送りねじ機構
【課題】送りねじ機構において、簡素な構成で、変位体を円滑に変位させると共に組付性の向上を図る。
【解決手段】送りねじ機構22は、駆動源18に連結され外周面に第1ねじ溝48の形成された送りねじ軸50と、前記送りねじ軸50に対して複数のボール52を介して螺合された変位ナット54とを含み、前記変位ナット54が、電動アクチュエータ10を構成するスライダ20に対して一対のピン46a、46bで支持される。このピン46a、46bは、スライダ20の第1ピン孔44a、44bに挿入されて固定されると共に、変位ナット54の第2ピン孔60a、60bに先端部が挿入される。そして、変位ナット54は、一対のピン46a、46bによってスライダ20の幅方向且つ回転方向に相対変位自在に設けられる。
【解決手段】送りねじ機構22は、駆動源18に連結され外周面に第1ねじ溝48の形成された送りねじ軸50と、前記送りねじ軸50に対して複数のボール52を介して螺合された変位ナット54とを含み、前記変位ナット54が、電動アクチュエータ10を構成するスライダ20に対して一対のピン46a、46bで支持される。このピン46a、46bは、スライダ20の第1ピン孔44a、44bに挿入されて固定されると共に、変位ナット54の第2ピン孔60a、60bに先端部が挿入される。そして、変位ナット54は、一対のピン46a、46bによってスライダ20の幅方向且つ回転方向に相対変位自在に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送りねじ軸に螺合された変位体を回転駆動源の駆動作用下に軸線方向に沿って変位させる送りねじ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ねじ溝が外周面に刻設されたねじ軸と、該ねじ軸の外周側に設けられる円筒状のナット部材と、前記ねじ溝を介して前記ねじ軸とナット部材との間に設けられるボールとを備えた送りねじ機構が知られている。
【0003】
このような送りねじ機構は、例えば、特許文献1に開示されるように、アクチュエータに適用され、該アクチュエータを構成するスライダに変位ナットがボールを介して固定されている。そして、ねじ軸が、駆動モータの駆動作用下に回転することにより、変位ナットが前記ねじ軸に沿って直線変位し、それに伴って、前記変位ナットに固定されたスライダが直線変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−248938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術においては、例えば、送りねじ機構を構成するねじ軸に曲がりが生じた場合や、該ねじ軸及び変位ナット等に製品誤差や組付誤差等のばらつきが生じた場合、そのばらつきに起因して前記変位ナットの動作不良が発生することがある。
【0006】
そのため、上述したような動作不良を解消するために、ねじ軸と変位ナットとを組み付ける際に調整作業が必要となり、その組付作業が煩雑になるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、簡素な構成で、変位体を円滑に変位させることができると共に、組付性の向上を図ることが可能な送りねじ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、ボディの軸線方向に沿って変位自在なスライダを有したアクチュエータに用いられる送りねじ機構であって、
外周にねじ溝の刻設された送りねじ軸と、
前記ねじ溝に螺合され、前記送りねじ軸の外周側に設けられる変位体と、
前記スライダに対して前記変位体を相対変位自在に支持する支持機構と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、送りねじ機構を構成する変位体を、該送りねじ機構が用いられるアクチュエータのスライダに対して支持機構によって支持し、前記スライダに対して相対変位可能としている。従って、例えば、送りねじ軸の曲がり等の製品誤差が生じた場合でも、変位体が、支持機構を介してスライダに対して相対変位することによって前記曲がり等のばらつきを好適に吸収することができる。その結果、送りねじ機構において製品誤差や組付誤差等が生じた場合でも、スライダに対して該誤差に起因した偏荷重が付与されることが防止され、前記スライダの変位抵抗が増加してしまうことを回避でき、前記スライダをボディに沿って円滑に変位させることができる。
【0010】
また、スライダが変位する際の抵抗を低減できるため、駆動時における騒音を低減することが可能となる。
【0011】
さらに、送りねじ機構をアクチュエータに対して組み付ける際、例えば、送りねじ軸の曲がり等の製品誤差、組付誤差に応じた調整作業を行う必要がなく、簡便に組付作業を行うことができるため、前記アクチュエータの組付性の向上を図ることができる。
【0012】
また、支持機構は、変位体のスライダの変位方向への相対変位を規制すると共に、前記変位体を前記変位方向と直交方向に変位自在に支持するとよい。
【0013】
さらに、支持機構は、変位体が送りねじ軸に対して回転方向へ相対変位することを規制し、且つ、変位体を、スライダの軸線と直交する基線を中心として回転自在に支持するとよい。
【0014】
さらにまた、支持機構は、スライダの変位方向と直交し、該スライダと前記変位体とを貫通するように設けられたピン部材とするとよい。
【0015】
またさらに、変位体を、該変位体に挿入されたピン部材の端部を支点としたモーメント方向に回動自在に支持するとよい。
【0016】
また、アクチュエータは、ボディに設けられ、送りねじ軸に連結されると共に通電作用下に回転駆動する駆動部を有するとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
すなわち、送りねじ機構を構成する変位体を、アクチュエータのスライダに対して支持機構で相対変位自在に支持しているため、例えば、送りねじ軸の曲がり等の製品誤差が生じた場合でも、変位体を、支持機構を介してスライダに対して相対変位させることによって前記曲がり等のばらつきを好適に吸収することができる。その結果、送りねじ機構において製品誤差や組付誤差等が生じた場合でも、スライダに対して該誤差に起因した偏荷重が付与され変位抵抗が増加してしまうことを確実に回避でき、前記スライダをボディに沿って円滑に変位させることができる。また、送りねじ機構をアクチュエータに対して組み付ける際、例えば、送りねじ軸の曲がり等の製品誤差、組付誤差に応じた調整作業を行う必要がなく、簡便に組付作業を行うことができるため、前記アクチュエータの組付性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る送りねじ機構が適用された電動アクチュエータの全体平面図である。
【図2】図1に示す電動アクチュエータの一部断面側面図である。
【図3】図1のスライダ及び変位ナット近傍を示す拡大平面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図2の送りねじ軸及び変位ナットがピンを支点としてスライダに対して傾動した場合を示す拡大側面図である。
