説明

透光性導電性膜及びその製造方法並びに透光性電磁波シールド膜、光学フィルター及びプラズマディスプレーパネル

【課題】 低コストでめっき処理でき、かつめっきムラのないめっき処理方法を提供すること。生産性の高い透光性導電性膜、透光性電磁波シールド膜、および光学フィルターを提供すること。
【解決手段】 透明な支持体上に導電性金属部と可視光透過性部から構成されるメッシュ状の透光性導電性膜においてハロゲン化銀感光材料の露光、現像により導電性を有する金属部を形成し、めっきによりさらに導電性を高める製造方法において現像処理後、定着処理前に乾燥工程を導入し、めっき前の導電性銀メッシュの導電性を高める製造方法。これを用いた透光性電磁波シールド膜、透光性導電性膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均質で高い導電性と優れた透光性を併せ有する透光性導電性膜の製造方法に関する。また、得られた透光性導電性膜を利用した透明性電磁波シールド膜に関する。さらに該電磁波シールド膜や透明電極を装備したCRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などのディスプレイパネル、電子レンジ、電子機器、プリント配線板などにも関する。
また、透光性導電性膜はこれらの画像表示素子のほかに撮像用半導体素子などにも用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電気設備や電子応用設備の利用の増加に伴い、電磁波障害(Electro-Magnetic Interference:EMI)が急増している。EMIは、電子、電気機器の誤動作やノイズ、障害の原因になるほか、これらの装置のオペレーターにも健康障害を与えることも指摘されている。このため、電子・電気機器の電磁波放出の強さを規格又は規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
上記EMIの対策のために電磁波をシールドする方法が種々提案され、用いられているが、CRT、PDPなどに適用する場合には、電磁波シールド能に加えて画面に表示される画像や文字等を視認する必要があるため、透明性も要求される。
【0004】
特に、PDPは、CRT等と比較すると多量の電磁波を発生するため、より強い電磁波シールド能が求められており、CRT用の透光性電磁波シールド材料に必要な表面抵抗値は凡そ300Ω/sq以下であるのに対し、PDP用の透光性電磁波シールド材料では、2.5Ω/sq以下であることが必要で、PDPを用いた民生用プラズマテレビにおいては、1.5Ω/sq以下とすることが求められ、より望ましくは0.1Ω/sq以下という極めて高い導電性が要求されている。
透明性に関しても、CRT用として凡そ70%以上の透過率が要求されているのに対して、PDP用として80%以上の透過率が望まれている。
【0005】
上記の要求を満たすための開口部を有する金属メッシュを利用して電磁波シールド性と透明性とを両立させる材料・方法として、例えば導電性繊維をメッシュにしたシールド材、無電解めっき触媒を印刷法で格子状パターンとして印刷してそのパターンに無電解めっきを行う方法、無電解めっき触媒含有フォトレジストをメッシュ状にパターン形成させてその上に無電解めっきする方法、フォトリソグラフィー法でエッチング加工して金属薄膜のメッシュを形成する方法、など多様な方法がこれまで提案されている。しかしながら、これらの方法は、製造工程が煩雑かつ複雑で生産コストが高価になる、格子模様の交点部等で線幅が不均一になる、モアレが生じる、あるいは透光性と導電性の一方又は両方が不足する、などの問題がある。
【0006】
その改善手段として、銀塩感光材料を用いた導電性金属銀パターンを形成する方法が提案されている。
銀塩感光材料は、カラーネガフィルム、黒白ネガフィルム、映画用フィルム、カラーリバーサルフィルム等の写真フィルム、カラーペーパー、黒白印画紙などの写真用印画紙等として従来から広く用いられているが、この材料を利用すればパターン露光と現像による写真的方法によって簡易なプロセスでパターン状の金金属銀を得ることができ、この金属銀は、感光材料の構成や現像方法次第では導電性を利用することが可能である。1960年代に物理現像核に銀を沈着させる銀塩拡散転写法によって導電性金属銀薄膜パターンを形成する方法が、特許文献1に開示されている。また同様の銀塩拡散転写法を利用して得た光透過性のない均一な銀薄膜がマイクロ波減衰機能を有することが特許文献2に開示されている。この原理をインスタント黒白スライドフィルムに適用して簡便に露光・現像を行って導電性パターンを形成する方法が、非特許文献1及び特許文献3に記載されている。また、銀塩拡散転写法の原理によって、プラズマディスプレイ用の表示電極に利用可能な導電性の銀膜を形成する方法が特許文献4に記載されている。
【0007】
しかしながら、このような方法で得た導電性金属銀膜は、画像表示や画像形成素子用としては透光性が不十分であり、またCRTやPDPなどのディスプレイの画像表示面から放射される電磁波を、画像表示を妨害せずに、遮蔽する能力も不十分であった。
また、高い導電性を得ることも困難で、導電性を高めるために厚い銀膜を得ようとすると、透明性が損なわれる問題があった。したがって、上記銀塩拡散転写法をそのまま用いても、電子ディスプレイ機器の画像表示面からの電磁波をシールドルドするのに好適な、光透過性と導電性の優れた透光性電磁波シールド材料は得ることができなかった。
また、銀塩拡散転写法を用いないで、通常の市販のネガフィルムとネガ型現像処理を利用したのでは、導電性と透明性を両立させる点において一層不利であり、CRTやPDPの透光性電磁波シールド材料として利用するには不十分なものであった。
【0008】
このようなことから、特許文献5には、銀塩感光材料を用いて現像によりパターン形成した後、現像銀にさらにめっき又は物理現像処理を加える透光性導電性電磁波シールド材料の製造方法が提案されるに至った。しかしながら、この方法は、細線パターンを精密に形成できて高い透明性膜を得られるという利点がある反面、めっき処理及び/又は物理現像処理を加えることが生産性の低下を招来し、コストも高くなるなどの問題がある。さらにめっき処理に伴うめっきむらや物理現像処理に伴う金属沈積むらを低減するには、めっき前の電導性を高くすることが必要となり、高精細性を犠牲にして現像条件を強化する必要が生じる。
このようなジレンマが解決されないので、依然として透明性と導電性が両立できて、しかも容易に大量製造することもできる手段が引き続いて求められている。
【0009】
【特許文献1】特公昭42−23746号公報
【特許文献2】特公昭43−12862号公報
【特許文献3】国際公開WO 01/51276号公報
【特許文献4】特開2000−149773号公報
【特許文献5】特開2004−221564号公報
【非特許文献1】アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、2000年発刊、第72巻、645項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように特許文献5に開示された銀塩感光材料に物理現像及び/またはめっきする方法は、比較的良好な導電性が得られるが、物理現像を行う場合には液の安定性が十分でなく、めっきを行う場合には、めっきムラが生じ易く、かついずれの場合も工程が煩雑となり製造コストが増大するという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は導電性と透光性がともに優れた透光性導電性膜の製造方法を提供することであり、くわえてそれを低コストで製造できる製造方法を提供することであり、さらには、めっき処理を伴ってもめっきムラが生じない透光性導電性膜の製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、PDPをはじめとするディスプレー装置などに装備させる高透光性と高導電性を具備する電磁波シールド膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、高いEMIシールド性と高い透明性とを有する透光性導電膜を安価に得る観点からメッシュ状現像銀の導電性の向上手段を重点的に鋭意検討した結果、定着前に乾燥を行うと導電性が向上する現象を見出し、これに基づいて以下の透光性導電性膜とその製造方法の技術を確立するに至り、さらにこの技術を透光性電磁波シールド膜、さらにはシールド膜のディスプレーパネルなどへ適用して、発明の目的を効果的に達成する下記の本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)支持体上にハロゲン化銀乳剤層を含む少なくとも1層の親水性コロイド層を有する黒白ハロゲン化銀写真感光材料に露光と現像処理を施して露光部に導電性金属銀部を形成させたのち定着処理を施して、導電性金属銀部と透光性非露光部から構成される透光性導電性膜を製造する方法において、現像処理と定着処理の間に乾燥を行うことを特徴とする透光性導電性膜の製造方法。
(2)前記定着前の乾燥が支持体上の現像処理済み乳剤層の含水率が90%以下になるように行われる乾燥であることを特徴とする上記(1)に記載の透光性導電性膜の製造方法。
(3)前記定着前の乾燥が10℃以上90℃以下の温度で行われることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の透光性導電性膜の製造方法。
(4)前記定着前の乾燥が現像処理済み乳剤層の水切り及び/または加熱を伴ってなされることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透光性導電性膜の製造方法。
(5)前記乾燥と定着の間において、又は乾燥と定着の後に、さらに透光性導電性膜に電解めっきを行うことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の透光性導電性膜の製造方法。
(6)電解めっきが電解銅めっきであることを特徴とする上記(5)に記載の透光性導電性膜の製造方法。
(7)上記乾燥と定着の間において、又は乾燥と定着の後に、さらに透光性導電性膜に無電解めっきを行うことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の透光性導電性膜の製造方法。
(8)無電解めっきが無電解銅めっきであることを特徴とする上記(7)に記載の透光性導電性膜の製造方法。
【0013】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかの製造方法で得られたことを特徴とする透光性導電性膜。(10)上記(9)に記載の透光性導電性膜を含んでなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜。
(11)上記(9)に記載の透光性導電性膜を含んでなることを特徴とする光学フィルター。
(12)上記(10)に記載の透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【発明の効果】
【0014】
現像処理と定着処理の間に単に乾燥を行うだけの本発明の製造方法は、きわめて簡易であり、しかも導電性を高めることが可能となる。したがって、高い導電性と高い透明性を同時に有し、且つ、めっきムラのない透光性導電膜を提供することができる。また、本発明の製造方法は、めっき処理を伴わなければ極めて低コストであり、めっき処理を伴う態様でも低コストであり、いずれの態様でも透光性導電膜をロール状で安価・大量に製造することが可能な透光性導電膜の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の透光性導電性膜、透光性電磁波シールド膜及びそれらの製造方法について、詳細に説明する。
本発明の透光性導電性膜の製造法は、支持体上にハロゲン化銀乳剤層を含む少なくとも1層の親水性コロイド層を有する黒白ハロゲン化銀写真感光材料に露光と現像処理を施して露光部に導電性金属銀部を形成させたのち定着処理を施して、導電性金属銀部と透光性非露光部から構成される透光性導電性膜を製造する方法において、現像処理と定着処理の間に乾燥を行うことを特徴としている。本発明の方法は、現像処理と定着処理の間に単に乾燥を行うだけの簡易さで導電性を高めることが可能となる。本発明の方法では製造の簡易化に徹してめっき処理を省くことが可能であるが、めっき処理を行う場合でもめっき時間を顕著に短縮させることが可能であり、まためっきを行わなくても導電性が向上したためかめっきむらも顕著に低減する。
本発明の更なる利点は、上記の工程にさらに電解又は無電解めっき工程を付加する態様であり、上記の乾燥工程があることによってめっきにともなって通常発生するめっきむらが減少して優れた導電性膜が得られることである。
本発明の透光性導電性膜の製造方法の詳細は、以下に各要素ごとに説明する。
【0016】
[感光材料]
<支持体>
本発明の製造方法に用いられる感光材料の支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、およびガラス板などを用いることができる。
上記プラスチックフィルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明においては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさおよび価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム及び/又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
【0017】
ディスプレイ用の電磁波シールド材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルムまたはプラスチック板の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフィルムおよびプラスチック板として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
本発明におけるプラスチックフィルムおよびプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
【0018】
本発明における支持体としてガラス板を用いる場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用電磁波シールド膜の用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、かつ端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0019】
<保護層>
用いられる感光材料は、後述する乳剤層上に保護層を設けても良い。本発明において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層に形成される。上記保護層はめっき処理する上では設けない方が好ましく、設けるとしても薄い方が好ましい。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法の形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0020】
<乳剤層>
本発明の製造方法に用いられる感光材料は、支持体上に、光センサーとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有層)を有するのが好ましい。本発明における乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダー、溶媒等を含有することができる。
<染料>
感光材料には、少なくとも乳剤層に染料が含まれてもよい。染料は、フィルター染料として若しくはイラジエーション防止その他種々の目的で乳剤層に含まれる。上記染料としては、固体分散染料を含有してよい。本発明に好ましく用いられる染料としては、特開平9−179243号公報記載の一般式(FA)、一般式(FA1)、一般式(FA2)、一般式(FA3)で表される染料が挙げられ、具体的には同公報記載の化合物F1〜F34が好ましい。また、特開平7−152112号公報記載の(II−2)〜(II−24)、特開平7−152112号公報記載の(III−5)〜(III−18)、特開平7−152112号公報記載の(IV−2)〜(IV−7)等も好ましく用いられる。
【0021】
このほか、本発明に使用することができる染料としては、現像または定着の処理時に脱色させる固体微粒子分散状の染料としては、特開平3−138640号公報記載のシアニン染料、ピリリウム染料およびアミニウム染料が挙げられる。また、処理時に脱色しない染料として、特開平9−96891号公報記載のカルボキシル基を有するシアニン染料、特開平8−245902号公報記載の酸性基を含まないシアニン染料および同8−333519号公報記載のレーキ型シアニン染料、特開平1−266536号公報記載のシアニン染料、特開平3−136038号公報記載のホロポーラ型シアニン染料、特開昭62−299959号公報記載のピリリウム染料、特開平7−253639号公報記載のポリマー型シアニン染料、特開平2−282244号公報記載のオキソノール染料の固体微粒子分散物、特開昭63−131135号公報記載の光散乱粒子、特開平9−5913号公報記載のYb3+化合物および特開平7−113072号公報記載のITO粉末等が挙げられる。また、特開平9−179243号公報記載の一般式(F1)、一般式(F2)で表される染料で、具体的には同公報記載の化合物F35〜F112も用いることができる。
【0022】
また、上記染料としては、水溶性染料を含有することができる。このような水溶性染料としては、オキソノール染料、ベンジリデン染料、メロシアニン染料、シアニン染料およびアゾ染料が挙げられる。中でも本発明においては、オキソノール染料、ヘミオキソノール染料およびベンジリデン染料が有用である。本発明に用い得る水溶性染料の具体例としては、英国特許584,609号明細書、同1,177,429号明細書、特開昭48−85130号公報、同49−99620号公報、同49−114420号公報、同52−20822号公報、同59−154439号公報、同59−208548号公報、米国特許2,274,782号明細書、同2,533,472号明細書、同2,956,879号明細書、同3,148,187号明細書、同3,177,078号明細書、同3,247,127号明細書、同3,540,887号明細書、同3,575,704号明細書、同3,653,905号明細書、同3,718,427号明細書に記載されたものが挙げられる。
【0023】
上記乳剤層中における染料の含有量は、イラジエーション防止などの効果と、添加量増加による感度低下の観点から、全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
【0024】
<銀塩>
本発明で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀などの無機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0025】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本発明では、光センサーとして機能させるためにハロゲン化銀を使用することが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0026】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0027】
尚、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0028】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜5000nm(5μm)であることが好ましい。
