説明

透明なポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー

【課題】ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する透明なコポリマー。このコポリマーは種々の物品、特に運動靴の製造に用いられる。
【解決手段】ポリエーテルブロックが数平均分子量Mnが200〜4000g/molのPTMGで主として構成され、ポリアミドブロックが直鎖(非環状、非分岐鎖)の脂肪族の半結晶の主モノマーと、非晶質ポリエーテルブロックとの非混和性を維持した状態でと主モノマーの結晶化度を下げるのに十分な量の少なくとも一種のコモノマーとで構成され、さらに、Dショアー硬度が20〜70であることを特徴とするコポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーに関するものである。
本発明のコポリマーはポリエーテル−blocks−アミド(PEBA)ともよばれ、熱可塑性エラストマーであり、さらにはポリアミドエラストマーともよばれる。このコポリマーは多くの物品、特に運動靴の製造に用いられる。
本発明のコポリマーの透明度は厚さ2〜4mmのシートで測定する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは多くの特許に開示されている。
下記文献に開示のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーはポリアミドブロックがPA−6(ナイロン−6またはポリカプロラクタム)からなり、ポリエーテルブロックが数平均分子量Mnが680〜4040のPTMG(ポリテトラメチレングリコールまたはポリオキシテトラメチレングリコールまたはポリテトラヒドロフラン)からなる。
【特許文献1】米国特許第4,820,796号明細書
【0003】
しかし、このコポリマーは透明度が不十分である。
下記文献に記載のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーはポリアミドブロックがPA−6(ナイロン−6またはポリカプロラクタム)からなり、ポリエーテルブロックが数平均分子量Mnが1000〜2000のPTMG(ポリテトラメチレングリコールまたはポリオキシテトラメチレングリコールまたはポリテトラヒドロフラン)からなる。
【特許文献2】米国特許第5,280,087号明細書
【0004】
このコポリマーも透明度が不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者はポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する新規なコポリマーを見出した。この新規なコポリマーはポリアミドブロックがポリエーテルブロックと非混和性である微結晶コポリアミドであり、ポリエーテルブロックが数平均分子量Mnが200〜400のPTMGからなる。このコポリマーは本発明の意味で透明である。
このコポリマーのショアーD硬度は20〜70であるのが有利である。このコポリマーは湿気または水と接触したときの吸水性が低く、優れた機械的特性を有する。
【0006】
ポリアミドブロックがコポリアミドからなる、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは公知であるが、必ず親水性のポリエーテルブロックと組み合わされている。
下記文献にはコポリアミドからなるポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー開示されている。
【特許文献3】特開平05-078477号(1993年3月30日公開)
【0007】
しかし、ポリエーテルブロックは33〜99重量%のPEG(ポリエチレングリコールまたはポリオキシエチレングリコール)を含むPTMGとPEGとのブレンドである。PTMGの数平均分子量Mnは1000〜2000で、PEGの数平均分子量Mnは1000〜2020である。このコポリマーは樹脂の帯電防止性に用いられる。また、蒸気浸透性が優れていると記載されている。
【0008】
下記文献には、融点が135℃以下、好ましくは90〜135℃のポリアミドブロックと親水性ブロックとを有するコポリマーで被覆された材料からなる多層構造物が開示されている。
【特許文献4】国際特許公開第WO99/33659号公報
【0009】
ポリアミドブロックは低分子量かコポリアミドである。コポリマーの親水性ブロックは少なくとも50重量%の下記単位を含むポリエーテルブロックである:
【化1】

【0010】
このコポリマーのポリエーテルブロックの量はこのコポリマーの10〜40重量%である。この多層構造物材料は紙、厚紙、アセテート繊維不織布、ポリオレフィンをベースとする不織布、綿、ポリアミドおよびポリエステルの中から選択される織布からなる。
【0011】
下記文献には上記特許文献4(国際特許公開第WO99/33659号)に記載の構造のコポリマーと類似のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーが開示されている。
