説明

農業用トラクタ

【課題】後輪フェンダ上の空間を有効利用しつつ、操作具の配置が後輪フェンダのサイズに影響されないような農業用トラクタを提供する。
【解決手段】トラクタは、後輪フェンダ15と、運転座席14と、アームレスト31と、第2操作具群(60,61)と、を備える。後輪フェンダ15は、運転座席14の側方に配置される。アームレスト31は、運転座席14の側方であって、その一部が後輪フェンダ15の上に張り出すように配置されるとともに、第1操作具群(33,39)を備える。第2操作具群は、後輪フェンダ15と運転座席14との間に配置される。また、第2操作具群は、側面視で、アームレスト31より下の位置に配置される。そして、アームレスト31の前側端部は、後側端部に比べて、平面視で車体左右方向外側に寄って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタが備える各種操作具の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用トラクタにおいては、主変速操作、PTOクラッチ操作、作業機の昇降操作など、様々な種類の操作をオペレータが行う必要があるため、運転座席まわりには多数の操作具が配置される。特に小型タイプのトラクタにおいては、操作具を配置するスペースが限られているため、従来から操作具の配置に様々な工夫が凝らされている。
【0003】
例えば特許文献1には、アームレストに各種操作具を配置した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−335429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アームレストに配置できる操作具の数は限られている。農業用トラクタは多数の操作具を備える必要があるため、アームレストに配置できなかった操作具は他の位置に配置せざるを得ない。しかしながら、特許文献1には、アームレスト以外の操作具の配置については特に記載されていない。
【0006】
この点、従来の農業用トラクタでは、例えば後輪フェンダの上面に操作具が配置される場合がある。即ち、後輪フェンダは運転座席のすぐ側方に配置されているため、その上面に操作具を配置すれば、運転座席に座ったオペレータから操作し易い位置となる。従って、フェンダの上側の空間は、操作具を配置するスペースとして特に好適である。
【0007】
ここで、アームレストを備えたトラクタの場合、後輪フェンダの上面に配置された操作具を操作しようとするオペレータは、アームレスト越しに手を伸ばして操作を行う必要があるが、その際、アームレストに置いている肘や手の位置を都度変更しなければならない。従って、後輪フェンダ上の操作具を快適に操作するためには、当該後輪フェンダ上の操作具と、アームレストと、の位置関係が重要となる。即ち、アームレストに対して、後輪フェンダ上の操作具の位置が高過ぎたり低過ぎたりした場合、手や肘の位置を大きく動かさなければならず、極めて操作を行いにくいということになってしまう。
【0008】
しかしながら、農業用トラクタにおいては、車種やタイヤサイズに応じて、フェンダのサイズを異ならせる場合があるという事情がある。このようにフェンダのサイズを車種ごとに異ならせると、当該フェンダの上面に配置される操作具の高さも、車種ごとに異なることになってしまう。従って、車種によっては、アームレストと、フェンダ上の操作具と、の位置関係が不適切となってしまう場合があった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、後輪フェンダ上の空間を有効利用しつつ、操作具の配置が後輪フェンダのサイズに影響されないような農業用トラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の農業用トラクタが提供される。即ち、この農業用トラクタは、後輪フェンダと、運転座席と、アームレストと、少なくとも1つの操作具を含む第2操作具群と、を備える。前記後輪フェンダは、前記運転座席の側方に配置される。前記アームレストは、前記運転座席の側方であって、少なくともその一部が前記後輪フェンダの上に張り出すように配置されるとともに、少なくとも1つの操作具を含む第1操作具群を備える。前記第2操作具群は、前記後輪フェンダと前記運転座席との間に配置される。また、前記第2操作具群は、側面視で、前記アームレストより下の位置に配置される。そして、前記アームレストの前側端部は、後側端部に比べて、平面視で車体左右方向外側に寄って配置されている。
【0012】
このようにアームレストをフェンダの上に張り出すようにして配置することにより、フェンダの上方のスペースを有効利用することができる。また、前側端部が車体外寄りになるようにアームレストを斜めに配置することにより、運転座席と後輪フェンダとの間に第2操作具群を配置できるスペースを広くとることができる。
