説明

送電制御装置、送電装置、電子機器及びtanδ検出回路

【課題】コンデンサの異常を適切に検出できる送電制御装置等の提供。
【解決手段】無接点電力伝送システムの送電装置に設けられる送電制御装置は、ドライバ制御信号を生成して、1次コイルL1を駆動する送電ドライバDR1、DR2に対して出力するドライバ制御回路26と、その一端が送電ドライバDR1、DR2の出力に電気的に接続され1次コイルL1と共に共振回路を構成するコンデンサC1、C2のtanδの異常を検出するtanδ検出回路38と、送電装置を制御する制御回路22を含む。制御回路22は、コンデンサC1、C2のtanδの異常が検出された場合に、送電ドライバDR1、DR2による送電を停止させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電制御装置、送電装置、電子機器及びtanδ検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁誘導を利用し、金属部分の接点がなくても電力伝送を可能にする無接点電力伝送(非接触電力伝送)が脚光を浴びている、この無接点電力伝送の適用例として、携帯電話機や家庭用機器(例えば電話機の子機)の充電などが提案されている。
【0003】
無接点電力伝送の従来技術として特許文献1がある。この特許文献1では、送電ドライバの出力に接続されたコンデンサと1次コイルとにより共振回路を構成して、送電装置(1次側)から受電装置(2次側)に電力を供給している。
【0004】
しかしながら、この従来技術では、コンデンサに異常(不良)があった場合については考慮されていなかった。
【特許文献1】特開2006−60909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンデンサの異常を適切に検出できる送電制御装置、送電装置、電子機器及びtanδ検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1次コイルと2次コイルを電磁的に結合させて送電装置から受電装置に対して電力を伝送し、前記受電装置の負荷に対して電力を供給する無接点電力伝送システムの前記送電装置に設けられる送電制御装置であって、ドライバ制御信号を生成して、前記1次コイルを駆動する送電ドライバに対して出力するドライバ制御回路と、その一端が前記送電ドライバの出力に電気的に接続され前記1次コイルと共に共振回路を構成するコンデンサのtanδの異常を検出するtanδ検出回路と、前記送電装置を制御する制御回路とを含み、前記制御回路は、前記コンデンサのtanδの異常が検出された場合に、前記送電ドライバによる送電を停止させる制御を行う送電制御装置に関係する。
【0007】
本発明では、ドライバ制御回路により制御される送電ドライバによる駆動と、1次コイル及びコンデンサにより構成される共振回路の共振特性を利用して、送電装置から受電装置に対して無接点の電力伝送が行われる。この無接点電力伝送時に、送電効率や送電の安定性を高めるために駆動周波数を上昇させると、コンデンサに対して交流の大電流が流れ、コンデンサが発熱する。この場合に本発明では、コンデンサのtanδの異常が検出されると、送電ドライバによる送電が停止する。従って、コンデンサの異常を適切に検出して、発熱によるコンデンサの破壊等を効果的に防止できる。
【0008】
また本発明では、前記tanδ検出回路は、コンデンサ温度と周囲温度を測定し、測定されたコンデンサ温度と周囲温度との温度差を求めることで、前記コンデンサのtanδの異常を検出し、前記制御回路は、コンデンサ温度と周囲温度との温度差が所与の温度差を超えた場合に、前記送電ドライバによる送電を停止させる制御を行ってもよい。
【0009】
このようにすれば、コンデンサに異常があるのに、周囲温度が低いためコンデンサ温度が高くならず、異常を検出できなくなる事態を防止でき、より適切なコンデンサの異常検出を実現できる。
【0010】
また本発明では、前記制御回路は、測定されたコンデンサ温度が所与の温度を超えた場合に、前記送電ドライバによる送電を停止させる制御を行ってもよい。
【0011】
このようにすれば、温度差を測定するために使用するコンデンサ温度を有効活用して、コンデンサの異常を検出でき、信頼性を更に向上できる。
【0012】
また本発明では、前記tanδ検出回路は、基準抵抗とコンデンサ温度測定用サーミスタとの抵抗比情報である第1の抵抗比情報を求めることで、コンデンサ温度を測定し、前記基準抵抗と周囲温度測定用サーミスタとの抵抗比情報である第2の抵抗比情報を求めることで、周囲温度を測定し、測定されたコンデンサ温度と周囲温度との温度差を求めることで、前記コンデンサのtanδの異常を検出してもよい。
【0013】
このようにすれば、電源電圧等の変動があった場合にも、その変動の影響を最小限に抑えた温度検出が可能になる。
【0014】
また本発明では、前記tanδ検出回路は、抵抗比情報を温度に変換するための変換テーブルを有し、前記変換テーブルと前記第1の抵抗比情報とに基づいて、コンデンサ温度を求め、前記変換テーブルと前記第2の抵抗比情報とに基づいて、周囲温度を求めてもよい。
【0015】
このような変換テーブルを用いれば、様々な温度−抵抗の変換特性に対して、効率良く温度を測定できる。
【0016】
また本発明では、前記変換テーブルは、温度の10の位を求めるための第1の変換情報と、温度の1の位を求めるための第2の変換情報を記憶し、前記tanδ検出回路は、前記第1の抵抗比情報に対応する温度の10の位を前記第1の変換情報に基づき特定し、温度の1の位を前記第2の変換情報を用いた線形補間により求めることで、前記第1の抵抗比情報をコンデンサ温度に変換し、前記第2の抵抗比情報に対応する温度の10の位を前記第1の変換情報に基づき特定し、温度の1の位を前記第2の変換情報を用いた線形補間により求めることで、前記第2の抵抗比情報を周囲温度に変換してもよい。
【0017】
このようにすれば、温度−抵抗の変換特性が線形な特性ではない場合にも、各温度範囲内では線形な特性であると見なして、変換処理を行うことが可能になり、処理負荷を軽減できる
また本発明では、前記tanδ検出回路は、基準コンデンサの一端のノードである発振ノードと第2の電源との間に、基準抵抗と直列に設けられる基準測定用トランジスタと、前記発振ノードと前記第2の電源との間に、コンデンサ温度測定用サーミスタと直列に設けられるコンデンサ温度測定用トランジスタと、前記発振ノードと前記第2の電源との間に、周囲温度測定用サーミスタと直列に設けられる周囲温度測定用トランジスタと、前記発振ノードと第1の電源との間に設けられる放電用トランジスタと、前記発振ノードの電圧が所与のしきい値電圧を超えた場合に、検出パルスを出力する検出回路とを含んでもよい。
【0018】
このようにすれば、基準抵抗、コンデンサ温度測定用サーミスタ、周囲温度測定用サーミスタを利用したCR発振により、コンデンサ温度や周囲温度を精度良く測定できる。
【0019】
また本発明では、前記tanδ検出回路は、前記基準測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントし、基準計測時間を測定する基準計測時間測定回路と、前記コンデンサ温度測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記基準計測時間内において前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントして、前記基準抵抗と前記コンデンサ温度測定用サーミスタとの抵抗比情報を表す第1のカウント値を求め、前記周囲温度測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記基準計測時間内において前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントして、前記基準抵抗と前記周囲温度測定用サーミスタとの抵抗比情報を表す第2のカウント値を求めるカウント値測定回路を含んでもよい。
【0020】
このようにすれば、トランジスタのオン・オフ制御や、検出パルス数のカウント処理を行うだけで、コンデンサ温度や周囲温度を精度良く測定できる。
【0021】
また本発明では、前記tanδ検出回路は、カウント値を温度に変換するための変換テーブルと、前記変換テーブルと前記第1のカウント値とに基づいてコンデンサ温度を求め、前記変換テーブルと前記第2のカウント値とに基づいて周囲温度を求める変換回路を含んでもよい。
【0022】
このような変換テーブルを用いれば、様々な温度−抵抗の変換特性に対して、効率良く温度を測定できる。
【0023】
