説明

逆流防止装置

【課題】従来の装置に比して圧力損失が大幅に低減され、且つ通水時においても中間室の逃がし弁を確実に閉めておくことのできる減圧式逆流防止装置を提供する。
【解決手段】第1逆止弁において、支持部材の外周45の円弧部46とケーシングの第2拡径部12との間に形成される流路面積の狭い狭窄流路部68(中間流路の第1の部分)と支持部材内で弁体頭部背面に画成される背圧室39を、弁体外周と大径部内周との間の隙間66と弁体頭部背面に形成された溝27とで構成される連通路67で連通する。これにより狭窄流路部を流れる水の低い静圧が背圧室に導かれ、通水時に大きな差圧で弁体を移動し、従来より弁の開度を大きくして、圧力損失を低減できる。一方中間室において、中間室内に剛性ある隔壁を用いて圧力室130を画成し、その高圧側131を第1逆心弁の上流側に、低圧室132を狭窄流路部に連通する。これにより上流側と内部流路106間の差圧より大きな力を弁体136に作用させ、逃がし弁135を確実に閉じておくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は逆流防止装置に関し、さらに詳細に言えば、上流側と下流側に逆止弁を設け、両逆止弁に間に設けられる中間室に逃がし弁を設けた逆流防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から水道配管などに使用する逆流防止装置として、例えば特開平11−153300号に開示されているような、上流側と下流側との逆止弁を設け、これら両逆止弁の間に形成される中間室に逃がし弁を設けた所謂減圧式逆流防止装置が提供されている。この種の逆流防止装置では、通常逃がし弁の弁体には弁を開く方向にバネが作用しており、弁体本体から延びている弁軸をダイアフラムに取付け、そのダイアフラムの両側に一次側と中間室の水圧がそれぞれ作用するようになっており、その差圧は弁を閉じる方向に作用している。この差圧が作用することによって通常逃がし弁は閉じている。そして、例えば逆止弁に異常が発生して逆止弁での封止が適正に行われない場合、或いは配管の破裂などによって上流側の圧力が低下した場合など、一次側と中間室との圧力差が所定の値より小さくなった時にこの逃がし弁を開いて中間室から排水して逆流を防止するものである。
【0003】
この逆流防止装置で通常使用される逆止弁は、流れ方向に移動可能な弁体をバネなどの付勢部材で弁座に向けて付勢するタイプのものが使用されている。ところで、この逆流防止装置を配管に設置し、未だ通水していない状態では逃がし弁は開いている。従って、最初に通水を開始した場合に第1逆止弁が開く前に逃がし弁が閉じなければ供給した水が中間室から排出されてしまう。そこで、第1逆止弁に使用するバネとしては相当に強いバネを使用し、最初に通水を開始しても直ちには第1逆止弁そのものは開かず、その間にダイアフラムの高圧側にその上流側の水圧を作用させ、第1逆止弁が開く前に逃がし弁が確実に閉じるようにしている。また前述の通り差圧が設定された値になったときに逃がし弁が開かれるように逃がし弁のバネは設定され、一方第1逆止弁はその逃がし弁のバネに抗して確実に逃がし弁を閉じておくことができる差圧が生じるように第1逆止弁のバネを設定しなければならない。さらに通水時においても上下流の差圧で逃がし弁を閉じておかなければならないので、その分だけの差圧を第1逆止弁において生じさせる必要がある。これら必要とされる条件から、従来の減圧式逆流防止装置では相当の圧力損失が生じている。
【0004】
建物の上層階へ給水するためにブースターポンプが使用されるが、ポンプの上流側及び下流側に接続される管、バルブ、逆流防止装置などによる圧力損失が生じれば、ポンプはその損失分、余計に仕事をしなければならない。特に逆流防止装置の第1の逆止弁においては前述の通り大きな圧力損失が生じており、大きな負担となっている。従って逆流防止での圧力損失を低減すると、ポンプの負荷も大幅に低減でき、消費電力を少なくすることができる。
【0005】
ところで逆流防止装置については規格が設けられ、その中で逃がし弁が開き始めるときの第1逆止弁の上流側と下流側すなわち中間室との圧力差が規定されており、第1逆止弁での圧力損失を低減すると、通水中における一次側と中間室の圧力の差がその規定された圧力差より小さくなり、通水中に逃がし弁が開いてしまうという問題が生じる。
