説明

追尾レーダ装置

【課題】目標を捕捉してから追尾モードの移行に関る手動操作を簡単化できる追尾レーダ装置を提供する。
【解決手段】指定方向へ捕捉ビームを走査する走査手段1、8及び9と、走査手段で捕捉ビームを走査することにより探知された目標を追尾する追尾モードに自動的に移行させる移行手段4、7と、移行手段により移行された追尾モードにおける目標の追尾状況を表示する表示手段5と、追尾継続の可を入力する入力手段6と、所定の追尾制限回数内に入力手段によって追尾継続の可が入力されない場合に、追尾を自動的に終了させる制御手段7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する目標を追尾する追尾レーダ装置に関し、特に目標の探索から追尾へ移行する時の操作性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動している目標を検出して追尾する追尾レーダ装置が知られている。このような追尾レーダ装置で移動している目標を追尾する場合、目標からの反射波の他に、クラッタと呼ばれる不要反射波が同時に受信される。クラッタが広範囲に存在し、クラッタからの不要反射波が大きい場合、追尾レーダ装置では、目標よりクラッタからの反射波を検出しやすくなるため、誤ってクラッタを追尾するという状態が発生する。
【0003】
このような状況下において、従来の追尾レーダ装置では、目標を捕捉した後に、手動操作によって、追尾モードの移行に関る動作が行われている。図9は、従来の追尾レーダ装置を手動操作によって追尾モードに移行させる手順を示すフローチャートである。
【0004】
まず、操作員は、目標を捕捉するための捕捉操作を行う(ステップS1)。追尾レーダ装置は、この捕捉操作を受けて、捕捉処理を実行する(ステップS2)。ここで、捕捉処理とは、指定された方向へビームを照射し、目標を検出する処理である。
【0005】
次に、捕捉処理によって目標が検出されたかどうかが調べられる(ステップS3)。このステップS3で、目標が検出されなかった、つまり非検出であることが判断されると処理は終了する。一方、ステップS3で目標が検出されたことが判断されると、ステップS4以下の追尾モードへ自動的に移行する。
【0006】
追尾モードでは、捕捉処理によって複数の目標が捕捉された場合は、各目標に番号(目標番号という)が付され、目標番号毎に追尾処理が実施される。なお、以下では、説明を簡単にするために、1つの目標を追尾する場合について説明する。
【0007】
追尾モードに入ると、まず、追尾回数が「0」に初期化されるとともに、追尾終了フラグが「0」に初期化される(ステップS4)。次に、追尾回数がインクリメント(+1)される(ステップS5)。次に、追尾処理が実行される(ステップS6)。ここで、追尾処理とは、目標の方向へビームを照射し、目標に関する情報を取得する処理である。
【0008】
この追尾処理によって得られる目標に関する情報は、追尾状況として表示装置(図示しない)に表示される(ステップS7)。操作員は、表示装置に表示された目標の動きを見て、その目標が移動体であるかクラッタであるかを判断する。そして、例えば、目標番号「m」の目標がクラッタであると判断した場合は、操作員は、目標番号「m」を指定して追尾終了操作を行う(ステップS8)。この追尾終了操作に応答して、追尾終了フラグが「1」にセットされる。
【0009】
なお、追尾終了操作が行われない場合は、このステップS8では追尾終了フラグは元の状態が維持される。次に、追尾終了フラグが「1」であるかどうかが調べられる(ステップS10)。このステップS10で、追尾終了フラグが「1」であることが判断されると、追尾モードにおける処理は終了する。一方、ステップS10において、追尾終了フラグが「1」でないことが判断されると、シーケンスはステップS5に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0010】
目標を追尾する技術として、特許文献1は、目標を見失う可能性を低減し、かつ、無駄な電力消費をなくすことができる追尾レーダの制御装置を開示している。この追尾レーダの制御装置においては、制御器は、信号処理器からの目標の位置データに基づいて、次の追尾時での目標位置を予測して計測範囲を設定し、信号処理器へ出力すると共に、次の次の追尾時での目標位置を予測し、その予測位置のノイズレベルを計測するための計測範囲を設定してノイズレベル計測器へ出力する。更に制御器は、目標付近および次の追尾範囲のノイズレベルを比較し、そのレベル差に基づいて次の追尾動作時の信号処理の種類を設定する。
