説明

透明固形洗浄剤

【課題】 透明性に優れ、更に速泡性、泡持続性、成型性及び溶け崩れ難さのすべてにおいて充分な性能を有する透明固形洗浄剤を提供すること。
【解決手段】 本発明の透明固形洗浄剤は、0.001〜5重量%の下記(a)成分と、20〜50重量%の下記(b)成分と、5〜45重量%の下記(c)成分とを含有する。(a)成分は、一般式[1]で表される単量体と、該単量体以外の陽イオン性単量体とを50/50〜95/5のモル比で重合させて得られる、重量平均分子量5,000〜2,000,000の共重合体である。(b)成分は、炭素数8〜22の脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸とアルカリ金属及び塩基性アミノ酸とから得られる脂肪酸塩の混合物である。上記アルカリ金属と上記塩基性アミノ酸とのモル比は、9/1〜5/5である。(c)成分は、炭素数1〜4の1価アルコール及び/又は炭素数2〜8の水溶性多価アルコールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明固形洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から固形洗浄剤は脂肪酸塩を含有しており、脂肪酸の対イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン等の塩基性アミノ酸、トリエタノールアミンが使用されている。固形洗浄剤のうち透明固形洗浄剤は、美観に優れ、清潔感や高級感を醸し出すために好まれて使用されており、商品価値が高い。
【0003】
上述の脂肪酸塩を含有する固形洗浄剤としては、例えば、脂肪酸のアルカリ金属塩と塩基性アミノ酸塩とを含有する固形洗浄剤が知られている(特許文献1)。しかしながら、かかる固形洗浄剤は透明性を確保することが難しいため、透明性を高めるためにはグリセリン、蔗糖、ソルビトール等の多価アルコール等からなる透明化剤の添加が必要になる。なお、本発明者等の知見によれば、かかる透明化剤を添加したとしても固形洗浄剤の透明性が改善されるとは限らず、また透明化剤の添加量が多いと固形洗浄剤の溶け崩れを生じる場合がある。
【0004】
このような問題を解決するため、固形洗浄剤の透明化剤として、特定の分子量分布を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用することが提案されている(特許文献2)。しかしながら、かかる透明化剤を特許文献1に記載の固形洗浄剤に添加しても透明性が充分改善されず、また透明性を高めるためにかかる透明化剤の添加量を増加すると、固形洗浄剤の溶け崩れが顕著となる。さらに、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンからなる透明化剤が提案されているが(特許文献3)、固形洗浄剤の型打ち時にひび割れを生じ易く、成型性が不良になるという問題が生ずる。
【0005】
このように、脂肪酸のアルカリ金属塩と塩基性アミノ酸塩とを含有する固形洗浄剤においては、透明化剤の添加による透明性の改善には限界がある。
【0006】
また、ホスホリルコリン基含有モノマー及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体と、脂肪酸塩と、アミノエチルスルホン酸とを含有する固形洗浄剤が知られている(特許文献4)。しかしながら、かかる固形洗浄剤においても、透明性が必ずしも充分ではなく改善の余地がある。
【0007】
以上のように、従来の固形洗浄剤においては、透明性に優れ、更に速泡性、泡持続性、成型性、溶け崩れ難さのすべてにおいて充分な性能を具備する固形洗浄剤が得られていないのが実情であった。
【特許文献1】特開2001−226697号公報
【特許文献2】特開平11−228995号公報
【特許文献3】特開平8−268876号公報
【特許文献4】特開2001−200294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、透明性に優れ、更に速泡性、泡持続性、成型性及び溶け崩れ難さについて充分な性能を有する透明固形洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、透明固形洗浄剤の構成成分として、特定構造を有する共重合体と、特定の脂肪酸塩と、特定のアルコールとを組み合わせることで上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)0.001〜5重量%の下記(a)成分と、20〜50重量%の下記(b)成分と、5〜45重量%の下記(c)成分とを含有する透明固形洗浄剤、
(a)成分:下記一般式[1]で表される単量体と、該単量体以外の陽イオン性単量体とを50/50〜95/5のモル比で重合させて得られる、重量平均分子量5,000〜2,000,000の共重合体、
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、Rは水素原子又はメチル基、R、R及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、nは2〜4の整数、をそれぞれ示す。]
(b)成分:炭素数8〜22の脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、アルカリ金属及び塩基性アミノ酸とから得られる脂肪酸塩の混合物であって、上記アルカリ金属と上記塩基性アミノ酸とのモル比が9/1〜5/5である脂肪酸塩の混合物、
(c)成分:炭素数1〜4の1価アルコール及び/又は炭素数2〜8の水溶性多価アルコール。
(2)上記陽イオン性単量体が下記一般式[2]で表される単量体である、上記(1)記載の透明固形洗浄剤、