【特許文献1】特開平09−280919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は上記従来の逆流防止装置の問題点に鑑みなされたものであり、従来に比して少なくとも第1逆止弁から中間室の間で生じる圧力損失を低減することにより装置全体としての圧力損失を低減すると共に、中間室での圧力低下が従来に比して小さいにもかかわらず通水中において逃がし弁が開くのを確実に防止できる減圧式逆流防止装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明は、一次側流路と、二次側流路と、前記一次側流路と二次側流路との間に設けられる中間室と、前記一次側流路と中間室の間及び前記中間室と二次側流路との間にそれぞれ設けられた第1逆止弁及び第2逆止弁と、前記中間室に設けられた逃がし弁とを備えた減圧式逆流防止装置において、その第1逆止弁を、内部に流路が形成され、該流路の途中に形成された弁座を備えたケーシングと、前記流路内に配置され、前記流路内の流れ方向に移動して前記弁座に一端側において離着座可能な弁体と、前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、一端側において前記弁体の少なくとも他端側を移動可能に収受し、他端側が閉じられている背圧室と、前記弁体と弁座が当接する位置より下流側において前記流れ方向所望の範囲にわたって形成され、一端側が前記弁体が前記弁座に離着座することにより上流側との連通を開閉され、他端側が常時前記流路の下流側に連通している流路面積の小さい狭窄流路部と、前記狭窄流路部と前記背圧室とを連通する連通路とを備えるように構成し、逃がし弁を、前記中間室のケーシングに形成された、弁座を備えた排出口と、前記弁座に離着座可能な弁体と、該弁体を前記弁座から離れる方向に付勢する付勢部材と、前記第1逆止弁の上流側の水圧と前記狭窄流路部の水圧との差圧を前記付勢手段に抗する方向で前記弁体に作用させる差圧作用手段とを備えるように構成した。
さらに、前記差圧作用手段は、内部が受圧可動部材により高圧室と低圧室とに仕切られた圧力室と、前記受圧可動部材と前記弁体とを連動させる連結部材とを備えている構成とした。
さらに、前記圧力室は、前記中間室の一部を剛性ある隔壁で仕切ることにより形成されている構成とした。
さらに、前記高圧室を前記第1逆止弁の上流側に連通する高圧側連通路と、前記低圧室を前記狭窄流路部に連通する低圧側連通路が設けた。
さらに、前記低圧室は前記背圧室を介して前記狭窄流路部に連通するように構成した。
さらに、前記第1逆止弁は、前記狭窄流路部の下流側端部に連なり、下流側に向かうにつれて次第に流路面積が漸増するディフューザ流路部をさらに備えている。
さらに、前記第1逆止弁は、前記ディフューザ流路部の下流側端部に連なり、流路面積が均一である均一流路部をさらに備えている。
さらに、前記第2逆止弁は、内部に流路が形成され、該流路の途中に形成された弁座を備えたケーシングと、前記流路内に配置され、前記流路内の流れ方向に移動して前記弁座に一端側において離着座可能な弁体と、前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、一端側において前記弁体の少なくとも他端側を移動可能に収受し、他端側が閉じられている背圧室と、前記弁体と弁座が当接する位置より下流側において前記流れ方向所望の範囲にわたって形成され、一端側が前記弁体が前記弁座に離着座することにより上流側との連通を開閉され、他端側が常時前記流路の下流側に連通している流路面積の小さい狭窄流路部と、前記狭窄流路部と前記背圧室とを連通する連通路とを備える構成とした。
【発明の効果】
【0008】
上記の通り、本願発明の減圧式逆流防止装置においては、第1逆止弁に背圧室を設けて弁体の一端側(背後側)を移動可能に収受し、通水時にそこを流れる水の静圧がきわめて低くなる狭窄流路部をその背圧室に連通させ、上流側とその背圧室での水圧の差圧を用いて弁体を移動させるようにしたので、流量等が同じ条件であっても従来例より弁の開度を大きくすることができ、この第1逆止弁すなわち逆流防止装置全体における圧力損失を従来の装置より大幅に低減でき、その給水性能が大幅に改善される。そしてブースターポンプを使用する場合などにはポンプへの負荷を軽減できるので、エネルギー消費量を大幅に軽減できる。
併せて本願発明では、中間室に設けられる逃がし弁の構成において、逃がし弁を閉じておくための力として、上流側の圧力と狭窄流路部の圧力の差圧を用いることとしたので、通水中における第1逆止弁による圧力損失が小さくなってその上下流間の差圧が小さくなってもその影響を受けず、確実に逃がし弁を閉じておくことが可能となった。
