説明

輪郭振動片

【課題】輪郭振動片における振動漏れを大幅に低減させてQ値及びCI値の向上を実現する。
【解決手段】輪郭圧電振動片11は、接続部13a〜13dが正方形の振動部12の4つの角部から左右各辺に沿って外向きに延長し、その先端が、接続部の幅より縦寸法が大きく高い面内剛性を有する矩形の中間剛性部14aの両端に結合している。中間剛性部の上辺中央にそれより十分に狭幅で縦方向に真直ぐに延長する連結部15aが結合され、その先端が、連結部の幅より幅寸法が大きく高い面内剛性を有する矩形の支持部16aに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラーメモードや輪郭すべり振動モードで輪郭振動する輪郭振動片に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラーメモードや輪郭すべり振動モードの輪郭振動子は、100kHzレベルまでの低周波数で振動する音叉型水晶振動子と、10MHz以上の比較的高周波数で振動する厚みすべり振動モードのATカット水晶振動子との中間範囲にある数MHzの周波数で振動する。ラーメモードの輪郭圧電振動子は、正方形又は複数の正方形を連ねた方形平板の圧電基板からなる振動部と支持部とそれらを振動の節点で接続する接続部とを一体に備える(例えば、特許文献1を参照)。輪郭すべり振動モードの輪郭圧電振動子も、ラーメモードの振動子と同様に、正方形平板の圧電基板からなる振動部と支持部とそれらを接続する接続部とを備える(例えば、特許文献2,3を参照)。
【0003】
ラーメモードの輪郭振動では、振動部が、その表裏主面に互いに異極となるように形成した1対の励振電極に電流を印加して励振すると、正方形の4つの角部と中心とを節点として面内で、対向する一方の2辺と他方の2辺とが交互に外向き又は内向きに伸縮する。これに対し、輪郭すべり振動では、振動部が、その一方の主面に縦方向及び横方向の中心線に沿って分割された4つの励振電極に、その対角位置にあるもの同士が同極でかつ隣接するもの同士が互いに異極となるように、電流を印加して励振すると、その中心を節点として面内で、正方形の一方の対角方向と他方の対角方向とで交互に伸縮する。
【0004】
このような輪郭振動を行う輪郭振動片は、輪郭振動の節点の周りに発生するモーメント力によって、振動部と支持部との接続部に屈曲振動が発生し、振動部からの振動漏れを生じて等価直列抵抗が大きくなり、Q値を低下させる虞がある。また、接続部をより細く形成すると、振動漏れを小さくできるが、強度又は剛性が低下するために、耐衝撃性が劣化する虞がある。
【0005】
等価直列抵抗値を低減化させるために、四角形状の振動本体部をその端部に位置する振動の節点で支持しかつ振動本体部の表面及び裏面に形成した励振電極への電圧の供給ラインとなる接続部を、該接続部を介して振動本体部を支持する端子電極部に向けて長く延ばして形成し、振動本体部内で発生するラーメモード振動に対する抵抗力を減少させたラーメモード振動の水晶振動子が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。特許文献4によれば、振動本体部の節点から引き出した接続部を途中で屈曲させ、かつ振動本体部近傍に設けた端子電極部に向けて長く延ばすことによって、振動子全体のサイズ拡張を抑えて小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−115747号公報
【特許文献2】特公平8−31758号公報
【特許文献3】特開2006−311443号公報