【図6】図4の送りねじ軸及び変位ナットがピンに沿って水平方向に変位した場合を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る送りねじ機構が適用された電動アクチュエータの全体平面図である。
【図8】図7に示す電動アクチュエータの一部断面側面図である。
【図9】図7のスライダ及び変位ナット近傍を示す拡大平面図である。
【図10】図7の送りねじ軸及び変位ナットがピンに沿って水平方向に変位した場合を示す拡大横断面図である。
【図11】図7の送りねじ軸及び変位ナットがピンを支点として水平面上でモーメント方向に傾動した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る送りねじ機構について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0021】
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る送りねじ機構が適用された電動アクチュエータを示す。
【0022】
この電動アクチュエータ10は、図1〜図6に示されるように、フレーム12と、前記フレーム12の一端部に連結されるエンドプレート14と、前記フレーム12の他端部にハウジング16を介して連結され回転駆動する駆動源18と、前記フレーム12に沿って変位自在に設けられるスライダ20と、前記フレーム12の内部に設けられ、前記駆動源18の駆動力を前記スライダ20へと伝達する送りねじ機構22とを含む。
【0023】
フレーム12は、長手方向(矢印A1、A2方向)に沿って所定長さを有するプレート状のベース部24と、前記ベース部24の両側部に立設した一対のガイド部26a、26bとを有する。このガイド部26a、26bは、ベース部24に対して直交して上方に向かって所定高さでそれぞれ形成される。すなわち、フレーム12は、ベース部24及びガイド部26a、26bから断面略U字状で一体に形成される。
【0024】
ガイド部26a、26bの内壁面には、スライダ20を該ガイド部26a、26bの軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って案内する第1ガイド溝28がそれぞれ形成される。この第1ガイド溝28は、例えば、ガイド部26a、26bの内壁面に対して断面半円状に窪んで形成され、軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って延在する。
【0025】
エンドプレート14は、ベース部24及びガイド部26a、26bの他端部に対して複数のボルト30で連結され、前記フレーム12の延在方向と直交するように設けられる。
【0026】
また、エンドプレート14の略中央部には、後述する駆動源18の駆動軸32と同軸上となるように支持孔36が形成される。さらに、エンドプレート14の側面には、ハウジング16に臨むように一対のダンパ34aが設けられ、スライダ20が前記エンドプレート14側へと変位した際における接触及び衝撃の発生を防止する。
【0027】
駆動源18は、例えば、ステッピングモータ等の回転駆動源からなり、図示しない制御部からの制御信号に基づいて所望の回転数又は回転角度で回転駆動する。
【0028】
そして、駆動源18は、内部にカップリング等(図示せず)を有したハウジング16を介してフレーム12に連結されると共に、前記駆動源18の駆動軸32が、前記カップリング等を介して送りねじ軸50の一端部に連結される。
【0029】
ハウジング16には、その内部に送りねじ軸50を回転自在に支持する軸受31が設けられ、その端面に装着された押さえプレート37によって保持されている。この押さえプレート37は、エンドプレート14に臨むように設けられ、その側面には一対のダンパ34bが設けられている。そして、スライダ20がハウジング16側へと変位した際、該押さえプレート37との接触及び該接触に起因した衝撃の発生を防止する。
【0030】
スライダ20は、フレーム12においてベース部24と一対のガイド部26a、26bとに囲まれた空間内に配置される。そして、スライダ20は、フレーム12に対して配設された際、その側面に設けられた一対の第2ガイド溝38が前記フレーム12の第1ガイド溝28に臨むように配置され、前記第2ガイド溝38と前記第1ガイド溝28との間に複数のガイド体40が設けられる。これにより、スライダ20は、複数の球状に形成されたガイド体40を介してフレーム12に沿って軸線方向(矢印A1、A2方向)に案内される。
【0031】
また、スライダ20は、上方に向かって開口した凹部42を有する断面略U字状に形成され、前記凹部42は、前記スライダ20の幅方向中央部に形成され、軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って貫通している。
【0032】
さらに、スライダ20には、凹部42の延在方向(矢印A1、A2方向)と直交するように一対の第1ピン孔44a、44bが形成されている。第1ピン孔44a、44bは、スライダ20の長手寸法における略中央部に形成され、該スライダ20の両側面から凹部42へと貫通するように形成されると共に、一方の第1ピン孔44aと他方の第1ピン孔44bとが水平方向において一直線上となるように形成される。そして、第1ピン孔44a、44bには、後述する支持機構56を構成するピン46a、46bがそれぞれ挿入される。
【0033】
送りねじ機構22は、駆動源18の駆動軸32に連結され外周面に第1ねじ溝48の刻設された送りねじ軸50と、スライダ20の凹部42に設けられ、該送りねじ軸50に複数のボール52を介して螺合される変位ナット(変位体)54と、前記変位ナット54とスライダ20との間に設けられ、該スライダ20に対して変位ナット54を相対変位自在に保持する支持機構56とを含む。
【0034】
送りねじ軸50は、その一端部が駆動軸32に連結されると共に、他端部が、エンドプレート14に設けられた支持孔36に挿入され回転自在に支持される。なお、送りねじ軸50は、上述した駆動軸32と同軸上に設けられる。そして、駆動源18が回転駆動することにより駆動軸32と共に送りねじ軸50が回転する。
【0035】
変位ナット54は、円筒状に形成されスライダ20の凹部42に収容される。この際、図3及び図4に示されるように、変位ナット54の外周面と凹部42の内壁面との間には、該変位ナット54の半径方向に所定間隔のクリアランスが設けられている。
【0036】
この変位ナット54には、その内部に送りねじ軸50と対向し複数のボール52が挿入される第2ねじ溝58が軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って形成される。そして、この螺旋状に刻設された第2ねじ溝58と、送りねじ軸50の第1ねじ溝48とにそれぞれボール52が挿入されることにより、前記送りねじ軸50と変位ナット54とがボール52を介して螺合されることとなる。
【0037】
