説明

農産物の皮むき装置

【課題】水を使わずに簡易な構成とすることができるいわゆる乾式で、皮むきを連続的にしかも精度高く安定的に行える皮むき装置の提供。
【解決手段】 ジャガイモ等の農産物Pを整列させる整列供給ユニットC,Cと、周面にパンチング孔12……を多数開設した一対の円筒状のドラム13,13を平行に横架して、その間に形成した搬送路14において上記整列供給ユニットC,Cから順次供給される上記農産物Pの皮をむく乾式の皮むきユニットDからなり、その皮むきユニットDの上記搬送路14に配設した、上記農産物Pを下流へ押動するための押当板15……を、その搬送路14の始端側から終端側へ移動させるようにしてなる農産物の皮むき装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモ・里芋・キュウイ・アボガド等の農産物の皮むき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジャガイモ等の農産物の皮むきは、包丁やピーラー等での手作業が主体であったが(特許文献1)、皮むきを自動で行う皮むき装置も種々のものが提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献2の皮むき装置は、パンチング孔を形成した円筒状の外筒内に、その開閉可能な投入口よりジャガイモ等を多数投入して、この外筒を回転させるようにしてある。
【0004】
特許文献3の皮むき装置は、間隔を異にして平行に対向させた3組の鼓状回転刃軸を、上下に配設したもので、水を霧状に散布しながらそのれらの鼓状回転刃軸間にジャガイモ等を供給することで、皮をむくようにしたものである。
【0005】
特許文献4の皮むき装置は、水槽の上部に配備されている皮剥部において、表面にブラシ状の歯を有する回転体でジャガイモの表層を研削して表皮をむくようにしたものである。
【0006】
特許文献5の皮むき装置は、周面にパンチング孔を多数開設した2本の円筒を平行に対向させて配設し、これらを互いに外側に向けて回転させるようにしたものである。
上記2本の円筒は、その一端のジャガイモの投入箇所から他端の出口方向に下り傾斜にして配設されているので、ジャガイモは投入された順に皮をむかれながら出口方向に送られ、その間に、上記円筒の周面のパンチング孔で切削を行うものである。
【特許文献1】特開平11−221148
【特許文献2】特開2002−253190
【特許文献3】特表平8−504567
【特許文献4】特許第3845677号
【特許文献5】実用新案登録第3084921号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献2の皮むき機は、ジャガイモを所定量ずつ投入し皮むきをするたびにこれを取り出す必要のあるいわゆるバッチ式のものであるから連続作業ができない。
しかも、一度に投入することができる量は、ジャガイモの大きさ・形状等によって調整しなければならないので、処理能率が不定となる。
【0008】
特許文献3の皮むき機は、鼓状回転刃軸を上下に配設するため、ここに供給するジャガイモを一旦上方に持ち上げる垂直コンベアが必要となり、装置全体の高さが高くなるとともに、構造も複雑化してしまう。
【0009】
特許文献4の皮むき装置は、水を使用するので、所要の排水設備が必要となる。近年、排水規制が非常に厳しくなっているので、産業廃棄物として処理するむかれた皮を水と分離しなければならず、処理時間が掛かり、経費も嵩む。
【0010】
特許文献5の皮むき装置に投入されたジャガイモは、下り傾斜に配設された上記円筒により送られるが、その移動は強制的に行っているわけではでないので不確実である。したがって、皮むき状態(精度)が一定にならず調整も不可能であり、作業速度(能率)も不定となる。
すなわち、円筒の傾斜角度の設定により送りの速度の調整を試みることは可能であるが、ジャガイモの大きさ・形状によって皮むき状態・加工時間が変化してしまうことが避けられない。
【0011】