そして、第2逆止弁に第1逆止弁と同じ構成を採用することにより、装置全体としての圧力損失をさらに低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願発明の実施の形態に係る減圧式逆流防止装置1A(以下、単に「装置」或いは「逆流防止装置」という。)の全体構成を示す正面図である。装置1Aは概略3つの部分からなり、使用時に上流側から順に位置することとなる第1逆止弁部1、中間室100、第2逆止弁部200で構成されている。この実施の形態では、第1逆止弁部1、中間室100、第2逆止弁部200はそれぞれ別体のケーシングを用いて構成され、それぞれを継ぎ手210,220と連結管211,221を用いて連結した構成となっているが、装置1A全体を単一のケーシングを用いて構成してもよい。
【0010】
次に図2乃至5を参照して第1逆止弁1について説明する。図2及び3は第1逆止弁1が閉じている状態と開いている状態をそれぞれ示す縦断面図であり、図4は第1逆止弁1に使用する弁体22を示す図で、(A)は縦断面図、(B)は右断面図である。また、図5は同じく第1逆止弁に使用する弁体支持部材35を示す図で、(A)は縦断面図、(B)は右断面図である。
【0011】
図2、3において符号2はケーシングであり、該ケーシング2はケーシング本体3と、この本体3に本実施の形態ではネジ結合で取付けられた押え部材4とで構成されている。押さえ部材4は後述する弁体組立て体21をケーシング2内部に取り付けるための部材である。ケーシング2は本体3と押さえ部材4とを通じて全体が中空となって貫通孔7が形成されており、その両端には例えば水が順方向に流れる場合の流入口5と流出口6とを備えている。
【0012】
ケーシング2の内部の貫通孔7の形状は以下のようになっている。すなわち、流入口5からケーシング2の軸方向所定の長さ範囲で同じ内径寸法となっている第1の同径部8となっており、それに続いて孔7の内側向きに凸となっている比較的に大きな径の円弧に沿って次第に径が大きくなる第1拡径部9、それに滑らかに続く小さな径の円弧に沿って形成された弁座部10、さらに弁座部10よりは大きく第1拡径部9よりは小さい径で逆方向に凸となる円弧に沿って次第に径が大きくなる第2拡径部11、それに続く第2の同径部12、それに続いて所定の角度のテーパに沿って次第に径が小さくなる縮径部13、それから流出口6までの、第1同径部8と同径の第3の同径部14となっている。
【0013】
次にケーシング2内に取付けられる弁体組立て体21について説明する。この弁体組立て体21は主として、弁体22と、一端側において該弁体22を収受し、弁体22の移動を案内する弁体支持部材35と、弁体22と反対側において弁体支持部材35に取付けられるスペーサ51と、弁体22を付勢する付勢部材としての(圧縮)バネ61により構成される。弁体支持部材35とスペーサ51とは一体化されて弁体支持体21aとなる。
【0014】
弁体22については図4に示される断面図(A)及び右側面図(B)をも参照して説明する。弁体22は図示の通り概略きのこ型をしており、先端面24が断面円弧状で所定の高さの外周部25を備えた頭部23と、頭部23の背面26側中央で背面に対して略直角に立設している軸部28とを備えている。軸部28にはその後端側において軸方向に雌ネジ29が形成されている。また、頭部23の背面26側には軸部28の根元で円周溝30が形成され、また、外周部25から円周溝30まで径方向に延びている溝27が本実施の形態では円周方向180度隔てて2つ形成されている。
【0015】
次に弁体支持部材(以下単位「支持部材」と称す。)35について図5に示される断面図(A)及び右側面図(B)をも参照しながら説明する。支持部材35は大略円筒状の形をした本体部36を備え、軸方向に形成された貫通孔37は、本体部36の一端面42側すなわち図5(A)において左側から順に径の一番大きい大径部38、その隣に形成され中径部39、さらにその隣に形成された径の一番小さい小径部40とからなっている。そして、小径部40の中径部39に近い位置に後述するシール用のOリングを収受する円周溝41が形成されている。一方本体部36の他端面43側には複数の雌ネジ44が小径部40の周囲に所定の間隔で形成されている(図示の例では2個示してある)。符号44aは中径部39の底部39aから他端面43まで通じている貫通孔であり、これについては後述する。
【0016】
