説明

送液装置におけるサイホン現象防止機構

【課題】 ポンプを使用して高所から低所に液体を送る送液装置において,サイホン現象の発生を防止するための従来の機構は可動弁体を設けた構成であるので,動作させるために比較的大きな負圧が必要であったり,可動弁体の動作不良が生じ易い等の課題がある。
【解決手段】 そこで本発明では、送液元容器1内の液体3をポンプ4により吸上げて供給配管6を通して送液先容器2まで送液する送液装置において,供給配管には,送液元容器よりも高い位置に大気開放部8を配置し,この大気開放部は,送液元側供給配管と送液先側供給配管に連なる送液経路に,空気取入配管12に連なる大気開放経路を,上側から合流させた構成としたサイホン現象防止機構を提案している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析システム等に構成する送液装置,特に高所から低所に液体を送る送液装置におけるサイホン現象防止機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば液体クロマトグラフ装置では,液体容器内の溶媒を,供給配管を通して分離カラムを経て処理槽に送液する送液装置を設けており,この送液装置には,吸引口と吐出口間の送液経路にシリンダからの経路を合流させ,シリンダ内に吸引・吐出用プランジャを設置すると共に,吸引口と吐出口には夫々チェック弁を設けた構成とした精密送液ポンプを用いている。
【0003】
このような送液装置では,精密送液ポンプにより液体容器内の溶媒を吸引し,供給配管を通して,液体容器よりも下方に設置した処理槽へ送液するため,サイホン現象が起こり,ポンプを停止した後も,溶媒が液体容器から処理槽に自然流出してしまう。
【0004】
このようなサイホン現象による液体の自然流出を防止するための従来技術として,例えば特許文献1では,供給配管にサイホン防止弁に連なる側路配管を接続することによりポンプの停止時に供給配管を大気開放する技術が提案されている。そこで,この特許文献1に記載される従来技術を図8を参照して次に説明する。
【0005】
符号aは送液元容器,bは送液先容器であり,送液先容器bは送液元容器aよりも低所に設置されている。cは送液ポンプ,dは供給配管を示すものであり,供給配管dは,送液ポンプcの上流側の吸上げ側配管eと,下流側の供給側配管fとから成り,送液元容器aの液面よりも高い位置において供給側配管fにサイホン防止弁gに至る側路配管hが接続されている。このサイホン防止弁gは,2室i,jを有する筒体形状であり,2室i,jの隔壁kを連通孔mを有する弁座に構成すると共に,室i側に可動弁体nを配置し,室jには大気への開口oを設けると共に室iの側路配管h側に,可動弁体nによって側路配管hが塞がれなくするための突起pが設けられた構成である。
【0006】
以上の構成において,ポンプcが停止状態から運転を開始すると,ポンプcから供給側配管fを経て側路配管hに供給された液体がサイホン防止弁gの室i内に流入して,内部の空気の流れにより可動弁体nを図中実線の状態から破線の状態へと動かして弁座としての隔壁kに当接して連通孔mを塞ぐため,側路配管hを通しての液体の流出を防止することができる。
【0007】
一方,ポンプcの運転を停止すると,供給側配管f内の液体が慣性と重力により送液先容器bへと流れ続けるため,側路配管hが負圧となり,可動弁体nが隔壁kから離れて連通孔m,開口oを介して大気に開放されることによりサイホン現象の発生を防止することができる,というものである。
【特許文献1】特開平10−113682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記の従来技術では次に示すような課題がある。
1.側路配管hから室i内に流入した液体が乾燥して,可動弁体nが弁座としての隔壁kに張り付いてしまった場合には大気開放が行えず,サイホン現象の発生を防止できなくなってしまう。
2.側路配管hから室i内に流入してしまった液体を排出する手段が必要となる。
3.液体クロマトグラフ装置等の精密送液ポンプを使用するシステムにおいては,一般に配管の内径が細いため,ポンプ停止時にサイホン防止弁gの可動弁体nを動かすだけの負圧に至らない場合があり,このような場合にも大気開放が行えず,サイホン現象の発生を防止できなくなってしまう。
