説明

透明基板

【課題】水蒸気などのガスの遮断性が高く、また表面の平滑性が高い透明基板を提供する。
【解決手段】ガラス繊維より屈折率の大きい高屈折率樹脂と、ガラス繊維より屈折率の小さい低屈折率樹脂とを混合して、屈折率がガラス繊維の屈折率に近似するように調整された樹脂組成物を、ガラス繊維基材に含浸・硬化して作製される透明積層板1を備える。そして、ガスバリア性を有する透明なガスバリア層2とガス吸収性を有する透明なガス吸収層3とが透明積層板1に積層されている。ガスバリア層2でガスの透過を遮断することができると共に透過するガスをガス吸収層3で吸収することができ、ガスの透過を遮断する効果を高く得ることができる。また透明積層板1の表面の凹凸をこれらのガスバリア層2やガス吸収層3で埋めて平坦にならすことができ、表面の平滑性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどに用いられる透明基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明積層板によって形成される透明基板は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイなどにおいて、ガラス板に代わる材料として検討されている(例えば特許文献1等)。
【0003】
透明基板として用いられるこのような透明積層板の一例として、ガラスクロスなどガラス繊維からなる基材に、ガラス繊維と屈折率が近似する透明熱硬化性樹脂を含浸してプリプレグを調製し、このプリプレグを加熱加圧成形することによって作製したものを挙げることができる。透明熱硬化性樹脂としては一般にエポキシ樹脂が使用されているが、樹脂の屈折率をガラス繊維の屈折率に近似させるために、ガラス繊維より屈折率の大きいエポキシ樹脂と、ガラス繊維より屈折率の小さいエポキシ樹脂とを混合し、屈折率がガラス繊維の屈折率に近似するように混合比率を調整した樹脂組成物を用いるようにしている。このように基材のガラス繊維とマトリクス樹脂の屈折率を合わせることによって、透明積層板内での光の屈折を抑え、視認性に優れたディスプレイの透明基板として使用することができるものである。
【0004】
図3はこのような透明積層板によって形成される透明基板Aを用いて作製した液晶ディスプレイの概略構成の一例を示すものであり、一対の透明基板Aを平行に配置し、この透明基板A間に駆動素子10が搭載されるようになっている。この駆動素子10は、一方の透明基板Aに設けられた画素電極11とTFT12、他方の透明基板Aに設けられた共通電極13、透明基板A間に充填される液晶分子14などを備えて形成されるものである。
【特許文献1】特開2004−307851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような液晶ディスプレイにあって、対向して配置される透明基板Aの間隔が不均一であると、充填されている液晶分子14の厚みが不均一になって、液晶分子14の配向性が部分的に乱れ、光の散乱が生じるおそれがある。また液晶分子14は水蒸気や酸素などが作用すると劣化し易く、水蒸気などの作用で液晶ディスプレイの寿命が低下するおそれがある。
【0006】
しかし透明基板Aは、ガラス基材に樹脂を含浸・硬化して作製した透明積層板によって形成されているものであり、樹脂をマトリクスとするため、ガラス板のような高いガス遮断性を有するものではない。従ってこのような透明基板Aを液晶ディスプレイの基板として用いると、水蒸気や酸素などのガスが透明基板Aを透過することを完全に遮断することはできず、液晶分子14に水蒸気や酸素などが作用して劣化するおそれがあるという問題があった。
【0007】
また透明基板Aは、ガラス基材に樹脂を含浸・硬化して作製した透明積層板によって形成されているため、表面の平滑性をガラス基板のように高く形成することは困難であり、特にガラスクロスなどで形成されるガラス基材の凹凸が表面に表れて、平滑性が低くなる傾向にある。従ってこのような透明基板Aを液晶ディスプレイの基板として用いると、対向して配置される透明基板Aの間隔が不均一になって、充填されている液晶分子14に配向の乱れが生じて光の散乱が起こり、鮮明な画像を得ることができなくなるおそれがあるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、水蒸気などのガスの遮断性が高く、また表面の平滑性が高い透明基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る透明基板は、ガラス繊維より屈折率の大きい高屈折率樹脂と、ガラス繊維より屈折率の小さい低屈折率樹脂とを混合して、屈折率がガラス繊維の屈折率に近似するように調整された樹脂組成物を、ガラス繊維基材に含浸・硬化して作製される透明積層板1を備え、ガスバリア性を有する透明なガスバリア層2とガス吸収性を有する透明なガス吸収層3とが透明積層板1に積層されていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、ガスバリア層2で水蒸気などのガスが透過することを遮断することができると共に、透過する水蒸気などのガスをガス吸収層3で吸収することができ、水蒸気などのガスの透過を遮断する効果を高く得ることができるものであり、また透明積層板1の表面の凹凸をこれらのガスバリア層2やガス吸収層3で埋めて平坦にならすことができ、表面の平滑性を高めることができるものである。
【0011】