尚、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0029】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができ、立方体、14面体が好ましい。
ハロゲン化銀粒子は内部と表層が均一な相からなっていても異なっていてもよい。また粒子内部或いは表面にハロゲン組成の異なる局在層を有していてもよい。
【0030】
本発明に用いられる乳剤層用塗布液であるハロゲン化銀乳剤は、P. Glafkides 著 Chimie etPhysique Photographique (Paul Montel 社刊、1967年)、G. F. Dufin 著Photographic Emulsion Chemistry (The Forcal Press刊、1966年)、V. L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion (The ForcalPress 刊、1964年)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0031】
すなわち、上記ハロゲン化銀乳剤の調製方法としては、酸性法、中性法等のいずれでもよく、又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩とを反応させる方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせなどのいずれを用いてもよい。
また、銀粒子の形成方法としては、粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。さらに、同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
またアンモニア、チオエーテル、四置換チオ尿素等のいわゆるハロゲン化銀溶剤を使用して粒子形成させることも好ましい。係る方法としてより好ましくは四置換チオ尿素化合物であり、特開昭53−82408号、同55−77737号各公報に記載されている。
好ましいチオ尿素化合物はテトラメチルチオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンチオンが挙げられる。ハロゲン化銀溶剤の添加量は用いる化合物の種類および目的とする粒子サイズ、ハロゲン組成により異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり10-5〜10-2モルが好ましい。
【0032】
上記コントロールド・ダブルジェット法およびハロゲン化銀溶剤を使用した粒子形成方法では、結晶型が規則的で粒子サイズ分布の狭いハロゲン化銀乳剤を作るのが容易であり、本発明に好ましく用いることができる。
また、粒子サイズを均一にするためには、英国特許第1,535,016号明細書、特公昭48−36890号広報、同52−16364号公報に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリの添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方法や、英国特許第4,242,445号明細書、特開昭55−158124号公報に記載されているように水溶液の濃度を変化させる方法を用いて、臨界飽和度を越えない範囲において早く銀を成長させることが好ましい。本発明における乳剤層の形成に用いられるハロゲン化銀乳剤は単分散乳剤が好ましく、{(粒子サイズの標準偏差)/(平均粒子サイズ)}×100で表される変動係数が20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、粒子サイズの異なる複数種類のハロゲン化銀乳剤を混合してもよい。
【0034】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラストおよび低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物、レニウム化合物などを含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよく、配位子として例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオンなどや、こうした擬ハロゲン、アンモニアのほか、アミン類(メチルアミン、エチレンジアミン等)、ヘテロ環化合物(イミダゾール、チアゾール、5−メチルチアゾール、メルカプトイミダゾールなど)、尿素、チオ尿素等の、有機分子を挙げることができる。
また、高感度化のためにはK4〔Fe(CN)6〕やK4〔Ru(CN)6〕、K3〔Cr(CN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0035】
上記ロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。水溶性ロジウム化合物としては、例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩、K3Rh2Br9等が挙げられる。
これらのロジウム化合物は、水或いは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、或いはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0036】
上記イリジウム化合物としては、K2IrCl6、K3IrCl6等のヘキサクロロイリジウム錯塩、ヘキサブロモイリジウム錯塩、ヘキサアンミンイリジウム錯塩、ペンタクロロニトロシルイリジウム錯塩等が挙げられる。
上記ルテニウム化合物としては、ヘキサクロロルテニウム、ペンタクロロニトロシルルテニウム、K4〔Ru(CN)6〕等が挙げられる。
上記鉄化合物としては、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、チオシアン酸第一鉄が挙げられる。
【0037】
上記ルテニウム、オスミニウムは特開昭63−2042号公報、特開平1−285941号公報、同2−20852号公報、同2−20855号公報等に記載された水溶性錯塩の形で添加され、特に好ましいものとして、以下の式で示される六配位錯体が挙げられる。
〔ML6〕‐n
(ここで、MはRuまたはOsを表し、nは0、1、2、3または4を表す。)
この場合、対イオンは重要性を持たず、例えば、アンモニウム若しくはアルカリ金属イオンが用いられる。また好ましい配位子としてはハロゲン化物配位子、シアン化物配位子、シアン酸化物配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子等が挙げられる。以下に本発明に用いられる具体的錯体の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
〔RuCl6-3、〔RuCl4(H2O)2-1、〔RuCl5(NO)〕-2、〔RuBr5(NS)〕-2、〔Ru(CO)3Cl3-2、〔Ru(CO)Cl5-2、〔Ru(CO)Br5-2、〔OsCl6-3、〔OsCl5(NO)〕-2、〔Os(NO)(CN)5-2、〔Os(NS)Br5-2、〔Os(CN)6-4、〔Os(O)2(CN)5-4
【0039】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0040】
その他、本発明では、Pd(II)イオンおよび/またはPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。またPd(II)イオンを後熟時に添加するなどの方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、無電解めっきの速度を速め、所望の電磁波シールド材の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解めっき触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
【0041】
本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオンおよび/またはPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
【0042】
本発明では、さらに光センサーとしての感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感の方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感等カルコゲン増感、金増感などの貴金属増感、還元増感等を用いることができる。これらは、単独または組み合わせて用いられる。上記化学増感の方法を組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法などの組み合わせが好ましい。
【0043】
上記硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。上記硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、例えば、チオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で変化し、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-5〜10-3モルである。
【0044】
上記セレン増感に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。すなわち、上記セレン増感は、通常、不安定型および/または非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。上記不安定型セレン化合物としては特公昭44−15748号公報、同43−13489号公報、特開平4−109240号公報、同4−324855号公報等に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4−324855号公報中の一般式(VIII)および(IX)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0045】
上記テルル増感剤に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面または内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成せしめる化合物である。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5−313284号公報に記載の方法で試験することができる。具体的には、米国特許US第1,623,499号明細書、同第3,320,069号明細書、同第3,772,031号明細書、英国特許第235,211号明細書、同第1,121,496号明細書、同第1,295,462号明細書、同第1,396,696号明細書、カナダ特許第800,958号明細書、特開平4−204640号公報、同4−271341号公報、同4−333043号公報、同5−303157号公報、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.)635(1980)、 ibid 1102(1979)、 ibid 645(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.)1,2191(1980)、S.パタイ(S.Patai)編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Selenium and Tellunium Compounds)、Vol 1(1986)、同 Vol 2(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に特開平5−313284号公報中の一般式(II)、(III)、(IV)で示される化合物が好ましい。
【0046】
本発明で用いることのできるセレン増感剤およびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
【0047】
また、上記貴金属増感剤としては、金、白金、パラジウム、イリジウム等が挙げられ、特に金増感が好ましい。金増感に用いられる金増感剤としては、具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、チオグルコース金(I)、チオマンノース金(I)などが挙げられ、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル程度を用いることができる。本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩などを共存させてもよい。
【0048】
また、本発明においては、還元増感を用いることができる。還元増感剤としては第一スズ塩、アミン類、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物などを用いることができる。上記ハロゲン化銀乳剤は、欧州公開特許(EP)293917に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。本発明に用いられる感光材料の作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、1種だけでもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの、感度の異なるもの)の併用であってもよい。中でも高コントラストを得るためには、特開平6−324426号公報に記載されているように、支持体に近いほど高感度な乳剤を塗布することが好ましい。
【0049】
<バインダー>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有層と支持体との密着を補助する目的でバインダーを用いることができる。本発明において上記バインダーとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0050】
乳剤層に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。
【0051】
<溶媒>
本発明の銀塩含有層で用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本発明の銀塩含有層に用いられる溶媒の含有量は、前記銀含有層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であることが好ましく、50〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
【0052】
[露光]
本発明では、支持体上に設けられた銀塩含有層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線などの光線、X線などの放射線等を用いることができる。露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0053】
上記光源としては、例えば、陰極線(CRT)を用いた走査露光を挙げることができる。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じて特定のスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。螢光体のスペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0054】
また本発明では、露光は種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本発明における露光は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザー又は半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。システムをコンパクトで、安価なものにするために、露光は、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を用いて行うことが好ましい。特にコンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザーを用いて行うことが好ましい。
【0055】
レーザー光源としては、具体的には、波長430〜460nmの青色半導体レーザー(2001年3月の第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0056】
銀塩乳剤層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0057】
[現像処理]
乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。以下、本発明に係る現像処理方法について説明する。一般の現像処理工程は白黒写真現像では、現像液、停止液、定着液、水洗液の順に連続的に処理を行うが、本発明においては現像液への浸漬後、定着液への浸漬工程までの間にフィルムの乾燥を行う。この工程により、定着処理終了後の表面抵抗が定常処理した銀メッシュに比べて低い銀メッシュを得ることができる。また現像処理は米国特許US第3025779号明細書、同第3545971号明細書などに記載のローラ搬送型の自動現像機と同様の搬送形式を用いてもよい。本明細書においてはローラ搬送型プロセッサーと言及する。本発明において、このローラ搬送型プロセッサーは現像、乾燥、定着、水洗および乾燥の五工程からなる。この五工程だけに限らず、他の工程(例えば、停止工程、乾燥前の乾燥促進工程など)の追加も可能であるが、少なくともこの五工程を踏襲することが好ましい。また水洗工程の代わりに安定工程を用いても構わない。
【0058】
<乾燥工程>
本発明において乾燥工程は加温および/または水切りを伴うことが好ましい。乾燥は、単純な自然乾燥や室温送風乾燥であってもよいが、加温による乾燥、水切りに続けて行う室温乾燥、水切りと加温乾燥の組み合わせのいずれでも良く限定はないが、水切りと加温乾燥を組み合わせた態様が好ましい。
水切り方法は、ゴムローラーや樹脂ローラを用いたスクイズローラーの圧力により、感材と接触して水を絞り切る方法、空気を吹き付けるエアースクイズなどを用いた風圧による非接触で水を切る方法、いずれも用いることができる。
加温方法は公知のいずれの方法も用いることができ特に限定はないが、温風乾燥や、特開平4-15534、同5-2256、同5-289294に開示されているようなヒートローラー乾燥、高周波乾燥、遠赤外線による乾燥などがあり、複数の方法を併用しても良い。また温度を高くすることや吹きつけノズルの形状を変更し乾燥風を強くすることなどで乾燥を早めることが可能である。更に、特開平3-157650号公報に記載されているように、乾燥風の感光材料への送風角度の調整や、排出風の除去方法によっても乾燥を早めることができる。乾燥温度は約0℃〜約90℃が好ましく、25〜60℃がさらに好ましい。乾燥時間は特開平3-174156に準じて行うことができ、周囲の状態および感光材料の親水性バインダー含有量により、適宜調節される。
本発明の定着前の乾燥工程において、少なくともハロゲン化銀感光層の含水率が、90%以下であることが好ましく、特に50%以下とすることが好ましい。なお、この含水率に特に下限値はないが、一般に5%程度である。本明細書において、含水率は次のように規定した。処理前の感光材料の重量を第1重量とし、現像後乾燥の終了した感光材料の重量を第2重量とする。これら測定重量を用い次の式により、定着直前におけるハロゲン化銀感光層の含水率を求めてこれを百分率で表示する。