支持部材35の本体部36の外周45の形状は、一端面42側において外側に凸となっている円弧に沿って、次第に径が大きくなり、その後僅かに径が小さくなる位置まで延びる、比較的に短い範囲の円弧部46と、円弧部46の端部における接線方向に延びて形成される、他端面43側に向かうに連れて径が次第に小さくなるテーパ部47とで構成されている。そして本体部36の他端面43側において外周45から外方へ延びる同じ長さの4本のリブ48が円周方向等間隔に設けられ、その外側端部は円環部49に繋がっている。
【0017】
再び図2を参照すると、スペーサ51は概略円錐形に似た形をしており、支持部材35の他端面43に対応した形と寸法を有し、組立時に他端面43上に載置される平らな底面52を有し、頂部53は断面円弧状に形成されている。その外周部54は、断面において外向きに凸の大きな曲率半径の円弧に沿って底面52側から頂部53側へ向かうにつれて径が次第に小さくなるように形成されている。底面52には支持部材35の貫通穴に対応した位置にその小径部40の径より少し大きな径を有する窪み55が形成され、外周部54には支持部材35の雌ねじ44に対応した位置に、後述する取付けボルト63が挿通される内径が2段になったボルト取付け孔56が形成されている。図示のように、窪み55と取付け孔56とは形状が部分的に互いに干渉して、内部が互いに通じている。また、符号57は軸方向に貫通して形成され、前述の弁体支持部材35に形成された貫通穴44aに通じる貫通孔である。この貫通孔57には下流側連通管81が接続されている。一方、逆止弁1の弁体組立て体21の上流側には上流側連通管82が接続されている。これら接続管81,82については後述する。
【0018】
ここでこの逆止弁1の組み立てについて説明すると、図2に示すとおり、弁体22はその頭部23の背面26側が支持部材の貫通孔37の大径部38内に収受され、その軸28は小径部40に軸方向移動可能に挿通されている。そして付勢部材としての圧縮バネ61が弁体22の軸部28を囲繞して配置され、その両端が弁体22の円周溝30の底部30aと支持部材35の中径部39の底部39a上に載っており、弁体22を図1において左側すなわち弁座部10へ向けて付勢している。一方、弁体22の軸部28の雌ネジ29にはボルト62が取付けられ、スペーサ51の窪み55内に位置するその頭部62aの径は軸部28が嵌っている小径部40の径より大きいので、弁体22が支持部材35から外れてしまうことはない。なお、弁体22の頭部23の外周部25の直径は支持部材35の大径部38の内径より若干小さく、両者の間に狭い幅の隙間66がある。
【0019】
次いでスペーサ51を取付けネジ63を用いて支持部材36に取付ける。このように組立てられた弁体組立て体21を、ケーシング2の本体3に図示のように挿入し、支持部材35の円環部49をケーシング本体3の端部の内周側に形成された溝15に嵌め、その状態で押さえ部材4を本体3に図示の通りネジ結合で取付ける。符号64と65はそれぞれ、ケーシング本体3と押さえ部材4との結合部と、弁体22の軸28と支持部材36の貫通孔37の小径部40との間を液密にシールするOリングである。
【0020】
図2は前述の通り逆止弁1が閉じた状態で、例えばこの逆止弁1を水道の配管に設置した場合に、下流側の栓を閉めるなどして通水が止められた状態であり、弁体22がバネ61によって付勢され、先端面24の弁座当接部24aにおいて弁座10に着座している。
【0021】
この状態において、支持部材35の円弧部46とケーシング2の第2拡径部11との間には、上流側と下流側の流路との間の中間流路の第1の部分となる、断面積すなわち流路面積の狭い環状の狭窄流路部68が画成されている。そしてそれに繋がる形で、支持部材22のテーパ部47とケーシング2の第2同径部とによって中間流路の第2の部分となる、次第に流路面積が増加するディフューザ流路部69が形成され、その下流側端部(支持部材22の右側端部に対応する位置)での流路面積は流出口6での流路面積と実質的に同じになっている。そしてスペーサ51の外周部54とケーシング2の縮径部13とにより画成される中間流路の第3の部分となる均一流路部70は、その流路面積を流出口6での面積と等しく維持したまま第3同径部へ繋がり、流出口6に通じている。そして、前述の通り弁体22の頭部外周部25と支持部材35の大径部38の内周との間には隙間66があり、弁体頭部23の背面26には溝27が形成されているので、これらにより構成される連通路67を通じて大径部38と中径部39とで構成される空間すなわち背圧室50は狭窄流路部68へと通じており、この背圧室39には流出口6すなわち上流側の水の水圧が作用し、その水圧は弁体頭部23の背面26に作用している。