4.このため精密送液ポンプを使用するシステムにおいては,ポンプを停止後に,例えば吸上げ側の配管を送液元容器の液面から引き上げたり,供給側配管を接続する配管継手等を緩める等の,人手により大気に開放する作業を行っており,人為的なミスによってサイホン現象を発生させてしまう場合があった。
本発明は以上の課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために,本発明では、送液元容器内の液体をポンプにより吸上げて供給配管を通して送液先容器まで送液する送液装置において,供給配管には,送液元容器よりも高い位置に大気開放部を配置し,この大気開放部は,送液元側供給配管と送液先側供給配管に連なる送液経路に,空気取入配管に連なる大気開放経路を,上側から合流させた構成とした送液装置におけるサイホン現象防止機構を提案する。
【0010】
そして本発明では、上記の構成において,大気開放経路の合流位置よりも上流側の送液経路を,下流側よりも細く形成することを提案する。
【0011】
また本発明では、上記の構成において,大気開放経路の軸方向と,その合流位置よりも上流側の送液経路の軸方向が成す角度を鋭角に構成することを提案する。
【0012】
また本発明では、上記の構成において,大気開放経路の合流位置よりも上流側の送液経路を,下流側よりも細く形成すると共に,大気開放経路の軸方向と,その合流位置よりも上流側の送液経路の軸方向が成す角度を鋭角に構成することを提案する。
【0013】
また本発明では、上記の構成において,空気取入配管の開口端部は,送液元容器の液面よりも高い位置のドレン受けに配置することを提案する。
【0014】
また本発明では、以上の構成において,大気開放部は,器体の内側に送液経路と大気開放経路とを設けると共に,外側に送液経路と大気開放経路に対応する管接続ポートを設けたジョイントとして構成することを提案する。
【0015】
また本発明では、以上の構成において,送液装置は,複数の送液元容器と,夫々に設けた供給配管及びポンプと,混合部とを備えた構成とすることを提案する。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成において,ポンプが運転中は,ポンプにより送液元容器内から吸上げられた液体は大気開放部に至り,その送液経路を通った後,送液先側供給配管を経て送液先容器に供給される。大気開放部の送液経路には大気開放経路が合流しているが,その大気開放経路は,上側から送液経路に合流させる構成であるので,送液経路を流れる液体は大気開放経路に流入しない。
【0017】
この状態でポンプを停止すると,慣性と重力によって送液先側供給配管を流下する液体により送液経路が負圧になるため,空気取入配管から大気開放経路を経て送液経路に空気が流入し,この流入した空気によりサイホン現象の発生が防止される。
【0018】
ポンプを始動して送液を開始した直後は大気開放部の送液経路に液体の圧力が加わるため,液体の一部が送液経路から大気開放経路に流入しやすくなるが,この流入は,空気取入配管の最高部の高さを高くしたり,大気開放経路の断面積を小さくすることで抑制することができるが,この他,大気開放経路の合流位置よりも上流側の送液経路を,下流側よりも細く形成すること,大気開放経路の軸方向と,その合流位置よりも上流側の送液経路の軸方向が成す角度を鋭角に構成すること,または大気開放経路の合流位置よりも上流側の送液経路を,下流側よりも細く形成すると共に,大気開放経路の軸方向と,その合流位置よりも上流側の送液経路の軸方向が成す角度を鋭角に構成すること等によって,大気開放経路への流入を抑制することができる。
【0019】
また,送液する液体の種類や運転形態等によって,液体の一部が送液経路から大気開放経路に流入し,空気取入配管から流出する場合がある条件においては,空気取入配管の開口端部は,送液元容器の液面よりも高い位置のドレン受けに配置することにより,連続的な流出を防ぐことができると共に,ポンプを停止した場合の上述したサイホン現象の発生防止効果を阻害しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
