説明

輸送手段において駆動機構によって駆動される閉じる部分を操作するためのデバイスおよび方法

【課題】 輸送手段において駆動機構によって駆動される閉じる部分を操作するためのデバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】 輸送手段において駆動機構によって駆動される閉じる部分を操作するためのデバイスが、駆動機構に割り当てられ、閉じる部分の移動に逆らう措置を開始するように駆動機構を作動させるように構成された制御装置を備える。駆動機構は、電気的または電気機械的駆動機構として具体化される。閉じる部分の移動に関して駆動機構が制動モードになるように、駆動機構を制御装置によって作動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の、輸送手段において駆動機構(装置)によって駆動される閉じる部分を操作するためのデバイスに関する。また、本発明は、請求項8の前段に記載の、輸送手段において駆動機構によって駆動される閉じる部分を操作するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に、油圧駆動装置によって2つの終端位置の間で枢動させることができる車両の後尾ドアを操作するための方法が開示されている。後尾ドアが不適当に閉じることによって人に危険が及ばないように、閉止が妨害されている間、制御信号が発生され、この制御信号が、後尾ドアの下方への移動に反作用する逆パルスを出力するように駆動装置を作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2008 014 514 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、輸送手段において駆動機構によって駆動される閉じる部分を操作するためのデバイスおよび方法であって、閉じる部分の移動(動作)の制動操作を最小限の費用で実施することができるデバイスおよび方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有するデバイスおよび請求項8の特徴を有する方法によって実現される。さらなる有利な特徴は、従属請求項に記載されている。
【0006】
輸送手段において駆動機構によって駆動される閉じる部分を操作するための本デバイスは、駆動機構に割り当てられた制御装置を備える。制御装置は、閉じる部分の移動に逆らう措置を開始するように駆動機構を作動させるように構成される。駆動機構は、電気的または電気機械的駆動機構(装置)として具体化される。このような状況において、閉じる部分の移動に関して駆動機構が制動モードになるように、駆動機構を制御装置によって作動させることができる。用語「閉じる部分」は、本文においては、いくつか挙げると、例えば後尾ドア(尾板)、エンジンフード、サイドドア、またはリフトおよびスライドサンルーフなど、特に車両構成要素が含まれる。
【0007】
本発明の1つの変形実施形態では、デバイスは、駆動機構で、および/または駆動機構に機能的に接続された電気的構成要素で短絡を発生させることができる短絡発生手段を備える。この短絡が、最終的には駆動機構の制動効果をもたらす。短絡発生手段は、構造上簡単に構成でき、したがって制動効果を生み出す効果的な可能な方法となる。閉じる部分の移動に対する制動をもたらすモータの効果の実現に関して、想定可能な他の解決策も基本的にはあり得る。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、短絡発生手段によって駆動機構の端子間で(すなわちモータ端子間で)短絡を発生させることができる。
【0009】
本発明の1つの変形実施形態では、制御装置は、判断手段を割り当てられる。判断手段は、駆動機構を制動モードにするどうかを予め定められた判断基準に基づいて判断する。このような状況において、真の判断結果が得られたとき、制御装置は、閉じる部分の移動に関して駆動機構を制動モードにする。これにより、状況に応じて適切な判断を下すことによって快適で確実なデバイスの動作を提供することができるようになる。
【0010】
本発明の一実施形態では、デバイスは、閉じる部分の空間的位置および/または移動方向を検知するためのセンサシステムと、妥当性検査手段とを割り当てられる。妥当性検査手段は、センサシステムによって供給される出力信号の妥当性および/または整合性を検査するために使用される。駆動機構を制動モードにするかどうかの判断は、妥当性検査の結果を考慮してなされる。
【0011】
本発明の1つの変形実施形態では、制御装置は、制御ユニットに記憶される目標移動シーケンス計画に応じて駆動機構を作動させるように構成される。デバイスは、閉じる部分の目標移動シーケンスからの閉じる部分の実際の移動シーケンスのずれを検出するように構成された検出装置を割り当てられる。制御装置は、閉じる部分の目標移動シーケンスからの閉じる部分の実際の移動シーケンスのずれが検出されたときに、閉じる部分の移動に関して駆動機構を制動モードにするように構成される。目標移動シーケンスからの実際の移動のずれは、閉じる部分の意図していない動きによるものであることが多い。そのような意図していない動きは、運動学的関係の変化によって引き起こされることがあり、これは、例えば、車両が傾いた姿勢になっているときにサイドドアで生じる。全体として、上述した変形実施形態は、意図していない動きに関連する人身に対する危険性を低減する。
【0012】
本発明の一実施形態では、デバイスが警告装置を有し、駆動機構を制動モードにするという決定後に、人を保護するためのさらなる安全措置として、警告装置によって聴覚および/または視覚および/または触覚警告信号を出力することができる。
【0013】
本発明の1つの大きな利点は、駆動機能に常に必要である電気的または電気機械的駆動機構を2つの様式で使用することであり、これは閉じる部分の移動に反作用する逆パルスの作動を実施する特に効果的な可能な方法となる。
【0014】
以下に、本発明による方法の1つの例示的実施形態を、単一の添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】自動車に提供される後尾ドアを操作するための本発明による方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この方法は、以下に個々に記載する構成要素を備えるデバイス(図示せず)を用いて行われる。
−後尾ドアを駆動するための電気機械的駆動機構
−目標移動シーケンス計画が記憶され、それに従って後尾ドアの目標移動シーケンスを実行するように駆動機構を作動させる制御装置
−閉じる部分の空間的位置および/または移動方向を検知するためのセンサシステム
−指定されたセンサシステムによって供給される出力信号の妥当性および/または整合性を検査するように構成された妥当性検査手段
−駆動機構の端子間で短絡を発生させることができる短絡発生装置
この方法は、最初に、目標移動シーケンス計画に関係するデータを、データメモリに記憶し、後の処理および/または評価のために利用可能にする特定ステップS1を含む。
【0017】