そこで、本発明は、水を使わずに簡易な構成とすることができるいわゆる乾式で、皮むきを連続的にしかも精度高く安定的に行える皮むき装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の本発明農産物の皮むき装置は、ジャガイモ等の農産物Pを整列させる整列供給ユニットC,Cと、周面にパンチング孔12……を多数開設した一対の円筒状のドラム13,13を平行に横架して、その間に形成した搬送路14において上記整列供給ユニットC,Cから順次供給される上記農産物Pの皮をむく乾式の皮むきユニットDからなり、その皮むきユニットDの上記搬送路14に配設した、上記農産物Pを下流へ押動するための押当板15……を、その搬送路14の始端側から終端側へ移動させるようにしてなる。
【0013】
請求項2記載の本発明は、上記押当板15……が複数、所要の間隔で配設されている請求項1記載の農産物の皮むき装置である。
【0014】
請求項3記載の本発明は、上記押当板15……が無端移動機構に装架され移動されるようにしてなる請求項1または2記載の農産物の皮むき装置である。
【0015】
請求項4記載の本発明は、上記整列供給ユニットC,Cから上記皮むきユニットDに農産物Pを適切に供給するために、上記整列供給ユニットC,Cが、皮むきユニットDの上記押当板15が停止用センサ28の位置に達したときに上記農産物Pの供給を一旦停止し、その後、上記押当板15が始動用センサ29の位置に達したときに農産物Pの供給を再開するようにした請求項1,2または3記載の農産物の皮むき装置である。
【0016】
請求項5記載の本発明は、上記整列供給ユニットC,Cが、上記農産物Pを上記皮むきユニットDに所定個数供給したときに上記農産物Pの供給を一旦停止し、その後、上記押当板15が所定の位置に達したときに農産物Pの供給を再開させるようにした請求項1,2,3または4記載の農産物の皮むき装置である。
【0017】
請求項6記載の本発明は、上記ドラム13,13の周面に、異径のパンチング孔12……が複数個ずつ開設されている請求項1,2,3,4または5記載の農産物の皮むき装置である。
【0018】
請求項7記載の本発明は、上記ドラム13,13のパンチング孔12……の径を、上記搬送路14の上流に位置することとなる該ドラム13,13の基端側から、同搬送路14の下流に位置することとなるドラム13,13の終端側へ向けて小さくした請求項6記載の農産物の皮むき装置である。
【0019】
請求項8記載の本発明は、上記ドラム13,13のパンチング孔12……を、該ドラム13の軸に対して斜めに配置された長楕円形のものとした請求項1,2,3,4,5,6または7記載の農産物の皮むき装置である。
【0020】
請求項9記載の本発明は、上記搬送路14を形成する一対のドラム13,13の回転数(速度)を互いに違えた請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の農産物の皮むき装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の本発明は、農産物Pを搬送路14の下流に案内する押当板を用いることで、皮むきを連続的にしかも精度高く安定的に行え、また、農産物の種類・形状に応じて、皮むきの状態(精度)と能率を自由に調整できる。
しかも、この装置は水を使用しない乾式であるから排水設備が不用で、また、安定した連続作業ができるので効率がよく、しかもドラム上の搬送路の農産物を押当板で案内するようにした簡易な構成のものである。
【0022】
請求項2記載の本発明は、上記押当板が複数所要の間隔で配設されているので、その複数の押当板により農産物を順次押動することができる。
【0023】
請求項3記載の本発明は、上記押当板15……が無端移動機構に装架され移動されるので、簡易な構成で押当板15……を移動させることができる。
【0024】
請求項4記載の本発明は、皮むきユニットへの農産物の供給を、数個のグル−プごとに行うことで、供給される農産物を皮むきユニットの押当板で適切に掻き込むとともに、農産物に、上記押当板が乗り上げたりこれが刺さってキズを付けたりすることを防ぐ。
【0025】
請求項5記載の本発明は、皮むきユニットへの農産物の供給個数に基づいて皮むきユニットへの農産物の供給が制御されるので、農産物の大きさや重量にかかわらず、皮をむかれる農産物の間隔がほぼ均等になり皮むきの精度が均一で安定し、歩留まりが良くなり、単位時間当たりの皮むき個数が安定する。