含水率=(第2重量−第1重量)/(第1重量―支持体重量)
上記式において、(第2重量−第1重量)で、ハロゲン化銀感光層に含まれる定着前の溶液重量が分かり、(第1重量−支持体重量)で、ハロゲン化銀感光層自体の重量が分かる。
【0059】
<現像液>
現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フィルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72などの現像液、またはそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社製のD85などを用いることができる。本発明では、上記の露光および現像処理を行うことにより露光部に金属銀部、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。
【0060】
本発明の製造方法においては、上記現像液としてジヒドロキシベンゼン系現像主薬を用いることができる。ジヒドロキシベンゼン系現像主薬としてはハイドロキノン、クロロハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノスルホン酸塩などが挙げられるが、特にハイドロキノンが好ましい。上記ジヒドロキシベンゼン系現像主薬と超加成性を示す補助現像主薬としては、1−フェニル−3−ピラゾリドン類やp−アミノフェノール類が挙げられる。本発明の製造方法において用いる現像液としては、ジヒドロキシベンゼン系現像主薬と1−フェニル−3−ピラゾリドン類との組合せ;またはジヒドロキシベンゼン系現像主薬とp−アミノフェノール類との組合せが好ましく用いられる。
【0061】
補助現像主薬として用いられる1−フェニル−3−ピラゾリドンまたはその誘導体と組み合わせられる現像主薬としては、具体的に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンなどがある。
上記p−アミノフェノール系補助現像主薬としては、N−メチル−p−アミノフェノール、p−アミノフェノール、N−(β−ヒドロキシエチル)−p−アミノフェノール、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン等があるが、なかでもN−メチル−p−アミノフェノールが好ましい。ジヒドロキシベンゼン系現像主薬は、通常0.05〜0.8モル/リットルの量で用いられるのが好ましいが、本発明においては、0.23モル/リットル以上で使用するのが特に好ましい。さらに好ましくは、0.23〜0.6モル/リットルの範囲である。またジヒドロキシベンゼン類と1−フェニル−3−ピラゾリドン類若しくはp−アミノフェノール類との組合せを用いる場合には、前者を0.23〜0.6モル/リットル、さらに好ましくは0.23〜0.5モル/リットル、後者を0.06モル/リットル以下、さらに好ましくは0.03モル/リットル〜0.003モル/リットルの量で用いるのが好ましい。
【0062】
本発明においては、現像開始液および現像補充液の双方が、「該液1リットルに0.1モルの水酸化ナトリウムを加えたときのpH上昇が0.5以下」である性質を有することが好ましい。使用する現像開始液ないし現像補充液がこの緩衝能を有することを確かめる方法としては、試験対象の現像開始液ないし現像補充液のpHを10.5に合わせ、ついでこの液1リットルに水酸化ナトリウムを0.1モル添加し、この際の液のpH値を測定し、pH値の上昇が0.5以下であれば上記に規定した性質を有すると判定する。本発明の製造方法では、特に、上記試験を行った時のpH値の上昇が0.4以下である現像開始液および現像補充液を用いることが好ましい。
【0063】
現像開始液および現像補充液に緩衝能を与える方法としては、緩衝剤を使用した方法によることが好ましい。上記緩衝剤としては、炭酸塩、特開昭62−186259号公報に記載のホウ酸、特開昭60−93433号公報に記載の糖類(例えばサッカロース)、オキシム類(例えばアセトオキシム)、フェノール類(例えば5−スルホサリチル酸)、第3リン酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)などを用いることができ、好ましくは炭酸塩、ホウ酸が用いられる。上記緩衝剤(特に炭酸塩)の使用量は、好ましくは、0.25モル/リットル以上であり、0.25〜1.5モル/リットルが特に好ましい。
【0064】
本発明においては、現像開始液のpHが9.0〜11.0であることが好ましく、9.5〜10.7の範囲であることが特に好ましい。上記現像補充液のpHおよび連続処理時の現像タンク内の現像液のpHもこの範囲である。pH設定のために用いるアルカリ剤には通常の水溶性無機アルカリ金属塩(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)を用いることができる。
【0065】
本発明の製造方法において、感光材料1平方メートルを処理する際に、現像液中の現像補充液の含有量は323ミリリットル以下、好ましくは323〜30ミリリットル、特に225〜50ミリリットルである。現像補充液は、現像開始液と同一の組成を有していてもよいし、現像で消費される成分について開始液よりも高い濃度を有していてもよい。
【0066】
本発明で感光材料を現像処理する際の現像液(以下、現像開始液および現像補充液の双方をまとめて単に「現像液」という場合がある)には、通常用いられる添加剤(例えば、保恒剤、キレート剤)を含有することができる。上記保恒剤としては亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩が挙げられる。該亜硫酸塩は、0.20モル/リットル以上用いられることが好ましく、さらに好ましくは0.3モル/リットル以上用いられるが、余りに多量添加すると現像液中の銀汚れの原因になるので、上限は1.2モル/リットルとするのが望ましい。特に好ましくは、0.35〜0.7モル/リットルである。また、ジヒドロキシベンゼン系現像主薬の保恒剤として、亜硫酸塩と併用してアスコルビン酸誘導体を少量使用してもよい。ここでアスコルビン酸誘導体とは、アスコルビン酸、および、その立体異性体であるエリソルビン酸やそのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム塩)などを包含する。上記アスコルビン酸誘導体としては、エリソルビン酸ナトリウムを用いることが素材コストの点で好ましい。上記アスコルビン酸誘導体の添加量はジヒドロキシベンゼン系現像主薬に対して、モル比で0.03〜0.12の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.10の範囲である。上記保恒剤としてアスコルビン酸誘導体を使用する場合には現像液中にホウ素化合物を含まないことが好ましい。
【0067】
上記以外に現像液に用いることのできる添加剤としては、臭化ナトリウム、臭化カリウムの如き現像抑制剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルホルムアミドの如き有機溶剤;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、イミダゾールまたはその誘導体等の現像促進剤や、メルカプト系化合物、インダゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物をカブリ防止剤または黒ポツ(black pepper)防止剤として含んでもよい。上記ベンゾイミダゾール系化合物としては、具体的に、5−ニトロインダゾール、5−p−ニトロベンゾイルアミノインダゾール、1−メチル−5−ニトロインダゾール、6−ニトロインダゾール、3−メチル−5−ニトロインダゾール、5−ニトロベンズイミダゾール、2−イソプロピル−5−ニトロベンズイミダゾール、5−ニトロベンズトリアゾール、4−〔(2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)チオ〕ブタンスルホン酸ナトリウム、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、2−メルカプトベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。これらベンゾイミダゾール系化合物の含有量は、通常、現像液1リットル当り0.01〜10mmolであり、より好ましくは、0.1〜2mmolである。
【0068】
さらに上記現像液中には、各種の有機・無機のキレート剤を併用することができる。上記無機キレート剤としては、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を用いることができる。一方、上記有機キレート剤としては、主に有機カルボン酸、アミノポリカルボン酸、有機ホスホン酸、アミノホスホン酸および有機ホスホノカルボン酸を用いることができる。
上記有機カルボン酸としては、アクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コハク酸、アシエライン酸、セバチン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0069】
上記アミノポリカルボン酸としては、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミンモノヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテル四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、その他特開昭52−25632号、同55−67747号、同57−102624号の各公報、および特公昭53−40900号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0070】
有機ホスホン酸としては、米国特許US第3214454号、同3794591号の各明細書、および西独特許公開2227639号公報等に記載のヒドロキシアルキリデン−ジホスホン酸やリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)第181巻、Item 18170(1979年5月号)等に記載の化合物が挙げられる。
上記アミノホスホン酸としては、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等が挙げられるが、その他上記リサーチ・ディスクロージャー18170号、特開昭57−208554号、同54−61125号、同55−29883号の各公報および同56−97347号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0071】
有機ホスホノカルボン酸としては、特開昭52−102726号、同53−42730号、同54−121127号、同55−4024号、同55−4025号、同55−126241号、同55−65955号、同55−65956号等の各公報、および前述のリサーチ・ディスクロージャー18170号等に記載の化合物を挙げることができる。これらのキレート剤はアルカリ金属塩やアンモニウム塩の形で使用してもよい。
【0072】
これらキレート剤の添加量としては、現像液1リットル当り好ましくは、1×10-4〜1×10-1モル、より好ましくは1×10-3〜1×10-2モルである。
【0073】
さらに、現像液中に銀汚れ防止剤として、特開昭56−24347号、特公昭56−46585号、特公昭62−2849号、特開平4−362942号の各公報記載の化合物を用いることができる。また、溶解助剤として特開昭61−267759号公報記載の化合物を用いることができる。さらに現像液には、必要に応じて色調剤、界面活性剤、消泡剤、硬膜剤等を含んでもよい。
現像処理温度および時間は相互に関係し、全処理時間との関係において決定されるが、一般に現像温度は約20℃〜約50℃が好ましく、25〜45℃がさらに好ましい。また、現像時間は5秒〜2分が好ましく、7秒〜1分30秒がさらに好ましい。
【0074】
現像液の搬送コスト、包装材料コスト、省スペース等の目的から、現像液を濃縮化し、使用時に希釈して用いるようにする態様も好ましい。現像液の濃縮化のためには、現像液に含まれる塩成分をカリウム塩化することが有効である。
【0075】
<定着液>
上記定着工程で使用する定着液の好ましい成分としては、以下が挙げられる。
すなわち、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、必要により酒石酸、クエン酸、グルコン酸、ホウ酸、イミノジ酢酸、5−スルホサリチル酸、グルコヘプタン酸、タイロン、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸これらの塩等を含むことが好ましい。近年の環境保護の観点からは、ホウ酸は含まれない方が好ましい。本発明に用いられる定着液の定着剤としてはチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどが挙げられ、定着速度の点からはチオ硫酸アンモニウムが好ましいが、近年の環境保護の観点からチオ硫酸ナトリウムが使われてもよい。これら既知の定着剤の使用量は適宜変えることができ、一般には約0.1〜約2モル/リットルである。特に好ましくは、0.2〜1.5モル/リットルである。定着液には所望により、硬膜剤(例えば水溶性アルミニウム化合物)、保恒剤(例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩)、pH緩衝剤(例えば、酢酸)、pH調整剤(例えば、アンモニア、硫酸)、キレート剤、界面活性剤、湿潤剤、定着促進剤を含むことができる。
【0076】
上記界面活性剤としては、例えば硫酸化物、スルホン化物などのアニオン界面活性剤、ポリエチレン系界面活性剤、特開昭57−6740号公報記載の両性界面活性剤などが挙げられる。また、上記定着液には、公知の消泡剤を添加してもよい。
上記湿潤剤としては、例えば、アルカノールアミン、アルキレングリコールなどが挙げられる。また、上記定着促進剤としては、例えば特公昭45−35754号、同58−122535号、同58−122536号の各公報に記載のチオ尿素誘導体;分子内に3重結合を持つアルコール;米国特許US第4126459号明細書記載のチオエーテル化合物;特開平4−229860号公報記載のメソイオン化合物などが挙げられ、特開平2−44355号公報記載の化合物を用いてもよい。また、上記pH緩衝剤としては、例えば酢酸、リンゴ酸、こはく酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マレイン酸、グリコール酸、アジピン酸などの有機酸や、ホウ酸、リン酸塩、亜硫酸塩などの無機緩衝剤が使用できる。上記pH緩衝剤として好ましくは、酢酸、酒石酸、亜硫酸塩が用いられる。ここでpH緩衝剤は、現像液の持ち込みによる定着剤のpH上昇を防ぐ目的で使用され、好ましくは0.01〜1.0モル/リットル、より好ましくは0.02〜0.6モル/リットル程度用いる。定着液のpHは4.0〜6.5が好ましく、特に好ましくは4.5〜6.0の範囲である。また、上記色素溶出促進剤として、特開昭64−4739号公報記載の化合物を用いることもできる。
【0077】
本発明の定着液中の硬膜剤としては、水溶性アルミニウム塩、クロム塩が挙げられる。上記硬膜剤として好ましい化合物は、水溶性アルミニウム塩であり、例えば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリ明バンなどが挙げられる。上記硬膜剤の好ましい添加量は0.01モル〜0.2モル/リットルであり、さらに好ましくは0.03〜0.08モル/リットルである。
【0078】
定着処理温度は、約20℃〜約50℃が好ましく、さらに好ましくは25〜45℃である。また、定着時間は5秒〜1分が好ましく、さらに好ましくは7秒〜50秒である。定着液の補充量は、感光材料の処理量に対して600ml/m2以下が好ましく、500ml/m2以下がさらに好ましく、300ml/m2以下が特に好ましい。
【0079】
<水洗処理・安定化処理>
現像、定着処理を施した感光材料は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。上記水洗処理または安定化処理においては、水洗水量は通常感光材料1m2当り、20リットル以下で行われ、3リットル以下の補充量(0も含む、すなわちため水水洗)で行うこともできる。このため、節水処理が可能となるのみならず、自現機設置の配管を不要とすることができる。水洗水の補充量を少なくする方法としては、古くから多段向流方式(例えば2段、3段など)が知られている。この多段向流方式を本発明の製造方法に適用した場合、定着後の感光材料は徐々に正常な方向、即ち定着液で汚れていない処理液の方向に順次接触して処理されていくので、さらに効率のよい水洗がなされる。また、水洗を少量の水で行う場合は、特開昭63−18350号、同62−287252号各公報などに記載のスクイズローラー、クロスオーバーローラーの洗浄槽を設けることがより好ましい。また、少量水洗時に問題となる公害負荷低減のためには、種々の酸化剤添加やフィルター濾過を組み合わせてもよい。さらに、上記方法においては、水洗浴または安定化浴に防黴手段を施した水を、処理に応じて補充することによって生じた水洗浴または安定化浴からのオーバーフロー液の一部または全部を、特開昭60−235133号公報に記載されているようにその前の処理工程である定着能を有する処理液に利用することもできる。また、少量水洗時に発生し易い水泡ムラ防止および/またはスクイズローラーに付着する処理剤成分が処理されたフィルムに転写することを防止するために、水溶性界面活性剤や消泡剤を添加してもよい。
【0080】
また、上記水洗処理または安定化処理においては、感光材料から溶出した染料による汚染防止に、特開昭63−163456号公報に記載の色素吸着剤を水洗槽に設置してもよい。また、水洗処理に続いて安定化処理においては、特開平2−201357号、同2−132435号、同1−102553号、特開昭46−44446号の各公報に記載の化合物を含有した浴を、感光材料の最終浴として使用してもよい。この際、必要に応じてアンモニウム化合物、Bi、Alなどの金属化合物、蛍光増白剤、各種キレート剤、膜pH調節剤、硬膜剤、殺菌剤、防かび剤、アルカノールアミンや界面活性剤を加えることもできる。水洗工程または安定化工程に用いられる水としては水道水のほか脱イオン処理した水やハロゲン、紫外線殺菌灯や各種酸化剤(オゾン、過酸化水素、塩素酸塩など)等によって殺菌された水を使用することが好ましい。また、特開平4−39652号、特開平5−241309号公報記載の化合物を含む水洗水を使用してもよい。水洗処理または安定化温度における浴温度および時間は0〜50℃、5秒〜2分であることが好ましい。
【0081】
上記各工程においては、現像液や定着液の組成から水を除いた成分を固形にして供給し、使用に当たって所定量の水で溶解して現像液や定着液として使用してもよい。このような形態の処理剤は固形処理剤と呼ばれる。固形処理剤は、粉末、錠剤、顆粒、粉末、塊状またはペースト状のものが用いられる。上記処理剤の、好ましい形態は、特開昭61−259921号公報記載の形態或いは錠剤である。該錠剤の製造方法は、例えば特開昭51−61837号、同54−155038号、同52−88025号の各公報、英国特許1,213,808号明細書等に記載される一般的な方法で製造できる。さらに顆粒の処理剤は、例えば特開平2−109042号、同2−109043号、同3−39735号各公報および同3−39739号公報等に記載される一般的な方法で製造できる。また、粉末の処理剤は、例えば特開昭54−133332号公報、英国特許725,892号、同729,862号各明細書およびドイツ特許3,733,861号明細書等に記載される一般的な方法で製造できる。
