説明

透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されているガラスタイルとその製造方法

【課題】 無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明などのように透明又は半透明のガラスタイルでありながら、接着剤などによって、屋外壁、屋内壁、床面などの下地に取り付けても、下地表面や接着剤層表面に表れている線や、櫛目などがガラスタイル表面側から透けて見えることがなく、また、ガラスタイル表面側から認識される色、色彩に、下地や接着剤層の色が反映して、予定していた色、色彩とは異なる色、色彩がガラスタイル表面側から認識されてしまうおそれのないガラスタイル、特に、建材用ガラスタイルを提供する。
【解決手段】
透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されているガラスタイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガラスタイルとその製造方法に関し、特に、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されている建材用のガラスタイルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建材用ガラスタイルは広く製造され、使用されている。特に、今日では、優れた強度と耐候性、耐薬品性を有する建材用ガラスタイルが、建築物の内装、外装に広く使用されるに至っている。この建材用のガラスタイルは、ガラス素材特有の透明感と深みを有し、またセラミック顔料を使用して多種、多様な色、色彩を有するガラスタイルを提供できるため、陶磁器タイルや石材にはない優れた外観を呈する建築資材として活用されるように発展しつつある。
【0003】
このような建材用ガラスタイルは、例えば、厚さ8mmで25mm×25mmサイズの四角形形状などのように、所定サイズ、所定形状を有するものを、接着剤(例えば、タイルメント株式会社製の「ME−03」(商品名)などのシリコン系弾力性接着剤)などを用いて、屋外壁、屋内壁、床面などの下地(例えば、コンクリート下地、モルタル下地、金属下地、ボード下地、石膏ボード下地など)に接着して使用される。
【特許文献1】特開平6−9233
【特許文献2】特開2001−241167
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建材用のガラスタイルが無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明などのように透明又は半透明である場合、前記のような接着剤などによって屋外壁、屋内壁、床面などの下地(例えば、コンクリート下地、モルタル下地、金属下地、ボード下地、石膏ボード下地など)に接着されると、この下地表面や接着剤層の表面に表れている線や、櫛目などがガラスタイル表面側から透けて見えたり、ガラスタイル表面側から認識される色、色彩に、下地や接着剤層の色が反映して、予定していた色、色彩とは異なる色、色彩がガラスタイル表面側から認識されてしまうことがある。
【0005】
このようになると、予定していなかった線や、櫛目などがガラスタイル表面側から認識されたり、予定していた色、色彩とは異なる色、色彩がガラスタイル表面側から認識されることになるので、ガラスタイルを使用した意義が大幅に失われてしまう。
【0006】
そこで、この発明は、無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明などのように透明又は半透明のガラスタイルでありながら、接着剤などによって、屋外壁、屋内壁、床面などの下地(例えば、コンクリート下地、モルタル下地、金属下地、ボード下地、石膏ボード下地など)に取り付けされても、下地表面や接着剤層の表面に表れている線や、櫛目などがガラスタイル表面側から透けて見えることがなく、また、ガラスタイル表面側から認識される色、色彩に、下地や接着剤層の色が反映して、予定していた色、色彩とは異なる色、色彩がガラスタイル表面側から認識されてしまうおそれのないガラスタイル、特に、建材用ガラスタイルを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、この発明が提供するガラスタイルは、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、不透明層は、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材を透明又は半透明のガラスタイルの裏面に付着させた後、これを加熱し、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に溶着することができる。
【0009】
また、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材は無機原料(例えば、アルミナ、珪石、長石、マグネシア類などの珪酸塩類など)とすることができる。
【0010】
すなわち、この無機原料は、例えば、アルミナ、珪石、長石、マグネシアのような高耐火物などのガラス製造原料にすることができる。
【0011】
なお、前記いずれの本発明のガラスタイルにおいても、透明又は半透明のガラスタイルは、無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明のいずれにすることができる。
【0012】
次に前記課題を解決するため、この発明が提案するガラスタイルの製造方法は、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材を付着させた後、これを加熱し、前記裏面に溶着して不透明層を形成することを特徴とする透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されているガラスタイルの製造方法である。
【0013】
ここで、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材は無機原料(例えば、アルミナ、珪石、長石、マグネシア類などの珪酸塩類など)とすることができる。
【0014】
すなわち、この無機原料は、例えば、アルミナ、珪石、長石、マグネシアのような高耐火物などのガラス製造原料にすることができる。
【0015】
また、前記本発明のいずれガラスタイルの製造方法においても、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材は、印刷、吹き付け、塗布のいずれかにより透明又は半透明のガラスタイルの裏面に付着させることができる。
【0016】
更に、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に付着させた後の加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材を加熱し、前記裏面に溶着して不透明層を形成する工程は、300℃〜900℃の加熱温度で、0.5時間〜3時間、加熱処理を行うものとすることができる。この加熱温度、加熱時間は、透明又は半透明のガラスタイルそのものはその基本的な形態、性質を保ちながら、その一方で、前述した無機原料を透明又は半透明のガラスタイルの裏面に溶着させることが可能な範囲として定められたものである。
【0017】
なお、前記本発明のいずれガラスタイルの製造方法においても、透明又は半透明のガラスタイルは、無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明のいずれかにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガラスタイルの製造方法によれば、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されているガラスタイルを提供することができる。
【0019】
