説明

透明スイッチ

【課題】光透過性及び接続信頼性に優れる透明スイッチを提供する。
【解決手段】透明電極3が一方の面に形成された2枚の透明な上部基板1と下部基板2が、それぞれの透明電極3が対向するように配置されてなる透明スイッチであって、前記上部基板1の透明電極3と下部基板2の透明電極3の間に透明柔軟スイッチ膜4を有し、前記透明柔軟スイッチ膜4は、透明柔軟材料5と、複数の突起を表面に有する導電性粒子6とを含有する透明スイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性及び接続信頼性に優れる透明スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の急速な市場拡大によって、タッチパネルのマルチ入力化が進んでいる。タッチパネルの接触検出方式には従来からの抵抗膜式、静電容量式、光学式等があるが、静電容量式は大型化が難しい、ペン入力が難しい等、抵抗膜式は透過率が低い等、それぞれ課題があり、用途に応じて各種方式の開発が進められている。
【0003】
従来の抵抗膜方式のタッチパネル入力装置は、ITO等からなる透明導電膜を有する透明電極が形成された上部基板及び下部基板が、該透明電極が対向するように配置されている。該透明電極間には、外部からの接触により圧力を加えられた場合にのみ導通させるために対向する透明電極間の間隔を保持するスペーサが配置され、通常、対向する透明電極間の間隔は30〜150μmとなっている。従来の抵抗膜方式のタッチパネル入力装置は、透明電極間にITO等からなる透明導電膜との屈折率差が大きい空気層を有していたため、入射光に対する反射光の割合が大きくなっていたり、空気層の間隔によってはニュートンリングが発生したりする問題があった。
【0004】
特許文献1には、透明電極間にITO等と屈折率が近い絶縁性液体を封入する方法が開示されており、特許文献2には、透明電極間に透明柔軟材料からなる絶縁性透明弾性層を形成する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、粘度の低い絶縁性液体を使用するため液漏れが発生するおそれがあり、特許文献2に開示されている方法では、透明柔軟材料からなる絶縁性透明弾性層を設けることにより接続抵抗が大きくなって入力位置を正確に検知できないことがある等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−14630号公報
【特許文献2】特開平6−342332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光透過性及び接続信頼性に優れる透明スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明電極が一方の面に形成された2枚の透明基板が、それぞれの透明電極が対向するように配置されてなる透明スイッチであって、上記2枚の透明基板の透明電極の間に透明柔軟スイッチ膜を有し、上記透明柔軟スイッチ膜は、透明柔軟材料と、複数の突起を表面に有する導電性粒子とを含有する透明スイッチである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、透明電極間に透明柔軟材料からなる絶縁性透明弾性層を設けた場合に接続抵抗が大きくなる原因が、押圧時に導通すべき透明電極間の透明柔軟材料を充分に排除することができていないことであることを見出した。
そこで本発明者らは、複数の突起を表面に有する導電性粒子を含有する透明柔軟スイッチ膜を透明電極間に設けることにより、押圧時に導通すべき透明電極間の透明柔軟材料を速やかに排除することができ、光透過性及び接続信頼性に優れる透明スイッチを製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の透明スイッチの一例を模式的に示す断面図を図1に示す。図1において、本発明の透明スイッチは、透明電極3が一方の面に形成された上部基板1及び下部基板2を透明電極3が対向するように配置されてなり、上部基板1及び下部基板2の透明電極3の間に透明柔軟材料5と複数の突起を表面に有する導電性粒子6とを含有する透明柔軟スイッチ膜4を有する。上部基板1を押圧することにより、押圧部が変形し、押圧部でのみ導電性粒子6を介して上部基板1及び下部基板2の透明電極間を導通させることができる。
【0010】
本発明の透明スイッチにおいて、上記透明柔軟スイッチ膜の厚みは、上記導電性粒子の粒子径よりも大きいことが必要であるが、押圧時に小さい荷重で反応させるためには、上記透明柔軟スイッチ膜の厚みと上記導電性粒子の粒子径との差ができるだけ小さいことが好ましい。