【0011】
次に、追尾動作を実行し、信号処理器から目標の位置データを制御器へ出力する。また、ノイズレベル計測器により、目標付近のノイズレベルと次の追尾で目標の存在が予測される位置付近のノイズレベルを計測して制御器へ出力する。
【0012】
また、特許文献2は、近接する複数の目標およびクラッタ等の不要信号が観測される環境において探知データと航跡情報とが同一目標であるか否かを判定する相関処理で、信頼性の低い相関結果に対しては自動処理の限界としてその状況をオペレータに提供し、信頼性の高い相関結果を出力する目標相関装置を開示している。
【0013】
この目標相関装置は、航跡の誤差評価量と探知データの観測精度からなる目標の存在分布に基づいて航跡と探知データとの関連付けの信頼度を算出し、信頼度が所要の条件を満たす場合には同一目標としてその関連付けを表示器に出力し、1つの航跡に対する全ての関連付けの信頼度が所要の条件を満たさない場合には判定不能としてその状況を表示器に出力する。
【特許文献1】特開平7−253466号公報
【特許文献2】特開平11−38131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上述した従来の追尾レーダ装置においては、クラッタ等の影響を受けて誤った追尾が行われるのは、追尾回数が多く長く追尾を継続している場合よりも、追尾回数が少ない追尾初期段階の場合の方が多い。
【0015】
しかしながら、従来の追尾レーダ装置では、誤った追尾を終了させる方法は、追尾回数に拘わらず同じ操作が必要である。例えば、追尾回数が50回の目標番号mの追尾も、追尾回数が5回の目標番号nの追尾も、誤った追尾を終了させる方法は同じであり、操作員は、目標番号「m」または「n」を指定した後、追尾終了操作を行う必要がある。
【0016】
従って、目標を捕捉してから追尾モードに移行した直後の追尾初期段階において誤った追尾が多い場合、操作員は、誤った追尾を終了させるために煩雑な操作(目標番号の指定および追尾終了操作)を行う必要があり、表示装置に表示される追尾状況から、正しい追尾を決定するための判断に注力することができず、また、次回の捕捉操作までに多くの時間を要するという問題がある。
【0017】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、目標を捕捉してから追尾モードに移行させる手動操作を簡単化できる追尾レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を達成するために、第1の発明に係る追尾レーダ装置は、指定方向へ捕捉ビームを走査する走査手段と、走査手段で捕捉ビームを走査することにより探知された目標を追尾する追尾モードに自動的に移行させる移行手段と、移行手段により移行された追尾モードにおける目標の追尾状況を表示する表示手段と、追尾継続の可を入力する入力手段と、所定の追尾制限回数内に入力手段によって追尾継続の可が入力されない場合に、追尾を自動的に終了させる制御手段とを備えている。
【0019】
また、第2の発明に係る追尾レーダ装置は、指定範囲を入力する指定範囲入力手段と、指定範囲入力手段で入力された指定範囲から検出された目標を追尾する追尾モードに自動的に移行させる移行手段と、移行手段により移行された追尾モードにおける目標の追尾状況を表示する表示手段と、追尾継続の可を入力する入力手段と、所定の追尾制限回数内に入力手段によって追尾継続の可が入力されない場合に、追尾を自動的に終了させる制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明に係る追尾レーダ装置によれば、追尾を継続させる目標に対してその旨を入力手段から入力することにより、追尾初期段階の誤った追尾を、追尾終了操作を行わなくても自動的に終了させることができる。その結果、目標の探索から追尾モードに移行させる際の手動操作を簡単化することができる。また、追尾を継続する場合のみ追尾継続の可を入力すればよいので、操作の煩雑化に伴う誤操作を防止することができる。
【0021】
