説明

輸液温調デバイスおよび輸液温調システム

【課題】輸液容器の姿勢や形状の変化に関わらず、高い熱交換率で液体の温度を安定に保つ。
【解決手段】輸液を貯留する樹脂材料からなる輸液貯留部11と、輸液貯留部11に貯留されている輸液を外部に排出可能な輸液口金13とを有する輸液容器10と、輸液貯留部11の周囲を囲み輸液貯留部11の周囲に空間部Sを形成する筐体21と、外部から空間部Sに液体熱媒体を供給させる供給口金23と、空間部Sから外部に液体熱媒体を排出させる排出口金25と有する加温容器20とを備え、輸液口金13が、加温容器20の筐体21を貫通して外部に露出して配置されている輸液温調デバイス1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液温調デバイスおよび輸液温調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浄化処理等して患者に戻される血液とともに患者に注入される透析液や補充液等の輸液を患者の体温付近の温度まで加熱する加温装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の加温装置は、加温面部どうしが互いに対向して配置された状態で鉛直方向から所定の角度傾けて配置された2つの支持部材と、これら支持部材の加温面部どうしの間に挟まれるように配置され、輸液が収容された樹脂性の輸液容器とを備え、輸液容器内の輸液に対して2つの加温面部により2方向から熱伝達を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−56286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の加温装置は、輸液容器の姿勢が変化したり内容量が変動して形状が変化したりすると、加温面部と輸液容器との接触が面接触から線接触あるいは点接触になり、接触面積が著しく減少することとなる。そのため、熱交換効率が安定しないという問題がある。また、特許文献1に記載の加温装置は、固体(金属)の加温面部から固体(樹脂)の輸液容器へ熱伝達させるものであるため、熱交換効率が極めて低いという問題がある。そして、このような問題から、特許文献1に記載の加温装置は、輸液容器内の輸液を一様に加温することができず、輸液の温度が安定しないといった現象を発生させる懸念がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、輸液容器の姿勢や形状の変化に関わらず、高い熱交換率で輸液の温度を安定に保つことができる輸液温調デバイスおよび輸液温調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、輸液を貯留する樹脂材料からなる輸液貯留部と、該輸液貯留部に貯留されている輸液を外部に排出可能な輸液排出口金とを有する輸液容器と、前記輸液貯留部の周囲を囲み該輸液貯留部の周囲に空間部を形成する筐体と、外部から前記空間部に液体熱媒体を供給させる媒体供給口金と、前記空間部から外部に前記液体熱媒体を排出させる媒体排出口金と有する外側容器とを備え、前記輸液排出口金が、前記外側容器の前記筐体を貫通して外部に露出して配置されている輸液温調デバイスを提供する。
【0007】
本発明によれば、外部から媒体供給口金を介して外側容器に液体熱媒体が供給されると、その液体熱媒体が筐体内の空間部に流通されて媒体排出口金を介して外部に排出される。したがって、輸液よりも温度が高い液体熱媒体を供給することで、液体熱媒体が筐体内の空間部を流動する間に、輸液容器の輸液貯留部に貯留されている輸液に液体熱媒体の熱を伝達させ、輸液を加温することができる。これにより、輸液容器内で加温された輸液を輸液排出口金を介して外部に排出することができる。一方、輸液よりも温度が低い液体熱媒体を供給することで、液体熱媒体が筐体内の空間部を流動する間に、輸液容器の輸液貯留部に貯留されている輸液に液体熱媒体の熱を伝達させ、輸液を冷却することができる。これにより、輸液容器内で冷却された輸液を輸液排出口金を介して外部に排出することができる。
【0008】
この場合において、輸液貯留部の周囲に形成された空間部内に液体熱媒体を流通させることで、周囲全体から液体熱媒体の熱を輸液に伝達させ、輸液の内容量変化に伴い輸液貯留部の姿勢や形状が変化しても、輸液を略一様に加温または冷却することができる。したがって、輸液容器の姿勢や形状の変化に関わらず、高い熱交換率で輸液の温度を安定に保つことができる。
【0009】
