
【0058】
[比較例4,6,8,10,12,14,16,18:起泡剤を用いた方法による種々の密度のALCの作製]
繰り返し原料として、その比較例に対応する半硬化体の切断の際に発生する不要部分を水で溶かして用い、起泡剤を、表1〜表4の該当箇所に記載した量で用い、かつ、表1〜表4に記載の密度となるようにALCを作製したこと以外は比較例2と同様にして、比較例4,6,8,10,12,14,16,18のALCをそれぞれ作製した。表1〜表4に記載の起泡剤の量は、有効固形分に換算した量である。
(4)評価試験
実施例1〜112のALC及び比較例1〜18のALCについて以下の評価試験を行った。
(評価試験1:ALCの破断面の観察)
実施例1〜112のALCおよび比較例1〜18のALCの一部をそれぞれ、破断してその破断面をマイクロスコープ[キーエンス(株)製、品番VHV−100]を用いて、25倍〜40倍の倍率で観察した。ここで、切断面ではなく破断面を観察するのは、気泡および亀裂がカッターの刃でつぶされると亀裂を発見し難くなるからである。
【0059】
実施例1〜10、実施例12〜21、実施例23〜32、実施例34〜43、実施例45〜54、実施例56〜65、実施例67〜76、実施例78〜87、実施例89〜96、実施例98〜112については亀裂は発見されなかった(図1を参照)が、実施例11、実施例22、実施例33、実施例44、実施例55、実施例66、実施例77、実施例88、実施例97については幅が0.01mm未満の微細な亀裂が発見された。
アルミ発泡法により製造したALC(比較例1、比較例3、比較例5、比較例7、比較例9、比較例11、比較例13、比較例15、比較例17)については、亀裂は発見されなかった(図2を参照)。
起泡剤を用いた方法により製造したALC(比較例2、比較例4、比較例6、比較例8、比較例10、比較例12、比較例14、比較例16、比較例18)については、明瞭な亀裂(幅が0.01mm以上0.1mm以下)が発見された(図3を参照)。
【0060】
本発明の方法で作製したALCの破断面、比較の方法により作製したALCの破断面を比較した。図1のマイクロスコープ写真は、実施例50のALCの破断面を撮影したものであり、図2のマイクロスコープ写真は、アルミ発泡法により作製した比較例9のALCの破断面を撮影したものであり、図3のマイクロスコープ写真は、起泡剤を用いて作製した比較例10のALCの破断面を撮影したものである。
【0061】
図3に示す比較例10のALCには明瞭な亀裂Kの発生が認められたが、本発明の製造方法により作製した実施例50のALCには図1からも明らかなように、亀裂の発生が認められなかった。
【0062】
また、本発明の製造方法により作製したALCには、図2に示すALCに生じる気泡Aと同程度の大きさの気泡1Aと、図3に示すALCに生じる気泡Bと同程度の大きさの気泡と1Bが生成するとともに、連通性がある気泡2も認められた。
【0063】
(評価試験2:熱伝導率)
実施例1〜112のALCおよび比較例1〜18のALCから、縦200mm、横200mm、厚さ20mmの直方体状の試験片を切断し、この直方体状の試験片の熱伝導率を、JIS A 1412の熱流量計法に準拠して、測定温度20℃で測定し、測定値(W/mk)を表1〜表4に示した。測定機器としては、平板熱流法熱伝導率測定装置[英弘精機(株)製、オートΛHC−072]を用いた。
【0064】
各ALCの熱伝導率の測定値を、同じ密度の比較例品であって起泡剤を用いた方法により作製したALCの熱伝導率で除して熱伝導率比を算出し、この熱伝導率比の逆数を表1〜表4に示した。
【0065】
各実施例の熱伝導率比は以下の式により算出した。
実施例1〜11、実施例98〜100の熱伝導率比=各測定値/比較例2の測定値
実施例12〜22の熱伝導率比=各測定値/比較例4の測定値
実施例23〜33、実施例101〜103の熱伝導率比=各測定値/比較例6の測定値
実施例34〜44の熱伝導率比=各測定値/比較例8の測定値
実施例45〜55、実施例104〜106の熱伝導率比=各測定値/比較例10の測定値
実施例56〜66の熱伝導率比=各測定値/比較例12の測定値
実施例67〜77、実施例107〜109の熱伝導率比=各測定値/比較例14の測定値
実施例78〜88の熱伝導率比=各測定値/比較例16の測定値
実施例89〜97、実施例110〜112の熱伝導率比=各測定値/比較例18の測定値
【0066】
熱伝導率比の逆数(表に記載の数値)が大きければ断熱性能が優れていることを意味する。熱伝導率比の逆数が1以上であれば、断熱性能が向上したと判断した。
【0067】
(評価試験3:圧縮強度)
実施例1〜112のALCおよび比較例1〜18のALCの中心部から、縦100mm、横100mm、高さ100mmの立方体状の試験片を切り出し、この立方体状の試験片の圧縮強度を、JIS A 5416に準拠して測定し測定値を表1〜表4に示した。測定機器としてはアムスラ―万能試験機[(株)東京試験機製作所製)を用いた。
【0068】
各ALCの圧縮強度の測定値(N/mm)を、同じ密度の比較例品であってアルミ発泡法により作製したALCの圧縮強度で除して算出した圧縮強度比を、表1〜表4に示した。
【0069】
各実施例の圧縮強度比は以下の式により算出した。
実施例1〜11、実施例98〜100の圧縮強度比=各測定値/比較例1の測定値
実施例12〜22の圧縮強度比=各測定値/比較例3の測定値
実施例23〜33、実施例101〜103の圧縮強度比=各測定値/比較例5の測定値
実施例34〜44の圧縮強度比=各測定値/比較例7の測定値
実施例45〜55、実施例104〜106の圧縮強度比=各測定値/比較例9の測定値
実施例56〜66の圧縮強度比=各測定値/比較例11の測定値
実施例67〜77、実施例107〜109の圧縮強度比=各測定値/比較例13の測定値
実施例78〜88の圧縮強度比=各測定値/比較例15の測定値
