説明

逆止弁

【課題】簡単な構成で、配管の部品点数を削減できる逆止弁を提供する。
【解決手段】大径側配管13の端部と小径側配管12の端部とを互いに重ね合わせて接続する接続部において、小径側配管に設けられ、2本の配管の間をシールするシール部材14を装着するとともに、小径側配管の中心部に向かって内周面全周にわたって突出するシール部材収容部12cと、大径側配管と小径側配管との間の流体の流れを制御する弁体1とを備え、弁体は、大径側配管と小径側配管の内部を互いに連通可能としながら、シール部材収容部の突出部に沿って摺動する摺動部1cと、摺動部の一端に、シール部材収容部に当接したときに、大径側配管と小径側配管の内部とを連通不能とする閉塞部1a、2と、摺動部の他端に、シール部材収容部に当接したときに、閉塞部をシール部材収容部から離間させ、摺動部を介して両配管の内部を互いに連通可能とするストッパ部1dとを備える逆止弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーエアコン等に使用される冷凍サイクルなどに用いられる逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記冷凍サイクルなどにおいて、流体の流れ方向を制御するために逆止弁が用いられている。一例として、特許文献1には、流入穴と流出穴との間に該両穴に連通する弁室を有する弁本体と、該弁本体の前記弁室に配置された弁体と、該弁体の移動を阻止する弁体ストッパ、及び該弁体ストッパを係止固定するストッパ支持リングとを備え、前記弁本体がアルミニューム合金で形成された逆止弁が提案されている。この逆止弁は、全体を軽量化するとともに、弁ストッパの流体の流通抵抗を改善し、その取付も容易に行うことができる。
【0003】
上記公報等に記載の従来の逆止弁は、それ自体が一つの部品として配管等に組み込まれるが、配管の部品点数を削減するため、特許文献2には、配管のジョイント内に逆止弁を収納した構成が記載されている。この構成では、上流側と下流側のジョイント管の相対向する端面間で逆止弁の弁シート部側に形成されるフランジ部を挟持し、フランジ部に一体的に固着した弾性シール部材を適宜量だけ圧縮し、シール性を確実にして水漏れを防止している。
【特許文献1】特開平11−210906号公報
【特許文献2】実開平6−12879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献2に記載のジョイント内に逆止弁を有する構成においても、シール性を確保する構造等を含め、構造全体が複雑で部品点数が多く改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の逆止弁における問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で、配管の部品点数を削減することのできる逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、大径側配管の端部と小径側配管の端部とを互いに重ね合わせて接続する接続部において、該小径側配管に設けられ、該2本の配管の間をシールするシール部材を装着するとともに、該小径側配管の中心部に向かって内周面全周にわたって突出するシール部材収容部と、該シール部材収容部と協働して、前記大径側配管と小径側配管との間の流体の流れを制御する弁体とを備えた逆止弁であって、該弁体は、前記大径側配管と小径側配管の内部を互いに連通可能としながら、前記シール部材収容部の突出部に沿って摺動する摺動部と、該摺動部の一端に設けられ、前記シール部材収容部に当接したときに、前記大径側配管と小径側配管の内部とを連通不能とする閉塞部と、前記摺動部の他端に設けられ、前記シール部材収容部に当接したときに、前記閉塞部を前記シール部材収容部から離間させ、前記摺動部を介して前記大径側配管と小径側配管の内部を互いに連通可能とするストッパ部とを備えることを特徴とする。
【0007】
そして、本発明によれば、大径側配管の端部と小径側配管の接続部において、小径側配管に形成したシール部材収容部を弁座として利用して逆止弁を構成したため、接続構造を兼ねた逆止弁を簡単な構成で実現することができ、配管の部品点数を削減することが可能となる。
【0008】
