説明

近赤外吸収チアゾール化合物およびそれを用いた近赤外吸収フィルター

【課題】チアゾールシアニン化合物を含有する近赤外吸収フィルターを提供し、詳しくはチアゾールシアニン化合物を含有する、不可視性および耐光堅牢性に優れた実用的な近赤外吸収フィルターを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされるシアニン化合物を含むことを特徴とする近赤外吸収フィルター。


[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基または芳香族基であり;RおよびRは水素原子または一価の基であり;Lは、5または7個のメチンからなり、少なくとも1個はフェニル置換したメチンを有するメチン鎖である。但し、分子内に酸性基を少なくとも一つ以上含む]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近赤外吸収フィルターに関し、詳しくはチアゾール化合物を含む近赤外吸収フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
チアゾール色素はフィルター用として知られている(特許文献1)。
メチン鎖上にフェニル基を有するチアゾール色素は写真用色素として知られている(特許文献2,3)。また、光電変換素子およびレーザー記録材料にも広く使われている(特許文献4,5)。さらに、5員環上にフェニル置換したチアゾールシアニン色素(文献6)が知られている。
【0003】
一方、近赤外吸収色素は熱線吸収フィルター、バンドパスフィルター、光学フィルター等のフィルター染料、不可視印刷用のインク、レーザー光反射防止用としての赤外線吸収塗料、フラッシュトナー、電子写真感光体、光重合又は光架橋用の増感剤、光ディスク等の光記録材料、光センサー等の用途に有用である。
熱線吸収フィルターにおける近赤外吸収色素の使用形態としては、透明プラスチックに含有させる、透明プラスチックあるいは透明ガラスの表面に塗布する等の手段がある。これにより、透明な熱線遮断フィルターが得られる。用途としては、メガネ、自動車あるいは建材の熱線遮光剤等が挙げられる。
【0004】
CCD等の撮像素子に近赤外線吸収フィルターを光学フィルターとして用いることも可能である。これら撮像素子に近赤外線吸収光学フィルターを用い、入射する近赤外線を遮断することにより、該撮像素子の分光感度を視感度に近づけることができる。この近赤外吸収フィルターに近赤外吸収色素を用いることができる。
プラズマディスプレイ(PDP)の画像表示装置の表面に誤動作防止のために近赤外吸収フィルターに近赤外吸収色素を用いることが出来る。
近赤外吸収色素を不可視印刷用のインクとして用いた場合、機密文書の複写防止が可能となる。
【0005】
従来、近赤外線吸収色素としてシアニン色素、オキシム又はチオールの金属錯体、ナフトキノン化合物、フタロシアニン化合物及びナフタロシアニン化合物が知られているが、可視部の吸収が大きかったり、IR領域(700−1100nm)に十分な吸収がなかったり、耐光堅牢性が低いという欠点を有している。
【0006】
以上のように、種々の用途で近赤外吸収色素が求められているが、従来知られている近赤外吸収色素は吸収及び光堅牢性の実用的な観点ではいまだ満足できる性能のものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−90521号記載
【特許文献2】特開平4−362932号公報
【特許文献3】特開2002−90521号公報
【特許文献4】特開2005−093307号公報
【特許文献5】特開平6−191153号公報
【特許文献6】Journal of Information Recording Materials,(1988),16(1),23−31
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、近赤外吸収フィルターの提供を目的とし、詳しくはチアゾール化合物を含有する、吸収および耐光堅牢性に優れた実用的な近赤外吸収フィルターの提供を目的とする。さらに本発明は上記の近赤外吸収フィルターに用いる近赤吸収性チアゾール化合物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の化学構造を有するチアゾール化合物が可視部の吸収が少なく近赤外領域に吸収極大を有し、光堅牢性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記の課題は下記の具体的手段により達成された。
<1>下記一般式(1)で表わされるシアニン化合物を含むことを特徴とする近赤外吸収フィルター。
【0010】
【化1】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基または芳香族基であり;RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または一価の基であり;pおよびqはそれぞれ独立に1から4の整数であり;Lは、5または7個のメチンからなり、少なくとも1個はフェニル置換したメチンを有するメチン鎖である。但し、分子内に酸性基を少なくとも一つ以上含む]。
<2>前記一般式(1)で表されるシアニン化合物が、下記一般式(2)で表わされるシアニン化合物であることを特徴とする<1>記載の近赤外吸収フィルター。
【0011】
【化2】