大気開放部は,器体の内側に送液経路と大気開放経路とを設けると共に,外側に送液経路と大気開放経路に対応する管接続ポートを設けたジョイントとして構成することにより,設置を容易に行うことができる。
【実施例1】
【0021】
次に本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明のサイホン現象防止機構を使用した送液装置の構成を概念的に示す系統図であり,図2は大気開放部の具体的構成の実施例を示す断面図,また図3は本発明に使用するポンプの一例を示す断面図である。
符号1は送液元容器であり,また2は送液元容器1よりも低所に設置された送液先容器である。送液元容器1内の液体3は,ポンプ4により吸上げ配管5を通して吸上げられ,供給配管6を通して送液先容器2に供給される構成である。図中,二点鎖線で囲んだ部分は液体が通過する経路を有した適宜の装置7を示しており,例えばこの装置7は,図7について後述するように液体クロマトグラフ装置の分析装置等である。
【0022】
本発明では、供給配管6には,送液元容器1よりも高い位置に大気開放部8を配置している。そこで,供給配管6は,大気開放部8よりも上流側を送液元側供給配管9,下流側を送液先側供給配管10と云う。
【0023】
大気開放部8は,図2に示すように,送液元側供給配管9と送液先側供給配管10に連なる送液経路11に,空気取入配管12に連なる大気開放経路13を上側から合流させた構成としており,この実施例では大気開放部8は管のジョイントとして構成しており,符号14a,14b,14cは夫々送液元側供給配管9,送液先側供給配管10,空気取入配管12を支持している取付部材であり,これらの取付部材14a,14b,14cは大気開放部8の器体に,夫々の経路に対応して形成された管接続ポート15a,15b,15cにねじ機構により固定する構成としている。
【0024】
そして,図1に示すように大気開放経路13に接続した空気取入配管12は適宜に設定した最高部を経て,その開口端部16を,送液元容器1の液面よりも高い位置に配置したドレン受け17に配置している。そしてドレン受け17によって受けた空気取入配管12の開口端部16からの液体は,ドレン管18により送液先容器2内に排出する構成としている。
【0025】
次に図3は本発明のサイホン現象防止機構を使用した送液装置におけるポンプの一例を示すものである。
符号19はポンプ本体であり,このポンプ本体19には,吸引側から吐出側に至る送液経路20に,シリンダ21に連なる駆動用経路22が合流しており,シリンダ21内には,駆動機構部23によりシリンダ21に対して進退運動を行わせるプランジャ24が設置されている。一方,送液経路20の吸引側と吐出側の双方には,球体25と弁座26から成る吸引側チェック弁27と吐出側チェック弁28が,夫々吸上げ配管5と供給配管6との間に設けられている。
【0026】
以上の構成において,駆動機構部23によりプランジャ24を図中左側に移動すると,シリンダ21内の液体が圧縮されるため,圧縮された液体は駆動用経路22を通して送液経路20に流入し,吐出側チェック弁28の球体25を弁座26から押し上げ,開状態として供給配管6内に流入する。一方,液体の圧力は,吸引側チェック弁27の球体25を弁座26に押しつける方向に作用するため,液体が吸引側チェック弁27を経て流出することはない。
【0027】
次に,駆動機構部23によりプランジャ24を図中右側に移動すると,シリンダ21内が負圧となるため,送液経路20内の液体は,駆動用経路22を通してシリンダ21に流入すると同時に,開状態となった吸引側チェック弁27を経て吸上げ配管5内の液体が送液経路20内に流入する。一方,吐出側チェック弁28は閉状態であるので,供給配管6内の液体が吐出側チェック弁28を経て送液経路20内に流入することはない。
【0028】
このように駆動機構部23によりプランジャ24をシリンダ21内において進退することにより,進退の1サイクル毎に所定量の液体を精密に送液することができる。しかしながら,このポンプ4では,サイホン現象等で供給配管6内が負圧となると,吐出側チェック弁28の球体25が吸引されて弁座26から浮上し,吐出側チェック弁28が開状態となると共に,吸引側チェック弁27も開状態となって,吸上げ配管5側の液体がポンプを通して供給配管6側に流出してしまう。