【0013】
前記の農業用トラクタは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記後輪フェンダ上にはグリップが取り付けられている。前記グリップは、平面視で、前記アームレストの前側端部よりも後側に配置されている。また、平面視で、前記アームレストの車体前後方向外側の側面と、前記グリップと、の間には所定の間隔が形成されている。
【0014】
このようにフェンダ上にグリップを配置することにより、例えばオペレータが上半身を捻って後方を確認する際に、当該グリップを握って身体を捻ることにより、無理なく後を振り返ることができる。また、アームレストとグリップとの間に間隔を形成しておくことにより、アームレストとグリップとの間に腕を置くことができる。
【0015】
前記の農業用トラクタは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記後輪フェンダ上には、後輪のブレーキを操作するためのブレーキスイッチが取り付けられている。平面視で、前記ブレーキスイッチは、アームレストの前側端部よりも後寄り、前記グリップの前側端部よりも前寄り、かつ、アームレストの車体左右方向外側の側面よりも外寄りの位置に配置されている。
【0016】
ブレーキスイッチを上記のように配置することで、アームレストとグリップとの間に腕を置いた状態で、ブレーキスイッチを手元で操作することができる。
【0017】
前記の農業用トラクタにおいて、前記第1操作具群は、車体の走行速度を設定するための車速設定操作具を含んでおり、当該車速設定操作具は、前記アームレストの前寄りの位置に配置されることが好ましい。
【0018】
即ち、アームレストの先端部分は、当該アームレストに腕を乗せたオペレータのちょうど手元に該当する位置であるため、最も操作頻度の高い変速操作具を配置することが好適である。
【0019】
前記の農業用トラクタは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記車速設定操作具は、支点を中心に回動するレバー状の車速設定レバーである。平面視で、前記車速設定レバーの回動範囲の少なくとも一部が前記後輪フェンダにオーバーラップしている。また、側面視で、前記車速設定レバーの回動範囲の下端部は、前記後輪フェンダの上端よりも下にある。
【0020】
これにより、運転座席に座ったオペレータの脚に当たりにくいようにアームストを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る農業用トラクタの側面図。
【図2】トラクタの底面を示す斜視図。
【図3】運転座席まわりの様子を示す斜視図。
【図4】運転座席側方の操作具を主に示す平面図。
【図5】アームレストの取り付け構造を示す斜視図。
【図6】アームレストと第2操作具群との位置関係を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る農業用トラクタ1の側面図を示している。このトラクタ1は、左右一対の前輪11及び後輪12を備えた四輪式の車体10を有している。
【0023】
車体10の前部にはボンネット13が、ボンネット13の後方には運転座席14が配置されている。また、後輪12の上方は、後輪フェンダ15によって覆われている。なお、この後輪フェンダ15は運転座席14の側方に位置しており、運転座席14は左右の後輪フェンダ15に挟まれるようにして配置されている。また、車体10の後方には、耕耘機20等の作業機を連結することができる。
【0024】
前記ボンネット13の内部にはエンジン16が配置されている。一方、運転座席14の下方には、HMT(油圧機械式無段変速装置)等を内蔵したミッションケース18が配置されている。エンジン16の出力は、図略の駆動伝達軸等を介してミッションケース18に伝達され、前記HMTによって適宜変速される。また、車体10の下部には、車体前後方向に沿って設けられた左右一対のシャーシフレーム5が配置されている。このシャーシフレーム5は、車体10の骨格となる部材であり、エンジン16及びミッションケース18等は、このシャーシフレーム5に対して直接又は間接的にマウントされている。このシャーシフレーム5の様子を、図2に示す。なお、図2においては、シャーシフレーム5の様子をより良く示すため、前輪11及び後輪12は省略している。
【0025】
左右のシャーシフレーム5の間には一定のスペースが形成されており、このスペースに各種ホース、フィルタ類を配置することができる。また、このホース、フィルタ類が配置されたスペースを車体10の下側から覆うように、残稈ガード19が取り付けられている。この残稈ガード19はプレート状の部材であって、左右のシャーシフレーム5の間をまたぐように配置されている。
【0026】
