説明

透明容器入り液体口腔用組成物

【課題】第4級アンモニウム塩型界面活性剤が配合された液体口腔用組成物を透明容器に充填してなり、一定量の光照射後においても薬効低減、変色、異味・異臭などのない含嗽液、洗口液等の透明容器入り液体口腔用組成物の提供。
【解決手段】第4級アンモニウム塩型界面活性剤と、多価アルコール及び糖アルコールの少なくともいずれかを40質量%〜80質量%と、酢酸エステル類及びラクトン類の少なくともいずれかを0.001質量%〜0.5質量%と、セスキテルペンアルコールを0.00001質量%〜0.01質量%と、を含有してなる液体口腔用組成物であって、前記液体口腔用組成物が、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなる透明容器に充填されてなる液体口腔用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第4級アンモニウム塩型界面活性剤が配合された液体口腔用組成物を透明容器に充填してなり、一定量の光照射後においても薬効低減、変色、異味・異臭などのない含嗽液、洗口液等の透明容器入り液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、洗口剤、含嗽薬等の液体口腔用組成物は、口腔内やのどの殺菌、口臭予防、消毒や各種炎症の治療、風邪等の感染症予防などを目的として殺菌剤を配合した製剤である。また、配合する原料によっては均一に混和することが困難なために、口腔内に入れても刺激の少ない界面活性剤を選択して配合することが多い。これらの条件を満たす殺菌効果と界面活性能を有する原料として、第4級アンモニウム塩型界面活性剤が使用されている。
このような第4級アンモニウム塩型界面活性剤は、液体口腔用組成物に配合すると、口腔内での刺激は比較的少ないが、配合すると苦味や渋みなどが生じて継続的に使用することが困難である。そこで、第4級アンモニウム塩型界面活性剤の苦味や渋みを抑制することを目的として、例えば甘味剤、ポリオール、清涼化剤、一般的な香料(例えばl−メントール、ハッカ油、フルーツ用香料等)、又はこれらの組合せなどを添加することが提案されている(特許文献1〜3参照)。
しかし、長期保存の結果、第4級アンモニウム塩型界面活性剤の苦味を低減させる目的で配合している甘味剤、清涼化剤、香料などが分解乃至劣化することにより、苦味低減効果が低下してしまうという問題がある。
【0003】
このような液体口腔用組成物は、外部から見え易いように透明外観を有する容器が審美的に好まれ、使用されている。また、容器から吐出又は噴霧時における内容液の視認性を高めるために、内容液には水溶性染料にて着色されることが多く、容器内での残量確認が容易な設計が好まれている。
【0004】
近年、液体口腔用組成物は、関連法令の規制緩和の影響により、従来の薬局、スーパーマーケット等から、コンビニエンスストア、ドラッグストア等でも販売がされるようになってきた。この場合、コンビニエンスストアでの商品は、蛍光灯から出る紫外線に近距離にて長時間照射される陳列形態が多く、また、ドラッグストア等の多品種を安価で販売する店舗形態が増加し、透明容器に充填された液体口腔用組成物も長期間日光を浴びる店頭での陳列販売が増加している。なかでも、夏場の直射日光が当たる店先の場所にて陳列された場合、内容液である液体口腔用組成物の薬効成分が分解して薬効が低下してしまったり、内容液の水溶性色素が退色や変色を起こしたり、苦味・異臭を発生することが問題となってきている。このため、長時間の日光照射や紫外線照射に対して内容液を変質させないために、容器を構成する樹脂組成物に紫外線吸収剤や顔料などを配合することが試みられている。
しかし、内容液である液体口腔用組成物の変質を抑えるために紫外線吸収剤や顔料の配合量を多量に配合すると容器が着色して視認性を悪くしたり、透明性が低下して外観審美上に不都合な影響がでてしまう。また、樹脂組成物に配合した紫外線吸収剤が容器から内容液に溶出することにより、人体への安全面で懸念される。このため、液体口腔用組成物を統括する薬事法での紫外線吸収剤の種類や配合量に厳しい制限がある。
このように、液体口腔用組成物を充填する容器に使用できる紫外線吸収剤の種類と量が限定されるため、外観審美、視認性、成分溶出などの性能を満足することができる透明容器の開発については技術課題が多く、その解決が期待されている。
【0005】
上述したように第4級アンモニウム塩型界面活性剤の苦味を低減させる目的で配合している甘味剤、清涼化剤、香料などは日光照射や紫外線により分解乃至劣化して、苦味低減効果が著しく低下すると共に、苦味、異臭を発生することが多い。また、配合成分を均一に溶解するために用いられる界面活性剤等の溶解補助剤なども日光照射等により、分解乃至劣化して、変色、にごり、オリなどを生じる。これらの結果、日光照射等を受ける製品は店頭での製品陳列時や長時間の紫外線照射時に変色、にごり、オリなどが発生したり、製品使用時に薬効性能が低減、苦味、異臭が発生して商品価値を著しく低下させる。透明容器であるため、変色、にごりやオリは店頭や購入後の家庭内で認識されやすく、販売店や顧客からの問い合わせや苦情を招きやすい。更に外観からの異常が見出されなくとも、使用時には日光照射により生じる苦味・異臭により顧客からの苦情が発生するなどの不具合がある。