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、Rは水素原子又はメチル基、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Yは酸素原子又はNH、Zは炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシプロピレン基、をそれぞれ示す。]
(3)上記一般式[1]で表される単量体が2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートである、上記(1)又は(2)記載の透明固形洗浄剤、
に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の透明固形洗浄剤によれば、透明性に優れ、更に速泡性、泡持続性、成型性及び溶け崩れ難さのすべてにおいて充分な性能が得られるため、商品価値の高い固形洗浄剤を提供することができる。したがって、本発明の透明固形洗浄剤は、顔や身体等に使用される皮膚用固形洗浄剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の透明固形洗浄剤は、0.001〜5重量%の(a)成分と、1〜40重量%の(b)成分と、5〜45重量%の下記(c)成分とを含有するものである。以下、本発明の透明固形洗浄剤の構成成分について説明する。
【0017】
((a)成分)
(a)成分は、上記一般式[1]で表される単量体(以下、「単量体[1]」という。)と、該単量体[1]以外の陽イオン性単量体(以下、単に「陽イオン性単量体」という。)と、を重合させて得られる共重合体である。
【0018】
単量体[1]は上記一般式[1]で表されるものであるが、一般式[1]中、Rは水素原子又はメチル基を示し、好ましくはメチル基である。R、R及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分枝状及び環状のいずれであってもよい。R、R及びR4としては、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基である。nは2〜4の整数を示し、好ましくは2である。これらの中では、固形洗浄剤の高い透明性を達成するために、下記式[3]で表される2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)が好適に使用される。
【0019】
【化3】

【0020】
なお、単量体[1]は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと環状リン化合物とを反応させ、次いで3級アミンを用いて開環反応を行う方法によって製造することができる。
【0021】
一方、陽イオン性単量体としては、単量体[1]以外の正電荷を有する単量体であれば特に限定されることなく使用することができる。陽イオン性単量体としては、2−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、2−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、ビニルピリジンクロリド、2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロシキ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(以下、「QAMA」という。)、2−ヒドロシキ−3−アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。なお、陽イオン性単量体は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0022】
また、陽イオン性単量体としては、固形洗浄剤の透明性を高水準で達成するために、上記一般式[2]で表される単量体(以下、「単量体[2]」という。)が好適に使用される。上記一般式[2]中、Rは水素原子又はメチル基を示し、好ましくはメチル基である。R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分枝状及び環状のいずれであってもよい。R、R及びRとしては、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基である。Yは酸素原子又はNHを示し、好ましくは酸素原子である。Zは炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシプロピレン基を示し、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ヒドロキシプロピレン基である。Xとしては、例えば、クロライドイオン等のハロゲンイオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン等の酸残基が挙げられる。これらの中では、ハロゲンイオンが好ましい。
【0023】
本発明においては、固形洗浄剤の透明性をより高めるために単量体[2]として、2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロシキ−3−アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、QAMAを使用することが好ましく、より好ましくはQAMAである。
【0024】
なお、(a)成分を構成する陽イオン性単量体は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートにトリメチルアミンの塩酸塩を反応させ、開環付加反応を行うことによって製造することができる。
【0025】