上記発明においては、前記輸液容器が、前記輸液貯留部を貫通して前記空間部に流通する貫通孔を有することとしてもよい。
このように構成することで、液体熱媒体と輸液との間の熱伝達面積を増大し、輸液の加温時間または冷却時間を短縮するとともに、輸液をより均等に加温または冷却することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記貫通孔が、螺旋形状を有することとしてもよい。
このように構成することで、液体熱媒体と輸液との間の熱伝達面積をより効果的に増大させることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記輸液容器が、前記輸液貯留部の外表面および内表面の少なくとも一方に凹凸を有することとしてもよい。
このように構成することで、輸液貯留部の外表面と液体熱媒体との接触面積または輸液貯留部の内表面と輸液との接触面積を増大し、輸液貯留部の壁面を介して伝達される液体熱媒体と輸液との間の熱の伝達効率を増大することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記輸液貯留部が、湾曲して内側と外側に凹凸する壁面を有することとしてもよい。
このように構成することで、輸液貯留部の壁面と液体熱媒体および輸液との接触面積を増大することができる。また、輸液貯留部の壁面の凹凸に沿って、輸液貯留部内の輸液全体と熱伝達面との距離を近付け、輸液をより均等に加温または冷却するとともに加温時間または冷却時間を短縮することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記外側容器が、前記空間部内に供給された前記液体熱媒体を流動させる流路を形成する流路形成部材を有することとしてもよい。
このように構成することで、空間部内で液体熱媒体が淀むのを抑制して流動させ易くすることができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記外側容器が、前記媒体排出口金を鉛直方向上方に向けた姿勢で吊り下げ支持可能な支持部を備えることとしてもよい。
外側容器の空間部内に液体熱媒体とともにエアが溜まってしまうと、熱交換効率が低下してしまう問題が生じ得る。外側容器に備えられた支持部により、媒体排出口金を鉛直方向上方に向けた姿勢で外側容器が吊り下げ支持されることで、液体熱媒体よりも比重の軽いエア(例えば、泡。)を外部に排出し易くすることができる。これにより、デバイス全体の熱交換効率を向上させることができる。
【0015】
本発明は、上記いずれかの輸液温調デバイスと、該輸液温調デバイスに前記液体熱媒体を供給する熱媒体供給装置とを備え、該熱媒体供給装置が、前記液体熱媒体の温度を調整する温度調整部と、該温度調整部により調整された前記液体熱媒体の温度を測定する温度測定部と、前記媒体供給口金および前記媒体排出口金に接続され、前記液体熱媒体が流動する媒体配管と、該媒体配管および前記空間部内に前記液体熱媒体を循環させるポンプ部とを備える輸液温調デバイスとを備える輸液温調システムを提供する。
【0016】
本発明によれば、ポンプ部により媒体配管と空間部内を循環させられる液体熱媒体が、温度調整部により温度調整され、温度測定部によりその温度が計測される。したがって、温度測定部により測定される温度が目的の温度になるように温度調整部の作動を制御することで、液体熱媒体とともに、輸液容器内の輸液の温度を所望の温度に制御することができる。
【0017】
上記発明においては、前記熱媒体供給装置が、前記媒体配管に設けられ開放可能なエア抜き機構を備えることとしてもよい。
このように構成することで、エア抜き機構により、液体熱媒体に含まれる気泡を排出することができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記熱媒体供給装置が、前記輸液貯留部の容量以上の容量を有し前記液体熱媒体を貯留するバッファタンクを備えることとしてもよい。
このように構成することで、輸液容器内の輸液を輸液排出口金から排出することにより、輸液の減少による輸液貯留部の体積変化に伴い外側容器内に圧力変動が生じても、バッファタンクに貯留されている液体熱媒体を補給し、外側容器の圧力変動を緩和することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、輸液容器の姿勢や形状の変化に関わらず、高い熱交換率で液体の温度を安定に保つことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る輸液温調システムを示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態の一変形例に係る輸液温調システムを示す概略構成図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態の第1変形例に係る輸液温調デバイスを示す縦断面図であり、(b)は(a)の矢視Aから見た横断面図である。