【0026】
請求項6記載の本発明は、ドラムが異径のパンチング孔を有するので、たとえば、搬送路への農産物の供給位置を変更することにより、皮むきの状態を調整することも可能である。
【0027】
請求項7記載の本発明は、ドラムのパンチング孔が該ドラムの終端側に向けて小さくしてあるので、搬送路の上流で荒削りをし、下流で仕上げをして農産物の外周面を滑らかにすることができる。
【0028】
請求項8記載の本発明は、ドラムのパンチング孔を、該ドラムの軸に対して斜めに配置された長楕円形のものとしたので、農産物を下流方向に付勢することができる。
【0029】
請求項9記載の本発明は、搬送路を形成する一対のドラムの回転数(速度)を互いに違えたので、大きい農産物であっても、搬送路内において強制的に跳ねさせ回転することができ、全面の皮を綺麗にむくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
ジャガイモ等の農産物Pを整列させる整列供給ユニットC,Cと、周面にパンチング孔12……を多数開設した一対の円筒状のドラム13,13を平行に横架してその間に形成した搬送路14において、上記整列供給ユニットC,Cから順次供給される上記農産物Pの皮をむく乾式の皮むきユニットDからなり、その皮むきユニットDの上記搬送路14に配設した、上記農産物Pを下流へ押動するための押当板15……を、その搬送路14の始端側から終端側へ移動させるようにしてなる農産物の皮むき装置。
【実施例1】
【0031】
本実施例の農産物の皮むき装置について図1〜9を用いて説明する。
【0032】
本実施例の皮むき機は、ジャガイモ等の農産物Pの搬送方向上流側から下流側に向けて順に、農産物Pを補給するための補給機構Aと、農産物Pを受け入れるホッパBと、その農産物Pを整列させ順次供給する2系統の整列供給ユニットC,Cと、平行に横架され回転する一対のドラム間に形成した搬送路に上記農産物Pを供給して上記農産物Pの皮をむく、いわゆる乾式の皮むきユニットDを配設してなる。
【0033】
上記補給機構Aは、コンテナ1を乗載可能でかつ回動自在にした移載ア−ム2をガスダンパ3で付勢してなり、上記コンテナ1を乗載するコンテナ載置姿勢(図1の(イ)の状態)と、乗載したコンテナ1を横倒しにして農産物PをホッパBに補給する農産物補給姿勢(図1の(ロ)の状態)との間で回動できるようになっており、ハンドル4を把持して回動させることができるようにしているものである。
【0034】
上記ホッパBは、受入口5側を広く、2つの排出口6,6側を狭くし、かつ、その排出口6側が低くなるよう斜めに配設されている。
したがって、上記補給機構Aから補給される農産物Pは、ホッパB内に一時的に貯留された後、排出口6,6から徐々に整列供給ユニット(フィーダ)C,Cに排出供給される。
【0035】
上記2系統の整列供給ユニットC,Cは、上記ホッパBの排出口6,6からそれぞれ供給される農産物Pを一列に整列させながら、上記皮むきユニットDへ向けて搬送するものである。
上記整列供給ユニットC,Cはそれぞれ、両側部が反り上がった断面弧状をなす、鋼板製の基盤の上面に多数の弾性突起を形成した搬送用板体7を、バネを介してこれを支持しかつ振動を加える加振支持機構9とからなる、いわば振動式のものである。
【0036】
搬送用板体7上の農産物Pは、加振支持機構9から加えられる振動により、一列に整列して皮むきユニットDに向けて搬送供給される。
上記加振支持機構9の振動は、図示しない制御盤により後記の通り適宜制御されるようになっており、これによって、農産物Pの皮むきユニットDへの供給量が調整される。
10は上記補給機構A,ホッパBおよび整列搬送ユニットC,Cを支持する機枠である。
【0037】
上記皮むきユニットDは、2系統の皮むきラインD1,D2を備えているもので、各ラインD1,D2は、上記整列供給ユニットC,Cより順次供給される農産物Pの皮をむくものである。
【0038】
上記皮むきラインD1は、機枠11に対して、周面に多数のパンチング孔12を開設した円筒状のドラム13,13を一対、農産物Pが落下しない狭い間隔を空けて平行にして回転自在に横架し、それらの間に搬送路14を形成するとともに、その搬送路14に、農産物Pを下流へ押動するための押当板15……をその搬送路14の始端(整列供給ユニットC側に位置するドラム13の基端)から終端(ドラム13の終端)まで移動するよう配設している。