また、第2の発明に係る追尾レーダ装置によれば、指定範囲を指定範囲入力手段で入力し、この入力された指定範囲から検出された目標の追尾モードに自動的に移行させるように構成したので、第1の発明に係る追尾レーダ装置による効果に加え、専用の捕捉ビームを用いることなく、特定の捜索範囲からの手動追尾を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1に係る追尾レーダ装置の構成を示すブロック図である。この追尾レーダ装置は、アンテナ装置1、受信機2、検出装置3、追尾フィルタ装置4、表示装置5、入力装置6、制御装置7、ビーム制御装置8および送信機9を有して構成されている。
【0024】
本発明の走査手段は、アンテナ装置1、ビーム制御装置8および送信機9から構成されている。また、本発明の移行手段は、追尾フィルタ装置4および制御装置7から構成されている。また、本発明の入力手段は、入力装置6から構成されている。さらに、本発明の制御手段は、制御装置7から構成されている。
【0025】
アンテナ装置1は、送信機9から送られてくる送信信号を電波に変換し、ビーム制御装置8から送信機9を介して送られてくるビーム制御信号に従った方向に送信波として送信するとともに、この送信波が目標で反射された反射波を受信し、受信信号として受信機2に送る。受信機2は、アンテナ装置1から送られてくる受信信号をデジタルビデオ信号に変換する。この受信機2における変換によって得られたデジタルビデオ信号は、検出装置3に送られる。
【0026】
検出装置3は、受信機2から送られてくるデジタルビデオ信号から目標を検出する。この検出装置3で検出された目標は、追尾フィルタ装置4に送られる。追尾フィルタ装置4は、検出装置3から送られてくる目標に基づいて次のビームの照射方向を決定し、その決定結果を制御装置7に送る。また、追尾フィルタ装置4は、検出装置3から送られてくる目標を表示装置5に送る。
【0027】
表示装置5は、追尾フィルタ装置4から送られてくる目標を画面に表示する。操作者は、この表示装置5に表示された目標を見ながら該目標が移動体であるかクラッタであるかを判断し、追尾を継続するかどうかを決定する。
【0028】
入力装置6は、例えばキーボード等から構成されており、捕捉処理を開始させる捕捉開始コマンド、追尾の継続を指示する追尾継続可コマンド、追尾の終了を指示する追尾終了コマンドなどを入力するために使用される。この入力装置6から入力されたコマンドは、制御装置7に送られる。
【0029】
制御装置7は、追尾フィルタ装置4から送られてくる目標および入力装置6から入力されるコマンドに従って、追尾の継続の要否などを制御する。この制御装置7で行われる処理の詳細は後述する。
【0030】
ビーム制御装置8は、制御装置7からの制御信号に基づいて、ビームの照射方向を指示するビーム制御信号を生成する。このビーム制御装置8で生成されたビーム制御信号は、送信機9に送られる。送信機9は、送信信号を生成し、アンテナ装置1に送るとともに、ビーム制御装置8からのビーム制御信号に従ってアンテナ装置1から送信される送信波の送信方向を制御する。
【0031】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係る追尾レーダ装置において、目標の探知から手動操作によって追尾モードの移行に関る動作を図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、背景技術の欄で説明した図9のフローチャートと同一または相当する処理ステップには同一の符号を付して説明する。
【0032】
まず、操作員は、目標を捕捉するための捕捉操作を行う(ステップS1)。即ち、操作員は、入力装置6を操作して捕捉開始コマンドを入力する。入力装置6から入力された捕捉開始コマンドは制御装置7に送られる。
【0033】
制御装置7は、入力装置6からの捕捉開始コマンドを受け取ると、捕捉処理を実行する(ステップS2)。捕捉処理とは、上述したように、捕捉開始コマンドで指定された方向へ捕捉ビームを照射し、目標を検出する処理である。より具体的には、制御装置7は、入力装置6から捕捉開始コマンドで指定された方向に捕捉ビームを照射すべき旨を指示する制御信号を生成してビーム制御装置8に送る。ビーム制御装置8は、この制御信号に応答してビーム制御信号を生成し、送信機9に送る。