【0082】
上記固形処理剤の嵩密度は、その溶解性の観点と、0.5〜6.0g/cm3のものが好ましく、特に1.0〜5.0g/cm3のものが好ましい。
【0083】
上記固形処理剤を調製するに当たっては、処理剤を構成する物質の中の、少なくとも2種の相互に反応性の粒状物質を、反応性物質に対して不活性な物質による少なくとも一つの介在分離層によって分離された層になるように層状に反応性物質を置き、真空包装可能な袋を包材とし、袋内から排気しシールする方法を採用してもよい。ここにおいて、「不活性」とは、物質が互いに物理的に接触されたときにパッケージ内の通常の状態下で反応しないこと若しくは何らかの反応があっても著しくないことを意味する。不活性物質は、二つの相互に反応性の物質に対して不活性であることは別にして、二つの反応性の物質が意図される使用において不活発であればよい。さらに不活性物質は二つの反応性物質と同時に用いられる物質である。例えば、現像液においてハイドロキノンと水酸化ナトリウムは直接接触すると反応してしまうので、真空包装においてハイドロキノンと水酸化ナトリウムの間に分別層として亜硫酸ナトリウム等を使うことで、長期間パッケージ中に保存できる。また、ハイドロキノン等をブリケット化して水酸化ナトリウムとの接触面積を減らすことにより保存性が向上して両者を混合して用いることもできる。これらの真空包装材料の包材として用いられるのは不活性なプラスチックフィルム、プラスチック物質と金属箔のラミネートから作られたバッグである。
【0084】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0085】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープを行った感光材料を用いることもできる。
【0086】
[めっき]
本発明では、現像と定着の両工程(又は現像工程のみ)を経て得られた導電性現像銀パターンに金属(銀、又は銀と銅など)を沈積・付加させるために、現像定着工程の後めっきを施す。めっき処理は、無電解めっきでも電解めっきでもよいが、めっき液の安定性を維持しながら金属沈積活性を高めることができて未露光部への金属沈積を抑止できる電解めっきの方が好ましい。めっきされる金属は、電解めっきでは印加電圧のもとで基体金属(すなわち現像銀)に電着可能の金属であればいずれでもよいが、銅、銀、金、ニッケルが好ましく、中でも銅が好ましい。無電解めっきでは、めっき浴の組成において現像銀よりもイオン化傾向が貴である金属であればいずれでもよいが、銅、銀、金、パラジウムが好ましく、中でも銅、銀が好ましい。基体金属(すなわち現像銀)に対して沈積金属が貴になるように現像銀表面に予めパラジウム化合物による活性化処理をほどこすことが好ましい。
【0087】
本発明のめっき処理方法は、現像銀により形成されている銀メッシュでパターニングされた透光性導電性膜からなる電磁波シールド膜に適用することが特に好ましい。
【0088】
本発明では、さらに露光および現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により無電解めっきまたは物理現像速度を促進させることができる。
【0089】
<電解めっき>
電解液は、めっきされる金属の金属化合物を必要濃度に溶解できて、電解に適した十分に低い液抵抗(電極である現像銀との接触抵抗、電解液の通電抵抗の合計)が確保できる限り、いずれでも用いることができる。したがって、用いられる金属化合物に応じて適宜選択されるが、一般にめっき対象金属が銅、銀などであるので、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸の水溶液が好ましい。めっき金属の金属化合物の濃度は、0.05モル/L〜10モル/L、好ましくは0.07モル/L〜5モル/L、特に好ましくは0.1モル/L〜3モル/Lである。
電解めっきにおけるめっき液の温度は10℃〜60℃が好ましく、20℃〜50℃がより好ましく、25℃〜45℃であるのが特に好ましい。電荷時間は、目的の金属被覆厚みが得られるように適宜調節できるが、10秒〜600秒、好ましくは20秒〜450秒、特に好ましくは30秒〜300秒となるように印加電圧(許容範囲内で)、液組成や温度を調整する。
好ましい金属化合物とめっき液組成の例としては、例えば銅めっきの場合は、硫酸銅五水塩を30〜300g/L、硫酸を30〜300g/Lを含むものを用いることができる。銀めっきの場合は、硝酸銀を30〜300g/L含む中性乃至酸性水溶液やアンモニア性アルカリ水溶液を用いることができる。なお、ニッケルめっきの場合は、硫酸ニッケル、塩酸ニッケル、銀めっきの場合はシアン化銀などを含むものを用いることができる。また、めっき液には、界面活性剤、硫黄化合物、窒素化合物等の添加剤を添加しても良い。
【0090】
本発明における電解めっきの態様の典型例を以下によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係るめっき処理を好適に実施するためのめっき装置は、公知の装置と同様に、フィルムが巻き付けられた繰り出し用リール(図示せず)から順次繰り出されたフィルムを電気めっき槽に送り込み、めっき後のフィルムを巻取り用リール(図示せず)に順次巻き取る構成となっている。
【0091】
図1に本発明に係るめっき処理に好適に用いられる電解めっき槽の一例を示す。この図1に示す電解めっき槽10は、長尺のフィルム16に連続してめっき処理を施すことができるものである。矢印はフィルム16の搬送方向を示している。電解めっき槽10は、めっき液15を貯留するめっき浴11を備えている。めっき浴11内には、一対のアノード板13が平行に配設され、アノード板13の内側には、一対のガイドローラ14がアノード板13と平行に回動可能に配設されている。ガイドローラ14は垂直方向に移動可能で、フィルム16のめっき処理時間を調整できる。
【0092】
めっき浴11の上方には、フィルム16を案内するとともにフィルムに電流を供給する給電ローラ(カソード)12a,12bがそれぞれ回転自在に配設されている。また、めっき浴11の上方には、出口側の給電ローラ12bの下方に各一対の液切りローラ17が回動可能に配設されており、この液切りローラ17と出口側の給電ローラ12bとの間には、フィルムからめっき液を除去するための水洗用スプレー(図示せず)が設置されている。
アノード板13は、電線(図示せず)を介して電源装置(図示せず)のプラス端子に接続され、給電ローラ12a,12bは、電源装置(図示せず)のマイナス端子に接続されている。 上記のように、陰極は給電ローラの形態であることが好ましい。給電ローラは全面給電でも部分給電でもよいが、電流密度の不均一を生じにくく、めっきムラが発生しにくいことから、全面給電であることが好ましい。
【0093】
上記の電解めっき槽10において、通常の電解めっき槽のサイズ(例えば10cm×10cm×10cm〜100cm×200cm×300cm)の場合、入り口側の給電ローラ12aとフィルム16とが接している面の最下部とめっき液面との距離(図1に示す距離La)は、0.5cm〜15cmとすることが好ましく、1cm〜10cmとすることがより好ましく、1cm〜7cmとすることがさらに好ましい。また、出口側の給電ローラ12bとフィルム16とが接している面の最下部とめっき液面との距離(図1に示す距離Lb)は、0.5cm〜15cmとすることが好ましい。
【0094】
次に、上記電解めっき槽10を備えためっき装置を使用して、フィルムのメッシュパターン銅めっきを形成する方法を説明する。
まずめっき浴11にめっき液15を貯留する。
【0095】
フィルム16を繰り出しリール(図示せず)に巻かれた状態でセットして、フィルム16のめっきを形成すべき側の面が給電ローラ12a,12bと接触するように、フィルム16を搬送ローラ(図示せず)に巻き掛ける。
アノード板13および給電ローラ12a,12bに電圧を印加し、フィルム16を給電ローラ12a,12bに接触させながら搬送する。フィルム16をめっき浴11に導入し、めっき液15に浸せきして銅めっきを形成する。液切りローラ17間を通過する際に、フィルム16に付着しためっき液15拭い取り、めっき浴11に回収する。これを複数の電解めっき槽で繰り返し、最後に水洗した後、巻取りリール(図示せず)に巻き取る。
【0096】
フィルム16の搬送速度は、1m/分〜30m/分の範囲で設定されることが好ましい。フィルム16の搬送速度は、より好ましくは、1m/分〜10m/分の範囲であり、さらに好ましくは、2m/分〜5m/分の範囲である。
【0097】
電解めっき槽の数は、特に限定されないが、2槽〜10槽が好ましく、3槽〜6槽がより好ましい。
印加電圧は、1V〜100Vの範囲であることが好ましく、2V〜60Vの範囲であることがより好ましい。電解めっき槽が複数設置されている場合は、徐々に印加電圧を下げることが好ましい。また、第1槽目の入り口側の電流量としては、1A〜30Aが好ましく、2A〜10Aがより好ましい。
給電ローラ12a,12bはフィルム全面(接触している面積のうちの実質的に電気的に接触している部分が80%以上)と接触していることが好ましい。
【0098】
なお、給電ローラ12a,12bおよび給電ローラ12a,12bとめっき液15の液面との間のフィルムの近傍にシャワー等を設けて、給電ローラ12a,12bおよびフィルム16を冷却することが好ましい。
【0099】
なお、上記電解めっき槽においてめっき処理を行う前に、水洗および酸洗浄を行うことが好ましい。酸洗浄の際に用いる処理液には、硫酸等が含まれるものを用いることができる。
【0100】
上記めっき処理によりめっきされる導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波シールド材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。さらに、導電性配線材料の用途としては、高密度化の要請から薄膜化が要求される。このような観点から、めっきされた導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
【0101】
また、本発明のめっき処理においては上記のめっき処理を行う前に無電解めっき処理を行ってもよい。無電解めっき処理を行う場合は、電解めっき前の表面抵抗値が1Ω/□〜1000Ω/□となっていることが好ましい。
【0102】
本発明のめっき処理方法に適用できるフィルムは、表面抵抗が1Ω/□〜1000Ω/□のフィルム面を有するものであれば、いずれのフィルムにも適用することができ、例えば、絶縁体フィルム上に形成されるプリント配線基板、PDP用電磁波シールド膜に用いられる透光性導電性膜等に適用することができる。表面抵抗の好ましい範囲は5Ω/□〜500Ω/□であり、より好ましい範囲は10Ω/□〜100Ω/□である。
【0103】
また、フィルム上の導電性パターンは連続している(電気的に途切れていない)ことが好ましい。一部でも繋がっていればよく、導電性パターンが途切れると第1槽目の電解めっき槽でめっきがつかない部分ができたり、ムラになったりするおそれがある。
【0104】
<無電解めっき>
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術を用いることができ、例えば、プリント配線板などで用いられている無電解めっき技術を用いることができる。
【0105】
無電解めっき液はめっきされるべき金属の水溶性金属化合物とその金属化合物を還元して金属を析出させるべき還元剤を含む水溶液である。対象となる水溶性金属化合物は、金属パターンとして使用される金属の水溶性化合物ならいずれでもよい。つまり後に述べるように、希望する金属を析出させる条件は還元剤とpHの選定によって調節できるので、導電性回路として実用性のある金属の化合物ならいずれでも本発明の対象となる。
【0106】
析出によって金属パターンが形成される水溶液の条件は、水溶性金属化合物と還元剤とを含有する水溶液であって、還元剤の酸化電位が水溶性金属化合物の還元電位よりも卑(低電位)であることである。この場合の酸化電位あるいは還元電位は、サイクリックボルタンメトリーによって水溶性金属化合物及び還元剤の酸化及び還元方向に反復走査したときの酸化波あるいは還元波から求められる。酸化電位は、酸化波の極大電流に相当する電位であり、還元電位は還元波の極大電流に対応する電位である。サイクリックボルタンメトリー及びそれを用いる酸化電位及び還元電位の測定方法に関しては、この分野の適切な叢書、例えば逢坂哲弥、小山昇、大坂武男共著「電気化学法・基礎マニユアル(第3版)」(講談社1990年刊行)、電気化学協会編「新編電気化学測定法」(1988年刊行)などに記されている。
【0107】
還元剤の酸化電位が金属化合物の還元電位よりも低ければ金属のパターン状の析出が起こる筈であるが、実用的に好ましい速度でパターンを形成させるには、酸化電位と還元電位の差が20mv以上あるように還元剤を選定するか、あるいはその上でpHなどの条件を調節するのがよい。酸化と還元の両電位の差が大きくなると、未露光部にも金属析出が生じたり、水溶液自身が速やかに劣化する。したがって実用できる電位差の範囲は0から1.5vであり、好ましくは20mv〜1.0vである。より好ましくは20〜500mvである。
【0108】
次に基本発明及び本発明に適用できる金属酸化物に付いて説明する。実用価値があって本発明の適用対象として好都合な金属は、電気抵抗が少なく、かつ腐食しにくい安定な金属であり、したがって本発明に好ましく適用できる水溶性金属化合物を構成する金属元素は、そのイオン化傾向が銀元素とほぼ同等化それよりも低い、つまり貴であるものである。これらの金属元素には銅、ロジウム、イリジウム、パラジウム、水銀、銀、白金、金である。
【0109】
その中でも特に好ましい金属化合物を構成する金属元素は、銀、銅、パラジウム、金、白金であり、より好ましいのは、電気抵抗の低さ、酸化に対する安定性、微細な金属回路を形成する際の強靱性や柔軟性などの実用上の必要特性をすべて満たしている金、銀及び銅である。一方、金属化合物を構成する塩の形は、任意の既知の塩の形を選ぶことができるが、好ましい塩の形は硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩化物を始とするハロゲン化物、チオシアン酸塩などである。また、水酸化アンモニウム、チオ硫酸イオン、シアンイオンなどと錯形成した錯塩も好ましく用いることができる。
【0110】
アルカリ水溶液中における金属化合物の好ましい濃度は、目的の金属パターンに求められる電気抵抗値(又は析出した金属に許容される純度)によって異なるが、一般的に0.01〜10mol/リットル、好ましくは0.05〜3mol/リットルの範囲である。
【0111】
次に水溶性金属化合物と組み合わせられる還元剤について説明する。前記したように還元剤の条件は、当該水溶液の系における組み合わせられる金属化合物の還元電位よりも還元剤の酸化電位が卑であることであるが、その実際的な意味は、金属化合物の還元波の極大電位よりも還元性化合物の酸化波の極大電位が負側(卑側)であることである。より好ましくは、金属化合物の還元電位は還元性化合物の酸化電位より少なくとも20mv以上貴であることがよい。
【0112】
析出速度なども考慮した、より実際的な目安としては、酸化波の極大電位が+100〜−700mv(SCE)であるような還元性化合物が好ましい。多くの酸化・還元反応には、水素イオン(又は水酸イオン)が関与しているので、還元性化合物のサイクリックボルタンメトリーにおける酸化波の極大電位は、pHによって大きく異なる。したがってpHの調節によって析出可能な条件や適切な析出速度を選択でき、その範囲は金属化合物が上記した金、銀又は銅化合物であるなら、還元剤の適切な極大酸化電位はその水溶液の系において+100〜−700mv(SCE)である。アルカリ性水溶液の系でこの電位範囲に入る好ましい還元剤について、以下にさらに詳細に説明する。
【0113】
還元剤の具体例を挙げる。
(1)糖類及び炭水化物
糖類やそれが重合した形の澱粉を始めとする炭水化物は、本発明には好適な還元剤である。本来その還元性は齢と考えられているが、アルカリ性の環境ではその還元性は貴金属塩や重金属塩を十分に還元する。しかも高濃度に存在させることができて還元反応が均一に進行するので微細なパターンでも精度よく形成指せることが可能である。好ましい具体的化合物としては下記のものが挙げられる。より好ましくはデキストリン類である。
【0114】
本発明の単糖類の具体的例示化合物を次に示す。単糖類としては、以下のものが挙げられる。すなわち、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン(二量体を含む)、エリトロース、トレオース、リポース、アラビノース、キシロース、リキソース、キシルロース、リブロース、デオキシ−D−リポース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、キノボース、ジギタロース、ジギトキソース、シマロース、ソルボース、タガトース、フコース、2−デオキシ−D−グルコース、ブシコース、フルクトース、ラムノース、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−マンノサミン、D−グリセロ−D−ガラクトヘプトース、D−グリセロ−D/Lマンノヘプトース,D−グリセロ−D−グロヘプトース,D−グリセロ−D−イドヘプトース,D−グリセロ−L−グルコヘプトース,D−グリセロ−L−タロヘプトース,アルトロヘプツロース,マンノヘプツロース,アルトロ−3−ヘプツロース,グルクロン酸,N−アセチル−D−グルコサミン,グリセリン,トレイット,エリトレット,アラビット,アドニット,キシリット,ソルビット,マンニット,イジット,タリット,ズルシット,アロズルシットなど。
【0115】
これら例示化合物のうち好ましく用いられるのはキシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、ソルボース、D−グリセロ−D/Lマンノヘプトース,グリセリン,ソルビット,マンニットなどである。
【0116】
本発明の多糖類の具体的例示化合物を次に示す。麦芽糖、セルビオース、トレハロース、ゲンチオビオース、イソマルトース、乳糖、ラフィノース、ゲンチアノース、スタキオース、キシラン、アラバン、グリコーゲン、デキストラン、イヌリン、レバン、ガラクタン、アガロース、アミロース、スクロース、アガロピオース、α−デキストリン、β−デキストリン、γ−デキストリン、δ−デキストリン、ε−デキストリン、可溶性デンプン、薄手ノリデンプンなど。また、多糖類の誘導体としては、メチルセルロース、ジメチルセルロース、トリメチルセルロース、エチルセルロース、ジエチルセルロース、トリエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースなどがを用いることができる。
【0117】
これら例示化合物の中で好ましく用いられるものは、麦芽糖、乳糖、デキストラン、イヌリン、アミロース、スクロース、α−デキストリン、β−デキストリン、γ−デキストリン、可溶性デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースなどがを用いることができる。
【0118】
本発明において、これら糖類の添加量は、0.1〜30重量%。好ましくは0.5〜15重量%であり、金属化合物よりも化学量論的に多量であることが望ましい。金属化合物に対して1.0〜10当量、好ましくは1.03〜3当量であることが好都合であるが、金属化合物、錯形成剤の存在などによって最適範囲は異なる。
【0119】
糖類は、広く天然に存在しており、市販品を簡単に入手できる。又、種々の誘導体についても還元、酸化あるいは脱水反応などを行うことによって容易に合成できる。糖類を還元剤として使用する場合は、水溶液のpHは、8以上が望ましく、より好ましくは10以上、とくに12以上であることが好ましい。その上限はpH値が実質的な意味を持たない領域つまり14、あるいは水酸化アルカリの濃度が10%でもよい。
