説明

農業用プラスチック製品の分別再生プラント

【課題】複数の材料のプラスチック製品が混在する被処理物を少ない手間で分別することができる農業用プラスチック製品の分別再生プラントを提供すること。
【解決手段】分別再生プラントは、主要な構成機器として、1次破砕機2と、第1洗浄脱水分別機3と、2次破砕機5と、比重分別機8と、湿式洗浄機としての円筒水洗機11と、第2洗浄脱水分別機14と、渦流乾燥機18とを備える。複数種類の材料の農業用プラスチック製品が混在してなる被処理物を、1次破砕機2と、第1洗浄脱水分別機3と、2次破砕機5と、比重分別機8で処理することにより、効果的に洗浄すると共に比重に基づいて分別する。さらに、被処理物を、水切コンベヤ9,10と、湿式洗浄機11と、第2洗浄脱水分別機14と、渦流乾燥機18とで処理することにより、効果的に付着物を除去して洗浄し、乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハウスの外張りフィルム等の農業用プラスチック製品を再生利用するための分別再生プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、農業では、ハウスの外張り及び内張りフィルムや、トンネルのフィルムや、被覆シート等の多くのプラスチック製品が用いられている。これらの農業用プラスチック製品は、ポリエチレンや、塩化ビニルや、ポリプロピレン等の多くの材料で形成されている。
【0003】
最近、資源の有効利用や環境への配慮のため、使用済みの農業用プラスチック製品の再利用が求められている。そのような要求を満たすため、従来、農業用のポリエチレン製品を、破砕工程と、洗浄工程と、脱水工程と、成形工程に付して、ペレット状のポリエチレン再生材を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、土が付着した使用済みのフィルムを、湿式洗浄破砕機で破砕して洗浄した後、さらに湿式洗浄破砕機で破砕して洗浄し、遠心分離装置で洗浄と脱水を行った後、脱水機で脱水させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、農場で実際に排出される使用済みのプラスチック製品は、異なる材料で形成されたものが混在している。したがって、上記従来の農業用ポリエチレンの再生方法を実際に採用するには、排出されたプラスチック製品からポリエチレン製以外のものを予め分別して除去しておく必要がある。したがって、再生のための処理に多大な手間がかかる問題がある。
【0006】
また、農場で排出されたプラスチック製品のうち、農地の畝に直接接触して用いられた被覆シートは、土や堆肥の付着量が特に多い。したがって、従来の農業用ポリエチレンの再生方法では、洗浄がなお不十分になりやすいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、複数の材料のプラスチック製品が混在する被処理物を少ない手間で分別することができ、また、土や堆肥の付着量が多くても効果的に洗浄できて、農場でのプラスチック製品の排出状況に現実的に対応できる農業用プラスチック製品の分別再生プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の農業用プラスチック製品の分別再生プラントは、
複数種類の材料の農業用プラスチック製品が混在してなる被処理物を1次破砕する1次破砕機と、
1次破砕機で破砕された被処理物が水と共に投入され、投入された被処理物に遠心力を付与することにより、被処理理物の洗浄と、重量物の分別除去と、脱水とを行う第1洗浄脱水分別機と、
第1洗浄脱水分別機で処理された被処理物を2次破砕する2次破砕機と、
2次破砕機で破砕された被処理物が投入される水槽を有し、投入された被処理物を、水に対する比重の差に基づいて材料毎に分別する比重分別機と、
比重分別機で分別された被処理物を洗浄する湿式洗浄機と、
湿式洗浄機で洗浄された被処理物が水と共に投入され、投入された被処理物に遠心力を付与することにより、被処理物の洗浄と、重量物の分別除去と、脱水とを行う第2洗浄脱水分別機と、
第2洗浄脱水分別機で処理された被処理物を、渦状に形成された通路に乾燥空気と共に流通させて乾燥させる渦流乾燥機と
