説明

送信装置および送信方法

【課題】時刻情報に対する誤差を簡易に修正する技術を提供する。
【解決手段】変調部16、送信部18は、リアルタイムクロックが刻む時刻をもとにして生成された時刻情報が格納されたトランスポートストリームパケットに対して送信処理を実行し、送信用アンテナ20から送信する。受信部26、復調部28は、送信用アンテナ20から送信すべきトランスポートストリームパケットに対して受信処理を実行する。抽出部30は、受信処理を実行したトランスポートストリームパケットから、時刻情報を抽出する。生成部62は、抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異に応じて新たな時刻情報を生成する。置換部14は、送信処理を実行すべきトランスポートストリームパケットに格納された時刻情報を、生成した新たな時刻情報に置換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信技術に関し、特に時刻情報が格納されたトランスポートストリームパケットを送信する送信装置および送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送では、例えば、大都市において送信塔により大出力で送信されることによって広域にわたりサービスが提供され、地方都市等において中継放送所によるサービスが提供されている。現在、放送は公共のサービスのひとつと位置付けされているので、放送局には、受信対象の区域内において、定められた品質を維持する義務がある。これに対応するため、各中継放送所からの送信される電波に対して、各受信機での受信C/N(Carrier to Noise ratio)値等の情報がネットワークを介してセンタで集計されている。また、異常が検出された場合には、各放送局への通知がなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−333627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エリアワンセグメント放送とは、地上デジタル放送のひとつであるワンセグメント放送を利用し、放送事業者によって使用される送信電力よりも小さい送信電力によって、狭いエリアに限定的にコンテンツデータを送信するサービスである。このようなエリアワンセグメント放送に対応した送信装置は、不特定のサービス提供者によって設置される。さまざまなサービス提供者によって運用されるので、ネットワークを介した異常の検出のような大規模の設備を構築することは困難である。
【0005】
一方、各放送局から、TOT(Time Offset Table)と呼ばれる時刻情報が、映像や音声とは別のエンコード方法で自局の映像信号に圧縮なしに多重送出されている。受信機は、TOTを使用することによって、特に遅延のない電波時計を内蔵しているかのように動作する。その結果、電子番組表のデータと連動して視聴予約・録画予約機能、番組名表示機能、テレビ受像機や地上デジタル放送用チューナにおける時刻表示機能が提供される。なお、TOTでは、日本標準時と比べて±500ミリ秒の誤差が許容されている。このような、TOTに対する異常が、簡易に、かつ高精度に修正されることが望まれる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、時刻情報に対する誤差を簡易に修正する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の送信装置は、リアルタイムクロックが刻む時刻をもとにして生成された時刻情報が格納されたトランスポートストリームパケットに対して送信処理を実行し、この送信処理を実行したトランスポートストリームパケットをアンテナから送信する送信部と、送信部がアンテナから送信すべきトランスポートストリームパケットに対して受信処理を実行する受信部と、受信部が受信処理を実行したトランスポートストリームパケットから、時刻情報を抽出する抽出部と、抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異に応じて新たな時刻情報を生成する生成部と、送信部が送信処理を実行すべきトランスポートストリームパケットに格納された時刻情報を、生成部が生成した新たな時刻情報に置換する置換部と、を備える。
【0008】
この態様によると、送信部に加えて受信部も備え、受信処理したトランスポートストリームパケットから抽出した時刻情報をもとに、置換すべき新たな時刻情報を生成するので、時刻情報に対する誤差を簡易に修正できる。
【0009】
生成部は、抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異が小さくなるような新たな時刻情報を生成してもよい。この場合、抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異が小さくなるので、誤差を小さくできる。