【0034】
送信機9は、ビーム制御信号で指定された方向へ捕捉ビームが照射されるようにアンテナ装置1を制御するとともに送信信号をアンテナ装置1に送る。これにより、アンテナ装置1から捕捉ビームを形成する送信波が送出される。また、アンテナ装置1は、この送信波が目標で反射された反射波を受信し、受信信号として受信機2に送る。
【0035】
受信機2は、アンテナ装置1から送られてくる受信信号をデジタルビデオ信号に変換し、検出装置3に送る。検出装置3は、受信機2からのデジタルビデオ信号から目標を検出し、表示装置5および制御装置7に送る。これにより、表示装置5の画面上に、捕捉された目標が表示される。
【0036】
なお、この実施例1に係る追尾レーダ装置では、捕捉開始コマンドは、操作員が入力装置6から入力するように構成しているが、他のシステムから入力するように構成することもできる。また、この実施例1に係る追尾レーダ装置では、捕捉処理を1回だけ実施するように構成しているが、予め指定された回数だけ実施したり、停止操作が行われるまで繰り返して実施するように構成することができる。
【0037】
次に、ステップS2における捕捉処理によって目標が検出されたかどうかが調べられる(ステップS3)。即ち、制御装置7は、追尾フィルタ装置4から送られてくる目標が存在するかどうかを調べる。このステップS3で、目標が検出されなかった、つまり非検出であることが判断されると処理は終了する。一方、ステップS3において、目標が検出されたことが判断されると、ステップS4以下の追尾モードへ自動的に移行する。
【0038】
追尾モードでは、捕捉処理によって複数の目標が捕捉された場合は、各目標に番号(目標番号という)を付し、目標番号毎に追尾処理が実施される。なお、以下では説明を簡単にするために、1つの目標を追尾する場合について説明する。
【0039】
追尾モードに入ると、まず、追尾回数が「0」に初期化されるとともに、追尾終了フラグおよび操作済フラグが「0」に初期化される(ステップS4)。次に、追尾回数がインクリメント(+1)される(ステップS5)。
【0040】
次に、追尾処理が実行される(ステップS6)。追尾処理とは、上述したように、検出された目標の方向へビームを照射し、目標に関する情報を取得する処理である。より具体的には、制御装置7は、追尾フィルタ装置4から送られてくる目標の方向にビームを照射すべき旨を指示する制御信号を生成してビーム制御装置8に送る。
【0041】
ビーム制御装置8は、この制御信号に応答してビーム制御信号を生成し、送信機9に送る。送信機9は、ビーム制御信号で指定された方向へビームが照射されるようにアンテナ装置1を制御するとともに送信信号をアンテナ装置1に送る。これにより、アンテナ装置1からビームを形成する送信波が送出される。また、アンテナ装置1は、この送信波が目標で反射された反射波を受信し、受信信号として受信機2に送る。
【0042】
受信機2は、アンテナ装置1から送られてくる受信信号をデジタルビデオ信号に変換し、検出装置3に送る。検出装置3は、受信機2からのデジタルビデオ信号から目標を検出し、目標に関する情報を取得する。この検出装置3によって取得された目標に関する情報は、表示装置5および制御装置7に送られる。以上の追尾処理により、表示装置5の画面上に、目標に関する情報が追尾状況として表示される(ステップS7)。
【0043】
操作員は、表示装置5に表示された目標の動きを見て、その目標が移動体であるかクラッタであるかを判断する。そして、注目している目標が移動体であることを判断した場合は、追尾継続可操作を行う(ステップS20)。即ち、操作員は、入力装置6を操作して追尾継続可コマンドを入力する。追尾継続可コマンドの入力は、例えば入力装置6から目標番号の入力、あるいは、入力装置6に設けられた図示しない追尾継続可スイッチの押下によって行うことができる。入力装置6から入力された追尾継続可コマンドは制御装置7に送られる。
【0044】
制御装置7は、入力装置6からの追尾継続可コマンドを受け取ると、操作済フラグを「1」にセットする(ステップS21)。なお、追尾継続可操作が行われない場合は、このステップS21では操作済フラグは元の状態に維持される。次に、現在の追尾回数が予め定められている追尾制限回数であるかどうかが調べられる(ステップS22)。
【0045】
