説明

輸送用冷凍装置

【課題】 走行用エンジンを停止しても、サブエンジンで運転される冷却庫用冷凍装置によりキャビン側休憩エリアの空調等を行うことが可能であり、かつ構成が簡素で低コストで製造することができる輸送用冷凍装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 冷却庫3内に設置されるエバポレータ29を含む冷却ユニット12と、エバポレータ29、冷媒圧縮機22、コンデンサ25、および膨張弁27が順次冷媒配管21により接続されて構成される冷凍サイクル20と、冷媒圧縮機22を駆動するサブエンジン41とを備えたサブエンジン駆動方式の輸送用冷凍装置10において、冷凍サイクル20には、エバポレータ29と並列に第2エバポレータ34が接続され、該第2エバポレータ34は、冷凍車両1におけるキャビン2内の休憩エリア8に設置される空調ユニット13を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転室(キャビン)の後方に冷却庫が設けられる冷凍車両に搭載されるサブエンジン駆動方式の輸送用冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍車両に搭載される輸送用冷凍装置は、大別すると、冷却庫内を冷却する冷凍装置の冷媒圧縮機を車両の走行用エンジンによって駆動する走行用エンジン駆動方式と、走行用エンジンとの別個に搭載される冷凍装置用のサブエンジンにより冷媒圧縮機を駆動するサブエンジン駆動方式とに分けられる。
また、冷却庫内の冷却およびキャビン内の空調(冷房)については、1系統の冷凍サイクルに複数のエバポレータを並列に接続し、1台の冷凍装置により行うものと、それぞれ独立した2系統の冷凍サイクルを有する2台の冷凍装置によって、個別に行うものとに分けられる。
【0003】
上記した走行用エンジン駆動方式であって、2個のエバポレータを並列に接続し、冷却庫内の冷却とキャビン内の空調とを1系統の冷凍サイクルにより行う構成としたものの例としては、例えば、特許文献1に示すものが知られている。また、サブエンジン駆動方式であって、冷却庫内を冷却する冷凍サイクルの冷媒圧縮機をサブエンジンにより駆動するとともに、キャビン内を空調する冷凍サイクルの冷媒圧縮機を走行用エンジンにより駆動し、更に、サブエンジンにより駆動される補助圧縮機をサブエンジンに付設して設け、この補助圧縮機をキャビン側空調用サイクルの冷媒圧縮機と並列に接続したものが特許文献2により提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−315753号公報
【特許文献2】特開2001−213222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷凍車両による長距離輸送時等において、ドライバーが駐車場に入って休憩(以下、本願において、「休憩」との表現には仮眠を含むものとする。)を取る場合、上記走行用エンジン駆動方式では、冷却運転のために、走行用エンジンを運転し続ける必要がある。従って、キャビン内の空調、照明あるいはラジオ等は、走行用エンジンが運転し続けている間は何時でも使用することができる。一方、サブエンジン駆動方式では、走行用エンジンを停止しても、サブエンジンにより冷却運転が可能なため、必要時以外は走行用エンジンを停止することができる。しかしながら、サブエンジン駆動方式であっても、キャビン内を空調したり、照明あるいはラジオを使用したりする場合には、走行用エンジンをアイドリング運転する必要がある。
【0006】
走行用エンジンの運転は、それがアイドリング運転といえども、エンジンの振動や騒音がキャビンに伝わることは避けられず、車両によっては、アイドリング時にキャビンが共振して振動が大きくなるものもあり、ドライバーの休憩を妨げ、ドライバーが十分に寛ぐことができなくなる。また、走行用エンジンは、排気量が大きいため、燃費の悪化をもたらし、輸送コストを増大させることになる。更に、アイドリング運転により排出される排気ガスは、環境に悪影響を及ぼすことから、厳しい目で見られる等、種々の問題を内包している。
【0007】