【図4】(a)は第1変形例の別の変形例に係る輸液温調デバイスを示す縦断面図であり、(b)は(a)の矢視Bから見た横断面図である。
【図5】(a)は本発明の一実施形態の第2変形例に係る輸液温調デバイスを示す縦断面図であり、(b)は(a)の矢視Cから見た横断面図である。
【図6】(a)は本発明の一実施形態の第3変形例に係る輸液温調デバイスを示す縦断面図であり、(b)は(a)の矢視Dから見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る輸液温調デバイスおよび輸液温調システムについて、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る輸液温調システム100は、例えば、図示しない血液洗浄装置や細胞処理装置に用いることができ、患者(図示しない)に注入する輸液を加温することができるようになっている。輸液温調システム100を血液洗浄装置に用いる場合は、輸液として、例えば、透析液や患者の体内に戻す血液中の溶媒の減少を補うための補充液等が挙げられる。また、輸液温調システム100を細胞処理装置に用いる場合は、輸液として、例えば、リンゲル液等が挙げられる。
【0022】
この輸液温調システム100は、図1に示すように、輸液を加温する輸液温調デバイス1と、輸液温調デバイス1に対して輸液を加温する熱媒体(液体熱媒体)を供給する熱媒体供給装置3とを備えている。熱媒体としては液体が用いられる。
【0023】
輸液温調デバイス1は、輸液を収容する輸液容器10と、直方体のボックス状に形成され、輸液容器10を収容する加温容器(外側容器)20とを備え、輸液容器10と加温容器20との2重構造を有している。
【0024】
輸液容器10は、輸液を貯留する輸液貯留部11と、輸液貯留部11内の輸液を外部に排出可能な輸液口金(輸液排出口金)13とを備えている。
輸液貯留部11は、例えば、樹脂材料からなり、比較的柔らかい袋状に形成されている。この輸液貯留部11は、貯留する輸液の量により形状が変化するようになっている。
【0025】
輸液口金13は、輸液貯留部11の底部に設けられている。この輸液口金13は、加温容器20を貫通し、先端が加温容器20の外部に露出して配置されている。輸液口金13には、輸液ポンプ15を有する輸液配管17が接続されている。輸液ポンプ15の作動により、輸液貯留部11内の輸液を輸液口金13から輸液配管17を介して外部に排出することができるようになっている。
【0026】
加温容器20は、輸液貯留部11の周囲を囲み、輸液貯留部11の周囲に空間部Sを形成する筐体21と、熱媒体供給装置3から送られてくる熱媒体を空間部Sに供給させる供給口金23と、空間部Sに供給された熱媒体を熱媒体供給装置3へ戻す排出口金25と有している。
【0027】
筐体21の輸液貯留部11との間に形成される空間部Sは、供給口金23から供給され排出口金25から排出される熱媒体が流通する流路として機能するようになっている。筐体21には、輸液容器10の輸液口金13が貫通している。
【0028】
供給口金23は、筐体21の側面における下方に配置され、排出口金25は、筐体21の上部に配置されている。これにより、熱媒体供給装置3から送られてくる熱媒体は供給口金23を介して筐体21の下部側から空間部Sに流入され、空間部S内に充満たされた熱媒体は排出口金25を介して筐体21の上部から排出されて熱媒体供給装置3に戻されるようになっている。
【0029】
熱媒体供給装置3は、熱媒体を貯留するバッファタンク(バッファタンク、エア抜き機構)31と、バッファタンク31から送られてくる熱媒体を輸液温調デバイス1との間で循環させる媒体配管33と、媒体配管33内の熱媒体を流動させる媒体ポンプ35と、媒体配管33内の熱媒体の温度を調整するヒータ(温度調整部)37と、ヒータ37により調整された熱媒体の温度を測定する温度センサ(温度測定部)39とを備えている。
【0030】
バッファタンク31は、媒体配管33に接続されており、輸液貯留部11の容量以上の容量を有している。また、バッファタンク31は、上部が開放されており、熱媒体に含まれる気泡を外部に排出することができるようになっている。