また、変位ナット54には、該変位ナット54の軸線方向(矢印A1、A2方向)における略中央部に形成され、第2ねじ溝58と直交する一対の第2ピン孔60a、60bが形成される。第2ピン孔60a、60bは、変位ナット54の外周面からねじ孔に向かって延在し、前記第2ねじ溝58と貫通することがない所定深さで形成されると共に、互いに一直線上となるように設けられる。
【0038】
この第2ピン孔60a、60bの直径は、第1ピン孔44a、44bの直径と略同一又は若干だけ大きく設定され、前記第2ピン孔60a、60bには、変位ナット54の外周側となるスライダ20の第1ピン孔44a、44bに挿通されたピン46a、46bの先端部がそれぞれ挿入される。
【0039】
また、第2ピン孔60a、60bの深さは、変位ナット54がスライダ20の凹部42に設けられ、クリアランスが前記変位ナット54の外周面に沿って略均等となるように配置された際、ピン46a、46bの先端部に対してそれぞれ若干だけ深くなるように設定される(図4参照)。
【0040】
ピン46a、46bは、一定径で軸線方向に沿って所定長さで形成され、第1ピン孔44a、44bの内周径と略同一又は若干だけ大径で形成される。
【0041】
そして、例えば、スライダ20の側方から第1ピン孔44a、44bに軽圧入されて嵌合され、その一端部が前記スライダ20の端面から突出することがないように固定されると共に、他端部が、前記第1ピン孔44a、44bから凹部42側に所定長さだけ突出するように配置され、ピン46a、46bの直径より少なくとも大径に形成された第2ピン孔60a、60bに対して変位自在に挿入される。
【0042】
すなわち、一対のピン46a、46bは、第1ピン孔44a、44bを介してスライダ20に固定され、第2ピン孔60a、60bを介して変位ナット54を該変位ナット54の変位方向(矢印A1、A2方向)と直交する水平方向(矢印B1、B2方向)に変位自在に支持すると共に、前記第2ピン孔60a、60bを中心として回転自在に支持可能な支持機構56として機能する。
【0043】
本発明の第1の実施の形態に係る送りねじ機構22が適用された電動アクチュエータ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に前記送りねじ機構22を電動アクチュエータ10に対して組み付ける場合について説明する。
【0044】
先ず、送りねじ軸50に対して変位ナット54が螺合された状態で、送りねじ機構22を、フレーム12の空間内に移動させ、スライダ20の凹部42に変位ナット54を配置する。そして、スライダ20の両側面から第1ピン孔44a、44bに対してピン46a、46bをそれぞれ挿入し、その先端部を変位ナット54の第2ピン孔60a、60bへと挿入する。
【0045】
これにより、変位ナット54が、予めフレーム12に装着されたスライダ20に対して該スライダ20の幅方向(矢印B1、B2方向)、ピン46a、46bを中心とした回転方向(矢印C方向)に変位自在に支持された状態となる。
【0046】
次に、送りねじ軸50の他端部を、エンドプレート14の支持孔36に挿通した後、その一端部を、駆動源18の駆動軸32に対して連結する。この際、例えば、送りねじ軸50に曲がり等が生じていて該送りねじ軸50に螺合される変位ナット54の組付ばらつきが生じた場合でも、前記変位ナット54がスライダ20に対して水平方向及び/又は回転方向に相対変位することによって前記ばらつき(誤差)が吸収される。
【0047】
例えば、図6に示されるように、変位ナット54が、スライダ20の軸線Lに対して一方のピン46a側(矢印B2方向)へと変位することにより、前記変位ナット54を含む送りねじ機構22に生じた製品誤差等が好適に吸収される。
【0048】
その結果、送りねじ軸50を含む送りねじ機構22を、電動アクチュエータ10を構成するフレーム12及びスライダ20に対して組み付ける際、変位ナット54がスライダ20に対して相対変位自在に設けられているため、製品誤差や組付誤差等のばらつきの影響を受けることなく、前記送りねじ軸50の一端部及び他端部を、電動アクチュエータ10を構成する駆動源18及びエンドプレート14に対して確実且つ好適に装着することができ、変位ナット54を送りねじ軸50に沿って円滑且つ確実に変位させることができる。
【0049】
また、変位ナット54を円滑に変位させることができるため、作動時における騒音を低減することができる。
【0050】
さらに、送りねじ機構22において、ばらつきを好適に吸収できるため、変位ナット54が送りねじ軸50に沿って円滑に作動するように調整する煩雑な調整作業が不要となり、その組付性を向上することができる。
【0051】
次に、このように組み付けられた送りねじ機構22を含む電動アクチュエータ10の動作並びに作用効果について説明する。
【0052】
先ず、図示しない制御部からの制御信号に基づいて駆動源18を駆動させ、駆動軸32を介して送りねじ軸50を回転させることにより、該送りねじ軸50の回転駆動力が、ボール52を介して螺合された変位ナット54へと伝達される。これにより、変位ナット54が、駆動源18から離間する方向(矢印A1方向)へと軸線方向に沿って直線変位する。なお、変位ナット54は、一対のピン46a、46bによってスライダ20に支持され、回転方向への変位が規制されているため、前記送りねじ軸50と共に回転してしまうことが防止される。換言すれば、支持機構56を構成するピン46a、46bは、送りねじ軸50を中心とした変位ナット54の回転変位を規制可能な回り止め手段の機能も兼ね備えている。これにより、変位ナット54は回転することなく軸線方向(矢印A1方向)に沿ってのみ変位する。
【0053】
この変位ナット54は、一対のピン46a、46bを介してスライダ20に支持されているため、該変位ナット54と共に前記スライダ20がフレーム12の軸線方向に沿ってエンドプレート14側(矢印A1方向)へと変位する。そして、スライダ20が、エンドプレート14に当接することにより変位終端位置となる。
【0054】
一方、図示しない制御部から駆動源18に供給される制御信号の特性を、前記とは逆転させることにより、前記送りねじ軸50が反対方向に回転し、該送りねじ軸50の回転駆動力が、ボール52を介して前記送りねじ軸50に螺合された変位ナット54へと伝達される。そして、変位ナット54が前記送りねじ軸50の軸線方向(矢印A2方向)に沿って駆動源18側へと直線変位する。
【0055】
以上のように、第1の実施の形態では、フレーム12の軸線方向に沿って変位自在に設けられたスライダ20と、駆動源18の駆動作用下に回転変位する送りねじ軸50に螺合され、該スライダ20の凹部42に設けられる変位ナット54とが、前記凹部42内において半径方向にクリアランスを介して設けられると共に、前記スライダ20と変位ナット54との間には、前記スライダ20の変位方向(矢印A1、A2方向)と直交するように一対のピン46a、46bが設けられ、前記変位ナット54が前記スライダ20に対して該スライダ20の幅方向(矢印B1、B2方向)及び該ピン46a、46bを支点とした回転方向(矢印C方向)に変位自在に支持される。
【0056】
換言すれば、変位ナット54は、スライダ20の軸線と直交するピン46a、46bの軸線(基線)を中心として回転自在に設けられている。