また本発明では、前記変換テーブルは、温度の10の位を求めるための第1の変換情報と、温度の1の位を求めるための第2の変換情報を記憶し、前記tanδ検出回路は、前記第1のカウント値に対応する温度の10の位を前記第1の変換情報に基づき特定し、温度の1の位を前記第2の変換情報を用いた線形補間により求めることで、前記第1のカウント値をコンデンサ温度に変換し、前記第2のカウント値に対応する温度の10の位を前記第1の変換情報に基づき特定し、温度の1の位を前記第2の変換情報を用いた線形補間により求めることで、前記第2のカウント値を周囲温度に変換してもよい。
【0024】
このようにすれば、温度−抵抗の変換特性が線形な特性ではない場合にも、各温度範囲内では線形な特性であると見なして、変換処理を行うことが可能になり、処理負荷を軽減できる
また本発明は、上記のいずれかに記載の送電制御装置と、交流電圧を生成して前記1次コイルに供給する送電部とを含む送電装置に関係する。
【0025】
また本発明は、上記に記載の送電装置を含む電子機器に関係する。
【0026】
また本発明は、コンデンサのtanδの異常を検出するtanδ検出回路であって、基準コンデンサの一端のノードである発振ノードと第2の電源との間に、基準抵抗と直列に設けられる基準測定用トランジスタと、前記発振ノードと前記第2の電源との間に、コンデンサ温度測定用サーミスタと直列に設けられるコンデンサ温度測定用トランジスタと、前記発振ノードと前記第2の電源との間に、周囲温度測定用サーミスタと直列に設けられる周囲温度測定用トランジスタと、前記発振ノードと第1の電源との間に設けられる放電用トランジスタと、前記発振ノードの電圧が所与のしきい値電圧を超えた場合に、検出パルスを出力する検出回路とを含み、前記検出回路からの検出パルス数をカウントすることで、前記コンデンサのtanδの異常を検出するtanδ検出回路に関係する。
【0027】
本発明によれば、基準測定用トランジスタ、コンデンサ温度測定用トランジスタ、周囲温度測定用トランジスタをオン・オフ制御して、基準抵抗、コンデンサ温度測定用サーミスタ、周囲温度測定用サーミスタに電流を流すことでCR発振を行う。そしてこのCR発振の周期に応じて変化する検出パルス数をカウントすることで、コンデンサ温度や周囲温度を測定して、tanδの異常を検出できるようになる。
【0028】
また本発明では、前記基準測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントし、基準計測時間を測定する基準計測時間測定回路と、前記コンデンサ温度測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記基準計測時間内において前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントして、前記基準抵抗と前記コンデンサ温度測定用サーミスタとの抵抗比情報を表す第1のカウント値を求め、前記周囲温度測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記基準計測時間内において前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントして、前記基準抵抗と前記周囲温度測定用サーミスタとの抵抗比情報を表す第2のカウント値を求めるカウント値測定回路を含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0030】
1.電子機器
図1(A)に本実施形態の無接点電力伝送手法が適用される電子機器の例を示す。電子機器の1つである充電器500(クレードル)は送電装置10を有する。また電子機器の1つである携帯電話機510は受電装置40を有する。また携帯電話機510は、LCDなどの表示部512、ボタン等で構成される操作部514、マイク516(音入力部)、スピーカ518(音出力部)、アンテナ520を有する。
【0031】
充電器500にはACアダプタ502を介して電力が供給され、この電力が、無接点電力伝送により送電装置10から受電装置40に送電される。これにより、携帯電話機510のバッテリを充電したり、携帯電話機510内のデバイスを動作させることができる。
【0032】
なお本実施形態が適用される電子機器は携帯電話機510に限定されない。例えば腕時計、コードレス電話器、シェーバー、電動歯ブラシ、リストコンピュータ、ハンディターミナル、携帯情報端末、或いは電動自転車などの種々の電子機器に適用できる。
【0033】
図1(B)に模式的に示すように、送電装置10から受電装置40への電力伝送は、送電装置10側に設けられた1次コイルL1(送電コイル)と、受電装置40側に設けられた2次コイルL2(受電コイル)を電磁的に結合させて電力伝送トランスを形成することで実現される。これにより非接触での電力伝送が可能になる。
【0034】
2.送電装置、受電装置
図2に本実施形態の送電装置10、送電制御装置20、受電装置40、受電制御装置50の構成例を示す。図1(A)の充電器500などの送電側の電子機器は、少なくとも図2の送電装置10を含む。また携帯電話機510などの受電側の電子機器は、少なくとも受電装置40と負荷90(本負荷)を含む。そして図2の構成により、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて送電装置10から受電装置40に対して電力を伝送し、受電装置40の電圧出力ノードNB7から負荷90に対して電力(電圧VOUT)を供給する無接点電力伝送(非接触電力伝送)システムが実現される。
【0035】
送電装置10(送電モジュール、1次モジュール)は、1次コイルL1、送電部12、電圧検出回路14、表示部16、送電制御装置20を含むことができる。なお送電装置10や送電制御装置20は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば表示部、電圧検出回路)を省略したり、他の構成要素を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
【0036】
送電部12は、電力伝送時には所定周波数の交流電圧を生成し、データ転送時にはデータに応じて周波数が異なる交流電圧を生成して、1次コイルL1に供給する。具体的には図3(A)に示すように、例えばデータ「1」を受電装置40に対して送信する場合には、周波数f1の交流電圧を生成し、データ「0」を送信する場合には、周波数f2の交流電圧を生成する。この送電部12は、1次コイルL1の一端を駆動する第1の送電ドライバと、1次コイルL1の他端を駆動する第2の送電ドライバと、1次コイルL1と共に共振回路を構成する少なくとも1つのコンデンサを含むことができる。
【0037】
そして送電部12が含む第1、第2の送電ドライバの各々は、例えばパワーMOSトランジスタにより構成されるインバータ回路(バッファ回路)であり、送電制御装置20のドライバ制御回路26により制御される。
【0038】
1次コイルL1(送電側コイル)は、2次コイルL2(受電側コイル)と電磁結合して電力伝送用トランスを形成する。例えば電力伝送が必要なときには、図1(A)、図1(B)に示すように、充電器500の上に携帯電話機510を置き、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通るような状態にする。一方、電力伝送が不要なときには、充電器500と携帯電話機510を物理的に離して、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通らないような状態にする。
【0039】
電圧検出回路14は1次コイルL1の誘起電圧を検出する回路であり、例えば抵抗RA1、RA2や、RA1とRA2の接続ノードNA3とGND(広義には第1の電源)との間に設けられるダイオードDA1を含む。
【0040】
この電圧検出回路14は、1次コイルL1のコイル端電圧信号の半波整流回路として機能する。そして、1次コイルL1のコイル端電圧を抵抗RA1、RA2で分圧することで得られた信号PHIN(誘起電圧信号、半波整流信号)が、送電制御装置20の波形検出回路28(振幅検出回路、パルス幅検出回路)に入力される。即ち抵抗RA1、RA2は電圧分割回路(抵抗分割回路)を構成し、その電圧分割ノードNA3から信号PHINが出力される。
【0041】
表示部16は、無接点電力伝送システムの各種状態(電力伝送中、ID認証等)を、色や画像などを用いて表示するものであり、例えばLEDやLCDなどにより実現される。
【0042】
送電制御装置20は、送電装置10の各種制御を行う装置であり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。この送電制御装置20は、制御回路22(送電側)、発振回路24、ドライバ制御回路26、波形検出回路28、tanδ検出回路38を含むことができる。
【0043】