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、複数種類の材料で形成された農業用プラスチック製品が混在してなる被処理物が、1次破砕機と、第1洗浄脱水分別機と、2次破砕機と、比重分別機で処理される。これにより、複数種類の材料の農業用プラスチック製品を、効果的に洗浄すると共に比重に基づいて分別することができる。さらに、比重分別機で分別された被処理物が、湿式洗浄機と、第2洗浄脱水分別機と、渦流乾燥機とで処理される。これにより、分別された被処理物を、効果的に付着物を除去して洗浄し、乾燥させることができる。したがって、複数種類の材料の農業用プラスチック製品が混在して排出されても、少ない手間で分別できる。また、農地の畝に直接接触して用いられた被覆シートのように土や堆肥の付着量が大きくても、付着物を効果的に除去できる。このように、本発明によれば、農業用プラスチック製品の排出状況に現実的に対応することができ、使用済みの農業用プラスチック製品を効果的に分別及び洗浄して、有効に使用できる再生材を得ることができる。
【0010】
なお、農業用プラスチック製品の分別再生プラントには、主要な装置としての1次破砕機と、第1洗浄脱水分別機と、2次破砕機と、比重分別機、湿式洗浄機と、第2洗浄脱水分別機と、渦流乾燥機以外に、水切りコンベヤやサイクロンセパレータ等の補助的な乾燥装置を適宜設けてもよい。
【0011】
一実施形態の農業用プラスチック製品の分別再生プラントは、上記第1及び第2洗浄脱水分別機は、
一端に被処理物の投入口を有すると共に他端に被処理物の排出口を有するケーシングと、
ケーシング内に配置され、投入口から投入された被処理物と水に、ケーシング内の一端側から他端側に送りをかけながら遠心力を与えるように回転駆動される回転体と、
回転体の外周側を取り囲むように配置され、回転体から与えられた遠心力によって被処理物から分離した粒状物と水を通過させ、外径側に排出する有孔筒と、
粒状物と水が分離された被処理物を、有効筒内からケーシング外に排出する被処理物排出部と、
有孔筒から排出された粒状物と水を集めてケーシング外に排出する分離物排出部と
を有する。
【0012】
上記実施形態によれば、例えば農地の畝に直接接触して用いられた被覆シート等のように、土や堆肥等の付着物が比較的多く付着した農業用プラスチック製品を、効果的に洗浄することができる。したがって、使用済みの農業用プラスチック製品から、有効に使用できる再生材を得ることができる。
【0013】
一実施形態の農業用プラスチック製品の分別再生プラントは、上記比重分別機は、分離洗浄用の水を貯留する水槽と、
水槽の水の中に被処理物を投入する投入部と、
水槽の水の下部から、沈下した被処理物を排出する沈下物排出部と、
水槽の水の上部から、浮上した被処理物を回収する浮上物回収部と、
浮上物回収部で回収された被処理物を排出する浮上物排出部と
を有する。
【0014】
上記実施形態によれば、水に対する比重の大小に応じて、比較的簡易な構成により、農業用プラスチック製品を材料に応じて分別することができる。また、農業用プラスチック製品を、水槽内の水に投入することにより、効果的に洗浄することができる。例えば、沈下物排出部から、塩化ビニル等で形成された農業用プラスチック製品を、水中で分離した土砂と共に排出する一方、浮上物排出部から、ポリエチレン及びポリスチレン等で形成された農業用プラスチック製品を排出することができる。
【0015】
一実施形態の農業用プラスチック製品の分別再生プラントは、上記渦流乾燥機は、一対のプレートと、一対のプレート間に渦状に屈曲して配置され、渦状の気流通路を形成する仕切板と、
上記渦状の気流通路の外周側端部に設けられた外周開口と、
上記渦状の気流通路の中央側端部に設けられた中央開口とを有し、
上記外周開口及び中央開口の一方から被処理物と乾燥空気が供給され、上記外周開口及び中央開口の他方から、上記気流通路を通過する間に上記乾燥空気で乾燥された被処理物が排出される。
【0016】
上記実施形態によれば、部品点数が少ないコンパクトな渦流乾燥機により、分別及び洗浄された農業用プラスチック製品を、効率的に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】実施形態の分別再生プラントの構成部分を示す図である。
