説明

輝度調整回路及び液晶表示装置

【課題】輝度ムラを解消すための、記憶手段の記憶容量を削減しつつ、高速な演算装置を必要としない安価な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の輝度調整回路100は、m(2以上の整数)ビット階調表示可能な表示パネルの、映像信号が入力されるライン毎に予め設定されたn(1以上、且つm>nの関係を満たす整数)ビットの輝度調整用データを記憶しているメモリ102と、mビット階調の映像信号に含まれる表示パネルの入力ライン情報に対応付けられたnビットの輝度調整用データを上記メモリ102から読み出して、上記映像信号の階調数を(m+L:n≧L>1)ビットに拡張し、拡張した(m+L)ビット階調の映像信号から、上記輝度調整用データによって予め決まったmビット分の階調データを選択し、mビット階調の映像信号として上記表示パネルに出力する色階調拡張回路101とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルの輝度ムラを調整する輝度調整回路及び液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置の薄型化・大型化が進み、その需要が増加している。それに伴って、今まで以上に高品質な表示性能が求められるようになってきている。
【0003】
ところが、液晶表示装置に備えられる液晶パネルは、生産時の何らかの要因により、表示領域に輝度ムラが発生し、表示品位を低下させている。特に、液晶パネルにおいて、スジ状に発生した輝度ムラは目立ちやすく、このスジ状の輝度ムラによって表示品位を著しく低下させている。
【0004】
例えば図9に示すように、TFTパネル500の表示領域501において、矢印Y方向(ソースラインに沿う方向)に一様に輝度値が基準輝度値よりも小さい、あるいは大きい領域501aがスジ状に存在する。このような、輝度値が周囲と異なるスジ状の領域を、以下、輝度ムラ501aとする。ここで、基準輝度値とは、TFTパネル全面を同一階調で表示した場合に得られる輝度値とする。
【0005】
上記輝度ムラを解消するために、通常、液晶パネルに入力される映像信号の輝度値を調整している。例えば、あるソースラインに対応する領域の輝度値が基準輝度値よりも小さければ、その領域は周囲よりも暗いと判断し、そのソースラインに入力される映像信号の輝度値が大きくなるように調整し、逆に、ソースラインに対応する領域の輝度値が基準輝度値よりも大きければ、その領域は周囲よりも明るいと判断し、そのソースラインに入力される映像信号の輝度値が小さくなるように調整する。具体的には、ソースライン毎に対応する領域の輝度値に応じて、各ソースラインに入力される映像信号の階調データを変換することで、輝度ムラを解消するようにしている。
【0006】
ところで、上記輝度ムラは、液晶パネル毎に発生する領域が異なるので、液晶パネル毎に、上記の階調データ変換用データ(以下、輝度調整用データと称する)をソースライン分だけ用意し、それぞれのパネルに記憶させておく必要がある。もしくは、ある数量のパネルに対して平均値を算出し、対象パネルに同一のデータを記憶させておく必要がある。
【0007】
ところが、液晶パネルの大型化、高精細化が進めば、ソースライン本数も増加し、これに伴って輝度調整用データの数も増加する。このため、輝度調整用データの記憶容量が大きくなるという問題がある。
【0008】
そこで、例えば特許文献1には、階調補正を行うための変換データ(上記の輝度調整用データに相当)の一部を記憶手段(RAM等)に記憶させ、残りの変換データについては補間演算により算出して求めることにより、記憶手段の記憶容量を削減する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−338935(2000年12月8日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、記憶手段の記憶容量を削減できるものの、変換データの一部を補間演算により求めているので、液晶パネルの大型化及び高精細化に伴って増加するソースライン本数分、そして、液晶パネルの駆動速度の上昇により、上記の補間演算の高速化が必要になる。このためには、高速演算可能な高価な演算装置もしくは複雑な演算回路が必要になるので、液晶表示装置の価格が上昇するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記憶手段の記憶容量の削減を図りつつ、高速な演算装置を必要としない安価な液晶表示装置を提供可能にする輝度調整回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る輝度調整回路は、上記課題を解決するために、m(m:2以上の整数)ビット階調表示可能な表示パネルに入力される映像信号の輝度を調整する輝度調整回路において、