【0120】
(2)アルデヒド類
フェーリング溶液の例から考えられるように本発明に用いる還元剤としては、アルデヒドも使用できる。 本発明の還元剤として用いることのできるアルデヒド化合物は、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、などの脂肪族飽和アルデヒド類、グリオキザール、スクシンジアルデヒドなどの脂肪族ジアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、プロピオールアルデヒドなどの不飽和アルデヒド、ベンズアルデヒド、サルチルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの芳香族アルデヒド、フルフラールなどの複素環式アルデヒドの他、アルデヒド基やケトン基を有するしょ糖、グルコースなどの単糖類、果糖類、オリゴ糖などの少糖類、や単糖類置換体のデオキシ糖、メチル糖、チオ糖、アミノ糖などが好ましい。
【0121】
アルデヒド化合物の好ましい濃度は、水溶液1リットル当たり0.02〜5.0モル、好ましくは0.1〜2.0モルである。また、アルデヒド類を還元剤として使用する場合もアルカリ性の条件下が好ましく、pH7〜14、好ましくは9〜12がよい。
【0122】
(3)現像主薬、その他
写真用現像主薬として知られている、ハイドロキノン、モノクロロハイドロキノンなどのハイドロキノン類、カテコール類、カテコール、ピロカテコールなどのカテコール類、p−アミノフェノール、N−メチル−p−アミノフェノールなどのp−アミノフェノール類、p−フェニレンジアミン、2−メチル−p−フェニレンジアミン、ジエチル−p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン類、o−フェニレンジアミン、1−フェニル−3−ピラゾリドンなどの3−ピラゾリドン類、3−アミノピラゾール類、4−アミノ−ピラゾロン類、5−アミノウラシル類、4,5−ジヒドロキシ−6−アミノピリジン類、アスコルビン酸、エリソルビン酸、レダクトン酸などのレダクトン類、o−またはp−スルホンアミドナフトール類、o−またはp−スルホンアミドフェノール類、2,4−ジスルホンアミドフェノール類、レゾルシン、ジアミノレゾルシンなどのレゾルシン類、2,4−ジスルホンアミドナフトール類、o−またはp−アシルアミノフェノール類、2−スルホンアミドインダノン類、4−スルホンアミド−5−ピラゾロン類、3−スルホンアミドインドール類、スルホンアミドピラゾロベンズイミダゾール類、スルホンアミドピラゾロベンズトリアゾール類、スルホンアミドケトン類、アリールヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラゾベンゼンなどのヒドラジン類等がある。とりわけレダクトン類は、その酸化体が悪影響することがなく好ましい。とくに好ましいレダクトンは、アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコレダクトン、レダクトン酸である。現像主薬の好ましい濃度は、水溶液1リットル当たり0.005〜1.0モル、好ましくは0.05〜0.5モルである。また、現像主薬類を還元剤として使用する場合もアルカリ性の条件下が好ましく、pH7〜14、好ましくは9〜12がよい。
、無電解めっきは無電解銀めっき又は無電解銅めっきであることが好ましい。
無電解銅めっき液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤としてホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子としてEDTAやトリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン等が挙げられる。電解銅めっき浴としては、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が挙げられる。
【0123】
[金属銀部]
本発明に係るフィルムが、透光性電磁波シールド材料としての用途である場合、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた幾何学図形の金属銀部が形成されていることが好ましく、金属銀部はこれらの幾何学図形からなるメッシュ状にパターニングされていることがさらに好ましい。EMIシールド性の観点からは三角形の形状が最も有効であるが、可視光透過性の観点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がり可視光透過性が大きくなるので有利である。モアレを生じにくくする観点ではこれらの幾何学模様をランダムに配置したり、ライン幅を周期性なしに変化させることも好ましい。
なお、導電性配線材料の用途である場合、前記金属部の形状は特に限定されず、目的に応じて任意の形状を適宜決定することができる。
【0124】
透光性電磁波シールド材料の用途において、銀メッシュパターンの線幅は1μm以上40μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上30μm以下、最も好ましくは10μm以上25μm以下である。線間隔は50μm以上500μm以下であることが好ましく、更に好ましくは200μm以上400μm以下、最も好ましくは250μm以上350μm以下である。また、導電性金属部は、アース接続などの目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。
【0125】
銀メッシュパターンは、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅15μm、ピッチ300μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。
【0126】
また、銀メッシュパターンは3m以上連続していることが好ましく、メッシュパターンの連続数が多いほど、前記光学フィルター材料を生産する場合のロスが低減できるためより好ましい態様であるといえる。一方、連続数が多いとロール状にした場合にロール径が大きくなる、ロールの重量が重くなる、ロールの中心部の圧力が強くなり接着や変形などの問題を生じ安くなる等の理由で2000m以下であることが好ましい。好ましくは100m以上1000m以下、更に好ましくは200m以上800m以下、最も好ましくは300m以上500m以下である。
同様の理由により支持体の厚みは200μm以下が好ましく、更に好ましくは20μm以上180μm以下、最も好ましくは50μm以上120μm以下である。
【0127】
本発明においてメッシュが実質的に平行である直線状細線の交差するパターンとは、いわゆる格子模様を意味し、格子を構成する隣り合う直線が平行または平行±2°以内の場合をいう。
【0128】
該光ビームの走査方法としては、搬送方向に対して実質的に垂直な方向に配列したライン状の光源または回転ポリゴンミラーによって露光する方法が好ましい。この場合、光ビームは2値以上の強度変調を行う必要があり、直線はドットの連続としてパターニングされる。ドットの連続であるため一ドットの細線の縁は階段状になるが、細線の太さはくびれた部分の一番狭い長さを意味する。
【0129】
該光ビームの走査方法のもう一つの方式として、格子パターンの傾きに合わせて搬送方向に対して走査方向を傾かせたビームを走査することも好ましい。この場合、2つの走査光ビームを直交するように配列することが好ましく。光ビームは露光面状では実質的に1値の強度をとる。
【0130】
本発明においてメッシュパターンは搬送方向に対して30°から60°傾かせることが好ましい。より好ましくは40°から50°であり、最も好ましくは43°から47°である。これはメッシュパターンが枠に対して45°程度の傾きとなるマスクの作成が一般的に難しく、ムラが出やすい或いは価格が高いなどの問題を生じやすいのに対して、本方式はむしろ45°付近にてムラが出にくいため、本発明の効果がマスク密着露光方式のフォトリソグラフィーやスクリーン印刷によるパターニング対してより顕著な効果がある。
【0131】
めっき処理前の支持体上に設けられる金属銀部の厚さは、支持体上に塗布される銀塩含有層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01μm〜9μmであることがさらに好ましく、0.05μm〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。金属銀部は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。金属銀部がパターン状であり、かつ2層以上の重層構成である場合、異なる波長に感光できるように、異なる感色性を付与することができる。これにより、露光波長を変えて露光すると、各層において異なるパターンを形成することができる。
【0132】
上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらに上述の電解めっき処理により導電性金属からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する透光性電磁波シールド膜であっても容易に形成することができる。
なお、従来のエッチングを用いた方法では、金属薄膜の大部分をエッチングで除去、廃棄する必要があったが、本発明では必要な量だけの導電性金属を含むパターンを支持体上に設けることができるため、必要最低限の金属量だけを用いればよく、製造コストの削減及び金属廃棄物の量の削減という両面から利点がある。
【0133】
[酸化処理]
本発明では、現像処理後の銀メッシュパターン又はめっき処理を施した銀メッシュパターンに、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、銀メッシュパターン以外の光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。上述の通り、酸化処理は、乳剤層の露光および現像処理後、或いは物理現像またはめっき処理後に行うことができ、さらに現像処理後と物理現像またはめっき処理後のそれぞれで行ってもよい。
【0134】
[透光性電磁波シールド膜]
<接着剤層>
本発明に係る導電性電磁波シールド膜は、光学フィルターや、液晶表示板、プラズマディスプレイパネル、その他の画像表示グラットパネル、あるいはCCDに代表される撮像用半導体集積回路などに組み込まれる際には、接着層を介して接合される。
接着剤層における接着剤の屈折率は1.40〜1.70のものを使用することが好ましい。これは使用するプラスチックフィルム等の透明基材と接着剤の屈折率との関係で、その差を小さくして、可視光透過率が低下するのを防ぐためであり、屈折率が1.40〜1.70であると可視光透過率の低下が少なく良好である。
【0135】
また、接着剤は、加熱または加圧により流動する接着剤であることが好ましく、特に、200℃以下の加熱または1Kgf/cm2以上の加圧により流動性を示す接着剤であることが好ましい。このような接着剤を用いることにより、この接着剤層に導電層が埋設されている本発明の透光性電磁波シールド膜を被着体であるディスプレイやプラスチック板に接着剤層を流動させて接着することができる。流動できるので透光性電磁波シールド膜を被着体にラミネートや加圧成形、特に加圧成形により、また曲面、複雑形状を有する被着体にも容易に接着することができる。このためには、接着剤の軟化温度が200℃以下であると好ましい。透光性電磁波シールド膜の用途から、使用される環境が通常80℃未満であるので接着剤層の軟化温度は、80℃以上が好ましく、加工性から80℃〜120℃が最も好ましい。軟化温度は、粘度が1012ポイズ以下になる温度のことで、通常その温度では1〜10秒程度の時間のうちに流動が認められる。
【0136】
上記のような加熱または加圧により流動する接着剤としては、主に以下に示す熱可塑性樹脂が代表的なものとしてあげられる。たとえば天然ゴム(屈折率n=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ−1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.513)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.456)、ポリオキシプロピレン(n=1.450)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.459)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.456)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.467)、ポリビニルプロピオネート(n=1.467)などのポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)、ポリエチルアクリレート(n=1.469)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(n=1.464)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメチレン(n=1.465)、ポリメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.473)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.475)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.487)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.489)、ポリメチルメタクリレート(n=1.489)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのアクリルポリマーは必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
【0137】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。これらの接着剤となるポリマーの軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好適で、150℃以下がさらに好ましい。透光性電磁波シールド膜の用途から、使用される環境が通常80℃以下であるので接着剤層の軟化温度は、加工性から80℃〜120℃が最も好ましい。一方、ポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したもの、以下同様)は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500以下では接着剤組成物の凝集力が低すぎるために被着体への密着性が低下するおそれがある。本発明で使用する接着剤には必要に応じて、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。接着剤の層の厚さは、 10μm〜80μmであることが好ましく、導電層の厚さ以上で20μm〜50μmとすることが特に好ましい。
【0138】
また、幾何学図形を被覆する接着剤は、透明プラスチック基材との屈折率の差が0.14以下とされる。また透明プラスチック基材が接着層を介して導電性材料と積層されている場合においては、接着層と幾何学図形を被覆する接着剤との屈折率の差が0.14以下とされる。これは、透明プラスチック基材と接着剤の屈折率、または接着剤と接着層の屈折率が異なると可視光透過率が低下するためであり、屈折率の差が0.14以下であると可視光透過率の低下が少なく良好となる。そのような要件を満たす接着剤の材料としては、透明プラスチック基材がポリエチレンテレフタレート(n=1.575;屈折率)の場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリアルコール・ポリグリコール型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂、脂環式やハロゲン化ビスフェノールなどのエポキシ樹脂(いずれも屈折率が1.55〜1.60)を使うことができる。エポキシ樹脂以外では天然ゴム(n=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.5125)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.4563)、ポリオキシプロピレン(n=1.4495)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.4591)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.4563)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.4665)、ポリビニルプロピオネート(n=1.4665)などのポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)などを挙げることができる。これらは、好適な可視光透過率を発現する。
【0139】
一方、透明プラスチック基材がトリアセチルセルロースまたはアクリル樹脂の場合、上記の樹脂以外に、ポリエチルアクリレート(n=1.4685)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(n=1.4638)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート(n=1.465)、ポリメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.4728)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.4746)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.4868)、ポリテトラカルバニルメタクリレート(n=1.4889)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.4889)、ポリメチルメタクリレート(n=1.4893)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのアクリルポリマーは必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使うこともできる。
【0140】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレートなども使うこともできる。特に接着性の点から、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートは分子内に水酸基を有するため接着性向上に有効であり、これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。接着剤の主成分となるポリマーの重量平均分子量は、1,000以上のものが使われる。分子量が1,000以下だと組成物の凝集力が低すぎるために被着体への密着性が低下する。
【0141】