【図1B】実施形態の分別再生プラントの他の構成部分を示す図である。
【図1C】実施形態の分別再生プラントの他の構成部分を示す図である。
【図2】第1洗浄脱水分別機を示す図である。
【図3】比重分別機を示す縦断面図である。
【図4A】比重分別機の浮上物排出部における横断面図である。
【図4B】比重分別機の沈下物排出部における横断面図である。
【図5】渦流乾燥機の流路ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の農業用プラスチック製品の分別再生プラントを図示の実施形態により詳細に説明する。
【0019】
図1A乃至1Cは、実施形態の農業用プラスチック製品の分別再生プラントの構成を示す模式図である。本実施形態の農業用プラスチック製品の分別再生プラントは、農場で排出された使用済みのプラスチック製品を処理して再生材を生成するものであり、主要な構成機器として、1次破砕機2と、第1洗浄脱水分別機3と、2次破砕機5と、比重分別機8と、水切コンベヤ9,10,12と、湿式洗浄機としての円筒水洗機11と、第2洗浄脱水分別機14と、渦流乾燥機18とを備える。
【0020】
この農業用プラスチック製品の分別再生プラントは、被処理物として、例えば、ハウスの外張り及び内張りフィルムや、トンネルのフィルムや、被覆シート等が混在したものを処理することができる。これらの農業用プラスチック製品は、ポリエチレンや、塩化ビニルや、ポリプロピレン等の種々の材料で形成されたものが混在している。このように、本実施形態の農業用プラスチック製品の分別再生プラントは、複数種類の材料で形成された農業用プラスチック製品が混在した被処理物を処理して、材料毎に分別された再生材を生成することができる。以下、分別再生プラントの詳細を、被処理物の処理工程に沿って詳細に説明する。
【0021】
まず、図1Aに示すように、農地から排出されて回収された被処理物が、重機で投入コンベヤ1に投入される。被処理物に、農地の畝に直接接触して用いられた被覆シートが混入している場合、この被覆シートは土や堆肥が付着した状態で投入される。投入コンベヤ1に投入された被処理物は、1次破砕機2に導かれる。
【0022】
1次破砕機2は、被処理物の粗破砕を行うものであり、被処理物が袋や容器等に包まれている場合、破袋機能を発揮する。1次破砕機2は、下方に狭くなった処理空間を形成する傾斜側板付きホッパを有したケーシング内に、回転駆動されるロータを収容している。ロータは、長手方向に複数組配列されたなぎなた状の回転刃を有し、回転刃の間に横断方向に配置された上仕切り板の中央部の上部に軸受で軸承されている。上仕切り板の下には、円弧面上に固定刃の縦通材が複数固定されて粗いスクリーンを形成した下仕切り板が設けられている。1次破砕機2により、被処理物が約150mm程度の大きさに破砕される。なお、1次破砕機2として、公知のハンマークラッシャーやロータリスクリュークラッシャーを用いてもよい。スクリュークラッシャーは、二軸型と一軸型のいずれでもよい。
【0023】
1次破砕機2で1次破砕された被処理物は、コンベヤ21で搬送され、第1洗浄脱水分別機3に投入される。第1洗浄脱水分別機3は、図2に模式図を示すように、ケーシング301の一端に形成された投入口301aに、矢印W1で示すように、被処理物が、水及び空気と共に投入される。ケーシング301内には、回転軸302に取り付けられて、軽量物に送りをかけるように回転駆動される複数のパドル303が配置されている。また、ケーシング301内には、パドル303を取り囲むように多孔筒304が配置されている。被処理物は、パドル303によって多孔筒304内を他端側に送られるに伴い、土や堆肥やプラスチック粒等の付着物が水分と共に除去されて洗浄され、脱水される。被処理物から付着物が分離してなる残渣は、多孔筒304の外側に排出され、ケーシング301の下部に集められて、このケーシング301の下部に配置された排出コンベヤ305により、矢印W2で示すようにケーシング301外に排出される。洗浄されて脱水された被処理物は、ケーシング301の他端に形成された排出口301bから、この排出口301bに接続された取り出しコンベヤ306によって排出される。第1洗浄脱水分別機3には、被処理物を、被処理物の乾燥質量に対して15〜30wt%の割合の水分を含んだ状態で投入するのが好ましい。土や堆肥等の付着物が付着した状態の農業用プラスチック製品である被処理物を、15〜30wt%の質量割合の水分を含んだ状態で第1洗浄脱水分別機3に投入することにより、パドル303の作用により、効果的に洗浄して付着物を分離することができ、また、脱水させることができる。15〜30wt%の質量割合の水分を含んだ被処理物は、第1洗浄脱水分別機3で処理され、水分量が7〜15wt%になってコンベヤ306から排出される。