【0010】
送信部が送信に使用すべきアンテナとは異なったアンテナにおいて受信されたトランスポートストリームパケットと、送信部がアンテナから送信すべきトランスポートストリームパケットとを入力し、いずれか一方を受信部に出力する選択部と、選択部が、送信部が送信に使用すべきアンテナとは異なったアンテナにおいて受信されたトランスポートストリームパケットを受信部に出力している場合、抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異に応じて、リアルタイムクロックが刻む時刻を修正する修正部とをさらに備えてもよい。この場合、送信に使用すべきアンテナとは異なったアンテナにおいて受信されたトランスポートストリームパケットを使用するので、他の送信装置に備えられたリアルタイムクロックが刻む時刻に同期できる。
【0011】
抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異を監視する監視部をさらに備えてもよい。選択部は、監視部において監視した差異をもとに、いずれか一方を選択してもよい。この場合、差異をもとに、処理対象のトランスポートストリームパケットを選択するので、差異に応じた処理を選択できる。
【0012】
本発明の別の態様は、送信方法である。この方法は、リアルタイムクロックが刻む時刻をもとに生成された時刻情報が格納されたトランスポートストリームパケットに対して送信処理を実行し、この送信処理を実行したトランスポートストリームパケットをアンテナから送信するステップと、アンテナから送信すべきトランスポートストリームパケットに対して受信処理を実行するステップと、受信処理を実行したトランスポートストリームパケットから、時刻情報を抽出するステップと、抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異に応じて新たな時刻情報を生成するステップと、送信処理を実行すべきトランスポートストリームパケットに格納された時刻情報を新たな時刻情報に置換するステップと、を備える。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、時刻情報に対する誤差を簡易に修正できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る送信装置の構成を示す図である。
【図2】図1の生成部において記憶されたテーブルのデータ構造を示す図である。
【図3】図1の送信装置による選択手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の送信装置による修正手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の送信装置による別の修正手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、エリアワンセグメント放送におけるコンテンツ配信サービスを実現するために、コンテンツデータが含まれたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を送信する送信装置に関する。エリアワンセグメント放送とは、地上デジタル放送のひとつであるワンセグメント放送を利用し、放送事業者によって使用される送信電力よりも低い送信電力によって、狭いエリアに限定的にコンテンツデータを送信するサービスである。そのため、各無線装置は、ワンセグメント放送と同様に、1セグメントのみを使用する。
【0017】
また、エリアワンセグメント放送においても、地上デジタル放送と同様に、TOTが含まれる。しかしながら、放送事業者によって運用される地上デジタル放送とは異なり、エリアワンセグメント放送は、放送事業者以外の人によって運用される。エリアワンセグメント放送のシステム構成は、地上デジタル放送のシステム構成よりも簡易に構成される。そのため、TOTにずれが生じた場合に、簡易にずれが検出されるとともに修正されることが望まれる。これに対応するために、本実施例に係る送信装置は次の処理を実行する。
【0018】
送信装置は、リアルタイムクロックをもとにTOTを生成する。また、送信装置は、TOTが格納されたトランスポートストリームパケットをアンテナから送信するとともに、アンテナから送信すべきトランスポートストリームパケットに対して受信処理も実行し、トランスポートストリームパケットからTOTを抽出する。抽出したTOTと、リアルタイムクロックが刻む時刻とを比較し、誤差が大きい場合に、送信装置は、誤差を小さくするような新たなTOTを生成し、これをトランスポートストリームに格納させる。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る送信装置100の構成を示す。送信装置100は、コンテンツデータ生成部10、TS多重部12、置換部14、変調部16、送信部18、送信用アンテナ20、受信用アンテナ22、選択部24、受信部26、復調部28、抽出部30、TS分離部32、コンテンツデータ処理部34、制御部36を含む。変調部16は、符号化部38、IFFT部40を含み、送信部18は、周波数変換部42、フィルタ部44、PA部46を含み、受信部26は、LNA部48、フィルタ部50、周波数変換部52を含み、復調部28は、FFT部54、復号部56を含む。制御部36は、修正部58、リアルタイムクロック部60、生成部62を含み、生成部62は、監視部64を含む。