【0031】
媒体配管33は、一端が加温容器20の供給口金23に接続され、他端が加温容器20の排出口金25に接続されている。
媒体ポンプ35は、バッファタンク31に貯留されている熱媒体を吸引して媒体配管33内を流動させるようになっている。また、媒体ポンプ35は、熱媒体を媒体配管33の一端から供給口金23を介して加温容器20に供給する一方、加温容器20から排出口金25を介して媒体配管33の他端から戻し、媒体配管33と加温容器20との間で熱媒体を循環させることができるようになっている。
【0032】
次に、このように構成された輸液温調デバイス1および輸液温調システム100の作用について説明する。
本実施形態に係る輸液温調デバイス1および輸液温調システム100により輸液を加温するには、まず、熱媒体供給装置3の媒体ポンプ35を作動させて、バッファタンク31に貯留されている熱媒体を吸引して媒体配管33内を流動させ、輸液が収容されている輸液温調デバイス1に供給する。
【0033】
輸液温調デバイス1に供給される熱媒体は、媒体配管33内を流動する際にヒータ37の作動により加熱され、温度センサ39の作動によりその温度が測定される。そして、熱媒体は、媒体配管33の一端から加温容器20の供給口金23を介して筐体21内に供給される。加温容器20の筐体21内に供給された熱媒体は、筐体21の輸液貯留部11との間の空間部Sを流通し、空間部S内に充満される。
【0034】
筐体21の空間部S内に充満された熱媒体は、加温容器20の排出口金25を介して排出され、熱媒体供給装置3の媒体配管33の他端から戻される。このようにして、熱媒体供給装置3の媒体配管33と輸液温調デバイス1の加温容器20の空間部Sとの間で熱媒体が循環させられる。
【0035】
したがって、輸液貯留部11内の輸液よりも高い温度に加熱した熱媒体を加温容器20の空間部S内に供給することで、熱媒体が筐体21内の空間部Sを流通する間に、熱媒体の熱を輸液貯留部11内の輸液に伝達させ、輸液を加温することができる。
【0036】
輸液容器10内で加温された輸液は、輸液ポンプ15の作動により、輸液口金13から輸液配管17を介して外部に排出される。この場合において、輸液の減少による輸液貯留部11の体積変化に伴い加温容器20内に圧力変動が生じても、バッファタンク31に貯留されている熱媒体を補給することで、加温容器20の圧力変動を緩和することができる。
【0037】
本実施形態に係る輸液温調デバイス1および輸液温調システム100によれば、輸液貯留部11の周囲に形成された空間部S内に液体の熱媒体を流通させることで、周囲全体から熱媒体の熱を輸液に伝達させることができる。また、空間部S内に熱媒体を充満させることで、輸液の内容量変化に伴い輸液貯留部11の姿勢や形状が変化しても、輸液を略一様に加温することができる。そして、温度センサ39により測定される熱媒体の温度が目的の温度になるようにヒータ37の作動を制御することで、熱媒体とともに、輸液容器10内の輸液の温度を所望の温度に加温することができる。したがって、輸液容器10の姿勢や形状の変化に関わらず、高い熱交換率で輸液の温度を安定に保つことができる。
【0038】
本実施形態においては、外側容器として加温容器20を例示し、温度調整部としてヒータ37を例示し、熱媒体供給装置3が輸液温調デバイス1に対して輸液を加温する液体熱媒体を供給し、輸液温調デバイス1が輸液を加温することとしたが、これに代えて、熱媒体供給装置3が輸液温調デバイス1に対して輸液を冷却する液体熱媒体を供給し、輸液温調デバイス1が輸液を冷却することとしてもよい。
【0039】
これにより、熱媒体供給装置3の温度調整部によって輸液よりも低い温度に冷却した液体熱媒体を輸液温調デバイス1に供給し、熱媒体が外側容器内の空間部30を流動する間に、輸液容器10の輸液貯留部11に貯留されている輸液に熱媒体の熱を伝達させ、輸液を冷却することができる。これにより、輸液容器10内で冷却された輸液を輸液口金13を介して外部に排出することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、例えば、図2に示すように、加温容器20が、排出口金25を鉛直方向上方に向けた姿勢で吊り下げ支持可能な支持部41を備えることとしてもよい。支持部41は、例えば、排出口金25が設けられている筐体21の上部に複数設けることとすればよい。同図においては、支持部41は、筐体21の上部の幅方向の両端付近にそれぞれ1つずつ配置されている。
【0041】