上記特許文献2に記載のものは、車両の走行時以外は、走行用エンジンを停止できる構成とし、上記問題を解消しようとするものである。しかし、そのためにキャビン用空調装置の冷媒圧縮機を2台並列に接続し、そのうちの1台を走行用エンジンで駆動し、他の1台を冷却庫用冷凍装置側のサブエンジン(ガスエンジン)で駆動する構成としており、冷却庫用冷凍装置の冷媒圧縮機を含めると、合計3台の圧縮機が必要となり、構成の複雑化や大幅なコストアップは避けられない等の課題を有している。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ドライバーが休憩する際、走行用エンジンを停止しても、サブエンジンで運転される冷却庫用冷凍装置によりキャビン側休憩エリアの空調等を行うことが可能であり、かつ構成が簡素で低コストで製造することができる輸送用冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の輸送用冷凍装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる輸送用冷凍装置は、冷凍車両の冷却庫内に設置されるエバポレータを含む冷却ユニットと、前記エバポレータ、冷媒圧縮機、コンデンサ、および膨張弁が順次冷媒配管により接続されて構成される冷凍サイクルと、前記冷媒圧縮機を駆動するサブエンジンとを備え、前記冷媒圧縮機、コンデンサ、サブエンジン等のコンデンシングユニット側機器が前記冷却庫の外部に搭載されるサブエンジン駆動方式の輸送用冷凍装置において、前記冷凍サイクルには、前記エバポレータと並列に第2エバポレータが接続され、該第2エバポレータは、前記冷凍車両におけるキャビン内の休憩エリアに設置される空調ユニットを構成することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、冷却庫内を冷却する冷凍サイクルのエバポレータと並列に第2エバポレータを接続し、この第2エバポレータによりキャビン側の休憩エリアを空調する空調ユニットを構成するようにしているため、長距離輸送時等において、ドライバーが休憩する場合、走行用エンジンを停止しても、サブエンジンにより運転される冷却庫用冷凍サイクルからキャビン側に設けられる空調ユニットに冷媒の一部を供給し、キャビン側の休憩エリアを空調することができる。従って、休憩時に走行用エンジンをアイドリング運転する必要がなく、このアイドリング運転により発生する振動および騒音、燃費の悪化、環境への悪影響等の問題をすべて解消することができる。また、冷却庫用の冷凍サイクルを共用してキャビン側の空調ユニットを構成しているため、最小限の部品追加によって、走行用エンジン停止時にも運転が可能なキャビン側空調ユニットを備えた、構成が簡素でかつ低コストの輸送用冷凍装置を製造することができる。
【0011】
また、本発明の輸送用冷凍装置は、上記の輸送用冷凍装置において、前記空調ユニットは、前記第2エバポレータと送風用ファンモータとを備え、該ファンモータには、前記冷凍装置のコンデンシングユニット側から電源が供給されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、空調ユニットが、第2エバポレータと送風用ファンモータとを備え、このファンモータには、冷凍装置のコンデンシングユニット側から電源が供給されるため、走行用エンジンを停止したままでも、キャビン側でファンモータを回転させ、空調ユニットを個別運転することができる。従って、休憩エリアの快適性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の輸送用冷凍装置は、上述のいずれかの輸送用冷凍装置において、前記冷凍装置のコンデンシングユニット側には、商用電源により駆動され、前記サブエンジンとのいずれかにより前記冷媒圧縮機を駆動する電動モータと、該電動モータまたは前記サブエンジンのいずれかにより駆動されるオルタネータとが設けられることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、冷凍装置のコンデンシングユニット側に、商用電源により駆動される電動モータおよびオルタネータが設けられるため、駐車場設備として商用電源が整えられている場所では、サブエンジンをも停止し、商用電源で駆動される電動モータによって冷媒圧縮機を駆動して冷却庫内の冷却およびキャビン側休憩エリアの空調を行うことができる。従って、この場合は、エンジン騒音の発生および排気ガスの排出を皆無にすることができる。
【0015】