上記表示パネル上の輝度ムラを解消するために、該表示パネルの、映像信号が入力されるライン毎に対応付けて設定されている、n(n:1以上、且つm>nの関係を満たす整数)ビットの輝度調整用データを記憶している記憶手段と、
mビット階調の映像信号に含まれる表示パネルの入力ライン情報に対応付けられたnビットの輝度調整用データを上記記憶手段から読み出して、上記映像信号の階調数を(m+L:n≧L>1)ビットに拡張し、拡張した(m+L)ビット階調の映像信号から、上記輝度調整用データによって予め決まったmビット分の階調を選択し、mビット階調の映像信号として上記表示パネルに出力する階調拡張手段とを備えていることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、表示パネルに出力される映像信号は、当該表示パネル上の輝度ムラを解消するために、該表示パネルの、映像信号が入力されるライン毎に対応付けて設定されている、輝度調整用データに基づいて輝度が調整されているので、表示パネルにおいて当該映像信号が入力されれば輝度ムラが解消され、表示品位の高い表示画像を得ることができる。
【0013】
しかも、最終的に表示パネルに入力される輝度調整された映像信号は、階調拡張手段により拡張されたデータ(mビット階調の映像信号が一旦(m+L)ビット階調のデータ)から、記憶手段に予め記憶された、当該映像信号が入力されるライン情報に対応付けられたnビットの輝度調整用データによって予め決まったmビット分の階調データを選択することにより決定される。
【0014】
ここで、記憶手段に記憶される輝度調整用データは、入力される映像信号のビット数mよりも小さなビット数nなので、記憶手段の容量が少なくて済む。
【0015】
また、階調拡張手段は、入力映像信号の階調数を増加させ、記憶手段を参照して、元の階調数の映像信号を選択して、輝度調整された映像信号を得ているだけなので、データの補間演算のような複雑な演算を行う必要はない。これにより、比較的安価な演算装置であっても、階調拡張手段における階調の拡張処理が可能となるので、安価な液晶表示装置を提供することができる。
【0016】
また、上記階調拡張手段は、mビット階調の映像信号に含まれる表示パネルの入力ライン情報に対応付けられたnビットの輝度調整用データを上記記憶手段から読み出して、上記映像信号の階調数を(m+n)ビットに拡張し、拡張した(m+n)ビット階調の映像信号から、上記輝度調整用データによって予め決まったmビット分の階調を選択し、mビット階調の映像信号として上記表示パネルに出力してもよい。
【0017】
上記表示パネルが液晶表示パネルである場合、上記輝度調整用データは、上記液晶表示パネルの各ソースラインに対応する領域から得られる輝度値に基づいて生成されるのが好ましい。
【0018】
この場合には、液晶表示パネルで生じる輝度ムラのうち、表示画面の縦方向(ソースラインに沿った方向)に発生したスジ状の領域からなる輝度ムラの解消を行うことができる。
【0019】
また、上記液晶表示パネルには、各ソースラインに対応する表示領域からの照射光を受光する受光素子と、上記受光素子で受光したソースライン毎の受光データから、上記輝度調整用データを生成する輝度調整用データ生成手段とが設けられ、上記記憶手段には、上記輝度調整用データ生成手段で生成された輝度調整用データが格納されることが好ましい。
【0020】
この場合、予め輝度調整用データを求めて記憶手段に記憶させておく必要がない。しかも、液晶表示パネルに輝度調整用データを生成するための手段を備えているので、該液晶表示パネルにおける各ソースラインに対応する表示領域での輝度値の経時変化によって生じる輝度ムラ解消にも対応することができる。
【0021】
また、上記表示パネルが液晶表示パネルである場合、上記輝度調整用データは、上記液晶表示パネルの各ゲートラインに対応する領域から得られる輝度値に基づいて生成されるのが好ましい。
【0022】
この場合には、液晶表示パネルで生じる輝度ムラのうち、表示画面の横方向(ゲートラインに沿った方向)に発生したスジ状の領域からなる輝度ムラの解消を行うことができる。
【0023】
上記液晶表示パネルには、各ゲートラインに対応する表示領域からの照射光を受光する受光素子と、上記受光素子で受光したゲートライン毎の受光データから、上記輝度調整用データを生成する輝度調整用データ生成手段とが設けられ、上記記憶手段には、上記輝度調整用データ生成手段で生成された輝度調整用データが格納されることが好ましい。