【0024】
取り出しコンベヤ306の終端には、上下に延びる縦管307が取り付けられており、縦管307には、上端に連通するサイクロンセパレータ4の下流側に設けられたブロワ41によって上向きの気流が形成される。縦管307内を下から上に流れる空気により、取り出しコンベヤ306から排出された被処理物が、プラスチック片の可燃物と、被処理物に混入していた石や砂利や金属等の不燃物とに選別される。空気流は、矢印W3で示すように、可燃物を縦管307からサイクロンセパレータ4まで搬送し、サイクロンセパレータ4で可燃物が分離された後にブロワ41によって吸引される。ブロワ41に吸引された空気は、濾布等を用いて形成された濾過機42によって土埃等の微粒子が除去され、大気に放出される。一方、不燃物は、矢印W4で示すように、縦管307の下端から自重によって排出される。
【0025】
サイクロンセパレータ4で分離された可燃物が主体の被処理物は、2次破砕機5に送られる。2次破砕機5は、1軸型の刃付き多盤ロータ式粉砕機を用いることができ、多盤ロータの回転刃と固定刃との剪断作用によって、被処理物を約2〜5cm程度に粉砕する。2次破砕機5は、ホッパの下方に連なるケーシング内部の破砕室に、刃付きロータを有する。刃付きロータ51は、円筒形状の本体の周面に形成された螺旋溝を有し、この螺旋溝の間に形成される峰部に、複数の回転刃が固定されている。ロータの回転により、ケーシングに固定された固定刃に近接して回転刃が回動し、固定刃と回転刃との剪断作用によって被処理物を粉砕する。粉砕した被処理物を、破砕室の下方に設けられたスクリーンを通して排出するように構成されている。なお、2次破砕機5として、2軸の相互に噛合する剪断刃付き回転ロータを備えた2軸型のロータ式破砕機を用いてもよい。
【0026】
2次破砕機5で約2〜5cm程度に粉砕された被処理物は、サイクロンセパレータ7の下流側に設けられたブロワ71で生成された空気流によってサイクロンセパレータ7に搬送され、サイクロンセパレータ7で分離されて比重分別機8に送られる。ブロワ71に吸引された空気は、濾布等を用いて形成された濾過機72によって土埃やプラスチック破砕粉等の微粒子が除去され、大気に放出される。
【0027】
上記第1洗浄脱水分別機3において、排出コンベヤ305によって排出された残渣は、円筒型篩機6によって土や堆肥等の土砂成分と、プラスチック粒とに分離される。円筒篩機6は、モータが格納された駆動部と、この駆動部の上端にコイルバネを介して設置された篩部とを有する。篩部は、上端面の中央に被処理物の投入口を有する扁平の円筒形状のケーシングと、ケーシング内に端面と平行に保持された篩網と、ケーシングの下部に形成されて篩網を透過した被処理物を排出する排出口を有する。駆動部は、モータの出力軸に連結されて篩部の下端に連結されると共に、下端がコイルバネによって弾性支持された入力軸と、この入力軸の上部と下部に夫々装着されたウエイトを有する。入力軸の上部と下部のウエイトは、矩形又は扇形の板状体で形成され、平面視において互いの間の角度が調節可能になっている。上部のウエイトは入力軸を水平方向に振動させる一方、下部のウエイトは入力軸を鉛直方向に振動させる。これら上部と下部のウエイトが所定の相対角度をなした状態で入力軸が回転駆動されることにより、篩部を所定の振動パターンで三次元的に駆動して篩動作を行わせるようになっている。篩部は、ケーシングの上部から被処理物が投入され、投入された被処理物を、駆動部による篩動作に応じた移動パターンで篩網上を移動させる。篩網上を移動する間に篩網を通過した被処理物を、篩部の下部の排出口から排出するように形成されている。
【0028】
円筒型篩機6で分離された土砂成分は、コンテナ61に収集されて廃棄される。一方、円筒型篩機6で分離されたプラスチック粒は、フレコンバッグに収集されて再利用される。