また本発明は、透明基板にディスプレイの駆動素子を搭載して用いる場合、ガスバリア層2がガス吸収層3よりも、駆動素子10より遠い側に配置されるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、水蒸気などのガスがガスバリア層2を透過したとしても、このガスはガス吸収層3に吸収されて駆動素子10に作用することを確実に防ぐことができるものである。
【0013】
また本発明において、上記のガス吸収層3はガス吸収成分を含有して形成され、ガス吸収成分は有機金属化合物からなることを特徴とするものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0014】
また本発明において、ガス吸収層3に含有されるこの有機金属化合物は、2価以上の金属を含み、且つその金属が酸素との化学結合を有する化合物であることを特徴とするものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0015】
また本発明において、この有機金属化合物は、アルキルアルミニウムとシラノール基を有するポリシロキサンとの反応によって得られる化合物であることを特徴とするものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0016】
また本発明において、上記の有機金属化合物は、3価金属−ジアルキルオキサイド−モノエチルアセトアセテートであることを特徴とするものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0017】
また本発明において、この3価金属は、アルミニウム、ランタン、イットリウム、ガリウムから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とするものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0018】
また本発明において、上記の有機金属化合物は、4価金属−ジアルキルオキサイド−ジエチルアセトアセテートであることを特徴とするものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0019】
また本発明において、この4価金属は、ゲルマニウム、シリコンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とするものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0020】
また本発明において、上記の有機金属化合物は、(−3価金属−酸素−)の6員環の3つの3価金属にカルボキシレート基が配位した化合物、(−3価金属−酸素−)の6員環の3つの3価金属にフェノキシ基が配位した化合物から選ばれる少なくとも1つであることを特徴するものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0021】
また本発明において、この3価金属は、アルミニウムであることを特徴とするものであり、水蒸気などのガス吸収性が高いガス吸収層3を形成することができるものである。
【0022】
また本発明において、ガス吸収層3は、外気から遮断する第2のガスバリア層4で覆われていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明によれば、ガス吸収層3が外気から水蒸気などのガスを直接に吸収して短期間で飽和状態になることを第2のガスバリア層4で防ぐことができ、ガス遮断性能を長期に亘って維持することができるものである。
【0024】
また本発明において、この第2のガスバリア層4は、透明であることを特徴とするものであり、第2のガスバリア層4をガス吸収層3に被覆した状態で使用しても、透明基板の透明性を保持することができるものである。
【0025】
また本発明は、透明なガスバリア層2と透明なガス吸収層3の少なくとも一方が複数層形成されていることを特徴とするものであり、ガスの遮断や吸収を複数層で行なうことができ、ガス遮断性能を高く得ることができるものである。
【0026】
また本発明は、ガスバリア層2やガス吸収層3によって形成される表面は、粗さ(Ra)が20nm以下であることを特徴とするものである。
【0027】
透明基板の表面の平滑性が粗さ(Ra)20nm以下であることによって、透明基板を平行に配置して液晶分子を充填するにあたって、液晶分子に配向の乱れが生じることをより有効に防いで光の散乱を防止することができ、鮮明な画像を得ることができるものである。
【0028】
また本発明は、最外層に配置される第2のガスバリア層4は剥離可能であることを特徴とするものであり、透明基板を使用する前は、この第2のガスバリア層4でガス吸収層3を被覆しておき、透明基板をディスプレイの基板などに組み付けるときには、この第2のガスバリア層4を剥離した状態で使用することができるものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ガスバリア層2で水蒸気などのガスが透過することを遮断することができると共に、透過する水蒸気などのガスをガス吸収層3で吸収することができるものであり、水蒸気などのガスの透過を遮断する効果を高く得ることができるものである。また透明積層板1の表面の凹凸をこれらのガスバリア層2やガス吸収層3で埋めて平坦にならすことができるものであり、表面の平滑性を高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0031】