【0024】
この場合、予め輝度調整用データを求めて記憶手段に記憶させておく必要がない。しかも、液晶表示パネルに輝度調整用データを生成するための手段を備えているので、該液晶表示パネルにおける各ゲートラインに対応する表示領域での輝度値の経時変化によって生じる輝度ムラ解消にも対応することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る輝度調整回路は、以上のように、m(m:2以上の整数)ビット階調表示可能な表示パネルに入力される映像信号の輝度を調整する輝度調整回路において、上記表示パネル上の輝度ムラを解消するために、該表示パネルの、映像信号が入力されるライン毎に対応付けて設定されている、n(n:1以上、且つm>nの関係を満たす整数)ビットの輝度調整用データを記憶している記憶手段と、mビット階調の映像信号に含まれる表示パネルの入力ライン情報に対応付けられたnビットの輝度調整用データを上記記憶手段から読み出して、上記映像信号の階調数を(m+L:n≧L>1)ビットに拡張し、拡張した(m+L)ビット階調の映像信号から、上記輝度調整用データによって予め決まったmビット分の階調を選択し、mビット階調の映像信号として上記表示パネルに出力する階調拡張手段とを備えているので、表示パネルに発生する輝度ムラを解消することができると共に、安価な液晶表示装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の一実施形態について説明すれば以下の通りである。なお、本実施形態では、表示パネルとして液晶表示パネルを使用した液晶表示装置に用いられる輝度調整回路について説明する。また、上記液晶表示パネルは、m(m:2以上の整数)ビット階調表示可能な表示パネルのうちm=8ビット階調表示可能な液晶表示パネルとする。
【0027】
本実施形態に係る液晶表示装置は、図2に示すように、表示パネルとしてTFT(Thin Film Transistor)パネル1を備え、このTFTパネル1を駆動するための駆動回路としてソース駆動回路2及びゲート駆動回路3並びにタイミング制御回路4を備えた構成となっている。
【0028】
上記TFTパネル1は、8ビット階調表示可能な表示パネルであり、上記ソース駆動回路2に接続された複数のソースラインと、上記ゲート駆動回路3に接続された複数のゲートラインとを有し、ソースラインとゲートラインとの交差部それぞれにスイッチング素子としてTFT素子及び画素電極が設けられたTFT基板と、このTFT基板に対向する対向基板との間に液晶を挟持した構造となっている。
【0029】
上記TFT基板における、上記スイッチング素子のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極には、それぞれ上記ゲートライン、上記ソースライン、上記画素電極がそれぞれ接続されている。これにより、スイッチング素子のオン・オフ制御により、画素電極にソース信号、すなわち映像信号を供給するか否かを制御している。例えば、ゲート駆動回路3からゲートラインを介してスイッチング素子にゲート信号が供給されると、スイッチング素子がオン状態となり、当該スイッチング素子のソース電極からドレイン電極にソース信号が流れて画素電極に供給される。
【0030】
上記ソース信号は、ソースラインを介してソース駆動回路2から供給される。
【0031】
上記ソース駆動回路2は、タイミング制御回路4から供給されるタイミング信号に基づいて、TFTパネル1におけるTFT基板の各ソースラインに走査順にソース信号を供給するようになっている。
【0032】
上記タイミング制御回路4は、図3に示すにように、輝度調整回路100、映像データ補正回路200、パネルデータ送信回路300、タイミング生成回路400を備えている。
【0033】
上記輝度調整回路100は、TFTパネル1に入力される映像信号の輝度を調整する回路であって、色階調拡張回路(階調拡張手段)101と、メモリ(記憶手段)102とを含んでいる。この輝度調整回路100の詳細については後述する。
【0034】
上記輝度調整回路100によって、ライン毎に輝度調整された映像信号は、映像データ補正回路200に供給される。ここで、ラインとは、TFTパネル1におけるTFT基板に設けられたソースラインを示す。
【0035】
上記映像データ補正回路200は、輝度調整回路100によって輝度調整された映像信号に対して、さらに、ガンマ補正回路、色調補正回路、輪郭補正回路等における補正処理を行い、補正映像データを、後段のパネルデータ送信回路300及びタイミング生成回路400に供給する回路である。