制御回路22(制御部)は送電装置10や送電制御装置20の制御を行うものであり、例えばゲートアレイやマイクロコンピュータなどにより実現できる。具体的には制御回路22は、電力伝送、負荷検出、周波数変調、異物検出、或いは着脱検出などに必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。
【0044】
発振回路24は例えば水晶発振回路により構成され、1次側のクロックを生成する。ドライバ制御回路26は、発振回路24で生成されたクロックや制御回路22からの周波数設定信号などに基づいて、所望の周波数の制御信号を生成し、送電部12の第1、第2の送電ドライバに出力して、第1、第2の送電ドライバを制御する。
【0045】
波形検出回路28は、1次コイルL1の一端の誘起電圧に相当する信号PHINの波形をモニタし、2次側(受電装置側)の負荷変動を検出する。これにより、データ(負荷)検出、異物(金属)検出、着脱(取り外し)検出等が可能になる。具体的には波形検出回路28(振幅検出回路)は、1次コイルL1の一端の誘起電圧に相当する誘起電圧信号PHINの振幅情報(ピーク電圧、振幅電圧、実効電圧)を検出する。
【0046】
例えば受電装置40の負荷変調部46が、送電装置10に対してデータを送信するための負荷変調を行うと、1次コイルL1の誘起電圧の信号波形が図3(B)のように変化する。具体的には、データ「0」を送信するために負荷変調部46が負荷を低くすると、信号波形の振幅(ピーク電圧)が小さくなり、データ「1」を送信するために負荷を高くすると、信号波形の振幅が大きくなる。従って、波形検出回路28は、誘起電圧の信号波形のピークホールド処理などを行って、ピーク電圧がしきい値電圧を超えたか否かを判断することで、受電装置40からのデータが「0」なのか「1」なのかを判断できる。
【0047】
なお波形検出回路28による負荷変動の検出手法は図3(A)、図3(B)の手法に限定されず、受電側の負荷が高くなったか低くなったかを、ピーク電圧以外の物理量を用いて判断してもよい。例えば波形検出回路28(パルス幅検出回路)は、1次コイルL1の誘起電圧信号PHINのパルス幅情報(コイル端電圧波形が所与の設定電圧以上になるパルス幅期間)を検出してもよい。具体的には波形検出回路28は、信号PHINの波形整形信号を生成する波形整形回路からの波形整形信号と、ドライバ制御回路26に駆動クロックを供給する駆動クロック生成回路からの駆動クロックを受ける。そして波形整形信号のパルス幅情報を検出することで、誘起電圧信号PHINのパルス幅情報を検出し、負荷変動を検出してもよい。
【0048】
tanδ検出回路38は、無接点電力伝送に使用されるコンデンサのtanδの異常(不良)を検出する。このコンデンサは、例えばその一端が送電部12の送電ドライバの出力に電気的に接続され、1次コイルL1と共に共振回路(直列共振回路)を構成するコンデンサである。制御回路22は、コンデンサのtanδの異常が検出された場合に、送電部12の送電ドライバによる送電を停止させる制御を行う。具体的にはtanδ検出回路38は、コンデンサ温度と周囲温度との温度差を求めることで、コンデンサのtanδの異常を検出する。そして制御回路22は、コンデンサ温度と周囲温度との温度差が所与の温度差を超えたと判断した場合に、1次側から2次側への送電を停止させる。或いはコンデンサ温度が所与の温度を超えた場合に、1次側から2次側への送電を停止させてもよい。
【0049】
受電装置40(受電モジュール、2次モジュール)は、2次コイルL2、受電部42、負荷変調部46、給電制御部48、受電制御装置50を含むことができる。なお受電装置40や受電制御装置50は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
【0050】
受電部42は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流電圧に変換する。この変換は受電部42が有する整流回路43により行われる。この整流回路43は、ダイオードDB1〜DB4を含む。ダイオードDB1は、2次コイルL2の一端のノードNB1と直流電圧VDCの生成ノードNB3との間に設けられ、DB2は、ノードNB3と2次コイルL2の他端のノードNB2との間に設けられ、DB3は、ノードNB2とVSSのノードNB4との間に設けられ、DB4は、ノードNB4とNB1との間に設けられる。
【0051】
受電部42の抵抗RB1、RB2はノードNB1とNB4との間に設けられる。そしてノードNB1、NB4間の電圧を抵抗RB1、RB2により分圧することで得られた信号CCMPIが、受電制御装置50の周波数検出回路60に入力される。
【0052】
受電部42のコンデンサCB1及び抵抗RB4、RB5は、直流電圧VDCのノードNB3とVSSのノードNB4との間に設けられる。そしてノードNB3、NB4間の電圧を抵抗RB4、RB5により分圧することで得られた信号ADINが、受電制御装置50の位置検出回路56に入力される。
【0053】
負荷変調部46は負荷変調処理を行う。具体的には受電装置40から送電装置10に所望のデータを送信する場合に、送信データに応じて負荷変調部46(2次側)での負荷を可変に変化させて、図3(B)に示すように1次コイルL1の誘起電圧の信号波形を変化させる。このために負荷変調部46は、ノードNB3、NB4の間に直列に設けられた抵抗RB3、トランジスタTB3(N型のCMOSトランジスタ)を含む。このトランジスタTB3は受電制御装置50の制御回路52からの信号P3Qによりオン・オフ制御される。そしてトランジスタTB3をオン・オフ制御して負荷変調を行う際には、給電制御部48のトランジスタTB1、TB2はオフにされ、負荷90が受電装置40に電気的に接続されない状態になる。
【0054】
例えば図3(B)のように、データ「0」を送信するために2次側を低負荷(インピーダンス大)にする場合には、信号P3QがLレベルになってトランジスタTB3がオフになる。これにより負荷変調部46の負荷はほぼ無限大(無負荷)になる。一方、データ「1」を送信するために2次側を高負荷(インピーダンス小)にする場合には、信号P3QがHレベルになってトランジスタTB3がオンになる。これにより負荷変調部46の負荷は、抵抗RB3(高負荷)になる。
【0055】
給電制御部48は負荷90への電力の給電を制御する。レギュレータ49は、整流回路43での変換で得られた直流電圧VDCの電圧レベルを調整して、電源電圧VD5(例えば5V)を生成する。受電制御装置50は、例えばこの電源電圧VD5が供給されて動作する。
【0056】
トランジスタTB2(P型のCMOSトランジスタ)は、受電制御装置50の制御回路52からの信号P1Qにより制御される。具体的にはトランジスタTB2は、ID認証が完了(確立)して通常の電力伝送を行う場合にはオンになり、負荷変調の場合等にはオフになる。
【0057】
トランジスタTB1(P型のCMOSトランジスタ)は、出力保証回路54からの信号P4Qにより制御される。具体的には、ID認証が完了して通常の電力伝送を行う場合にはオンになる。一方、ACアダプタの接続が検出されたり、電源電圧VD5が受電制御装置50(制御回路52)の動作下限電圧よりも小さい場合等に、オフになる。
【0058】
受電制御装置50は、受電装置40の各種制御を行う装置であり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。この受電制御装置50は、2次コイルL2の誘起電圧から生成される電源電圧VD5により動作することができる。また受電制御装置50は、制御回路52(受電側)、出力保証回路54、位置検出回路56、発振回路58、周波数検出回路60、満充電検出回路62を含むことができる。
【0059】
制御回路52(制御部)は受電装置40や受電制御装置50の制御を行うものであり、例えばゲートアレイやマイクロコンピュータなどにより実現できる。具体的には制御回路52は、ID認証、位置検出、周波数検出、負荷変調、或いは満充電検出などに必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。
【0060】
出力保証回路54は、低電圧時(0V時)の受電装置40の出力を保証する回路であり、電圧出力ノードNB7から受電装置40側への電流の逆流を防止する。
【0061】
位置検出回路56は、2次コイルL2の誘起電圧の波形に相当する信号ADINの波形を監視して、1次コイルL1と2次コイルL2の位置関係が適正であるかを判断する。具体的には信号ADINをコンパレータで2値に変換して、位置関係が適正であるか否かを判断する。
【0062】
発振回路58は、例えばCR発振回路により構成され、2次側のクロックを生成する。周波数検出回路60は、信号CCMPIの周波数(f1、f2)を検出して、図3(A)に示すように、送電装置10からの送信データが「1」なのか「0」なのかを判断する。