こうして製造された本発明の、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されているガラスタイルは、無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明などのような透明又は半透明のガラスタイルであるが、裏面に不透明層が形成されているので、接着剤などによって屋外壁、屋内壁、床面などの下地(例えば、コンクリート下地、モルタル下地、金属下地、ボード下地、石膏ボード下地など)に取り付けされても、下地表面や接着剤層の表面に表れている線や、櫛目などがガラスタイル表面側から透けて見えたり、ガラスタイル表面側から認識される色、色彩に、下地や接着剤層の色が反映して、予定していた色、色彩とは異なる色、色彩がガラスタイル表面側から認識されてしまうことがなくなる。
【0020】
そこで、予定していた通りの色、色彩のみがガラスタイル表面側から認識され、ガラス素材特有の透明感と深みを有し、陶磁器タイルや石材にはない優れた外観を呈すことができるという建材用ガラスタイル特有の優れた機能を存分に発揮することができる。
【0021】
なお、本発明のガラスタイルはこのような作用・効果を発揮するものであるから、本明細書、特許請求の範囲における「不透明」は、無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明などのような透明又は半透明のガラスタイルが、接着剤などによって屋外壁、屋内壁、床面などの下地(例えば、コンクリート下地、モルタル下地、金属下地、ボード下地、石膏ボード下地など)に取り付けされた際に、下地表面や接着剤層の表面に表れている線や、櫛目などがガラスタイル表面側から透けて見えたり、ガラスタイル表面側から認識される色、色彩に、下地や接着剤層の色が反映して、予定していた色、色彩とは異なる色、色彩がガラスタイル表面側から認識されてしまうことがなくなることを意味している。そして、ガラススタイルの裏面に形成されている不透明層は、このような機能を発揮できるものであれば、その厚さはいかなるものであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材の準備)
加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材は、高耐火物(アルミナ、珪石、長石、マグネシアなど)を用い、これを粉砕して微粉末(約100〜300メッシュ)にして準備した。
【0023】
(加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材のガラスタイル裏面への付着)
前記のようにして準備した素材を、吹きつけによって、透明なガラスタイル1(厚さ8mm、25mm×25mmサイズの四角形形状、川村硝子工芸株式会社製)の裏面に付着した。
【0024】
(不透明層の形成)
ガラスタイル1の裏面に付着させた前記素材が乾燥した後、焼成炉において、800℃で60分間焼成を行った。これにより、前記素材はガラスタイル1の裏面に溶着し、裏面に厚さ約0.01〜1.0mmで白色の不透明層2が形成されている本発明のガラスタイル3を得た。
【0025】
(施工)
前記のようにして製造した本発明のガラスタイル3を、シリコン系弾力性接着剤(タイルメント株式会社製の「ME−03」(商品名))を用いて、モルタル下地4に接着した(図2(b))。
【0026】
モルタル下地4の表面には、予め、黒マジックで線5を引いておいたが、ガラスタイル3取り付け後、この黒マジックの線5がガラスタイル3の表面側から透けて見えることはなかった。ガラスタイル3の表面側からは不透明層2の白色のみが認識できた。
【0027】
この実施例において、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材を、加熱溶融後固化後の不透明になったときの色が予め希望している色になるように調製しておけば、ガラスタイル1として用いるガラスタイルを所望の無色透明、有色透明、無色半透明、有色半透明にしておいて組み合わせることにより、屋外壁、屋内壁、床面などに取り付けられた後に、本発明のガラスタイル3の表面側から認識できる色、色彩を希望のものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材が透明なガラスタイルの裏面に付着された状態を説明する断面図、(b)は、透明なガラスタイルの裏面に不透明層形成されている本発明のガラスタイルを説明する断面図。
【図2】(a)は、本発明のガラスタイルが取り付けられる下地の表面を表す一部を省略した平面図、(b)は図2(a)図示の下地表面に本発明のガラスタイルが取り付けられた状態を説明する一部を省略した平面図。
【符号の説明】
【0029】
1 透明なガラスタイル
2 不透明層
3 本発明のガラスタイル
4 下地
5 黒マジックの線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されているガラスタイル。
【請求項2】
不透明層は、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材を、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に付着させた後、これを加熱し、透明又は半透明のガラスタイルの裏面に溶着したものであることを特徴とする請求項1記載のガラスタイル。
【請求項3】
加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材は無機原料であることを特徴とする請求項2記載のガラスタイル。
【請求項4】
無機原料はガラス製造原料であることを特徴とする請求項3記載のガラスタイル。
【請求項5】
透明又は半透明のガラスタイルは、無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のガラスタイル。
【請求項6】
透明又は半透明のガラスタイルの裏面に、加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材を付着させた後、これを加熱し、前記裏面に溶着して不透明層を形成することを特徴とする透明又は半透明のガラスタイルの裏面に不透明層が形成されているガラスタイルの製造方法。
【請求項7】
加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材は無機原料であることを特徴とする請求項6記載のガラスタイルの製造方法。
【請求項8】
無機原料はガラス製造原料であることを特徴とする請求項7記載のガラスタイルの製造方法。
【請求項9】
加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材を、印刷、吹き付け、塗布のいずれかにより透明又は半透明のガラスタイルの裏面に付着させることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項記載のガラスタイルの製造方法。
【請求項10】
透明又は半透明のガラスタイルの裏面に付着させた後の加熱溶融後固化した状態で不透明になる素材を加熱し、前記裏面に溶着して不透明層を形成する工程は、300℃〜900℃の加熱温度で、0.5時間〜3時間、加熱処理を行うものであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項記載のガラスタイルの製造方法。
【請求項11】
透明又は半透明のガラスタイルは、無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明のいずれかであることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか一項記載のガラスタイルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−138153(P2006−138153A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330038(P2004−330038)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(390008796)川村工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】