【0022】
図3は下流側の栓が開かれて水が流れている通水状態での断面図である。すなわち、図1の状態において下流側の栓が開かれると、下流側の水圧が低下し、それに伴って背圧室50内の水圧も低下し、弁体22の背面26に作用する圧力が低下するので弁体22はバネ61の力に抗して図中右側へ移動して弁座10から離れ、弁1は開くこととなる。
【0023】
このように弁体22が弁座10から離れると水は弁体22と弁座10との間を通って下流側へ流れることとなる。この場合、流路の各部の断面積の違いから、前述の狭窄流路部68での流速は他の部分での流速に比してきわめて大きい。従って、この部分での水の静圧は他の部分に比してきわめて低いものとなる。この低い静圧が前述の連通路67を介して背圧室50に作用することとなるので、弁体22の先端面24と背面26とにそれぞれ作用する水圧の差圧は従来の下流側の水圧が弁体の背面に作用していた場合に比してきわめて大きくなる。従って、上流側の元圧、下流側の栓の開度、使用するバネなどが同じ条件でも、従来の構成の場合に比して弁体22の開度が大きくなり、ここでの圧力損失が大幅に低下する。
【0024】
水の流れはこの狭窄流路部68を通過すると、ディフューザ流路部69に入る。このディフューザ流路部69ではその流路面積が前述の通り下流側に向かうにつれて漸増するので、静圧が次第に回復する。次いで水は均一流路部70に入り、この部分では流路面積が均一であり、その形状が滑らかに収束する形状となっているので、ディフューザ流路部69で回復した静圧はほとんどそのまま維持されたままで流出口6に達することとなる。
【0025】
下流側の栓の開度に応じて流量は定まり、従って狭窄流路部68を通過するときの流速も異なる。従って背圧室50に作用する静圧は流量に応じて変化し、一般的には流量の多いほどその静圧は低下して弁体22に作用する差圧が大きくなるところから、弁体22の開度は増加する。ある量以上の流量の場合弁体22の背面26が支持部材35の大径部38の底面に当接し、それ以上の移動を制限され、弁の開度は100パーセントとなるが、流量が小さい場合には100パーセントとならない場合も有る。しかし何れの場合においても弁体22に両側から作用する水圧の差は従来の構成の場合に比して大きくなり、弁体22の開度は大きくなり、圧力損失は小さくなる。なお、弁体22の軸部28の端部はスペーサ51の窪み55に臨んでいるので下流側の水圧が作用しているが、その受圧面積は弁体頭部23の背面26に比してはるかに小さいので、その影響は少ない。
【0026】
下流側の栓が閉じられると弁体22の背面に作用する背圧は小さくなり、弁体22はバネ61の力によって弁座部10へ向けて付勢され、着座する。このとき背圧室50に作用する静圧は再度下流側の水圧となる。なお、弁体22の開度が100パーセントの場合、弁体22の背面は背圧室50の底部すなわち中径部39の底部39aに当接するが、前述の通り弁体22の背面には溝27が設けられているので、背圧室50はこの状態でも狭窄流路部68に連通しているので、弁体22の復帰動作には支障がない。また、弁体22の軸部28の先端はスペーサ51の窪み55に臨んでいるが、この窪み55は閉じられてはおらず、前述の通り取付け孔56を介して下流側に通じているので、この点でも弁体22の移動には支障が生じない。
【0027】
支持部材35の外周とスペーサ51の外周とはその径の変化が滑らかであり、両部材の接合部においても滑らかに繋がっている。そしてスペーサ51は略三角錐の形となってその頂部53が下流側流路すなわちケーシング2の第3同径部14の中心に位置するようになっているので、支持部材35とスペーサ51の周囲を流れる流れはきわめて滑らかで、乱流や剥離が生じたりすることが防止され、これによっても圧力損失が低減される。さらに、図3において分かるとおり、弁体22が全開状態のとき、弁体22の先端面22は支持部材35の円弧部49と隙間66を間にしてほぼ同じ円弧上で連なるような形状になっており、水の流れはスムーズで、この点でも圧力損失が低減される。
【0028】
上記実施の形態では、狭窄流路部68と背圧室50とを連通する連通路67は、弁体22と支持部材35の大径部38の内周との間の隙間66と弁体22の背面26に形成された溝27とで構成したが、この連通路は例えば弁体22の頭部23を貫く孔あるいは支持部材35を貫く孔として構成することも可能である。
【0029】