前記逆止弁において、前記弁体は、流体圧力を受ける受圧部と、該受圧部に隣接する溝部と、該溝部から前記受圧部とは反対側に延設された複数の突出片と、該突出片の各々の先端に外側に屈曲した爪部とを備え、前記溝部に第2のシール部材が収容され、該第2のシール部材と前記受圧部とで前記閉塞部を、前記複数の突出片で前記摺動部を、前記爪部で前記ストッパ部を各々構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成で、配管の部品点数を削減することのできる逆止弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる逆止弁の弁体とパッキンを示す図であって、(a)は左側面図、(b)は一部破断正面図、(c)は右側面図である。
【図2】本発明にかかる逆止弁を示す図であって、(a)は流体が移動可能な状態を示す断面図、(b)は流体の移動が規制される状態を示す断面図、(c)は弁体をパイプに装着する要領を説明するための概略図である。
【図3】配管の一般的な接続構造を示す図であって、(a)は六角ナットの一部断面図、(b)はパイプの一部断面図、(c)は機器等の接続部の一部断面図、(d)は組立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本発明にかかる逆止弁を説明する前に、カーエアコン等に使用される冷凍サイクルなどの配管の一般的な接続構造(ジョイント部)について、図3を参照しながら説明する。
【0013】
冷凍サイクルを構成する圧縮機等の機器に冷媒の通路を形成するパイプ12を接続する場合には、均一な径及び厚さを有する管12aの端部を曲折加工し、機器側の接続部13への挿入部12bに、Oリング等のパッキン14を装着するためのシール部材収容部12cを形成し、さらに管12aより大径の鍔部12dを形成する。
【0014】
そして、上記パイプ12を用い、圧縮機等の機器側の接続部13の内部13bにパイプ12の右端部を挿入し、六角ナット11の開口部11bをパイプ12の管12aに挿通させた状態で、六角ナット11全体をパイプ12の左端部からパイプ12の右端部側に移動させ、六角ナット11の雌ねじ部11aを接続部13の雄ねじ部13aに螺合させ、図3(d)の状態にパイプ12と機器側の接続部13とを接続する。この接続構造により、パッキン14でジョイント部をシールした状態でパイプ12と機器側の接続部13とが接続され、矢印方向に流体Fが流れる。
【0015】
次に、本発明にかかる逆止弁の一実施の形態について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明にかかる逆止弁の弁体1と、シール部材としてのパッキン2を示し、弁体1は、ナイロン、PPS等の樹脂で成形され、流体圧力を受ける受圧部としての円板状部1aと、円板状部1aの左方に形成された溝部1bと、溝部1bから左方に延設された4本の突出片1cと、各突出片1cの先端に外側に屈曲した爪部1dとを備える。パッキン2は、Oリング、樹脂パッキン等であって、弁体1の溝部1bに装着される。
【0017】
本発明にかかる逆止弁は、上記弁体1及びパッキン2と、図3に示した六角ナット11〜接続部13を組み合わせて構成される。
【0018】
図2(a)、(b)に示すように、この逆止弁10は、パイプ(小径側配管)12のシール部材収容部12cに弁体1の突出片1cが当接するように弁体1及びパッキン2全体がパイプ12の右端部の内部に収容される。弁体1をパイプ12の右端部内に収容するにあたっては、図2(c)に示すように、弁体1を爪部1d側からパイプ12の右端部内に挿入し、徐々に弁体1を左方へ移動させると、弁体1の爪部1dがパイプ12のシール部材収容部12c上を摺動し、最終的に爪部1dがシール部材収容部12cを乗り越え、弁体1がパイプ12の内部から抜き出し不能に装着される。
【0019】
その後、図3でも説明したように、機器側の接続部(大径側配管)13の内部13bにパイプ12の右端部を挿入し、六角ナット11の雌ねじ部11aを接続部13の雄ねじ部13aに螺合させ、図2(a)、(b)の状態に接続する。これにより、接続構造(ジョイント部)を兼ねた逆止弁10が構成される。
【0020】
次に、上記構成を有する逆止弁10の動作について図2を参照しながら説明する。
【0021】