まず、本発明において使用する透明積層板について説明する。この透明積層板は、ガラス繊維より屈折率の大きい高屈折率樹脂と、ガラス繊維より屈折率の小さい低屈折率樹脂とを混合して、屈折率がガラス繊維の屈折率に近似するように調整された樹脂組成物を、ガラス繊維基材に含浸・硬化して作製されるものである。
【0032】
上記のガラス繊維より高屈折率の樹脂として、シアネートエステル樹脂を用いるのが好ましい。シアネートエステル樹脂は、1分子中に2個以上のシアネート基を有するシアネートエステル化合物が3量化でトリアジン環を生成して重合したものであり、シアネートエステル化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナートフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)エタン等、あるいはこれらの誘導体など、芳香族シアネートエステル化合物を用いることができる。これらは単独で用いる他、複数種を組み合わせて用いるようにしてもよい。このシアネートエステル樹脂は剛直な分子骨格を有するものであり、このため、硬化物に高いガラス転移温度を与えるものである。またシアネートエステル樹脂は常温で固形であるので、後述のように樹脂組成物をガラス繊維の基材に含浸して乾燥することによってプリプレグを調製する際に、指触乾燥することが容易になるので、プリプレグの取り扱い性が良好になるものである。
【0033】
ここで、ガラス繊維の屈折率が例えば1.562である場合、高屈折率樹脂として用いるシアネートエステル樹脂は屈折率が1.6前後のものが好ましく、ガラス繊維の屈折率をnとすると、n+0.03〜n+0.06の範囲のものであることが望ましい。尚、本発明において、樹脂の屈折率は、いずれも硬化した樹脂の状態での屈折率をいうものであり、ASTM D542で試験した値である。
【0034】
一方、上記のガラス繊維より低屈折率の樹脂としては、低屈折率であれば任意のエポキシ樹脂を用いることができるが、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。ガラス繊維の屈折率が例えば1.562である場合、この低屈折率のエポキシ樹脂としては屈折率が1.5前後のものが好ましく、ガラス繊維の屈折率をnとすると、n−0.04〜n−0.08の範囲のものであることが望ましい。
【0035】
低屈折率の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂において、ビスフェノール型としては、ビスフェノールA型の他に、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型などを用いることもできる。
【0036】
また、低屈折率の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、常温で固形の固形型水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。常温で液状の液状型水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を使用することもできるが、プリプレグを調製する際に、指触で粘着性のある状態にまでしか乾燥することができず、プリプレグの取り扱い性が悪くなるので、固形型水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を使用するのが好ましいのである。さらに、低屈折率のエポキシ樹脂として、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂以外のものを併用することも可能であり、例えば1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサンを含むエポキシ樹脂を併用することができる。このエポキシ樹脂は屈折率を微調整するために併用するものであり、また常温で固体であるために透明積層板の製造を容易にするためにも最適な樹脂である。
【0037】
そして、上記の高屈折率のシアネートエステル樹脂と、低屈折率の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂などエポキシ樹脂とを混合して、ガラス繊維の屈折率に近似した樹脂組成物を調製して用いるものである。高屈折率のシアネートエステル樹脂と低屈折率のエポキシ樹脂の混合比率は、ガラス繊維の屈折率に近似させるように、任意に調整されるものである。ここで、樹脂組成物の屈折率はガラス繊維の屈折率にできるだけ近いことが望ましいが、ガラス繊維の屈折率をnとすると、n−0.02〜n+0.02の範囲で近似するように調整するのが好ましい。
【0038】
またこの樹脂組成物は、その硬化樹脂のガラス転移温度(Tg)が170℃以上になるように調製されるのが好ましい。ガラス転移温度が170℃以上であることによって、透明積層板の耐熱性を高めることができるものである。ガラス転移温度の上限は特に設定されるものではないが、実用的には280℃程度がガラス転移温度の上限である。ガラス転移温度の調整は、樹脂組成物中の上記のシアネートエステル樹脂の配合比率を変えることによって行なうことができるものであり、併用する低屈折率樹脂の種類に左右されるが、樹脂組成物の樹脂分中、シアネートエステル樹脂が約30質量%以上であれば、樹脂組成物のガラス転移温度を170℃以上に調整することができる。
【0039】