【0036】
上記パネルデータ送信回路300は、映像データ補正回路200から供給される補正映像データのうち、TFTパネル1の表示に必要なパネルデータを抽出して、ソース駆動回路2に送信する回路である。
【0037】
一方、上記タイミング生成回路400は、映像データ補正回路200から供給される補正映像データに含まれるタイミング情報から、TFTパネル1に供給するパネルデータを送り込むタイミングを図るためのタイミング信号を生成する回路である。
【0038】
すなわち、上記タイミング制御回路4は、入力された映像信号の輝度を適切に補正し、補正後の映像データからパネルデータと、タイミング信号とを生成して、それぞれをソース駆動回路2に供給するようになっている。
【0039】
なお、図3に示すタイミング制御回路4では、輝度調整回路100が映像データ補正回路200の前段に設けられた例を示しているが、輝度調整回路100が映像データ補正回路200の後段に設けられていてもよい。
【0040】
ここで、上記輝度調整回路100について図1(a)(b)を参照しながら以下に説明する。
【0041】
上記輝度調整回路100は、図1(a)に示すように、色階調拡張回路(階調拡張手段)101とメモリ(記憶手段)102とを含んでいる。
【0042】
上記色階調拡張回路101は、TFTパネル1における、映像信号が入力されるライン毎に、8ビット階調の映像信号を擬似的に10ビット階調の映像信号に拡張処理する回路である。例えばFRC(Frame Rate Control)回路が好適に使用できるが、階調を擬似的に拡張する回路であれば、他の回路であってもよい。例えば、FRC回路の例として、時間を4分割して下位2ビット分の階調を表現することで、8ビット階調表示可能なTFTパネル1において擬似的に10ビット階調表示を行わせる回路がある。
【0043】
上記色階調拡張回路101は、図1(b)に示すように、256階調で示された8ビット入力の映像信号を10ビット階調の1024階調に拡張して、拡張した擬似1024階調から、上記メモリ102に記憶されている2ビットの輝度調整用データに基づいて、256階調分を選択して擬似10ビット出力とする回路である。
【0044】
上記メモリ102は、上記TFTパネル1における、映像信号が入力されるライン毎に予め設定された2ビットの輝度調整用データを記憶している記憶手段である。記憶手段としては、RAM、ROM等が適用可能であるが、できるだけ読み出し速度の速い記憶手段を用いるのが好ましい。
【0045】
上記メモリ102内において、2ビットの輝度調整用データは、例えば図4に示すように、TFTパネル1のソースライン毎に格納されている。
【0046】
上記色階調拡張回路101は、上記メモリ102に格納されている輝度調整用データをソースライン毎に読み出して、読み出した輝度調整用データに基づいて、当該ソースラインに入力される映像信号の階調を、拡張した階調の何れかに割り当てるようになっている。
【0047】
具体的には、上記のように輝度調整用データが2ビットのデータである場合、2ビットのデータは、”00”、”01”、”10”、”11”の4種類に分類できるので、例えば図5に示すように、8ビットの映像信号の一つの階調(n階調:n=0〜255の整数)に対して、10ビットの映像信号の階調4つ(4n階調、4n+1階調、4n+2階調、4n+3階調)が割り当てられることになる。
【0048】
ここでは、輝度調整用データ”00”は、階調変更無しを示し、”01”は、階調を10ビット階調にした場合に1段上げることを示し、”10”は、階調を10ビット階調にした場合に2段上げることを示し、”11”は、階調を10ビット階調にした場合に3段上げることを示している。すなわち、図5において、10ビット階調の4n階調には”00”が対応付けられ、4n+1階調には”01”が対応付けられ、4n+2階調には”10”が対応付けられ、4n+3階調には、”11”が対応付けられている。
【0049】
つまり、入力された8ビット階調の映像信号の階調数がn=0の場合であれば、10ビット階調では、0階調、1階調、2階調、3階調の4つが割り当てられる。そして、ソースラインにおいて階調変更は必要無しを示す輝度調整用データが”00”であるとき、上記n=0の8ビット階調映像信号は、10ビット階調の0階調に割り当てられることになる。
【0050】
このように、輝度調整用データが2ビットのデータである場合、一階調につき、4つの階調の中から一つの階調を選択することになるので、8ビット階調のまま輝度調整を行う場合では、階調が6ビット階調に減少するが、上述のように、10ビット階調に拡張すれば、階調は8ビット階調のままにすることができる。