【特許文献5】欧州特許第1,046,675号公報
【0012】
このコポリマーは熱可塑性ポリマーを帯電防止性にするために熱可塑性ポリマーの添加剤として用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ポリエーテルブロックが数平均分子量Mnが200〜4000g/molのPTMGで主として構成され、ポリアミドブロックが直鎖(非環状、非分岐鎖)の脂肪族の半結晶の主モノマーと、非晶質ポリエーテルブロックとの非混和性を維持した状態でと主モノマーの結晶化度を下げるのに十分な量の少なくとも一種のコモノマーとで構成され、さらに、Dショアー硬度が20〜70であることを特徴とする、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
「透明」とは厚さが少なくとも2mmの試験片での不透明度(opacite)が12%以下である状態と定義される。
【0015】
本発明はさらに、このコポリマーから作られた物品に関するものである。これらの物品は射出成形、圧縮成形、押出し成形等の熱可塑性ポリマーの加工で一般的な方法を用いて製造できる。例えば、厚さ0.5〜4mmのシートは運動靴の底を作るのに用いられる。
【0016】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは下記(1)〜(3)のような反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られる:
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(2)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化α,ω-ポリオキシアルキレンブロックをシアノエチル化および水素添加して得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール(この場合に得られる生成物を特にポリエーテルエステルアミドという)。
【0017】
ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば連鎖制限剤のジカルボン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば連鎖制限剤のジアミン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーはランダムに分散する単位を含んでいてもよい。このポリマーはポリエーテルとポリアミドブロック先駆体との同時反応で製造される。
【0018】
例えば、ポリエーテルジオールと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを反応させることができる。基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られる。さらに、各成分がランダムに反応し、ポリマー鎖中に分散した成分を含むことがある。
また、ポリエーテルジアミン、ポリアミド先駆体および連鎖制限剤の二酸を反応させることもできる。この場合、基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られ、さらに各成分がランダムに反応してポリマー鎖中に分散した成分を含むこともある。
ポリアミドブロックの半結晶モノマーは直鎖の脂肪族α,ω−アミノカルボン酸(以下、アミノ酸という)、ラクタム(直鎖の脂肪族α,ω−アミノカルボン酸に対応)または二酸に結合した環状ジアミンであり、いずれも直鎖の脂肪族である。
【0019】
脂肪族α,ω−アミノカルボン酸の例としてはアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。脂肪族ジアミンの例としてはヘキサメチレンジアミンおよびドデカメチレンジアミンが挙げられる。脂肪族二酸の例としてはブタンジオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボキシル酸が挙げられる。
【0020】
二酸とそれに結合したジアミン(いずれも直鎖の脂肪族)から成る半結晶モノマーとしては6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンと、9〜12個の炭素原子を有する脂肪族二酸との縮合で得られる脂肪族ポリアミドが好ましい。この6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンと9〜12個の炭素原子を有する脂肪族二酸との縮合で得られる脂肪族ポリアミドの例としては下記が挙げられる:
PA−6,12(ヘキサメチレンジアミンと1,12−ドデカンジオン酸との縮合)
PA−9,12(C9ジアミンと1,12−ドデカンジオン酸との縮合)
PA−10,10(C10ジアミンと1,10−デカンジオン酸との縮合)
PA−10,12(C9ジアミンと1,12−ドデカンジオン酸との縮合)
【0021】