次に図6を用いて中間室100について説明する。この中間室100が従来の中間室の構成と大きく異なる点は、従来の中間室では第1逆止弁の上流側と下流側での圧力差を利用して逃がし弁を制御していたが、本実施の形態では上流側と前述の中間流路の第1の部分となる狭窄流路での圧力差を利用する点である。以下詳細に説明する。
【0030】
符号101はケーシングで、本体102とキャップ125とで構成されている。本体102は、それぞれ第1逆止弁1と第2逆止弁200に通じる流入口104と流出口105とを供えた内部流路106が形成されている。本体102の下側の部分は図示の通り横断面円形の大径部107と小径部108との2段に形成されており、小径部108の底部109の中央には排出口110が設けられている。そして小径部108の底部109の内面側には、排出口110と同心の開口112を備えた弁座部材111が載置されている。弁座部材113の上端には弁座部113が形成されている。符号114はシール用のOリングである。
【0031】
本体102の上側の部分には、横断面円形に形成され所定の高さを備えて隔壁装着部115が設けられ、ここに剛性のある隔壁部材118が取付けられている。隔壁部材118は平らな底部119とその外周部から立ち上がる周壁部120とを備えている。隔壁部材118はその周壁部120の上端に形成された雄ねじ120aが隔壁装着部115の上端に形成された雌ねじ115aと螺合することにより本体102に取付けられる。このとき、隔壁部材118の底部119は内部流路106と隔壁装着部115との間の幅の狭い内方フランジ116上に載置し、隔壁部材118の周壁120の上端部と隔壁装着部115の上端部とは略面一になっている。符号121はシール用のOリングである。
【0032】
キャップ125は外向きに大きな円弧で凸になっている本体部126と、その中央部で上に向かって延びる短い円筒部127とを備え、本体部126の外周部128において隔壁装着部115の上端部115b上に、ボルト(図示せず)などの適宜手段で取付けられている。隔壁部材118とキャップ125とにより内部に圧力室130が画成され、この圧力室130は、外周部分において隔壁装着部115とキャップ125とにより挟持、固定されている弾性材料製のダイアフラム133により上側の高圧室131と下側の低圧室32とに仕切られている。
【0033】
符号136は前述の弁座部材111、ダイアフラム133などと逃がし弁135を構成する弁体である。弁体136には弁軸137の下側部分が挿通され、その下端に取付けられるボルト139と座金140とで、弾性材料製の円形板状の弁座当接部材138を弁体136の下面に形成された凹所に取付けている。弁軸137の上端側は隔壁部材118の底部119の孔を通って圧力室130内へ伸びており、その上端おいてダイアフラム133に取付けられている。すなわち、弁軸137の上端は図示の通りヘッド部材141にネジで結合され、ヘッド部材141のフランジ143と弁軸137の鍔部137a上に載置された受け板144とでダイアフラム133の中央部を挟持し、弁軸137とダイアフラム133とは一体化されている。ヘッド部材141のヘッド部142はキャップ125の円筒部127に収受され、軸方向移動を案内されている。符号129はキャップ125の円筒部127の頭部に形成された通気孔、符号145と146は何れもシール用のOリングである。また、符号147は弁体136と弁座部材111との間に設けられた付勢部材としての圧縮バネで、弁体136を常時上方へ向けて、すなわち逃がし弁135を開く方向へ向けて付勢している。
【0034】
ここで前述した上流側連通管82と下流側連通管81とが、図示の通り高圧室131と低圧室132とにそれぞれ接続されている。これより、高圧室131は第1逆止弁1の上流側に接続され、低圧室132は中間流路の第1の部分である狭窄流路部68に接続されることとなる。
【0035】
上記のように構成された中間室100での逃がし弁135は通常は以下のように閉じられている。すなわち、通水停止時には第1逆止弁1の狭窄流路部68は水が静止した状態で中間室100の内部流路に通じており、低圧室132にはその部分の水圧が作用する。そして高圧室131には第1逆止弁1の上流側の水圧が作用している。通常はその差圧によってバネ147に抗して逃がし弁135を閉じているが、前述の通り逆止弁のシール不良の発生などにより従来の中間室に相当する内部流路106内の水圧が上昇し、高圧室131と低圧室132との圧力差が小さくなり、その差圧が設定された値になってそれにバネ147の力が打ち勝つと逃がし弁135が開くようになっている。逃がし弁135のバネ147はその設定された差圧に合わせて設計される。そして、通水停止時にそのバネ147の力に抗して逃がし弁135を閉じておくことのできる圧力差が逆止弁1の上流側と内部流路106とに生じるように第1逆止弁1のバネ61が設計される。