さらに樹脂組成物には、硬化開始剤(硬化剤)を配合することができる。この硬化開始剤としては、有機金属塩を用いることができる。この有機金属塩としては、例えば、オクタン酸、ステアリン酸、アセチルアセトネート、ナフテン酸、サリチル酸等の有機酸と、Zn、Cu、Fe等の金属との塩を挙げることができる。これらは一種を単独で用いる他に、二種以上を併用することもできるが、中でも、オクタン酸亜鉛が好ましい。硬化開始剤としてオクタン酸亜鉛を用いることによって、硬化樹脂のガラス転移温度を高めることができるものである。樹脂組成物中のオクタン酸亜鉛など有機金属塩の含有量は、特に限定されるものではないが、0.01〜0.1PHRの範囲が好ましい。
【0040】
また硬化開始剤として、カチオン系硬化剤を用いることもできる。このようにカチオン系硬化剤を用いることによって樹脂の透明性を高めることができるものである。カチオン系硬化剤としては、特に限定されるものではないが、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体などを用いることができる。樹脂組成物中のカチオン系硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、0.2〜3.0PHRの範囲が好ましい。
【0041】
さらに硬化開始剤として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン、2−エチル−4−イミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−イミダゾール(2E4MZ)などの硬化触媒を用いることもできる。樹脂組成物中の硬化触媒の含有量は、特に限定されるものではないが、0.5〜5PHRの範囲が好ましい。
【0042】
上記のように高屈折率のシアネートエステル樹脂、低屈折率の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂などエポキシ樹脂、硬化開始剤を配合することによって樹脂組成物を調製することができるものである。この樹脂組成物は、必要に応じて溶剤に溶解乃至分散して樹脂ワニスとして使用するものである。この溶剤としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、N,N’−ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。
【0043】
一方、ガラス繊維としては、透明積層板の耐衝撃性を高める効果の点からEガラスやNEガラスであることが好ましい。Eガラスは無アルカリガラスとも称され、樹脂強化用ガラス繊維として汎用されるガラスであり、NEガラスはNewEガラスのことである。またガラス繊維には、耐衝撃性を向上させる目的で、ガラス繊維処理剤として通常使用されているシランカップリング剤によって表面処理しておくことが好ましい。ガラス繊維の屈折率は1.55〜1.57の範囲であることが好ましく、1.555〜1.565の範囲であることがさらに好ましい。ガラス繊維の屈折率がこの範囲であれば、視認性に優れた透明積層板を得ることができるものである。ガラス繊維の基材としては、ガラス繊維の織布あるいは不織布を使用することができる。
【0044】
そしてガラス繊維の基材に樹脂組成物のワニスを含浸し、加熱して乾燥することによって、プリプレグを調製することができる。乾燥条件は特に限定されるものではないが、乾燥温度100〜160℃、乾燥時間1〜10分間の範囲が好ましい。
【0045】
次にこのプリプレグを1枚、あるいは複数枚重ね、加熱加圧成形することによって、樹脂組成物を硬化させて、透明積層板を得ることができるものである。加熱加圧成形の条件は、特に限定されるものではないが、温度150〜200℃、圧力1〜4MPa、時間10〜120分間の範囲が好ましい。
【0046】
上記のようにして得られる透明積層板にあって、高屈折率のシアネートエステル樹脂と低屈折率の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂が重合して形成される樹脂マトリクスは、シアネートエステル樹脂を含有することによってガラス転移温度が高いものであり、耐熱性に優れた透明積層板を得ることができるものである。またシアネートエステル樹脂や水添ビスフェノール型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂はいずれも透明性に優れるものであり、高い透明性を確保した透明積層板を得ることができるものである。この透明積層板において、ガラス繊維の基材の含有率は25〜65質量%の範囲であることが好ましく、この範囲であれば、ガラス繊維による補強効果で高い耐衝撃性を得ることができると共に、十分な透明性を得ることができるものである。
【0047】
ここで、ガラス繊維の基材としては、透明性を高く得るために、厚みの薄いものを複数枚重ねて用いるのが好ましい。具体的には、ガラス繊維基材として厚み50μm以下のものを用い、この50μm以下の厚みのガラス繊維基材を2枚以上重ねて使用するのが好ましい。ガラス繊維基材の厚みの下限は特に限定されるものではないが、10μm程度が実用上の下限である。またガラス繊維基材の枚数も特に限定されるものではないが、20枚程度が実用上の上限である。このように複数枚のガラス繊維基材を用いて透明積層板を製造する場合、各ガラス繊維基材に樹脂組成物を含浸・乾燥してプリプレグを作製し、このプリプレグを複数枚重ねて加熱加圧成形することによって透明積層板を得ることができるが、複数枚のガラス繊維基材を重ねた状態で樹脂組成物を含浸・乾燥してプリプレグを作製し、このプリプレグを加熱加圧成形して透明積層板を得るようにしてもよい。
【0048】