【0020】
コンテンツデータ生成部10は、動画像のデジタルデータあるいは静止画像のデジタルデータ(以下、これらを「画像」と総称する)が含まれたコンテンツデータを生成する。なお、コンテンツデータには、音声のデジタルデータ(以下、これを「音声」という)が含まれていてもよい。ここで、画像や音声は、撮像装置やマイクによって取得されたり、予めメモリに記憶されていたり、図示しないネットワークを介して取得されたりする。コンテンツデータ生成部10は、コンテンツデータをTS多重部12に出力する。
【0021】
TS多重部12は、コンテンツデータ生成部10からコンテンツデータを入力する。TS多重部12は、コンテンツデータに含まれた画像および音声を188バイト固定長のパケットへ分割することによって、トランスポートストリームパケットを生成する。トランスポートストリームパケットにおいては、画像および音声が多重化されている。各パケットにはパケット識別子(PID)と呼ばれる13ビットの情報が含まれる。これは各パケットが何を伝送しているものか示すためのものである。さらに、トランスポートストリームパケットには、TOTが含まれる。TOTは、後述のリアルタイムクロック部60が刻む時刻をもとにして生成されている。なお、TOTの生成には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。TS多重部12は、トランスポートストリームパケットを置換部14に出力する。
【0022】
置換部14は、TS多重部12からトランスポートストリームパケットを入力する。置換部14は、必要に応じてトランスポートストリームパケット中のTOTを載せ換えるが、詳細は後述する。置換部14は、トランスポートストリームパケットを符号化部38に出力する。符号化部38は、置換部14からトランスポートストリームパケットを入力する。符号化部38は、トランスポートストリームパケットに対して符号化を実行する。なお、符号化には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。符号化部38は、符号化したトランスポートストリームパケット(以下、「トランスポートストリームパケット」という)をIFFT部40に出力する。
【0023】
IFFT部40は、置換部14からのトランスポートストリームパケットを周波数領域に配置させることによって周波数領域の信号を生成する。また、IFFT部40は、周波数領域の信号に対して、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を実行することによって、有効シンボルを生成する。また、IFFT部40は、GIを有効シンボルに付加することによって、ベースバンドのOFDMシンボルを生成する。IFFT部40は、ベースバンドのOFDMシンボル(以下、「OFDM信号」という)を周波数変換部42に出力する。
【0024】
周波数変換部42は、IFFT部40からOFDM信号を入力するとともに、図示しない局部発振部から局部信号も入力する。周波数変換部42は、局部信号によってOFDM信号を周波数変換することによって、無線周波数のOFDM信号を生成する。周波数変換部42は、無線周波数のOFDM信号(以下、「OFDM信号」という)をフィルタ部44に出力する。フィルタ部44は、周波数変換部42からOFDM信号を入力し、OFDM信号に含まれた不要信号を低減する。フィルタ部44は、不要信号が低減されたOFDM信号(以下、「OFDM信号」という)をPA部46に出力する。PA部46は、フィルタ部44からのOFDM信号を増幅した後、送信用アンテナ20から送信する。このように、変調部16、送信部18は、TOTが格納されたトランスポートストリームパケットに対して送信処理を実行し、送信用アンテナ20から送信する。
【0025】
受信用アンテナ22は、送信部18が送信に使用すべき送信用アンテナ20とは異なったアンテナである。受信用アンテナ22は、図示しない他の送信装置100から送信されたOFDM信号を受信する。受信用アンテナ22は、受信したOFDM信号を選択部24に出力する。
【0026】