【0036】
ところで通水時においては前述の通り本願発明での第1逆止弁では下流側において圧力低下が従来例に比して少なくなるようになっている。すなわち第1逆止弁1の上流側と下流側とにおける差圧が従来例に比して小さくなる。従って中間室の構成を従来と同じとして、ダイアフラム143の低圧側に逆止弁143の下流側の水圧すなわち内部流路106そのものの中に生じる水圧が作用するようにすると、上流側との十分な差圧が得られず、逃がし弁135が開いてしまう。しかし、本願発明では、低圧室132を狭窄流路部68に接続した。通水時には前述の通り狭窄流路部68の静圧は大幅に低下し、従って上流側との差圧が十分に大きくなり、逃がし弁135を閉じておくことができる。このようにして本願発明に係る逆流防止装置では、圧力損失を大幅に低減すると共に、通水時に逃がし弁を確実に閉じておくことができる。
【0037】
次に中間室100の下流側に設置される第2逆止弁200について図7を参照して説明する。本実施の形態では、この第2逆止弁としては逆止弁としての基本構成が第1逆止弁1と同じ構成のものが使用され、その動作も同様であるので、主要な部材に同じ参照番号に「a」を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0038】
符号2aはケーシング、3aはケーシング本体、4aは押さえ部材、21aは弁体組立て体、22aは弁体、35aは弁体支持部材、51aはスペーサ、50aは背圧室、61aはバネ、67aは連通路である。そして中間流路の第1の部分である狭窄流路68aは連通路67aを介して背圧室50aに連通している。ディフューザ流路部69a、均一流路部70aも同様に設けられている。なお、バネ61aは第1逆止弁のバネ61に比して弱いバネが使用されている。その理由は、第2逆止弁200は第1逆止弁1のように差圧を発生させる必要はなく、逆流防止機能のみが要求されるからである。その為に弱いバネを使用して、通水時には小さな力の作用でも弁の開度が大きくなるようにしているのである。さらに本実施の形態では、通水時には第1逆止弁1と同じように狭窄流路部68aに生じる小さな静圧が背圧室50aに作用するので、僅かな流量でも弁の開度は全開になり、この第2逆止弁200での圧力損失はほとんど生じない。なお、図からも明らかな通り、第1逆止弁1に関連して設けられていた下流側連通路81、上流側連通路82の相当する連通路は設けられておらず、また、弁体支持部材35a、スペーサ51aには第1逆止弁1での貫通孔44a、57に相当する貫通孔は設けられていない。なお、本実施の形態では第2逆止弁として上記構成のものと使用したが、従来例においても第2逆止弁においては差圧を生じさせる必要がないため比較的に弱いバネが使用されており、本実施の形態で使用した第2逆止弁200に代えて従来使用されていたタイプの第2逆止弁の塩生も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る減圧式逆流防止装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1の装置に使用する第1逆止弁の拡大縦断面図で、通水停止時を示す。
【図3】図1の装置に使用する第1逆止弁の拡大縦断面図で、通水時を示す。
【図4】第1逆止弁に使用する弁体の図で、(A)は拡大縦断面図、(B)は右側面図である。
【図5】第1逆止弁に使用する弁体支持部材の図で、(A)は拡大縦断面図、(B)は右側面図である。
【図6】図1の装置に使用する中間室の拡大縦断面図である。
【図7】図1の装置に使用する第2逆止弁の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1A:減圧式逆流防止装置 1:第1逆止弁 2:ケーシング 10:弁座 22:弁体 35:弁体支持部材 51:スペーサ 67:連通路 68:狭窄流路部 69:ディフューザ流路部 70:均一流路部 81:下流側連通路 82:上流側連通路 100:中間室 106:内部流路 110:排水口 118:隔壁部材 130:圧力室 131:高圧室 132:低圧室 136:弁体 200:第2逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路と、二次側流路と、前記一次側流路と二次側流路との間に設けられる中間室と、前記一次側流路と中間室の間及び前記中間室と二次側流路との間にそれぞれ設けられた第1逆止弁及び第2逆止弁と、前記中間室に設けられた逃がし弁とを備えた減圧式逆流防止装置において、