【0063】
満充電検出回路62(充電検出回路)は、負荷90のバッテリ94(2次電池)が、満充電状態(充電状態)になったか否かを検出する回路である。
【0064】
負荷90は、バッテリ94の充電制御等を行う充電制御装置92を含む。この充電制御装置92(充電制御IC)は集積回路装置などにより実現できる。なお、スマートバッテリのように、バッテリ94自体に充電制御装置92の機能を持たせてもよい。
【0065】
3.tanδの異常検出
図4に本実施形態の送電制御装置20の具体的な構成例を示す。図4においてドライバ制御回路26は、ドライバ制御信号を生成して、1次コイルL1を駆動する第1、第2の送電ドライバDR1、DR2に対して出力する。送電ドライバDR1の出力と1次コイルL1の間にはコンデンサC1が設けられ、送電ドライバDR2の出力と1次コイルL1の間にはコンデンサC2が設けられる。そしてコンデンサC1、C2と1次コイルL1により直列共振回路が構成される。なお、共振回路の構成は図4に限定されず、例えばコンデンサC1、C2のいずれか一方を省略してもよい。
【0066】
tanδ検出回路38(温度測定回路)は、コンデンサC1やC2のtanδの異常(不良)を検出する。なおコンデンサC1、C2の両方のtanδの異常を検出してもよいし、一方のみのtanδの異常を検出してもよい。制御回路22は、このようなtanδの異常が検出された場合に、送電ドライバDR1、DR2による送電を停止させる制御を行う。具体的には例えば制御回路22がドライバ制御回路26に対して駆動停止信号を出力し、ドライバ制御回路26が送電ドライバDR1、DR2へのドライバ制御信号の出力を停止する。或いはドライバ制御信号26がドライバ制御信号を生成するために使用する駆動クロックを停止する。これにより送電ドライバDR1、DR2による1次コイルL1の駆動が停止し、無接点電力伝送による送電が停止する。
【0067】
例えば理想的なコンデンサに流れる正弦波の電流の位相は、電圧の位相に対して90度ずれるが、現実のコンデンサでは、寄生抵抗等に起因する誘電体損失により、この位相のずれは角度δだけ小さくなる。即ち図5(A)に示すように、現実のコンデンサは、理想的なコンデンサのインピーダンス(−jZc、Zc=1/2πfc)に対してZc×tanδに相当する損失があると考えられ、この損失によりコンデンサが発熱する。このtanδは誘電正接と呼ばれ、コンデンサの性能を表す重要なパラメータとなっている。
【0068】
図5(B)にコンデンサのtanδの測定値を示す。B1は正常品の測定値であり、B2、B3は異常品の測定値である。B1の正常品では周波数が高くなった時のtanδの上昇は少ないが、B2、B3の異常品では周波数が高くなった時にtanδも大きく上昇する。例えば回路基板への実装前には正常であったコンデンサも、実装時のハンダの熱等が原因でtanδが異常になる場合がある。
【0069】
図4の送電ドライバDR1、DR2は、高い駆動周波数(交流周波数)で1次コイルL1を駆動し、1次コイルL1やコンデンサC1、C2には交流の大電流が流れる。従ってコンデンサのtanδに異常があると、誘電損失による発熱が生じ、コンデンサC1、C2が破壊するおそれがある。
【0070】
この場合、図5(B)から明らかなように、駆動周波数が低い場合には、コンデンサのtanδに異常があってもそれほど問題は生じない。このため、従来ではこのようなコンデンサのtanδの異常については考慮していなかった。
【0071】
ところが、無接点電力伝送の効率や安定性を高めたり、低消費電力化を図るためには、駆動周波数を、共振回路の共振周波数からなるべく離して、高い周波数に設定することが望ましいということが判明した。そして駆動周波数が高くなると、コンデンサのtanδに異常があった場合に、コンデンサが発熱して破壊するおそれがある。
【0072】
そこで、このような事態を防止するために本実施形態では、コンデンサのtanδの異常を検出し、異常が検出された場合には1次側から2次側への送電を停止する手法を採用している。例えばコンデンサ温度と周囲温度との温度差が高くなった場合やコンデンサ温度が高くなった場合に、異常が検出されたと判断して送電を停止する。
【0073】
具体的には図4において温度検出部15は、基準抵抗R0と、コンデンサ温度測定用のサーミスタRT1と、周囲温度測定用のサーミスタRT2を含む。サーミスタRT1はコンデンサC1やC2の近くに配置され、サーミスタRT2はコンデンサC1やC2から距離が離れた位置に配置される。例えば、基準抵抗R0、サーミスタRT1、RT2は、送電制御装置20のICが実装される回路基板に外付け部品として実装される。そしてサーミスタRT1はコンデンサC1やC2の近くに実装され、サーミスタRT2はコンデンサC1やC2から離れた位置に実装される。なおサーミスタは、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体である。
【0074】
tanδ検出回路38は、RFコンバージョン(抵抗−周波数変換)方式で温度を測定する。具体的には基準抵抗R0とコンデンサ温度測定用サーミスタRT1との抵抗比情報である第1の抵抗比情報(基準計測時間内の第1のカウント値、CR発振時間)を求めることで、コンデンサ温度を測定する。また基準抵抗R0と周囲温度測定用サーミスタRT2との抵抗比情報である第2の抵抗比情報(基準計測時間内の第2のカウント値、CR発振時間)を求めることで、周囲温度を測定する。そして測定されたコンデンサ温度と周囲温度との温度差を求めることで、コンデンサのtanδの異常を検出する。
【0075】
即ちサーミスタRT1、RT2は例えば負の温度係数を有し、温度が上昇するとその抵抗値が減少する(後述する図10参照)。従って、基準抵抗R0とサーミスタRT1との第1の抵抗比情報や、基準抵抗R0とサーミスタRT2の第2の抵抗比情報を求めることで、コンデンサ温度や周囲温度を測定できる。そしてこのように基準抵抗R0とサーミスタRT1、RT2との抵抗比で温度を測定すれば、基準コンデンサC0の容量値や電源電圧等が変動した場合にも、この変動を吸収することができ、温度測定の精度を高めることができる。
【0076】
また、コンデンサ温度のみに基づいてコンデンサのtanδの異常を検出しようとすると、たまたま周囲温度が低いため、コンデンサ温度が高くならず、tanδの異常を検出できないおそれがある。例えば周囲温度が5℃で、コンデンサ温度が30℃である場合には、コンデンサにおいて25℃の発熱が発生しているのにもかかわらず、tanδの異常を検出できない。従って、tanδの異常を内在するコンデンサが看過されてしまう。
【0077】
この点、図4では、コンデンサ温度と周囲温度との温度差に基づいて、tanδの異常が検出される。例えば周囲温度(環境温度)が5℃で、コンデンサ温度が30℃である場合にも、温度差が25℃であるため、tanδの異常であると検出される。従って、tanδの異常によるコンデンサの発熱を、周囲環境の温度に依存せずに、早期且つ確実に発見することができ、信頼性を向上できる。
【0078】
tanδ検出回路38は、抵抗比情報を温度に変換するための変換テーブル210を有する。この変換テーブル210は例えばROM等のメモリにより実現できる。なお変換テーブル210を組み合わせ回路等により実現してもよい。
【0079】
そしてtanδ検出回路38は、変換テーブル210と第1の抵抗比情報とに基づいて、コンデンサ温度を求め、変換テーブル210と第2の抵抗比情報とに基づいて、周囲温度を求める。即ちtanδ検出回路38は、例えば変換テーブル210から、抵抗比情報を温度に変換するための変換情報を読み出し、この変換情報に基づいて、第1の抵抗比情報(第1のカウント値)をコンデンサ温度に変換したり、第2の抵抗比情報(第2のカウント値)を周囲温度に変換する。
【0080】
更に具体的には変換テーブル210は、このような変換情報として、温度の10の位(10℃刻みの温度)を求めるための第1の変換情報(CN)と、温度の1の位(1℃刻みの温度)を求めるための第2の変換情報(AN)を記憶する。
【0081】
そしてtanδ検出回路38は、第1の抵抗比情報(第1のカウント値)に対応する温度の10の位を、変換テーブル210の第1の変換情報に基づき特定する。そして第1の抵抗比情報に対応する温度の1の位を、変換テーブル210の第2の変換情報を用いた線形補間(補間演算)により求めることで、第1の抵抗比情報(第1のカウント値)をコンデンサ温度のデータに変換する。
【0082】
またtanδ検出回路38は、第2の抵抗比情報(第2のカウント値)に対応する温度の10の位を、変換テーブル210の第1の変換情報に基づき特定する。そして第2の抵抗比情報に対応する温度の1の位を、変換テーブル210の第2の変換情報を用いた線形補間(補間演算)により求めることで、第2の抵抗比情報(第2のカウント値)を周囲温度のデータに変換する。