また、(a)成分である共重合体の製造方法については常法に従えば良く、例えば、MPCと陽イオン性単量体とを重合開始剤の存在下、溶媒中で反応させることで共重合体が得られる。ここで、共重合体の製造方法に使用される溶媒としては、MPC及び陽イオン性単量体を溶解するものであれば特に限定されることなく使用することができる。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はこれらの混合溶媒等が例示される。また、重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤ならばいずれを用いてもよく、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(3−カルボキシプロピオニトリル)アゾビスマレノニトリル等の脂肪酸アゾ化合物や過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等の有機過酸化物を挙げることができる。
【0026】
また、かかる共重合体の製造において、単量体[1]と陽イオン性単量体と
の割合はモル比で50/50〜95/5(前者/後者、以下、同様である。)であり、50/50〜70/30が好ましく、50/50〜60/40がより好ましい。かかるモル比が上記範囲外である場合には、固形洗浄剤の透明性の改善効果が不充分となる。
【0027】
また、(a)成分としては、重量平均分子量5,000〜2,000,000の共重合体が用いられるが、500,000〜1,500,000が好ましく、800,000〜1,200,000がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲外である場合には、固形洗浄剤の透明性の改善効果が不充分となる。なお、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)による標準ポリエチレングリコールを用いた検量線により換算した重量平均分子量をいう。
【0028】
(a)成分の含有量は、透明固形洗浄剤の全重量基準で0.001〜5重量%である。(a)成分の含有量は、洗浄剤本来の洗浄機能を損なうことなく透明性を高水準で達成するために、0.001〜1重量%が好ましく、0.001〜0.5重量%がより好ましい。かかる含有量が0.001重量%未満であると、固形洗浄剤の透明性の改善効果が得難く、また泡持続性の低下や、溶け崩れが生じやすくなる。一方、かかる含有量が5重量%を超えると、増粘して洗浄剤に配合することが困難となる。
【0029】
((b)成分)
(b)成分は、炭素数8〜22の直鎖又は分岐の脂肪酸の少なくとも1種にアルカリ金属及び塩基性アミノ酸を反応させて得られる、脂肪酸アルカリ金属塩と脂肪酸塩基性アミノ酸塩との混合物である。かかる反応に供するアルカリ金属と塩基性アミノ酸とのモル比は、9/1〜5/5である。前述した脂肪酸は、異種の脂肪酸(例えば、炭素数の異なる脂肪酸)の混合物とすることができる。かかる(b)成分を含有することで、脂肪酸アルカリ金属塩の長所である速泡性と、脂肪酸塩基性アミノ酸塩の長所である泡の持続性とが同時に得られる。また、脂肪酸アルカリ金属塩のみを含有する固形洗浄剤と比較して使用時のpHが低くなるので、特に肌が敏感な消費者に好適である。
【0030】
脂肪酸としては、炭素数が8〜20、好ましくは10〜18の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸を使用することができる。具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられ、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、ひまし油脂肪酸、硬化ひまし油脂肪酸等の混合脂肪酸が挙げられる。これらの中では、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、ひまし油脂肪酸、硬化ひまし油脂肪酸が好ましい。さらに、より透明性の高い固形洗浄剤を得るために、オレイン酸、ひまわり油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、硬化ひまし油脂肪酸が好適に使用される。炭素数が8未満の場合には、皮膚への刺激性が強くなる。一方、炭素数が22を超える場合には、速泡性が低下する。なお、かかる脂肪酸は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらの中では、固形洗浄剤の速泡性及び透明性向上の観点から、ナトリウム、カリウムが好ましい。一方、塩基性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン、ヒスチジン、オルニチンが挙げられる。これらの中では、固形洗浄剤の泡持続性及び透明性向上の観点から、アルギニンが好ましい。かかる塩基性アミノ酸にはL体、D体及びこれらの混合物(例えば、ラセミ体)が存在するが、いずれを使用してもよい。なお、アルカリ金属及び塩基性アミノ酸は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
また、本発明においては、透明性の高い固形洗浄剤を得るために反応に供するアルカリ金属と塩基性アミノ酸とのモル比を9/1〜5/5(前者/後者。以下、同様。)とする。更に、より透明度の高い固形洗浄剤とするために、かかるモル比を9/1〜6/4とすることが望ましい。かかるモル比が上記範囲外である場合には、速泡性と泡持続性とを同時に得難くなる場合がある。
【0033】
(b)成分の含有量は透明固形洗浄剤の全重量基準で20〜50重量%である。(b)成分の含有量は、30〜50重量%が好ましく、40〜50重量%がより好ましい。かかる含有量が20%未満の場合には速泡性、泡持続性が低下し、一方50重量%を超える場合には使用後にきしみ感や突っ張り感が生じる。
【0034】
((c)成分)
