説明

送信装置

【課題】主に自動車のドアの施解錠や開閉等の操作に用いられる送信装置に関し、安価で、確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】コイル1によって人体の磁界を検出すると共に、これに応じて制御手段5が所定の信号を出力することによって、例えば送信装置10が着衣のポケット等に入っていた場合でも、車両の受信装置12との通信が行えると共に、受信装置12のアンテナも少なくすることができるため、安価で、使い易い送信装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のドアの施解錠や開閉等の操作に使用される送信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のドアの施解錠や開閉等を、車両に近づいた運転者が機械式キーによって直接操作することに加え、運転者が携帯した送信装置と車両に設けられた受信装置の間で通信を行い、これによって施解錠や開閉等を操作する、様々な通信システムが広く用いられている。
【0003】
このような従来の送信装置及びこれを用いた通信システムの一つとして、電波によって携帯した送信装置と車両の受信装置の間で通信を行うものがあるが、この場合には、先ず車両の受信装置の複数のアンテナから、運転者を確認するための確認コード等の電波信号が送信される。
【0004】
そして、運転者が車両にある程度近づき、携帯した送信装置がこの確認コードを受信すると、個々の送信装置に特有の認証コード等の電波信号が、送信装置から送信され、これを車両の受信装置が受信して、認証コードによって運転者が確認されると、例えばドアのロックが解除される。
【0005】
つまり、このような電波を用いた通信システムにおいては、車両の受信装置から運転者を確認するための確認コードが送信され、運転者が車両の近傍にいた場合には、携帯した送信装置から認証コードが返信されることによって、機械式キーによって直接操作しなくとも、自動的にドアの施解錠が行われるように構成されている。
【0006】
ただ、この場合、車両の受信装置は運転者が車両の外にいるのか、あるいは車室内にいるのかを判別する必要があり、また、運転者が車両の外にいた場合、車両の前後左右いずれの方向に運転者がいた場合でも、電波信号の確認コードが届き、かつ、送信装置からの認証コードを受信できるようにする必要がある。
【0007】
このため、受信装置には複数のアンテナが必要となり、例えば運転席側のドアと助手席側のドア、及び後部ドア、さらには車室内の前方と後方というように、5つ前後のアンテナが車両に設けられているものであった。
【0008】
また、人体に微小な電流を流し、人体を介して送信装置と受信装置の通信を行うものもあるが、この場合には、車両のドア等の運転者が触れる箇所に電極が設けられ、この電極が受信装置に接続されると共に、運転者が携帯した送信装置にも、運転者が接触可能な電極が設けられている。
【0009】
以上の構成において、例えば、運転者が左手で電極に触れて送信装置を持った場合、送信装置から電極を介して運転者の人体に微小な電流が流れ、人体に電界が誘起されて、送信装置から認証コード等が人体に送信される。
【0010】
そして、この状態で運転者が、例えば右手で車両に設けられた電極に触れると、人体を介して送信装置から車両の電極に認証コードが送信され、これを受信装置が受信して、認証コードによって運転者が確認されると、例えばドアのロックが解除される。
【0011】
つまり、このような通信システムにおいては、運転者が携帯した送信装置と車両の受信装置が、各々の電極に運転者が触れることで人体に電界を誘起し、人体を介して通信を行うことによって、機械式キーによって直接操作しなくとも、ドアの施解錠が行われるように構成されている。
【0012】
ただ、この場合には、携帯した送信装置が例えば、運転者の着衣のポケット等に入っていて、送信装置の電極が人体の肌と隔てられていると、人体に電界を誘起できず通信が不可能となるため、上記のように片手で送信装置の電極に触れるか、あるいは腕等に電極を接触させた状態で、操作を行うことが必要となるものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−50892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の送信装置においては、電波を用いて通信を行うものは、車両の受信装置に複数のアンテナが必要となるため、通信システムが高価なものになってしまい、人体に電流を流し、人体を介して通信を行うものは、送信装置の電極を人体の肌に触れさせておく必要があるため、使いづらく、誤操作も生じ易いという課題があった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、安価で、確実な操作が可能な送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0018】
本発明の請求項1に記載の発明は、コイルによって人体の磁界を検出すると共に、これに応じて制御手段が所定の信号を出力するようにして送信装置を構成したものであり、車両に触れて人体に生じる磁界をコイルが検出し、制御手段が認証コード等の信号を出力することで、例えば送信装置が着衣のポケット等に入っていた場合でも、車両の受信装置との通信が行えると共に、受信装置のアンテナも少なくすることができるため、安価で、使い易い送信装置を得ることができるという作用を有する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、コイルが人体の磁界に加え、電波信号をも受信するものであり、送信装置に電波信号を受信するためのアンテナが不要になると共に、送信装置が例えば助手席等に置かれていた場合でも、車両の受信装置との通信が行えるため、安価で、確実な通信を行うことができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、安価で、確実な操作が可能な送信装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態による送信装置のブロック回路図