ここで、追尾回数が追尾制限回数でないことが判断されると、シーケンスはステップS9に進む。一方、追尾回数が追尾制限回数であることが判断されると、次に、操作済フラグが「1」であるかどうかが調べられる(ステップS23)。このステップS23で、操作済フラグが「1」であることが判断されると、追尾を継続すべき旨が認識され、シーケンスはステップS9に進む。
【0046】
一方、ステップS23で、操作済フラグが「1」でないことが判断されると、追尾を終了すべき旨が認識され、追尾終了フラグが「1」にセットされる(ステップS24)。その後、シーケンスはステップS9に進む。以上の処理により、追尾制限回数内に、追尾継続可操作がなされない場合は、追尾を自動的に終了する機能が実現されている。
【0047】
ステップS8〜S10では、従来(図9参照)と同様の方法で追尾を終了する機能が実現されている。即ち、操作員は、例えば、目標番号「m」の目標の追尾を終了したいと判断した場合は、目標番号「m」を指定して追尾終了操作を行う(ステップS8)。この追尾終了操作に応答して、追尾終了フラグが「1」にセットされる。
【0048】
なお、追尾終了操作が行われない場合は、このステップS8では追尾終了フラグは元の状態が維持される。次に、追尾終了フラグが「1」であるかどうかが調べられる(ステップS10)。ここで、追尾終了フラグが「1」であることが判断されると、追尾モードの処理は終了する。一方、追尾終了フラグが「1」でないことが判断されると、シーケンスはステップS5に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0049】
次に、本発明の実施例1に係る追尾レーダ装置による効果を、従来の追尾レーダ装置と比較しながら説明する。図3は、従来の追尾レーダ装置において、目標の捕捉から追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。今、捕捉操作により目標番号1〜目標番号5といった5個の目標が捕捉されたものとする。このうち、目標番号1および3の目標のみが移動体(検出)であり、残りの目標番号2、4および5の目標はクラッタ(誤検出)であるものとする。
【0050】
操作員は、1回目の追尾により目標番号2の目標を誤検出であると判断すると、まず、目標番号「2」を指定して追尾終了操作を行う。これにより、目標番号2の目標に対する追尾が終了する。同様にして、目標番号4および5の目標に対して追尾終了操作を行って順次追尾を終了させる。従って、誤検出の目標の追尾を終了させるためには、3回の操作が必要になる。
【0051】
これに対し、図4は、本発明の実施例1に係る追尾レーダ装置において、目標の捕捉から追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。捕捉操作により捕捉される目標は、図3に示した場合と同じであるものとする。また、追尾制限回数は「4」に設定されているものとする。操作員は、1回目および2回目の追尾により目標番号1の目標が正しく検出されたと判断すると、まず、目標番号1の目標に対する追尾継続可操作を行う。
【0052】
これにより、目標番号1の目標に対する追尾が継続される。同様にして、3回目の追尾において、目標番号3の目標が正しく検出されたと判断する目標番号3の目標に対する追尾継続可操作を行う。4回目の追尾では、追尾回数が追尾制限回数に到達するので、残りの目標番号2、4および5の目標に対する追尾は自動的に終了する。
【0053】
従って、誤検出の目標の追尾を終了させるためには、2回の操作で済む。その結果、目標の探索から追尾モードの移行に関る手動操作を簡単化することができる。また、追尾を継続する場合のみ追尾継続可の操作を行えばよいので、操作の煩雑化に伴う誤操作を防止することができる。
【0054】
以上のように構成される本発明の実施例1に係る追尾レーダ装置によれば、操作員が、追尾制限回数に到達する前に、誤った追尾である(目標がクラッタである)と判断した場合は、その目標を放置しておくことにより、制限追尾回数に到達した時に自動的に追尾が終了されるので、追尾を終了させるために入力装置6を操作する必要がない。一方、正しい追尾である(目標が移動体である)と判断した場合は、入力装置6を用いて追尾継続可操作を行うことにより追尾を継続させることができる。
【0055】