[式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基であり;pおよびqはそれぞれ独立に1から4の整数であり;Rはフェニル基であり;RおよびRは水素原子あるいはお互いに連結して5,6または7員環を形成する基であり;Aは2価の連結基であり;Xは酸性基であり;Mn+はカチオンであり;nは1,2または3である]。
<3>前記一般式(1)または(2)で表されるシアニン化合物が会合体を形成していることを特徴とする<1>および<2>に記載の近赤外吸収フィルター。
<4>近赤外吸収領域が、吸収波長700nm〜1100nmの領域であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の近赤外吸収フィルター。
<5>400nmの吸光度が最大吸収波長の吸光度の1/20以下であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の近赤外吸収フィルター。
<6>前記一般式(1)で表されるシアニン化合物の固体微粒子分散体を含むことを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の近赤外吸収フィルター。
<7>下記一般式(2)で表わされる会合性近赤外吸収シアニン化合物。
【0012】
【化3】

[式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基であり;pおよびqはそれぞれ独立に1から4の整数であり;Rはフェニル基であり;RおよびRは水素原子あるいはお互いに連結して5,6または7員環を形成する基であり;Aは2価の連結基であり;Xは酸性基であり;Mn+はカチオンであり;nは1,2または3である]。
<8>下記一般式(3)で表わされる会合性近赤外吸収シアニン化合物。
【0013】
【化4】

[式中、R10はフェニル基であり;R11およびR12は水素原子あるいはお互いに連結して5,6または7員環を形成する基であり;Aは2価の連結基であり;Xは酸性基であり;Mn+はカチオンであり;nは1,2または3である]。
【発明の効果】
【0014】
本発明の近赤外吸収フィルターは、可視部の吸収が小さく、近赤外領域において、モル吸収係数が大きくかつ吸収極大を有し、耐光堅牢性が高く、実用的な光学材料として良好な特性を発揮するという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の近赤外吸収フィルターについて詳細に示す。
まず、一般式(1)で表わされる化合物について説明する。
【0016】
【化5】