前記第1逆止弁は、内部に流路が形成され、該流路の途中に形成された弁座を備えたケーシングと、前記流路内に配置され、前記流路内の流れ方向に移動して前記弁座に一端側において離着座可能な弁体と、前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、一端側において前記弁体の少なくとも他端側を移動可能に収受し、他端側が閉じられている背圧室と、前記弁体と弁座が当接する位置より下流側において前記流れ方向所望の範囲にわたって形成され、一端側が前記弁体が前記弁座に離着座することにより上流側との連通を開閉され、他端側が常時前記流路の下流側に連通している流路面積の小さい狭窄流路部と、前記狭窄流路部と前記背圧室とを連通する連通路とを備え、
前記逃がし弁は、前記中間室のケーシングに形成された、弁座を備えた排出口と、前記弁座に離着座可能な弁体と、該弁体を前記弁座から離れる方向に付勢する付勢部材と、前記第1逆止弁の上流側の水圧と前記狭窄流路部の水圧との差圧を前記付勢手段に抗する方向で前記弁体に作用させる差圧作用手段とを備えることを特徴とする、減圧式逆流防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の減圧式逆流防止装置において、前記差圧作用手段は、内部が受圧可動部材により高圧室と低圧室とに仕切られた圧力室と、前記受圧可動部材と前記弁体とを連動させる連結部材とを備えていることを特徴とする、減圧式逆流防止装置。
【請求項3】
請求項2記載の減圧式逆流防止装置において、前記圧力室は、前記中間室の一部を剛性ある隔壁で仕切ることにより形成されていることを特徴とする、減圧式逆流防止装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の減圧式逆流防止装置において、前記高圧室を前記第1逆止弁の上流側に連通する高圧側連通路と、前記低圧室を前記狭窄流路部に連通する低圧側連通路が設けられていることを特徴とする、減圧式逆流防止装置。
【請求項5】
請求項4記載の減圧式逆流防止装置において、前記低圧室は前記背圧室を介して前記狭窄流路部に連通していることを特徴とする、減圧式逆流防止装置。

【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の減圧式逆流防止装置において、前記第1逆止弁は、前記狭窄流路部の下流側端部に連なり、下流側に向かうにつれて次第に流路面積が漸増するディフューザ流路部をさらに備えていることを特徴とする、減圧式逆流防止装置。
【請求項7】
請求項6記載の減圧式逆流防止装置において、前記第1逆止弁は、前記ディフューザ流路部の下流側端部に連なり、流路面積が均一である均一流路部をさらに備えていることを特徴とする、減圧式逆流防止装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1に記載の減圧式逆流防止装置において、前記第2逆止弁は、内部に流路が形成され、該流路の途中に形成された弁座を備えたケーシングと、前記流路内に配置され、前記流路内の流れ方向に移動して前記弁座に一端側において離着座可能な弁体と、前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、一端側において前記弁体の少なくとも他端側を移動可能に収受し、他端側が閉じられている背圧室と、前記弁体と弁座が当接する位置より下流側において前記流れ方向所望の範囲にわたって形成され、一端側が前記弁体が前記弁座に離着座することにより上流側との連通を開閉され、他端側が常時前記流路の下流側に連通している流路面積の小さい狭窄流路部と、前記狭窄流路部と前記背圧室とを連通する連通路とを備えていることを特徴とする、減圧式逆流防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−270643(P2009−270643A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122081(P2008−122081)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(390006736)株式会社日邦バルブ (14)
【Fターム(参考)】