図2(a)に示したように上記導電性粒子の粒子径が大きすぎると、押圧していない状態で導通する誤作動が発生するおそれがあり、図2(b)に示したように上記導電性粒子の粒子径が小さすぎると、入力に大きな荷重が必要になる。具体的には、上記透明柔軟スイッチ膜の平均厚みをTt、上記導電性粒子の数平均粒子径をDc、透明柔軟スイッチ膜の厚みの標準偏差をσt、導電性粒子の粒子径の標準偏差をσcとした場合、下記式(1)で示されるように、導電性粒子の粒子径を、透明柔軟スイッチ膜の平均厚みより(σt+σc)の3倍だけ小さいものよりも小さく、(σt+σc)の5倍だけ小さいものよりも大きくすることが好ましい。
【0011】
【数1】

【0012】
上記2枚の透明基板のうちの一方の透明基板(上部基板)は、可撓性を有する材料からなることが好ましく、具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるもの等が挙げられる。本発明の透明スイッチは、上記上部基板を入力ペン等によって押圧することにより押圧部が変形し、導電性粒子を介して上部基板及び下部基板の透明電極間が導通することで入力位置を検出することができる。上記上部基板は、上面にハードコートが施され、透明電極との界面の密着性を改善するために下面にアンダーコートが施されていることが好ましい。
また、上記2枚の透明基板のうちの他方の透明基板(下部基板)は、上記可撓性を有する材料からなるものであってもよいし、アクリル樹脂やガラス等の剛直な材料からなるものであってもよい。
【0013】
上記上部基板の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は100μm、好ましい上限は200μmである。また、用途によっては、上記上部基板として厚みが150〜300μmのガラス基板を用いることもできる。
上記下部基板の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は700μm、好ましい上限は1000μmである。
【0014】
本発明の透明スイッチにおいて、上記2枚の透明基板には、透明電極が一方の面に形成されている。
上記透明電極に用いる材料としては、透明で導電性に優れ、耐久性が高い材料であれば特に限定されず、有機導電材料や金属酸化物等を用いることができる。なかでも、スズドープ酸化インジウム(ITO)が好適に用いられる。
【0015】
各基板における上記透明電極のシート抵抗は特に限定されないが、好ましい下限は300Ω/□、好ましい上限は500Ω/□である。
【0016】
上記透明基板に上記透明電極を形成する方法は特に限定されず、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法を用いることができる。
【0017】
本発明の透明スイッチは、上記2枚の透明基板の透明電極の間に透明柔軟スイッチ膜を有する。
上記透明柔軟スイッチ膜は、透明柔軟材料と、複数の突起を表面に有する導電性粒子とを含有する。
上記透明柔軟スイッチ膜としては、具体的には、透明柔軟材料中に上記複数の突起を表面に有する導電性粒子が分散してなるものが挙げられる。
上記透明柔軟材料としては、屈折率が上記透明電極に用いる材料の屈折率にできるだけ近いものが用いられる。具体的には、上記透明柔軟材料の屈折率の好ましい下限は1.4、好ましい上限は1.6である。
【0018】
上記透明柔軟材料のヤング率の好ましい上限は100dyne/cmである。上記透明柔軟材料のヤング率が100dyne/cmを超えると、得られる透明スイッチが応答性に劣るものとなることがある。
なお、上記透明柔軟材料のヤング率の下限は特にないが、ヤング率が低すぎて、入力を終え圧力を取り除いた際に回復が遅くなったり、押圧していない状態で導通する誤作動が生じたりするおそれがある場合は、透明柔軟スイッチ膜中に後述するスペーサ粒子を配合することで、回復速度を上げたり誤作動を防止したりすることができる。
【0019】
上記複数の突起を表面に有する導電性粒子のコア粒子は特に限定されず、例えば、樹脂、金属、ガラス、セラミック等からなるものが挙げられる。なかでも、押圧時に変形し接触点が多くなるため抵抗値を下げることができ、かつ、透明電極の損傷を抑制することができるため、樹脂からなる重合体粒子であることが好ましい。金属、ガラス、セラミックの場合は、入力時の押圧で大きな荷重がかかった場合、透明電極が傷つくおそれがある。
【0020】