コモノマーは結晶格子を崩して透明度を上げると同時に十分な結晶度を維持してポリアミドブロックとPTMGブロックとの間を相分離させて優れた機械特性を維持するために導入する。このコモノマーは任意のコモノマーにすることができ、ラクタム、α,ωアミノカルボン酸、二酸に結合したジアミンにすることができる。例としては非分岐鎖の直鎖、分岐鎖および環状モノマーが挙げられる。
ラクタム、α,ω−アミノカルボン酸、二酸、好ましくは直鎖の脂肪族二酸、例えばセバシン酸に結合した環状ジアミンを用いるのが有利である。環状ジアミンはIPD(イソフォロンジアミン)またはPACM20(下記式のビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンにすることができる:
【化2】

【0022】
結晶性の主モノマーはラクタム12であるのが有利である。PA−12のTgは50℃であり、コモノマーを添加してTgを70℃に上げ、結晶化度を下げるのが好ましい。ポリアミドブロックはラクタム12(主として結晶質)およびIPD.10(イソフォロンジアミンとセバシン酸)またはラクタム12およびPACM.12(PACM20とC12二酸)から構成するのが有利である。別の変形例ではポリアミドブロックはラクタム12(主として結晶質)とラクタム6または11−アミノウンデカン酸とで構成される。さらに別の変形例ではポリアミドブロックはラクタム12(主として結晶質)とラクタム6および11−アミノウンデカン酸とで構成される。
結晶性モノマーと結晶格子を崩すコモノマーとの比率は、結晶性モノマーがポリアミドブロックの構成成分の少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも70重量%となる比率である。
【0023】
酸末端基またはアミン末端基を有するポリアミドブロックを作る場合には、連鎖制限剤の二酸またはジアミンの存在下でポリアミドブロックを作る。先駆体が既に二酸またはジアミンを含む場合は、それらを過剰に用いるだけでよい。
ポリアミドブロックの数平均分子量はMnは500〜10,000、好ましくは500〜4500である。
【0024】
ポリアミドブロックの例としては下記が挙げられる:
カプロラクタムと11−アミノウンデカン酸とラウリルラクタムとの縮合で得られる6/11/12ブロック。重量比率はそれぞれ10〜20/20〜40/50〜80にすることができる。このポリアミドブロックの数平均分子量Mnは500〜4200にすることができる。
カプロラクタムとラウリルラクタムとの縮合で得られる6/12ブロック。重量比率は18〜45%のカプロラクタムに対して55〜82%のラウリルラクタムにすることができる。このコポリマーブロックの数平均分子量Mnは1000〜3000にすることができる。
【0025】
ポリエーテルブロックの比率はポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの5〜85重量%である。ポリエーテルブロックはテトラヒドロフラン単位からなる。この単位は下記の式で表わされるポリテトラグリコール(PTMGブロックともよばれる)鎖のとなる:
【化3】

【0026】
本発明のコポリマー特性が維持される限り、ポリエーテルブロックが少量の他のアルキレンオキシドを含んでも本発明から逸脱するものではない。「少量」とは最大で約5重量%を意味する。同様に、本発明のコポリマー特性が維持される限り、本発明のコポリマーはPTMG以外のポリエーテルを含むことができる。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー中のポリエーテルブロックの比率はコポリマーの10〜40重量%、好ましくは10〜25重量%であるのが有利である。
【0027】
ポリエーテルジオールブロックをそのまま用い、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合するか、アミノ化してポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと縮合する。OH末端基がNH2官能基で置換され、次いでポリアミドブロックと縮合されたポリテトラメチレングリコール(ポリエーテルジオール)に由来するポリエーテルブロックも便宜上PTMGブロックとよぶことにする。また、ポリエーテルジオールブロックをポリアミド先駆体および連鎖制限剤である二酸と混合してランダムに分散した単位を有するポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーにすることもできる。
ポリエーテルブロックの数平均分子量はMnは300〜1100、好ましくは300〜700であるのが有利である。
【0028】
ショアーD硬度は40〜70であるのが有利である。硬度はPTMGに対するポリアミドの比率の増加とともに上がる。PTMGブロックの量を変えずにポリアミドブロックの量を増すと硬度は高くなる。
本発明のコポリマーはさらに固有粘度でも特徴付けられる。ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの共重縮合で得られたものでも、1段階反応で得られたものでも、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーの固有粘度(メタクレゾール中の初期濃度0.8g/100ml、25℃で測定)は例えば0.8〜2.5である。