実施例89〜97、実施例110〜112の圧縮強度比=各測定値/比較例17の測定値
【0070】
圧縮強度比の数値が大きければ圧縮強度が優れていることを意味する。圧縮強度比が1以上であれば、圧縮強度が向上したと判断した。
【0071】
圧縮強度測定後の試験片を105℃の乾燥炉に48時間入れて絶乾状態とし、そのときの質量と体積とを測定し、これらの値から密度(kg/m)を算出して、所定の密度であるかどうか確認した。その結果、すべてのALCにおいて、表1〜表4に記載の密度のものが得られていた。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
(考察)
実施例4〜11、実施例14〜22、実施例24〜33、実施例35〜55、実施例57〜66、実施例68〜88、実施例79〜97、実施例99〜112のALCは、起泡剤を用いた方法により作製した同密度のALC以上の断熱性能を有しており、これらのALCでは、断熱性能が向上したといえる。
また、実施例1〜7、実施例12〜21、実施例23〜31、実施例34〜42、実施例45〜53、実施例56〜64、実施例67〜74、実施例78〜84、実施例89〜93、実施例98〜99、実施例101〜102、実施例104〜105、実施例107〜108、実施例110〜111のALCは、アルミ発泡法により作製した同密度のALC以上の圧縮強度を有しており、これらのALCでは圧縮強度が向上したといえる。
以上より、本発明によれば、圧縮強度および断熱性能の少なくとも一方を向上させたALCを提供することができるということがわかった。
【0077】
なお、実施例1〜3、実施例12〜13、実施例23、実施例34、実施例56、実施例67、実施例78、実施例98のALCは、起泡剤を用いた方法により作製した同密度のALCよりは断熱性能は劣るものの、アルミ発泡法により作製した同密度のALC以上の断熱性能を有していた。
また、実施例8〜11、実施例22、実施例32〜33、実施例43〜44、実施例54〜55、実施例65〜66、実施例75〜77、実施例85〜88、実施例95〜97、実施例100、実施例103、実施例106、実施例109、実施例112のALCは、アルミ発泡法により作製した同密度のALCよりは圧縮強度は劣るものの、起泡剤を用いた方法により作製した同密度のALC以上の圧縮強度を有していた。
これらの結果から、本発明によれば、アルミニウム粉末のみを用いて作製した同密度のALCよりも断熱性能が向上し、起泡剤のみを用いて作製した同密度のALCよりも圧縮強度が向上するということがわかった。
【0078】
実施例品のうち、実施例4〜7、実施例14〜21、実施例24〜31、実施例35〜42、実施例45〜53、実施例57〜64、実施例68〜74、実施例79〜84、実施例89〜94、実施例99、実施例101〜102、実施例104〜105、実施例107〜108、実施例110〜111のALCでは、断熱性能と圧縮強度がともに向上した。
この結果から、本発明では、固形成分100質量部に対して、起泡剤を固形分換算で0.05質量部以下、およびアルミニウム粉末を0.09質量部以下添加すると、断熱性能と圧縮強度をともに向上することが可能であるということが分かった。
【符号の説明】
【0079】
1A,1B…気泡
2…連通性がある気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸質原料および石灰質原料を含む原料スラリー中に気泡を内在させた状態で半硬化体を形成したのち、その半硬化体をオートクレーブ養生して得られる軽量気泡コンクリートの製造方法であって、
起泡剤を用いることにより気泡を含む気泡液を作製する気泡液作製工程と、
前記珪酸質原料および前記石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えて攪拌してなる第1のスラリーに、前記気泡液作製工程で作製した気泡液を添加して攪拌した後、アルミニウム粉末を混入して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る工程と、
前記原料スラリーを型内に打設する工程と、を実行することを特徴とする軽量気泡コンクリートの製造方法。
【請求項2】
珪酸質原料および石灰質原料を含む原料スラリー中に気泡を内在させた状態で半硬化体を形成したのち、その半硬化体をオートクレーブ養生して得られる軽量気泡コンクリートの製造方法であって、
前記珪酸質原料および前記石灰質原料を含む固形成分に対して水を加えるとともに、起泡剤を添加し攪拌した後、アルミニウム粉末を添加して攪拌することにより気泡を内在した原料スラリーを得る工程と、
前記原料スラリーを型内に打設する工程と、を実行することを特徴とする軽量気泡コンクリートの製造方法。
【請求項3】
前記固形成分100質量部に対して、前記起泡剤を0.05質量部以下、および前記アルミニウム粉末を0.09質量部以下添加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軽量気泡コンクリートの製造方法。
【請求項4】
前記気泡液に増粘剤を混合することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の軽量気泡コンクリートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201752(P2011−201752A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72930(P2010−72930)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000185949)クリオン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】