加温容器20の空間部30内に熱媒体とともにエアが溜まってしまうと、熱交換効率が低下してしまう問題が生じ得る。加温容器20に備えられた支持部41により、排出口金25を鉛直方向上方に向けた姿勢で加温容器20を吊り下げ支持することで、熱媒体よりも比重の軽いエア(例えば、泡。)を排出口金25から外部に排出し易くし、デバイス全体の熱交換効率を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態においては、エア抜き機構としてバッファタンク31を例示して説明したが、エア抜き機構をバッファタンク31とは別個に設けることとしてもよい。この場合、エア抜き機構は、媒体配管33に設け、開放可能にすることとすればよい。
【0043】
本実施形態は、以下のように変形することができる。
第1変形例は、図3(a),(b)に示すように、輸液容器10が、輸液貯留部11を貫通して空間部Sに流通する貫通孔11aを有することとしてもよい。貫通孔11aは、例えば、輸液貯留部11の底部の中央付近を上部に向かって(上下方向に)貫通し、貫通方向に直交する断面(幅方向断面)が円形状に形成されていることとしてもよい。本変形例においては、排出口金25が筐体21の側面における上方に配置されている。
【0044】
このようにすることで、空間部S内を流通する熱媒体の一部が貫通孔11aを流通することにより、熱媒体と輸液との間の熱伝達面積を増大するとともに、輸液貯留部11内の輸液全体と熱伝達面との距離を近付けることができる。したがって、輸液をより均等に加温するとともに、輸液の加温時間を短縮することができる。
【0045】
本変形例においては、図4(a),(b)に示すように、貫通孔11aが螺旋形状を有することとしてもよい。
このようにすることで、貫通孔11aを流通する熱媒体と輸液との間の熱伝達面積をより効果的に増大させることができる。
【0046】
また、第2の変形例は、例えば、図5(a),(b)に示すように、輸液貯留部11を構成する壁面11bが、湾曲して内側と外側に凹凸していることとしてもよい。壁面11bは、例えば、上下方向に交差する方向の断面が略矩形波状に湾曲し、内側に窪んだ凹状部および外側に突出した凸状部がそれぞれ輸液貯留部11の上下方向に延びていることとしてもよい。
【0047】
このようにすることで、輸液貯留部11の壁面11bと熱媒体および輸液との接触面積を増大することができる。また、輸液貯留部11の壁面11bの凹凸に沿って、輸液貯留部11内の輸液全体と熱伝達面との距離を近付け、輸液をより均等に加温するとともに加温時間を短縮することができる。
本変形例においては、壁面11bの上下方向に交差する方向の断面が略矩形波状に湾曲していることとしたが、壁面11bの上下方向に交差する方向の断面が正弦波状に湾曲していることとしてもよい。
【0048】
本変形例においては、輸液貯留部11の壁面11b自体が湾曲していることとしたが、輸液貯留部11の外表面および内表面の少なくとも一方が凹凸(図示略)を有することとしてもよい。外表面あるいは内表面の凹凸は、例えば、輸液貯留部11の内側に向かって窪み輸液貯留部11の上下方向に延びる溝によって形成されていることとしてもよい。
このようにすることで、輸液貯留部11の外表面と熱媒体との接触面積または内表面と輸液との接触面積を増大し、熱媒体と輸液との間の熱伝達面積をより効果的に増大させることができる。
【0049】
また、第3の変形例は、図6(a),(b)に示すように、加温容器20が、筐体21の内側側面に、空間部S内に供給される熱媒体を流動させる流路を形成する複数のじゃま板(バッフルプレート)のような仕切り板(流路形成部材)11cを有することとしてもよい。仕切り板11cは、例えば、筐体21の一対の対向する内側側面において、一方の内側側面から他方の内側側面に向かって空間部S内を筐体21の幅方向に延び、他方の内側側面との間に熱媒体が流通可能な隙間を有することとすればよい。また、これらの仕切り板11cは、筐体21の上下方向に所定の間隔をあけて配置され、一方の内側側面と他方の内側側面とに交互に設けられることとすればよい。また、仕切り板11cと他の一対の内側側面とは、前記他方の内側側面との間に設けられた熱媒体が流通可能な隙間部分を除いて接続されていることとすればよい。
【0050】