【0029】
次に本発明の動作を説明すると,まず,ポンプ4が運転中は,ポンプ4により送液元容器1内から吸上げられた液体3は送液元側供給配管9を通って大気開放部8に至り,その送液経路11を通った後,送液先側供給配管10を経て送液先容器2に供給される。この際,大気開放部8の送液経路11には大気開放経路13が合流しているが,その大気開放経路13は,上側から送液経路11に合流させる構成であるので,送液経路11を流れる液体は大気開放経路13に流入しない。
【0030】
この状態でポンプ4を停止すると,慣性と重力によって送液先側供給配管10を流下する液体により送液経路11が負圧になるため,空気取入配管12から大気開放経路13を経て送液経路11に空気が流入し,この流入した空気によりサイホン現象の発生が防止される。
【0031】
ポンプ4を始動して送液を開始した直後は大気開放部8の送液経路11に液体の圧力が加わるため,液体の一部が送液経路11から大気開放経路13に流入しやすくなるが,この流入は,後述する他の実施例に示す構成の他,空気取入配管12の最高部の高さを高くしたり,大気開放経路13の断面積を小さくすることで抑制することができる。この場合,大気開放経路13の断面積が小さくなると,大気解放時における空気の抵抗が大きくなるので,この断面積はこれらのトレードオフで設定すれば良い。
【実施例2】
【0032】
次に図4は大気開放部8の第2の実施例を示すものであり,図3の実施例と同様な構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。即ち,この実施例では,大気開放部8は,大気開放経路13の合流位置よりも上流側の送液経路を,下流側よりも細く形成しており,図においては細い送液経路に符号29を付している。
【0033】
この実施例では,ポンプ4の始動時等において,送液元供給配管9に加わる液体の圧力が大きくても,細く形成した送液経路の部分29から,それよりも太い送液経路11に流出する際に減圧されるので,大気開放経路13側に流入することを抑制することができる。
【実施例3】
【0034】
次に図5は大気開放部8の第3の実施例を示すものであり,図3の実施例と同様な構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。即ち,この実施例では,大気開放経路13の軸方向と,その合流位置よりも上流側の送液経路11の軸方向が成す角度θを鋭角に構成している。
【0035】
この実施例では,大気開放経路13の軸方向が,液体の運動方向に対して鈍角となるので,液体の慣性により,大気開放経路13への流入を抑制することができる。
【実施例4】
【0036】
次に図6は大気開放部8の第4の実施例を示すものであり,図3の実施例と同様な構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。即ち,この実施例では,大気開放経路13の合流位置よりも上流側の送液経路11の部分29を,下流側よりも細く形成すると共に,大気開放経路13の軸方向と,送液経路11の部分29の軸方向が成す角度θを鋭角に構成している。
【0037】
この実施例では,細く形成した送液経路の部分29から,それよりも太い送液経路11に流出する際に減圧されることと,大気開放経路13の軸方向が,液体の運動方向に対して鈍角となるので,液体の慣性との相乗作用により,大気開放経路13への流入を更に抑制することができる。
【実施例5】
【0038】
次に,図7は本発明のサイホン現象防止機構を使用した分析システムの一例として,液体クロマトグラフ装置の構成例を示す系統図である。この図7において,図1のものと同様な構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図において二点鎖線で囲んで符号7を付した部分は,上述したように分析装置であり,この分析装置7は,分離カラム30と,UVモニタ31と,電磁弁32と,電磁弁32に接続されたノズル33と,分取用の試験管34とから構成されている。
【0039】