【0057】
これにより、例えば、送りねじ軸50に曲がり等が生じた場合でも、変位ナット54が、一対のピン46a、46bを介してスライダ20に対して幅方向(水平方向)及び回転方向の2方向に相対変位することにより、前記曲がり等のばらつきを好適に吸収することが可能となる。
【0058】
その結果、送りねじ機構22を構成する送りねじ軸50、変位ナット54等でばらつきが生じた際に懸念される偏荷重がスライダ20に対して付与されることが防止され、前記偏荷重に起因したスライダ20の変位抵抗を抑制することが可能となる。その結果、スライダ20をフレーム12に沿って円滑に変位させることができる。
【0059】
また、送りねじ機構22を電動アクチュエータ10に対して組み付ける際、送りねじ軸50の曲がり等の製品誤差、組付誤差に応じた調整作業を行う必要がなく、簡便に組付作業を行うことができるため、前記電動アクチュエータ10の組付性の向上を図ることができる。
【0060】
次に、第2の実施の形態に係る送りねじ機構100が適用された電動アクチュエータ102を図7〜図11に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る送りねじ機構22が適用された電動アクチュエータ10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0061】
この第2の実施の形態に係る送りねじ機構100が適用された電動アクチュエータ102では、図7〜図11に示されるように、変位ナット104が、ピン106を介してスライダ108の幅方向(矢印B1、B2方向)、前記ピン106を中心とした回転方向(図8中、矢印C方向)及びモーメント方向(矢印D方向)に移動自在に支持されている点で、第1の実施の形態に係る送りねじ機構22と相違している。
【0062】
この送りねじ機構100は、スライダ108における一方の側部に第1ピン孔110が形成され、変位ナット104にも同様に第2ピン孔112が形成される。すなわち、第1及び第2ピン孔110、112は、スライダ108及び変位ナット104の軸線と直交方向に形成され、それぞれ1つずつ形成される。そして、第1及び第2ピン孔110、112には、先端部106aが半球状に形成されたピン106が挿入される。
【0063】
ピン106は、スライダ108の側方から第1ピン孔110に軽圧入されて嵌合され、その一端部が前記スライダ108の端面から突出することがないように固定されると共に、他端部が、前記第1ピン孔110から変位ナット104側に所定長さだけ突出し、ピン106の直径より少なくとも大径に形成された第2ピン孔112に対して変位自在に挿入される。
【0064】
すなわち、ピン106は、第1ピン孔110を介してスライダ108に固定され、第2ピン孔112を介して変位ナット104を該変位ナット104の変位方向(矢印A1、A2方向)と直交する水平方向(矢印B1、B2方向)に変位自在に支持すると共に、前記第2ピン孔112を中心として回転方向(矢印C方向)に変位自在に支持し、さらに、該第2ピン孔112に挿入された先端部106aを支点として水平面上でモーメント方向(矢印D方向)に変位自在に支持可能な支持機構114として機能する。
【0065】
以上のように、第2の実施の形態では、変位ナット104が、単一のピン106を介してスライダ108の幅方向、前記ピン106を中心とした回転方向及び該ピン106の先端部106aを支点とした水平面上におけるモーメント方向の3方向に変位自在に支持されているため、例えば、送りねじ軸50に曲がり等が生じた場合でも、変位ナット104が、単一のピン106を介してスライダ108に対して幅方向(水平方向)、該ピン106を中心とした回転方向及び該ピン106の先端部106aを支点とした水平面上におけるモーメント方向(図11参照)に相対変位することにより、前記曲がり等のばらつきをより一層好適に吸収することが可能となる。
【0066】
その結果、送りねじ機構22を構成する送りねじ軸50、変位ナット104等でばらつきが生じた際に懸念される偏荷重がスライダ108に対して付与されることが防止され、前記偏荷重に起因したスライダ108の変位抵抗をより一層確実且つ好適に抑制することが可能となる。
【0067】
その結果、送りねじ機構100を含む電動アクチュエータ102が、製品誤差や組付誤差等による動作不良を生じることが回避され、より一層円滑にスライダ108を軸線方向に沿って直線変位させることができる。
【0068】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態に係る送りねじ機構22、100においては、送りねじ軸50と変位ナット104との間に複数のボール52を介在させ、該ボール52を介して前記送りねじ軸50の回転力が前記変位ナット104へと伝達されるボールねじ構造が用いられる場合について説明したが、この構造に限定されるものではなく、例えば、送りねじ軸の外周面に刻設された雄ねじ部に、変位ナットの内周面に形成された雌ねじ部を直接螺合させる構造を用いるようにしてもよい。
【0069】
また、本発明に係る送りねじ機構は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0070】
10、102…電動アクチュエータ 12…フレーム
18…駆動源 20、108…スライダ
22、100…送りねじ機構 42…凹部
44a、44b、110…第1ピン孔 46a、46b、106…ピン
50…送りねじ軸 52…ボール
54、104…変位ナット 56、114…支持機構
58…第2ねじ溝 60a、60b、112…第2ピン孔
106a…先端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、送りねじ軸に螺合された変位体を回転駆動源の駆動作用下に軸線方向に沿って変位させる送りねじ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ねじ溝が外周面に刻設されたねじ軸と、該ねじ軸の外周側に設けられる円筒状のナット部材と、前記ねじ溝を介して前記ねじ軸とナット部材との間に設けられるボールとを備えた送りねじ機構が知られている。
【0003】
このような送りねじ機構は、例えば、特許文献1に開示されるように、アクチュエータに適用され、該アクチュエータを構成するスライダに変位ナットがボールを介して固定されている。そして、ねじ軸が、駆動モータの駆動作用下に回転することにより、変位ナットが前記ねじ軸に沿って直線変位し、それに伴って、前記変位ナットに固定されたスライダが直線変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−248938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術においては、例えば、送りねじ機構を構成するねじ軸に曲がりが生じた場合や、該ねじ軸及び変位ナット等に製品誤差や組付誤差等のばらつきが生じた場合、そのばらつきに起因して前記変位ナットの動作不良が発生することがある。
【0006】