【0017】
式中、RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基または芳香族基であり;RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または一価の基であり;pおよびqはそれぞれ独立に1から4の整数であり;Lは、5または7個のメチンからなるフェニル置換したメチン鎖である。但し、分子内に酸性基を少なくとも一つ以上含む。
【0018】
本発明において用いられる「脂肪族基」とは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアラルキル基を表す。これらの基は置換基を有していてもよい。
アルキル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至12であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。このアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロヘキシルおよび2−エチルヘキシルが含まれる。
【0019】
置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。置換アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I原子)、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR20、−COR21、−COOR22、−OCOR23、−NR2425、−NHCOR26、−CONR2728、−NHCONR2930、−NHCOOR31、−SR32、−SO33、−SOOR34、−NHSO35または−SONR3637である。R20〜R37は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。なお、−COOR22のR22が水素の場合(すなわち、カルボキシル)およびーSOOR34のR34が水素原子の場合(すなわち、スルホ)は、水素原子が解離しても、塩の状態であってもよい。
置換アルキル基の例には、2−ヒドロキシエチル、2−カルボキシエチル、2−メトキシエチル、2−ジエチルアミノエチル、2−スルホエチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルが含まれる。2−スルホエチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルが特に好ましい。
【0020】
アルケニル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルケニル基は、分岐を有していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は、2ないし20が好ましく、2乃至12がさらに好ましく、2乃至8が最も好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル、1−プロペニル、2ーブテニル、2−ペンテニル及び2−ヘキセニルが含まれる。
置換アルケニル基のアルケニル部分は、上記アルケニル基と同様である。置換アルケニル基の置換基は、アルキル基の置換基と同じである。
アルキニル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルキニル基は、分岐を有していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は、2ないし20が好ましく、2乃至12がさらに好ましく、2乃至8が最も好ましい。アルキニル基の例には、エチニルおよび2−プロピニルが含まれる。
置換アルキニル基のアルキニル部分は、上記アルキニル基と同様である。置換アルキニル基の置換基は、アルキル基の置換基と同じものがあげられる。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、後述するアリール基と同様である。アラルキル基の例には、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。
置換アラルキル基のアラルキル部分は、上記アラルキル基と同様である。置換アラルキル基のアリール部分は、後述するアリール基と同様である。
【0021】
本発明において用いられる「芳香族基」とは、アリール基または置換アリール基を意味する。
アリール基または置換アリール基の炭素原子数は、6乃至25であることが好ましく、6乃至15であることがさらに好ましく、6乃至10であることが最も好ましい。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。フェニルが好ましい。
置換アリール基の置換基の例は、置換アルキル基で述べた置換基のほかに、ニトロ基およびシアノ基があげられる。置換アリール基の例には、4−カルボキシフェニル、4−アセトアミドフェニル、3−メタンスルホンアミドフェニル、4−メトキシフェニル、3−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、4−メタンスルホンアミドフェニルおよび4−ブタンスルホンアミドフェニルが含まれる。
【0022】
本発明において、複素環基は置換基を有していてもよい。複素環基の複素環は、5または6員環であることが好ましい。複素環に、脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。複素環(縮合環を含む)の例には、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環およびチアジアゾール環が含まれる。
複素環の置換基は、置換アリール基の置換基と同じである。
【0023】
およびRは好ましくは酸性基(後述する)を有するアルキル基である。2−スルホエチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルが特に好ましい。
【0024】
およびRの一価の基としてはアリール基で述べた置換基が挙げられる。さらには、アルキル基(前述と同義)、フェニル基(前述と同義)、ハロゲン原子(前述と同義)またはアルコキシ基(前述と同義)が好ましい。最も好ましいのはクロル原子である。
【0025】
は奇数個のメチンからなるメチン鎖であり、5個または7個が好ましい。7個が最も好ましい。メチン基の少なくとも1つはフェニル基を有し、フェニル基は置換基(置換アリール基と同義)を有してよい。フェニル基は中央の(メソ位)メチン基に置換していることが好ましい。また、メチン鎖同士が結合して、5、6または7員環(例えば、シクロペンテン、シクロへキセン、シクロヘプテン環)を形成していてもよい。
【0026】
酸性基としてはカルボキシル基(塩でもよい)またはスルホ基(塩でもよい)を挙げることができる。スルホ基を有することが特に好ましい。分子内に1個以上の酸性基を有し、2個以上であることがさらに好ましく、酸性基はより好ましくは2〜4個である。酸性基の1個は分子内で塩を形成し、その他の酸性基の対塩を形成するカチオンは、水素原子、アルカリ金属イオン(Li,Na,K)、アルカリ土類金属イオン(例、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Sr2+)、遷移金属イオン(例、Ag、Fe、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+)、その他の金属イオン(例、Al3+)、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンおよびテトラブチルアンモニウムイオンなどが好ましい。
【0027】
一般式(1)で表わされる化合物のうち、一般式(2)で表わされる化合物が特に好ましい。一般式(2)で表わされる化合物について説明する。
【0028】
【化6】

【0029】
式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基であり;pおよびqはそれぞれ独立に1から4の整数であり;Rはフェニル基であり;RおよびRは水素原子あるいはお互いに連結して5,6または7員環を形成する基であり;Aは2価の連結基であり;Xは酸性基であり;Mn+はカチオンであり;nは1,2または3である。
【0030】
,RおよびRで表されるアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子およびアルコキシ基は一般式(1)について述べたそれぞれの基と同義である。R、Rがハロゲン原子の場合はクロル原子が最も好ましい。Aで表される2価の連結基としてはアルキレンおよびフェニレンを挙げることが出来、アルキレンが好ましい。アルキレン連結基の炭素数としては1〜6であり分岐していてもよい。RおよびRがお互いに結合してできる5,6または7員環は前述と同義である。
【0031】
酸性基としてはカルボキシル基(塩でもよい)またはスルホ基(塩でもよい)を挙げることができる。スルホ基を有することが特に好ましい。その対塩を形成するカチオンは前述と同義である。
【0032】
さらに、一般式(3)で表される会合性シアニン化合物が好ましい。
【0033】
【化7】