接着剤の硬化剤としてはトリエチレンテトラミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどのアミン類、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの酸無水物、ジアミノジフェニルスルホン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド、エチルメチルイミダゾールなどを使うことができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらの架橋剤の添加量は上記ポリマー100重量部に対して0.1重量部〜50重量部、好ましくは1重量部〜30重量部の範囲で選択するのがよい。この添加量が、0.1重量部未満であると硬化が不十分となり、50重量部を越えると過剰架橋となり、接着性に悪影響を与える場合がある。本発明で使用する接着剤の樹脂組成物には必要に応じて、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。そして、この接着剤の樹脂組成物は、透明プラスチック基材の表面に導電性材料で描かれた幾何学図形を設けた構成材料の基材の一部または全面を被覆するために、塗布され、溶媒乾燥、加熱硬化工程をへたのち、本発明に係る接着フィルムにする。上記で得られた電磁波シ−ルド性と透明性を有する接着フィルムは、該接着フィルムの接着剤によりCRT、PDP、液晶、ELなどのディスプレイに直接貼り付け使用したり、アクリル板、ガラス板等の板やシートに貼り付けてディスプレイに使用する。また、この接着フィルムは、電磁波を発生する測定装置、測定機器や製造装置の内部をのぞくための窓や筐体に上記と同様にして使用する。さらに、電波塔や高圧線等により電磁波障害を受ける恐れのある建造物の窓や自動車の窓等に設ける。そして、導電性材料で描かれた幾何学図形にはアース線を設けることが好ましい。
【0142】
透明プラスチック基材上の導電性材料が除去された部分は密着性向上のために意図的に凹凸を有していたり、導電性材料の背面形状を転写したりするためにその表面で光が散乱され、透明性が損なわれるが、その凹凸面に透明プラスチック基材と屈折率が近い樹脂が平滑に塗布されると乱反射が最小限に押さえられ、透明性が発現するようになる。さらに透明プラスチック基材上の導電性材料で描写された幾何学図形は、ライン幅が非常に小さいため肉眼で視認されない。またピッチも十分に大きいため見掛け上透明性を発現すると考えられる。一方、遮蔽すべき電磁波の波長に比べて、幾何学図形のピッチは十分に小さいため、優れたシールド性を発現すると考えられる。
【0143】
特開2003−188576号公報に示すように、透明基材フィルムと金属箔との積層は、透明基材フィルムとして、熱融着性の高いエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、もしくはアイオノマー樹脂等の熱融着性樹脂のフィルムを単独、または他の樹脂フィルムと積層して使用するときは、接着剤層を設けずに行なうことも可能であるが、通常は、接着剤層を用いたドライラミネート法等によって積層を行なう。接着剤層を構成する接着剤としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、もしくはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の接着剤を挙げることができ、これらの他、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等)を用いることもできる。
【0144】
一般的には、ディスプレイの表面はガラス製であるので、粘着剤を用いて貼り合わせるのは透明プラスチックフィルムとガラス板となり、その接着面に気泡が生じたり剥離が生じたりすると画像が歪む、表示色がディスプレイ本来のものと異なって見える等の問題が発生する。また、気泡および剥離の問題はいずれの場合でも粘着剤がプラスチックフィルムまたはガラス板より剥離することにより発生する。この現象は、プラスチックフィルム側、ガラス板側ともに発生する可能性が有り、より密着力の弱い側で剥離が発生する。従って、高温での粘着剤とプラスチックフィルム、ガラス板との密着力が高いことが必要となる。具体的には、透明プラスチックフィルム及びガラス板と粘着剤層との密着力は80℃において10g/cm以上であることが好ましい。30g/cm以上であることが更に好ましい。ただし、2000g/cmを超えるような粘着剤は貼り合わせ作業が困難と成るために好ましくない場合がある。ただし、かかる問題点が発生しない場合は問題なく使用できる。さらに、この粘着剤の透明プラスチックフィルムと面していない部分に不必要に他の部分に接触しないように合い紙(セパレーター)を設けることも可能である。
【0145】
粘着剤は透明であるものが好ましい。具体的には全光線透過率が70%以上が好ましく、80%以上が更に好ましく、85%〜92%が最も好ましい。さらに、霞度が低いことが好ましい。具体的には、0%〜3%が好ましく、0%〜1.5%が更に好ましい。本発明で用いる粘着剤は、ディスプレイ本来の表示色を変化させないために無色であることが好ましい。ただし、樹脂自体が有色であっても粘着剤の厚みが薄い場合には実質的には無色とみなすことが可能である。また、後述のように意図的に着色を行なう場合も同様にこの範囲ではない。
【0146】
上記の特性を有する粘着剤としては例えば、アクリル系樹脂、α−オレフィン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル共重合物系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン−ビニルアセテート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの内、アクリル系樹脂が好ましい。同じ樹脂を用いる場合でも、粘着剤を重合法により合成する際に架橋剤の添加量を下げる、粘着性付与材を加える、分子の末端基を変化させるなどの方法によって、粘着性を向上させることも可能である。また、同じ粘着剤を用いても、粘着剤を貼り合わせる面、すなわち、透明プラスチックフィルムまたはガラス板の表面改質を行なうことにより密着性を向上させることも可能である。このような表面の改質方法としては、コロナ放電処理、プラズマグロー処理等の物理的手法、密着性を向上させるための下地層を形成するなどの方法が挙げられる。
【0147】
透明性、無色性、ハンドリング性の観点から、粘着剤層の厚みは、5μm〜50μm程度であることが好ましい。粘着剤層を接着剤で形成する場合は、その厚みは上記範囲内で薄くするとよい。具体的には1〜20μm程度である。ただし、上記のようにディスプレイ自体の表示色を変化させず、透明性も上記の範囲に入っている場合には、厚みが上記範囲を超えてもよい。
【0148】
[剥離可能な保護フィルム]
本発明のめっき処理がされた透光性導電性膜は、前記したように透光性電磁波シールド膜として用いることが好ましい。本発明に係る透過性電磁波シールド膜には、剥離可能な保護フィルムを設けることができる。
保護フィルムは、必ずしも、透過性電磁波シールド膜の両面に有していなくてもよく、特開2003−188576号公報の図2(a)に示すように、積層体10のメッシュ状の金属箔11’上に保護フィルム20を有するのみで、透明基材フィルム14側に有していなくてもよい。また、上記公報の図2(b)に示すように、積層体10の透明基材フィルム14側に保護フィルム30を有するのみで、金属箔11’上に有していなくてもよい。なお、上記公報の図2および図1において共通な符号を付した部分は同じものを示すものである。
【0149】
電磁波遮蔽用シート1における透明基材フィルム14、および開孔部が密に配列したメッシュ状の金属箔11’からなる透明性を有する電磁波遮蔽層とが少なくとも積層されて構成された積層体の層構成、および積層体の製造プロセスについて、次に上記公報の図3(a)〜(f)を引用しながら説明する。なお、保護フィルム20または/および保護フィルム30の積層については、積層体の製造プロセスの説明の後に、改めて説明する。
【0150】
まず、上記公報の図3(a)に示すように、透明基材フィルム14および金属箔11が接着剤層13を介して積層された積層体を準備する。透明基材フィルム14としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリサルホン樹脂、もしくはポリ塩化ビニル樹脂等のフィルムを用いることができる。通常は、機械的強度が優れ、透明性が高いポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂のフィルムを好ましく用いる。
透明基材フィルム14の厚みは、特に限定されないが、機械的強度があり、折り曲げに対する抵抗性を大きくする点から、50μm〜200μm程度であることが好ましく、さらに厚みが増してもよいが、電磁波遮蔽用シート1を他の透明基板に積層して使用する場合には、必ずしも、この範囲以上の厚みでなくてもよい。必要に応じ、透明基材フィルム14の片面もしくは両面にコロナ放電処理を施したり、あるいは易接着層を設けるとよい。
【0151】
透光性電磁波シールド膜は、後に説明するように、上記の積層体を赤外線カットフィルター層を介する等して基板上に積層したものの表裏に、さらに、最表面の強化、反射防止性の付与、防汚性の付与等の効果を有するシートを積層して使うものであるので、上記の保護フィルムは、このようなさらなる積層の際には剥離する必要があり、このため、保護フィルムの金属箔側への積層は、いわゆる剥離可能に行なうことが望ましい。
【0152】
保護フィルムは金属箔上に積層した際の剥離強度は5mN/25mm幅〜5N/25mm幅であることが好ましく、より好ましくは10mN/25mm幅〜100mN/25mm幅である。下限未満では、剥離が容易過ぎ、取扱い中や不用意な接触により保護フィルムが剥離する恐れがあり、好ましくなく、また上限を超えると、剥離のために大きな力を要する上、剥離の際に、メッシュ状の金属箔が透明基材フィルム(もしくは接着剤層から)剥離する恐れがあり、やはり好ましくない。
【0153】
透光性電磁波シールド膜において、透明基材フィルムのメッシュ状金属が積層された積層体の下面側、即ち、透明基材フィルム側に積層する保護フィルムは、透明基材フィルムの下面が、取扱い中や不用意な接触により損傷しないよう、また、現像処理、めっき処理の工程において、透明基材フィルムの露出面が汚染もしくは侵食を受けないよう、保護するためのものである。
【0154】
前述した保護フィルムの場合と同様、この保護フィルムも、多機能を有するシートのさらなる積層の際には剥離する必要があるので、保護フィルムの透明基材フィルム側への積層も、剥離可能に行なうことが望ましく、剥離強度としては、保護フィルムと同様、5mN/25mm幅〜5N/25mm幅であることが好ましく、より好ましくは10mN/25mm幅〜100mN/25mm幅である。下限未満では、剥離が容易過ぎ、取扱い中や不用意な接触により保護フィルムが剥離する恐れがあり、好ましくなく、また上限を超えると、剥離のために大きな力を要するからである。
【0155】
透明基材フィルム側に積層する保護フィルムは、処理条件に耐える、例えば、45℃程度の現像液、特にそのアルカリ成分によって数分間の浸漬中、侵食されないものであることが好ましく、あるいは、電解めっきの場合にはpH1程度の酸性条件に耐えるものであることが望ましい。また、現像液、定着液、めっき液による侵食もしくは汚染等に耐える耐久性を有するものであることが好ましい。
【0156】
上記の各点を満足させるために、保護フィルムを構成するフィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂であるポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、もしくはアクリル樹脂等の樹脂フィルムを用いることが好ましく、また、上記した観点により、少なくとも、保護フィルムの、積層体に適用した際に最表面となる側の面にコロナ放電処理を施しておくか、易接着層を積層しておくことが好ましい。
【0157】
また、保護フィルムを構成する粘着剤としては、アクリル酸エステル系、ゴム系、もしくはシリコーン系のものを使用することができる。
【0158】
上記した保護フィルム用のフィルムの素材、および粘着剤の素材は、メッシュ面側に適用する保護フィルムについても、そのまま適用できるので、両保護フィルムとしては、異なるものを使用してもよいが、同じ物を、両保護フィルムとすることができる。
【0159】
[黒化処理]
特開2003−188576に示す構成図を例にして述べると、金属箔は、透明基材フィルム側に、黒化処理による黒化層(を有したものであってよく、防錆効果に加え、反射防止性を付与することができる。黒化層は、例えば、Co−Cu合金メッキによって形成され得るものであり、金属箔11の表面の反射を防止することができる。さらにその上に防錆処理としてクロメート処理をしてもよい。クロメート処理は、クロム酸もしくは重クロム酸塩を主成分とする溶液中に浸漬し、乾燥させて防錆被膜を形成するもので、必要に応じ、金属箔の片面もしくは両面に行なうことができるが、市販のクロメート処理された銅箔等を利用してもよい。なお、予め黒化処理された金属箔を用いないときは、後の適宜な工程において、黒化処理してもよい。なお、黒化層の形成は、後述する、レジスト層となり得る感光性樹脂層を、黒色に着色した組成物を用いて形成し、エッチングが終了した後に、レジスト層を除去せずに残留させることによっても形成できるし、黒色系の被膜を与えるメッキ法によってもよい。
【0160】
また、黒化層を含む構成の例としては、特開平11−266095号公報に示した構成であってもよい。上記の電磁波遮蔽板において、例えば、横方向のラインxと縦方向のラインyとが交叉して構成するメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成する第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等を構成する黒化層としては、次に述べる考え方に基づいて適宜に選択して利用することにより形成することができる。本発明においては、主目的であるメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成する方法として二つの方法があり、その一つの方法は、金属メッキ法であり、他の方法は、エッチング法である。本発明においては、上記のいずれかの方法を採用することにより、第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等の形成法、使用する材料等が異なる。すなわち、本発明において、第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等の上に、導電性パタ−ンPを金属メッキ法等で形成するためには、金属メッキが可能な導電性黒化層が必要であり、また、エッチング法または電着法等により最終工程において黒化する場合には、非導電性材料等を使用して非導電性黒化層を形成することができる。上記の導電性黒化層は、一般に、導電性金属化合物、例えば、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)等の化合物を使用して形成することができ、また、非導電性黒化層は、ペ−スト状黒色高分子材料、例えば、黒色インキ等、あるいは、黒化化成材料、例えば、金属メッキ表面を化成処理してなる黒色化合物を形成したもの、更には、電着性イオン性高分子材料、例えば、電着塗装材料等を使用して形成することができる。本発明においては、上記のような黒化層形成方法を利用し、電磁波遮蔽板の製造法における製造工程等に応じた適宜の方法を選択し、それを採用して黒化層を形成することができる。
【0161】
次に、黒化層を設ける方法としては、特開平11−266095号公報の図5に示すように、上記で作製した金属板等の導電性基板11の上に電着を阻害する絶縁性膜で構成するメッシュ状のレジストパタ−ン12を有する電着基板14を、まず、例えば、黒化銅、黒化ニッケル等の電解液中に浸漬し、電気化学的な公知のメッキ法でメッキして、黒化銅層、あるいは、黒化ニッケル層等からなるメッシュ状の第2の黒化層3bを形成する。なお、本発明において、上記の黒色メッキ浴は、硫酸ニッケル塩を主成分とする黒色メッキ浴を使用することができ、更に、市販の黒色メッキ浴も同様に使用することができ、具体的には、例えば、株式会社シミズ製の黒色メッキ浴(商品名、ノ−ブロイSNC、Sn−Ni合金系)、日本化学産業株式会社製の黒色メッキ浴(商品名、ニッカブラック、Sn−Ni合金系)、株式会社金属化学工業製の黒色メッキ浴(商品名、エボニ−クロム85シリ−ズ、Cr系)等を使用することができる。また、本発明においては、上記の黒色メッキ浴としては、Zn系、Cu系、その他等の種々の黒色メッキ浴を使用することができる。次に、本発明においては、同じく、上記公報図5に示すように、上記で第2の黒化層3bを設けた電着基板14を、電磁波遮蔽用の金属の電解液中に浸漬して、該電着基板14の第2の黒化層3bに相当する箇所に、所望の厚さにメッシュ状の導電性パタ−ン4を積層、電着する。上記において、メッシュ状の導電性パタ−ン4を構成する材料としては、前述の良導電性物質としての金属が最も有利な材料として使用することがでる。而して、上記の金属電着層を形成する場合には、汎用金属の電解液を使用することができるので、多種類の、安価な金属電解液が存在し、目的に適った選択を自由に行うことができるという利点がある。一般に、安価な良導電性金属としては、Cuが多用されており、本発明においても、Cuを使用することが、その目的にも合致して有用なものであり、勿論、その他の金属も同様に用いることができるものである。次にまた、本発明において、メッシュ状の導電性パタ−ン4は、単一金属層のみで構成する必要はなく、例えば、図示しないが、上記の例のCuからなるメッシュ状の導電性パタ−ンPは、比較的に柔らかく傷がつき易いので、その保護層として、NiやCr等の汎用の硬質金属を用いて2層からなる金属電着層とすることもできる。次に、本発明においては、同じく、図5に示すように、上記でメッシュ状の導電性パタ−ン4を形成した後、例えば、該メッシュ状の導電性パタ−ン4の表面を化成処理して、具体的には、例えば、導電性パタ−ンPが銅(Cu)からなるものであれば、硫化水素(H2 S)液処理して、銅の表面を硫化銅(CuS)として黒化して、該メッシュ状の導電性パタ−ン4を構成する金属電着層の表面を黒化処理して第1の黒化層3aを形成し、上記の第2の黒化層3b、導電性パタ−ン層4、および、第1の黒化層3aの順で順次に重層して構成したメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成するものである。なお、本発明において、上記の銅表面の黒化処理剤としては、硫化物系や硫化物系化合物を用いて容易に製造でき、更にまた、市販品も多種類の処理剤があり、例えば、商品名・コパ−ブラックCuO、同CuS、セレン系のコパ−ブラックNo.65等(アイソレ−ト化学研究所製)、商品名・エボノ−ルCスペシャル(メルテックス株式会社製)等を使用することができる。
【0162】
上記の電磁波遮蔽板において、エッチングレジストパタ−ン35は、除去してもよく、また、残留させてもよく、更に、エッチングレジストパタ−ン35を除去する場合には、エッチングレジストパタ−ン35を除去後、残留する導電性金属層33の表面を黒化処理することができる。而して、上記の黒化処理には、例えば、ブラック銅(Cu)、ブラックニッケル(Ni)等のメッキ法や化学的な黒化処理法等の公知の黒化処理方法を利用して行うことができる。
【0163】
[光学フィルター]
本発明に係る光学フィルターは、上記の透光性電磁波シールド膜の他に、複合機能層を備えた機能性フィルムを有することができる。
(複合機能層)
ディスプレイは、照明器具等の映り込みによって表示画面が見づらくなってしまうので、機能性フィルム(C)は、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、または、鏡像の映り込みを防止する防眩(AG:アンチグレア)性、またはその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能を有していることが必要である。光学フィルター表面の可視光線反射率が低いと、映り込み防止だけではなく、コントラスト等を向上させることができる。
