説明

透明ガスバリア性積層体

【課題】ポリアミド系フィルムからなる基材と無機酸化物からなる蒸着薄膜層との密着が強化され、特に湿潤時の密着力が向上されており、高強度が要求される液体等の内容物を収納するための包装フィルムとして使用した場合においても、破袋やデラミネーションの問題が発生し難い透明ガスバリア性積層体の提供を目的とする。
【解決手段】透明ポリアミド系フィルムからなる基材の一方の面には易接着層が設けられていて、この易接着層上にはプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理によって形成された前処理層を介して無機酸化物からなる蒸着薄膜層とガスバリア性被膜層とヒートシール性樹脂層とがこの相対的順序で少なくとも積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品等の包装用途に好適に用いられるガスバリア性の積層体であって、特に透明性や物理的強度に優れ、且つ高いガスバリア性を有すると共に、基材であるポリアミド系フィルムとその上部の積層部分との接着性、特に湿潤時の接着性が高く、積層部分が容易に剥離しないようにしたことを特徴とする透明ガスバリア性積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装用途に用いられる包装材料の内、食品や医療品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制してそれらの機能や性質を保持するために、酸素や水蒸気等に対するバリア性を備えていることが求められている。そのため従来は、酸素や水蒸気等に対するバリア性を有する包装材料として、温度や湿度等による影響が少ないアルミニウム箔等の金属箔をガスバリア層として用いたものが一般的に広く用いられてきた。
【0003】
ところが、アルミニウム箔等の金属箔を用いた包装材料は、ガスバリア性には優れるが、それを介して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、さらには検査の際に金属探知器が使用できない、等々の欠点を有しており、問題があった。
【0004】
そこで、これらの欠点を克服すべく、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているような、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物からなる蒸着薄膜層を高分子フィルムからなる基材上に真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により積層してなる蒸着フィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは透明性及び酸素、水蒸気等に対するガスバリア性を有しているものとして知られており、金属箔等では得ることのできない透明性、ガスバリア性の両者を有する、積層タイプの包装材料として好適に用いられている。
【0005】
上述のような特性を有する包装材料を使用し、包装容器や包装袋等の包装体を製造する場合には、その蒸着薄膜層の表面に文字・絵柄等を印刷加工したり、シーラントフィルム等を貼り合わせたり、さらには容器等の包装体の形状にすべく成形加工が施されたりと、種々の加工処理が包装材料に施されることになる。
【0006】
従って、包装材料としては、これらの加工処理の後でも初期のガスバリア性や基材上における積層部分の接着性を維持し続けることが要求されることになる。
【0007】
一方、上述したような蒸着フィルムにおいては、機械特性、光学特性、強靭性、耐ピンホール性、耐屈曲性等に優れているポリアミド系フィルムを基材として用いたものが広く適用されるようになっている。特に、基材として用いるポリアミド系フィルムの高い強靭性から、高強度が要求される液体等の重量物を収納するための包装材料として幅広く用いられるようになっている。しかし、このような構成の蒸着フィルムは、ポリアミド系フィルムからなる基材と蒸着薄膜層との接着性が湿潤時に弱くなってしまい、実用に供するには問題があった。
【0008】
このため、ポリアミド系フィルムからなる基材の上に無機酸化物の蒸着薄膜を成膜する際には、プラズマ処理を施し、ポリアミド系フィルムと蒸着薄膜層との接着性を向上させる試みがなされている。しかし、このような通常の易接着処理のみでは十分な接着性が得られていなかった。
【特許文献1】米国特許第3442686号明細書
【特許文献2】特公昭63−28017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ポリアミド系フィルムからなる基材と無機酸化物からなる蒸着薄膜層との接着力が強化され、特に湿潤時の接着力が向上されており、高強度が要求される液体等の内容物を収納するための包装体用の包装材料として使用した場合においても、破袋やデラミネーションの問題が発生し難いようにした透明ガスバリア性積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するためになされ、請求項1に記載の発明は、透明ポリアミド系フィルムからなる基材の一方の面には易接着層が設けられていて、この易接着層上にはプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理によって形成された前処理層を介して無機酸化物からなる蒸着薄膜層とガスバリア性被膜層とヒートシール性樹脂層とがこの相対的順序で少なくとも積層されていることを特徴とする透明ガスバリア性積層体である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の透明ガスバリア性積層体において、前記易接着層は、水性ポリウレタン系樹脂と、メラミン系架橋剤および/またはポリイソシアネート系架橋剤とを主体とする薄膜からなることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の透明ガスバリア性積層体において、前記前処理層のJIS