(c)成分は、炭素数1〜4の1価アルコール及び/又は炭素数2〜8の水溶性多価アルコールである。炭素数1〜4の1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。炭素数2〜8の水溶性多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。これらの中では、透明性が良好な固形洗浄剤を得る観点から、エタノールが好ましい。なお、上述した1価アルコール及び水溶性多価アルコールは、それぞれ1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
(c)成分の含有量は、透明固形洗浄剤の全重量基準で5〜45重量%であり、好ましくは5〜20重量%である。かかる含有量が5重量%未満の場合には固形洗浄剤の透明性が充分に得られず、一方45重量%を超える場合には溶け崩れが生じやすくなる。
【0036】
(任意成分)
本発明の透明固形洗浄剤においては、洗浄剤に常用されている添加剤を本発明の性能を損なわない範囲で配合することも可能である。かかる添加剤としては、例えば、高級アルコール、スクワラン、ホホバ油、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル等の油性基剤、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミノ酢酸塩等の両性界面活性剤、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アミドエーテル硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤を使用することができる。特に本発明においては、起泡性や使用感を向上させるためにN−アシルメチルタウリン塩が好ましく用いられる。その他カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子、pH調整剤である酸及びアルカリ、殺菌剤、キレート剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、動植物由来の天然エキス、色素、香料等を配合することができる。
【0037】
また、本発明の透明固形洗浄剤においては、使用時の皮膚刺激性を低減するために1%水溶液のpHを好ましくは9.5以下となるように調整することが望ましい。このようなpHに調整するために、例えば、N−アシルグルタミン酸塩等の酸性アミノ酸又はその塩を好適に配合することができる。
【0038】
本発明の透明固形洗浄剤は、機械練り法又は枠練り法により成型することができる。このようにして成型された透明固形洗浄剤は、例えば、化粧石鹸、低刺激石鹸、ヒゲ剃り石鹸、ベビーソープ等の皮膚用透明固形石鹸として使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
[合成例1〜2]
(合成例1)
2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)1.5mol(68mol%)、及び2−ヒドロシキ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(QAMA)0.7mol(32mol%)を2200mLのエタノールに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.011molを加えた。溶液をガラス製反応器に入れアルゴン置換して封管し、60℃にて6時間反応させた。その後、反応溶液を20Lのジエチルエーテルに滴下してポリマーを沈澱させた。そして、沈澱物を濾別し、ガラスフィルター上でジエチルエーテルを用いて洗浄した後、真空乾燥して共重合体(以下、「PCポリマー1」という。)を得た。重量平均分子量は7500、収率は約50%であった。
【0041】
(合成例2)
QAMAの代わりにn−ブチルメタクリレート(BMA)を用い、MPCとBMAとのモル比を53/47にしたこと以外は、合成例1と同様の方法により共重合体(以下、「PCポリマー2」という。)を得た。重量平均分子量は約100万であった。
【0042】
[実施例1]
(固形洗浄剤の製造)
表1に示す各割合のX成分(ラウリン酸、ミリスチン酸、バルサミン酸、オレイン酸及び水)をエタノールの還流下75℃にて溶解した後、この溶液に表1に示す割合のY成分(水酸化ナトリウム及びL−アルギニン)を温度75℃に保つように5分間かけて添加して化を行った。均一に溶解した後、Z成分(PCポリマー1、グルタミン酸1ナトリウム及びヒドロキシエタンジスルホン酸)を均一に溶解させた。このようにして得た溶液を60℃まで冷却し100gずつ容器(直径9cm、高さ2cmの円筒状プラスチック容器)へ注入した。10時間後に固化した固形洗浄剤を容器より取り出し、以後室温で放置した。揮発分が25%に達した時点で30℃の恒温槽に30分間放置した後、固形洗浄剤を石鹸型打ち機((有)基化工機製、6.5トン油圧プレス)を使用して型打ちを行い、試験用固形洗浄剤を得た。
【0043】
[実施例2〜5及び比較例1〜7]
実施例1と同様の方法により表1及び2に示す各成分を配合して実施例2〜5及び比較例1〜7の固形洗浄剤を得た。
【0044】
(固形洗浄剤の評価)
得られた固形洗浄剤について、洗浄後の感触、透明性、成型性、速泡性、泡持続性、溶け崩れ難さ、及びpHの各項目の評価を行った。以下、評価方法を説明する。なお、実施例1〜5の固形洗浄剤の評価結果を表1に、比較例1〜7の固形洗浄剤の評価結果を表2に、それぞれ示す。
【0045】
(1)洗浄後の感触
20名の女性(21才〜36才)をパネラーとし、得られた固形洗浄剤を用いて身体を洗浄した後の感触について下記の評価基準により判定を行い、20名の平均値を求めた。平均値1.5点以上を洗浄後の感触の良好な固形洗浄剤であると評価した。
2点:洗浄後にきしみ感あるいはつっぱり感が無く、滑らかな洗い上がりだと感じた場合。