【0029】
図3は、比重分別機8の長手方向の断面を模式的に示す縦断面図であり、図4Aは、浮上物排出部85における比重分別機8の横断面図であり、図4Bは、沈下物排出コンベヤ88の設置位置における比重分別機8の横断面図である。この比重分別機8は、横断面において下部の幅が下方に向かうにつれて狭まるように形成された水槽81と、水槽81の長手方向の一端に設けられて水槽81内に被処理物を投入する投入部82を有する。投入部82は、先端が水槽81内の水の概ね半ばの深さに位置するように傾斜したスクリューコンベヤで形成されている。水槽81の上部には、水面に浮上した被処理物を水槽81の他端に向かって移送する複数の移送部83A,83B,83Cが設置されている。83A,83B,83Cは、羽根車で形成され、下部が水面に接する状態で、水槽81の横断方向に延在する回転軸で回転駆動される。水槽81の一端側の移送部83A,83Bは、羽根が水を透過しない板状体で形成される一方、水槽81の他端の移送部83Cは、羽根がパンチングメタル等の水を透過する板状体で形成される。これにより、水槽81の一端側の移送部83A,83Bは、被処理物を水と共に効率的に他端側に送る一方、他端の移送部83Cは、水を切った状態で被処理物を浮上物排出部85に送るようにしている。
【0030】
水槽81の他端の水面の近傍には、上端が水槽81内の水面よりも多少高く形成された堰部84が設けられており、水槽81の堰部84を越えた側に、浮上した被処理物を排出する浮上物排出部85が設けられている。浮上物排出部85は、堰部84に連なって下方に延在するダクトで形成され、下端に、水槽81の幅方向の一方に向かって上向きに傾斜した浮上物排出コンベヤ86が設けられている。浮上物排出コンベヤ86の上端近傍に設けられた排出口86aは、水槽81内の水面よりも上方に形成され、水槽81内の水が排出口86aから漏出しないようになっている。水槽81の底部には、沈下した被処理物を長手方向の他端側に向かって移送する底部コンベヤ87が内蔵されている。水槽81の底部の他端の近傍には、底部コンベヤ87で移送された被処理物を水槽81から取り出して外部に排出する沈下物排出コンベヤ88が連結されている。沈下物排出コンベヤ88は、下端近傍の入口88aが水槽81の底部コンベヤ87の内蔵位置に接続されている。底部コンベヤ87が有する螺旋羽根の沈下物排出コンベヤ88の入口88aに対向する部分は、螺旋の旋回方向が反転しており、底部コンベヤ87の一端側と他端側との両方から入口88aに向かって被処理物を送るようになっている。沈下物排出コンベヤ88は、水槽81の幅方向の一方に向かって上向きに傾斜しており、上端近傍の排出口88bが水槽81内の水面よりも上方に形成されて、水槽81内の水が排出口88bから漏出しないようになっている。
【0031】
比重分別機8に送られた被処理物は、投入部82によって水槽81内の水中に投入される。水中に投入された被処理物のうち、水よりも比重が大きい塩化ビニル等で形成された被処理物や、被処理物に混入していた土粒子や金属粒等の高比重物が水槽81の底部に沈下する。一方、水よりも比重が小さいポリエチレンやポリプロピレン等で形成された被処理物が水槽81の水面の近傍に浮上する。水槽81の水面の近傍に浮上した被処理物は、回転する移送部83A,83Bで他端側に順次移送され、最も他端側に位置する移送部83Cbにより、矢印W13で示すように、堰部84を越えて浮上物排出部85内に投入される。浮上物排出部85内に投入された被処理物は、浮上物排出コンベヤ86によって搬送され、排出口86aから矢印W14で示すように排出される。
【0032】
一方、水槽81の底部に沈下した被処理物は、底部コンベヤ87で移送され、水槽81の底部の一端の近傍で、底部コンベヤ87の螺旋羽根によって水槽81から押し出され、沈下物排出コンベヤ88の入口88aに導かれる。沈下物排出コンベヤ88内に導かれた被処理物は、上方に向かって搬送され、矢印W15で示すように上端近傍の排出口88bから排出される。
【0033】
沈下物排出コンベヤ88の排出口88bから排出された被処理物は、主に塩化ビニルで形成されたものであり、塩化ビニル再生材として使用される。又は、ダイオキシンが生じない方法により焼却処分される。
【0034】