そして、上記のように作製した透明積層板1の表面に、ガスバリア性を有する透明なガスバリア層2とガス吸収性を有する透明なガス吸収層3とを積層することによって、本発明に係る透明基板Aを得ることができるものである。
【0049】
透明積層板1へのガスバリア層2とガス吸収層3の積層は、図1(a)のように、透明積層板1の表面にガスバリア層2を形成し、このガスバリア層2の上にガス吸収層3を形成するようにした構成であってもよく、また図1(b)のように、透明積層板1の片側の表面にガスバリア層2を形成し、他方の片側の表面にガス吸収層3を形成するようにした構成であってもよい。この透明基板Aを図3のようにディスプレイの基板として使用する場合、ディスプレイの駆動素子10は図1(a)(b)における図の下側に配置して搭載されるものであり、いずれも場合も、ガスバリア層2はガス吸収層3よりも、駆動素子10から遠い側に配置されるものであり、ディスプレイにおいてガスバリア層2はガス吸収層3より外側に配置されるものである。
【0050】
そしてこのように透明積層板1にガスバリア層2とガス吸収層3を積層して形成される透明基板Aにあって、外気の水蒸気や酸素等のガスは、まずガスバリア層2で遮断することができ、ガスが駆動素子10へと透過することを防ぐことができる。またこれらのガスが仮にガスバリア層2を透過しても、この透過したガスはガス吸収層3で吸収されるものである。従って、透明基板Aにディスプレイの駆動素子10を搭載するにあたって、これらのガスが駆動素子10に作用し、駆動素子10の液晶分子14を劣化させたりすることを防ぐことができるものである。
【0051】
透明積層板1にガスバリア層2とガス吸収層3を積層して形成される透明基板Aのガス透過性は、水蒸気透過率(WVTR)が0.1g/m・24h以下であることが望ましい。透明基板Aの水蒸気透過率(WVTR)が0.1g/m・24h以下であることによって、水蒸気などのガスが駆動素子10に作用して劣化させることを有効に防ぐことができるものである。この水蒸気透過率(WVTR)は小さければ小さいほど望ましいのはいうまでもない。ここで、水蒸気透過率は、JIS Z0208(1976)に準拠した方法で測定した値である。
【0052】
また透明積層板1の表面にガスバリア層2やガス吸収層3を設けることによって、透明積層板1の表面の凹凸をガスバリア層2やガス吸収層3で埋めて平坦にならすことができるものであり、ガスバリア層2やガス吸収層3によって形成される透明基板Aの表面の平滑性を高めることができるものである。このように透明基板Aの表面の平滑性を高めることによって、既述の図3のように一対の透明基板Aを平行に配置して駆動素子10の液晶分子14を充填するにあたって、透明基板A間の間隔を均一な寸法に設定することができ、液晶分子14に配向の乱れが生じることを防いで、光の散乱が発生することを防止することができるものであり、鮮明な画像のディスプレイを作製することができるものである。
【0053】
ガスバリア層2やガス吸収層3によって形成される透明基板Aの表面の平滑性は、表面粗さRaが20μm以下であることが望ましい。表面粗さRaが20μm以下であることによって、透明基板A間の間隔をより均一に設定することができ、液晶分子に配向の乱れが生じることをより確実に防いで、光の散乱が発生することを防止することができるものである。この表面粗さRaは小さければ小さいほど望ましいのはいうまでもない。ここで、表面粗さRaはJIS B0601(1994)で規定される算術平均粗さであり、測定は次のようにして行なった。株式会社東京精密製の蝕針式表面粗さ計「SURFCOM 130A」を用いて、透明積層板の表面凹凸を縦、横、45°バイアス方向についてそれぞれ3点測定し、合計9点の測定値の平均値をRa値とした。
【0054】
ガスバリア性を有する透明なガスバリア層2としては、特に限定されるものではないが、珪素窒化物(SiN)、珪素酸窒化物(SiON)、酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)など無機質材料の薄膜で形成することができる。これらの無機質材料の薄膜の形成は、気相蒸着法を用いて行なうことができるものであり、例えば、熱CVD、プラズマCVD、レーザCVDなどの化学蒸着法(CVD)や、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、レーザアブレーションなどの物理蒸着法(PVD)を採用することができる。ガスバリア層2の膜厚は特に限定されるものではないが、10〜1000nm程度の範囲が好ましい。
【0055】
またガス吸収性を有する透明なガス吸収層3の膜厚は、特に限定されるものではないが、1〜1000μm程度の範囲が好ましい。そしてこのガス吸収層3としては特に限定されるものではないが、ガス吸収成分として有機金属化合物を含有するものが好ましい。
【0056】
この有機金属酸化物としては、2価以上の金属を含み、且つその金属が酸素との化学結合を有する化合物が挙げられる。
【0057】
このような2価以上の金属を含み、且つその金属が酸素との化学結合を有する有機金属化合物の一つに、アルキルアルミニウムとシラノール基を有するポリシロキサンとの反応によって得られる化合物がある。
【0058】
アルキルアルミニウムとしては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどを挙げることができる。
【0059】
そして例えばアルキルアルミニウムとしてトリオクチルアルミニウムを用い、トリオクチルアルミニウムとシラノール基を有するポリシロキサンとを反応させることによって、[化1]に示すような、有機金属化合物を得ることができる。
【0060】
【化1】