そのため、上述したような動作不良を解消するために、ねじ軸と変位ナットとを組み付ける際に調整作業が必要となり、その組付作業が煩雑になるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、簡素な構成で、変位体を円滑に変位させることができると共に、組付性の向上を図ることが可能な送りねじ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、ボディの軸線方向に沿って変位自在なスライダを有したアクチュエータに用いられる送りねじ機構であって、
外周にねじ溝の刻設された送りねじ軸と、
前記ねじ溝に螺合され、前記送りねじ軸の外周側に設けられる変位体と、
前記スライダに対して前記変位体を相対変位自在に支持する支持機構と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、送りねじ機構を構成する変位体を、該送りねじ機構が用いられるアクチュエータのスライダに対して支持機構によって支持し、前記スライダに対して相対変位可能としている。従って、例えば、送りねじ軸の曲がり等の製品誤差が生じた場合でも、変位体が、支持機構を介してスライダに対して相対変位することによって前記曲がり等のばらつきを好適に吸収することができる。その結果、送りねじ機構において製品誤差や組付誤差等が生じた場合でも、スライダに対して該誤差に起因した偏荷重が付与されることが防止され、前記スライダの変位抵抗が増加してしまうことを回避でき、前記スライダをボディに沿って円滑に変位させることができる。
【0010】
また、スライダが変位する際の抵抗を低減できるため、駆動時における騒音を低減することが可能となる。
【0011】
さらに、送りねじ機構をアクチュエータに対して組み付ける際、例えば、送りねじ軸の曲がり等の製品誤差、組付誤差に応じた調整作業を行う必要がなく、簡便に組付作業を行うことができるため、前記アクチュエータの組付性の向上を図ることができる。
【0012】
また、支持機構は、変位体のスライダの変位方向への相対変位を規制すると共に、前記変位体を前記変位方向と直交方向に変位自在に支持するとよい。
【0013】
さらに、支持機構は、変位体が送りねじ軸に対して回転方向へ相対変位することを規制し、且つ、変位体を、スライダの軸線と直交する基線を中心として回転自在に支持するとよい。
【0014】
さらにまた、支持機構は、スライダの変位方向と直交し、該スライダと前記変位体とを貫通するように設けられたピン部材とするとよい。
【0015】
またさらに、変位体を、該変位体に挿入されたピン部材の端部を支点としたモーメント方向に回動自在に支持するとよい。
【0016】
また、アクチュエータは、ボディに設けられ、送りねじ軸に連結されると共に通電作用下に回転駆動する駆動部を有するとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
すなわち、送りねじ機構を構成する変位体を、アクチュエータのスライダに対して支持機構で相対変位自在に支持しているため、例えば、送りねじ軸の曲がり等の製品誤差が生じた場合でも、変位体を、支持機構を介してスライダに対して相対変位させることによって前記曲がり等のばらつきを好適に吸収することができる。その結果、送りねじ機構において製品誤差や組付誤差等が生じた場合でも、スライダに対して該誤差に起因した偏荷重が付与され変位抵抗が増加してしまうことを確実に回避でき、前記スライダをボディに沿って円滑に変位させることができる。また、送りねじ機構をアクチュエータに対して組み付ける際、例えば、送りねじ軸の曲がり等の製品誤差、組付誤差に応じた調整作業を行う必要がなく、簡便に組付作業を行うことができるため、前記アクチュエータの組付性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る送りねじ機構が適用された電動アクチュエータの全体平面図である。
【図2】図1に示す電動アクチュエータの一部断面側面図である。
【図3】図1のスライダ及び変位ナット近傍を示す拡大平面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図2の送りねじ軸及び変位ナットがピンを支点としてスライダに対して傾動した場合を示す拡大側面図である。
【図6】図4の送りねじ軸及び変位ナットがピンに沿って水平方向に変位した場合を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る送りねじ機構が適用された電動アクチュエータの全体平面図である。
【図8】図7に示す電動アクチュエータの一部断面側面図である。
【図9】図7のスライダ及び変位ナット近傍を示す拡大平面図である。
【図10】図7の送りねじ軸及び変位ナットがピンに沿って水平方向に変位した場合を示す拡大横断面図である。
【図11】図7の送りねじ軸及び変位ナットがピンを支点として水平面上でモーメント方向に傾動した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る送りねじ機構について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0021】
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る送りねじ機構が適用された電動アクチュエータを示す。
【0022】
この電動アクチュエータ10は、図1〜図6に示されるように、フレーム12と、前記フレーム12の一端部に連結されるエンドプレート14と、前記フレーム12の他端部にハウジング16を介して連結され回転駆動する駆動源18と、前記フレーム12に沿って変位自在に設けられるスライダ20と、前記フレーム12の内部に設けられ、前記駆動源18の駆動力を前記スライダ20へと伝達する送りねじ機構22とを含む。
【0023】
フレーム12は、長手方向(矢印A1、A2方向)に沿って所定長さを有するプレート状のベース部24と、前記ベース部24の両側部に立設した一対のガイド部26a、26bとを有する。このガイド部26a、26bは、ベース部24に対して直交して上方に向かって所定高さでそれぞれ形成される。すなわち、フレーム12は、ベース部24及びガイド部26a、26bから断面略U字状で一体に形成される。
【0024】
ガイド部26a、26bの内壁面には、スライダ20を該ガイド部26a、26bの軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って案内する第1ガイド溝28がそれぞれ形成される。この第1ガイド溝28は、例えば、ガイド部26a、26bの内壁面に対して断面半円状に窪んで形成され、軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って延在する。
【0025】
エンドプレート14は、ベース部24及びガイド部26a、26bの他端部に対して複数のボルト30で連結され、前記フレーム12の延在方向と直交するように設けられる。
【0026】