【特許文献4】特開2004−242256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12及び図13は、特許文献4に記載されるように、振動部から引き出した接続部を屈曲させて、該振動部を支持するための支持部に向けて長く延長させたラーメモードの輪郭振動片をそれぞれ例示している。図12(A)の輪郭振動片1は、3つの正方形を連ねた長方形の振動部2を有し、その振動の節点である4つの角部から接続部3が、それぞれ前記長方形の短辺に沿って外向きに引き出されている。各接続部3は、L字状に略直角に屈曲され、振動部2の前記長方形の長辺に沿って該長辺の中央付近の支持部4まで延長している。図13(A)の輪郭振動片5は、3つの正方形を連ねた長方形の振動部6の振動の節点である4つの角部から、接続部7がそれぞれ前記長方形の短辺に対して略45°の角度で外向きに引き出されている。各接続部7は、V字状に略45°の角度で折り返すように屈曲され、振動部2の前記長方形の短辺と平行に該短辺の中央付近の支持部8まで延長している。
【0008】
図12(B)及び図13(B)は、それぞれ輪郭振動片1,5について、ラーメモードで振動させたときの振動姿態を有限要素法で解析した結果を示している。図12(B)に示すように、輪郭振動片1は、各接続部3が、振動部2の輪郭振動に対応して該振動部の前記各角部を支点に屈曲振動し、その屈曲振動がL字状屈曲部を介して支持部4まで伝達されている。輪郭振動片5も同様に、図13(B)に示すように、各接続部7が、振動部6の輪郭振動に対応して該振動部の前記各角部を支点に屈曲振動し、その屈曲振動がV字状屈曲部を介して支持部8まで伝達されている。
【0009】
これらの輪郭振動片1,5について、支持部4,8を固定した場合の固有周波数Fc と前記支持部を固定しないで自由にした場合の固有周波数Ff とを算出し、それらの差から周波数変動量ΔF=(Fc−Ff)/Ff を求めた。得られた周波数変動量ΔFは、図12(A)の輪郭振動片1が約−125ppm 、図13(A)の輪郭振動片5が約+60ppm であり、いずれも実用されている音叉型圧電振動子に比して1桁以上大きい値を示した。これらの結果から、上記従来の輪郭振動子は、接続部から比較的大きい振動漏れを生じることが分かった。
【0010】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動部の支持構造を改良することにより、振動部から接続部を介して生じる振動漏れを大幅に低減させて、Q値及びCI値の向上を実現し得る輪郭振動片を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の輪郭振動片は、上記目的を達成するために、輪郭振動する振動部と、該振動部の輪郭のそれぞれ異なる位置から外向きに引き出された複数の接続部と、振動部の輪郭振動により互いに同じ大きさで逆向きに屈曲振動する2つの隣接する接続部に結合されかつ少なくとも該接続部より高い面内剛性を有する中間剛性部と、該中間剛性部から振動部側とは反対方向に延長する狭幅の連結部と、振動部を支持するために連結部に結合されかつ少なくとも該連結部より高い面内剛性を有する支持部とを備えることを特徴とする。
【0012】
中間剛性部は、互いに同じ大きさで逆向きに屈曲振動するように結合された2つの接続部から、大きさが同じで逆向きの回転モーメントを受けるが、それら接続部よりも高い面内剛性を有するので、その横方向に作用する成分が互いに相殺され、縦方向成分だけが残ることになる。残った縦方向成分の力だけが、そのまま連結部から支持部に伝達されるので、接続部から支持部への振動漏れが従来に比して大幅に低減され、輪郭振動片のQ値及びCI値を大幅に改善することができる。
【0013】
或る実施例では、連結部に結合されかつ少なくとも該連結部より高い面内剛性を有する第2中間剛性部と、該第2中間剛性部から連結部と直交する向きに延長して支持部に結合する第2連結部とを更に有することにより、連結部を介して伝達される縦方向成分の力を第2連結部の屈曲振動に変換することができ、かつ各第2連結部の屈曲振動が互いに同じ大きさで逆向きになることから、支持部に伝達される縦方向成分の力を相殺することができる。これにより、接続部から支持部への振動漏れをより一層低減させ、輪郭振動片のQ値及びCI値を更に改善することができる。
【0014】
別の実施例では、中間剛性部に結合する2つの隣接する接続部が、振動部から互いに平行に延長することにより、中間剛性部において、これら接続部から受ける横方向成分の力をほぼ完全に相殺させることができる。