選択部24は、一方において、PA部46から、送信用アンテナ20から送信すべきOFDM信号を入力するとともに、他方において、受信用アンテナ22から、受信したOFDM信号を入力する。選択部24は、監視部64からの指示に応じて、いずれか一方のOFDM信号を選択し、選択したOFDM信号をLNA部48に出力する。前者を選択することは、自局のOFDM信号を選択することに相当し、後者を選択することは、他局のOFDM信号を選択することに相当する。なお、説明を明瞭にするために、前者の場合を説明してから、後者の場合を説明する。
【0027】
LNA部48は、選択部24からOFDM信号を入力する。LNA部48は、OFDM信号を増幅する。その際、OFDM信号の大きさに応じて、増幅率が調節されてもよい。LNA部48は、増幅したOFDM信号(以下、「OFDM信号」という)をフィルタ部50に出力する。フィルタ部50は、LNA部48からOFDM信号を入力する。フィルタ部50は、OFDM信号に含まれた雑音成分を低減する。フィルタ部50は、雑音成分が低減されたOFDM信号(以下、「OFDM信号」という)を周波数変換部52に出力する。
【0028】
周波数変換部52は、フィルタ部50からOFDM信号を入力するとともに、図示しない局部発振部から局部信号も入力する。周波数変換部52は、周波数変換部42と逆の処理を実行しており、局部信号によってOFDM信号を周波数変換することによって、ベースバンドのOFDM信号を生成する。周波数変換部52は、ベースバンドのOFDM信号(以下、「OFDM信号」という)をFFT部54に出力する。
【0029】
FFT部54は、周波数変換部52からOFDM信号を入力する。FFT部54は、OFDM信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)を実行する。FFTによって、時間領域のOFDMシンボルが周波数領域のOFDMシンボルに変換される。FFT部54は、周波数領域のOFDMシンボル(以下、「トランスポートストリームパケット」という)を復号部56に出力する。復号部56は、FFT部54からトランスポートストリームパケットを入力する。復号部56は、トランスポートストリームパケットを復号する。ここで、復号は、符号化部38での符号化に対応する。復号部56は、復号したトランスポートストリームパケット(以下、「トランスポートストリームパケット」という)を抽出部30に出力する。
【0030】
このように、送信装置100には、変調部16、送信部18に加えて、受信部26、復調部28も一体的に備えられる。そのため、受信部26、復調部28は、送信部18が送信用アンテナ20から送信すべきトランスポートストリームパケットに対して受信処理を実行する。抽出部30は、復調部28からトランスポートストリームパケットを入力する。抽出部30は、トランスポートストリームパケットから、TOTを抽出する。抽出部30は、TOTを修正部58、生成部62に出力するとともに、トランスポートストリームパケットをTS分離部32に出力する。
【0031】
TS分離部32は、抽出部30からトランスポートストリームパケットを入力する。TS分離部32は、TS多重部12に対応した処理を実行することによって、トランスポートストリームパケットに含まれた画像および音声を分離する。TS分離部32は、画像および音声が含まれたコンテンツデータをコンテンツデータ処理部34に出力する。コンテンツデータ処理部34は、TS分離部32からコンテンツデータを入力し、コンテンツデータに含まれた画像および音声に対して所定の処理を実行する。
【0032】
リアルタイムクロック部60は、一定の間隔で信号を出力する。この信号がタイミングに相当するとともに、時刻に相当する。監視部64は、抽出部30からTOTを入力するとともに、リアルタイムクロック部60から時刻を入力する。監視部64は、TOTと時刻との差異を監視する。監視部64は、差異を生成部62に出力する。
【0033】
生成部62は、監視部64における差異をもとに、処理内容を決定する。図2は、生成部62において記憶されたテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、条件欄200、処理欄202が含まれる。条件欄200は、処理を決定するための条件が示されている。ここで、第1しきい値は第2しきい値よりも大きいとする。差異が第1しきい値よりも大きければ、RTC(リアルタイムクロック)の修正が選択され、差異が第1しきい値以下であり、かつ第2しきい値よりも大きければ、TOTが選択され、差異が第2しきい値以下であれば、そのままが選択される。図1に戻る。
【0034】
TOTが選択された場合、監視部64からの指示によって、選択部24は、送信用アンテナ20から送信すべきOFDM信号を選択する。その際、生成部62は、TOTと時刻との差異に応じて、両者の差異が小さくなるような新たなTOTを生成する。これは、両者の差異が小さくなるように、リアルタイムクロック部60が刻む時刻を補正したTOTに相当する。例えば、TOTが時刻よりもΔTだけ先に進んでいた場合、リアルタイムクロック部60によって生成されたTOTをΔTだけ遅らした新たなTOTが生成される。生成部62は、新たなTOTを置換部14に出力する。