また、本発明の輸送用冷凍装置は、上述のいずれかの輸送用冷凍装置において、前記空調ユニットの第2エバポレータは、前記冷却庫側から前記キャビン側への渡り部分に、フレキシブル冷媒配管を介装して前記冷凍サイクルに接続されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、空調ユニットの第2エバポレータは、冷却庫側からキャビン側への渡り部分に、フレキシブル冷媒配管を介装して冷凍サイクルに接続されるため、車両のキャビン側と冷却庫側とがそれぞれ別個に振動されても、フレキシブル配管によってその振動を吸収することができる。従って、走行時の振動等によって冷媒配管が破損されるのを確実に防止することができる。
【0017】
また、本発明の輸送用冷凍装置は、上述のいずれかの輸送用冷凍装置において、前記空調ユニットには、電源コネクタが設けられることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、空調ユニットに、電源コネクタが設けられているため、この電源コネクタにプラグ等を接続することにより、空調以外にも、照明やラジオ、その他の電気機器を接続して使用することが可能となる。これにより、休憩時の寛ぎ方を多様化させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、長距離輸送時等において、ドライバーが休憩する場合、走行用エンジンを停止しても、サブエンジンにより運転される冷却庫用冷凍装置からキャビン側の休憩エリアに設置される空調ユニットに冷媒の一部を供給し、キャビン側の休憩エリアを空調することができるため、休憩時に、走行用エンジンをアイドリング運転することにより発生する諸問題をすべて解消することができる。また、最小限の部品追加によって、走行用エンジン停止時にも運転が可能なキャビン側空調ユニットを備えた、新たな圧縮機等も必要としない構成が簡素でかつ低コストの輸送用冷凍装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図4を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る輸送用冷凍装置を搭載した冷凍車両の概略側面図が示され、図2には、図1におけるA−A矢視図が示されている。冷凍車両1は、キャビン2と、キャビン2から後方に延びるシャーシ上に搭載される冷却庫3とを有する。キャビン2側には、走行用エンジン4が搭載されるとともに、運転席(補助席を含む)5、ステアリングハンドル6、走行用エンジン4を駆動源とする圧縮機を備えた運転席用空調装置7、運転席5後方の休憩エリア8に設けられる休憩用ベッド9等が配設される。
【0021】
一方、冷凍車両1に搭載され、冷却庫3の冷却に供される輸送用冷凍装置10は、断熱壁11により構成される冷却庫3内に設置される冷却ユニット12と、キャビン2側の休憩エリア8に設置される空調ユニット13と、冷却庫3の下部等に設置されるコンデンシングユニット14と、を備え、これらのユニット間を、後記の冷凍サイクル20を構成する冷媒配管21を介して接続することにより構成される。このコンデンシングユニット14と空調ユニット13との間に接続される冷媒配管21のうち、少なくとも冷却庫側3からキャビン2側への渡り部に対応する部分は、相互に独立して振動する冷却庫3とキャビン2間の振動を吸収することができるようにフレキシブル冷媒配管21Aにより構成される。なお、上記冷却ユニット12、空調ユニット13、およびコンデンシングユニット14には、それぞれ後記するように、冷凍サイクル20を構成する各種機器が収容設置される。
【0022】
上記冷凍サイクル20は、図3に示されるように、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機22と、冷媒圧縮機22から電磁開閉弁23を経て導入される高温高圧の冷媒ガスを、ファンモータ24から送風される外気と熱交換させて凝縮液化するコンデンサ25と、コンデンサ25から電磁開閉弁26を経て供給される液冷媒を断熱膨張させる膨張弁27と、膨張弁27により断熱膨張された低温低圧の冷媒を導入し、ファンモータ28により循環される冷却庫3内の空気と熱交換させて蒸発気化させるエバポレータ29と、エバポレータ29で蒸発気化された冷媒ガスを冷媒圧縮機22に導く吸入圧調整弁30とが冷媒配管21を介して順次接続されることによって構成される。
【0023】