【図2】同通信システムの平面図
【図3】同波形図
【図4】同部分斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0023】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による送信装置のブロック回路図であり、同図において、1は導電金属線製のコイル、2は電圧電流変換器等の変換手段、3はオペアンプ等の比較手段で、コイル1が変換手段2に、変換手段2が比較手段3に各々接続されると共に、比較手段3には所定の基準電圧V0、例えば2.5mVの電圧が印加されている。
【0024】
また、4は電子スイッチ等の切換手段、5はマイコン等の制御手段で、比較手段3が切換手段4と制御手段5に接続されると共に、切換手段4の共通端子4Aが制御手段5に、個別端子4Bが変換手段2と比較手段3の間に各々接続されている。
【0025】
そして、6はアンテナ6A等から形成された送信手段で、この送信手段6が制御手段5に接続されると共に、切換手段4の個別端子4Cが電池7に接続されている。
【0026】
さらに、このコイル1や変換手段2、比較手段3、切換手段4、制御手段5、送信手段6等が、複数の配線パターンが形成された配線基板(図示せず)に実装形成されると共に、これらを略箱型で絶縁樹脂製のケース(図示せず)が覆って、送信装置10が構成されている。
【0027】
また、図2はこのような送信装置10を用いた通信システムの平面図であり、同図において、11は自動車、12はマイコン等の電子部品から形成された受信装置で、受信装置12が自動車11の前方に取付けられると共に、自動車11の車室内の前方と後方には2つのアンテナ13Aと13Bが装着されている。
【0028】
そして、このアンテナ13Aと13Bが受信装置12に接続されると共に、自動車11のドアのノブ14には、スイッチ14Aと電極14Bが一体に設けられ、このスイッチ14Aと電極14Bが受信装置12に接続されている。
【0029】
さらに、15はモータやソレノイド等から形成された駆動手段で、この駆動手段15が受信装置12に接続されると共に、送信装置10は運転者16が、例えば着衣の胸ポケット等に入れて携帯して、通信システムが構成されている。
【0030】
以上の構成において、送信装置10を携帯した運転者16が、自動車11に近づきノブ14に触れると、スイッチ14Aがオンとなって受信装置12が起動し、電極14Bから運転者16の手に0.3mA前後の微小な電流が流れて、人体表面に31mA/m前後の強さの磁界Hが発生する。
【0031】
そして、この人体の表面に発生した磁界Hを、運転者16が携帯した送信装置10のコイル1が検出し、コイル1に磁界Hに応じた電流、例えば35μA以上の電流が流れるが、この時、受信装置12からは電極14Bを介して、図3の波形図に示すような、パルス波形の起動コードL1と運転者を確認するための認証コードL2が送信される。
【0032】
また、この起動コードL1によってコイル1に流れた電流が、変換手段2で所定の電圧に変換されて比較手段3に入力され、この電圧値が基準電圧V0、例えば2.5mV以上の電圧であった場合には、切換手段4が共通端子4Aと個別端子4Cに切換えられて、制御手段5に電池7から電源が供給される。
【0033】
さらに、電源が供給され起動した制御手段5が、この後送られてきた認証コードL2を確認し、これが個々の送信装置10に特有のものである場合には、送信手段6のアンテナ6Aから認証コードL2と所定の操作コード、例えば解錠用の操作コードを電波信号として送信する。
【0034】
そして、これを車両の受信装置12が受信して、認証コードL2によって運転者が確認されると、受信した操作コードに応じた所定の駆動信号を出力し、駆動手段15が駆動して、例えばドアのロックが解除される。
【0035】
なお、ドアの施錠を行う場合にも、上記と同様に人体を介して受信装置12と送信装置10の通信が行われ、認証コードL2によって運転者を確認した後に、ドアがロックされる。
【0036】
つまり、送信装置10にコイル1を設け、このコイル1によって運転者16の人体表面に発生した磁界Hを検出すると共に、これに応じて制御手段5が所定の操作コードの電波信号を送信することで、機械式キーによって直接操作しなくとも、ドアの施解錠が行われるようになっている。
【0037】
すなわち、コイル1が人体表面に発生した磁界Hを検出することによって、送信装置10と受信装置12の通信が行われるため、送信装置10が人体の肌と隔てられた箇所、例えば着衣のポケット等に入っていた場合でも、人体を介した車両の受信装置12との通信が行えるように構成されている。
【0038】
また、運転者16が自動車11に乗車し、イグニションスイッチ(図示せず)等を操作してエンジンを始動しようとした場合には、受信装置12が車室内に装着された2つのアンテナ13Aと13Bから、起動コードL1と認証コードL2を電波信号として送信する。
【0039】
そして、これを送信装置10のコイル1が受信して、この電磁波によってコイル1に電流が流れ、以下、上記と同様に、起動コードL1によって制御手段5が起動すると共に、制御手段5が認証コードL2を確認し、送信手段6から認証コードL2と所定の操作コード、例えばエンジン始動用の操作コードを電波信号として送信する。
【0040】
さらに、これを車両の受信装置12が受信して、認証コードL2によって運転者が確認されると、受信した操作コードに応じた所定の駆動信号を出力し、例えばエンジンが始動する。