即ち、仮に残稈ガード19を設けない構成とした場合は、シャーシフレーム5の間に配置されたホース、フィルタ類が車体10の下方に露出することになる。このようにホース、フィルタ類が露出している状態で、残稈が残った圃場の耕耘作業等を行うと、前記露出したホース、フィルタ類に残稈が突き刺さり、当該ホース、フィルタ類が損傷するおそれがある。そこで、上記のように残稈ガード19によって車体下部を覆い、ホース、フィルタ類を保護することにより、残稈が残った状態で耕耘作業を行う場合であっても、ホース、フィルタ類が損傷してしまうことを防ぐことができる。
【0027】
また、エンジン16の駆動力の一部は、PTO軸17に伝達される。図1に示すように、このPTO軸17には、前記耕耘機20等の作業機を連結可能である。この構成で、車体10の後方に接続された耕耘機20に対してPTO軸17を介して駆動力を伝達し、当該耕耘機20を駆動して耕耘作業等を行うことができる。
【0028】
次に、図3及び図4を参照して運転座席14まわりに配置された各種操作具について説明する。運転座席14の前方には、車体10を操向操作するためのステアリングハンドル30が配置されている。また、運転座席14の右側方にはアームレスト31が配置されている。このアームレスト31には、車速設定レバー33、PTOスイッチ39等の第1操作具群が配置されている。
【0029】
また、運転座席14に座ったオペレータの足元に対応する位置には、左の後輪ブレーキを操作するための左ブレーキペダル34と、右の後輪ブレーキを操作するための右ブレーキペダル35が配置されている。例えば車体10を急旋回させる場合、オペレータは、旋回方向内側の後輪に対応する側のブレーキペダルを踏み込み操作を行う。これにより、旋回方向内側の後輪12にブレーキを効かせることができるので、足場の悪い圃場内であっても旋回性を向上させて急旋回を行うことができる。
【0030】
また、右の後輪フェンダ15の上には、ブレーキスイッチ40が配置されている。ブレーキスイッチ40は、オペレータが左右の後輪ブレーキを手動操作するためのスイッチであり、一種のトグルスイッチとして構成されている。ブレーキスイッチ40は、左位置(スイッチを左に傾けた位置)と、中立位置と、右位置(スイッチを右に傾けた位置)と、のうち何れか1つの状態を選択することができるように構成されている。そして、ブレーキスイッチ40を左位置に操作すると左の後輪12にブレーキが掛かり、右位置に操作すると右の後輪12にブレーキが掛かるように構成されている。
【0031】
また、運転座席14と後輪フェンダ15との間には、作業機昇降レバー60及び操作盤ユニット61等の第2操作具群が配置されている。作業機昇降レバー60は、オペレータが回動操作するとことにより、耕耘機20等の作業機を上下に昇降させることができるように構成されている。また、操作盤ユニット61は、耕耘機20の耕深さを設定する耕深さ設定ダイヤル62、耕耘機20の左右傾斜角を設定する傾斜設定レバー63などを備えている。
【0032】
次に、アームレスト31の構成について詳しく説明する。図4に示すように、アームレスト31は、右の後輪フェンダ15の上に張り出すようにして設けられている。そして、このアームレスト31は、後輪フェンダ15の上に張り出している部分に、車速設定レバー33、PTOスイッチ39等の操作具(第1操作具群)を備えている。この構成により、後輪フェンダ15の上方の空間を有効利用して操作具を配置することができる。
【0033】
車速設定レバー33は、オペレータがアームレスト31に腕を置いたときの手元で操作できる位置(アームレスト31の前側端部近傍)に配置されている。即ち、車速設定レバー33は、特に使用頻度の高い操作具であるため、オペレータが最も操作し易い位置に配置されている。車速設定レバー33は、支点を中心にして車体略前後方向に回動可能に構成されている。そして、この車速設定レバー33の操作量に基づいて、前記HMTの変速比が変更されるように構成されている。即ち、オペレータは車速設定レバー33を操作することによって、車体10の走行速度を任意に設定することができる。
【0034】
また、アームレスト31には、車速設定レバー33よりも後ろ寄りの位置に、PTOスイッチ39が配置されている。このPTOスイッチ39は、PTO軸17に対して動力を伝達しているPTOクラッチ(図略)を断接制御するためのスイッチである。オペレータは、このPTOスイッチ39を操作することにより、車体後方の耕耘機20を、作動状態又は非作動状態に切り替えることができる。
【0035】
なお、従来から、後輪フェンダ15の上面に操作具等を配置する構成は知られている。このように後輪フェンダ15の上面に操作具を配置する構成も、後輪フェンダ15上方の空間を有効利用するという観点では、本実施形態のアームレスト31と共通点を有している。しかしながら前述のように、後輪フェンダ15の上面に操作具を配置する構成では、当該後輪フェンダ15のサイズが変更されると操作具の高さも変わってしまい、操作性が悪化してしまう場合があるという問題があった。