このようにすることで、供給口金23から空間部S内に供給された熱媒体は、仕切り板11cにより形成される流路に沿って空間部S内を段階的に上部に向かって流動し、排出口金25から排出させられる。したがって、空間部S内で熱媒体が淀むのを抑制して流動させ易くすることができる。また、筐体21の幅方向における熱媒体の温度勾配を最小限にすることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記一実施形態およびその変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。
【0052】
また、上記一実施形態およびその変形性においては、輸液口金13を輸液貯留部11の底部に設けることとしたが、輸液口金13を輸液貯留部11の側面に設けることしてもよい。また、供給口金23を筐体21の上部に設け、排出口金25を筐体21の下部に設ける等、供給口金23および排出口金25を筐体21の任意の位置に設けることとしてもよい。また、第1の変形例〜第3の変形例においても、筐体21に支持部41を設けることとし、筐体21の上部となる位置に排出口金25を配置して、支持部41により排出口金25を鉛直方向上方に向けた姿勢で加温容器20を吊り下げ支持することとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 輸液温調デバイス
3 熱媒体供給装置
10 輸液容器
11 輸液貯留部
11a 貫通孔
11b 壁面
11c 仕切り板
13 輸液口金(輸液排出口金)
20 加温容器(外側容器)
21 筐体
23 供給口金(媒体供給口金)
25 排出口金(媒体排出口金)
31 バッファタンク(エア抜き機構、バッファタンク)
33 媒体配管
35 媒体ポンプ(ポンプ部)
37 ヒータ(温度調整部)
39 温度センサ(温度測定部)
41 支持部
100 輸液温調システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液を貯留する樹脂材料からなる輸液貯留部と、該輸液貯留部に貯留されている輸液を外部に排出可能な輸液排出口金とを有する輸液容器と、
前記輸液貯留部の周囲を囲み該輸液貯留部の周囲に空間部を形成する筐体と、外部から前記空間部に液体熱媒体を供給させる媒体供給口金と、前記空間部から外部に前記液体熱媒体を排出させる媒体排出口金と有する外側容器とを備え、
前記輸液排出口金が、前記外側容器の前記筐体を貫通して外部に露出して配置されている輸液温調デバイス。
【請求項2】
前記輸液容器が、前記輸液貯留部を貫通して前記空間部に流通する貫通孔を有する請求項1に記載の輸液温調デバイス。
【請求項3】
前記貫通孔が、螺旋形状を有する請求項2に記載の輸液温調デバイス。
【請求項4】
前記輸液容器が、前記輸液貯留部の外表面および内表面の少なくとも一方に凹凸を有する請求項1から請求項3のいずれかに記載の輸液温調デバイス。
【請求項5】
前記輸液貯留部が、湾曲して内側と外側に凹凸する壁面を有する請求項1から請求項4のいずれかに記載の輸液温調デバイス。
【請求項6】
前記外側容器が、前記空間部内に供給される前記液体熱媒体を流動させる流路を形成する流路形成部材を有する請求項1から請求項5のいずれかに記載の輸液温調デバイス。
【請求項7】
前記外側容器が、前記媒体排出口金を鉛直方向上方に向けた姿勢で吊り下げ支持可能な支持部を備える請求項1から請求項6のいずれかに記載の輸液温調デバイス。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の輸液温調デバイスと、
該輸液温調デバイスに前記液体熱媒体を供給する熱媒体供給装置とを備え、
該熱媒体供給装置が、前記液体熱媒体の温度を調整する温度調整部と、
該温度調整部により調整された前記液体熱媒体の温度を測定する温度測定部と、
前記媒体供給口金および前記媒体排出口金に接続され、前記液体熱媒体が流動する媒体配管と、
該媒体配管および前記空間部内に前記液体熱媒体を循環させるポンプ部とを備える輸液温調デバイスとを備える輸液温調システム。
【請求項9】
前記熱媒体供給装置が、前記媒体配管に設けられ開放可能なエア抜き機構を備える請求項8に記載の輸液温調システム。
【請求項10】
前記熱媒体供給装置が、前記輸液貯留部の容量以上の容量を有し前記液体熱媒体を貯留するバッファタンクを備える請求項8または請求項9に記載の輸液温調システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−9834(P2013−9834A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144611(P2011−144611)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】