浮上物排出コンベヤ86の排出口86aから排出された被処理物は、傾斜した2連のスクリューコンベヤで構成された水切コンベヤ9,10に通過させて水切りを行った後、円筒水洗機11に投入する。円筒水洗機11は、筒状の水槽内に設けられ、水槽の中心軸に沿う回転軸で回転駆動される攪拌羽根により、水槽内に水の渦流を形成し、水流と被処理物の互いの摩擦によって被処理物を洗浄する。洗浄された被処理物は、円筒水洗機11のスクリューコンベヤを通して水切コンベヤ12に投入し、水切コンベヤ12で水切りを行った後、第2洗浄脱水分別機14に投入する。
【0035】
水切コンベヤ9,10,12で被処理物の水切りによって生じた水は、水処理槽13に収集し、濁り成分の沈殿処理等の排水処理を行う。
【0036】
第2洗浄脱水分別機14は、第1洗浄脱水分別機3と同様の構成を有し、水切コンベヤ12で水切りをした被処理物にパドルで遠心力を付与し、被処理物に付着する土等を除去して洗浄と脱水を行う。土等の付着物が被処理物から分離されてなる残渣は、水分量が多いことから、排出コンベヤで排出された後、排水処理を行う。
【0037】
第2洗浄脱水分別機14で洗浄及び脱水を行った被処理物は、ブロワ151で吸引してサイクロンセパレータ15に導き、サイクロンセパレータ15で分離して、切出しスクリュー装置16に投入する。サイクロンセパレータ15からの排気は、濾過機152で微粒子を除去して大気に放出する。
【0038】
被処理物は、切出しスクリュー装置16からロータリーバルブを介して、温風ヒータ17で生成された温風の流れる温風供給管に投入される。温風供給管に投入された被処理物は、温風と共に渦流乾燥機18に導かれる。
【0039】
渦流乾燥機18は、図3に示すような流路ユニットを有する。流路ユニットは、外周から中心に向かって温風が流れる内向流部180と、この内向流部180の中心に連通して中心に導かれた温風が外周に向かって流れる外向流部181を有する。内向流部180と外向流部181は、いずれも、一対のプレート182,182の間に固定された渦状の仕切り板183によって渦状の気流通路184が形成されている。気流通路184は、全行程で概ね一定の断面積を有するように形成されている。内向流部180と外向流部181の間のプレート182は、内向流部180と外向流部181によって共有されている。共有されたプレート182に設けられた貫通穴188を介して、内向流部180の気流通路と外向流部181の気流通路とが連通している。この渦流乾燥機18は、渦状に形成された気流通路184を有する流路ユニットにより、流路延長を確保しながらコンパクトに形成されている。
【0040】
渦流乾燥機18に導かれた被処理物は、流路ユニットの流入口186から内向流部180に流入し、内向流部180の中心に向かって渦状に流れ、貫通穴188から外向流部181に流入し、外向流部181の外周に向かって渦流に流れた後、排出口187から排出される。このように、被処理物は、温風と共に内向流部180と外向流部181を流れる間に、被処理物に付着していた水分が温風に蒸発して乾燥する。
【0041】
渦流乾燥機18で乾燥した被処理物は、ブロワ191で吸引してサイクロンセパレータ19に導き、サイクロンセパレータ19で分離して、貯留サイロ20に投入する。サイクロンセパレータ19からの排気は、濾過機192で微粒子を除去して大気に放出する。
【0042】
貯留サイロ20には、塩化ビニルが除去され、主にポリエチレンを材料とする被処理物であって、再生利用が容易な被処理物が清浄な状態で投入される。この被処理物は、貯留サイロ20の下部に設けられた切出しスクリューで排出され、例えば再生プラスチックの材料や、固形燃料の材料として再利用される。
【0043】
このように、本実施形態の農業用プラスチック製品の分別再生プラントによれば、複数種類の材料の農業用プラスチック製品が混在してなる被処理物を、1次破砕機2と、第1洗浄脱水分別機3と、2次破砕機5と、比重分別機8で処理することにより、効果的に洗浄すると共に比重に基づいて分別することができる。さらに、比重分別機8で分別された被処理物を、湿式洗浄機11と、第2洗浄脱水分別機14と、渦流乾燥機18とで処理することにより、効果的に付着物を除去して洗浄し、乾燥させることができる。したがって、複数種類の材料の農業用プラスチック製品が混在して排出されても、少ない手間で分別できる。また、農地の畝に直接接触して用いられた被覆シートのように土や堆肥の付着量が大きくても、付着物を効果的に除去できる。その結果、不完全燃焼によってダイオキシンが発生する塩化ビニルを効果的に除去して、ポリエチレンやポリプロピレンやポリスチレン等の再生利用が容易な被処理物を清浄に分別することができ、再生プラスチックや固形燃料等の材料に有効に利用できる被処理物が得られる。