目標の捕捉から追尾モードに移行した直後の追尾初期段階では、誤った追尾が多く発生するが、操作員は正しい追尾のみを継続するように操作し、誤った追尾を終了させる操作を行わなくても、追尾回数が追尾制限回数に到達すると誤った追尾は自動的に終了する。従って、操作員は、表示装置5に表示される追尾状況から、正しい追尾を決定するための判断に注力することができる。また、次回の捕捉操作までの時間を短縮できる。
【実施例2】
【0056】
上述した実施例1に係る追尾レーダ装置は、指定方向へ捕捉ビームを照射し、この捕捉ビームで探知した目標に対して自動的に追尾モードに移行するように構成されているのに対し、本発明の実施例2に係る追尾レーダ装置は、指定範囲を入力し、この入力された指定範囲から検出した目標に対して自動的に追尾モードに移行するように構成したものである。
【0057】
この実施例2に係る追尾レーダ装置の構成は、図1に示した実施例1に係る追尾レーダ装置の構成と同じである。本発明の指定範囲入力手段は入力装置6から構成されている。本発明の移行手段は、追尾フィルタ装置4および制御装置7から構成されている。本発明の入力手段は、入力装置6から構成されている。本発明の制御手段は、制御装置7から構成されている。
【0058】
この実施例2に係る追尾レーダ装置では、重点捜索範囲を指定範囲として入力装置6から指定する。具体的には、制御装置7は、入力装置6から入力された指定範囲にビームを照射すべき旨を指示する制御信号を生成してビーム制御装置8に送る。ビーム制御装置8は、この制御信号に応答してビーム制御信号を生成し、送信機9に送る。
【0059】
送信機9は、ビーム制御信号で指定された範囲へビームが照射されるようにアンテナ装置1を制御するとともに送信信号をアンテナ装置1に送る。これにより、アンテナ装置1から送信波が送出される。また、アンテナ装置1は、この送信波が目標で反射された反射波を受信し、受信信号として受信機2に送る。
【0060】
受信機2は、アンテナ装置1から送られてくる受信信号をデジタルビデオ信号に変換し、検出装置3に送る。検出装置3は、受信機2からのデジタルビデオ信号から目標を検出し、表示装置5および制御装置7に送る。これにより、表示装置5の画面上に、検出された目標が表示される。その後、指定範囲から検出した目標に対して自動的に追尾モードに移行する。追尾モードにおける動作は実施例1に係る追尾レーダ装置のそれと同じである。
【0061】
次に、本発明の実施例2に係る追尾レーダ装置による効果を、従来の追尾レーダ装置と比較しながら説明する。図5は、従来の追尾レーダ装置において、指定範囲から目標を検出して追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。図6は、本発明の実施例2に係る追尾レーダ装置において、目標の捕捉から追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。これらの図5および図6に示す例は、捕捉ビームにより目標を探知する代わりに、重点捜索範囲(指定範囲)から目標を検知することを除けば、図3および図4に示した例と同じである。
【0062】
以上のように構成される本発明の実施例2に係る追尾レーダ装置によれば、実施例1に係る追尾レーダ装置と同様の効果を奏する。加えて、専用の捕捉ビームを用いることなく、特定の捜索範囲からの手動追尾を行うことができる。従って、専用の追尾ビームを持たないTWS(Track While Scan)方式の追尾レーダ装置においても、簡易な操作で手動追尾を行うことができる。
【実施例3】
【0063】
本発明の実施例3に係る追尾レーダ装置は、実施例1に係る追尾レーダ装置において、追尾制限回数を変更できるようにしたものである。
【0064】
この実施例3に係る追尾レーダ装置の構成は、図1に示した実施例1に係る追尾レーダ装置の構成と同じである。本発明の追尾制限回数変更手段は、入力装置6および制御装置7から構成されている。
【0065】
この実施例3に係る追尾レーダ装置では、追尾制限回数を入力装置6から指定できるようになっている。制御装置7は、図2に示すフローチャートのステップS22において、追尾回数と入力装置6から入力された追尾制限回数とを比較する。これら以外の構成および動作は、実施例1の動作と同じである。
【0066】