本発明の透明スイッチにおいて、上記導電性粒子は、複数の突起を表面に有する。上記導電性粒子が複数の小さな突起を表面に有することにより、押圧時に導通すべき透明電極間の上記透明柔軟材料を速やかに排除することができる。
上記導電性粒子としては、樹脂からなるコア粒子の表面に突起の芯物質を付着させた後、導電層を形成したものであることが好ましい。
【0021】
上記複数の突起を表面に有する導電性粒子は、具体的には例えば、重合体粒子と、該重合体粒子の表面を被覆している導電層とを備えるものが挙げられる。このような導電性粒子としては、重合体粒子の表面に導電性物質で構成される複数の突起の芯物質を備え、導電層が該芯物質を被覆しているものが挙げられる。芯物質を導電層が被覆していることにより、芯物質により導電層の表面が隆起されており、導電層の外側の表面に複数の突起が形成される。
【0022】
上記芯物質を構成する導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物及び黒鉛等の導電性非金属、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。なかでも、導電性を高める効果に優れることから、金属が好ましい。上記芯物質を構成する上記金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等の金属、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−鉛−銀合金等の2種類以上の金属で構成される合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、銀又は金等が好ましい。
【0023】
上記芯物質の形状は特に限定されないが、塊状であることが好ましく、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
また、形成する突起の高さを好適な範囲に制御できるので、上記芯物質の数平均粒子径は50〜250nmの範囲内にあることが好ましい。また、上記芯物質の数平均粒子径は導電性粒子全体の1/100〜1/20の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
上記重合体粒子の表面に上記芯物質を付着させる方法としては、例えば、上記重合体粒子の分散液中に、上記芯物質又は上記芯物質となる導電性物質を添加し、上記重合体粒子の表面に上記芯物質を、例えば、ファンデルワールス力又はヘテロ凝集により集積させ、付着させる方法や、上記重合体粒子を入れた容器に、上記芯物質又は上記芯物質となる導電性物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により上記重合体粒子の表面に上記芯物質を付着させる方法等が挙げられる。なかでも、上記芯物質の付着量を制御しやすいため、分散液中の上記重合体粒子の表面に上記芯物質を集積させ、付着させる方法が好ましい。
【0025】
上記導電性粒子の導電層を構成する金属は特に限定されず、上記芯物質と同様のものが挙げられる。なかでも、導電層を構成する金属は、ニッケル、銅、パラジウム又は金であることが好ましい。上記芯物質と上記導電層とは、異なる導電性物質により形成されていることが好ましい。この場合には、透明電極間の接続抵抗値をより容易に低くすることができ、上記導電性粒子の導電性のバラツキを小さくすることができる。ただし、上記芯物質と上記導電層とは、同じ導電性物質により形成されていてもよい。
【0026】
上記重合体粒子の表面に導電層を形成する方法は特に限定されず、例えば、無電解めっき、電気めっき、スパッタリング等の方法が挙げられる。なかでも、重合体粒子の表面に導電層を形成する方法は、無電解めっきにより形成する方法であることが好ましい。
【0027】
上記導電性粒子の導電層の外表面は、金層、ニッケル層、又は、パラジウム層であることが好ましく、ニッケル層又はパラジウム層であることが好ましい。更に、上記導電性粒子の導電層は、ニッケル層と、該ニッケル層の表面に積層されたパラジウム層とにより形成されていることが好ましい。これらの好ましい導電層が形成されていることにより、上記導電性粒子により接続された上記透明電極間の接続抵抗値が低くなる。また、導電層の外表面がニッケル層又はパラジウム層である場合には、上記導電性粒子を上記透明電極に接触させる際に、上記透明電極表面を覆っている金属の酸化物を容易に取り除くことができる。このため、上記導電性粒子の導電層の外表面と上記透明電極表面の金属とが接触しやすくなり、接続抵抗値が低くなる。