【0041】
つまり、受信装置12が送信装置10と電波信号による通信を行い、これによって運転者16が車室内にいることが確認された場合には、イグニションスイッチ等の操作によるエンジンの始動が行われるようになっている。
【0042】
すなわち、送信装置10のコイル1が、ドアのロック解除時には上述したように、受信装置12から流された電流によって運転者16の、人体に発生した磁界Hを検出することに加え、受信装置12から電波信号が送信された場合には、この電波信号をも受信するように構成されている。
【0043】
したがって、車室内に入った運転者16が送信装置10を身体から離し、例えば助手席やダッシュボード等に送信装置10を置いていた場合でも、受信装置12と送信装置10の通信が可能となり、イグニションスイッチ等の操作によるエンジンの始動等を行うことができる。
【0044】
また、運転者16が車両の外にいてドアのロック解除等を行う場合には、受信装置12と送信装置10との通信が人体を介して行われ、上記のように運転者16が車室内にいるか否かを確認する場合には、通信が電波信号によって行われるため、自動車11に設けるアンテナは上述したように、2つのアンテナ13Aと13Bですみ、通信システムを安価に形成できるようになっている。
【0045】
さらに、図4の部分斜視図に示すように、送信装置10のコイル1を互いに直交するXYZ方向に配置された、3軸のコイル1Aと1B、1Cから形成すれば、車室内で送信装置10がどの向きに置かれた場合でも、あるいは車両の外にいてドアのロック解除等を行う際、送信装置10がどの向きで携帯されていた場合でも、受信装置12とのより確実な通信が可能となる。
【0046】
なお、制御手段5は上記のように、起動コードL1によって起動され、通常は電池7から電源が供給されていないが、人体に発生した磁界Hや受信装置12からの電波信号をいつでも受信可能なように、比較手段3には常に電池7から電源を供給する必要がある。
【0047】
したがって、この比較手段3への電源供給によって、使用されていない場合でも電池7の消耗が生じてしまうが、受信装置12との電波信号による通信を125kHz前後の周波数で行うことによって、比較手段3に流れる待機電流を5μA程度とすることができるため、電池7の省電力化を図ることが可能となる。
【0048】
なお、以上の説明では、送信装置10が起動コードL1や認証コードL2を受信する際には、人体を介して受信し、認証コードL2や操作コードを送信する際には、送信手段6から電波信号として送信する構成について説明したが、これらのコードの受信及び送信の両方を、人体を介して行う構成としても本発明の実施は可能である。
【0049】
このように本実施の形態によれば、コイル1によって人体の磁界を検出すると共に、これに応じて制御手段5が所定の信号を出力することによって、例えば送信装置10が着衣のポケット等に入っていた場合でも、車両の受信装置12との通信が行えると共に、受信装置12のアンテナも少なくすることができるため、安価で、使い易い送信装置を得ることができるものである。
【0050】
そして、コイル1が人体の磁界に加え、電波信号をも受信することによって、送信装置10に電波信号を受信するためのアンテナが不要になると共に、送信装置10が例えば助手席等に置かれていた場合でも、車両の受信装置12との通信が行えるため、安価で、確実な通信を行うことが可能となる。
【0051】
なお、以上の説明では、ドアの施解錠を、送信装置10と受信装置12の人体を介した通信によって行う構成について説明したが、これに加え、運転者16が車両から離れた場所にいる場合には、受信装置12から送信された電波信号をコイル1が受信して、送信装置10と受信装置12の通信を行う構成としてもよい。
【0052】
つまり、コイル1が人体の磁界を検出すると共に、電波信号をも受信することによって、構成に特に大きな変更を加えることなく、従来のスマートエントリシステムと同様に、車両から離れた場所からでも、ドアの施解錠の操作を行うことができる。
【0053】
また、以上の説明では、送信装置10と受信装置12の人体を介した通信によって、主に車両のドアの施解錠を操作する構成について説明したが、これ以外にも、例えば、住居や車庫の施解錠操作やドアの開閉操作等、様々な構成においても本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明による送信装置は、安価で、確実な操作が可能なものが得られ、主に自動車のドアの施解錠や開閉等の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1、1A、1B、1C コイル
2 変換手段
3 比較手段
4 切換手段
4A 共通端子
4B、4C 個別端子
5 制御手段
6 送信手段
6A アンテナ
7 電池
10 送信装置
11 自動車
12 受信装置
13A、13B アンテナ
14 ノブ
14A スイッチ
14B 電極
15 駆動手段
16 運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル及び制御手段と、この制御手段に接続された送信手段からなり、上記コイルが人体の磁界を検出すると共に、これに応じて上記制御手段が所定の信号を出力する送信装置。
【請求項2】
コイルが電波信号を受信する請求項1記載の送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−19103(P2011−19103A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162633(P2009−162633)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】