また、上記冷凍サイクル20には、コンデンサ25で凝縮液化された冷媒の一部を、電磁開閉弁31および膨張弁32を経て導入し、ファンモータ33により循環される空気と熱交換させて蒸発気化させる第2エバポレータ34が、エバポレータ29に対して並列に接続される。第2エバポレータ34で蒸発気化された冷媒ガスは、吸入圧調整弁35を経て冷媒圧縮機22に吸入される構成とされる。さらに、冷凍サイクル20には、冷媒圧縮機22から吐出された高温高圧の冷媒ガスを、電磁開閉弁36、ドレンパンヒータ37を経て直接エバポレータ29に導入し、エバポレータ29に着霜した霜を溶かすホットガスバイパス配管38と、同様に高温高圧の冷媒ガスを、電磁開閉弁39を介して第2エバポレータ34に導入する第2ホットガスバイパス配管40とが設けられる。
【0024】
上記の冷凍サイクル20を構成する膨張弁27、ファンモータ28、エバポレータ29およびレンパンヒータ37等の機器は、冷却ユニット12内に設けられ、また、膨張弁32、ファンモータ33および第2エバポレータ34等の機器は、空調ユニット13内に設けられ、それ以外の冷媒圧縮機22、ファンモータ24、コンデンサ25、電磁開閉弁23,26,31,36,39および吸入圧調整弁30,35等の機器は、コンデンシングユニット14内に設けられる。また、コンデンシングユニット14には、冷媒圧縮機22を駆動するサブエンジン41と、商用電源により駆動され、冷媒圧縮機22を駆動する電動モータ42と、サブエンジン41および電動モータ42の双方により駆動されるオルタネータ43とが設置される。
【0025】
上記の冷媒圧縮機22、サブエンジン41、電動モータ42、およびオルタネータ43は、図4に示すように、動力伝達ベルト44,45,46を介して互いに連結され、以下のような動力伝達系を構成している。サブエンジン41の動力は、冷媒圧縮機22のプーリ47とサブエンジン41のプーリ48との間に動力伝達ベルト44がテンションプーリ49を介して張設されることにより、冷媒圧縮機22に伝達される。また、電動モータ42の動力は、冷媒圧縮機22のプーリ47と電動モータ42のプーリ50との間に動力伝達ベルト45がテンションプーリ51を介して張設されることにより、冷媒圧縮機22に伝達される。なお、この場合、プーリ48に内蔵される遠心クラッチによりサブエンジン41には動力が伝達されないようになっている。さらに、電動モータ42とオルタネータ43間には、動力伝達ベルト46が張設され、オルタネータ43には、サブエンジン41および電動モータ42の双方から動力が伝達されるようになっている。
【0026】
つまり、サブエンジン41により冷媒圧縮機22を駆動する場合、プーリ47およびプーリ48、動力伝達ベルト44を介して冷媒圧縮機22に伝達され、更に、冷媒圧縮機22から動力伝達ベルト45、電動モータ42のプーリ50、および動力伝達ベルト46を介してオルタネータ43に伝達されるようになっている。この場合、電動モータ42は空転状態とされる。一方、商用電源で電動モータ42を駆動し、これにより冷媒圧縮機22を駆動する場合、プーリ48に内蔵されている遠心クラッチにより、サブエンジン41を動力伝達系から切り離し、電動モータ42の動力が、動力伝達ベルト45,46を介して冷媒圧縮機22およびオルタネータ43に伝達されるようにしている。
【0027】
オルタネータ43によって発電された電力は、冷却ユニット12に設けられているファンモータ28、空調ユニット13に設けられているファンモータ33、およびコンデンシングユニット14に設けられているファンモータ24等に供給され、ファンモータ駆動用の電源とされている。また、空調ユニット13には、ファンモータ33用に供給される電力を、他の照明あるいはラジオ等の電源として利用できるようにするため、電源コネクタ53(図1参照)が設けられ、このコネクタ53にプラグを接続することにより、他の電気機器の電源として利用できるようにしている。
【0028】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
冷凍車両1は、走行用エンジン4を動力源として走行され、走行中において、運転席5は、走行用エンジン4により駆動される運転席用空調装置7によって空調される。