【0006】
従来より、商品の輸送や保管時における保存安定性は、主に夏場の高温条件下での保存による商品への影響を主体に研究が行われていた。このため、日光照射や紫外線に対する保存安定性が求められる商品陳列の割合が増加している状況下、従来の技術では透明容器中での液体口腔用組成物の薬効性能低下、内容液の変色、苦味の増加をある程度防止することはできても、異臭までを防止できる技術はなかった。このため、医薬品や医薬部外品における薬効成分の分解低減や色調劣化防止のためには酸化チタンや濃色の顔料等を多量に配合した樹脂を使用することにより、透過する日光照射量を低下させる容器を用いたり、外箱や褐色ガラス瓶等を容器に用いることで遮光を行い、内容液の変質を低減していることが多い(特許文献4参照)。
また、透明容器に充填した飲料などの食品分野では長期間での品質保証を行わず、商品保証期間を通常1年以内と短期間に限定して流通、販売を行っている。しかし、医薬品や医薬部外品に属している口腔用商品は、商品保証期間として3年以上の保存安定性の確保が通常求められている。
【0007】
したがって外観審美性、視認性が求められる透明容器に充填した第4級アンモニウム塩型界面活性剤を含有する液体口腔用組成物において、長期間、直射日光を照射後でも内容液である液体口腔用組成物の薬効成分が分解して薬効が低下したり、内容液である液体口腔用組成物に配合した水溶性色素が退色や変色を起こしたり、組成物中の甘味剤、清涼化剤、香料が変質して苦味・異臭を生じない透明容器入り液体口腔用組成物の提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−106048号公報
【特許文献2】特許第3419945号公報
【特許文献3】特開平6−316537号公報
【特許文献4】特開2001−348027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、第4級アンモニウム塩型界面活性剤を配合しても、苦味及び刺激を大幅に抑制して使用時の香味の嗜好性を高くできると共に、紫外線、日光に長期間照射されても内容液である液体口腔用組成物の薬効成分が分解することにより薬効性能が低下したり、内容液である液体口腔用組成物に配合した水溶性色素が退色や変色を起こしたり、使用時及びすすぎ後に苦味・異臭を感じない、透明容器入り液体口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、(A)第4級アンモニウム塩型界面活性剤と、(B)多価アルコール及び糖アルコールの少なくともいずれかを40質量%〜80質量%と、(C)酢酸エステル類及びラクトン類の少なくともいずれかを0.001質量%〜0.5質量%と、(D)セスキテルペンアルコールを0.00001質量%〜0.01質量%とを含有し、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなる透明容器に充填することにより、紫外線、日光に長期間当たっても内容液である液体口腔用組成物の薬効成分が分解して薬効が低下したり、内容液である液体口腔用組成物の水溶性色素が退色や変色を起こしたり、使用時及びすすぎ後に苦味・異臭がない透明容器入り液体口腔用組成物が得られることを知見した。
【0011】
即ち、前記(A)成分の第4級アンモニウム塩型界面活性剤は、使用部位の殺菌、除菌の目的にて配合される。しかし、同じ系中にアニオン系界面活性剤が存在すると、(A)成分の第4級アンモニウム塩型界面活性剤の殺菌乃至除菌の効果を著しく低下してしまうことが知られている。このため、殺菌乃至除菌効果を最大限発揮するためには、他のアニオン系界面活性剤を極力配合しないことが好ましい。しかし、液体口腔用組成物の成分から生じる苦味をマスキングするためには前記(C)成分の酢酸エステル類及びラクトン類の少なくともいずれかの油溶性物質を溶解させる必要があるため、溶解補助成分として前記(B)成分の多価アルコール及び糖アルコールの少なくともいずれかを一定量用いる必要がある。
更に、前記(D)成分のセスキテルペンアルコールは、日光照射に対する組成の安定性を高める効果があり、他のセスキテルペン系炭化水素、セスキテルペン系アルデヒド、テルペンアルコール、テルペン系炭化水素、脂肪族アルデヒドなどでは日光照射後の苦味・異臭の抑制効果がないばかりか、配合した他のセスキテルペン系炭化水素、セスキテルペン系アルデヒド、テルペンアルコール、テルペン系炭化水素、脂肪族アルデヒドなどが変色をも引き起こすことが判明した。本発明において、前記(D)成分のセスキテルペンアルコールを配合することにより得られる効果は、日光照射時に日光のエネルギーを吸収し、液体口腔用組成物中の他の成分より先に重合もしくは分解すると推定される前記(D)成分のセスキテルペンアルコール自体は、元々味やにおいが少なく、分解物も苦味・異臭を発生しにくいため、重合もしくは分解しても苦味・異臭を発生しにくいと推定される。