また、エンドプレート14の略中央部には、後述する駆動源18の駆動軸32と同軸上となるように支持孔36が形成される。さらに、エンドプレート14の側面には、ハウジング16に臨むように一対のダンパ34aが設けられ、スライダ20が前記エンドプレート14側へと変位した際における接触及び衝撃の発生を防止する。
【0027】
駆動源18は、例えば、ステッピングモータ等の回転駆動源からなり、図示しない制御部からの制御信号に基づいて所望の回転数又は回転角度で回転駆動する。
【0028】
そして、駆動源18は、内部にカップリング等(図示せず)を有したハウジング16を介してフレーム12に連結されると共に、前記駆動源18の駆動軸32が、前記カップリング等を介して送りねじ軸50の一端部に連結される。
【0029】
ハウジング16には、その内部に送りねじ軸50を回転自在に支持する軸受31が設けられ、その端面に装着された押さえプレート37によって保持されている。この押さえプレート37は、エンドプレート14に臨むように設けられ、その側面には一対のダンパ34bが設けられている。そして、スライダ20がハウジング16側へと変位した際、該押さえプレート37との接触及び該接触に起因した衝撃の発生を防止する。
【0030】
スライダ20は、フレーム12においてベース部24と一対のガイド部26a、26bとに囲まれた空間内に配置される。そして、スライダ20は、フレーム12に対して配設された際、その側面に設けられた一対の第2ガイド溝38が前記フレーム12の第1ガイド溝28に臨むように配置され、前記第2ガイド溝38と前記第1ガイド溝28との間に複数のガイド体40が設けられる。これにより、スライダ20は、複数の球状に形成されたガイド体40を介してフレーム12に沿って軸線方向(矢印A1、A2方向)に案内される。
【0031】
また、スライダ20は、上方に向かって開口した凹部42を有する断面略U字状に形成され、前記凹部42は、前記スライダ20の幅方向中央部に形成され、軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って貫通している。
【0032】
さらに、スライダ20には、凹部42の延在方向(矢印A1、A2方向)と直交するように一対の第1ピン孔44a、44bが形成されている。第1ピン孔44a、44bは、スライダ20の長手寸法における略中央部に形成され、該スライダ20の両側面から凹部42へと貫通するように形成されると共に、一方の第1ピン孔44aと他方の第1ピン孔44bとが水平方向において一直線上となるように形成される。そして、第1ピン孔44a、44bには、後述する支持機構56を構成するピン46a、46bがそれぞれ挿入される。
【0033】
送りねじ機構22は、駆動源18の駆動軸32に連結され外周面に第1ねじ溝48の刻設された送りねじ軸50と、スライダ20の凹部42に設けられ、該送りねじ軸50に複数のボール52を介して螺合される変位ナット(変位体)54と、前記変位ナット54とスライダ20との間に設けられ、該スライダ20に対して変位ナット54を相対変位自在に保持する支持機構56とを含む。
【0034】
送りねじ軸50は、その一端部が駆動軸32に連結されると共に、他端部が、エンドプレート14に設けられた支持孔36に挿入され回転自在に支持される。なお、送りねじ軸50は、上述した駆動軸32と同軸上に設けられる。そして、駆動源18が回転駆動することにより駆動軸32と共に送りねじ軸50が回転する。
【0035】
変位ナット54は、円筒状に形成されスライダ20の凹部42に収容される。この際、図3及び図4に示されるように、変位ナット54の外周面と凹部42の内壁面との間には、該変位ナット54の半径方向に所定間隔のクリアランスが設けられている。
【0036】
この変位ナット54には、その内部に送りねじ軸50と対向し複数のボール52が挿入される第2ねじ溝58が軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って形成される。そして、この螺旋状に刻設された第2ねじ溝58と、送りねじ軸50の第1ねじ溝48とにそれぞれボール52が挿入されることにより、前記送りねじ軸50と変位ナット54とがボール52を介して螺合されることとなる。
【0037】
また、変位ナット54には、該変位ナット54の軸線方向(矢印A1、A2方向)における略中央部に形成され、第2ねじ溝58と直交する一対の第2ピン孔60a、60bが形成される。第2ピン孔60a、60bは、変位ナット54の外周面からねじ孔に向かって延在し、前記第2ねじ溝58と貫通することがない所定深さで形成されると共に、互いに一直線上となるように設けられる。
【0038】
この第2ピン孔60a、60bの直径は、第1ピン孔44a、44bの直径と略同一又は若干だけ大きく設定され、前記第2ピン孔60a、60bには、変位ナット54の外周側となるスライダ20の第1ピン孔44a、44bに挿通されたピン46a、46bの先端部がそれぞれ挿入される。
【0039】
また、第2ピン孔60a、60bの深さは、変位ナット54がスライダ20の凹部42に設けられ、クリアランスが前記変位ナット54の外周面に沿って略均等となるように配置された際、ピン46a、46bの先端部に対してそれぞれ若干だけ深くなるように設定される(図4参照)。
【0040】
ピン46a、46bは、一定径で軸線方向に沿って所定長さで形成され、第1ピン孔44a、44bの内周径と略同一又は若干だけ大径で形成される。
【0041】
そして、例えば、スライダ20の側方から第1ピン孔44a、44bに軽圧入されて嵌合され、その一端部が前記スライダ20の端面から突出することがないように固定されると共に、他端部が、前記第1ピン孔44a、44bから凹部42側に所定長さだけ突出するように配置され、ピン46a、46bの直径より少なくとも大径に形成された第2ピン孔60a、60bに対して変位自在に挿入される。
【0042】
すなわち、一対のピン46a、46bは、第1ピン孔44a、44bを介してスライダ20に固定され、第2ピン孔60a、60bを介して変位ナット54を該変位ナット54の変位方向(矢印A1、A2方向)と直交する水平方向(矢印B1、B2方向)に変位自在に支持すると共に、前記第2ピン孔60a、60bを中心として回転自在に支持可能な支持機構56として機能する。
【0043】
本発明の第1の実施の形態に係る送りねじ機構22が適用された電動アクチュエータ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に前記送りねじ機構22を電動アクチュエータ10に対して組み付ける場合について説明する。
【0044】
先ず、送りねじ軸50に対して変位ナット54が螺合された状態で、送りねじ機構22を、フレーム12の空間内に移動させ、スライダ20の凹部42に変位ナット54を配置する。そして、スライダ20の両側面から第1ピン孔44a、44bに対してピン46a、46bをそれぞれ挿入し、その先端部を変位ナット54の第2ピン孔60a、60bへと挿入する。
【0045】
これにより、変位ナット54が、予めフレーム12に装着されたスライダ20に対して該スライダ20の幅方向(矢印B1、B2方向)、ピン46a、46bを中心とした回転方向(矢印C方向)に変位自在に支持された状態となる。