B0601:2001に基づいて測定した輪郭曲線の算術平均高さRa(3)が5nm以下であることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の透明ガスバリア性積層体において、前記前処理層は、アルゴン、窒素、酸素、水素、亜酸化窒素、ヘリウムのうちの少なくとも1種類のガスを用いて行われたプラズマを利用したRIEにより形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の透明ガスバリア性積層体において、前記無機酸化物からなる無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物のいずれかからなることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の透明ガスバリア性積層体において、前記ガスバリア性被覆層は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物または、(b)塩化錫の少なくとも1方を含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主成分とするガスバリア性被膜液からなる薄膜の加熱乾燥被膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透明ガスバリア性積層体は、以上のような構成であるので、透明性や物理的な強度物性に優れ、且つ高いガスバリア性を有すると共に、ポリアミド系フィルムからなる基材上の蒸着薄膜層の接着性、特にその湿潤時における接着性が高く、積層部分が容易に剥離することがない。
【0017】
さらに、本発明の透明ガスバリア積層体は、食品、医薬品や精密電子部品等を収納するための包装体用の包装材料として好適に用いられる、実用範囲の広いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の透明ガスバリア性積層体の実施形態につき、図面を参照にして詳細に説明する。図1は本発明の透明ガスバリア性積層体の概略の断面構成を示す説明図である。
【0019】
図示の透明ガスバリア性積層体11は、透明ポリアミド系フィルムからなる基材1の一方の面に易接着層2が設けられていて、さらにこの易接着層2上にはプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理によって形成された前処理層3を介して無機酸化物からなる蒸着薄膜層4とガスバリア性被膜層5とヒートシール性樹脂層6とがこの相対的順序で少なくとも積層されてなるものである。
【0020】
基材1は、透明なポリアミド系フィルムからなるものである。具体的には、ホモポリアミド、コポリアミドあるいはこれらの混合物等からなる樹脂フィルムが使用できる。
【0021】
上記ホモポリアミドの例としては、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリ−ω―アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサミエチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリへキサメチレンデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10,10)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン12,12)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)等を挙げることができる。
【0022】
また、上記コポリアミドとしては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサミチレンジアンモニウムセバケート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/へキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサミチレンジアンモニウムセバケート共重合体等を具体的に挙げることができる。
【0023】
これらの中から、本発明の透明ガスバリア性積層体の使用環境、被包装物の種類、加工性および経済性等を考慮して、適宜のものを選択して樹脂フィルムとしたものを用いればよい。
【0024】