これに対し、従来から用いられている前記(D)成分のセスキテルペンアルコール以外の他のセスキテルペン系炭化水素、セスキテルペン系アルデヒド、テルペンアルコール、テルペン系炭化水素、脂肪族アルデヒドなどは、これらの物質自体が味やにおいを元々有しているため、使用が困難であったり、日光照射によって重合や分解した際に生じる化合物により、においの変質を伴い、苦味・異臭を発生しやすいものと推定される。
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 第4級アンモニウム塩型界面活性剤と、
多価アルコール及び糖アルコールの少なくともいずれかを40質量%〜80質量%と、
酢酸エステル類及びラクトン類の少なくともいずれかを0.001質量%〜0.5質量%と、
セスキテルペンアルコールを0.00001質量%〜0.01質量%と、を含有してなる液体口腔用組成物であって、
前記液体口腔用組成物が、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなる透明容器に充填されてなることを特徴とする液体口腔用組成物である。
<2> 酢酸エステル類が、酢酸エチル、酢酸ブチル及び酢酸メンチルの少なくともいずれかであり、
ラクトン類が、ガンマーノナラクトン、ガンマーデカラクトン、及びガンマーウンデカラクトンから選択される少なくとも1種である前記<1>に記載の液体口腔用組成物である。
<3> セスキテルペンアルコールが、エレモール、レドール及びビリディフロロールから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体口腔用組成物である。
<4> 透明容器を構成する樹脂組成物が、更にブルーイング剤を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体口腔用組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、第4級アンモニウム塩型界面活性剤を配合しても、苦味及び刺激を大幅に抑制して使用時の香味の嗜好性を高くできると共に、紫外線、日光に長期間照射されて内容液である液体口腔用組成物の薬効成分が分解することにより薬効性能が低下したり、内容液である液体口腔用組成物に配合した水溶性色素が退色や変色を起こしたり、使用時及びすすぎ後に苦味・異臭を感じない、透明容器入り液体口腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の液体口腔用組成物は、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなる透明容器に充填されてなり、
(A)第4級アンモニウム塩型殺菌剤と、(B)多価アルコール及び糖アルコールの少なくともいずれかと、(C)酢酸エステル類及びラクトン類の少なくともいずれかと、(D)セスキテルペンアルコールとを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0015】
−(A)第4級アンモニウム塩型殺菌剤−
前記(A)成分のアンモニウム塩型殺菌剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(A1)及び一般式(A2)のいずれかで表される化合物などが好適に挙げられる。
【化1】

【化2】

【0016】
前記一般式(A1)及び(A2)において、R及びRは、それぞれ炭素数8〜18の炭化水素基、又はエーテル結合を有する炭化水素基を表す。
及びZは、それぞれハロゲン原子、アミノ酸、又は脂肪族脂肪酸を示す。
【0017】
前記(A)成分のアンモニウム塩型殺菌剤としては、例えば塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムが好ましく、塩化セチルピリジニウムが特に好ましい。
前記第4級アンモニウム塩型殺菌剤の含有量(2種以上を併用する場合は合計量)は0.05質量%〜1質量%が好ましく、0.1質量%〜0.5質量%がより好ましい。
前記含有量が0.05質量%未満であると、殺菌性能が十分でなくなることがあり、1質量%を超えると、苦味が強くなり使用するのが困難となることがある。
【0018】
−(B)多価アルコール、糖アルコール−