【0046】
次に、送りねじ軸50の他端部を、エンドプレート14の支持孔36に挿通した後、その一端部を、駆動源18の駆動軸32に対して連結する。この際、例えば、送りねじ軸50に曲がり等が生じていて該送りねじ軸50に螺合される変位ナット54の組付ばらつきが生じた場合でも、前記変位ナット54がスライダ20に対して水平方向及び/又は回転方向に相対変位することによって前記ばらつき(誤差)が吸収される。
【0047】
例えば、図6に示されるように、変位ナット54が、スライダ20の軸線Lに対して一方のピン46a側(矢印B2方向)へと変位することにより、前記変位ナット54を含む送りねじ機構22に生じた製品誤差等が好適に吸収される。
【0048】
その結果、送りねじ軸50を含む送りねじ機構22を、電動アクチュエータ10を構成するフレーム12及びスライダ20に対して組み付ける際、変位ナット54がスライダ20に対して相対変位自在に設けられているため、製品誤差や組付誤差等のばらつきの影響を受けることなく、前記送りねじ軸50の一端部及び他端部を、電動アクチュエータ10を構成する駆動源18及びエンドプレート14に対して確実且つ好適に装着することができ、変位ナット54を送りねじ軸50に沿って円滑且つ確実に変位させることができる。
【0049】
また、変位ナット54を円滑に変位させることができるため、作動時における騒音を低減することができる。
【0050】
さらに、送りねじ機構22において、ばらつきを好適に吸収できるため、変位ナット54が送りねじ軸50に沿って円滑に作動するように調整する煩雑な調整作業が不要となり、その組付性を向上することができる。
【0051】
次に、このように組み付けられた送りねじ機構22を含む電動アクチュエータ10の動作並びに作用効果について説明する。
【0052】
先ず、図示しない制御部からの制御信号に基づいて駆動源18を駆動させ、駆動軸32を介して送りねじ軸50を回転させることにより、該送りねじ軸50の回転駆動力が、ボール52を介して螺合された変位ナット54へと伝達される。これにより、変位ナット54が、駆動源18から離間する方向(矢印A1方向)へと軸線方向に沿って直線変位する。なお、変位ナット54は、一対のピン46a、46bによってスライダ20に支持され、回転方向への変位が規制されているため、前記送りねじ軸50と共に回転してしまうことが防止される。換言すれば、支持機構56を構成するピン46a、46bは、送りねじ軸50を中心とした変位ナット54の回転変位を規制可能な回り止め手段の機能も兼ね備えている。これにより、変位ナット54は回転することなく軸線方向(矢印A1方向)に沿ってのみ変位する。
【0053】
この変位ナット54は、一対のピン46a、46bを介してスライダ20に支持されているため、該変位ナット54と共に前記スライダ20がフレーム12の軸線方向に沿ってエンドプレート14側(矢印A1方向)へと変位する。そして、スライダ20が、エンドプレート14に当接することにより変位終端位置となる。
【0054】
一方、図示しない制御部から駆動源18に供給される制御信号の特性を、前記とは逆転させることにより、前記送りねじ軸50が反対方向に回転し、該送りねじ軸50の回転駆動力が、ボール52を介して前記送りねじ軸50に螺合された変位ナット54へと伝達される。そして、変位ナット54が前記送りねじ軸50の軸線方向(矢印A2方向)に沿って駆動源18側へと直線変位する。
【0055】
以上のように、第1の実施の形態では、フレーム12の軸線方向に沿って変位自在に設けられたスライダ20と、駆動源18の駆動作用下に回転変位する送りねじ軸50に螺合され、該スライダ20の凹部42に設けられる変位ナット54とが、前記凹部42内において半径方向にクリアランスを介して設けられると共に、前記スライダ20と変位ナット54との間には、前記スライダ20の変位方向(矢印A1、A2方向)と直交するように一対のピン46a、46bが設けられ、前記変位ナット54が前記スライダ20に対して該スライダ20の幅方向(矢印B1、B2方向)及び該ピン46a、46bを支点とした回転方向(矢印C方向)に変位自在に支持される。
【0056】
換言すれば、変位ナット54は、スライダ20の軸線と直交するピン46a、46bの軸線(基線)を中心として回転自在に設けられている。
【0057】
これにより、例えば、送りねじ軸50に曲がり等が生じた場合でも、変位ナット54が、一対のピン46a、46bを介してスライダ20に対して幅方向(水平方向)及び回転方向の2方向に相対変位することにより、前記曲がり等のばらつきを好適に吸収することが可能となる。
【0058】
その結果、送りねじ機構22を構成する送りねじ軸50、変位ナット54等でばらつきが生じた際に懸念される偏荷重がスライダ20に対して付与されることが防止され、前記偏荷重に起因したスライダ20の変位抵抗を抑制することが可能となる。その結果、スライダ20をフレーム12に沿って円滑に変位させることができる。
【0059】
また、送りねじ機構22を電動アクチュエータ10に対して組み付ける際、送りねじ軸50の曲がり等の製品誤差、組付誤差に応じた調整作業を行う必要がなく、簡便に組付作業を行うことができるため、前記電動アクチュエータ10の組付性の向上を図ることができる。
【0060】
次に、第2の実施の形態に係る送りねじ機構100が適用された電動アクチュエータ102を図7〜図11に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る送りねじ機構22が適用された電動アクチュエータ10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0061】
この第2の実施の形態に係る送りねじ機構100が適用された電動アクチュエータ102では、図7〜図11に示されるように、変位ナット104が、ピン106を介してスライダ108の幅方向(矢印B1、B2方向)、前記ピン106を中心とした回転方向(図8中、矢印C方向)及びモーメント方向(矢印D方向)に移動自在に支持されている点で、第1の実施の形態に係る送りねじ機構22と相違している。
【0062】
この送りねじ機構100は、スライダ108における一方の側部に第1ピン孔110が形成され、変位ナット104にも同様に第2ピン孔112が形成される。すなわち、第1及び第2ピン孔110、112は、スライダ108及び変位ナット104の軸線と直交方向に形成され、それぞれ1つずつ形成される。そして、第1及び第2ピン孔110、112には、先端部106aが半球状に形成されたピン106が挿入される。
【0063】
ピン106は、スライダ108の側方から第1ピン孔110に軽圧入されて嵌合され、その一端部が前記スライダ108の端面から突出することがないように固定されると共に、他端部が、前記第1ピン孔110から変位ナット104側に所定長さだけ突出し、ピン106の直径より少なくとも大径に形成された第2ピン孔112に対して変位自在に挿入される。
【0064】