【0051】
なお、本実の形態では、輝度調整用データを2ビットにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、輝度調整用データを4ビットにしてもよい。この場合、図6に示すように、一階調につき、12階調の中から一つの階調を選択することになる。このように、輝度調整用データのビット数を増やすことで、階調の補正の範囲を広げることが可能となる。前述したように、輝度調整用データのビット数と色階調の拡張するビット数は必ずしも一致していなくても良い。図6で示している例では、輝度階調用データのビット数は4ビットで、色階調を拡張するビット数は2ビットの形態を表している。
【0052】
すなわち、表示パネルにおける表示可能な階調数をm(m:2以上の整数)ビット(本実施形態では8ビット)、輝度調整用データの階調数をn(n:1以上、且つm>nの関係を満たす整数)ビット(本実施形態では4ビット)であるときに、上記映像信号の階調数を(m+n)ビットではなく、(m+L:n≧L>1)ビットに拡張し、拡張した(m+L(本実施形態ではL=2))ビット階調の映像信号から、上記輝度調整用データによって予め決まったmビット分の階調を選択し、mビット階調の映像信号として上記表示パネルに出力するようにしてもよい。
【0053】
上記輝度調整用データは、上述のように、メモリ102において、TFTパネル1のソースライン毎に予め設定された値として格納されている。
【0054】
上記メモリ102に格納される輝度調整用データの生成方法について図7を参照しながら以下に説明する。
【0055】
上記輝度調整用データは上記メモリ102に対して以下の処理を経て格納される。
【0056】
まず、TFTパネル1から輝度データを取得する(ステップS1)。
【0057】
一般に、TFTパネル1における輝度のバラツキのうち、人によって認識され易い輝度のバラツキは、図9に示すように、矢印Y方向に向かうライン、すなわち映像信号が供給されるソースライン単位で生じる。
【0058】
ここでは、TFTパネル1から輝度データを取得する方法としては、全て同じ階調の映像信号をTFTパネル1に供給して得られた画像、例えば白表示画像の表示領域全体をカメラで撮影し、撮影して得られた画像データを解析することで、該TFTパネル1の表示領域全体の輝度データを一括して取得する方法がある。
【0059】
また、白表示したTFTパネル1の表示領域の一ライン(ここでは、ソースライン)毎に画面を走査して輝度データを取得する方法であってもよい。
【0060】
ここで取得した輝度データは、全て同じ階調の映像信号をTFTパネル1に供給して表示された画像から得られたデータであるので、同じ輝度値を示すはずである。この場合には、輝度値を調整するための輝度調整用データを生成する必要はないが、パネル製造工程における種々の要因により、TFTパネル1の縦方向(Y方向)あるいは横方向(X方向)で一様に他の部分と輝度値が異なる場合あり、この場合には、上述した輝度調整用データを生成する必要がある。
【0061】
そこで、ステップS1で取得した輝度データから上記輝度調整用データを生成する(ステップS2)。
【0062】
ここでは、輝度調整用データは、補正方法に合った補正データとして生成する。
【0063】
具体的には、ソースライン毎に検出された輝度データの値が基準輝度値となるように調整するためのデータを輝度調整用データとして生成する。
【0064】
上記基準輝度値は、例えば、図9に示すTFTパネル1において、同一階調表示を行った場合の最大輝度値とする。これにより、輝度ムラ501aとして認識されるソースラインは、基準輝度値のソースラインよりも暗く見えることになる。つまり、基準輝度値よりも小さい輝度値となる。そして、輝度値が基準輝度値よりも小さくなる度合いに応じて、上述の図5で説明した2ビットのデータ”00”、”01”、”10”、”11”をソースライン毎に設定する。
【0065】
このようにして得られた輝度調整用データは、メモリ102に書き込まれる(ステップS3)。
【0066】
上記のステップS1〜S3は、TFTパネル1毎に行われ、TFTパネル1毎の固有値としてそれぞれのTFTパネル1に対応するメモリ102に輝度調整用データが格納される。
【0067】
上記のように、本実施の形態では、TFTパネル1毎に予め生成された輝度調整用データを使用してTFTパネル1の輝度調整を行っているが、これに限定されるものではなく、TFTパネル1の輝度データをリアルタイムで取り出して輝度調整用データを生成するようにしてもよい。