前記(B)成分の多価アルコール又は糖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン、1,3−ブチレングリコール、トリメチルプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グルコース、マンノース、ガラクトース、ショ糖、フルクトース、マントース、マルチトール、キシリトール、イノシトール、ソルビタン、ソルビトール、又はこれらのEO付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、香味や保存安定性の点からプロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトールが好ましく、プロピレングリコールが特に好ましい。
【0019】
前記(B)成分の多価アルコ−ル又は糖アルコールの含有量は、40質量%〜80質量%であり、50質量%〜70質量%が好ましい。前記含有量が、40質量%未満であると、外観で濁りが生じることがあり、80質量%を超えると、苦味が出るなどの不具合が生じる可能性がある。
【0020】
−(C)酢酸エステル類、ラクトン類−
前記(C)成分の酢酸エステル類又はラクトン類としては、前記酢酸エステル類又は前記ラクトン類を単独で用いることができるが、前記酢酸エステル類と前記ラクトン類を組み合わせて用いることが好ましい。
前記(C)成分の酢酸エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸メンチル、酢酸ヘキシルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酢酸エチル、酢酸メンチル、酢酸ブチルが含嗽時の苦味のなさから特に好ましい。
前記ラクトン類としては、例えばガンマーノナラクトン、ガンマーデカラクトン、デルタデカラクトン、ガンマーウンデカラクトン、デルタウンデカラクトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ガンマーノナラクトン、ガンマーデカラクトン、ガンマーウンデカラクトンが含嗽時の苦味のなさから特に好ましい。
なお、前記(C)成分の酢酸エステル類又はラクトン類は、これらを含む天然香料や複数の香料を調合した調合香料の形でもよい。
前記(C)成分の酢酸エステル類及びラクトン類の合計含有量は、(A)成分の第4級アンモニウム塩型殺菌剤の含有量に依存するが、0.001質量%〜0.5質量%であり、0.01質量%〜0.3質量%が好ましい。前記合計含有量が、0.001質量%未満であると、苦味のマスキング効果が不十分であり、0.5質量%を超えると、含嗽時の苦味のなさ、製剤系の保存安定性が悪くなることがある。
【0021】
−(D)セスキテルペンアルコール−
前記(D)成分のセスキテルペンアルコールとしては、例えばエレモール、カジノール、ベチベロール、レドール、ビサボロール、カリオフィレンアルコール、ビリディフロロールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エレモール、レドール、ビリディフロロールが日光照射後のサンプルを含嗽時に異味のなさの点から特に好ましい。
なお、前記(D)成分のセスキテルペンアルコールは、これらを含む天然香料や複数の香料を調合した調合香料の形で使用してもよい。
前記(D)成分の合計含有量は、0.00001質量%〜0.01質量%であり、0.0001質量%〜0.003質量%が好ましい。前記合計含有量が、0.00001質量%未満であると、異味のマスキング効果が不十分であり、0.01質量%を超えると、製剤系の保存安定性が悪くなることがある。
【0022】
−その他の成分−
本発明の液体口腔用組成物には、更に必要に応じて他の添加剤、(A)成分を除く殺菌剤、(B)成分を除く溶剤、(C)成分及び(D)成分を除く香料組成物、水溶性色素、消炎剤、清涼剤、pH調整剤、などが挙げられ、これらは本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0023】
前記(A)成分を除く殺菌剤としては、例えばイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ポリアミノプロピルビグアナイド、トリクロロカルバリニド、塩酸クロルヘキシジン、アルキルジアミノエチルグリシン、オクトピロックスなどが挙げられる。
【0024】
前記(C)成分及び(D)成分を除く香料組成物とは、香料成分、香料用溶剤、及び香料安定化剤からなる混合物である。