【0028】
また、上記導電性粒子の導電層の外表面は、ニッケルを含む導電層、パラジウムを含む導電層又は低融点金属を含む導電層であることも好ましい。上記導電性粒子の導電層の外表面が、ニッケルを含む金属層又はパラジウムを含む導電層である場合には、上記透明電極表面を覆っている金属の酸化物を容易に取り除くことができ、上記導電性粒子の導電層の外表面と上記透明電極表面の金属とが接触しやすくなるため、接続抵抗値が低くなる。上記導電性粒子の導電層の外表面が、低融点金属を含む導電層である場合には、リフローにより、低融点金属を含む導電層と透明電極とが点接触ではなく面接触するため、接続抵抗値が低くなる。
【0029】
上記導電性粒子の導電層は、単層であってもよく、2層以上の積層構造を有していてもよい。上記導電層が2層の積層構造を有する場合の導電層としては、内層/外層が、ニッケル層/金層、ニッケル層/パラジウム層、銅層/低融点金属層である導電層等が挙げられる。
上記低融点金属層、即ち、低融点金属を含む導電層としては、錫を含む導電層、錫と銀とを含む導電層、錫と銅とを含む導電層、錫と銀と銅とを含む導電層、錫と銀とニッケルとを含む導電層等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記低融点金属とは、融点が300℃以下の金属を示す。
【0030】
上記導電性粒子の導電層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は20nm、好ましい上限は500nmである。上記導電層の厚みが20nm未満であると、導電層の連続性が不充分となり、導電性粒子の導電性が充分に得られないことがある。上記導電性粒子の導電層の厚みのより好ましい下限は100nm、より好ましい上限は200nmである。
【0031】
上記導電性粒子の導電層の表面に突起を形成する方法としては、上記重合体粒子の表面に芯物質を付着させた後に無電解めっきにより導電層を形成する方法や、上記重合体粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後に上記芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0032】
上記導電性粒子は、目視できない大きさであることが好ましい。具体的には、上記導電性粒子の数平均粒子径の好ましい上限は60μmであり、目立たなくさせるため、より好ましい上限は50μmであり、上記透明柔軟スイッチ膜に配合する上記導電性粒子の数を多くすることができるため、更に好ましい上限は40μmである。
上記導電性粒子は2μm程度まで製造可能であるが、上記導電性粒子の粒子径を小さくする場合、透明柔軟スイッチ膜全体の膜厚を薄くする必要が生じ、薄い透明柔軟スイッチ膜は膜厚のばらつきを制御することが困難となるため、上記導電性粒子の数平均粒子径の好ましい下限は5μmである。
【0033】
上記導電性粒子のCV値は、押圧していない状態で導通する誤作動を抑制しつつ押圧時に小さい荷重で反応させるため、できるだけ小さいことが好ましく、好ましい上限は5%であり、より好ましい上限は2.5%である。
なお、本明細書において上記CV値とは粒度分布の変動係数であり、下記式により求められる。
【0034】
【数2】

【0035】
上記式(2)中のσは粒子の粒子径の標準偏差を表し、上記Dnは数平均粒子径を表す。
【0036】
上記透明柔軟スイッチ膜における上記導電性粒子の含有量は特に限定されないが、上記導電性粒子の量を多くしすぎると、光透過率の低下が引き起こされるため、導電性粒子による光の遮蔽率を考慮して決定される。具体的には、上記透明柔軟スイッチ膜の膜内に上記導電性粒子が均等に分散した状態で、光の遮蔽率が1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより、好ましい。
なお、本明細書において上記光の遮蔽率とは、透明スイッチの入力部全体の面積に対する粒子によって遮蔽される面積の割合を表す。透明な粒子を用いた場合は遮蔽率を0%とする。
【0037】
上記導電性粒子は、過度に圧縮するとコア粒子が破壊したり、コア粒子から導電層が剥離したりすることがある。
そのため、上記透明柔軟スイッチ膜は、図1に示したように、押圧時に上記導電性粒子が過度に圧縮されることによる上記透明電極や上記導電性粒子の破壊を防止することを目的として、破壊防止用粒子を含有することが好ましい。
【0038】