【0029】
本発明コポリマーはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを結合できる任意の手段を用いて製造できる。実際には2段階法と、1段階法の2つの方法が用いられる。2段階法では初めにポリアミドブロックを作り、第2段でポリエーテルと結合する。1段階法ではポリアミド先駆体、連鎖制限剤およびポリエーテルを同時に混合する。この場合には基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られ、各成分がランダムに反応してポリマー鎖中に分散した成分を含む。1段階法も2段階法も触媒の存在下で行うのが有利である。下記文献に記載の触媒を用いることができる。
【特許文献6】米国特許第4,331,786号明細書
【特許文献7】米国特許第4,115,475号明細書
【特許文献8】米国特許第4,195,015号明細書
【特許文献9】米国特許第4,839,441号明細書
【特許文献10】米国特許第4,864,014号明細書
【特許文献11】米国特許第4,230,838号明細書
【特許文献12】米国特許第4,332,920号明細書
【0030】
1段階法ではポリアミドブロックもできる。このパラグラフの最初に本発明コポリマーがポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを結合できる任意の手段を用いて製造できると述べたのはそのためである。このコポリマーの製造方法は上記特許文献4(国際特許公開第WO99/33659号)および上記特許文献5(欧州特許第1,046,675号公報)に開示されている。
【0031】
以下、ポリアミドブロックがカルボキシル末端基を有するブロックであり、ポリエーテルがポリエーテルジオールである場合の製造方法を詳細に説明する。
2段階法では初めに連鎖制限剤であるジカルボン酸の存在下でポリアミド先駆体を縮合してカルボキシル末端基を有するポリアミドブロックを作り、第2段階でポリエーテルと触媒を添加する。ポリアミド先駆体がラクタムまたはα,ω-アミノカルボン酸だけの場合にはジカルボン酸を添加する。ポリアミド先駆体がジカルボン酸を既に含む場合にはジアミンを化学量論量より過剰に用いる。反応は一般に180〜300℃、好ましくは200〜290℃で行い、反応器内の圧力は5〜30barとし、2〜3時間これを維持する。圧力をゆっくりと下げて、反応器を大気圧に戻し、過剰な水は例えば1、2時間の蒸留で除去する。
【0032】
カルボン酸末端を有するポリアミドが生成した後、ポリエーテルと触媒とを添加する。ポリエーテルおよび触媒は1回または複数回で添加できる。好ましい実施例ではポリエーテルを初めに添加する。ポリエーテルのOH末端基とポリアミドのCOOH末端基との反応と、エステル結合の形成および水の除去が一緒に始まる。反応混合物中の水を蒸留によってできるだけ除去した後、触媒を導入してポリアミドブロックのポリエーテルブロックへの結合を完成させる。この第2段階は好ましくは少なくとも6mmHg(800Pa)の減圧下で反応物および得られたコポリマーが溶融状態となるような温度で攪拌しながら実施する。この温度は例えば100〜400℃、一般に200〜300℃でよい。溶融ポリマーから攪拌器に加わるトルクを測定するか、攪拌器の消費電力を測定することによって反応をモニターし、このトルクまたは消費電力値によって反応の終点を決定する。触媒とはエステル化によってポリアミドブロックをポリエーテルブロックに結合させる任意の化合物を意味する。この触媒はチタン、ジルコニウムおよびハフニウムで形成される群の中から選択される金属(M)の誘導体であるのが有利である。
【0033】
この誘導体の例としては一般式:M(OR)4で表されるテトラアルコキシドが挙げられる(ここで、Mはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、Rは、1〜24個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい)。
本発明方法で触媒として用いられるテトラアルコキシドのR基中のC1〜C24アルキル基は例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシルおよびヘキサドデシル等である。好ましい触媒はテトラアルコキシドであり、そのR基はC1〜C8アルキル基で、互いに同一でも、異なっていてもよい。そのような触媒の例としてはZr(OC254、Zr(O−isoC374、Zr(OC494、Zr(OC5114、Zr(OC6134、Hf(OC254、Hf(OC494およびHf(O−isoC374が挙げられる。
【0034】