すなわち、ピン106は、第1ピン孔110を介してスライダ108に固定され、第2ピン孔112を介して変位ナット104を該変位ナット104の変位方向(矢印A1、A2方向)と直交する水平方向(矢印B1、B2方向)に変位自在に支持すると共に、前記第2ピン孔112を中心として回転方向(矢印C方向)に変位自在に支持し、さらに、該第2ピン孔112に挿入された先端部106aを支点として水平面上でモーメント方向(矢印D方向)に変位自在に支持可能な支持機構114として機能する。
【0065】
以上のように、第2の実施の形態では、変位ナット104が、単一のピン106を介してスライダ108の幅方向、前記ピン106を中心とした回転方向及び該ピン106の先端部106aを支点とした水平面上におけるモーメント方向の3方向に変位自在に支持されているため、例えば、送りねじ軸50に曲がり等が生じた場合でも、変位ナット104が、単一のピン106を介してスライダ108に対して幅方向(水平方向)、該ピン106を中心とした回転方向及び該ピン106の先端部106aを支点とした水平面上におけるモーメント方向(図11参照)に相対変位することにより、前記曲がり等のばらつきをより一層好適に吸収することが可能となる。
【0066】
その結果、送りねじ機構22を構成する送りねじ軸50、変位ナット104等でばらつきが生じた際に懸念される偏荷重がスライダ108に対して付与されることが防止され、前記偏荷重に起因したスライダ108の変位抵抗をより一層確実且つ好適に抑制することが可能となる。
【0067】
その結果、送りねじ機構100を含む電動アクチュエータ102が、製品誤差や組付誤差等による動作不良を生じることが回避され、より一層円滑にスライダ108を軸線方向に沿って直線変位させることができる。
【0068】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態に係る送りねじ機構22、100においては、送りねじ軸50と変位ナット104との間に複数のボール52を介在させ、該ボール52を介して前記送りねじ軸50の回転力が前記変位ナット104へと伝達されるボールねじ構造が用いられる場合について説明したが、この構造に限定されるものではなく、例えば、送りねじ軸の外周面に刻設された雄ねじ部に、変位ナットの内周面に形成された雌ねじ部を直接螺合させる構造を用いるようにしてもよい。
【0069】
また、本発明に係る送りねじ機構は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0070】
10、102…電動アクチュエータ 12…フレーム
18…駆動源 20、108…スライダ
22、100…送りねじ機構 42…凹部
44a、44b、110…第1ピン孔 46a、46b、106…ピン
50…送りねじ軸 52…ボール
54、104…変位ナット 56、114…支持機構
58…第2ねじ溝 60a、60b、112…第2ピン孔
106a…先端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディの軸線方向に沿って変位自在なスライダを有したアクチュエータに用いられる送りねじ機構であって、
外周にねじ溝の刻設された送りねじ軸と、
前記ねじ溝に螺合され、前記送りねじ軸の外周側に設けられる変位体と、
前記スライダに対して前記変位体を相対変位自在に支持する支持機構と、
を備えることを特徴とする送りねじ機構。
【請求項2】
請求項1記載の送りねじ機構において、
前記支持機構は、前記変位体が前記スライダの変位方向へ該スライダと相対変位を規制すると共に、前記変位体を前記変位方向と直交方向に変位自在に支持することを特徴とする送りねじ機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の送りねじ機構において、
前記支持機構は、前記変位体が前記送りねじ軸に対して回転方向へ相対変位することを規制し、且つ、前記変位体を、前記スライダの軸線と直交する基線を中心として回転自在に支持することを特徴とする送りねじ機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の送りねじ機構において、
前記支持機構は、前記スライダの変位方向と直交し、該スライダと前記変位体とを貫通するように設けられたピン部材からなることを特徴とする送りねじ機構。
【請求項5】
請求項4記載の送りねじ機構において、
前記変位体は、該変位体に挿入された前記ピン部材の端部を支点としたモーメント方向に回動自在に支持されることを特徴とする送りねじ機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の送りねじ機構において、
前記アクチュエータは、前記ボディに設けられ、前記送りねじ軸に連結されると共に通電作用下に回転駆動する駆動部を有することを特徴とする送りねじ機構。
【請求項1】
ボディの軸線方向に沿って変位自在なスライダを有したアクチュエータに用いられる送りねじ機構であって、
外周にねじ溝の刻設された送りねじ軸と、
前記ねじ溝に螺合され、前記送りねじ軸の外周側に設けられる変位体と、
前記スライダに対して前記変位体を相対変位自在に支持する支持機構と、
を備えることを特徴とする送りねじ機構。
【請求項2】
請求項1記載の送りねじ機構において、
前記支持機構は、前記変位体が前記スライダの変位方向へ該スライダと相対変位を規制すると共に、前記変位体を前記変位方向と直交方向に変位自在に支持することを特徴とする送りねじ機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の送りねじ機構において、
前記支持機構は、前記変位体が前記送りねじ軸に対して回転方向へ相対変位することを規制し、且つ、前記変位体を、前記スライダの軸線と直交する基線を中心として回転自在に支持することを特徴とする送りねじ機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の送りねじ機構において、
前記支持機構は、前記スライダの変位方向と直交し、該スライダと前記変位体とを貫通するように設けられたピン部材からなることを特徴とする送りねじ機構。
【請求項5】
請求項4記載の送りねじ機構において、
前記変位体は、該変位体に挿入された前記ピン部材の端部を支点としたモーメント方向に回動自在に支持されることを特徴とする送りねじ機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の送りねじ機構において、
前記アクチュエータは、前記ボディに設けられ、前記送りねじ軸に連結されると共に通電作用下に回転駆動する駆動部を有することを特徴とする送りねじ機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−144911(P2011−144911A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8297(P2010−8297)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】
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