一方、冷却庫3は、サブエンジン41により冷媒圧縮機22を駆動して冷媒ガスを圧縮し、この冷媒ガスをコンデンサ25で凝縮させた後、膨張弁27で断熱膨張させてエバポレータ29に導入することによって冷却される。つまり、冷却ユニット12では、ファンモータ28の回転により冷却庫3内の空気がエバポレータ29に循環され、この空気が低圧低温の二相冷媒と熱交換されて温度降下された後、冷却庫3内に吹き出されることによって、冷却庫3内の冷却を行っている。この冷却運転の間、電磁開閉弁31,36,39は閉じられており、冷媒圧縮機22で圧縮された冷媒はすべて、コンデンサ25、膨張弁27、エバポレータ29、および吸入圧調整弁30を経て冷媒圧縮機22に戻るサイクル内を循環され、冷却庫3の冷却に供される。
【0029】
ドライバーが休憩のために、冷凍車両1を駐車場等に駐車した場合、走行用エンジン4は停止される。この場合、走行用エンジン4により駆動される運転席用空調装置7も同時に運転が停止される。しかし、ドライバーが休憩している間も、冷却庫3に積まれている荷物を保護するため、冷凍装置10を運転し続ける必要があり、サブエンジン41はそのまま継続して運転される。この際、キャビン2内の休憩用ベッド9で寛いでいるドライバーが、休憩エリア8の温度上昇により冷房を欲した場合、空調ユニット13をオンすることによって、空調運転を開始することができる。
【0030】
空調ユニット13がオンされると、電磁開閉弁31が開とされ、冷媒の一部が膨張弁32を経て第2エバポレータ34に供給される。この冷媒は、ファンモータ33により循環される休憩エリア8の空気と熱交換され、空気から吸熱して蒸発されることにより循環空気を冷却し、これが冷房に供される。これにより、休憩のための駐車時において、走行用エンジン4を停止しても、冷却庫3の冷却に供される冷凍装置10を利用してキャビン2側の休憩エリア8を空調することができる。また、空調ユニット13に設けられている電源コネクタ53を利用し、これにプラグを接続することにより、照明やラジオ、あるいはその他の電気機器を使用することができる。
【0031】
また、駐車場の設備として、商用電源が整えられている場所では、サブエンジン41の運転をも停止し、商用電源により駆動される電動モータ42で冷媒圧縮機22を駆動することによって、上記と同様の冷却運転および空調運転を行うことができる。従って、この場合は、走行用エンジン4およびサブエンジン41を共に停止して、冷却運転および空調運転を行うことができる。なお、オルタネータ43は、サブエンジン41または電動モータ42の何れかが運転されておれば駆動されるため、冷却ユニット12、空調ユニット13、およびコンデンシングユニット14に対して、電力の供給が中断されることはない。
【0032】
従って、本実施形態によると、長距離輸送時等において、ドライバーが休憩する場合、走行用エンジン4を停止しても、サブエンジン41または電動モータ42により運転される冷却庫用冷凍装置10の冷凍サイクル20からキャビン2側の空調ユニット13に冷媒の一部を供給し、キャビン2側の休憩エリア8を個別に空調することができる。このため、休憩エリア8の快適性を向上させることができる。また、休憩時に走行用エンジン4をアイドリング運転する必要がなく、アイドリング運転することにより発生していた諸問題をすべて解消し、キャビン2側をアイドリング運転による振動および騒音から開放することができる。排気量の大きい走行用エンジンをアイドリング運転する場合に比べ、燃費を向上させ、輸送コストを低減することができる。排気ガスの排出量を低減し、環境対策に資することができる等の効果を得ることができる。特に、電動モータ42を駆動源とする場合は、エンジン騒音の発生および排気ガスの排出を皆無にすることができる。
【0033】
また、冷却庫3用の冷凍サイクル20を共用してキャビン2側の空調ユニット13を構成しているため、最小限の部品追加によって、走行用エンジン停止時にも運転が可能なキャビン側空調ユニット13を備えた、構成が簡素でかつ低コストの輸送用冷凍装置10を製造することができる。また、キャビン側空調ユニット13の第2エバポレータ34は、冷却庫3側からキャビン2側への渡り部分に、フレキシブル冷媒配管21Aを介装して冷凍サイクル20に接続されているため、キャビン2側と冷却庫3側とがそれぞれ別個に振動されても、フレキシブル冷媒配管21Aによってその振動を吸収することができる。このため、走行時の振動等によって冷媒配管21,21Aが破損されるのを確実に防止することができる。
【0034】