上記破壊防止用粒子は特に限定されず、樹脂粒子でもSiO等の無機粒子でもよいが、上記導電性粒子の過度の圧縮を抑制することを目的とするため、上記透明柔軟材料や導電性粒子のコア材料や後述するスペーサ粒子よりも硬いものであることが好ましい。
また、上記破壊防止用粒子として、透明かつ上記透明柔軟材料に近い屈折率の材料を用いれば、得られる透明スイッチの光透過性にほとんど影響を与えることがない。即ち、上記破壊防止粒子としては、屈折率が1.4〜1.6の範囲内の透明材料を使用することが好ましい。
【0039】
上記破壊防止用粒子として、透明かつ上記透明柔軟材料に近い屈折率の材料を用いる場合、上記透明柔軟スイッチ膜における上記破壊防止用粒子の含有量は、用いる破壊防止用粒子の硬さに応じて調整することができる。具体的には、上記破壊防止用粒子としてSiO粒子等の硬い粒子を用いる場合は含有量を少なくし、樹脂粒子等の比較的柔軟な粒子を使用する場合は含有量を多くする。
また、上記破壊防止用粒子を上記柔軟スイッチ膜中に均一に分散させるため、上記破壊防止粒子の数は上記導電性粒子の数の0.2倍〜20倍の範囲内であることが好ましい。
【0040】
上記破壊防止用粒子を配置する場合、上記破壊防止用粒子の数平均粒子径Dpは特に限定されないが、上記導電性粒子の数平均粒子径Dcの50%〜95%であることが好ましく、上記導電性粒子の数平均粒子径Dcの50%〜80%であることがより好ましい。
【0041】
上記透明柔軟スイッチ膜は、図1に示したように、更にスペーサ粒子を含有することが好ましい。上記スペーサ粒子を有することにより、入力を目的としない極めて小さな荷重による誤作動を防止したり、入力時に変形した押圧部を、入力を終えた際に速やかに押圧前の状態に復元したりすることができる。
また、スペーサ粒子を含有することにより透明柔軟スイッチ膜の厚みのばらつきを低下させることができる。上記スペーサ粒子の粒子径は、上記透明柔軟スイッチ膜の厚みを同じにすることが好ましい。
具体的には、上記透明柔軟スイッチ膜の平均厚みTtと、上記導電性粒子の数平均粒子径Dcと、上記スペーサ粒子の数平均粒子径Dsとの関係が、下記式(3)で示されることが好ましい。
【0042】
【数3】

【0043】
上記スペーサ粒子は特に限定されず、柔軟性を調整することが容易であることから、有機粒子であることが好適である。具体的には例えば、アクリロニトリル、ジビニルベンゼン等からなる粒子が挙げられる。
【0044】
本発明の透明スイッチは、押圧していない状態で導通する誤作動を抑制しつつ押圧時に小さい荷重で反応させるため、上記導電性粒子の周囲には、上記透明柔軟材料のない空間が設けられていることが好ましい。
上記導電性粒子の周囲に空間を設ける方法の一例を図3に示した。
まず、導電性粒子9をアルカリ可溶性材料10でコーティングする。また、同様に、ガラス等の基板11上にアルカリ可溶性材料10をコーティングする。次に、アルカリ可溶性材料10でコーティングされた導電性粒子9を、アルカリ可溶性材料10でコーティングされたガラス等の基板11上に均等に分散する状態で散布する(図3(a))。その後、アルカリ可溶性材料10を乾燥させ、透明柔軟材料12を塗布し、加熱して透明柔軟材料12を硬化させる(図3(b))。次に、導電性粒子9を含んだ透明柔軟材料12を基板11から剥離し(図3(c))、アルカリ水溶液に浸してアルカリ可溶性樹脂を溶解除去することにより、導電性粒子9の周囲には、透明柔軟材料のない空間13が設けられた透明柔軟スイッチ膜を製造することができる(図3(d))。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、光透過性及び接続信頼性に優れる透明スイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の透明スイッチの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】導電性粒子の粒子径が大きすぎる場合(a)と、導電性粒子の粒子径が小さすぎる場合(b)を示す模式図である。
【図3】導電性粒子の周囲に透明柔軟材料のない空間を設ける方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0048】
(実施例1)
透明柔軟材料として、シリコーン樹脂(ダウコーニング社製、「CY52−276」)に、導電性粒子A(平均粒子径40μm、粒子径の標準偏差1.2μm、CV値3%)0.50重量%、スペーサ粒子A(平均粒子径50μm、粒子径の標準偏差1.5μm、CV値3%)0.65重量%、破壊防止用粒子A(平均粒子径38μm、CV値3%)1.15重量%を混合した。