このように、農産物Pを搬送路14の下流に案内する押当板を用い、その搬送にかける時間を調整することで、農産物Pの皮むきを、表面が滑らかな状態から、少し皮が残っている状態まで調整でき、また、加工の均一性が維持できる。
その皮むき状態は、ドラム13,13の回転数と農産物Pが搬送路14を移動する時間(速度)・すなわち、押当板15……の速度の設定により調整でき、これにより歩留まりが向上する。
【0039】
上記ドラム13,13は、搬送路14側が互いに外向きに移動するよう回転され、これと同時に上記押当板15……を下流方向に移動させることによって、受入シュート16を通じてこの皮むきラインD1に供給される農産物Pは、ドラム13,13,のパンチング孔12によりその表面を皮をむかれながら、また、上記押当板15……により下流方向に所定速度で移動され、排出シュート17に排出される。
【0040】
もう一方の上記皮むきラインD2も上記皮むきラインD1と同様の構造である(図面上、同一の箇所に同一の符号を付した)。
また、18は、むかれた皮の屑を機枠11の側方に排出するために、上記ドラム13……の下方に位置するよう配設された、排出コンベアである。
【0041】
続いて、皮むきユニットDの上記ドラム13の詳細を説明する。
ドラム13の主体部13a(両端の取付軸を除いた部分)の寸法は、直径165mm、長さ1.3mである。なお、その直径は100〜200mm程度、長さは1〜2m程度の範囲内で適宜設定することができる。
上記パンチング孔12は、その主体部12aの周面全体に開設されているもので、その径は、たとえば6mmから20mm程度の範囲内で適宜設定できるが、ここでは、複数のパンチング孔12全てを同径としている(図1,3)。
【0042】
パンチング孔径が小さければ、むかれた皮の屑には実の付着が少なく歩留まりが良く、農産物Pの切削面は球状に近くなるものの、むくのに時間が掛かる。
パンチング孔径が大きくなれば、むかれた皮の屑には実の付着が多くなり歩留まりが悪く、農産物Pの切削面は粗くなるが、むく時間が短くなる。
里芋・キュウイ・アボガド等の場合は、ジャガイモの場合よりも、小径のパンチング孔が良いと考えられる。
【0043】
なお、パンチング孔12の径が全て同じでジャガイモの移動速度が一定の場合、S玉のジャガイモなどの小さい農産物Pは搬送路14の基端から皮をむかれ始めてその中間部に移動する頃にはむかれ終わるとしても、M玉のジャガイモなどの、より大きい農産物Pは、搬送路14の終端でようやくむけ終わることとなってしまう。
すなわち、上記S玉の場合は搬送路14が短くても良いが、M玉ではより長い長さが必要である。そこで、このような場合、農産物Pの大きさによって搬送路14への供給位置を変更することで対応することができる。たとえば、上記M玉は上記搬送路14の始端から供給し、上記S玉は、皮むきユニットDの側方や上方に供給ユニットを設置し、搬送路14の途中に供給できるようにすればよい。
このとき、異径のパンチング孔12を設けることも好ましい。たとえば、M玉のみが通過するドラム13,13のの先端の部分のみを切削効率のよい大径のパンチング孔とすることができる。
【0044】
図8(a),(b)に示すように、農産物Pを綺麗に皮むきするためには、パンチング孔12は、基端側の径を大きく、終端側の径を小さくするのが好ましい。
図8(a)のドラム13は、その基端側約2/3の範囲に10mm径のパンチング孔12を開設するとともに、残り1/3の範囲に6mm径のパンチング孔12を開設してある。同図(b)のものは、基端側1/3の範囲に17mm径、中央の1/3の範囲に10mm径、終端側1/3に6mm径のパンチング孔を開設してある。これにより、始端側(搬送路14の上流部)では農産物Pの表面を粗く削り、終端側(搬送路14の下流部)では滑らかに削ることができる。
【0045】
また、図9に示したドラム13のように、基端側から先端側に向け、より細かい段階で連続的にパンチング孔12の径を小さくしてゆくこともできる。図示したものは、18mm,16mm,14mm,12mm,10mm,8mm,6mmの径のパンチング孔12を開設してある。