【0083】
このような変換テーブル210を用いれば、温度−サーミスタ抵抗値の変換特性が線形特性ではない場合にも、測定温度範囲を分割する複数の温度範囲の各温度範囲内の特性を、擬似的な線形特性とみなして、線形補間による変換処理を行うことが可能になる。これにより、tanδ検出回路38の小規模化や処理の簡素化を図れる。また各温度範囲内で線形補間を行えば、例えば−30℃〜120℃といような広い温度範囲での温度変換処理を実現できる。これにより、広い測定温度範囲においてtanδの異常を検出でき、信頼性を向上できる。
【0084】
4.tanδ検出回路の構成
図6にtanδ検出回路38の具体的な構成例を示す。なおtanδ検出回路38は図6の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
【0085】
図6のtanδ検出回路38は、基準測定用のトランジスタTR0と、コンデンサ温度測定用のトランジスタTR1と、周囲温度測定用のトランジスタTR2を含む。また放電用のトランジスタTR3や、検出回路BUFRや、測定回路200を含むことができる。なおトランジスタTR0、TR1、TR2は例えばCMOSのP型トランジスタであり、トランジスタTR3はCMOSのN型トランジスタである。
【0086】
基準測定用のトランジスタTR0は、基準コンデンサC0の一端のノードである発振ノードNR1とVDD(広義には第2の電源)との間に、基準抵抗R0と直列に設けられる。例えばトランジスタTR0のソースにはVDDが供給され、ドレインには、その一端が発振ノードNR1に接続される基準抵抗R0の他端が接続される。またトランジスタTR0のゲートには、測定回路200からの制御信号SC0が入力される。なお基準コンデンサC0は、発振ノードNR1とGND(第1の電源)との間に設けられる。
【0087】
コンデンサ温度測定用のトランジスタTR1は、発振ノードNR1とVDDとの間に、コンデンサ温度測定用サーミスタRT1と直列に設けられる。例えばトランジスタTR1のソースにはVDDが供給され、ドレインには、その一端が発振ノードNR1に接続されるサーミスタRT1の他端が接続される。またトランジスタTR1のゲートには、測定回路200からの制御信号SC1が入力される。
【0088】
周囲温度測定用のトランジスタTR2は、発振ノードNR1とVDDとの間に、周囲温度測定用サーミスタRT2と直列に設けられる。例えばトランジスタTR2のソースにはVDDが供給され、ドレインには、その一端が発振ノードNR1に接続されるサーミスタRT2の他端が接続される。またトランジスタTR2のゲートには、測定回路200からの制御信号SC2が入力される。
【0089】
放電用のトランジスタTR3は、発振ノードNR1とGND(第1の電源)との間に設けられる。例えばトランジスタTR3のソースにはGNDが供給され、ドレインは発振ノードNR1に接続される。またトランジスタTR3のゲートには、測定回路200からの制御信号SC3が入力される。
【0090】
検出回路BUFRは、発振ノードNR1の電圧が所与のしきい値電圧を超えた場合に、検出パルスDPを出力する回路である。この検出回路BUFRは、例えばシュミットトリガー型のインバータ回路などにより実現できる。
【0091】
測定回路200は、検出回路BUFRからの検出パルスDPを受け、温度の測定処理を行う。また制御信号SC0〜SC3を生成して、トランジスタTR0〜TR3のオン・オフを制御する。
【0092】
図7(A)、図7(B)に図6の回路の動作を説明するための信号波形例を示す。まず図7(A)に示すように基準計測時間Tの測定を行う。具体的には測定回路200は、基準計測時間Tの測定時に図7(A)に示すような制御信号SC0、SC3をトランジスタTR0、TR3に出力する。そして制御信号SC0、SC3がLレベルの期間では、トランジスタTR0がオンになり、トランジスタTR3がオフになる。従って、VDDからトランジスタTR0及び基準抵抗R0を介して、発振ノードNR1の基準コンデンサC0に電荷が蓄積される。これにより発振ノードNR1の電圧が、C0×R0の時定数で決まる傾きで上昇する。なお本明細書では、C0、R0などのキャパシタや抵抗を表す記号を、容量値や抵抗値を表す記号としても併用する。
【0093】
発振ノードNR1の電圧がしきい値電圧VTを超えると、バッファ回路BUFR(パルス発生回路)が検出パルスDPを発生する。これにより制御信号SC0、SC3がHレベルになり、トランジスタTR0がオフになり、トランジスタTR3がオンになる。この結果、発振ノードNR1の電圧が0Vに低下する。その後、制御信号SC0、SC3がLレベルになり、再度、発振ノードNR1の電圧がC0×R0の時定数で上昇する。
【0094】
測定回路200は、以上のようなCR発振が繰り返されている間、バッファ回路BUFRからの検出パルスDPの数をカウントする。そして、検出パルス数が例えば1000回(N回)になると、基準計測時間Tの測定を終了する。これにより、基準計測時間はT=1000×C0×R0×aと表されるようになる。なおaは任意の係数である。
【0095】
次に、図7(B)に示すようにコンデンサ温度の測定を行う。具体的には測定回路200は、コンデンサ温度の測定時に図7(B)に示すような制御信号SC1、SC3をトランジスタTR1、TR3に出力する。そして制御信号SC1、SC3がLレベルの期間では、トランジスタTR1がオンになり、トランジスタTR3がオフになるため、発振ノードNR1の電圧が、C0×RT1の時定数で決まる傾きで上昇する。そして発振ノードNR1の電圧がしきい値電圧VTを超えると、検出パルスDPが発生し、これにより制御信号SC1、SC3がHレベルになり、トランジスタTR1がオフになり、トランジスタTR3がオンになる。この結果、発振ノードNR1の電圧が0Vに低下する。その後、制御信号SC1、SC3がLレベルになり、再度、発振ノードNR1の電圧がC0×RT1の時定数で上昇する。
【0096】
測定回路200は、図7(A)で計測された基準計測時間Tの間、検出パルス数をカウントする。そして基準計測時間T内でカウントされた検出パルス数を第1のカウント値CMとして求める。従って、下記の式が成り立つことになる。
【0097】
T=CM×C0×RT1×a=1000×C0×R0×a (1)
RT1/R0=1000/CM (2)
次に測定回路200は図7(B)の手法で、制御信号SC2、SC3によりトランジスタTR2、TR3をオン・オフ制御して、周囲温度の測定を行い、第2のカウント値CMを得る。この場合に下記の式が成り立つことになる。
【0098】
T=CM×C0×RT2×a=1000×C0×R0×a (3)
RT2/R0=1000/CM (4)
図6の回路によれば、図7(A)で説明したように基準計測時間Tが求められる。そして図7(B)で説明したように、この基準計測時間T内での検出パルス数をカウントし、得られたカウント値CMに基づいて、抵抗比情報(RT1/R0、RT2/R0)が求められる。そしてこの抵抗比情報に基づいてコンデンサ温度や周囲温度が特定される。
【0099】
このようにすれば、例えばトランジスタTR0〜TR2に供給される電源VDDが変動したり、基準コンデンサC0の容量値が変動した場合にも、その変動が吸収されたカウント値CMを得ることができ、より正確なコンデンサ温度や周囲温度を測定できる。例えばC0の容量値が小さくなると、基準計測時間Tも短くなるが、コンデンサ温度や周囲温度の測定時における時定数C0×RT1やC0×RT2も小さくなる。このため、結局、C0の容量値の変動はカウント値CMには影響を及ぼさなくなり、このカウント値CMに基づきコンデンサ温度や周囲温度を求めることで、正確な温度を得ることができる。
【0100】
5.測定回路の構成
図8に測定回路200の具体的な構成例を示す。測定回路200(tanδ検出回路)は、基準計測時間測定回路202、カウント値測定回路204、変換回路206を含む。また信号生成回路208、変換テーブル210、アドレスカウンタADDRESS、タイミングジェネレータ220を含むことができる。
【0101】
基準計測時間測定回路202は、基準測定用トランジスタTR0、放電用トランジスタTR3がオン・オフ制御されることで検出回路BUFRから出力される検出パルスDPの数をカウントする。そして得られたカウント値により、基準計測時間Tを求める。具体的には、基準計測時間測定回路202が含むタイマTIM1(カウンタ)が、図7(A)で説明したように、検出パルス数が例えば1000回になるまでの基準計測時間Tを、例えば1MHzのクロックCLK1に基づき測定する。そして測定された基準計測時間Tに対応するタイマTIM1のカウント値が、メモリTMに記憶される。なお本実施形態では説明を簡素化するために、タイマTIM1のカウント値についてもTIM1と適宜標記し、メモリTMに記憶されるカウント値についてもTMと適宜標記する。