前記香料成分として使用される香料原料のリストは、様々な文献、例えば、「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994);「合成香料化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996);「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994);「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989);「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996);「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等で見ることができる。これらの文献に記載された香料原料の中から、前記香料成分を適宜選択することができ、例えば、ユーカリ油、カンフル、ボルネオール、レモン油、オレンジ油、ライム油、グレープフルーツエキス、ラベンダー油、ラベンダーエキス、ローズマリー油、ローズマリーエキスなどが挙げられる。
【0025】
前記香料用溶剤としては、(B)成分の多価アルコ−ルを除き、例えば、エタノール、ベンジルベンゾエート、アセチン(トリアセチン)、MMBアセテート(3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート)、エチレングリコールジブチレート、ジブチルセバケート、デルチールエキストラ(イソプロピルミリステート)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、安息香酸ベンジル、フタル酸ジエチル、アボリン(ジメチルフタレート)、デルチルプライム(イソプロピルパルミテート)、ファルネセン、ジオクチルアジペート、トリブチリン(グリセリルトリブタノエート)、プロピレングリコールジアセテート、セチルアセテート(ヘキサデシルアセテート)、エチルアビエテート、アバリン(メチルアビエテート)、シトロフレックスA−2(アセチルトリエチルシトレート)、シトロフレックスA−4(トリブチルアセチルシトレート)、シトロフレックスNo.2(トリエチルシトレート)、シトロフレックスNo.4(トリブチルシトレート)、ドゥラフィックス(メチルジヒドロアビエテート)、MITD(イソトリデシルミリステート)、ポリリモネン(リモネンポリマー)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記香料組成物の含有量は、前記液体口腔用組成物中、0.005質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。
【0026】
前記(B)成分を除く溶剤としては、例えば炭素数2〜5のアルコールであるエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エステル油であるトリアセチン、MDO、などが挙げられる。
【0027】
前記水溶性色素としては、実質的に常温で水に可溶な色素で、安全性の高いものから任意に選択することができ、例えば青色1号、青色2号、青色201号、青色403号、緑色3号、黄色4号、黄色5号、黄色103号、赤色2号、赤色3号、赤色104号、赤色106号等の合成色素;クチナシ色素、カロチン色素、ベニバナ色素、アントシアニン、ベニコウジ色素等の天然性色素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、品質の均一性から、通常、合成色素が好適である。
前記水溶性色素の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.00005質量%〜0.01質量%の範囲が好ましい。
前記水溶性色素を添加することにより、製品内容液を容器に取り分けて希釈する時に識別性を高めて計量がしやすく、誤飲の防止になるなど使用性向上の観点から非常に有用である。
【0028】
前記消炎剤としては、例えばグリチルリチン酸二カリウム、アズレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記清涼剤としては、例えばメントール、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、WS3、クーリングエージェント10、などが挙げられる。
前記pH調整剤としては、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、などが挙げられる。
【0029】
本発明の液体口腔用組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、それぞれの成分を単独あるいは複数種類まとめて使用し、所定の装置を用いて常法により製造することができる。
前記液体口腔用組成物を調製する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、剪断力と全体混合できる複数の攪拌羽根(例えばプロペラ、タービン、ディスパー等)を備えた攪拌装置が好ましい。
【0030】
本発明の液体口腔用組成物は、pHメーター(東亜電波工業株式会社製、HM−30G),pH電極(東亜ディーケーケー株式会社製、GST−5721C型)を用いて測定した25℃でのpHが4.5〜7.5であることが好ましく、5〜6がより好ましく、5.2が特に好ましい。前記pHが4.5未満であると、第4級アンモニウム塩型界面活性剤が析出してくるなど、系の安定性に不具合が生じることがあり、7.5を超えると、pH調整剤を過剰に用いなければならず安全性の観点から好ましくない。