得られた混合液をコーターで塗工し50μmの透明柔軟スイッチ膜を作製した。
抵抗膜式タッチパネル基板(タッチテック社製、「タッチモニターTPK−084」)の粘着剤で貼り付けてある下面の透明導電ガラス基板と上面の透明導電フィルムを剥離し、その間に作製した透明柔軟スイッチ膜を貼り付け、透明スイッチを作製した。なお、透明導電フィルムと透明導電ガラス基板を再貼り付けする際には、上側と下側の銀電極を接合するため、透明柔軟スイッチ膜を貼り付けた後にホットアイロンで加熱した。
得られた透明スイッチを、透明柔軟スイッチ膜を貼り付けた後に異方導電ペーストを塗布しホットアイロンで加熱した。
得られた透明スイッチを光学顕微鏡や偏光顕微鏡で観察したところ、1mmあたりに導電性粒子Aは5個、スペーサ粒子Aは5個、破壊防止用粒子Aは10個確認された。また、各粒子の遮蔽率を表1に示した。
【0049】
(実施例2)
透明柔軟スイッチ膜を作製する際の混合液として、複数の突起を表面に有する導電性粒子として導電性粒子Aの代わりに導電性粒子B(平均粒子径15μm、粒子径の標準偏差0.45μm、CV値3%)0.28重量%、スペーサ粒子Aの代わりにスペーサ粒子B(平均粒子径19μm、粒子径の標準偏差0.057μm、CV値3%)0.38重量%、破壊防止用粒子Aの代わりに破壊防止用粒子B(平均粒子径14μm、CV値3%)0.76重量%をシリコーン樹脂(ダウコーニング社製、「CY52−276」)に混合した混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして透明スイッチを作製した。
得られた透明スイッチを実施例1と同様にして観察し、1mmあたりに導電性粒子Bは20個、スペーサ粒子Bは20個、破壊防止用粒子Bは50個確認された。また、各粒子の遮蔽率を表1に示した。
【0050】
(実施例3)
透明柔軟スイッチ膜を作製する際の混合液として、複数の突起を表面に有する導電性粒子として導電性粒子Aの代わりに導電性粒子C(平均粒子径5.0μm、粒子径の標準偏差0.015μm、CV値3%)0.03重量%、スペーサ粒子Aの代わりにスペーサ粒子C(平均粒子径6.2μm、粒子径の標準偏差0.0186μm、CV値3%)0.04重量%、破壊防止用粒子Aの代わりに破壊防止用粒子C(平均粒子径4.7μm、CV値3%)0.09重量%をシリコーン樹脂(ダウコーニング社製、「CY52−276」)に混合した混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして透明スイッチを作製した。
得られた透明スイッチを実施例1と同様にして観察し、1mmあたりに導電性粒子Cは20個、スペーサ粒子Cは20個、破壊防止用粒子Cは50個確認された。また、各粒子の遮蔽率を表1に示した。
【0051】
(実施例4)
透明柔軟スイッチ膜を作製する際の混合液に破壊防止用粒子Aを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして透明スイッチを作製した。
得られた透明スイッチを実施例1と同様にして観察し、1mmあたりに導電性粒子Aは5個、スペーサ粒子Aは5個確認された。また、各粒子の遮蔽率を表1に示した。
【0052】
(実施例5)
透明柔軟スイッチ膜を作製する際の混合液にスペーサ粒子Aを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして透明スイッチを作製した。
得られた透明スイッチを実施例1と同様にして観察し、1mmあたりに導電性粒子Aは5個、破壊防止用粒子Aは10個確認された。また、各粒子の遮蔽率を表1に示した。
【0053】
(実施例6)
実施例1と同量の導電性粒子Aをアルカリ可溶性材料でコーティングした。また、同様に、ガラス基板上にアルカリ可溶性材料をコーティングした。次に、アルカリ可溶性材料でコーティングされた導電性粒子Aを均等に分散する状態で該ガラス基板上に散布した。次いで、アルカリ可溶性材料を乾燥させ、実施例1と同量の破壊防止用粒子A及びスペーサ粒子Aをシリコーン樹脂(ダウコーニング社製、「CY52−276」)に混合して得られた混合液をスペーサ粒子Aの高さと等しくなるように塗布し、加熱してシリコーン樹脂を硬化させた。次に、硬化したシリコーン樹脂をガラス基板から剥離し、アルカリ水溶液に浸してアルカリ可溶性樹脂を溶解除去することにより、導電性粒子の周囲に透明柔軟材料のない空間が設けられた厚さ50μmの透明柔軟スイッチ膜を作製した。得られた透明柔軟スイッチ膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして透明スイッチを作製した。