本発明方法で用いられる触媒は上記式:M(OR)4で表される一種または複数のテトラアルコキシドのみにすることができるが、一種または複数のテトラアルコキシドと、式:(R1O)pYで表される一種または複数のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコラートとを組み合せることもできる(ここで、R1は炭化水素残基、好ましくはC1〜C24、さらに好ましくはC1〜C8アルキル残基を表し、Yはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表し、pはYの原子価である)。混合触媒として組合せるこのアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシドおよびジルコニウムまたはハフニウムテトラアルコキシドの量は広範囲に変えることができるが、アルコラートのモル比がテトラアルコキシドのモル比とほぼ同じになるような量のアルコラートおよびテトラアルコキシドを用いるのが好ましい。
【0035】
触媒の重量比(すなわち、触媒がアルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコラートを含まない場合のテトラアルコキシドの量、または、触媒がこれら2種類の化合物の組み合せから成る場合の一種または複数のテトラアルコキシドとアルコキシドの量)はジカルボン酸化されたポリアミドとポリオキシアルキレングリコールとの混合物の重量の0.01〜5%、好ましくは0.05〜2%にするのが好ましい。
【0036】
他の誘導体の例としては金属(M)塩、特に金属(M)と有機酸との塩および金属(M)の酸化物および/または金属(M)の水酸化物と有機酸との錯塩を挙げることができる。有機酸は蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリン(valerique)酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、サリチル酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸およびクロトン酸にすることができる。酢酸およびプロピオン酸が特に好ましく、Mはジルコニウムであるのが有利である。これらの塩はジルコニル塩とよぶことができる。本出願人はこのジルコニウムと有機酸との塩または上記錯塩はプロセス中にZrO++を放出すると考えているが、この説明に縛られるものではない。酢酸ジルコニル(zirconyl acetate)の名称で市販の製品が用いられ、その使用量はM(OR)4誘導体と同じである。
【0037】
上記方法および触媒は上記の特許文献12(米国特許第4,332,920号明細書)、上記の特許文献11(米国特許第4,230,838号明細書)、上記の特許文献6(米国特許第4,331,786号明細書)および下記文献に記載されている。
【特許文献13】米国特許第4,252,920号明細書
【特許文献14】特開平7−145,368A号公報
【特許文献15】特開平6−287,547A号公報
【特許文献16】欧州特許第613,919号公報
【0038】
1段階法では、2段階法で用いられる全ての反応物、例えばポリアミド先駆体、連鎖制限剤のジカルボン酸、ポリエーテルおよび触媒の全てを混合する。これらは前記2段階法で用いたものと同じ反応物および触媒である。ポリアミド先駆物質がラクタムのみの場合には少量の水を添加するのが有利である。
コポリマーは基本的に同一のポリエーテルブロックと同一のポリアミドブロックとを有するが、ランダムに反応した種々の反応物が少量ポリマー鎖中にランダムに分散していてもよい。
【0039】
2段階法の第一段階と同様に、反応器を閉じ、攪拌しながら加熱する。圧力は5〜30barにする。変化しなくなったら、溶融反応物を激しく攪拌しながら反応器を減圧する。2段階法の場合と同様に反応をモニターする。
1段階法で使用する触媒は金属(M)と有機酸との塩または金属(M)の酸化物および/または金属(M)の水酸化物と有機酸との錯塩にするのが好ましい。
本発明コポリマーには染料、顔料、紫外線安定剤および酸化防止剤を添加することができる。
【実施例】
【0040】
実施例1
PAブロックが4000g/molで、6/11/12成分の比が10/30/60で、ポリエーテルが650MnのPTMGである6/11/12−PTMGの合成
攪拌器を備えたオートクレーブ中に下記モノマーを導入した:
2.49kgのラクタム6、
7.5kgの11−アミノウンデカン酸、
15kgのラクタム12、および
0.96kgのアジピン酸。
得られた混合物を不活性雰囲気下で温度が280℃、圧力が25.5barになるまで加熱し、その状態を3時間維持した。その後、減圧操作を2時間行って大気圧に戻した。ここで650g/mol質量(4kg)のポリテトラメチレングリコールと、Zr(OBu)4(30g)とを反応器に添加し、240℃および絶対圧力8mbar(すなわち800Pa)で重合を停止した。最終生成物の固有粘度は1.5dl/gで、MFI(235℃/2.16kg)は6.15g/10分であった。射出成形で100×100×2mmのプレートを作り、透明性を測定した。透過率は460nmで68%、560nmで78%、700nmで85%、不透明度は約13%であることが確認された。
【0041】
実施例2
PAブロックが1300g/molで、6/12成分の比が20/80で、ポリエーテルが650MnのPTMGである6/12−PTMGの合成
攪拌器を備えたオートクレーブ中に下記モノマーを導入した:
3.60kgのラクタム6、