一方,送液元容器は複数種類,この場合,2種類の液体3A,3Bの夫々を入れる容器1A,1Bであり,これらの送液元容器1A,1Bの夫々に対応して吸上げ配管5A,5Bとポンプ4A,4Bを構成している。これらのポンプ4A,4Bは図3に示すような液体の供給を精密に行うことが可能な構成であり,これらのポンプ4A,4Bの吐出側の供給配管6A,6Bはミキシング部35に接続されている。
【0040】
以上の構成においては,送液元容器1A,1B内の液体3A,3Bをポンプ4A,4Bにより,夫々設定された流量で吸上げ配管5A,5B,供給配管6A,6Bを通して吸い上げ,ミキシング部35で混合する。混合された液体は供給配管6により分離カラム30に供給されて満たされる。分離カラム30内に設定された混合比率で液体が満たされた後,ポンプ4A,4Bの運転を一時停止し,分離カラム30内にサンプルを入れる。次いで所定時間経過後,ポンプ4A,4Bを運転すると,液体はUVモニタ31,電磁弁32を経て装置7から出て,送液元側供給配管9,大気開放部8,送液先側供給配管10を経て送液先容器2,この場合,処理液槽へと流れる。
【0041】
この際,分離カラム30で分離されたサンプルがUVモニタ31において検出された場合には,電磁弁32を動作させて経路をノズル33側に切換えることにより試験管34に分取する。サンプルを精度良く分離させるためには,液体の混合比率が非常に重要となる。
【0042】
以上の構成において,本発明による大気開放部8を設けていない場合には,ポンプ4A,4Bを停止した後にサイホン現象により液体が自然流出することを防止するために,ポンプ4A,4Bを停止した直後に吸上げ配管5A,5Bを引き上げたり,又は分離カラム30の配管継手36を緩める等で大気開放を行っているが,人為的な操作であるため,操作ミスが発生する場合があり,この場合には,送液元容器1A,1B内の未使用の液体が全て送液先容器2に流出してしまったり,重要な混合比率が狂ってしまうというような問題点があった。
【0043】
これに対して,本発明による大気開放部8を設けることにより,ポンプ4A,4Bを停止した後のサイホン現象の発生を自動的に確実に防止することができ,このことから,送液元容器1A,1B内の未使用の液体が全て送液先容器2に流出してしまったり,重要な混合比率が狂ってしまうというような不都合の発生を確実に防止することができた。
【0044】
尚,後者の混合比率の狂いが生じる原因は以下のとおりである。
例えば送液元容器1Aにメタノール{比重:0.7915(20/4℃)},送液元容器1Bにクロロホルム{比重:1.484(20/20℃)}を入れて,上述したようにポンプ4A,4Bを運転して分離カラム30に所定の混合比率で満たした後,内部にサンプルを入れるためにポンプ4A,4Bを停止した際,サイホン現象が生じると,クロロホルムよりも比重の小さなメタノールのみがミキシング部35を介して吸引されるため,分離カラム30内にはメタノールのみが流入して,次第にクロロホルムの割合が減少し,混合比率が狂ってしまう。この状態で,ポンプ4A,4Bを再始動して分取を開始しても,溶媒の混合比率が狂っているため,サンプルが分離せずに試験管34に分取されてしまう。
【0045】
これに対して,本発明によるサイホン現象防止機構を使用すれば,分離カラム30にサンプルを入れる際にポンプ4A,4Bを停止してもサイホン現象が生じないので,分離カラム30内の溶媒の混合比率が狂わず,ポンプ4A,4Bを再始動することにより効率的にサンプルを分取することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は以上のとおりであるので、以下に示すような特徴を有し,産業上の利用可能性が大である。
1.大気開放部は,可動弁体を使用していないので,ポンプを停止した際に発生する負圧が小さくても動作し,また可動弁体に付着した液体が乾燥して動作不良を起こすということも無くなり,確実に大気開放を行ってサイホン現象の発生を防止することができる。
2.大気開放を自動的に確実に行えるため,人為的操作は不要となり,その手間をなくすと共に,ミスによる不都合の発生を防止することができる。
3.大気開放部は,管接続ポートを設けたジョイントとして構成することにより,設置を容易に行うことができる。