【0068】
図8は、TFTパネル1の輝度データをリアルタイムで取り出して輝度調整用データを生成することが可能な液晶表示装置を示している。
【0069】
上記液晶表示装置は、図8に示すように、受光部を備えたTFTパネル500と、映像信号処理回路600とを備え、映像信号処理回路600からの映像信号及び輝度調整用データは、タイミング制御回路4に供給される。このタイミング制御回路4は、図1に示すタイミング制御回路4と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0070】
上記TFTパネル500における表示領域の輝度データは、該TFTパネル500に備えら得られた受光部により取得される。受光部により取得した輝度データは、映像信号処理回路600に送られる。
【0071】
上記TFTパネル500における受光部の構成及び受光機構の詳細について以下に説明する。
【0072】
上記TFTパネル500は、図10に示すように、表ガラス基板500aと、裏ガラス基板500bとの間に、上記表ガラス基板500b側から順に、TFT部500c、液晶層500d、カラーフィルタ500eが積層された構成となっている。
【0073】
上記TFTパネル500の周囲には、図9および図10に示すように、当該TFTパネル500を支持するためのシャーシ11が設けられている。このシャーシ11には、TFTパネル500の表示領域501以外の領域を覆うベゼル11aが設けられている。
【0074】
上記TFTパネル500を構成する表ガラス基板500aの、上記ベゼル11aとの対向面に受光素子502が設けられている。また、上記ベゼル11aとTFTパネル500との間には所定の間隙が設けられている。
【0075】
上記シャーシ11のベゼル11aの、TFTパネル500に対向する面には、図10に示すように、TFT部500cからの照射光を反射して受光素子502に導くための導光部材である反射ミラー503が設けられている。
【0076】
上記反射ミラー503は、受光素子502に対応するTFT部500cにおけるソースライン上の領域からの照射光を当該受光素子502に導く位置に配置されている。なお、受光素子502に導かれる照射光は、各受光素子502にそれぞれ対応するソースライン上の全領域からの照射光であることが好ましいが、同一ソースライン上の領域であれば全領域からの照射光ではなく、一部の領域の照射光であってもよい。
【0077】
なお、ベゼル11aとTFTパネル500との間隙の長さは、反射ミラー503の厚み、反射ミラー503がTFT部500cからの照射光を受光素子502に適切に導くことが可能となる厚みを考慮して決定される。
【0078】
上記受光素子502は、例えば、TFT素子からなり、受光量に応じた電気信号を出力するようになっている。
【0079】
ところで、TFTパネル500に対して全てのソースラインに同一階調の映像信号を供給した場合、当該TFTパネル500において表示される映像の輝度は均一のはずである。
【0080】
しかしながら、一般的なTFTパネル500では、輝度が均一にならずムラが生じる。このムラは、例えば、図9に示すように、表示領域501において、矢印Y方向(縦方向)に一様に輝度値が基準輝度値よりも低いあるいは高い領域が生じ、輝度ムラ501aとなって観察者によって認識される。
【0081】
上記輝度ムラ501aは、周期的に現れるのではなく、図9に示すように、矢印X方向に不定期に現れる。また、輝度ムラ501aは個体差により、生じる位置が異なる。このため、TFTパネル500におけるソースライン毎に輝度値を測定して、測定値が基準輝度値からどの程度相違しているのかをTFTパネル500毎に把握して、輝度ムラ501aとなる領域を特定し、TFTパネル500に入力される映像信号を補正する必要がある。
【0082】
本実施の形態では、上述したように、図11に示すように、受光素子102を矢印Y方向に並んだ画素110列(ソースライン)毎に設けておき、それぞれのソースラインに対応する領域からの照射光を、受光素子102で受光して、受光量に応じた電気信号を出力し、この電気信号を受光データとしている。
【0083】
上記受光データから輝度調整用データを求める処理は、上記映像信号処理回路600にて行われる。
【0084】
上記映像信号処理回路600は、CPU601を中心に、ROM602、RAM603、書き込み用インターフェース604、画像処理LSI605、読み込み用インターフェース606を備えており、上記CPU601によって輝度調整用データの生成が行われる。
【0085】