【0015】
更に別の実施例によれば、中間剛性部に結合する2つの隣接する接続部が、振動部から互いに同じ傾斜角度でかつ左右対称に延長することにより、中間剛性部において、これら接続部から受ける横方向成分の力は一部しか相殺できないが、振動片の形状をより自由に設計することができる。
【0016】
また、別の実施例では、連結部が、その軸線方向に作用する力に対して該軸線方向に変位する緩衝部を有することにより、連結部から支持部に伝達される縦方向成分の力を減衰させることができる。
【0017】
また、或る実施例では、支持部が枠状に形成され、かつ振動片全体を囲繞するように最も外側に配置されていることにより、振動部の励振によって振動片全体に生じ得る変位が有効に分散されて上下左右いずれの方向にもバランスし、安定した輪郭振動を得ることができ、かつパッケージ等のマウント部に対して、より確実にかつ安定して固定することができる。
【0018】
本発明の輪郭振動片は、振動部を1つの正方形とすることによって、1次モードの輪郭振動を行い、又は複数の正方形を連ねた方形とすることによって、所望の高次モードで輪郭振動させることができる。
【0019】
更に別の実施例によれば、輪郭振動片は、従来公知の製造加工技術を利用して、水晶等の圧電材料から一体に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(A)図は本発明による輪郭振動片の第1実施例の概略平面図、(B)図はその振動姿態を示す説明図。
【図2】第1実施例の変形例を示す概略平面図。
【図3】第1実施例の別の変形例を示す概略平面図。
【図4】第1実施例の更に別の変形例を示す概略平面図。
【図5】第1実施例の別の変形例を示す概略平面図。
【図6】第1実施例の更に別の変形例を示す概略平面図。
【図7】(A)図は図4の実施例の変形例を示す概略平面図、(B)図はその振動姿態を示す説明図。
【図8】図7の実施例の変形例を示す概略平面図。
【図9】図8の実施例の変形例を示す概略平面図。
【図10】(A)図は本発明による輪郭振動片の第2実施例の概略平面図、(B)図はその振動姿態を示す説明図。
【図11】第2実施例の変形例を示す概略平面図。
【図12】(A)図は従来の輪郭振動片の概略平面図、(B)図はその振動姿態を示す説明図。
【図13】(A)図は従来の別の輪郭振動片の概略平面図、(B)図はその振動姿態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。尚、添付図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付して説明する。
図1(A)は、本発明による輪郭振動片の第1実施例である輪郭圧電振動片11を概略的に示している。圧電振動片11は、単一の正方形からなる振動部12を有し、1次モードのラーメモードで輪郭振動する。振動部12の振動の節点である4つの角部から、それぞれ同じ細幅及び長さの接続部13a〜13dが、前記振動部の左右各辺に沿って外向きに延長している。
【0022】
図中上側の接続部13a,13bは、その先端で前記振動部の全幅に亘って延在する中間剛性部14aの両端に結合している。中間剛性部14aは、前記振動部の縦方向(図中、上下方向)に前記接続部の幅より十分に大きい縦寸法の矩形形状に形成され、少なくとも前記接続部よりも高い面内剛性を有する。中間剛性部14aの上辺中央には、該中間剛性部よりも十分に狭幅で縦方向に真直ぐに延長する連結部15aが結合され、その先端に支持部16aが結合されている。支持部16aは、図示するように中間剛性部14aと略同じ幅で十分な縦寸法を有する矩形形状に形成されており、高い面内剛性と大きい質量負荷とを有する。このように連結部15aに対する高い面内剛性と、好ましくは更に該連結部よりも大きい質量負荷を有するものであれば、支持部16aは本実施例以外の様々な形状・寸法に形成することができる。
【0023】