【0035】
置換部14は、生成部62から新たなTOTを入力した場合に、TS多重部12からのトランスポートストリームパケットのTOTに、新たなTOTを置換する。置換部14は、新たなTOTにトランスポートストリームパケットを符号化部38に出力する。なお、生成部62においてそのままが選択された場合、つまり、生成部62から新たなTOTを入力しない場合、置換部14は、置換せずにトランスポートストリームパケットを出力する。
【0036】
次に、生成部62において、RTCの修正が選択された場合を説明する。この場合、監視部64からの指示によって、選択部24は、受信用アンテナ22において受信したOFDM信号を選択する。つまり、選択部24は、監視部64において監視した差異をもとに、いずれか一方のOFDM信号を選択する。また、受信部26、復調部28、抽出部30は、受信用アンテナ22において受信したOFDM信号に対して、前述の処理を実行する。修正部58は、生成部62からRTCの修正を指示されると、抽出部30からTOTを入力する。また、修正部58は、リアルタイムクロック部60から時刻も入力する。
【0037】
修正部58は、TOTとリアルタイムクロック部60が刻む時刻とを比較し、それらの差分が小さくなるようにリアルタイムクロック部60の時刻を修正する。つまり、修正部58は、選択部24が、受信用アンテナ22において受信されたトランスポートストリームパケットを受信部26に出力している場合、抽出部30が抽出したTOTと、リアルタイムクロック部60が刻む時刻との差異に応じてリアルタイムクロック部60の時刻を修正する。生成部62は、リアルタイムクロック部60において修正された時刻をもとに新たなTOTを生成し、新たなTOTを置換部14に出力する。
【0038】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0039】
以上の構成による送信装置100の動作を説明する。図3は、送信装置100による選択手順を示すフローチャートである。受信部26は、RF受信処理を実行する(S10)。復調部28は、デジタル復調処理を実行する(S12)。抽出部30は、TOTを抽出する(S14)。生成部62は、TOTとRTCとを比較する(S16)。差異が第1しきい値よりも大きければ(S18のY)、選択部24は、外部からの受信信号を選択する(S20)。差異が第1しきい値よりも大きくなければ(S18のN)、選択部24は、内部の受信信号を選択する(S22)。
【0040】
図4は、送信装置100による修正手順を示すフローチャートである。これは、図3のステップ22に続く処理である。受信部26は、RF受信処理を実行する(S40)。復調部28は、デジタル復調処理を実行する(S42)。抽出部30は、TOTを抽出する(S44)。生成部62は、TOTとRTCとを比較する(S46)。差異が第2しきい値よりも大きければ(S48のY)、生成部62は、新たなTOTを生成する(S50)。置換部14は、TOTを置換する(S52)。差異が第2しきい値よりも大きくなければ(S48のN)、ステップ50、ステップ52はスキップされる。変調部16は、デジタル変調処理を実行する(S54)。送信部18は、RF送信処理を実行する(S56)。
【0041】
図5は、送信装置100による別の修正手順を示すフローチャートである。これは、図3のステップ20に続く処理である。受信部26は、RF受信処理を実行する(S70)。復調部28は、デジタル復調処理を実行する(S72)。抽出部30は、TOTを抽出する(S74)。修正部58は、TOTをもとにRTCを設定する(S76)。
【0042】
本発明の実施例によれば、変調部、送信部に加えて受信部、復調部も備え、受信処理したトランスポートストリームパケットから抽出したTOTをもとに、置換すべき新たな時刻情報を生成するので、時刻情報に対する誤差を簡易に修正できる。また、TOTと、リアルタイムクロック部での時刻との差異が小さくなるので、誤差を小さくできる。また、TOTと時刻との差異が第1しきい値以下であり、かつ第2しきい値よりも大きければ、リアルタイムクロック部を修正せず、内部からのOFDM信号をもとに新たなTOTを生成するので、簡易にTOTを修正できる。また、TOTと時刻との差異が第1しきい値よりも大きければ、外部からのOFDM信号をもとに、リアルタイムクロック部での時刻を修正するので、外部のリアルタイムクロック部での時刻に同期できる。また、差異をもとに、処理対象のトランスポートストリームパケットを選択するので、差異に応じた処理を選択できる。
【0043】
また、TOTを生成するリアルタイムクロック部が高精度に制御されるので、一度設定されれば、時刻のずれの増加を抑制できる。また、受信部、復調部を具備していることによって、送信されているTOTをネットワークを介さずに確認できる。また、ネットワークを介さないのでネットワークにトラブルが発生しても影響を受けずに処理できる。また、監視部において差異を確認するときは、送信処理、受信処理を実行した後であるので、TOTを補正する際にこれらの処理に要する期間を考慮できる。また、これにより、新たなTOTの精度を向上できる。また、送信装置の筐体を開けなくでもよいので、メンテナンスを簡易にできる。