14.40kgのラクタム12、および
2.32kgのアジピン酸。
得られた混合物を不活性雰囲気下で温度が280℃、圧力が22barになるまで加熱し、その状態を3時間維持した。その後、減圧操作を2時間行って大気圧に戻した。ここで650g/mol質量(9.8kg)のポリテトラメチレングリコールと、Zr(OBu)4(60g)とを反応器に添加し、240℃および絶対圧力13mbar(1300Pa)で重合を停止した。最終生成物の固有粘度は1.5dl/gで、MFI(235℃/1kg)は10.5g/10分であった。射出成形によって100×100×2mmのプレートを作り、透明性を確認した。透過率は460nmで66%、560nmで77%、700nmで84%、不透明度は約12%であった。
【0042】
実施例3〜7
上記と同様な操作を行った。結果は[表1]に示してある。
IPD.10はイソホロンジアミンとセバシン酸との縮合物を表す。
PTMG650は数平均分子量が650のPTMGを表す。このPTMGの比率はC10酸と組み合わせた形で表してある。
PTMG1000は数平均分子量が1000のPTMGを表す。このPTMGの比率はC10酸と組み合わせた形で表してある。
PACM12はPACM20とC12酸との縮合物を表す。PTMGの比率はC12酸と組み合わせた形で表してある。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーにおいて、
ポリエーテルブロックが数平均分子量Mnが200〜4000g/molのPTMGで主として構成され、ポリアミドブロックが直鎖(非環状、非分岐鎖)の脂肪族の半結晶の主モノマーと、非晶質ポリエーテルブロックとの非混和性を維持した状態と主モノマーの結晶化度を下げるのに十分な量の少なくとも一種のコモノマーとで構成され、さらに、Dショアー硬度が20〜70であることを特徴とするコポリマー。
【請求項2】
上記の半結晶の主モノマーが11−アミノウンデカン酸およびラウリルラクタムの中から選択される請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
上記の半結晶の主モノマーが直鎖脂肪族二酸に結合した直鎖脂肪族ジアミンである請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
脂肪族ジアミンが6〜12個の炭素原子を有し、脂肪族二酸が9〜12個の炭素原子を有する請求項3に記載のコポリマー。
【請求項5】
結晶化度を下げるために導入されるコモノマーがラクタム、α,ω−アミノカルボン酸または二酸に結合した環状ジアミンである請求項1〜4のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
ポリアミドブロックがラクタム12(主として結晶性)とIPD.10(イソフォロンジアミンとセバシン酸)とで構成される請求項1〜5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
ポリアミドブロックがラクタム12(主として結晶性)とPACM.12(PACM20とC12二酸)とで構成される請求項1〜5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
ポリアミドブロックがラクタム12(主として結晶性)とラクタム6または11−アミノウンデカン酸か、ラクタム6と11−アミノウンデカン酸とで構成される請求項1〜5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
結晶性モノマーがポリアミドブロックの構成成分の少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも70重量%である請求項1〜8のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項10】
ポリエーテルブロックの量がコポリマーの10〜40重量%である請求項1〜9のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項11】
ポリエーテルブロックの数平均分子量Mnが300〜1100である請求項1〜10のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項12】
ショアーD硬度が40〜70である請求項1〜11のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のコポリマーを用いて作られた物品。

【公表番号】特表2006−503951(P2006−503951A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546122(P2004−546122)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003148
【国際公開番号】WO2004/037898
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(591004685)アルケマ (112)
【Fターム(参考)】