圧電振動片11は、振動部12を挟んで上下対称に形成されている。従って、図中下側の接続部13c,13dも、その先端が、上側の中間剛性部14aと同じ寸法形状を有しかつ高い面内剛性を発揮する中間剛性部14bに結合されている。中間剛性部14bの下辺中央には、該中間剛性部より十分に狭幅の連結部15bが結合され、その先端には支持部16bが結合されている。支持部16bは、上側の支持部16aと同じ寸法形状を有するが、同様に連結部15bに対して高い面内剛性と、好ましくは更に該連結部よりも大きい質量負荷とを有するものであれば、様々な形状寸法に形成することができる。圧電振動片11は、従来の加工方法を用いて水晶等の圧電材料で一体に形成することができる。
【0024】
図示しないが、振動部12の表面及び裏面には、略全面に互いに異極となる1対の励振電極が形成されている。圧電振動片11は、前記励振電極に所定の電流を印加して励振すると、図1(B)に示すように、振動部12が、正方形の各角部を節点として面内で、互いに対向する一方の2辺と他方の2辺が交互に外向きに伸張し又は内向きに圧縮するラーメモードの輪郭振動を行う。ここで、上述したように圧電振動片11は上下対称に形成されているので、その支持構造に振動が及ぼす影響は、上側の前記接続部、プレート部、連結部及び支持部についてのみ以下に説明する。このとき、各支持部16a,16bはパッケージ等のマウント部に固定されているものとする。
【0025】
同図に示すように、接続部13a,13bは、振動部12の上辺が内向き即ち圧縮する向きに変位すると、それぞれ内側へ回転する向きに、逆に前記上辺が外向き即ち伸張する向きに変位すると、それぞれ外側へ回転する向きに屈曲振動する。そのため、接続部13a,13bと結合された中間剛性部14aの左右両端部分には、前記接続部の屈曲振動に対応して回転モーメントが作用する。この回転モーメントは、各接続部13a,13bの寸法が同じであるから、互いに大きさが同じで向きが逆である。
【0026】
中間剛性部14aは高い面内剛性を有するので、前記接続部の屈曲振動により該中間剛性部の左右両端から作用する力の幅方向成分が互いに相殺され、縦方向成分だけが残る。残った縦方向成分の力は、そのまま連結部15aに伝達される。連結部15aは、中間剛性部14aの上辺中央から縦方向に真直ぐ延長しているので、幅方向に屈曲することなく、前記縦方向成分の力を支持部16aに伝達する。
【0027】
このように本実施例の輪郭圧電振動片11は、振動部12の輪郭振動が、接続部13a〜13dから中間剛性部14a,14bに伝達される際に部分的に相殺される。残った縦方向成分の力は、前記中間剛性部から連結部15a,15bに伝達される際に、不要な屈曲振動等の振動モードを生じない。その結果、支持部16a,16bへの振動漏れが、従来に比して大幅に低減される。従って、圧電振動片11のQ値及びCI値を大幅に改善することができる。
【0028】
図2は、第1実施例の変形例を示している。この変形例の輪郭圧電振動片11は、各連結部15a,15bが、それぞれ2つのY字形部分17a〜17dからなり、かつ前記2つのY字形部分の分岐した先端部同士を互いに結合させて菱形の緩衝部を中間に有するように形成されている。前記菱形緩衝部は、中間剛性部14a,14bから伝達される前記縦方向成分の力によって、縦方向に圧縮又は伸張する向きに変位する。その結果、前記中間剛性部から支持部16a,16bに伝達される前記縦方向成分の力が幾分減衰される。従って、前記支持部16a,16bへの振動漏れが更に低減され、圧電振動片11のQ値及びCI値をより一層改善することができる。
【0029】
図3は、第1実施例の別の変形例を示している。この変形例の輪郭圧電振動片21は、単一の正方形の振動部12の各角部からそれぞれ縦方向及び幅方向の外向きに延長するように8つの接続部13が形成されている。振動部12の各辺両端から平行に延長する各2つの接続部13の先端には、それぞれ第1実施例と同じ寸法形状で少なくとも前記接続部よりも高い面内剛性の中間剛性部14が結合されている。各中間剛性部14の振動部12と反対側の辺の中央には、それと直交する向きに狭幅の連結部15がそれぞれ形成され、その先端が外側に配置した正方形の支持フレーム22に結合されている。
【0030】