【0034】
式中、R10はフェニル基であり;R11およびR12は水素原子あるいはお互いに連結して5,6または7員環を形成する基であり;Aは2価の連結基であり;Xは酸性基であり;Mn+はカチオンであり;nは1,2または3である。
10で表されるフェニル基、R11およびR12によって形成される5,6または7員環、Aの2価の連結基、Xの酸性基、Mn+のカチオンは前述と同義である。
一般式(3)で表される化合物は複数、通常4分子以上、好ましくは10〜30分子が会合して会合体を形成する。この会合体は後述するように溶液状態での吸収極大とフィルターでの吸収極大との差を測定することによって確認される。
【0035】
以下に一般式(1)〜(3)で表される化合物(以下、色素ということがある。)の具体例を示すが、本発明はこれらの例示化合物により限定されるものではない。
【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
一般式(1)および(2)で表される化合物はエフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ・シアニン・ダイズ・アンド・リレイテッド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds Cyanine Dyes and Related Compounds)」,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社,ニューヨーク,ロンドン,1964年刊、およびデー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ − スペシャル・トッピクス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds − Special topics in heterocyclic chemistry)」,第18章,第14節,482〜515頁,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社,ニューヨーク,ロンドン,1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodds Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,part B,1977年刊,第15章,369〜422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、特開平4−362932号記載の参考文献を参照して合成できる。
【0041】
本発明の近赤外吸収フィルターには一般式(1)(2)または(3)で表される化合物(以下、色素ということもある。)が含まれるが、その波長は700〜1100nmの範囲に吸収極大を示すものであることが好ましい。上記の吸収極大を示す波長(吸収極大波長)は、前記色素が会合体を形成したときのものであってもよい。さらに本発明の近赤外線吸収フィルターの吸収スペクトルとしては、可視域(400〜600nm)の副吸収が少ないことが好ましい。より具体的には、吸収波長400nmにおける吸光度(Dv)が吸収極大波長における吸光度(Dm)の1/10以下であることが好ましく、1/15以下であることがより好ましく、1/20以下であることが特に好ましい。
好ましい吸収波形を得るために、本発明の近赤外線フィルターは、前記色素を水や溶剤等に溶解させた組成物としてもよいが、吸収および耐光性向上のために前記色素を会合状態にすることが好ましく(以下、この状態の色素を「会合体色素」ともいう。)、J会合体を含む会合体状態の色素を用いることがより好ましい。
なお、会合体色素は、いわゆるJバンドを形成するため、シャープな吸収スペクトルピークを示す。色素の会合とJバンドについては、例えば、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering),Vol18,No.323−335(1974))に詳細な記載がある。J会合状態の色素の吸収極大は、溶液状態の色素の吸収極大よりも長波側に移動する。従って、近赤外吸収フィルターに含まれる色素が会合状態であるか、非会合状態であるかは、吸収極大を測定することで判断できる。
【0042】
本発明においては、島津製作所社製、UV−3100Pc(商品名)を用いて測定した溶剤中での色素の吸収極大波長(λma)に対して、同装置により測定した会合後(例えば、膜)の吸収極大波長(λmb)が30nm以上長波長であるとき、その会合後の色素を会合状態の色素(会合体色素)という。ここで、より良好な会合状態として、溶液状態での吸収極大波長と会合後の吸収極大波長との差(λmb−λma)を、50nm以上とした会合体色素であることが好ましく、70nm以上とした会合体色素であることがより好ましい。
【0043】
本発明の会合体色素の形成は一般式(1)(2)または(3)で表わされる色素を水に溶解し、ゼラチンまたは塩(例えば、塩化バリウム、塩化カルシウムなど)を添加して水中で会合体色素とすることができる。また、固体微粒子として分散させて会合体色素とすることもできる。分散は、色素のカリウム塩またはナトリウム塩でも可能であり、さらに、色素の水溶液に金属塩(例えば、塩化マグネシウム,塩化亜鉛、または塩化バリウム)の水溶液を添加してレーキ顔料で行うこともできる。逆に上記金属塩の水溶液に一般式(1)(2)または(3)で表される色素の水溶液を添加してもよい。
【0044】
本発明の近赤外吸収フィルターにおける一般式(1)(2)または(3)で表される化合物の含有量は、必要に応じて調節することができるが、組成物中に0.1〜30質量%含有させることが好ましく、0.5〜10質量%含有させることがより好ましい。
【0045】
本発明の色素は固体微粒子分散物としても使用できる。このような固体微粒子分散物については、例えば、株式会社 技術情報協会 発行の「顔料分散技術−表面処理と分散剤の使い方および分散性評価−」、株式会社 朝倉書店発行の「顔料の事典」、株式会社 技術情報協会発行の「最新『顔料分散』実務ノウハウ・事例集」に詳しく記載されている。固体微粒子分散物にするためには、通常の分散機を用いることができる。分散機の例には、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル及びローラミルが含まれる。分散機については、特開昭52−92716号公報及び国際公開第88/074794号パンフレットに記載がある。縦型又は横型の媒体分散機が好ましい。
分散は、適当な媒体(例、水、アルコール、シクロヘキサノン、2−メトキシー1−メチルエチル アセテート)の存在下で実施してもよい。分散用界面活性剤を用いることが好ましい。分散用界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(特開昭52−92716号公報及び国際公開第88/074794号パンフレットに記載)が好ましく用いられる。必要に応じてアニオン性ポリマー、ノニオン性界面活性剤あるいはカチオン性界面活性剤を用いてもよい。
【0046】
また、微粒子化法としては、本発明の色素を適当な溶媒中に溶解した後、その溶液に貧溶媒を添加して、微粒子化し、必要に応じて常法によりそれを粉末としてもよい。この場合も、上記の分散用界面活性剤を用いてもよい。あるいはpHを調整することによって溶解し、次にpHを変化させて色素の微粒子を析出させてもよい。この微粒子も上述した会合体色素であることが好ましい。
会合体色素が微粒子(または微結晶)である場合、平均粒径1000μm以下であることが好ましく、0.001μm〜100μmであることがより好ましく、0.005μm〜50μmであることが特に好ましい。(本発明において、平均粒径とは特に断わらない限り、体積平均粒径をいい、レーザー回折散乱法または動的光散乱法を用いて測定したものをいう。)。
【0047】
本発明の色素の分散性を向上させる目的で通常の顔料用分散剤や界面活性剤を添加することができる。これらの分散剤としては、多くの種類の化合物が用いられるが、例えば、フタロシアニン誘導体(市販品:EFKA−745(商品名、エフカ社製))、ソルスパース5000(商品名、ゼネカ社製);オルガノシロキサンポリマーKP341(商品名、信越化学工業(株)社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(商品名、共栄社油脂化学工業(株)社製)、W001(商品名、裕商(株)社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、エマルゲンA60(商品名、花王(株)社製)等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(商品名、裕商(株)社製)、ドデシルベンゼンスルホン酸Na、デモールSNB(商品名、花王(株)社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上、商品名、森下産業(株)製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(商品名、サンノプコ(株)社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(商品名、ゼネカ(株)社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123(商品名、旭電化(株)社製)およびイソネットS−20(商品名、三洋化成(株)社製)が挙げられる。
【0048】
上記分散剤は、単独で用いてもよくまた2種以上組み合わせて用いてもよい。上記分散剤の本発明の組成物中の添加量は、色素100質量部に対して1〜150質量部程度が好ましい。
【0049】
本発明の色素を含むフィルター層に、褪色防止剤、酸化防止剤や紫外線防止剤を添加してもよい。褪色防止剤には、ハイドロキノン誘導体、ハイドロキノンジエーテル、フェノール誘導体、スピロインダン、メチレンジオキシベンゼン、クロマン、スピロクロマン、クマラン誘導体、ハイドロキノンモノエーテル、p−アミノフェノール誘導体およびビスフェノール誘導体が含まれる。ハイドロキノン誘導体については、米国特許3935016号、同3982944号の各明細書に記載がある。ハイドロキノンジエーテルについては、米国特許4254216号明細書、特開昭55−21004号公報に記載がある。フェノール誘導体については、特開昭54−145530号公報に記載がある。スピロインダン、メチレンジオキシベンゼンについては、英国特許2062888号、同2077455号の各明細書に記載がある。クロマン、スピロクロマン、クマラン誘導体については、米国特許3432300号、同3573050号、同3574627号、同3764337号の各明細書、特開昭52−152225、同53−17729号、同53−20327号、同61−90156号の各公報に記載がある。ハイドロキノンモノエーテル、p−アミノフェノール誘導体については、英国特許1347556号、同2066975号の各明細書、特公昭54−12337号、特開昭55−6321号の各公報に記載がある。ビスフェノール誘導体については、米国特許3700455号明細書、特公昭48−31625号公報に記載がある。
【0050】
金属錯体(米国特許4245018号明細書、特開昭60ー97353号公報記載の)や一重項酸素クウェンチャーをフィルター層に添加しても良い。一重項酸素クウェンチャーには、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報記載)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書記載)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報記載)および酸化防止剤(欧州特許820057A1号明細書記載)が含まれる。
【0051】
フィルター層の厚さは0.1μm乃至1cmであることが好ましく、0.5μm乃至100μmであることがさらに好ましい。
【0052】
フィルター層は、さらにポリマーバインダーを含む。天然ポリマー(例、ゼラチン、セルロース誘導体、アルギン酸)または合成ポリマー(例、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、水溶性ポリアミド)をポリマーバインダーとして用いることができる。親水性ポリマー(上記天然ポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポビニルアルコール、水溶性ポリアミド)が特に好ましい。
【0053】
本発明のフィルターは透明支持体を有する。透明支持体はガラスまたは、ポリマーフイルムからなることが好ましい。ポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースニトレート)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアリレート(例、ビスフェノールAとフタル酸の縮合物)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドおよびポリオキシエチレンが含まれる。セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。透明支持体の厚みは、5μm乃至5cm以下であることが好ましく、25μm乃至1cmであることがさらに好ましく、80μm乃至1.2mmであることが最も好ましい。
【0054】
透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0055】
透明支持体に、紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01乃至20質量%であることが好ましく、0.05乃至10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。
透明支持体に表面処理を施すことが好ましい。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火炎処理が好ましく、コロナ放電処理がさらに好ましい。
【0056】
また、本発明の近赤外吸収フィルターは光硬化性組成物中、熱硬化性組成物中に一般式(1)(2)または(3)で表される化合物を含んでなるものであってもよい。光硬化性組成物、熱硬化性組成物としてエチレン性不飽和基を持つ化合物を含む組成物が好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能のアクリレートやメタクリレートが挙げられる。また更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものが挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらにより限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
化合物5,9,19を下記のルートで合成した。
【0059】
【化12】