更に、キャビン側空調ユニット13には、電源コネクタ53が設けられているため、このコネクタ53にプラグ等を接続することによって、空調以外にも、照明やラジオ、その他の電気機器を接続して使用することができるようになる。これによって、休憩時の寛ぎ方を多様化させることができ、快適性の向上に資することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記した実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、冷却ユニット12とコンデンシングユニット14とが分離されたセパレートタイプの輸送用冷凍装置10が示されているが、これは両ユニットが一体化されたタイプのものであってもよく、更には、セパレートタイプの場合には、3ユニット以上に分離される構成のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る輸送用冷凍装置が搭載された冷凍車両の概略側面図である。
【図2】図1におけるA−A矢視相当図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る輸送用冷凍装置における冷凍サイクルの構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る輸送用冷凍装置における冷媒圧縮機の駆動系統の構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 冷凍車両
2 キャビン
3 冷却庫
8 休憩エリア
10 輸送用冷凍装置
12 冷却ユニット
13 空調ユニット
14 コンデンシングユニット
20 冷凍サイクル
21 冷媒配管
21A フレキシブル冷媒配管
22 冷媒圧縮機
25 コンデンサ
27 膨張弁
29 エバポレータ
33 ファンモータ
34 第2エバポレータ
41 サブエンジン
42 電動モータ
43 オルタネータ
53 電源コネクタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍車両の冷却庫内に設置されるエバポレータを含む冷却ユニットと、前記エバポレータ、冷媒圧縮機、コンデンサ、および膨張弁が順次冷媒配管により接続されて構成される冷凍サイクルと、前記冷媒圧縮機を駆動するサブエンジンとを備え、前記冷媒圧縮機、コンデンサ、サブエンジン等のコンデンシングユニット側機器が前記冷却庫の外部に搭載されるサブエンジン駆動方式の輸送用冷凍装置において、
前記冷凍サイクルには、前記エバポレータと並列に第2エバポレータが接続され、該第2エバポレータは、前記冷凍車両におけるキャビン内の休憩エリアに設置される空調ユニットを構成することを特徴とする輸送用冷凍装置。
【請求項2】
前記空調ユニットは、前記第2エバポレータと送風用ファンモータとを備え、該ファンモータには、前記冷凍装置のコンデンシングユニット側から電源が供給されることを特徴とする請求項1に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項3】
前記冷凍装置のコンデンシングユニット側には、商用電源により駆動され、前記サブエンジンとのいずれかにより前記冷媒圧縮機を駆動する電動モータと、該電動モータまたは前記サブエンジンのいずれかにより駆動されるオルタネータとが設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項4】
前記空調ユニットの第2エバポレータは、前記冷却庫側から前記キャビン側への渡り部分に、フレキシブル冷媒配管を介装して前記冷凍サイクルに接続されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の輸送用冷凍装置。
【請求項5】
前記空調ユニットには、電源コネクタが設けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の輸送用冷凍装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−202910(P2008−202910A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42318(P2007−42318)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】