これにより、上記各実施例と同様に、輪郭振動する振動部12からの振動漏れを低減させつつ、該振動部の励振によって振動片全体に生じ得る変位が有効に分散されて上下左右いずれの方向にもバランスし、安定した輪郭振動を得ることができ、更に前記振動部をより確実にかつ安定して支持固定することができる。この支持フレーム22は、特にその両面にプレート部材を接着してパッケージ化し、その内部に前記振動部を封止する場合に有利である。
【0031】
図4は、第1実施例の更に別の変形例を示している。この変形例の輪郭圧電振動片23は、振動部12を固定支持するための支持部24が、その幅方向の一方の側に沿って縦方向に延長するように設けられている。各連結部15a,15bの先端には、第1実施例の支持部16a,16bに代えて、第2中間剛性部25a,25bが結合されている。第2中間剛性部25a,25bは、第1中間剛性部14a,14bと同様に高い面内剛性を有するように、十分な幅及び縦寸法の矩形形状に形成されている。前記第2中間剛性部の支持部24側の側辺には、該第2中間剛性部の縦寸法より狭幅の第2連結部26a,26bが、幅方向に延長して支持部24の縦方向の両端に結合するように形成されている。
【0032】
第1実施例の支持部16a,16bについて上述したように、連結部15a,15bから前記第2中間剛性部には、縦方向成分の力のみが作用する。この縦方向成分の力によって、第2連結部26a,26bは、支持部24との結合部分を支点にして屈曲振動する。支持部24の縦方向の両端には、前記第2連結部の屈曲振動によって、同じ大きさで逆向きの回転モーメントが作用する。支持部24は、その幅寸法が少なくとも前記第2連結部の幅よりも大きいので、高い面内剛性を発揮する。その結果、前記第2連結部の屈曲振動により支持部24の縦方向両端から作用する力の縦方向成分が互いに相殺されるので、支持部24への振動漏れが更に減少する。従って、第1実施例よりも、更にQ値及びCI値を改善することができる。
【0033】
図5は、第1実施例の別の変形例を示している。上記各実施例の圧電振動片が1次モードの輪郭振動であるのに対し、この変形例の輪郭圧電振動片27は、2つの正方形を横方向に連ねた長方形の振動部28を有し、2次モードの輪郭振動を行う。図示するように、振動部28は、図1の圧電振動片11の振動部12の左側に追加の正方形28aを1つ連結するように形成される。このように、本発明は2次モードの輪郭振動を行う輪郭圧電振動片についても適用することができる。
【0034】
図6は、第1実施例の更に別の変形例を示している。この変形例の輪郭圧電振動片29は、3つの正方形を横方向に連ねた長方形の振動部30を有し、3次モードの輪郭振動を行う。図示するように、振動部28は、図1の圧電振動片11の振動部12の左右両側に追加の正方形30a,30bを各1つ連結するように形成される。このように、本発明は3次モードの輪郭振動を行う輪郭圧電振動片についても適用することができる。
【0035】
図7(A)は、図4の実施例の変形例を示している。図4の実施例では、振動部12が単一の正方形からなるのに対し、この変形例の輪郭圧電振動片31は、3つの正方形32a〜32cを縦方向に連ねた長方形の振動部32を有し、図7(B)に示すように3次モードの輪郭振動を行う。このとき、支持部24はパッケージ等のマウント部に固定されているものとする。
【0036】
振動部32の上側及び下側の正方形32a,32cは、同相に輪郭振動する。従って、図4の実施例と同様に、支持部24の縦方向両端には、振動部32の輪郭振動による第2連結部26a,26bの屈曲振動によって、同じ大きさで逆向きの回転モーメントが作用する。その結果、支持部24の縦方向両端から作用する力の縦方向成分が互いに相殺されるので、支持部24への振動漏れが減少し、Q値及びCI値をより一層改善することができる。
【0037】