<化合物5の合成>
a 1.6gおよびb 0.81gをメタノール10mlに溶解し、無水酢酸0.7mlおよびトリエチルアミン2.1mlを加え、50℃で2時間反応させ、酢酸カリウム1.5gを加え、析出した結晶を濾過した。その後、MeOH/H2O=1/1で精製を行い、化合物5を0.3g得た。 λmaxはジメチルスルホキシド中で801nmだった。モル吸収係数はジメチルスルホキシド中1.11×10dm/mol cmであった。融点は252〜257℃だった。
<化合物9の合成>
a 1.6gおよびb 1gをメタノール10mlに溶解し、無水酢酸1mlおよびトリエチルアミン2mlを加え、50℃で2時間反応させ、酢酸カリウム1.5gを加え、析出した結晶を濾過した。その後、MeOH/H2O=1/1で精製を行い、化合物9を1.6g得た。λmaxはジメチルスルホキシド中で808.5nmだった。モル吸収係数はジメチルスルホキシド中1.81×10dm/mol cmであった。融点は257〜261℃だった。
<化合物19>
a 2.4gおよびb 1.47gをメタノール25mlに溶解し、無水酢酸2mlおよびトリエチルアミン2mlを加え、50℃で2時間反応させ、酢酸カリウム1.5gを加え、析出した結晶を濾過した。その後、MeOH/H2O=1/1で精製を行い、化合物19を1g得た。λmaxはジメチルスルホキシド中で837.5nmだった。モル吸収係数はジメチルスルホキシド中1.70×10dm/mol cmであった。融点は230〜235℃だった。
その他の化合物も上記の例と同様に合成できる。
【0060】
(実施例2)
本発明の化合物(例示化合物18)0.5g、エマルゲンA60(花王(株)社製)0.05g、ジルコニアビーズ(0.1mm)10g、蒸留水4.5gの混合物を、遊星型ボールミル(ドイツ フリッチュ社製)を用いて分散し分散物を得た。得られた粒子の平均粒半径は0.21μmであった。
【0061】
4質量%ゼラチン水溶液2.0gに上記で得られた分散物0.6gを40℃にて加え、混合した。この液をガラス基板上にスピンコートし、100℃で2分乾燥して厚み2μmのフィルター層を形成し赤外吸収フィルターAを作成した。
(実施例3)
実施例2で使用した本発明の例示化合物18の代わりに、本発明の例示化合物19,20,15,9および5を用いた以外は実施例2と全く同様に、分散物および赤外吸収フィルターB,C,D、EおよびFを作成した。
【0062】
(実施例4)
実施例2で使用した本発明の例示化合物18の代わりに、比較色素a,bおよびcを用いた以外は、実施例2と全く同様にして、分散物および赤外吸収フィルターG,HおよびIを作成した。比較例aは特開2002−90521、比較例bは特開平4−362932号、比較例cはJournal of Information Recording Materials,(1988),16(1),23−31に記載の色素である。
【0063】
【化13】