図7は、本発明の実施例3に係る追尾レーダ装置において、目標の捕捉から追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。捕捉操作により捕捉される目標は、図3に示した場合と同じであるものとする。また、追尾制限回数は入力装置6によって「3」に設定されているものとする。操作員は、1回目の追尾により目標番号1の目標が正しく検出されたと判断すると、まず、目標番号1の目標に対する追尾継続可操作を行う。
【0067】
これにより、目標番号1の目標に対する追尾が継続される。同様にして、2回目の追尾において、目標番号3の目標が正しく検出されたと判断する目標番号3の目標に対する追尾継続可操作を行う。3回目の追尾では、追尾回数が追尾制限回数に到達するので、残りの目標番号2、4および5の目標に対する追尾は終了する。従って、誤検出の目標の追尾を終了させるためには、2回の操作で済む。
【0068】
以上のように構成される本発明の実施例3に係る追尾レーダ装置によれば、実施例1に係る追尾レーダ装置と同様の効果を奏する。加えて、制限追尾回数を操作員が変更できるように構成したので、表示装置5に表示された目標が誤った目標であるか正しい目標であるかを判断するために必要な追尾回数を適宜変更することが可能になり、状況に応じた判断が可能となる。
【0069】
なお、この実施例3に係る追尾レーダ装置は、実施例1に係る追尾レーダ装置において追尾制限回数を変更できるように構成したが、実施例2に係る追尾レーダ装置において追尾制限回数を変更できるように構成することもでき、この場合も上記と同様の効果を奏する。
【実施例4】
【0070】
本発明の実施例4に係る追尾レーダ装置は、実施例1に係る追尾レーダ装置において使用される追尾制限回数に代えて、追尾制限時間を用いるようにしたものである。
【0071】
この実施例4に係る追尾レーダ装置の構成は、図1に示した実施例1に係る追尾レーダ装置の構成と同じである。この実施例4に係る追尾レーダ装置では、制御装置7は、図2に示すフローチャートのステップS22において、1回の追尾処理に要する追尾時間と所定の追尾制限時間とを比較する。これ以外の構成および動作は、実施例1の動作と同じである。
【0072】
図8は、本発明の実施例4に係る追尾レーダ装置において、目標の捕捉から追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。捕捉操作により捕捉される目標は、図3に示した場合と同じであるものとする。また、1回の追尾処理に要する追尾時間を3秒とし、所定の追尾制限時間は12秒であるものとする。
【0073】
操作員は、1回目および2回目の追尾、つまり目標の検出から6秒経過後に、目標番号1の目標が正しく検出されたと判断すると、まず、目標番号1の目標に対する追尾継続可操作を行う。これにより、目標番号1の目標に対する追尾が継続される。同様にして、3回目の追尾、つまり9秒経過後に、目標番号3の目標が正しく検出されたと判断する目標番号3の目標に対する追尾継続可操作を行う。4回目の追尾、つまり12秒経過後には、追尾時間が追尾制限時間に到達するので、残りの目標番号2、4および5の目標に対する追尾は終了する。従って、誤検出の目標の追尾を終了させるためには、2回の操作で済む。
【0074】
以上のように構成される本発明の実施例4に係る追尾レーダ装置によれば、実施例1に係る追尾レーダ装置と同様の効果を奏する。加えて、追尾制限回数を追尾制限時間に変えることにより、追尾の時間間隔(追尾データレート)が複数存在する追尾レーダ装置においても、追尾初期の判定時間を一定に保つことが可能となる。これにより、操作員は、追尾データレートに拘わらず、一定の判定時間を確保することが可能となり、的確な判定を行うことができる。
【0075】
なお、この実施例4に係る追尾レーダ装置は、実施例1に係る追尾レーダ装置における追尾制限回数に代えて追尾制限時間を用いるように構成したが、実施例2に係る追尾レーダ装置における追尾制限回数に代えて追尾制限時間を用いるように構成することもでき、この場合も上記と同様の効果を奏する。
【0076】