図8は、図7の実施例の変形例を示している。この変形例の輪郭圧電振動片33は、振動部32の幅方向の両側に沿って縦方向に延長する支持部24a,24bが設けられている。第2中間剛性部25a,25bも、幅方向の両側辺に該第2中間剛性部の縦寸法より狭幅の第2連結部26a〜26dが、幅方向に延長しかつ対応する支持部24a,24bの縦方向の両端に結合するように形成されている。これによって、前記各第2中間剛性部が連結部15a,15bから受ける縦方向成分の力を、それぞれ左右の前記第2連結部に半分ずつ分割することができる。従って、圧電振動片33全体として、第2連結部26a〜26dの屈曲振動による変位を左右対称にバランスし、より安定した輪郭振動が得られる。
【0038】
図9は、図8の実施例の変形例を示している。この変形例の輪郭圧電振動片34は、振動部32の幅方向両側の支持部24a,24bに代えて、振動部32の外側に矩形枠状の支持フレーム35が設けられている。支持フレーム35は、少なくとも第2連結部26a〜26dの幅よりも大きい幅を有し、該第2連結部と一体に結合されている。これによって、振動部32の励振によって振動片全体に生じ得る変位が有効に分散されて上下左右いずれの方向にもバランスし、安定した輪郭振動を得ることができると共に、振動部をより確実にかつ安定して支持固定することができる。この支持フレーム35は、特にその両面にプレート部材を接着してパッケージ化し、その内部に前記振動部を封止する場合に有利である。
【0039】
図10(A)は、本発明による輪郭振動片の第2実施例である1次モードの輪郭圧電振動片を概略的に示している。第2実施例の輪郭圧電振動片41は、第1実施例と同様に単一の正方形からなる振動部42を有し、1次モードのラーメモードで輪郭振動する。振動部42には、その振動の節点である4つの角部にそれぞれ接続部43が一体に結合している。各接続部43は、それぞれ幅方向外向きに同じ傾斜角度で開くように同じ長さだけ延長する部分43aと、それから幅方向内向きに同じ角度で屈曲して同じ長さだけ折り返す部分43bとからL字状に形成されている。
【0040】
図中上側の接続部43は、その先端で前記振動部の幅方向に延在する中間剛性部44aの両端に結合している。中間剛性部44aは、前記接続部の幅より十分に大きい縦寸法の矩形形状に形成され、少なくとも前記接続部よりも高い面内剛性を有する。中間剛性部44aの上辺中央には、該中間剛性部よりも十分に狭幅で縦方向に真直ぐに延長する連結部45aが結合され、その先端に支持部46aが結合されている。支持部46aは、中間剛性部44aより大きい幅及び縦寸法を有する矩形形状に形成され、それより高い面内剛性と大きい質量負荷を有する。
【0041】
圧電振動片41は、振動部42を挟んで上下対称に形成されている。従って、図中下側の接続部43も、その先端が、上側の中間剛性部44aと同じ寸法形状で高い面内剛性を発揮する中間剛性部44bに結合されている。中間剛性部44bの下辺中央には、該中間剛性部より十分に狭幅の連結部45bが結合され、その先端には支持部46bが結合されている。支持部46bは、上側の支持部46aと同じ寸法形状に形成されているが、高い面内剛性と、好ましくは更に連結部45bより大きい質量負荷を有するものであれば、他の様々な形状寸法に形成することができる。圧電振動片41は、従来の加工方法を用いて水晶等の圧電材料で一体に形成することができる。
【0042】
振動部42の表面及び裏面には、第1実施例と同様に、略全面に互いに異極となる1対の励振電極が形成されている。圧電振動片41は、前記励振電極に所定の電流を印加して励振すると、図10(B)に示すように、振動部42が、正方形の各角部を節点として面内で、互いに対向する一方の2辺と他方の2辺が交互に外向きに伸張し又は内向きに圧縮するラーメモードの輪郭振動を行う。ここで、上述したように圧電振動片41は上下対称に形成されているので、その支持構造に振動が及ぼす影響は、上側の前記接続部、プレート部、連結部及び支持部についてのみ以下に説明する。このとき、各支持部46a,46bはパッケージ等のマウント部に固定されているものとする。
【0043】