得られた透明スイッチを実施例1と同様にして観察し、1mmあたりに導電性粒子Aは5個、スペーサ粒子Aは5個、破壊防止用粒子Aは10個確認された。また、各粒子の遮蔽率を表1に示した。
【0054】
(比較例1)
透明柔軟スイッチ膜を作製する際の混合液にスペーサ粒子Aの代わりに表面に突起を有さない導電性粒子D(平均粒子径40μm、CV値3%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして透明スイッチを作製した。
得られた透明スイッチを実施例1と同様にして観察し、1mmあたりに導電性粒子Dは5個、スペーサ粒子Aは5個、破壊防止用粒子Aは10個確認された。また、各粒子の遮蔽率を表1に示した。
【0055】
<評価>
実施例及び比較例で得られた透明スイッチについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0056】
(1)応答性
実施例及び比較例で作製した透明スイッチについて、先端の曲率半径Rが1mmのポリアセタール樹脂押圧子を用いて押圧したときの、導通までに必要な荷重を測定した。
導通までに必要な荷重が20g以下であった場合を「◎」、20gを超え150g以下であった場合を「○」、150gを超えた場合を「×」として応答性を評価した。
また、導通までに必要な荷重が小さくても300gの荷重で往復摺動させると導通から不導通まで0.1秒以上かかる場合があった。この場合を「△」として応答性を評価した。
【0057】
(2)耐久性
実施例及び比較例で作製した透明導電フィルム(上部基板)の上から、先端の曲率半径Rが1mmのポリアセタール樹脂押圧子で300gの荷重を加えて往復摺動させた。顕微鏡を用いて観察し、導電性粒子の破壊がみられなかった場合を「○」、導電性粒子が破壊されていた場合を「×」として透明スイッチの耐久性を評価した。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、光透過性及び接続信頼性に優れる透明スイッチを提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 上部基板
2 下部基板
3 透明電極
4 透明柔軟スイッチ膜
5 透明柔軟材料
6 導電性粒子
7 破壊防止用粒子
8 スペーサ粒子
9 導電性粒子
10 アルカリ可溶性材料
11 基板
12 透明柔軟材料
13 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極が一方の面に形成された2枚の透明基板が、それぞれの透明電極が対向するように配置されてなる透明スイッチであって、
前記2枚の透明基板の透明電極の間に透明柔軟スイッチ膜を有し、
前記透明柔軟スイッチ膜は、透明柔軟材料と、複数の突起を表面に有する導電性粒子とを含有する
ことを特徴とする透明スイッチ。
【請求項2】
透明柔軟スイッチ膜の平均厚みTtと、導電性粒子の数平均粒子径Dcとの関係が、下記式(1)で示されることを特徴とする請求項1記載の透明スイッチ。
【数1】

式(1)中、σtは透明柔軟スイッチ膜の厚みの標準偏差を意味し、σcは導電性粒子の粒子径の標準偏差を意味する。
【請求項3】
透明柔軟スイッチ膜は、破壊防止用粒子を含有し、かつ、前記破壊防止用粒子の数平均粒子径Dpは、導電性粒子の数平均粒子径Dcの50%〜95%であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明スイッチ。
【請求項4】
透明柔軟スイッチ膜は、スペーサ粒子を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の透明スイッチ。
【請求項5】
透明柔軟スイッチ膜の平均厚みTtと、導電性粒子の数平均粒子径Dcと、スペーサ粒子の数平均粒子径Dsとの関係が、下記式(3)で示されることを特徴とする請求項4記載の透明スイッチ。
【数2】

【請求項6】
導電性粒子の周囲に空間が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の透明スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−14572(P2012−14572A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152153(P2010−152153)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】