【0102】
カウント値測定回路204は、コンデンサ温度測定用トランジスタTR1、放電用トランジスタTR3がオン・オフ制御されることで基準計測時間T内において検出回路BUFRから出力される検出パルスの数をカウントする。そして基準抵抗R0とコンデンサ温度測定用サーミスタRT1との抵抗比情報を表す第1のカウント値を求め、コンデンサ温度を求める。具体的にはカウント値測定回路204が含むタイマTIM2(カウンタ)が、図7(B)で説明したように、基準計測時間T内での検出パルス数を測定する。そして測定されたタイマTIM2のカウント値が、メモリCMに記憶される。そしてメモリCMに記憶されたカウント値が、変換回路206によりコンデンサ温度のデータに変換される。なお本実施形態では説明を簡素化するために、タイマTIM2のカウント値についてもTIM2と適宜標記し、メモリCMに記憶されるカウント値についてもCMと適宜標記する。
【0103】
またカウント値測定回路204は、周囲温度測定用トランジスタTR2、放電用トランジスタTR3がオン・オフ制御されることで基準計測時間T内において検出回路BUFRから出力される検出パルスの数をカウントする。そして基準抵抗R0と周囲温度測定用サーミスタRT2との抵抗比情報を表す第2のカウント値を求め、周囲温度を測定する。具体的にはカウント値測定回路204が含むタイマTIM2が、基準計測時間T内での検出パルス数を測定する。そして測定されたタイマTIM2のカウント値が、メモリCMに記憶される。そしてメモリCMに記憶されたカウント値が、変換回路206により周囲温度のデータに変換される。
【0104】
変換回路206は、カウント値測定回路204により測定されたカウント値を温度(温度データ)に変換する処理を行う。例えば、カウント値を温度に変換するための変換テーブル210と、カウント値測定回路204からの第1のカウント値とに基づいて、コンデンサ温度を求める。また変換テーブル210と、カウント値測定回路204からの第2のカウント値とに基づいて、周囲温度を求める。
【0105】
具体的には、アドレスカウンタADDRESSがカウントアップし、これにより変換テーブル210から第1の変換情報CNや第2の変換情報ANが読み出される。次にカウント値測定回路204からの第1のカウント値CMと、変換テーブル210からの第1、第2の変換情報CN、ANに基づいて、コンデンサ温度が求められる。そして求められたコンデンサ温度のデータはメモリTMP1に記憶される。同様に、アドレスカウンタADDRESSがカウントアップし、これにより変換テーブル210から第1、第2の変換情報CN、ANが読み出される。そしてカウント値測定回路204からの第2のカウント値CMと、変換テーブル210からの第1、第2の変換情報CN、ANに基づいて、周囲温度が求められ、求められた周囲温度のデータはメモリTMP2に記憶される。そして、メモリTMP1、TMP2に記憶されたコンデンサ温度と周囲温度のデータにより、コンデンサ温度と周囲温度の温度差が求められ、この温度差によりtanδの異常が検出される。
【0106】
信号生成回路208は、測定されたコンデンサ温度や周囲温度に基づき生成されたエラー信号ERRSIGや温度データTNDATAを、制御回路22に出力する。例えば信号生成回路208は、コンデンサ温度と周囲温度との温度差が所与の温度差を超えた場合に、エラー信号を制御回路22に出力する。これにより送電ドライバDR1、DR2の送電が停止する。また測定されたコンデンサ温度が所与の温度を超えた場合にも、エラー信号を制御回路22に出力する。これにより送電ドライバDR1、DR2による送電が停止する。
【0107】
タイミングジェネレータ220は、測定開始信号TONやクロックCLK1を受けて、各種のシーケンス制御を行う。具体的には制御信号SC0〜SC3を生成して、トランジスタTR0〜TR3に出力する。
【0108】
6.変換テーブル
次に、図9を用いて変換テーブル210について説明する。本実施形態の変換テーブル210は、第1変換情報CNや第2の変換情報ANを記憶する。
【0109】
図9に示すように温度が例えば−30℃から+125℃に上昇すると、サーミスタの抵抗値は例えば296.700KΩから0.8067KΩというように減少する。またコンデンサ温度や周囲温度の測定では、前述したように例えば1000回の検出パルス数に相当する基準計測時間T内において検出パルス数がカウントされる。このため、温度が25℃であり場合の検出パルス数は図9に示すように1000になる。従って、温度が120℃である場合の検出パルス数は、(20/0.8067)×1000=21836.445と計算される。そして120℃は119.5℃〜120.5℃に相当すると考えられるため、21836.445に対して−0.5℃補正が行われて21540.853になる。これにより、120℃の温度に対応する第1の変換情報CNは、21540.853の小数点を切り捨てた21540(ヘキサ表示で5424h)に設定される。
【0110】
また、温度が110℃の場合の検出パルス数は(20/1.1900)×1000=16806.723と計算される。そして110℃は109.5℃〜110.5℃に相当すると考えられるため、16806.723に対して−0.5℃補正が行われて16555.237になる。これにより、110℃についての第1の変換情報CNは、16555.237の小数点を切り捨てた16555(ヘキサ表示で40ABh)に設定される。即ち110℃の温度に対する10の位の変換情報(10℃刻みのデータ)は、16555に設定される。
【0111】
一方、110℃〜120℃の温度範囲での1℃刻みのデータは、(21836.445−16806.723)/10=502.972と計算される。これにより110℃〜120℃の温度範囲での第2の変換情報ANは、502.972の小数点を切り捨てた502(ヘキサ表示で01F6h)に設定される。即ち100℃〜110℃の温度範囲の温度に対する1の位の変換情報(1℃刻みのデータ)は、502に設定される。
【0112】
図10にサーミスタの温度−抵抗の変換特性の一例を示す。図10では、サーミスタの抵抗値は負の温度係数を有しており、温度−抵抗の変換特性は線形な特性にはなっていない。従って、このような温度−抵抗の変換を演算処理により実現しようとすると、処理負荷が重くなる。
【0113】
この点、本実施形態では、変換テーブル210には、10℃刻みのデータである第1の変換情報CNと、1℃刻みのデータである第2の変換情報ANが記憶されている。そして、測定温度(コンデンサ温度、周囲温度)の10の位については、第1の変換情報CNに基づいて特定され、温度の1の位については、第2の変換情報ANに基づく線形補間により求められる。従って、複雑な演算処理を行わなくても変換処理を実現でき、処理負荷を軽減できる。
【0114】
即ち測定温度での検出パルス数(抵抗比情報、カウント値)が例えば913であったとする。この場合に、20℃、30℃に対応する第1の変換情報はCN=790、1196である。従って、検出パルス数913が表す測定温度は、温度範囲20℃〜30℃内であり、その10の位は「20」であると特定される。また温度範囲20℃〜30℃での第2の変換情報はAN=41であり、このAN=41に基づく線形補間により測定温度の1の位が求められる。例えば測定温度の1の位をXとすると、線形補間式である790+AN×X=790+41×X=913により、X=3と求められる。従って、測定温度は、10の位が「20」であり、1の位が「3」であるため、23℃になる。このように変換テーブル210を用いれば、温度−抵抗の変換特性が線形特性でない場合にも、負荷の少ない線形補間により測定温度を求めることができる。
【0115】
7.動作
次に本実施形態の詳細な動作について図11、図12、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0116】
まず図8の測定開始信号TONがアクティブになると、タイマTIM1、TIM2をリセットし、そのカウント値を0にする(ステップS21)。そして、1MHzのクロックCLK1によるタイマTIM1のカウント値のカウントアップを開始する(ステップS22)。また図6のトランジスタTR0、TR3のオン・オフ制御を行い、基準抵抗R0、基準コンデンサC0を用いたCR発振を開始し、検出パルスDPによるタイマTIM2のカウント値のカウントアップを開始する(ステップS23)。
【0117】
そしてタイマTIM2のカウント値が1000を超えたか否かを判断し、超えていない場合にはステップS22に戻る(ステップS24)。一方、超えた場合には、タイマTIM1のカウント値をメモリTMに記憶する(ステップS25)。これにより図7(A)の基準計測時間Tの測定が実現される。
【0118】