すなわち、上記映像信号処理回路600において、まず、上記CPU601は、タイミング制御回路4を介してTFTパネル500に備えられた受光部から受光データが取得できるように、上記タイミング制御回路4に対して指示する。
【0086】
次に、上記CPU601は、上記受光部が取得した受光データを読み込み用インターフェース606を介してRAM603に取り込む。
【0087】
続いて、上記CPU601は、ROM602中に保存されている輝度調整用データ生成プログラムと、上記RAM603に格納された受光データとに基づいて輝度調整用データを生成する。この輝度調整用データは、TFTパネル500のソースライン毎に生成する。
【0088】
最後に、上記CPU601は、生成した輝度調整用データを、書き込み用インターフェース604を介してタイミング制御回路4内のメモリ102に書き込む。
【0089】
タイミング制御回路4は、メモリ102に輝度調整用データが書き込まれた状態で、映像信号処理回路600の画像処理LSI605を介して映像信号が供給されたときに、ソースライン毎に映像信号に対して輝度調整用データを読み出して、輝度調整を行った後の映像信号をTFTパネル500に供給するようになっている。
【0090】
なお、上記輝度調整用データの生成処理は、少なくとも、TFTパネル1が液晶表示装置に設置されてから、最初に画像表示を行うまでの間に行うのが好ましい。但し、一度画像表示を行った後、上記の処理を行ってもよい。
【0091】
更に、TFTパネル1の経年により変化する輝度を調整するために、所定の時間経過後に、上記の処理を改めて行ってもよい。
【0092】
図8に示す構成の液晶表示装置によれば、必要に応じて輝度調整を行うことができるので、常に、TFTパネル500における輝度を均一にでき、その結果、表示品位を向上させることが可能となる。
【0093】
以上のように、本実施の形態では、入力映像信号の階調を8ビットとして、10ビットに擬似的に拡張する例について説明したが、これに限定されるものではなく、入力映像信号の階調を10ビットとして、12ビットに擬似的に拡張してもよい。この場合には、図1に示す輝度調整回路100内の色階調拡張回路101を12ビット拡張用に変更するだけで、後の処理について10ビット拡張した場合と同様の処理で実現可能である。
【0094】
また、本実施の形態では、図9に示すように、輝度ムラをソースライン(矢印X方向)に沿って発生した場合の輝度調整について説明したが、輝度ムラがゲートライン(矢印Y方向)に沿って発生した場合についても同様に輝度調整を行うことで輝度ムラを解消できる。
【0095】
つまり、縦方向(ソースラインに沿う方向)のスジムラに対しては、上記輝度調整用データを、上記液晶表示パネルの各ソースラインに対応する領域から得られる輝度値に基づいて生成すればよい。この場合、各ゲートラインに対して同じ処理をソースライン毎に行い補正データ(輝度調整した映像信号)を出力すればよい。
【0096】
また、横方向(ゲートラインに沿う方向)のスジムラに対しては、上記輝度調整用データを、上記液晶表示パネルの各ゲートラインに対応する領域から得られる輝度値に基づいて生成すればよい。この場合、ゲートライン毎に補正処理を行い、その同じ補正データを輝度調整した映像信号としてソースライン全部に出力すればよい。
【0097】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
液晶表示パネルのように、スジ状に輝度ムラが生じる可能性のある表示パネルに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】(a)は、本発明の実施形態を示すものであり、輝度調整回路の要部構成を示すブロック図であり、(b)は、(a)に示した輝度調整回路における擬似階調処理を説明する図である。
【図2】本実施の形態に係る液晶表示装置のブロック図である。
【図3】図2に示す液晶表示装置に備えられたタイミング制御回路のブロック図である。
【図4】図1(a)に示す輝度調整回路に備えられたメモリにおいて輝度調整用データを格納した状態を示す図である。
【図5】図1(a)に示す輝度調整回路において行われる階調擬似拡張処理を説明する図である。
【図6】図1(a)に示す輝度調整回路において行われる他の階調擬似拡張処理を説明する図である。
【図7】輝度調整用データの生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】受光部を有するTFTパネル部を備えた液晶表示装置の要部構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示すTFTパネル部の概略平面図である。