【0164】
反射防止性を有する機能性フィルム(C)は、反射防止膜を有し、具体的には、可視域において屈折率が1.5以下、好適には1.4以下と低い、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものがあるが、これらに限定されるものではない。反射防止性を有する機能性フィルム(C)の表面の可視光線反射率は2%以下、好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
【0165】
防眩性を有する機能性フィルム(C)は、0.1μm〜10μm程度の微少な凹凸の表面状態を有する可視光線に対して透明な防眩膜を有している。具体的には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂に、シリカ、有機珪素化合物、メラミン、アクリル等の無機化合物または有機化合物の粒子を分散させインキ化したものを、基体上に塗布、硬化させる。粒子の平均粒径は、1〜40μmである。または、上記の熱硬化型または光硬化型樹脂を基体に塗布し、所望のグロス値または表面状態を有する型を押しつけ硬化することによっても防眩性を得ることができるが、必ずしもこれら方法に限定されるものではない。防眩性を有する機能性フィルム(C)のヘイズは0.5%以上20%以下であり、好ましくは1%以上10%以下である。ヘイズが小さすぎると防眩性が不十分であり、ヘイズが大きすぎると透過像鮮明度が低くなる傾向がある。
【0166】
光学フィルターに耐擦傷性を付加させるために、機能性フィルム(C)がハードコート性を有していることも好適である。ハードコート膜としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。これら膜の厚さは、1〜50μm程度である。ハードコート性を有する機能性フィルム(C)の表面硬度は、JIS(K―5400)に従った鉛筆硬度が少なくともH、好ましくは2H、さらに好ましくは3H以上である。ハードコート膜上に反射防止膜および/または防眩膜を形成すると、耐擦傷性・反射防止性および/または防眩性を有する機能性フィルム(C)が得られ好適である。
【0167】
光学フィルターには、静電気帯電によりホコリが付着しやすく、また、人体が接触したときに放電して電気ショックを受けることがあるため、帯電防止処理が必要とされる場合がある。従って、静電気防止能を付与するために、機能性フィルム(C)が導電性を有していても良い。この場合に必要とされる導電性は面抵抗で1011Ω/□程度以下であれば良い。導電性を付与する方法としてはフィルムに帯電防止剤を含有させる方法や導電層を形成する方法が挙げられる。帯電防止剤として具体的には、商品名ペレスタット(三洋化成社製)、商品名エレクトロスリッパー(花王社製)等が挙げられる。導電層としてはITOをはじめとする公知の透明導電膜やITO超微粒子や酸化スズ超微粒子をはじめとする導電性超微粒子を分散させた導電膜が挙げられる。ハードコート膜や反射防止膜、防眩膜が、導電膜を有していたり導電性微粒子を含有していると好適である。
【0168】
機能性フィルム(C)表面が防汚性を有していると、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるので好適である。防汚性を有するものとしては、水および/または油脂に対して非濡性を有するものであって、例えばフッ素化合物やケイ素化合物が挙げられる。フッ素系防汚剤として具体的には商品名オプツール(ダイキン社製)等が挙げられ、ケイ素化合物としては、商品名タカタクォンタム(日本油脂社製)等が挙げられる。反射防止膜に、これら防汚性のある層を用いると、防汚性を有する反射防止膜が得られて好適である。
【0169】
機能性フィルム(C)は、後述する色素や高分子フィルムの劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を有していることが好ましい。紫外線カット性を有する機能性フィルム(C)は、後述する上記の高分子フィルムに紫外線吸収剤を含有させることや紫外線吸収膜を付与する方法が挙げられる。
【0170】
光学フィルターは、常温常湿よりも高い温度・湿度環境化で使用されると、フィルムを透過した水分により後述する色素が劣化したり、貼り合せに用いる粘着材中や貼り合せ界面に水分が凝集して曇ったり、水分による影響で粘着材中の粘着付与剤等が相分離して析出して曇ったりすることがあるので、機能性フィルム(C)がガスバリア性を有していると好ましい。このような色素劣化や曇りを防ぐ為には、色素を含有する層や粘着材層への水分の侵入を防ぐことが肝要であり、機能性フィルム(C)の水蒸気透過度が10g/m・day以下、好ましくは5g/m・day以下であることが好適である。
【0171】
本発明において、高分子フィルム(A)、導電メッシュ層(B)、機能性フィルム(C)および必要に応じて後述する透明成型物(E)は、可視光線に対して透明な任意の粘着材または接着剤(D1)(D2)を介して貼り合わされる。粘着材または接着剤(D1)、(D2)として具体的にはアクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等が挙げられ、実用上の接着強度があればシート状のものでも液状のものでもよい。粘着材は感圧型接着剤でシート状のものが好適に使用できる。シート状粘着材貼り付け後または接着材塗布後に各部材をラミネートすることによって貼り合わせを行う。液状のものは塗布、貼り合わせ後に室温放置または加熱により硬化する接着剤である。塗布方法としては、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等が挙げられるが、接着剤の種類、粘度、塗布量等から考慮、選定される。層の厚みは、特に限定されるものではないが、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜30μmである。粘着材層を形成される面、貼り合わせられる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理により濡れ性を向上させておくことが好適である。本発明においては、前述の可視光線に対して透明な粘着材または接着剤を透光性粘着材と呼ぶ。
【0172】
本発明においては、導電性メッシュ層(B)上に機能性フィルム(C)を貼り合わせる際、特に透光性粘着材層(D1)を用いる。透光性粘着材層(D1)に用いる透光性粘着材の具体例としては前記と同じだが、その厚さが導電性メッシュ層(B)の凹部を十分埋め込むことができることが肝要である。導電性メッシュ層(B)の厚さより薄すぎると、埋め込み不十分で間隙が出来て凹部に気泡を噛み込み、濁りのある、透光性の不足したディスプレイ用フィルタとなってしまう。又、厚すぎると粘着材を作製するコストがアップしたり部材のハンドリングが悪くなる等の問題が生じる。導電性メッシュ層(B)の厚さがdμmの時、透光性粘着材(D1)の厚さは(d−2)〜(d+30)μmであることが好ましい。
【0173】
光学フィルターの可視光線透過率は、30〜85%が好ましい。更に好ましくは35〜70%である。30%未満であると輝度が下がりすぎ視認性が悪くなる。また、ディスプレイ用フィルタの可視光線透過率が高すぎると、ディスプレイのコントラストを改善できない。尚、本発明における可視光線透過率は、可視光線領域における透過率の波長依存性からJIS(R−3106)に従って計算されるものである。
【0174】
また、機能性フィルム(C)を透光性粘着材層(D1)を介して導電性メッシュ層(B)上に貼り合せると、凹部に気泡を噛み込み、濁って透光性が不十分になることがあるが、この場合、例えば加圧処理すると、貼り合わせ時に部材間に入り込んだ気体を脱泡または、粘着材に固溶させ、濁りを無くして透光性を向上させることができる。加圧処理は、(C)/(D1)/(B)/(A)の構成の状態で行っても、本発明のディスプレイ用フィルタの状態で行っても良い。
【0175】
加圧方法としては、平板間に積層体を挟み込みプレスする方法、ニップロール間を加圧しながら通す方法、加圧容器内に入れて加圧する方法が挙げられるが、特に限定はされない。加圧容器内で加圧する方法は、積層体全体に一様に圧力がかかり加圧のムラが無く、また、一度に複数枚の積層体を処理できるので好適である。加圧容器としてはオートクレーブ装置を用いることが出来る。
【0176】
加圧条件としては、圧力が高い程、噛み込んだ気泡を無くすことが出来、且つ、処理時間を短くすることが出来るが、積層体の耐圧性、加圧方法の装置上の制限から、0.2MPa〜2MPa程度、好ましくは0.4〜1.3MPaである。また、加圧時間は、加圧条件によって変わり特に限定されないが、長くなりすぎると処理時間がかかりコストアップとなるので、適当な加圧条件において保持時間が6時間以下であることが好ましい。特に加圧容器の場合は、設定圧力に到達後、10分〜3時間程度保持することが好適である。
【0177】
また、加圧時に同時に加温すると好ましい場合がある。加温することによって、透光性粘着材の流動性が一時的に上がり噛み込んだ気泡を脱泡しやすくなったり、気泡が粘着材中に固溶しやすくなる。加温条件としては光学フィルターを構成する各部材の耐熱性により、室温以上80℃以下程度であるが、特に限定を受けない。
【0178】
さらにまた、加圧処理、または、加圧加温処理は、光学フィルターを構成する各部材間の貼り合わせ後の密着力を向上させることが出来、好適である。
【0179】
本発明の光学フィルターは、高分子フィルム(A)の導電性メッシュ層(B)が形成されていない他方の主面に透光性粘着材層(D2)を設ける。透光性粘着材層(D2)に用いる透光性粘着材の具体例は前述の通りであり、特に限定はされない。厚みも、特に限定されるものではないが、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜30μmである。透光性粘着材層(D2)を形成される面、貼り合わせられる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理により濡れ性を向上させておくことが好適である。
【0180】
透光性粘着材層(D2)上に離型フィルムが形成されていても良い。すなわち、少なくとも機能性フィルム(C)/透光性粘着材層(D1)/導電性メッシュ層(B)/高分子フィルム(A)/透光性粘着材層(D2)/離型フィルムである。離型フィルムは、粘着材層と接する高分子フィルムの主面上にシリコーン等をコーティングしたものである。本発明の光学フィルターを後述の透明成形物(E)の主面に貼り合せる際、または、ディスプレイ表面、例えばプラズマディスプレイパネルの前面ガラス上に貼り合せる際には、離型フィルムを剥離して透光性粘着材層(D2)を露出せしめた後に貼り合わせる。
【0181】
本発明の光学フィルターは、主として各種ディスプレイから発生する電磁波を遮断する目的で用いられる。好ましい例として、プラズマディスプレイ用フィルターが挙げられる。
【0182】
前述した様にプラズマディスプレイは強度の近赤外線を発生する為、本発明のディスプレイ用フィルタは、実用上問題無いレベルまで電磁波だけでなく近赤外線もカットする必要がある。波長領域800〜1000nmにおける透過率を25%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下とすることが必要である。また、プラズマディスプレイに用いる光学フィルターはその透過色がニュートラルグレーまたはブルーグレーであることが要求される。これは、プラズマディスプレイの発光特性およびコントラストを維持または向上させる必要があったり、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれる場合があるからである。さらにまた、カラープラズマディスプレイはその色再現性が不十分と言われており、その原因である蛍光体または放電ガスからの不要発光を選択的に低減することが好ましい。特に赤色表示の発光スペクトルは、波長580nmから700nm程度までにわたる数本の発光ピークを示しており、比較的強い短波長側の発光ピークにより赤色発光がオレンジに近い色純度の良くないものとなってしまう問題がある。これら光学特性は、色素を用いることによって制御できる。つまり、近赤外線カットには近赤外線吸収剤を用い、また、不要発光の低減には不要発光を選択的に吸収する色素を用いて、所望の光学特性とすることが出来、また、光学フィルターの色調も可視領域に適当な吸収のある色素を用いて好適なものとすることができる。
【0183】
色素を含有させる方法としては、(1)色素を少なくとも1種類以上、透明な樹脂に混錬させた高分子フィルムまたは樹脂板、(2)色素を少なくとも1種類以上、樹脂または樹脂モノマー/有機系溶媒の樹脂濃厚液に分散・溶解させ、キャスティング法により作製した高分子フィルムまたは樹脂板、(3)色素を少なくとも1種類以上を、樹脂バインダーと有機系溶媒に加え、塗料とし、高分子フィルムまたは樹脂板上にコーティングしたもの、(4)色素を少なくとも1種類以上を含有する透明な粘着材、のいずれか一つ以上選択できるが、これらに限定されない。本発明でいう含有とは、基材または塗膜等の層または粘着材の内部に含有されることは勿論、基材または層の表面に塗布した状態を意味する。
【0184】
上記の色素は可視領域に所望の吸収波長を有する一般の染料または顔料、または、近赤外線吸収剤であって、その種類は特に限定されるものではないが、例えばアントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、アゾメチン系、オキサジン系、イモニウム系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ポルフィリン系、ジベンゾフラノン系、ジケトピロロピロール系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系、ジチオール系化合物、ジイミニウム系化合物等の一般に市販もされている有機色素があげられる。その種類・濃度は、色素の吸収波長・吸収係数、光学フィルターに要求される透過特性・透過率、そして分散させる媒体または塗膜の種類・厚さから決まり、特に限定されるものではない。
【0185】
プラズマディスプレイパネルはパネル表面の温度が高く、環境の温度が高いときは特に光学フィルターの温度も上がるため、色素は、例えば80℃で分解等によって顕著に劣化しない耐熱性を有していることが好適である。また、耐熱性に加えて色素によっては耐光性に乏しいものもある。プラズマディスプレイの発光や外光の紫外線・可視光線による劣化が問題になる場合は、紫外線吸収剤を含む部材や紫外線を透過しない部材を用いることによって、色素の紫外線による劣化を低減すること、紫外線や可視光線による顕著な劣化がない色素を用いることが肝要である。熱、光に加えて、湿度や、これらの複合した環境においても同様である。劣化するとディスプレイ用フィルタの透過特性が変わってしまい、色調が変化したり近赤外線カット能が低下してしまう。さらには、媒体または塗膜中に分散させるために、適宜の溶媒への溶解性や分散性も重要である。また、本発明においては異なる吸収波長を有する色素2種類以上を一つの媒体または塗膜に含有させても良いし、色素を含有する媒体、塗膜を2つ以上有していても良い。
【0186】
上記の色素を含有する方法(1)〜(4)は、本発明においては、色素を含有する高分子フィルム(A)、色素を含有する機能性フィルム(C)、色素を含有する透光性粘着材(D1)、(D2)、その他貼り合わせに用いられる色素を含有する透光性の粘着材または接着剤のいずれか1つ以上の形態をもって、本発明の光学フィルターに使用できる。
【0187】
一般に色素は紫外線で劣化しやすい。光学フィルターが通常使用条件下で受ける紫外線は、太陽光等の外光に含まれるものである。従って、色素の紫外線による劣化を防止する為には、色素を含有する層自身および該層より外光を受ける人側の層から選ばれる少なくとも1層に、紫外線カット能を有する層を有していることが好適である。例えば、高分子フィルム(A)が色素を含有する場合、透光性粘着材層(D1)および/または機能性フィルム(C)が、紫外線吸収剤を含有したり、紫外線カット能を有する機能膜を有していれば、外光が含む紫外線から、色素を保護できる。色素を保護するのに必要な紫外線カット能としては、波長380nmより短い紫外線領域の透過率が、20%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。紫外線カット能を有する機能膜は、紫外線吸収剤を含有する塗膜であっても、紫外線を反射または吸収する無機膜であっても良い。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等、従来公知のものを使用でき、その種類・濃度は、分散または溶解させる媒体への分散性・溶解性、吸収波長・吸収係数、媒体の厚さ等から決まり、特に限定されるものではない。尚、紫外線カット能を有する層またはフィルムは、可視光線領域の吸収が少なく、著しく可視光線透過率が低下したり黄色等の色を呈することがないことが好ましい。色素を含有する機能性フィルム(C)においては、色素を含有する層が形成されている場合はその層よりも人側のフィルムまたは機能膜が紫外線カット能を有すれば良く、高分子フィルムが色素を含有する場合はフィルムより人側に紫外線カット能を有する機能膜や機能層を有していれば良い。
【0188】
色素は、金属との接触によっても劣化する場合がある。このような色素を用いる場合、色素は導電メッシュ層(B)と出来るだけ接触しない様に配置することが更に好ましい。具体的には色素含有層が機能性フィルム(C)、高分子フィルム(A)、透光性粘着材層(D2)であることが好ましく、特には透光性粘着材層(D2)であることが好ましい。
【0189】
本発明の光学フィルターは、高分子フィルム(A)、導電性メッシュ層(B)、機能性フィルム(C)、透光性粘着材層(D1)および透光性粘着材層(D2)が、(C)/(D1)/(B)/(A)/(D2)の順に構成され、好ましくは導電性メッシュ層(B)と高分子フィルム(A)とからなる導電性メッシュフィルムと機能性フィルムとが透光性粘着剤層(D1)で貼合され、高分子フィルム(A)の導電性メッシュ層(B)とは反対側の主面に透光性粘着剤層(D2)が付されている。
【0190】
本発明の光学フィルターをディスプレイに装着する際には機能性フィルム(C)を人側に、透光性粘着剤層(D2)がディスプレイ側となるように装着する。
【0191】
本発明の光学フィルターを、ディスプレイの前面に設けて使用する方法としては、後述の透明成形物(E)を支持体とした前面フィルター板として使用する方法、ディスプレイ表面に透光性粘着材層(D2)を介して貼り合せて使用する方法がある。前者の場合、光学フィルターの設置が比較的容易であり、支持体により機械的強度が向上し、ディスプレイの保護に適している。後者の場合は、支持体が無くなることにより軽量化・薄化が可能であり、また、ディスプレイ表面の反射を防止することが出来、好適である。
【0192】
透明成形物(E)としては、ガラス板、透光性のプラスチック板があげられる。機械的強度や、軽さ、割れにくさからは、プラスチック板が好ましいが、熱による変形等の少ない熱的安定性からガラス板も好適に使用できる。プラスチック板の具体例を挙げると、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)をはじめとするアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、透明ABS樹脂等が使用できるが、これらの樹脂に限定されるものではない。特にPMMAはその広い波長領域での高透明性と機械的強度の高さから好適に使用できる。プラスチック板の厚みは十分な機械的強度と、たわまずに平面性を維持する剛性が得られればよく、特に限定されるものではないが、通常1mm〜10mm程度である。ガラスは、機械的強度を付加するために化学強化加工または風冷強化加工を行った半強化ガラス板または強化ガラス板が好ましい。重量を考慮すると、その厚みは1〜4mm程度である事が好ましいが、特に限定されない。透明成形物(E)はフィルムを貼り合せる前に必要な各種公知の前処理を行うことが出来るし、光学フィルター周縁部となる部分に黒色等の有色の額縁印刷を施しても良い。