4.大気開放部の大気開放経路から空気取入配管内に液体が流入しても,その開口端部からドレン受けに排出して処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のサイホン現象防止機構を使用した送液装置の構成を概念的に示す系統図である。
【図2】大気開放部の具体的構成の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明に使用するポンプの一例を示す断面図である。
【図4】大気開放部の具体的構成の第2の実施例を示す断面図である。
【図5】大気開放部の具体的構成の第3の実施例を示す断面図である。
【図6】大気開放部の具体的構成の第4の実施例を示す断面図である。
【図7】本発明のサイホン現象防止機構を使用した分析システムの一例として,液体クロマトグラフ装置の構成例を示す系統図である。
【図8】従来のサイホン現象防止機構の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1(1A,1B) 送液元容器
2 送液先容器(処理液槽)
3(3A,3B) 液体(溶媒)
4(4A,4B) ポンプ
5(5A,5B) 吸上げ配管
6(6A,6B) 供給配管
7 装置(分析装置)
8 大気開放部
9 送液元側供給配管
10 送液先側供給配管
11 送液経路
12 空気取入配管
13 大気開放経路
14a,14b,14c 取付部材
15a,15b,15c 管接続ポート
16 開口端部
17 ドレン受け
18 ドレン管
19 ポンプ本体
20 送液経路
21 シリンダ
22 駆動用経路
23 駆動機構部
24 プランジャ
25 球体
26 弁座
27 吸引側チェック弁
28 吐出側チェック弁
29 細い送液経路の部分
30 分離カラム
31 UVモニタ
32 電磁弁
33 ノズル
34 試験管
35 ミキシング部
36 配管継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液元容器内の液体をポンプにより吸上げて供給配管を通して送液先容器まで送液する送液装置において,供給配管には,送液元容器よりも高い位置に大気開放部を配置し,この大気開放部は,送液元側供給配管と送液先側供給配管に連なる送液経路に,空気取入配管に連なる大気開放経路を,上側から合流させた構成としたことを特徴とする送液装置におけるサイホン現象防止機構。
【請求項2】
大気開放経路の合流位置よりも上流側の送液経路を,下流側よりも細く形成したことを特徴とする請求項1に記載の送液装置におけるサイホン現象防止機構
【請求項3】
大気開放経路の軸方向と,その合流位置よりも上流側の送液経路の軸方向が成す角度を鋭角に構成したことを特徴とする請求項1に記載の送液装置におけるサイホン現象防止機構
【請求項4】
大気開放経路の合流位置よりも上流側の送液経路を,下流側よりも細く形成すると共に,大気開放経路の軸方向と,その合流位置よりも上流側の送液経路の軸方向が成す角度を鋭角に構成したことを特徴とする請求項1に記載の送液装置におけるサイホン現象防止機構
【請求項5】
空気取入配管の開口端部は,送液元容器の液面よりも高い位置のドレン受けに配置したことを特徴とする請求項1に記載の送液装置におけるサイホン現象防止機構
【請求項6】
大気開放部は,器体の内側に送液経路と大気開放経路とを設けると共に,外側に送液経路と大気開放経路に対応する管接続ポートを設けたジョイントとして構成したことを特徴とする請求項1〜5までのいずれか1項に記載の送液装置におけるサイホン現象防止機構
【請求項7】
送液装置は,複数の送液元容器と,夫々に設けた供給配管及びポンプと,混合部とを備えた構成であることを特徴とする請求項1〜6までのいずれか1項に記載の送液装置におけるサイホン現象防止機構

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−297323(P2006−297323A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125082(P2005−125082)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000138200)株式会社モリテックス (120)
【Fターム(参考)】