さらに、ポリアミド系フィルムを構成するポリアミド系樹脂中には、柔軟性を付与するため、芳香族スルホンアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸、エステル類等の可塑剤を配合したり、低弾性率のエラストマー成分やラクタム類等を配合することも可能である。
【0025】
前記エラストマー成分としては、アイオノマー樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステルブロックアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、変性アクリルゴム、変性エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。
【0026】
このような構成になる基材1の一方の面には、易接着層2が設けられている。この易接着層2は後述する無機酸化物からなる蒸着薄膜層4との接着性を向上させるために設けるものである。
【0027】
この易接着層2は、例えば水性ポリウレタン系樹脂と、メラミン系架橋剤および/また
はポリイソシアネート系架橋剤とを主体とする樹脂組成物の薄膜からなるものである。
【0028】
このような樹脂組成物を構成する水性ウレタン系樹脂としては、例えばポリオールとポリイソシアネートとの反応により得られる熱硬化型樹脂が挙げられる。ポリオールの代表的なものとしては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのようなポリエーテルポリオール、アジピン酸とエチレングリコールやブタンジオール等を縮合させたポリエステルポリオール、あるいはポリカーボネートポリオール等が挙げられる。また、ポリイソシアネートの代表的なものとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート等や、これらの誘導体が挙げられる。また、反応性を調整するためにイソシアネート基を保護したものを用いてもよい。
【0029】
上記以外の水性ウレタン系樹脂の具体例としては、アイオノマー型自己乳化型ポリウレタン樹脂、アイオノマー型自己乳化型ポリウレタンーポリ尿素樹脂等を挙げることができる。
【0030】
一方、メラミン系架橋剤としては、メラミンをメチロール化したもの等を挙げることができるが、この中では、反応の制御や貯蔵安定性の付与を考慮すると、メチロール基をアルコキシ化したものが好ましい。例としては、ヘキサメチロールメラミン、トリスメトキシメチルメラミン、ヘキサキスメトキシメラミン等が挙げられる。また、ポリイソシアネート系架橋剤としては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、およびこれらの誘導体が挙げられる。水性ポリウレタン樹脂に対するメラミン系架橋剤および/またはポリウレタン系架橋剤の割合は、80〜90/10〜5重量部が好ましい。架橋剤の配合比が5重量部より少ないと充分な架橋反応が得られず、目的とする接着性能は得られない。また、20重量部を超える配合は接着性能をさらに向上させることもないので、経済的ではない。メラミン系架橋剤およびポリイソシアネート架橋剤はともに反応性が高く、それぞれ単独で用いてもよいが、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
易接着層2の厚さは0.005〜0.5μm程度の範囲とし、前述した基材1との厚さの総計は、後述する蒸着薄膜層を形成する時の蒸着加工適性や包装用フィルムとしての機械的特性等を考慮して、10〜80μm程度の範囲とすることが好ましい。
【0032】
このような易接着層2の上方にはガスバリア層を構成する一つ目の層である無機酸化物よりなる透明な蒸着薄膜層4が位置しているが、本発明の透明ガスバリア性積層体においては、この無機酸化物よりなる蒸着薄膜層4のさらなる接着性の向上を目的として、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を易接着層2の面に対して施しておく。そして、この前処理よって形成された前処理層4を介して無機酸化物よりなる透明な蒸着薄膜層4を積層させる。
【0033】
このRIEによる処理を行うことで、その時に発生したラジカルやイオンを利用して易接着層2の表面に化学的に官能基を持たせることと、表面をイオンエッチングして不純物等を物理的に飛散させたり、平滑化することが同時に可能となり、次に行う蒸着処理において無機酸化物の緻密な薄膜を形成させることができるようになる。その結果、ポリアミド系フィルムからなる基材1と無機酸化物よりなる蒸着薄膜層4との密着性をより強化させることができ、ガスバリア性の向上と蒸着薄膜層におけるクラック発生の防止が可能となる。
【0034】
このRIEによる前処理を行うためのガスとしては、アルゴン、酸素、窒素、水素、亜
酸化窒素、ヘリウム等を使用することが出来る。これらのガスは単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。また、処理に当たっては、複数個の処理器を用い、それぞれの処理器に異なるガスを用い、連続してRIEを施すようにしてもよい。
【0035】