【符号の説明】
【0044】
1 投入コンベヤ
2 1次破砕機
3 第1洗浄脱水分別機
4,7,15,19 サイクロンセパレータ
5 2次破砕機
8 比重分別機
9,10,12 水切コンベヤ
11 円筒水洗機
14 第2洗浄脱水分別機
18 渦流乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の材料の農業用プラスチック製品が混在してなる被処理物を1次破砕する1次破砕機と、
1次破砕機で破砕された被処理物が水と共に投入され、投入された被処理物に遠心力を付与することにより、被処理理物の洗浄と、重量物の分別除去と、脱水とを行う第1洗浄脱水分別機と、
第1洗浄脱水分別機で処理された被処理物を2次破砕する2次破砕機と、
2次破砕機で破砕された被処理物が投入される水槽を有し、投入された被処理物を、水に対する比重の差に基づいて材料毎に分別する比重分別機と、
比重分別機で分別された被処理物を洗浄する湿式洗浄機と、
湿式洗浄機で洗浄された被処理物が水と共に投入され、投入された被処理物に遠心力を付与することにより、被処理物の洗浄と、重量物の分別除去と、脱水とを行う第2洗浄脱水分別機と、
第2洗浄脱水分別機で処理された被処理物を、渦状に形成された通路に乾燥空気と共に流通させて乾燥させる渦流乾燥機と
を備えることを特徴とする農業用プラスチック製品の分別再生プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の農業用プラスチック製品の分別再生プラントにおいて、
上記第1及び第2洗浄脱水分別機は、
一端に被処理物の投入口を有すると共に他端に被処理物の排出口を有するケーシングと、
ケーシング内に配置され、投入口から投入された被処理物と水に、ケーシング内の一端側から他端側に送りをかけながら遠心力を与えるように回転駆動される回転体と、
回転体の外周側を取り囲むように配置され、回転体から与えられた遠心力によって被処理物から分離した粒状物と水を通過させ、外径側に排出する有孔筒と、
粒状物と水が分離された被処理物を、有効筒内からケーシング外に排出する被処理物排出部と、
有孔筒から排出された粒状物と水を集めてケーシング外に排出する分離物排出部と
を有することを特徴とする農業用プラスチック製品の分別再生プラント。
【請求項3】
請求項1に記載の農業用プラスチック製品の分別再生プラントにおいて、
上記比重分別機は、分離洗浄用の水を貯留する水槽と、
水槽の水の中に被処理物を投入する投入部と、
水槽の水の下部から、沈下した被処理物を排出する沈下物排出部と、
水槽の水の上部から、浮上した被処理物を回収する浮上物回収部と、
浮上物回収部で回収された被処理物を排出する浮上物排出部と
を有することを特徴とする農業用プラスチック製品の分別再生プラント。
【請求項4】
請求項1に記載の農業用プラスチック製品の分別再生プラントにおいて、
上記渦流乾燥機は、一対のプレートと、一対のプレート間に渦状に屈曲して配置され、渦状の気流通路を形成する仕切板と、
上記渦状の気流通路の外周側端部に設けられた外周開口と、
上記渦状の気流通路の中央側端部に設けられた中央開口とを有し、
上記外周開口及び中央開口の一方から被処理物と乾燥空気が供給され、上記外周開口及び中央開口の他方から、上記気流通路を通過する間に上記乾燥空気で乾燥された被処理物が排出されることを特徴とする農業用プラスチック製品の分別再生プラント。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−241082(P2010−241082A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95367(P2009−95367)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】