【0031】
<透明容器>
前記透明容器は、樹脂組成物からなる。前記樹脂組成物は、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含有し、ブルーイング剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0032】
−熱可塑性ポリエステル樹脂−
前記熱可塑性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂;ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂等の脂肪族ポリエステル樹脂;ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂のようなオキシ酸の重合体、芳香族ポリエステルにポリオキシアルキレングリコールを共重合させたポリエステルエラストマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が容器の透明性の点から特に好ましい。
【0033】
−ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば下記構造式で表される2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ(tert−ブチル)−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、下記構造式で表される2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:TINUVIN326:チバ・ジャパン株式会社製、商品名:アデカスタブ LA−36:株式会社アデカ)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ(tert−ブチル)−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールが、内容物劣化の抑制効果の点から好ましく、下記構造式で表される2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールが特に好ましい。また、例えば、アデカアーガス社製の商品名「アデカスタブLA−57」などのヒンダードアミン系光安定剤の使用も好ましい。
【化3】

【0034】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.05質量部以上1質量部以下がより好ましい。前記含有量が、0.01質量部未満であると、紫外線吸収効果が達成できない場合があり、10質量部を超えると、成形時の金型汚染や内容液への吸収剤溶出量の増大による人体への安全性の懸念等の問題がある。
【0035】
−ブルーイング剤−
前記ブルーイング剤とは、審美性を高めたり、紫外線から防御する目的で配合されるものであり、無機顔料、有機顔料、無機染料、及び有機染料から選択される少なくとも1種を混合してなるものを意味する。
前記ブルーイング剤としては、例えば日本学術振興会染色加工第120委員会編“新染色加工講座1”第37頁〜40頁に分類されている染料などが挙げられる。
前記ブルーイング剤の含有量は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上0.01質量部以下が好ましく、0.0005質量部以上0.001質量部以下がより好ましい。
【0036】
前記樹脂組成物には、必要に応じて離型剤を配合することが好ましい。該離型剤としては、例えば前記成分(C)及び(D)を除く脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、及びポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種の化合物が好適である。これらの中で、前記成分(C)及び(D)を除く、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0037】
前記透明容器は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂、及び前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、好ましくはブルーイング剤を含有する樹脂組成物を溶融混練し、成形することに製造される。溶融混練を行う際には、単軸押出機、2軸押出機、あるいはブラベンダータイプの混練機を使用することが可能である。
前記成形としては、例えば射出成形、延伸ブロー成形、射出ブロー成形などが挙げられ、延伸ブロー成形が特に好ましい。