【0064】
(フィルターの評価)
作成した各フィルターについて、下記評価を行った。その結果を表1に示した。
<吸収>
UV−3100Pc(商品名、島津製作所社製)を用いて、フィルターの吸収極大波長(λmb)を測定した。また、ジメチルスルホキシドまたはメチルアルコール中に溶解した各色素の吸収極大波長(λma)を測定した(色素1mgをDMSO 100mlに溶解して測定した)。
【0065】
<不可視性>
不可視性については、UV−3100Pc(商品名、島津製作所社製)を用いてフィルターの400nmの吸収濃度(Dv)を吸収極大波長の濃度(Dm)で除した値(Dv/Dm)の値を示した。
【0066】
<耐光性>
ウェザーメーター(アトラスC.I65、商品名、 アトラス社製)を用いて、キセノン光(10万lx)をフィルターに20時間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を上記3100PCを用いて測定し、照射後濃度/照射前濃度=色素残存率として評価した。
【0067】
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フィル 色素 λmb/膜 λma/溶媒 不可視性 耐光性
ター (例示化合物)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A 18 1080nm 837nm/DMSO 0.015 95%
B 19 1060nm 837nm/DMSO 0.030 85%
C 20 1045nm 837nm/DMSO 0.011 95%
D 15 900nm 809nm/DMSO 0.018 90%
E 9 975nm 809nm/DMSO 0.009 80%
F 5 1025nm 801nm/DMSO 0.011 97%
G a 940nm 823nm/DMSO 0.090 50%
H b 970nm 781nm/MeOH 0.174 0%
I c 640nm 807nm/MeOH 0.080 0%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0068】
表1から明らかなように、本発明のフィルターは溶液吸収より長波化しており、不可視性および耐光性に優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるシアニン化合物を含むことを特徴とする近赤外吸収フィルター。
【化1】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基または芳香族基であり;RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または一価の基であり;pおよびqはそれぞれ独立に1から4の整数であり;Lは、5または7個のメチンからなり、少なくとも1個はフェニル置換したメチンを有するメチン鎖である。但し、分子内に酸性基を少なくとも一つ以上含む]。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるシアニン化合物が、下記一般式(2)で表わされるシアニン化合物であることを特徴とする請求項1記載の近赤外吸収フィルター。
【化2】