【0036】
この点、本実施形態のトラクタ1が備える車速設定レバー33やPTOスイッチ39のように、アームレスト31に配置されている第1操作具群は、後輪フェンダ15からは独立しているので、後輪フェンダ15のサイズの変更によって位置が変化してしまうということがない。従って、本実施形態の構成によれば、後輪フェンダ15の上方の空間を有効利用しつつ、後輪フェンダ15のサイズにかかわらず操作具の操作性を良好に保つことができる。
【0037】
ここで、アームレスト31の取り付け構造を説明するため、後輪フェンダ15を取り外したときの様子を図5に示す。図5に示すように、本実施形態のアームレスト31は、運転座席14が支持されているフロアフレーム64に対して、支持フレーム65を介して取り付けられている。即ち、アームレスト31は、後輪フェンダ15とは独立した取り付け構造によって固定されており、後輪フェンダ15に対しては連結されていない。従って、後輪フェンダ15のサイズ等が異なる場合でも、アームレスト31の取り付け構造は影響受けない。この点でも、本実施形態のトラクタ1は、後輪フェンダ15のサイズによらず第1操作具群の位置を一定に保つことができるといえる。
【0038】
次に、アームレスト31と、第2操作具群(作業機昇降レバー60及び操作盤ユニット61)と、の位置関係について説明する。運転座席を省略した側面図(図6)に示すように、側面視では、アームレスト31の底面よりも下の位置に、第2操作具群が配置されている。このように、第2操作具群はアームレスト31よりも低い位置にあるので、例えば第2操作具群の直上にアームレストを配置するレイアウト(平面視で、第2操作具群にアームレスト31がオーバーラップするレイアウト)も考えることができる。
【0039】
しかしながら、第2操作具群にアームレスト31がオーバーラップしていると、運転座席14に座ったオペレータからは、アームレスト31の下にある第2操作具群が見えないうえ、第2操作具群を操作するためにはアームレスト31の下に手を差し込むようにして操作しなければならず、操作性が極めて悪い。
【0040】
そこで、第2操作具群とアームレスト31がオーバーラップしないようにするため、アームレスト31全体を、車体左右方向の外側へ移動させることも考えられる。しかし、アームレスト31を外側へ移動させ過ぎると、アームレスト31が身体から離れた位置になるため腕を置きにくくなってしまい、快適性が損なわれる。このように、アームレスト31を備えた構成では、運転座席14と後輪フェンダ15との間に操作具を配置しにくいという問題がある。このため、従来のトラクタでは、運転座席14と後輪フェンダ15との間の空間はあまり活用されておらず、後輪フェンダ15の上面に操作具を配置する構成が採られる場合が多かった。例えば、従来のトラクタの中には、操作盤ユニット61を後輪フェンダ15上に配置した例もある。
【0041】
ところで、オペレータが運転座席14に座った姿勢において、腕の先端(手)は、肘を中心として比較的自由に動かすことができる。一方、オペレータが運転座席14に座った姿勢において、肘の位置が身体から大きく離れてしまうと、不自然な姿勢となり、快適性が損なわれる。この点を考慮すれば、アームレスト31の肘を置く部分は運転座席14の側方から大きく離れた位置に配置することはできないものの、アームレスト31の手を置く部分は運転座席の側方から離れた位置に配置しても問題は少ないといえる。
【0042】
この点に着目し、本実施形態のアームレスト31は、図4に示すように、肘を置く部分(アームレスト31の後側端部)は運転座席14の側部に近い位置に配置しつつ、手を置く部分(アームレスト31の前側端部)は、車体左右方向で外寄りに配置している。即ち、アームレスト31の先端が外向きになるように斜めに配置している。
【0043】
これにより、アームレスト31と運転座席14の側面との間には、平面視で、前方に向かって広がるような空間が形成される。即ち、オペレータがアームレスト31に腕を置いたときの快適性を確保しつつ、アームレスト31と運転座席14との間のスペースを大きくとることができる。そして本実施形態では、平面視で、運転座席14とアームレスト31との間に形成されたスペースに、第2操作具群を配置している。これにより、図4に示すように、アームレスト31が、第2操作具群(作業機昇降レバー60及び操作盤ユニット61)に対して平面視でオーバーラップしないように配置することができる。
【0044】
このように、第2操作具群に対してアームレスト31がオーバーラップしないように配置できるので、第2操作具群の操作性を向上させることができる。この結果、第2操作具群の位置(運転座席14と後輪フェンダ15との間)に、操作具を配置し易くなる。従って、例えば、従来のトラクタにおいて後輪フェンダ15の上面に配置していた操作盤ユニット61を、本実施形態のように運転座席14と後輪フェンダ15との間に移動させることが可能となる。これにより、後輪フェンダ15の上面に配置される操作具の数を減らす、或いは後輪フェンダ15上の操作具を無くすことができる。このように、本実施形態の構成によれば、後輪フェンダ上面に配置される操作具の数を減らすことができるので、後輪フェンダ15のサイズが変わって操作性が悪化してしまうという問題が発生しにくくなる。