パイプ12から接続部13に流体Fが流れる場合には、流体Fの流れに従って弁体1全体が右方へ移動し、弁体1の爪部1dがストッパとして機能してシール部材収容部12cの左端部に当接し、弁体1全体の移動が停止する。この状態では、矢印で示すように、パイプ12からの流体Fは、弁体1の4本の突出片1cの間を通過して右方へ流れ、接続部13に流入する。
【0022】
一方、接続部13からパイプ12に流体Fが移動しようとすると、図2(b)に示すように、流体Fの流れに従って弁体1全体が左方へ移動し、弁体1に装着されたパッキン2がシール部材収容部12cの右端部に当接し、弁体1全体の移動が停止する。この状態では、矢印で示すように、接続部13からの流体Fは、弁体1の円板状部1a及びパッキン2によって移動を妨げられるため、パイプ12への流入が規制される。
【0023】
以上のように、本発明では、パイプ12のシール部材収容部12cを弁体1の弁座としても機能させることで、配管の接続構造(ジョイント部)を兼ねた逆止弁を構成し、簡単な構成で、配管の部品点数の削減を実現した。
【0024】
尚、上記実施の形態においては、パイプ12のシール部材収容部12cを弁体1の4本の突出片1cが摺動したが、突出片1cの数は4つに限定されず、複数であれば同様の機能を発揮することができる。
【0025】
また、シール部材収容部12cを摺動させるのは上記突出片1cに限らず、パッキン2がシール部材収容部12cから離間したときに、パイプ12と接続部13の内部を連通させる摺動部材であれば足りる。
【0026】
さらに、弁体1の溝部1bにパッキン2を設けてシール部材収容部12cと当接させることでパイプ12と接続部13の内部を連通不能としたが、弁体1にパッキン2を設けなくとも、シール部材収容部12c側にシール部材を設けたり、シール部材を設けずに、弁体1とシール部材収容部12cとの間で直接パイプ12と接続部13の内部を連通不能に構成することもできる。
【0027】
また、上記パイプ12の端部を曲折加工してシール部材収容部12cや鍔部12dを形成したが、これらを切削加工により形成した場合でも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 弁体
1a 円板状部(受圧部)
1b 溝部
1c 突出片
1d 爪部
2 パッキン
10 逆止弁
11 六角ナット
11a 雌ねじ部
11b 開口部
12 パイプ
12a 管
12b 挿入部
12c シール部材収容部
12d 鍔部
13 接続部
13a 雄ねじ部
13b 内部
14 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径側配管の端部と小径側配管の端部とを互いに重ね合わせて接続する接続部において、該小径側配管に設けられ、該2本の配管の間をシールするシール部材を装着するとともに、該小径側配管の中心部に向かって内周面全周にわたって突出するシール部材収容部と、
該シール部材収容部と協働して、前記大径側配管と小径側配管との間の流体の流れを制御する弁体とを備えた逆止弁であって、
該弁体は、
前記大径側配管と小径側配管の内部を互いに連通可能としながら、前記シール部材収容部の突出部に沿って摺動する摺動部と、
該摺動部の一端に設けられ、前記シール部材収容部に当接したときに、前記大径側配管と小径側配管の内部とを連通不能とする閉塞部と、
前記摺動部の他端に設けられ、前記シール部材収容部に当接したときに、前記閉塞部を前記シール部材収容部から離間させ、前記摺動部を介して前記大径側配管と小径側配管の内部を互いに連通可能とするストッパ部とを備えることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記弁体は、流体圧力を受ける受圧部と、該受圧部に隣接する溝部と、該溝部から前記受圧部とは反対側に延設された複数の突出片と、該突出片の各々の先端に外側に屈曲した爪部とを備え、前記溝部に第2のシール部材が収容され、
該第2のシール部材と前記受圧部とで前記閉塞部を、前記複数の突出片で前記摺動部を、前記爪部で前記ストッパ部を各々構成することを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77894(P2012−77894A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226209(P2010−226209)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】