一方、上述のようにして施された前処理層3を介して設けられているのが無機酸化物からなる透明な蒸着薄膜層4である。この無機酸化物からなる蒸着薄膜層4は、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはこれらの混合物等の無機酸化物からなり、透明性を有し、且つ酸素、水蒸気等に対するガスバリア性を有する層であればよい。従って、上述した無機酸化物に限定されることはなく、上記条件に適合する材料であればその他の無機酸化物で形成されていてもよい。
【0036】
この無機酸化物からなる蒸着薄膜層4を形成する方法としては、一般的な真空蒸着法や、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等を用いることが可能である。この中では、生産性の観点から、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅の広さを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また、蒸着薄膜層の透明性を上げるため、蒸着時に酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いても構わない。
【0037】
蒸着薄膜層4の厚さは、使用される無機酸化物の種類や構成によりその最適な値が決定されるが、一般的には1〜500nmの範囲にあることが望ましい。ただし、膜厚が1nm未満であると均一な薄膜が形成し難く、ガスバリア層としての機能を十分に果たすことが難しくなる。一方、膜厚が500nmを越える場合は、蒸着薄膜にフレキシビリティを保持させることが難しくなり、薄膜形成後に折り曲げ、引っ張り等の外的要因により亀裂が発生し易くなり、また経済的な面からも好ましくない。
【0038】
このような構成の無機酸化物からなる蒸着薄膜層4上に設けられているガスバリア性被覆層5は、蒸着薄膜層4を保護するとともに、蒸着薄膜層4との相乗効果により高いガスバリア性を発現させるために設けられる、ガスバリア層を構成する二つ目の層であり、例えば、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物または、(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするガスバリア性被覆液を塗布し、加熱乾燥して形成される。
【0039】
以下、上記組成のガスバリア性被覆液の各構成成分についてさらに詳しく説明する。
【0040】
まず、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。この中では、特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)は、得られるガスバリア性被覆層5のガスバリア性が最も優れたものとなるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものであり、例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分鹸化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等を用いることができる。
【0041】
また、金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C25等のアルキル基)で表される化合物であり、テトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕等が具体例として挙げられる。中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムは加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0042】
このような構成材料からなるガスバリア性被覆液には、ガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等の公知の添加剤を必要に応じて適宜加えることも可能である。
【0043】
ガスバリア性被覆液の塗布方法としては、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法等の従来公知の方法を用いることが可能である。
【0044】
また、ガスバリア性被膜層5は、乾燥後の厚さが0.01μm未満の場合は、均一な塗膜が得られ難くなり、また厚さが50μmを超える場合は塗膜にクラックが生じ易くなるため、0.01〜50μmの範囲の厚さとすることが好ましい。
【0045】
このようなガスバリア性被覆層5上に積層されているヒートシール性樹脂層6は、袋状包装体等を形成する際のシール層となるように設けられるものであり、シール性を有する材料により形成されている。具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、その他のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂により形成される薄膜層である。そして、その厚さは、目的に応じて決定すればよいが、一般的には15〜200μm程度の範囲にあればよい。
【0046】
このヒートシール性樹脂層6を前記したガスバリア性被膜層5の上に形成する方法としては、例えば、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、押出ラミネート法等のラミネート方法が利用できる。
【0047】