【0045】
次に、図4及び図6を参照して、アームレスト31の配置について更に説明する。図4及び図6には、車速設定レバー33の回動範囲を、ハッチングで示している。図4に示すように、車速設定レバー33の回動範囲の一部は、平面視で、後輪フェンダ15にオーバーラップするように(重なるように)配置されている。また、図6に示すように、車速設定レバー33の回動範囲の下端部は、後輪フェンダの上端部よりも下方に位置している。アームレスト31をこのように配置することにより、当該アームレスト31の前側端部が、後輪フェンダ15の上方の空間に位置する。これにより、アームレスト31に対してオペレータの脚が当たりにくくすることができる。
【0046】
次に、後輪フェンダ15の上面に配置された構成について説明する。図4に示すように、後輪フェンダ15の上面には、アシストグリップ67が取り付けられている。このアシストグリップ67は、運転座席14に座ったオペレータが後方を確認する際に、握って上半身を捻るためのものである。アシストグリップ67は、アームレスト31の先端よりも後方に配置されている。
【0047】
図4に示すように、アームレスト31とアシストグリップ67との間には、オペレータが腕を置ける程度の間隔が空けられている。また、図4に示すように、ブレーキスイッチ40は、平面視でアームレスト31よりも外側に配置されている。また、当該ブレーキスイッチ40は、平面視で、アームレスト31の前側端部よりも後ろ側、かつ、アシストグリップ67の前側端部よりも前側の位置に配置されている。
【0048】
このようにブレーキスイッチ40を配置することにより、アームレスト31とアシストグリップ67との間に腕を置いたときに、ブレーキスイッチ40がオペレータの手元に位置するように配置することができる。これにより、アームレスト31とアシストグリップ67との間に腕を置いた状態で、ブレーキスイッチ40を簡単に操作することができる。
【0049】
以上で説明したように、本実施形態のトラクタ1は、後輪フェンダ15と、運転座席14と、アームレスト31と、第2操作具群と、を備える。後輪フェンダ15は、運転座席14の側方に配置される。アームレスト31は、運転座席14の側方であって、その一部が後輪フェンダ15の上に張り出すように配置されるとともに、第1操作具群を備える。第2操作具群は、後輪フェンダ15と運転座席14との間に配置される。また、第2操作具群は、側面視で、アームレスト31より下の位置に配置される。そして、アームレスト31の前側端部は、後側端部に比べて、平面視で車体左右方向外側に寄って配置されている。
【0050】
このようにアームレスト31を後輪フェンダ15の上に張り出すようにして配置することにより、後輪フェンダ15の上方のスペースを有効利用することができる。また、前側端部が車体外寄りになるようにアームレスト31を斜めに配置することにより、運転座席14と後輪フェンダ15との間に第1操作具を配置できるスペースを広くとることができる。
【0051】
また本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、後輪フェンダ15上にはアシストグリップ67が取り付けられている。アシストグリップ67は、平面視で、アームレスト31の前側端部よりも後側に配置されている。また、平面視で、アームレスト31の車体前後方向外側の側面と、アシストグリップ67と、の間には所定の間隔が形成されている。
【0052】
このように後輪フェンダ15上にアシストグリップ67を配置することにより、例えばオペレータが上半身を捻って後方を確認する際に、当該アシストグリップ67を握って身体を捻ることにより、無理なく後を振り返ることができる。また、アームレスト31とアシストグリップ67との間に間隔を形成しておくことにより、アームレスト31とアシストグリップ67との間に腕を置くことができる。
【0053】
また本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、後輪フェンダ15上には、後輪のブレーキを操作するためのブレーキスイッチ40が取り付けられている。平面視で、ブレーキスイッチ40は、アームレスト31の前側端部よりも後寄り、アシストグリップ67の前側端部よりも前寄り、かつ、アームレスト31の車体左右方向外側の端部よりも外寄りの位置に配置されている。
【0054】
ブレーキスイッチ40を上記のように配置することで、アームレスト31とアシストグリップ67との間に腕を置いた状態で、ブレーキスイッチ40を手元で操作することができる。