このように、パンチング孔12の径は連続的に(たとえば、1mmずつ小さくするなど)変化させてもよいし、区間ごとに径を小さく変化させてもよい。径を徐々に小さくすることにより、搬送路14の上流に位置するドラム13の基端側の大きなパンチング孔12で荒削りをして、荒削りにより角張った部分を、搬送路14の下流に位置するドラム13の終端側の小さなパンチング孔12で仕上げをして外周面をなめらかにする効果がある。
【0046】
上記のパンチングの穴径は、加工作物の種類・大きさ・切削面・歩留まり・加工時間等を考慮して選定される。
【0047】
また、丸い孔に限らず、図8(c)に示すように、長楕円形のパンチング孔12を、ドラム13の軸に対して斜めに配置するのも好ましい。これにより、農産物Pを、下流方向に付勢することができる。
すなわち、角度を付けたパンチング孔の切削抵抗により、ジャガイモの皮をむきながら確実に下流に送ることができる。
このような長楕円形のパンチング孔を有するドラムを使用した場合には、農産物Pの重量や大きさ等の条件によって、上記の押当板を省略することも可能となりよりシンプルな装置とすることができる。
長楕円形のパンチング孔12の大きさ(径)を、該ドラム13の終端側に向け小さくすることで、上記と同様、搬送路14の上流に位置するドラム13の基端側の大きなパンチング孔12で荒削りをして、荒削りにより角張った部分を、搬送路14の下流に位置するドラム13の終端側の小さなパンチング孔12で仕上げをして外周面をなめらかにする効果が期待できる。
【0048】
ドラム13の回転数は700〜1,400rPm程度が好ましい。その回転数は皮むきの能率と精度の関係から、上記押当板15……の移動速度とともに、適宜設定される。
なお、上記一対のドラム13,13は同速で回転させているが、それらの回転数(速度)を違えることもできる。この場合、回転数(速度)比は、1:(1〜0.5)の範囲とする。
これにより、一対のドラム13,13を同速で回転させた場合には下面だけが削られてしまうような大きい農産物Pを、回転数(速度)差により搬送路14内において強制的に跳ねさせ転動させることができ、結果として、全面の皮を綺麗にむくようにすることができる。
【0049】
上記押当板15……を装架しこれを移動させる無端移動機構は、以下のようなものである。
20は、機枠11の搬送方向に向かって左側の、上記ドラム13……の基端上方およびその終端上方に位置させて、上記機枠11に軸支されたスプロケット21と22との間に掛け回された無端状のチェーン、23は、機枠11の搬送方向右側の、上記ドラム13……の基端上方およびその終端上方に位置させて、上記機枠11に軸支されたスプロケット24と25との間に掛け回された無端状のチェーンである。
【0050】
上記押当板15……は、上記チェーン20,23間に渡して固定された複数の支持杆26に対して、搬送路14内に所要の間隔をおいて位置するよう設置固定され、制御盤によるモータ27の制御により、25〜90mm/s の範囲で速度を設定され、移動している。
なお、その速度は、上記ドラム13,13のパンチング孔12の径との関係では、その径が大径になるほど速く動かすようにするのがよい。
【0051】
上記整列供給ユニットC,Cについては、以下の2つの制御があわせて行われる。
【0052】
(1)皮むきユニットDへの供給制御(危険ゾ−ンの回避)
皮むきユニットDに供給される農産物Pが押当板15……の縁部に衝突することなく掻き込まれ、また、農産物Pに、上記押当板15……が乗り上げたり上記チェーン20,23が飛ぶことを防ぎ、さらに、押当板15……がジャガイモに刺さってキズを付けたりすることを防ぎ、適切な供給を行うため、第1に、整列供給ユニットC,Cは以下のように制御される。
【0053】
チェ−ン20,23に対して固定されている押当板15……のピッチ(上記支持杆26の間隔)に合わせて、数個ずつ(4〜6個程度)の農産物Pを整列させたら整列供給ユニットC,Cを一旦停止させて供給間隔を空ける(図4)。すなわち図4のように、後続の農産物Pの供給を一旦停止することにより、受入シュート16の上方から移動してくる押当板15aの端縁が農産物Pに乗り上げることを防止する。