【0193】
透明成形物(E)を用いる場合の光学フィルターの構成は、少なくとも機能性フィルム(C)/透光性粘着材層(D1)/導電性メッシュ層(B)/高分子フィルム(A)/透光性粘着材層(D2)/透明成形物(E)である。また、透明成形物(E)の透光性粘着材層(D2)と貼り合せられる面とは反対の主面に、機能性フィルム(C)が透光性粘着材層を介して設けられても良い。この場合、人側に設けられる機能性フィルム(C)と同じ機能・構成を有する必要は無く、例えば、反射防止能を有している場合は、支持体を有する光学フィルターの裏面反射を低減することができる。同じく、透明成形物(E)の透光性粘着材層(D2)と貼り合せられる面とは反対の主面に、反射防止膜等の機能膜(C2)を形成しても良い。この場合は、機能性膜(C2)を人側にしてディスプレイに設置することもできるが、前述の通り、紫外線カット能を有する層を色素含有層および色素含有層より人側の層に設けることが好ましい。
【0194】
電磁波シールドを必要とする機器には、機器のケース内部に金属層を設けたり、ケースに導電性材料を使用して電磁波を遮断する必要があるが、ディスプレイの如く表示部に透明性が必要である場合には、本発明の光学フィルターの如く透光性の導電層を有した窓状の電磁波シールドフィルタを設置する。ここで、電磁波は導電層において吸収されたのち電荷を誘起するため、アースをとることによって電荷を逃がさないと、再び光学フィルターがアンテナとなって電磁波を発振し電磁波シールド能が低下する。従って、光学フィルターとディスプレイ本体のアース部が電気的に接触している必要がある。そのため、前述の透光性粘着材層(D1)および機能性フィルム(C)は、外部から導通を取ることが出来る導通部を残して導電性メッシュ層(B)上に形成されている必要がある。導通部の形状は特に限定しないが、光学フィルターとディスプレイ本体の間に、電磁波の漏洩する隙間が存在しないことが肝要である。従って、導通部は、導電性メッシュ層(B)の周縁部且つ連続的に設けられている事が好適である。すなわち、ディスプレイの表示部である中心部分を除いて、枠状に、導通部が設けられている事が好ましい。
【0195】
導通部はメッシュパターン層であっても、パターニングされていない、例えば金属箔ベタの層であっても良いが、ディスプレイ本体のアース部との電気的接触を良好とする為には、金属箔ベタ層のようにパターニングされていない導通部であることが好ましい。
【0196】
導通部が、例えば金属箔ベタのようにパターニングされていない場合、および/または、導通部の機械的強度が十分強い場合は、導通部そのままを電極として使用できて好適である。
【0197】
導通部の保護のため、および/または、導通部がメッシュパターン層である場合にアース部との電気的接触を良好とするために、導通部に電極を形成することが好ましい場合がある。電極形状は特に限定しないが、導通部をすべて覆うように形成されている事が好適である。
電極に用いる材料は、導電性、耐触性および透明導電膜との密着性等の点から、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、亜鉛、カーボン等の単体もしくは2種以上からなる合金や、合成樹脂とこれら単体または合金の混合物、もしくは、ホウケイ酸ガラスとこれら単体または合金の混合物からなるペーストを使用できる。ペーストの印刷、塗工には従来公知の方法を採用できる。また市販の導電性テープも好適に使用できる。導電性テープは両面ともに導電性を有するものであって、カーボン分散の導電性接着剤を用いた片面接着タイプ、両面接着タイプが好適に使用できる。電極の厚さは、これもまた特に限定されるものではないが、数μm〜数mm程度である。
【0198】
本発明によれば、プラズマディスプレイの輝度を著しく損なわずに、その画質を維持または向上させることができる、光学特性に優れた光学フィルターを得ることが出来る。また、プラズマディスプレイから発生する健康に害をなす可能性があることを指摘されている電磁波を遮断する電磁波シールド能に優れ、さらに、プラズマディスプレイから放射される800〜1000nm付近の近赤外線線を効率よくカットするため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる光学フィルターを得ることができる。さらにまた、耐候性にも優れた光学フィルターを低コストで提供することが出来る。
【0199】
[体積抵抗率と表面抵抗]
体積抵抗率は単位体積あたりの電気抵抗である。体積抵抗率は物質固有の物理量であり、単位はΩcmで表される。
表面抵抗は塗装膜、薄膜の分野で用いられる、単位面積あたりの電気抵抗である。表面抵抗は各導電膜固有の物理量でありΩ/sqの単位で示される。本発明において表面抵抗は
処理終了後、十分に乾燥した透光性導電性膜を測定している。JIS K 7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率測定法」で規定されている四探針法を用いて測定した。
表面抵抗は電磁波シールド性と相関があり、低抵抗であるほど、電磁波シールド性が高い。PDP用途として必要とされる表面抵抗値は、本体の電磁波放射強度によるが、業務用
途として2.5Ω/sq以下、民生用途として1.5Ω/sq以下であることが米国のFCC(連邦通信委員会)規格や日本のVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)技術基準により規定さ
れる。
【実施例1】
【0200】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り本発明の範囲を限定するものではなく、具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0201】
(ハロゲン化銀感光材料)
水媒体中のAg67gに対してゼラチン12.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=30ル%)を含有する乳剤を調製した。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、更に塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が1g/m2となるようにポリエチレンテレフタレート(PET)上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は1/1とした。
幅30cmのPET支持体に25cmの幅で20m分塗布を行い、塗布の中央部24cmを残すように両端を3cmずつ切り落としてロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
【0202】
<露光>
特開2004-1244号公報の実施形態に記載のDMD(デジタル・ミラー・デバイス)を用いた露光ヘッドを25cm幅になるようにならべた半導体レーザーを用い、感光材料の感光層上にレーザー光が結像するように露光ヘッドおよび露光ステージを湾曲させて配置し、感材送り出し機構及び巻き取り機構を取り付けた上、露光面のテンション制御及び送り出し、巻き取り機構の速度変動が露光部分の速度に影響しないようにバッファー作用を有する撓みを設けた連続露光装置にて行った。露光の波長は400nm、ビーム形は12μmの略正方形、及びレーザー光源の出力は100μJであった。
露光のパターンは12μm画素が45度の格子状に、ピッチが300μm間隔で幅24cm長さ10m連続するように行った。後述するめっき処理後の銅のパターンが12μm線幅300ミクロンピッチであることが確認された。
【0203】
<現像処理>
[現像液1L組成]
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
【0204】
[定着液1L処方]
チオ硫酸アンモニウム(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・一水塩 25 g
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
【0205】
上記処理剤を用いて露光済み感材を、富士フイルム社製自動現像機FG-710PTSを用いて現像、停止、乾燥、定着、水洗、乾燥という工程で処理を行った。乾燥条件は乾燥温度60℃、水切りを20L/minの風量のエアナイフで行った。この際、乾燥時間を60秒、30秒、15秒、5秒、0秒(つまり乾燥工程なし)で行い、それぞれサンプル1、サンプル2、サンプル3、サンプル4、サンプル5とした。
その他の処理条件として現像32℃ 30秒、定着32℃ 23秒、水洗 流水(5L/min)で20秒処理で行い、微導電性銀画像を形成した。
【0206】
これらのサンプルの表面抵抗は、ダイヤインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP-T610)直列4探針プローブ(ASP)によって測定した(表1)。
【0207】
【表1】

【0208】
表1から明らかなように、定着前の乾燥を十分に行い、ハロゲン化銀感光層の定着前の含水率を下げることによって現像定着処理後の表面抵抗を小さくすることできることが判る。またサンプル1〜5の比較からハロゲン化銀感光層の定着前の含水率を低減させることが現像定着処理後の高導電化に大きく寄与することが判る。サンプル4は、本発明例ではあり、表面抵抗も僅かに現象してはいるが、含水率が97%と高いレベルでは発明の効果は僅かであって、さらに含水率が90%以下、例えばサンプル1〜3のように低下すると表面抵抗の減少は顕著となる。
【実施例2】
【0209】
<電解めっき処理>
実施例1により得られた導電性銀メッシュに対して、図1に示す電解めっき槽10を備えた電解めっき装置を用いてめっき処理を行った。なお、上記感光材料をその銀メッシュ面が下向きとなるように(銀メッシュ面が給電ローラと接するように)、電解めっき装置にとり付けた。
図2の給電ローラ12a,12bとして、鏡面仕上げしたステンレス製ローラ(10cmφ、長さ70cm)の表面に0.1mm厚の電気銅めっきを施したものを使用し、ガイドローラ14およびその他の搬送ローラとしては、銅めっきしていない5cmφ、長さ70cmのローラを使用した。また、ガイドローラ14の高さを調製することで、ライン速度が違っても一定の液中処理時間が確保されるようにした。
【0210】
また入り口側の給電ローラ12aとフィルムの銀メッシュ面とが接している面の最下部とめっき液面との距離(図1に示す距離La)を、10cmとした。出口側の給電ローラと感光材料の銀メッシュ部分が接している面の最下部とめっき液面との距離(図1に示す距離Lb)を、20cmとした。また、ライン搬送速度を2m/分とした。
【0211】
めっき処理におけるめっき処理液の組成、各浴の浸漬処理時間(液中時間)および各めっき浴の印加電圧は以下のとおりである。なお、処理液や水洗の温度は全て25℃であった。
・電解銅めっき液組成(補充液も同組成)
硫酸銅五水塩 78g
硫酸 185g
塩酸(35%) 0.06mL
カパーグリームPCM 7mL
(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)
純水を加えて 1L
【0212】
〔酸洗浄液 1L処方〕
硫酸 190g
塩酸(35%) 0.06mL
カパーグリームPCM 5mL
(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)
純水を加えて 1L
【0213】
〔防錆液 1L処方〕
硝酸ナトリウム 0.2モル/L水溶液
【0214】
・めっき浴の処理時間および印加電圧
酸洗浄 30秒
水洗 1分
めっき1 45秒 電圧 57V
めっき2 45秒 電圧 16V
めっき3 45秒 電圧 10V
めっき4 45秒 電圧 5V
水洗 1分
防錆 30秒
水洗 1分
【0215】
めっき後の表面抵抗はいずれも0.3Ω/□以下であり、実用的に十分低い値であった。
【0216】
フィルム試料は10mずつ処理し、処理後のメッシュ面の表面抵抗を測定した。また、目視によりめっきムラを評価した。めっきムラ評価の基準は以下の通りとした。
○ :ムラが殆ど見えない
△ :ムラが見える部分の面積が全体の20%未満
× :ムラが見える部分の面積が全体の20%以上
以上の評価結果を表2に示す。
【0217】
【表2】

【0218】
表2から明らかなように、定着前の乾燥を十分に行い、現像定着処理後の表面抵抗を小さくすることでめっきムラを低減できることが分かる。
【実施例3】
【0219】
<無電解めっき処理>
実施例1により得られた導電性銀メッシュに対して、無電解銅めっきを行った。
まず下記の活性化液を用いて現像済み試料を活性化処理した。
活性化液1L処方
PdCl2 0.17g
HCl溶液(2N) 27.0ml
上記活性化液を用い、処理条件としては活性化35℃で1分行い、次いで水洗を流水で2分行った。
【0220】
つぎに、下記のめっき液を用いて無電解銅めっき処理した。
【0221】
無電解めっき液処方
硫酸銅 0.05mol/l
ホルマリン 0.30mol/l
トリエタノールアミン 0.10mol/l
ポリエチレングリコール 80ppm
pH 12.5に調整
【0222】
めっき後の表面抵抗はいずれも0.3Ω/□以下であり、実用的に十分低い値であった。
【0223】
処理条件は、無電解めっきを35℃でエアレーション条件0.4L/L溶液/分の下で行ったのち、水洗を流水で2分行った。表面抵抗値が0.3Ω/□(めっき厚は3μm)になるまで無電解銅めっきした。めっきに要した時間は表3に記載の通りである。
【0224】
【表3】

【0225】
表3から明らかなように、定着前の乾燥を十分に行い、現像定着処理後の表面抵抗を小さくするとめっき時間を短縮できることできることが分かる。
【0226】
さらに、上記実施例1〜3から明らかな本発明の更なる利点は、感光材料の製造から現像・物理現像処理工程までを通じてロール型の連続ウエッブの形態で製造を行うことができるので、製造工程が合理的で大量の透光性導電性膜を安価に製造することができる。
【実施例4】
【0227】
上記実施例2のサンプル1に対して、銅黒化処理液で処理して銅表面を黒化した。使用した黒化処理液は市販のコパーブラック((株)アイソレート化学研究所製)を用いた。PET面側に、総厚みが28μmの保護フィルム(パナック工業(株)製、品番;HT-25)をラミネーターローラーを用いて貼り合わせを行った。
また、電磁波シールド膜(金属メッシュ)側に、ポリエチレンフィルムにアクリル系粘着剤層が積層された総厚みが65μmの保護フィルム((株)サンエー化研製、品名;サニテクトY-26F)をラミネーターローラーを用いて貼り合わせを行った。
【0228】
次いで、PET面を貼り合わせ面にして厚さ2.5mm、外形寸法950mm×550mmのガラス板に透明なアクリル系粘着材を介して貼り合わせた。
【0229】
次に、外縁部20mmを除いた内側の該導電性メッシュ層上に、厚さ25μmのアクリル系透光性粘着材を介して、厚さ100μmPETフィルム、反射防止層、近赤外線吸収剤含有層からなる反射防止機能付近赤外線吸収フィルム(住友大阪セメント(株)製 商品名クリアラスAR/nIR)を貼り合わせた。該アクリル系透光性粘着材層中には光学フィルターの透過特性を調整する調色色素(三井化学製 PS-Red-g,PS-Violet-RC)を含有させた。さらに、該ガラス板の反対の主面には、粘着材を介して反射防止フィルム(日本油脂(株)製 商品名リアルック8201)を貼り合わせ、光学フィルターを作製した。
【0230】
得られた光学フィルターは、保護フィルムを有した電磁波シールドフィルムを用いて作成されたため、傷や金属メッシュの欠陥な極めて少ないものであった。また金属メッシュが黒色であってディスプレイ画像が金属色を帯びることがなく、また、実用上問題ない電磁波遮蔽能及び近赤外線カット能(300nm〜800nmの透過率が15%以下)を有し、両面に有する反射防止層により視認性に優れていた。また、色素を含有させることによって、調色機能を付与できており、プラズマディスプレイ等の光学フィルターとして好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】本発明のめっき処理方法に好適に用いられる電解めっき槽の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0232】
10 電解めっき装置
11 電解槽
12a,12b 給電ローラ
14 ガイドローラ
13 アノード板
16 フィルム
17 液きりローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にハロゲン化銀乳剤層を含む少なくとも1層の親水性コロイド層を有する黒白ハロゲン化銀写真感光材料に露光と現像処理を施して露光部に導電性金属銀部を形成させたのち定着処理を施して、導電性金属銀部と透光性非露光部から構成される透光性導電性膜を製造する方法において、現像処理と定着処理の間に乾燥を行うことを特徴とする透光性導電性膜の製造方法。
【請求項2】
前記定着前の乾燥が支持体上の現像処理済み乳剤層の含水率が90%以下になるように行われる乾燥であることを特徴とする請求項1に記載の透光性導電性膜の製造方法。
【請求項3】
前記定着前の乾燥が10℃以上90℃以下の温度で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の透光性導電性膜の製造方法。
【請求項4】
前記定着前の乾燥が現像処理済み乳剤層の水切り及び/または加熱を伴ってなされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透光性導電性膜の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥と定着の間において、又は乾燥と定着の後に、さらに透光性導電性膜に電解めっきを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透光性導電性膜の製造方法。
【請求項6】
電解めっきが電解銅めっきであることを特徴とする請求項5に記載の透光性導電性膜の製造方法。
【請求項7】
上記乾燥と定着の間において、又は乾燥と定着の後に、さらに透光性導電性膜に無電解めっきを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透光性導電性膜の製造方法。
【請求項8】
無電解めっきが無電解銅めっきであることを特徴とする請求項7に記載の透光性導電性膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの製造方法で得られたことを特徴とする透光性導電性膜。
【請求項10】
請求項9に記載の透光性導電性膜を含んでなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜。
【請求項11】
請求項9に記載の透光性導電性膜を含んでなることを特徴とする光学フィルター。
【請求項12】
請求項10に記載の透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2006−324203(P2006−324203A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148408(P2005−148408)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】