以上、本発明の透明ガスバリア性積層体の構成について述べたが、必要に応じて、ガスバリア性被膜層5の上に印刷層や他の基材フィルム等を積層させた後に、ヒートシール性樹脂層6を積層して、包装用フィルムとして供することも可能である。
【0048】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、「部」、「%」は特記しない限り重量基準である。
【実施例1】
【0049】
透明ポリアミド系樹脂フィルムとして、厚さ15μmのナイロン6の二軸延伸フィルムを用いた。まず、基材となるこのポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に、水系ウレタン系の樹脂エマルジョンとメラミン系架橋剤(トリメトキシメチルメラミン)の90:10重量部混合液をコーティングして被膜を形成した後、70℃の温風ドライヤーにて水分を乾燥させることにより易接着層を設けた。
【0050】
次に、この易接着層面に冷却ドラム側から電圧を印加する方式のプレーナ型のプラズマを利用したRIEによる前処理を施し、前処理層を設けた。この時、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用い、処理ガスにはアルゴン/酸素混合ガスを用いた。また、このときのプラズマの自己バイアス値は600Vであった。
【0051】
続いて、この前処理層の上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置によって、厚み15nmの酸化アルミニウムからなる透明な蒸着薄膜層を積層した。そしてさらに、この透明な蒸着薄膜層の上には、グラビアコート法によって、下記に示す組成からなるガスバリア性被覆液を塗布した後、加熱乾燥して、厚さ0.4μmのガスバリア性被覆層を積層し、透明ガスバリア性ポリアミド系フィルムを得た。
【0052】
<ガスバリア性被覆液の調整>
テトラエトキシシラン10gに塩酸(0.1N)89gを加え、30分間撹拌して加水分解させた固形分3wt%(SiO2換算)の加水分解溶液と、ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール=90:10 重量比)を混合することにより、ガスバリア性被覆液を得た。
【0053】
そして最後に、上記工程で得られた透明ガスバリア性ポリアミド系フィルムのガスバリア性被覆層面上に、ドライラミネーション法により、ポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル社製 A626)を使用して、塗布量3.5g/m2となるように接着層を形成し、さらにその上に厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製 TUX−FCS)からなるヒートシール性樹脂フィルムを積層してヒートシール性樹脂層を設けた後、40℃にて4日間の養生を行い、実施例1に係る本発明の透明ガスバリア性積層体を得た。
【実施例2】
【0054】
RIEの処理ガスに酸素ガスを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例2に係る透明ガスバリア性積層体を得た。
【実施例3】
【0055】
易接着層の構成素材として、メラミン系架橋剤の代わりに、ポリウレタン系架橋剤であるヘキサメチレンジイソシアネートを用いた以外は実施例1と同様な方法で実施例3に係る透明ガスバリア性積層体を得た。
【実施例4】
【0056】
RIEによる前処理を行わない以外は、実施例1と同様の操作にて、比較のための実施例4に係る透明ガスバリア性積層体を得た。
【実施例5】
【0057】
易接着層は設けず、ポリアミド系樹脂フィルムにコロナ処理を行ったフィルムを基材として使用し、RIEによる前処理はこのポリアミド系樹脂フィルム上に直接行った以外は実施例1と同様の操作にて、比較のための実施例5に係る透明ガスバリア性積層体を得た。
【実施例6】
【0058】
易接着層は設けず、ポリアミド系樹脂フィルム上にRIEによる前処理を直接行った以外は実施例1と同様の操作にて、比較のための実施例6に係る透明ガスバリア性積層体を得た。
【0059】
上記した、実施例1〜6に係る各透明ガスバリア性積層体について、下記に示す方法により、酸素透過度、水蒸気透過度、湿潤ラミネート強度、落袋試験、屈曲ピンホール試験、および表面粗さを測定した。その評価結果を表1に示す。
【0060】
<酸素透過度の測定>
JIS K−7126B法に準拠して、Modern Control社製のOxtran2/20により、30℃、70%RHの環境条件の下で酸素透過度を測定した。
【0061】
<水蒸気透過度の測定>
JIS K−7129B法に準拠して、Modern Control社製のPermatran3/31により、40℃、90%RHの環境条件の下で水蒸気透過度を測定し
た。
<湿潤ラミネート強度の測定>
JIS Z−1707に準拠して、実施例1〜6に係る透明ガスバリア性積層体の透明ガスバリア性ポリアミド系フィルムと直鎖状低密度ポリエチレン間の初期湿潤ラミネート強度を測定した。測定条件は、試験幅15mm、剥離速度300mm/min、剥離角度T型とした。測定は、剥離するところを水で濡らしながら行った。
【0062】