受入シュート16内の数個の農産物Pは、押当板15a,15bにより下流へ押動されながら、ドラム13,13により皮むきが行われる。
受入シュート16の上方から移動してくる押当板15aが農産物Pに乗り上げない位置まで移動したときには、再び整列供給ユニットC,Cを始動する。
【0054】
この制御は以下のように行っている。
上記押当板15……は、上記の通り25〜90mm/s の範囲の速度で移動しているが、押当板15をチェーン20,23に対して取り付けている上記支持杆26が整列搬送ユニットC,Cのフィーダ停止用センサ28(図2,3)の位置に達すると(すなわち押当板15が停止用センサ28の位置に達すると)、支持杆26が検出されてそれまで振動していた整列搬送ユニットC,Cが停止する。
さらに押当板15……が移動し、フィーダ始動用センサ29の位置まで達すると、該センサ29が支持杆26を検出し、これにより、整列供給ユニットC,Cは再び振動して、農産物Pの供給を再開する。
【0055】
次の押当板15がフィーダ停止用センサ28の位置に達すると、再び整列供給ユニットC,Cが停止する。その押当板15がフィーダ始動用センサ29の位置に達すると整列供給ユニットC,Cは再度振動し始める。その後も同様に、この動作が繰り返される。
【0056】
受入シュート16内において隣接する押当板15,15間に整列しストックさせられる農産物Pの個数は、押当板15……の速度およびフィーダ停止用センサ28からフィーダ始動用センサ29までの距離とにより定まる整列供給ユニットC,Cの振動時間の長さおよび停止時間の長さ、また、整列供給ユニットC,Cの振動の強さ,農産物Pの形状,大きさ(重さ)によって変動する。
したがって、その個数は、上記センサ28,29の位置、押当板15……の速度、整列供給ユニットC,Cの振動の強さの加減によって調整することができる。
上記各センサ28,29は、近接スイッチを使用しているが、支持杆26を検出できる光電スイッチ、あるいはリミットスイッチも採用可能である。
【0057】
(2)個数制御
上記(1)の制御に加え、第2に、受入シュート16への農産物Pの供給個数に基づいて、下記のように制御が行われる。
すなわち、農産物Pが整列供給ユニットC,Cから受入シュート16に供給された際に、その受入シュート15に設けたセンサ30(図4,5)により農産物Pの個数をカウントして、設定した個数が該受入シュート16ないしドラム13,13の始端部上にストックされたときには、上記(1)により停止すべき場合でなくても、整列供給ユニットC,Cを停止させ、過剰供給を防止する。
【0058】
ストックされたジャガイモが、押当板15により下流に案内され、次の押当板15が一定距離移動して上記フィーダ指導用センサ29に達したときに再び整列供給ユニットC,Cを始動し、再度個数カウント始める。
【0059】
上記(1)の制御のみでは、整列供給ユニットC,Cが振動している時間・振動の強さ・農産物Pの形状・大きさによって供給数が変動することがある。たとえば、大きい農産物Pがあった場合、振動が弱いと、供給スピードが遅れてしまうことがある。
そこで、上記(1)の制御に加えてこのような供給個数に基づく制御を行えば、整列供給ユニットC,Cの振動を強くしても受入シュート16への過剰供給を防止することができるので、農産物Pのの大きさのバラツキに関係なく同じ個数の農産物Pを皮むきユニットDに供給することができる。
【0060】
なお、上記センサ30は、対向型光電スイッチを使用しているが、リミットスイッチ等他の方式ものを使用することも可能である。
【0061】
この皮むき機は、上記(1),(2)の制御を合わせて行うことにより、いかなる条件においても皮むきユニットDへの農産物Pの供給が安定して行える。
すなわち、農産物Pの大きさや重量にかかわらず、皮をむかれる農産物Pの間隔がほぼ均等になり皮むきの精度が均一で安定し、歩留まりが良くなり、単位時間当たりの皮むき個数が安定する。
【0062】
上記では、ドラム13,13上の搬送路14で皮むきされる農産物Pを、押当板15……により下流に案内することとしているが、その押当板15……を設ける代わりに、これと同じ働きをするものとしてオ−ガを搬送路14内に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例に係る農産物の皮むき装置の側面図である。