【0061】
そしてこの有機金属化合物は、[化2]に示すように、水分と化学的に反応して捕捉し、水蒸気を吸収することができるものである。
【0062】
【化2】

【0063】
またこの有機金属化合物は、[化3]に示すように、酸素とも反応して捕捉し、酸素を吸収することができる。
【0064】
【化3】

【0065】
また、上記の2価以上の金属を含み、且つその金属が酸素との化学結合を有する有機金属化合物の一つに、3価金属−ジアルキルオキサイド−モノエチルアセトアセテートがある。3価金属は、アルミニウム、ランタン、イットリウム、ガリウムから選ばれるものである。
【0066】
この有機金属化合物は、[化4]の一般式で示されるものである(式中、R1〜R3、R5は独立に炭素数1個以上のアルキル基,アリール基,シクロアルキル基,複素環基,アシル基を含む有機基を示し、Mは3価の金属原子を示す)。この金属有機化合物は、水分と化学的に反応して捕捉し、水蒸気を吸収することができるものである。
【0067】
【化4】

【0068】
具体例を例示すると、次の[化5]〜[化10]のもの挙げることができる。
【0069】
【化5】

【0070】
【化6】

【0071】
【化7】

【0072】
【化8】

【0073】
【化9】

【0074】
【化10】

【0075】
また、上記の2価以上の金属を含み、且つその金属が酸素との化学結合を有する有機金属化合物の一つに、4価金属−ジアルキルオキサイド−ジエチルアセトアセテートがある。4価金属は、ゲルマニウム、シリコンから選ばれるものである。
【0076】
この有機金属化合物は、[化11]の一般式で示されるものである(式中、R1,R3,R4は独立に炭素数1個以上のアルキル基,アリール基,シクロアルキル基,複素環基,アシル基を含む有機基を示し、Mは4価の金属原子を示す)。この金属有機化合物は、水分と化学的に反応して捕捉し、水蒸気を吸収することができるものである。
【0077】
【化11】

【0078】
具体例を例示すると、次の[化12]〜[化13]のもの挙げることができる。
【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
また、上記の2価以上の金属を含み、且つその金属が酸素との化学結合を有する有機金属化合物として、(−3価金属−酸素−)の6員環の3つの3価金属にカルボキシレート基が配位した化合物や、(−3価金属−酸素−)の6員環の3つの3価金属にフェノキシ基が配位した化合物がある。この3価金属としてはアルミニウムが好ましい。
【0082】
この有機金属化合物は、[化14]の一般式で示されるものである(式中、R1〜R3は独立に炭素数1個以上のアルキル基,アリール基,シクロアルキル基,複素環基,アシル基を含む有機基を示し、Mは3価の金属原子を示す)。この金属有機化合物は、水分と化学的に反応して捕捉し、水蒸気を吸収することができるものである。
【0083】
【化14】