さらに実施例1〜6に係る透明ガスバリア積層体を用いて、100×150mmの四方シールパウチを10ヶずつ作製し、内容物として蒸留水200gをそれぞれ充填した後、40℃・90%RHの下にその半分を2週間、残りの半分を2ヶ月間保存した。所定の期間保存したそれぞれのパウチ対して、初期湿潤ラミネート強度と同様の方法で経時保存後の湿潤ラミネート強度の測定を行い、評価した。
<落袋試験>
各透明ガスバリア性積層体を用いて、100×150mmの四方シールパウチを10個ずつ作製し、内容物として蒸留水200gをそれぞれ充填した後、5℃の環境下に1日間保存し、しかる後に、このパウチを1.5mの高さから50回落下させ、破袋した袋の数により評価を行った。
<屈曲ピンホール試験>
ゲルボフレックステスターを用いて、25℃の下で2000回屈曲した後のピンホール数をチェックした。
<輪郭曲線の算術平均高さRa(3)の測定>
実施例1〜6に係る透明ガスバリア積層体の、透明蒸着薄膜層およびガスバリア性被覆層積層の表面に関し、JIS B0601:2001に基づき輪郭曲線の算術平均高さRa(3)を測定した。ここで、観察面は、積層前の実施例1〜3ではRIE処理後の易接着層を有するポリアミド系樹脂フィルム、実施例4ではコロナ処理後の易接着層を有するポリアミド系樹脂フィルム基材、実施例5ではRIE処理後の易接着層のないポリアミド系樹脂フィルム、実施例6では処理していない易接着層のないポリアミド系樹脂フィルムの表面である。
【0063】
【表1】

【0064】
表1からもわかるように、実施例1〜3に係る本発明の透明ガスバリア性積層体は、水を内容物とした保存試験後におけるラミネート強度も優れ、また酸素および水蒸気透過性に対するバリア性にも優れていた。また、これらの液体内容物収納用の包装袋用の包装材料として適用しても破袋の問題が発生する可能性が低く、屈曲ピンホール試験によるピンホール数も少なく、ポリアミド系樹脂フィルムを基材として用いたバリア性の積層体としての性能を十分に満足しうるものであった。
【0065】
これに対し、実施例4〜6に係る比較のための透明ガスバリア積層体は、いずれも湿潤ラミネート強度に問題があった。保存試験後はいずれも湿潤ラミネート強度が大きく低下し、デラミネーションの可能性が高く、液体内容物収納用の包装袋用の包装材料として適用した場合に満足しうる実用性能を得られていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の透明ガスバリア性積層体の概略の断面構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1…基材
2…易接着層
3…前処理層
4…無機酸化物からなる蒸着薄膜層
5…ガスバリア性被膜層
6…ヒートシール性樹脂層
10…透明ガスバリア性フィルム
11…透明ガスバリア性積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ポリアミド系フィルムからなる基材の一方の面には易接着層が設けられていて、さらに易接着層上にはプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理によって形成された前処理層を介して無機酸化物からなる蒸着薄膜層とガスバリア性被膜層とヒートシール性樹脂層とがこの相対的順序で少なくとも積層されていることを特徴とする透明ガスバリア性積層体。
【請求項2】
前記易接着層は、水性ポリウレタン系樹脂と、メラミン系架橋剤および/またはポリイソシアネート系架橋剤とを主体とする薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の透明ガスバリア性積層体。
【請求項3】
前記前処理層のJIS B0601:2001に基づいて測定した輪郭曲線の算術平均高さRa(3)が5nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の透明ガスバリア性積層体。
【請求項4】
前記前処理層は、アルゴン、窒素、酸素、水素、亜酸化窒素、ヘリウムのうちの少なくとも1種類のガスを用いて行われたプラズマを利用したRIEにより設けられたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明ガスバリア性積層体。
【請求項5】
前記蒸着薄膜層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明ガスバリア性積層体。
【請求項6】
前記ガスバリア性被覆層は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物または、(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主成分とするガスバリア性被膜液からなる薄膜の加熱乾燥被膜からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明ガスバリア性積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−1162(P2007−1162A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184558(P2005−184558)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】