1点:洗浄後にきしみ感あるいはつっぱり感を少し感じた場合。
0点:洗浄後にきしみ感あるいはつっぱり感が強く残ると感じた場合。
【0046】
(2)透明性
得られた固形洗浄剤の透明性について、下記の評価基準により判定を行い、「○」の評価を透明性が良好な固形洗浄剤であると評価した。
○:外観が透明である。
△:美観に影響を与えない程度に、外観に僅かな濁りがある。
×:美観を損なう程度に、外観に濁りがある。
【0047】
(3)成型性
試験用固形洗浄剤の作製工程において、型打ち機による型打ちを行った際、表面にひびが視認されるか否かを下記の評価基準により判定を行い、「○」の評価を成型性が良好な固形洗浄剤であると評価した。
○:ひびが認められなかった。
△:微小なひびが認められる。
×:大きなひびが認められる。
【0048】
(4)速泡性
得られた固形洗浄剤を用いて、専門パネラー10名による速泡性評価を行った。25℃の水道水流水下で固形洗浄剤を手の中で3回転させた後、30秒間よく泡立て、速泡性について下記の評価基準により判定を行い、10名の平均点を求めた。1.5点以上を速泡性の良好な固形洗浄剤であると評価した。
2点:充分に泡だったと感じるまでに要した時間が8秒以内である。
1点:充分に泡だったと感じるまでに要した時間が8〜15秒である。
0点:充分に泡立たない、あるいは充分に泡だったと感じるまでに要した時間が15秒を超える。
【0049】
(5)泡持続性
得られた固形洗浄剤を用いて、専門パネラー10名による泡持続性評価を行った。25℃の水道水流水下で固形洗浄剤を手の中で3回転させた後、30秒間泡立て、その後手のひらの上で30秒間泡を放置する間、泡立ちの様子を観察した。そして、泡持続性について下記の評価基準により判定を行い、10名の平均点を求めた。1.5点以上を泡持続性が良好な固形洗浄剤であると評価した。
2点:30秒間の放置により目測で泡容積の8割以上が保たれている場合。
1点:30秒後に目測で泡容積の5割以上8割未満が保たれている場合。
0点:30秒後に目測で泡容積が5割未満しか保たれていない場合。
【0050】
(6)溶け崩れ難さ
パネラー10名による固形洗浄剤の溶け崩れ難さを評価した。得られた固形洗浄剤を25℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽中に24時間放置し、目視により溶け崩れの程度を下記の評価基準により判定を行い、10名の平均点を求めた。1.5点以上を溶け崩れ難い固形洗浄剤であると評価した。
2点:溶け崩れがほとんどない場合。
1点:少し溶け崩れがある場合。
0点:溶け崩れが激しい場合。
【0051】
(7)pH
固形洗浄剤0.1gを100mLの精製水に溶解させ、(株)堀場製作所製pHメーターM−12を使用してpH測定を行った。
【0052】
【表1】


【0053】
【表2】

【0054】
実施例1〜5より、本発明の固形洗浄剤は洗浄後の感触がきしみ感あるいは突っ張り感がなく滑らかであり、透明性に優れると共に、成型性、速泡性、泡持続性及び溶け崩れ難さのすべてについて充分な性能を有することが確認された。他方、PCポリマー1を配合しない場合には透明性が不充分となり、更に成型性、泡持続性、溶け崩れ難さについても充分な性能が得られなかった(比較例1参照)。また、PCポリマー1の代わりにPCポリマー2を配合した場合には、いずれも透明性が不充分となった(比較例2〜7参照)。また、この場合、脂肪酸塩の配合量が少ないと更に速泡性、泡持続性が充分に得られず(比較例4参照)、一方脂肪酸塩の配合量が多いと更に洗浄後の感触と溶け崩れ難さが充分に得られなかった(比較例5参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001〜5重量%の下記(a)成分と、20〜50重量%の下記(b)成分と、5〜45重量%の下記(c)成分とを含有する透明固形洗浄剤。
(a)成分:下記一般式[1]で表される単量体と、該単量体以外の陽イオン性単量体とを50/50〜95/5のモル比で重合させて得られる、重量平均分子量5,000〜2,000,000の共重合体。
【化1】


[式中、Rは水素原子又はメチル基、R、R及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、nは2〜4の整数、をそれぞれ示す。]
(b)成分:炭素数8〜22の脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、アルカリ金属及び塩基性アミノ酸とから得られる脂肪酸塩の混合物であって、前記アルカリ金属と前記塩基性アミノ酸とのモル比が9/1〜5/5である脂肪酸塩の混合物。
(c)成分:炭素数1〜4の1価アルコール及び/又は炭素数2〜8の水溶性多価アルコール。
【請求項2】
前記陽イオン性単量体が下記一般式[2]で表される単量体である、請求項1記載の透明固形洗浄剤。
【化2】


[式中、Rは水素原子又はメチル基、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Xはアニオン性対イオン、Yは酸素原子又はNH、Zは炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシプロピレン基、をそれぞれ示す。]
【請求項3】
前記一般式[1]で表される単量体が2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートである、請求項1又は2記載の透明固形洗浄剤。

【公開番号】特開2006−96827(P2006−96827A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282548(P2004−282548)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】