【0044】
また、ネットワークを介さないので、ネットワーク部の回路が不要になり、装置を簡単にできる。また、受信装置の委託宅や情報収集の代行業者を不要にできる。また、ネットワーク、中継局を介さないのでリアルタイム性に優れている。また、ネットワークがダウンしても影響を低減できる。また、電波送信前に送信データを確認できるので放送事故の発生を抑制できる。また、事故が生じた場合であっても、早期対応を可能にでき、事実関係を容易に把握できる。
【0045】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0046】
10 コンテンツデータ生成部、 12 TS多重部、 14 置換部、 16 変調部、 18 送信部、 20 送信用アンテナ、 22 受信用アンテナ、 24 選択部、 26 受信部、 28 復調部、 30 抽出部、 32 TS分離部、 34 コンテンツデータ処理部、 36 制御部、 38 符号化部、 40 IFFT部、 42 周波数変換部、 44 フィルタ部、 46 PA部、 48 LNA部、 50 フィルタ部、 52 周波数変換部、 54 FFT部、 56 復号部、 58 修正部、 60 リアルタイムクロック部、 62 生成部、 64 監視部、 100 送信装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイムクロックが刻む時刻をもとにして生成された時刻情報が格納されたトランスポートストリームパケットに対して送信処理を実行し、この送信処理を実行したトランスポートストリームパケットをアンテナから送信する送信部と、
前記送信部がアンテナから送信すべきトランスポートストリームパケットに対して受信処理を実行する受信部と、
前記受信部が受信処理を実行したトランスポートストリームパケットから、時刻情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異に応じて新たな時刻情報を生成する生成部と、
前記送信部が送信処理を実行すべきトランスポートストリームパケットに格納された時刻情報を、前記生成部が生成した新たな時刻情報に置換する置換部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異が小さくなるような新たな時刻情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記送信部が送信に使用すべきアンテナとは異なったアンテナにおいて受信されたトランスポートストリームパケットと、前記送信部がアンテナから送信すべきトランスポートストリームパケットとを入力し、いずれか一方を前記受信部に出力する選択部と、
前記選択部が、前記送信部が送信に使用すべきアンテナとは異なったアンテナにおいて受信されたトランスポートストリームパケットを前記受信部に出力している場合、前記抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異に応じて、リアルタイムクロックが刻む時刻を修正する修正部とをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記抽出部が抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異を監視する監視部をさらに備え、
前記選択部は、前記監視部において監視した差異をもとに、いずれか一方を選択することを特徴とする請求項3に記載の送信装置。
【請求項5】
リアルタイムクロックが刻む時刻をもとに生成された時刻情報が格納されたトランスポートストリームパケットに対して送信処理を実行し、この送信処理を実行したトランスポートストリームパケットをアンテナから送信するステップと、
アンテナから送信すべきトランスポートストリームパケットに対して受信処理を実行するステップと、
受信処理を実行したトランスポートストリームパケットから、時刻情報を抽出するステップと、
抽出した時刻情報と、リアルタイムクロックが刻む時刻との差異に応じて新たな時刻情報を生成するステップと、
送信処理を実行すべきトランスポートストリームパケットに格納された時刻情報を新たな時刻情報に置換するステップと、
を備えることを特徴とする送信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−74328(P2013−74328A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209699(P2011−209699)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】