【図10】図9のA・A線矢視断面図である。
【図11】図9に示すTFTパネル部における受光素子と画素電極列との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 TFTパネル部(表示パネル)
2 ソース駆動回路
3 ゲート駆動回路
4 タイミング制御回路
11 シャーシ
11a ベゼル
100 輝度調整回路
101 色階調拡張回路
102 メモリ
200 映像データ補正回路
300 パネルデータ送信回路
400 タイミング生成回路
500 TFTパネル
500c TFT部
501 表示領域
501a輝度ムラ
502 受光素子
503 反射ミラー
600 映像信号処理回路
601 CPU
602 ROM
603 RAM
604 書き込み用インターフェース
605 画像処理LSI
606 読み込み用インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
m(m:2以上の整数)ビット階調表示可能な表示パネルに入力される映像信号の輝度を調整する輝度調整回路において、
上記表示パネル上の輝度ムラを解消するために、該表示パネルの、映像信号が入力されるライン毎に対応付けて設定されている、n(n:1以上、且つm>nの関係を満たす整数)ビットの輝度調整用データを記憶している記憶手段と、
mビット階調の映像信号に含まれる表示パネルの入力ライン情報に対応付けられたnビットの輝度調整用データを上記記憶手段から読み出して、上記映像信号の階調数を(m+L:n≧L>1)ビットに拡張し、拡張した(m+L)ビット階調の映像信号から、上記輝度調整用データによって予め決まったmビット分の階調を選択し、mビット階調の映像信号として上記表示パネルに出力する階調拡張手段とを備えていることを特徴とする輝度調整回路。
【請求項2】
上記階調拡張手段は、
mビット階調の映像信号に含まれる表示パネルの入力ライン情報に対応付けられたnビットの輝度調整用データを上記記憶手段から読み出して、上記映像信号の階調数を(m+n)ビットに拡張し、拡張した(m+n)ビット階調の映像信号から、上記輝度調整用データによって予め決まったmビット分の階調を選択し、mビット階調の映像信号として上記表示パネルに出力することを特徴とする請求項1に記載の輝度調整回路。
【請求項3】
上記表示パネルが液晶表示パネルである場合、
上記輝度調整用データは、上記液晶表示パネルの各ソースラインに対応する領域から得られる輝度値に基づいて生成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の輝度調整回路。
【請求項4】
上記液晶表示パネルには、
各ソースラインに対応する表示領域からの照射光を受光する受光素子と、
上記受光素子で受光したソースライン毎の受光データから、上記輝度調整用データを生成する輝度調整用データ生成手段とが設けられ、
上記記憶手段には、上記輝度調整用データ生成手段で生成された輝度調整用データが格納されることを特徴とする請求項3に記載の輝度調整回路。
【請求項5】
上記表示パネルが液晶表示パネルである場合、
上記輝度調整用データは、上記液晶表示パネルの各ゲートラインに対応する領域から得られる輝度値に基づいて生成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の輝度調整回路。
【請求項6】
上記液晶表示パネルには、
各ゲートラインに対応する表示領域からの照射光を受光する受光素子と、
上記受光素子で受光したゲートライン毎の受光データから、上記輝度調整用データを生成する輝度調整用データ生成手段とが設けられ、
上記記憶手段には、上記輝度調整用データ生成手段で生成された輝度調整用データが格納されることを特徴とする請求項5に記載の輝度調整回路。
【請求項7】
液晶表示パネルと、
上記液晶表示パネルに映像信号を供給する映像処理回路と、
上記液晶表示パネルに供給される映像信号の輝度を調整する請求項1〜6の何れか1項に記載の輝度調整回路とを備え、
上記映像処理回路は、上記輝度調整回路で輝度調整された映像信号を上記液晶表示パネルに供給することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−14800(P2010−14800A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172492(P2008−172492)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】