[式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基であり;pおよびqはそれぞれ独立に1から4の整数であり;Rはフェニル基であり;RおよびRは水素原子あるいはお互いに連結して5,6または7員環を形成する基であり;Aは2価の連結基であり;Xは酸性基であり;Mn+はカチオンであり;nは1,2または3である]。
【請求項3】
前記一般式(1)または(2)で表されるシアニン化合物が会合体を形成していることを特徴とする請求項1および2に記載の近赤外吸収フィルター。
【請求項4】
近赤外吸収領域が、吸収波長700nm〜1100nmの領域であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外吸収フィルター。
【請求項5】
400nmの吸光度が最大吸収波長の吸光度の1/20以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外吸収フィルター。
【請求項6】
前記一般式(1)または(2)で表されるシアニン化合物の固体微粒子分散体を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外吸収フィルター。
【請求項7】
下記一般式(2)で表わされる会合性近赤外吸収シアニン化合物。
【化3】

[式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基であり;pおよびqはそれぞれ独立に1から4の整数であり;Rはフェニル基であり;RおよびRは水素原子あるいはお互いに連結して5,6または7員環を形成する基であり;Aは2価の連結基であり;Xは酸性基であり;Mn+はカチオンであり;nは1,2または3である]。
【請求項8】
下記一般式(3)で表わされる会合性近赤外吸収シアニン化合物。
【化4】

[式中、R10はフェニル基であり;R11およびR12は水素原子あるいはお互いに連結して5,6または7員環を形成する基であり;Aは2価の連結基であり;Xは酸性基であり;Mn+はカチオンであり;nは1,2または3である]。

【公開番号】特開2009−92784(P2009−92784A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261421(P2007−261421)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】