即ち、1MHzのクロックCLK1によりカウントアップを開始したタイマTIM1は、検出パルス数が1000を超え、タイマTIM2のカウント値が1000を超えると、カウントアップを停止する。従って、タイマTIM1のカウント値は、基準計測時間T(検出パルス1000個分)に応じたカウント値になり、このカウント値がメモリTMに記憶される。
【0119】
次にタイマTIM2をリセットする(ステップS26)。そして、1MHzのクロックCLK1によるタイマTIM1のカウントダウンを開始する(ステップS27)。また図6のトランジスタTR1、TR3のオン・オフ制御を行い、サーミスタ抵抗RT1、基準コンデンサC0を用いたCR発振を開始し、検出パルスDPによるタイマTIM2のカウント値のカウントアップを開始する(ステップS28)。
【0120】
そしてタイマTIM1のカウント値が0になったか否かを判断し、0になっていない場合にはステップS27に戻る(ステップS29)。一方、0になった場合には、タイマTIM2のカウント値をメモリCMに記憶し、アドレスカウンタADDRESSと加算カウンタADDをリセットする(ステップS30、S31)。これにより図7(B)の温度測定が実現される。
【0121】
即ちタイマTIM1は、1MHzのクロックCLK1により、基準計測時間Tに相当するカウント値からのカウントダウンを開始する。そしてタイマTIM1のカウント値が0になると、タイマTIM2のカウントアップが停止する。従って、タイマTIM2のカウント値は、基準計測時間T内において検出回路BUFRから出力される検出パルス数のカウント値になり、このカウント値がメモリCMに記憶される。このメモリCMに記憶されるカウント値は、コンデンサ温度に応じた第1のカウント値になる。
【0122】
次に、この第1のカウント値を温度データに変換する処理を行う。即ち、まず、図9で説明した変換テーブル210から、120℃の温度データセットであるCN、AN、TNを読み出す(ステップS41)。そしてメモリCMのカウント値が、変換テーブル210から読み出されたCNよりも大きいか否かを判断し、大きい場合には、コンデンサ温度が120℃よりも高いと判断し、エラー信号を出力する(ステップS42、S43)。即ち図9において120℃に対応するCNは21540である。従って、メモリCMのカウント値が21540よりも大きい場合には、コンデンサ温度が120℃以上であると判断できる。
【0123】
一方、メモリCMのカウント値がCN以下である場合には、アドレスカウンタADDRESSをカウントアップし、変換テーブル210から次のCN、AN、TNを読み出す(ステップS44)。即ち温度を10℃下降させた場合のCN、AN、TNを読み出す。例えば120℃の場合にCN=21540、AN=591、TN=15を読み出され、ADDRESSがカウントアップされると、次は10℃降下した110℃の場合のCN=16555、AN=502、TN=14が読み出される。
【0124】
次にメモリCMのカウント値が、変換テーブル210から読み出されたCNよりも大きいか否かを判断し、大きくない場合には、変換テーブル210から読み出されたTNが0か否かを判断する(ステップS45、S46)。そしてTN=0ではない場合には、ステップS44に戻り、TN=0である場合には、コンデンサ温度が−30℃以下であると判断し、エラー信号を出力する(ステップS47)。
【0125】
即ち変換テーブル210のTNは、120℃のときはTN=15であり、10℃毎に1つずつ減少し、−30℃でTN=0になる。従って、TN=0である場合には、コンデンサ温度が−30℃以下であり、動作保証範囲外であると判断できる。
【0126】
ステップS45でCM>CNである場合には、CNに対して、変換テーブル210から読み出されたANを加算する(ステップS52)。そしてCM>CNか否かを判断し(ステップS53)、CM>CNである場合には加算カウンタADDをカウントアップし(ステップS51)、CNに対してANを再度加算する(ステップS52)。一方、ステップS53でCM≦CNである場合には、TN、ADDが、温度データとしてメモリTMP1(1回目)に記憶される(ステップS54)。具体的には、上位4ビットがTNであり、下位4ビットがADDである温度データが記憶される。これにより各温度範囲内での線形補間が行われて、コンデンサ温度のデータが取得される。
【0127】
即ち、第1のカウント値であるCMが、110℃に相当するCN=16555よりも大きい場合には、CNにAN=502が加算されて、CN=16555+502=17057になる。そして、CMがCN=17057よりも大きいか否かを判断される。そして大きい場合には、ADDがカウントアップし、CN=17057+502=17559になり、CMがCN=17559よりも大きいか否かが判断される。そして、CM≦CNになるまで、この処理が繰り返され、CM≦CNになると、その時の、TN(上位4ビット)、ADD(下位4ビット)がコンデンサ温度のデータとしてメモリTMP1に記憶される。
【0128】
次に、温度測定の1回目か否かを判断し(ステップS55)、1回目である場合には、メモリTMP1の温度データが、リミット温度Tlim1よりも大きいか否かを判断し、大きい場合には、コンデンサ温度の異常であると判断して、エラー信号を出力する(ステップS57)。一方、小さい場合には、メモリTMのカウント値(基準計測時間T)を、タイマTIM1にセットして(ステップS58)、図11のステップS26に戻る。これにより2回目の温度測定が行われる。そして、2回目の温度測定で得られたTN、ADDが、周囲温度のデータとしてメモリTMP2に記憶される(ステップS54)。
【0129】
次に、メモリTMP1の温度データとTMP2の温度データの温度差データSUBが求められ、SUBがリミット温度Tlim2よりも大きいか否かを判断する(ステップS55、S59、S60)。そして大きい場合には、温度差が異常であり、コンデンサのtanδが異常であると判断して、エラー信号を出力する(ステップS61)。一方、小さい場合には、コンデンサは正常であると判断する(ステップS62)。
【0130】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電源、第2の電源等)と共に記載された用語(GND、VDD等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また送電制御装置、送電装置、tanδ検出回路の構成・動作や、tanδ検出手法、温度測定手法も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば温度差以外の測定結果に基づいてtanδの異常を検出してもよい。またtanδ検出回路を、無接点電力伝送以外の用途に使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1(A)、図1(B)は無接点電力伝送の説明図。
【図2】本実施形態の送電装置、送電制御装置、受電装置、受電制御装置の構成例。
【図3】図3(A)、図3(B)は周波数変調、負荷変調によるデータ転送の説明図。
【図4】本実施形態の送電制御装置の構成例。
【図5】図5(A)、図5(B)はコンデンサのtanδの説明図。
【図6】tanδ検出回路の構成例。
【図7】図7(A)、図7(B)は本実施形態の動作を説明するための信号波形例。
【図8】測定回路の構成例。
【図9】変換テーブルの説明図。
【図10】サーミスタの温度−抵抗特性の例。
【図11】本実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図12】本実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図13】本実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0132】
L1 1次コイル、L2 2次コイル、
10 送電装置、12 送電部、14 電圧検出回路、15 温度検出部、
16 表示部、20 送電制御装置、22 制御回路(送電側)、24 発振回路、
26 ドライバ制御回路、28 波形検出回路、38 tanδ検出回路、
40 受電装置、42 受電部、43 整流回路、46 負荷変調部、
48 給電制御部、50 受電制御装置、52 制御回路(受電側)、
54 出力保証回路、56 位置検出回路、58 発振回路、
60 周波数検出回路、62 満充電検出回路、90 負荷、92 充電制御装置、
94 バッテリ、200 測定回路、202 基準計測時間測定回路、
204 カウント値測定回路、206 変換回路、208 信号生成回路、
210 変換テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次コイルと2次コイルを電磁的に結合させて送電装置から受電装置に対して電力を伝送し、前記受電装置の負荷に対して電力を供給する無接点電力伝送システムの前記送電装置に設けられる送電制御装置であって、