【0055】
また本実施形態のトラクタにおいて、第1操作具群は、車体10の走行速度を変更するための車速設定レバー33を含んでいる。この車速設定レバー33は、アームレスト31の前寄りの位置に配置される。
【0056】
即ち、アームレスト31の先端部分は、当該アームレスト31に腕を乗せたオペレータのちょうど手元に該当する位置であるため、最も操作頻度の高い車速設定レバー33を配置することが好適である。
【0057】
また本実形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、車速設定レバー33は、支点を中心に回動するレバー状の操作具である。平面視で、車速設定レバーの回動範囲の少なくとも一部が後輪フェンダ15にオーバーラップしている。また、側面視で、車速設定レバーの回動範囲の下端部は、後輪フェンダ15の上端よりも下にある。
【0058】
これにより、運転座席に座ったオペレータの脚に当たりにくいようにアームレスト31を配置することができる。
【0059】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0060】
第1操作具群、第2操作具群は上記の構成に限らず、どのような操作具を配置しても良い。
【0061】
ブレーキスイッチ、アシストグリップは省略しても良い。また、ブレーキスイッチを配置する位置は後輪フェンダの上に限らず、例えばアームレストにブレーキスイッチを配置する構成でも良い。
【0062】
上記実施形態の説明において、図面では運転座席が開放されているタイプのトラクタについて説明しているが、キャビンを備えたタイプのトラクタについても本発明の構成を適用することができる。
【0063】
変速装置はHMTに限らず、例えば静油圧式無段変速装置(HST)であっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 トラクタ
14 運転座席
15 後輪フェンダ
31 アームレスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席と、
前記運転座席の側方に配置される後輪フェンダと、
前記運転座席の側方であって、少なくともその一部が前記後輪フェンダの上に張り出すように配置されるとともに、少なくとも1つの操作具を含む第1操作具群を備えるアームレストと、
前記後輪フェンダと前記運転座席との間に配置された、少なくとも1つ操作具を含む第2操作具群と、
を備え、
前記第2操作具群は、側面視で前記アームレストより下の位置に配置され、
前記アームレストの前側端部は、後側端部に比べて、平面視で車体左右方向外側に寄って配置されることを特徴とする農業用トラクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の農業用トラクタであって、
前記後輪フェンダ上にはグリップが取り付けられており、
前記グリップは、平面視で、前記アームレストの前側端部よりも後側に配置されているとともに、
平面視で、前記アームレストの車体前後方向外側の側面と、前記グリップと、の間には所定の間隔が形成されていることを特徴とする農業用トラクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の農業用トラクタであって、
前記後輪フェンダ上には、後輪のブレーキを操作するためのブレーキスイッチが取り付けられ、
平面視で、前記ブレーキスイッチは、前記アームレストの前側端部よりも後寄り、前記グリップの前側端部よりも前寄り、かつ、前記アームレストの車体左右方向外側の側面よりも外寄りの位置に配置されていることを特徴とする農業用トラクタ。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の農業用トラクタであって、
前記第1操作具群は、車体の走行速度を設定するための車速設定操作具を含み、
当該車速設定操作具は、前記アームレストの前寄りの位置に配置されることを特徴とする農業用トラクタ。
【請求項5】
請求項4に記載の農業用トラクタであって、
前記車速設定操作具は、支点を中心に回動するレバー状の車速設定レバーであり、
平面視で、前記車速設定レバーの回動範囲の少なくとも一部が前記後輪フェンダにオーバーラップしており、側面視で、前記車速設定レバーの回動範囲の下端部は、前記後輪フェンダの上端よりも下にあることを特徴とする農業用トラクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−3640(P2012−3640A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139988(P2010−139988)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】