同図に示すように、接続部43は、振動部42の上辺が外向き即ち伸張する向きに変位すると、振動部との結合部分を支点として部分43aがそれぞれ外側へ回転する向きに屈曲し、かつ屈曲部分を支点として部分43bがそれぞれ内側へ回転する向きに屈曲する。逆に前記上辺が内向き即ち圧縮する向きに変位すると、部分43aがそれぞれ振動部との結合部分を支点に内側へ回転する向きに屈曲し、かつ部分43bが屈曲部分を支点にそれぞれ外側へ回転する向きに屈曲する。このように各接続部43の屈曲振動は、その屈曲部で変位を生じるので、幾分減衰されることになる。
【0044】
接続部43と結合された中間剛性部44aの左右両端部分には、前記接続部の屈曲振動に対応して回転モーメントが作用する。この回転モーメントは、各接続部43の寸法が同じであるから、互いに大きさが同じで向きが逆である。
【0045】
中間剛性部44aは高い面内剛性を有するので、前記接続部の屈曲振動により該中間剛性部の左右両端から作用する力の幅方向成分が互いに相殺され、縦方向成分だけが残る。残った縦方向成分の力は、そのまま連結部45aに伝達される。連結部45aは、中間剛性部44aの上辺中央から縦方向に真直ぐ延長しているので、幅方向に屈曲することなく、前記縦方向成分の力を支持部46aに伝達する。
【0046】
このように本実施例の輪郭圧電振動片41は、振動部12の輪郭振動が、接続部43から中間剛性部44a,44bに伝達される際に部分的に相殺される。残った縦方向成分の力は、前記中間剛性部から連結部45a,145bに伝達される際に、不要な屈曲振動等の振動モードを生じない。その結果、支持部46a,46bへの振動漏れが、従来に比して大幅に低減される。従って、圧電振動片41のQ値及びCI値を大幅に改善することができる。
【0047】
図11は、第2実施例の変形例を示している。この変形例の輪郭圧電振動片51は、図4の実施例と同様に、振動部42を固定支持するための支持部52が、その幅方向の一方の側に沿って縦方向に延長するように設けられている。各連結部45a,45bの先端には、第2実施例の支持部46a,46bに代えて、第2中間剛性部53a,53bが結合されている。第2中間剛性部53a,53bは、支持部46a,46bと同様に、振動部42と略同じ幅で十分な縦寸法を有する矩形形状に形成され、第1中間剛性部44a,44bと同様に高い面内剛性を有する。前記第2中間剛性部の支持部52側の側辺には、該第2中間剛性部の縦寸法より狭幅の第2連結部54a,54bが、幅方向に延長して支持部52の縦方向の両端に結合するように形成されている。
【0048】
第2実施例の支持部46a,46bについて上述したように、連結部45a,45bから前記第2中間剛性部には、縦方向成分の力のみが作用する。この縦方向成分の力によって、第2連結部53a,53bは、支持部52との結合部分を支点にして屈曲振動する。支持部52の縦方向の両端には、前記第2連結部の屈曲振動によって、同じ大きさで逆向きの回転モーメントが作用する。支持部52は、その幅寸法が少なくとも前記第2連結部の幅よりも大きいので、高い面内剛性を発揮する。その結果、前記第2連結部の屈曲振動により支持部52の縦方向両端から作用する力の縦方向成分が互いに相殺されるので、支持部52への振動漏れが更に減少する。従って、第1実施例よりも、更にQ値及びCI値を改善することができる。
【0049】
上記各実施例についても、同様に解析を行い、前記各支持部を固定した場合の固有周波数Fc と該支持部を固定しないで自由にした場合の固有周波数Ff とを算出し、それらの差から周波数変動量ΔF=(Fc−Ff)/Ff を求めた。得られた周波数変動量ΔFは、図12(A)、図13(A)の従来の輪郭振動片に比して1桁以上小さい値を示した。その結果から、本発明の輪郭振動片は、いずれも振動漏れを大幅に改善できることが確認された。
【0050】
上記各実施例では、振動部から接続部を引き出す位置を、ラーメモードの振動を安定させるために、振動部の節点に設けた。しかしながら、振動部から引き出されて中間剛性部に結合される2つの接続部が、左右対称に屈曲振動する限り、振動部の輪郭のいずれの位置からも引き出しても良い。その場合にも、上記実施例と同様に、振動漏れを低減して、Q値及びCI値を改善することができる。