ドライバ制御信号を生成して、前記1次コイルを駆動する送電ドライバに対して出力するドライバ制御回路と、
その一端が前記送電ドライバの出力に電気的に接続され前記1次コイルと共に共振回路を構成するコンデンサのtanδの異常を検出するtanδ検出回路と、
前記送電装置を制御する制御回路とを含み、
前記制御回路は、
前記コンデンサのtanδの異常が検出された場合に、前記送電ドライバによる送電を停止させる制御を行うことを特徴とする送電制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記tanδ検出回路は、
コンデンサ温度と周囲温度を測定し、測定されたコンデンサ温度と周囲温度との温度差を求めることで、前記コンデンサのtanδの異常を検出し、
前記制御回路は、
コンデンサ温度と周囲温度との温度差が所与の温度差を超えた場合に、前記送電ドライバによる送電を停止させる制御を行うことを特徴とする送電制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記制御回路は、
測定されたコンデンサ温度が所与の温度を超えた場合に、前記送電ドライバによる送電を停止させる制御を行うことを特徴とする送電制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記tanδ検出回路は、
基準抵抗とコンデンサ温度測定用サーミスタとの抵抗比情報である第1の抵抗比情報を求めることで、コンデンサ温度を測定し、
前記基準抵抗と周囲温度測定用サーミスタとの抵抗比情報である第2の抵抗比情報を求めることで、周囲温度を測定し、
測定されたコンデンサ温度と周囲温度との温度差を求めることで、前記コンデンサのtanδの異常を検出することを特徴とする送電制御装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記tanδ検出回路は、
抵抗比情報を温度に変換するための変換テーブルを有し、
前記変換テーブルと前記第1の抵抗比情報とに基づいて、コンデンサ温度を求め、
前記変換テーブルと前記第2の抵抗比情報とに基づいて、周囲温度を求めることを特徴とする送電制御装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記変換テーブルは、温度の10の位を求めるための第1の変換情報と、温度の1の位を求めるための第2の変換情報を記憶し、
前記tanδ検出回路は、
前記第1の抵抗比情報に対応する温度の10の位を前記第1の変換情報に基づき特定し、温度の1の位を前記第2の変換情報を用いた線形補間により求めることで、前記第1の抵抗比情報をコンデンサ温度に変換し、
前記第2の抵抗比情報に対応する温度の10の位を前記第1の変換情報に基づき特定し、温度の1の位を前記第2の変換情報を用いた線形補間により求めることで、前記第2の抵抗比情報を周囲温度に変換することを特徴とする送電制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記tanδ検出回路は、
基準コンデンサの一端のノードである発振ノードと第2の電源との間に、基準抵抗と直列に設けられる基準測定用トランジスタと、
前記発振ノードと前記第2の電源との間に、コンデンサ温度測定用サーミスタと直列に設けられるコンデンサ温度測定用トランジスタと、
前記発振ノードと前記第2の電源との間に、周囲温度測定用サーミスタと直列に設けられる周囲温度測定用トランジスタと、
前記発振ノードと第1の電源との間に設けられる放電用トランジスタと、
前記発振ノードの電圧が所与のしきい値電圧を超えた場合に、検出パルスを出力する検出回路とを含むことを特徴とする送電制御装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記tanδ検出回路は、
前記基準測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントし、基準計測時間を測定する基準計測時間測定回路と、
前記コンデンサ温度測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記基準計測時間内において前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントして、前記基準抵抗と前記コンデンサ温度測定用サーミスタとの抵抗比情報を表す第1のカウント値を求め、前記周囲温度測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記基準計測時間内において前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントして、前記基準抵抗と前記周囲温度測定用サーミスタとの抵抗比情報を表す第2のカウント値を求めるカウント値測定回路を含むことを特徴とする送電制御装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記tanδ検出回路は、
カウント値を温度に変換するための変換テーブルと、
前記変換テーブルと前記第1のカウント値とに基づいてコンデンサ温度を求め、前記変換テーブルと前記第2のカウント値とに基づいて周囲温度を求める変換回路を含むことを特徴とする送電制御装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記変換テーブルは、温度の10の位を求めるための第1の変換情報と、温度の1の位を求めるための第2の変換情報を記憶し、
前記tanδ検出回路は、
前記第1のカウント値に対応する温度の10の位を前記第1の変換情報に基づき特定し、温度の1の位を前記第2の変換情報を用いた線形補間により求めることで、前記第1のカウント値をコンデンサ温度に変換し、
前記第2のカウント値に対応する温度の10の位を前記第1の変換情報に基づき特定し、温度の1の位を前記第2の変換情報を用いた線形補間により求めることで、前記第2のカウント値を周囲温度に変換することを特徴とする送電制御装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の送電制御装置と、
交流電圧を生成して前記1次コイルに供給する送電部とを含むことを特徴とする送電装置。
【請求項12】
請求項11に記載の送電装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
コンデンサのtanδの異常を検出するtanδ検出回路であって、
基準コンデンサの一端のノードである発振ノードと第2の電源との間に、基準抵抗と直列に設けられる基準測定用トランジスタと、
前記発振ノードと前記第2の電源との間に、コンデンサ温度測定用サーミスタと直列に設けられるコンデンサ温度測定用トランジスタと、
前記発振ノードと前記第2の電源との間に、周囲温度測定用サーミスタと直列に設けられる周囲温度測定用トランジスタと、
前記発振ノードと第1の電源との間に設けられる放電用トランジスタと、
前記発振ノードの電圧が所与のしきい値電圧を超えた場合に、検出パルスを出力する検出回路とを含み、
前記検出回路からの検出パルス数をカウントすることで、前記コンデンサのtanδの異常を検出することを特徴とするtanδ検出回路。
【請求項14】
請求項13において、
前記基準測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントし、基準計測時間を測定する基準計測時間測定回路と、
前記コンデンサ温度測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記基準計測時間内において前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントして、前記基準抵抗と前記コンデンサ温度測定用サーミスタとの抵抗比情報を表す第1のカウント値を求め、前記周囲温度測定用トランジスタ、前記放電用トランジスタがオン・オフ制御されることで前記基準計測時間内において前記検出回路から出力される検出パルスの数をカウントして、前記基準抵抗と前記周囲温度測定用サーミスタとの抵抗比情報を表す第2のカウント値を求めるカウント値測定回路を含むことを特徴とするtanδ検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−206306(P2008−206306A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39601(P2007−39601)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】