【図2】同装置の平面図である
【図3】同装置の皮むきユニットの拡大側面図である。
【図4】同装置の皮むきユニットの受け入れホッパ周辺の拡大側面図である。
【図5】その受入ホッパに設けた受入検出センサの平面図である。
【図6】図1のI−I線縦断面図である。
【図7】同装置の背面図である。
【図8】(a)〜(c)はそれぞれ、皮むきユニットに軸支されるドラムの例を示す平面図である。
【図9】さらに他のドラムの例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0064】
A 補給機構
B ホッパ
C 整列供給ユニットC,C
D 皮むきユニット
P 農産物
12 パンチング孔
13,13 ドラム
14 搬送路
15 押当板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャガイモ等の農産物を整列させる整列供給ユニットと、周面にパンチング孔を多数開設した一対の円筒状のドラムを平行に横架して、その間に形成した搬送路において上記整列供給ユニットから順次供給される上記農産物の皮をむく乾式の皮むきユニットからなり、その皮むきユニットの上記搬送路に配設した、上記農産物を下流へ押動するための押当板を、その搬送路の始端側から終端側へ移動させるようにしてなることを特徴とする農産物の皮むき装置。
【請求項2】
上記押当板が複数、所要の間隔で配設されている請求項1記載の農産物の皮むき装置。
【請求項3】
上記押当板が無端移動機構に装架され移動されるようにしてなる請求項1または2記載の農産物の皮むき装置。
【請求項4】
上記整列供給ユニットから上記皮むきユニットに農産物を適切に供給するために、上記整列供給ユニットが、皮むきユニットの上記押当板が停止用センサの位置に達したときに上記農産物の供給を一旦停止し、その後、上記押当板が始動用センサの位置に達したときに農産物の供給を再開するようにしたことを特徴とする請求項1,2または3記載の農産物の皮むき装置。
【請求項5】
上記整列供給ユニットが、上記農産物を上記皮むきユニットに所定個数供給したときに上記農産物の供給を一旦停止し、その後、上記押当板が所定の位置に達したときに農産物の供給を再開させるようにしたことを特徴とする請求項1,2,3または4記載の農産物の皮むき装置。
【請求項6】
上記ドラムの周面に、異径のパンチング孔が複数個ずつ開設されていることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の農産物の皮むき装置。
【請求項7】
上記ドラムのパンチング孔の径を、上記搬送路の上流に位置することとなる該ドラムの基端側から、同搬送路の下流に位置することとなるドラムの終端側へ向けて小さくしたことを特徴とする請求項6記載の農産物の皮むき装置。
【請求項8】
上記ドラムのパンチング孔を、該ドラムの軸に対して斜めに配置された長楕円形のものとしたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載の農産物の皮むき装置。
【請求項9】
上記搬送路を形成する一対のドラムの回転数(速度)を互いに違えたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の農産物の皮むき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−72089(P2009−72089A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242719(P2007−242719)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【特許番号】特許第4247923号(P4247923)
【特許公報発行日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000130455)株式会社サークル鉄工 (14)
【出願人】(598004088)
【出願人】(507313445)
【出願人】(507313467)
【出願人】(507313397)
【Fターム(参考)】