【0051】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、上記各実施例のようなラーメモードだけでなく、輪郭すべり振動モードの輪郭振動片についても、本発明を同様に適用することができる。また、輪郭振動片の振動部は、正方形又はそれを連ねた長方形にする必要がなく、輪郭振動するものであれば、どのような形態であっても良い。更に、圧電材料だけでなく、シリコン材料、ガラス材料のようにMEMS(微小電気機械素子)に使用されている様々な材料を用いて、本発明の輪郭振動片を形成することができる。その場合、圧電材料膜をシリコン材料等の振動片に貼り付けて電気的に駆動したり、振動片と電極との間で静電駆動するような様々な構造であっても良い。
【符号の説明】
【0052】
1,5…輪郭振動片、2,6,12,28,30,32,42…振動部、3,7,13,13a〜13d,43…接続部、4,8,16,16a,16b,24,24a,24b,46,46a,52…支持部、11,21,27,29,31,33,41,51…輪郭圧電振動片、14,14a,14b,44a,44b…中間剛性部、15,15a,15b,45a,45b…連結部、17a〜17d…Y字形部分、22,35…支持フレーム、25a,25b,53a,53b…第2中間剛性部、26a〜26d,54a,54b…第2連結部、28a,30a,30b,32a〜32c…正方形、43a,43b…部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪郭振動する振動部と、
前記振動部の輪郭のそれぞれ異なる位置から外向きに引き出された複数の接続部と、
前記振動部の輪郭振動によって互いに同じ大きさで逆向きに屈曲振動する2つの隣接する前記接続部に結合され、かつ少なくとも前記接続部より高い面内剛性を有する中間剛性部と、
前記中間剛性部から前記振動部側とは反対方向に延長する狭幅の連結部と、
前記振動部を支持するために前記連結部に結合され、かつ少なくとも前記連結部より高い面内剛性を有する支持部とを備えることを特徴とする輪郭振動片。
【請求項2】
前記連結部に結合され、かつ少なくとも該連結部より高い面内剛性を有する第2中間剛性部と、前記第2中間剛性部から前記連結部と直交する向きに延長して前記支持部に結合する第2連結部とを更に有することを特徴とする請求項1記載の輪郭振動片。
【請求項3】
前記中間剛性部に結合する前記2つの隣接する接続部が、前記振動部から互いに平行に延長することを特徴とする請求項1又は2記載の輪郭振動片。
【請求項4】
前記中間剛性部に結合する前記2つの隣接する接続部が、前記振動部から互いに同じ傾斜角度でかつ左右対称に延長することを特徴とする請求項1又は2記載の輪郭振動片。
【請求項5】
前記連結部が、その軸線方向に作用する力に対して該軸線方向に変位する緩衝部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の輪郭振動片。
【請求項6】
前記支持部が枠状に形成されかつ最も外側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の輪郭振動片。
【請求項7】
前記振動部が1つの正方形又は複数の正方形を連ねた方形をなすことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の輪郭振動片。
【請求項8】
圧電材料で一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載の輪郭振動片。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図1】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−232943(P2010−232943A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77878(P2009−77878)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】