また、実施例3に係る追尾レーダ装置と同様に、追尾制限時間を、入力装置6から指定及び変更できるように構成することもできる。本発明の追尾制限時間変更手段は、入力装置6および制御装置7から構成されている。この構成によれば、実施例3に係る追尾レーダ装置と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、追尾レーダ等のレーダ装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1に係る追尾レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る追尾レーダ装置において目標の探知から手動操作によって追尾モードに移行させる際の動作を示すフローチャートである。
【図3】従来の追尾レーダ装置において、目標の捕捉から追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1に係る追尾レーダ装置において、目標の捕捉から追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。
【図5】従来の追尾レーダ装置において、指定範囲から目標を検出して追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例2に係る追尾レーダ装置において、指定範囲から目標を検出して追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例3に係る追尾レーダ装置において、目標の捕捉から追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。
【図8】本発明の実施例4に係る追尾レーダ装置において、指定範囲から目標を検出して追尾モードに移行する場合の操作回数を説明するための図である。
【図9】従来の追尾レーダ装置を手動操作によって追尾モードに移行させる手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
1 アンテナ装置
2 受信機
3 検出装置
4 追尾フィルタ装置
5 表示装置
6 入力装置
7 制御装置
8 ビーム制御装置
9 送信機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定方向へ捕捉ビームを走査する走査手段と、
前記走査手段で捕捉ビームを走査することにより探知された目標を追尾する追尾モードに自動的に移行させる移行手段と、
前記移行手段により移行された追尾モードにおける目標の追尾状況を表示する表示手段と、
追尾継続の可を入力する入力手段と、
所定の追尾制限回数内に前記入力手段によって追尾継続の可が入力されない場合に、追尾を自動的に終了させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする追尾レーダ装置。
【請求項2】
指定範囲を入力する指定範囲入力手段と、
前記指定範囲入力手段で入力された指定範囲から検出された目標を追尾する追尾モードに自動的に移行させる移行手段と、
前記移行手段により移行された追尾モードにおける目標の追尾状況を表示する表示手段と、
追尾継続の可を入力する入力手段と、
所定の追尾制限回数内に前記入力手段によって追尾継続の可が入力されない場合に、追尾を自動的に終了させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする追尾レーダ装置。
【請求項3】
前記追尾制限回数を変更する追尾制限回数変更手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の追尾レーダ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記所定の追尾制限回数に代えて、所定の追尾制限時間内に前記入力手段によって追尾継続の可が入力されない場合に、追尾を自動的に終了させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の追尾レーダ装置。
【請求項5】
前記追尾制限時間を変更する追尾制限時間変更手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の追尾レーダ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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