【0084】
具体例を示すと、[化15]のアルミニウム オキサイド オクチレートの他に、[化16]〜[化17]のものが挙げられる。
【0085】
【化15】

【0086】
【化16】

【0087】
【化17】

【0088】
図2(a)(b)は本発明の他の実施の形態を示すものであり、ガス吸収層3の露出する側の表面に第2のガスバリア層4を積層し、ガス吸収層3が外気に触れないように第2のガスバリア層4で被覆するようにしたものである。ガス吸収層3が露出して外気に触れていると、大気中の水蒸気などのガスがガス吸収層3に常時吸収されるので、ガス吸収層3のガス吸収能は短時間で飽和して低下することになり、透明基板Aを透過する水蒸気などのガスをガス吸収層3で吸収して遮断する効果を長時間持続できなくなるおそれがある。このため、ガス吸収層3が外気に触れないように第2のガスバリア層4で被覆するようにしたものであり、透明基板Aを透過するガスをガス吸収層3で吸収して遮断する効果を長時間持続することができるものである。この第2のガスバリア層4は、上記の透明なガスバリア層2と同じ材料で形成することができるものであり、第2のガスバリア層4を透明に形成することによって、第2のガスバリア層4をガス吸収層3に被覆した状態で使用しても、透明基板Aの透明性を保持することができるものである。
【0089】
ここで、ガス吸収層3が外気に触れて大気中の水蒸気などのガスを吸収することの問題は、透明積層板1にガスバリア層2とガス吸収層3を積層して透明基板Aを製造した後、透明基板Aをディスプレイなどの製品に組み込むまでの間で発生することが多く、透明基板Aを組み込んだ後は、むしろ上記の第2のガスバリア層4は不要になることがある。この場合には、第2のガスバリア層4は剥離可能なものであることが望ましい。
【0090】
このような剥離可能な第2のガスバリア層4としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアミド、セルロース、アクリル樹脂等の樹脂フィルムおよびアルミ箔、銅箔などの金属箔を用いることができる。そしてこれらの樹脂フィルムまたは金属箔をガス吸収層3の表面に熱圧着してラミネートすることによって、ガス吸収層3に剥離可能な第2のガスバリア層4として被覆することができるものであり、第2のガスバリア層4が不要になったときには、容易に剥離して除去することができるものである。
【0091】
また、上記の実施の形態では、ガスバリア層2やガス吸収層3をそれぞれ1層設けるようにしたが、ガスバリア層2やガス吸収層3を複数層設けるようにしてもよく、この場合には、ガスの遮断や吸収を複数の層で行なうことができ、透明基板Aのガス遮断性能を高めることができるものである。
【実施例】
【0092】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0093】
(実施例1)
高屈折率樹脂として、固形型のシアネートエステル樹脂(Lonza社製「BADCy」、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン:屈折率1.59)を52質量部、低屈折率樹脂として、固形型の1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサンを含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「EHPE3150」:屈折率1.51)を48質量部配合し、さらに硬化開始剤としてオクタン酸亜鉛を0.02質量部配合し、これにトルエン50質量部、メチルエチルケトン50質量部を添加して、温度70℃で攪拌溶解することによって、樹脂組成物のワニスを調製した。この樹脂組成物の硬化物の屈折率は1.56であった。
【0094】
次に、厚み25μmのガラス繊維クロス(旭化成エレクトロニクス(株)製品番「1037」、Eガラス、屈折率1.562)に、上記の樹脂組成物のワニスを含浸し、150℃で5分間加熱することによって、溶剤を除去すると共に樹脂を半硬化させてプリプレグを調製した。
【0095】
そしてこのプリプレグを2枚重ね、離型処理をしたガラス板に挟んでプレス機にセットし、170℃、2MPa、15分の条件で加熱加圧成形することによって、樹脂の含有率が63質量%、厚みが80μmの透明積層板1を得た。
【0096】
この透明積層板1の表面粗さRaは90nm、水蒸気透過率(WVTR)は2.6g/m24hであった。
【0097】
次にこの透明積層板1の表面に、プラズマCVD法によって、厚み100nmの珪素窒化物(SiN)からなる透明なガスバリア層2を形成した。透明積層板1に形成したガスバリア層の側の表面の粗さRaは20nmであり、このガスバリア層2を形成した透明積層板1の水蒸気透過率(WVTR)は0.01g/m24hであった。
【0098】
次に、透明積層板1に形成したこのガスバリア層2の表面に、トリオクチルアルミニウム(Sigma Aldrich社製)と両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(YT3807、GE−Toshiba Silicone社製)を同質量ずつヘキサン溶液中で撹拌反応させた溶液組成物を、スピンコート塗布して乾燥することによって、膜厚50μmの透明なガス吸収層3を形成し、ガス吸収層3とガスバリア層2を積層した透明基板Aを得た(図1(a)参照)。
【0099】
この透明基板Aにおいて、ガス吸収層3とガスバリア層2を形成した側の表面の粗さRaは17nmであり、ガス吸収層3とガスバリア層2を形成したこの透明基板Aの水蒸気透過率(WVTR)は0.007g/m24hであった。
【0100】
(実施例2)
実施例1で得た透明積層板1の表面に、スパッタリング法によって、厚み100nmの珪素酸窒化物(SiON)からなる透明なガスバリア層2を形成した。透明積層板1に形成したガスバリア層2の側の表面の粗さRaは20nmであり、このガスバリア層2を形成した透明積層板1の水蒸気透過率(WVTR)は0.01g/m24hであった。
【0101】
次に、透明積層板1に形成したこのガスバリア層2の表面に、アルミニウムオキサイドオクチレート(ホープ製薬社製 商品名:オリープAOO)のトルエン50質量%溶液組成物を、ロールコート塗布して乾燥することによって、膜厚50μmの透明なガス吸収層3を形成し、ガス吸収層3とガスバリア層2を積層した透明基板Aを得た(図1(a)参照)。
【0102】
この透明基板Aにおいて、ガス吸収層3とガスバリア層2を形成した側の表面の粗さRaは17nmであり、ガス吸収層3とガスバリア層2を形成したこの透明基板Aの水蒸気透過率(WVTR)は0.007g/m24hであった。
【0103】
(実施例3)
実施例1で得た、ガス吸収層3とガスバリア層2を形成した透明基板Aを用い、そしてこのガス吸収層3の表面に、スパッタリング法によって、厚み100nmの珪素酸窒化物(SiON)からなる透明な第2のガスバリア層4を形成し、第2のガスバリア層4とガス吸収層3とガスバリア層2を積層した透明基板Aを得た(図2(a)参照)。
【0104】
この透明基板Aにおいて、第2のガスバリア層4とガス吸収層3とガスバリア層2を形成した側の表面の粗さRaは15nmであり、第2のガスバリア4とガス吸収層3とガスバリア層2を形成したこの透明基板Aの水蒸気透過率(WVTR)は0.008g/m24hであった。