特定ステップS1の後、この方法は第1の検査ステップP1に進み、ステップP1で、妥当性検査手段を使用して、センサシステムによって供給された出力信号の妥当性および/または整合性を検査する。
【0018】
検査ステップP1で真の妥当性検査結果が得られた場合、この方法は第2の検査ステップP2に進む。逆に、検査ステップP1で偽の妥当性検査結果が得られた場合、この方法は短絡発生ステップKに進む。
【0019】
短絡発生ステップKでは、駆動機構の端子間で(すなわちモータ端子間で)短絡が発生され、この短絡が、駆動機構での反力(ローレンツ力)を誘発する、または結果として反力を生じる。この反力により、最終的に後尾ドアの移動が減速される。
【0020】
第2の検査ステップP2では、後尾ドアの目標移動シーケンスからの後尾ドアの実際の移動シーケンスのずれが生じているかどうかが検査される。第2の検査ステップP2で真の検査結果が得られた場合、この方法は決定ステップEに進み、ステップEで、駆動機構の作動が変更されないと決定される。
【0021】
しかし、第2の検査ステップP2で偽の検査結果が得られた場合、この方法は、短絡発生ステップKに進む。
【0022】
当然、本発明による方法は、人の身体の一部が挟まれる危険があるので、特に、後尾ドア、サイドドア、または任意の他の閉じる部分の意図していない閉止方向への移動を監視するために使用される。
【0023】
「閉止方向」とは、本文においては、閉じる部分が少なくとも部分的に開いている開放位置から、開きを閉じるために移動される閉じる部分の移動方向を意味するものと理解されたい。
【符号の説明】
【0024】
S1 特定ステップ
P1 検査ステップ
P2 検査ステップ
K 短絡発生ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送手段において駆動機構によって駆動される閉じる部分を操作するためのデバイスであって、前記駆動機構に割り当てられ、前記閉じる部分の移動に逆らう措置を開始するように前記駆動機構を作動させるように構成された制御装置を備え、前記駆動機構が、電気的または電気機械的駆動機構として具体化され、前記閉じる部分の移動に関して前記駆動機構が制動モードになるように、前記駆動機構を前記制御装置によって作動させることができるデバイス。
【請求項2】
前記デバイスが短絡発生手段を備え、前記短絡発生手段によって、前記駆動機構で、および/または前記駆動機構に機能的に接続された電気的構成要素で、最終的に前記駆動機構の制動効果をもたらす短絡を発生させることができる請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記短絡を、前記駆動機構の端子間で発生させることができる請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記駆動機構を制動モードにするかどうかを予め定められた判断基準に基づいて判断する判断手段が前記制御装置に割り当てられる請求項1乃至3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスが、前記閉じる部分の空間的位置および/または移動方向を検知するためのセンサシステムと、妥当性検査手段とを割り当てられ、前記妥当性検査手段が、前記センサシステムによって供給された出力信号の妥当性を検査するために使用され、前記駆動機構を制動モードにするかどうかの判断が、前記妥当性検査の結果を考慮してなされる請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記制御装置が、制御ユニットに記憶された目標移動シーケンス計画に従って前記駆動機構を作動させるように構成され、前記デバイスが、前記目標移動シーケンスからの前記閉じる部分の実際の移動シーケンスのずれを検出するように構成された検出装置を割り当てられ、前記制御装置が、前記ずれが検出されたときに前記駆動機構を制動モードにするように構成される請求項1乃至5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが警告装置を有し、前記駆動機構を制動モードにするという決定後に前記警告装置によって警告信号を出力させることができる請求項4乃至6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
輸送手段において駆動機構によって駆動される閉じる部分を操作するための方法であって、デバイスが、前記駆動機構に割り当てられ、前記閉じる部分の移動に逆らう措置を開始するように前記駆動機構を作動させるように構成された制御装置を備え、前記駆動機構が、電気的または電気機械的駆動機構として具体化され、前記閉じる部分の移動に関して前記駆動機構が制動モードになるように、前記駆動機構が制御装置によって作動される方法。
【請求項9】
前記方法において、短絡発生手段が利用可能であり、前記短絡発生手段によって、前記駆動機構で、および/または前記駆動機構に動作接続された電気的構成要素で、最終的に前記駆動機構の制動効果をもたらす短絡が発生される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記短絡が、前記駆動機構の端子間で発生される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記制御装置が、前記駆動機構を制動モードにするかどうかを予め定められた判断基準に基づいて判断する判断手段を有する請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法において、前記閉じる部分の空間的位置および/または移動方向を検知するためのセンサシステムと、妥当性検査手段とが利用可能であり、前記妥当性検査手段が、前記センサシステムによって供給された出力信号の妥当性を検査するために使用され、前記駆動機構を制動モードにするかどうかの判断が、前記妥当性検査の結果を考慮してなされる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御装置が、制御ユニットに記憶された目標移動シーケンス計画に従って前記駆動機構を作動させるように構成され、前記デバイスが、前記目標移動シーケンスからの前記閉じる部分の実際の移動シーケンスのずれを検出するように構成された検出装置を割り当てられ、前記制御装置が、前記ずれが検出されたときに、前記閉じる部分の移動に関して前記駆動機構を制動モードにするように構成される請求項8乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記デバイスが警告装置を有し、前記駆動機構を制動モードにするという決定後に前記警告装置によって警告信号が出力される請求項8乃至13のいずれか一項に記載のデバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2011−21469(P2011−21469A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−142553(P2010−142553)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】