【0105】
(実施例4)
実施例2で得た、ガス吸収層3とガスバリア層2を形成した透明基板Aを用い、そしてこのガス吸収層3の表面に、スパッタリング法によって、厚み100nmの珪素酸窒化物(SiON)からなる透明な第2のガスバリア層4を形成し、第2のガスバリア層4とガス吸収層3とガスバリア層2を積層した透明基板Aを得た(図2(a)参照)。
【0106】
この透明基板Aにおいて、第2のガスバリア層4とガス吸収層3とガスバリア層2を形成した側の表面の粗さRaは13nmであり、第2のガスバリア4とガス吸収層3とガスバリア層2を形成したこの透明基板Aの水蒸気透過率(WVTR)は0.008g/m24hであった。
【0107】
(実施例5)
実施例1で得た、ガス吸収層3とガスバリア層2を形成した透明基板1を用い、そしてこのガス吸収層3の表面に、厚み50μmのポリビニルアルコールフィルムを熱ロールで圧着することによって、剥離可能な第2のガスバリア層4を形成し、剥離可能な第2のガスバリア層4とガス吸収層3とガスバリア層2を積層した透明基板Aを得た(図2(a)参照)。
【0108】
この透明基板Aにおいて、剥離可能な第2のガスバリア層4とガス吸収層3とガスバリア層2を形成した側の表面の粗さRaは13nmであり、第2のガスバリア4とガス吸収層3とガスバリア層2を形成したこの透明基板Aの水蒸気透過率(WVTR)は0.008g/m24hであった。
【0109】
(実施例6)
実施例2で得た、ガス吸収層3とガスバリア層2を形成した透明基板Aを用い、そしてこのガス吸収層3の表面に、厚み50μmのポリビニルアルコールフィルムを熱ロールで圧着することによって、剥離可能な第2のガスバリア層4を形成し、剥離可能な第2のガスバリア層4とガス吸収層3とガスバリア層4を積層した透明基板Aを得た。
【0110】
この透明基板Aにおいて、剥離可能な第2のガスバリア層4とガス吸収層3とガスバリア層2を形成した側の表面の粗さRaは13nmであり、第2のガスバリア4とガス吸収層3とガスバリア層2を形成したこの透明基板Aの水蒸気透過率(WVTR)は0.008g/m24hであった。
【0111】
上記の実施例1〜6にみられるように、透明積層板1は表面粗さRaが90nm、水蒸気透過率(WVTR)が2.6g/m24hであるが、この透明積層板1にガスバリア層2とガス吸収層3を積層し、またこれに加えて第2のガスバリア層4を積層して得た透明基板Aは、表面粗さRaが13〜20nmに、水蒸気透過率(WVTR)が0.007〜0.008g/m24hになっており、表面平滑性やガス遮断性を大きく高めることができることが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ概略図である。
【図2】本発明の他の実施の形態の一例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ概略図である。
【図3】液晶ディスプレイの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
1 透明積層板
2 ガスバリア層
3 ガス吸収層
4 第2のガスバリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維より屈折率の大きい高屈折率樹脂と、ガラス繊維より屈折率の小さい低屈折率樹脂とを混合して、屈折率がガラス繊維の屈折率に近似するように調整された樹脂組成物を、ガラス繊維基材に含浸・硬化して作製される透明積層板を備え、ガスバリア性を有する透明なガスバリア層とガス吸収性を有する透明なガス吸収層とが透明積層板に積層されていることを特徴とする透明基板。
【請求項2】
ディスプレイの駆動素子が搭載される透明基板であって、ガスバリア層はガス吸収層よりも、駆動素子から遠い側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の透明基板。
【請求項3】
ガス吸収層はガス吸収成分を含有して形成され、ガス吸収成分は有機金属化合物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明基板。
【請求項4】
ガス吸収層に含有される有機金属化合物は、2価以上の金属を含み、且つその金属が酸素との化学結合を有する化合物であることを特徴とする請求項3に記載の透明基板。
【請求項5】
有機金属化合物は、アルキルアルミニウムとシラノール基を有するポリシロキサンとの反応によって得られる化合物であることを特徴とする請求項4に記載の透明基板。
【請求項6】
有機金属化合物は、3価金属−ジアルキルオキサイド−モノエチルアセトアセテートであることを特徴とする請求項4に記載の透明基板。
【請求項7】
3価金属が、アルミニウム、ランタン、イットリウム、ガリウムから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項6に記載の透明基板。
【請求項8】
有機金属化合物は、4価金属−ジアルキルオキサイド−ジエチルアセトアセテートであることを特徴とする請求項4に記載の透明基板。
【請求項9】
4価金属が、ゲルマニウム、シリコンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載の透明基板。
【請求項10】
有機金属化合物は、(−3価金属−酸素−)の6員環の3つの3価金属にカルボキシレート基が配位した化合物、(−3価金属−酸素−)の6員環の3つの3価金属にフェノキシ基が配位した化合物から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項4に記載の透明基板。
【請求項11】
3価金属が、アルミニウムであることを特徴とする請求項10に記載の透明基板。
【請求項12】
ガス吸収層は、外気から遮断する第2のガスバリア層で覆われていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の透明基板。
【請求項13】
第2のガスバリア層は、透明であることを特徴とする請求項12に記載の透明基板。
【請求項14】
透明なガスバリア層と透明なガス吸収層の少なくとも一方が複数層形成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一方に記載の透明基板。
【請求項15】
表面の粗さ(Ra)が20nm以下であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の透明基板。
【請求項16】
最外層に配置される第2のガスバリア層は剥離可能であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の透明基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−241520(P2009−241520A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93587(P2008−93587)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】