なお、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するマスターバッチを混練機で作製し、紫外線吸収剤が目的の範囲の濃度になるようにブレンドした樹脂組成物を用いて成形することもできる
前記樹脂組成物からなる容器は、樹脂組成物の単層だけでなく、樹脂組成物を多層成形体の1層として使用することも可能である。
【0038】
前記樹脂組成物には、予め、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を熱可塑性ポリエステル樹脂に練り込みによって配合し、ブルーイング剤を添加する。
本発明においては、前記(D)成分を少量(0.00001質量%)又は多量(0.001質量%)に含有した場合、紫外線吸収剤及びブルーイング剤を併用すると、日光暴露品の異臭のなさや外観安定性が良好となる。
【0039】
前記容器の透明性は、以下の透明性評価・容器吸光度測定法により、外観の透明性の面からは400nm〜750nmでの吸光度は1以下が好ましく、紫外線遮蔽効果の面からは紫外線部分350nmでの吸光度は1.5以上5未満が好ましい。前記350nmでの吸光度が1.5未満であると、紫外線の遮蔽効果が少なく、日光照射による内容液への保護効果が不足し、5を超えると透明性や外観審美性が失われる場合がある。
【0040】
<透明性評価・容器吸光度測定法>
日本薬局方のプラスチック容器試験法、透明性試験に従い、樹脂サンプルプレートもしくは容器の肉厚が均一で平坦な部分から切り出した厚さ0.6mmで長さ約0.9cm×4cmの樹脂片を用い、水を満たしたセルを対照として紫外可視吸光度測定法により、波長450nm及び350nmの透過率を測定する。透過率から下記数式により吸光度を求める。
透過率T(%) = (X/Y)×100
吸光度 = −log10(T/100)
ただし、試料に当てる光の強さをXとし、試料を通過した後の光の強さをYとする。
【0041】
−用途等−
本発明の液体口腔用組成物は、透明な水性液状であり、用時希釈したときの水への均一な溶解性が速やかであり、含嗽液、口中清涼液、洗口液等として好適に使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の例において「%」は、いずれも「質量%」を表し、実施例及び比較例に記載の成分量は全て純分換算である。
【0043】
(製造例1)
−容器aの作製−
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂100質量部を溶融状態にして、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:TINUVIN326、チバ・ジャパン株式会社製)0.5質量%を添加し、2軸押出機により押出された溶融樹脂組成物を乾燥することで、樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を用いて、延伸ブロー成形により、平均肉厚0.6mm、内容量250mLの延伸ブローボトルを成形した。
下記の透明性評価方法により測定した350nm及び450nmの吸光度は、それぞれ3.0及び0.2であった。
【0044】
<透明性評価(容器吸光度測定法>
日本薬局方のプラスチック容器試験法、透明性試験に従い、樹脂組成物サンプルプレートもしくは容器の肉厚が均一で平坦な部分から切り出した厚さ0.6mmで長さ約0.9×4cmの樹脂片を用い、水を満たしたセルを対照として紫外可視吸光度測定法により、波長450nm及び350nmの透過率を測定し、下記数式により透過率から吸光度を求めた。
透過率T(%) = (X/Y)×100
吸光度 = −log10(T/100)
ただし、試料に当てる光の強さをXとし、試料を通過した後の光の強さをYとする。
なお、外観の透明性の面からは400nm〜750nmでの吸光度は1以下が好ましく、紫外線遮蔽効果の面からは紫外線部分350nmでの吸光度は1.5以上5未満が好ましい。
【0045】
(製造例2)
−容器bの作製−
製造例1において、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールに代えて2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(商品名:TINUVIN P、チバ・ジャパン株式会社製)を同量添加し、更にブルーイング剤(染料)としてSolvent Blue94(商品名:「ダイアレジンブルーN」三菱化学株式会社製)を0.0001質量%配合した以外は、製造例1と同様の方法で延伸ブロー成形して、平均肉厚0.6mm、内容量250mLの延伸ブローボトルを成形した。
製造例1と同様にして測定した350nm及び450nmの吸光度は、それぞれ2.5及び0.2であった。
【0046】
(製造例3)
−容器cの作製−
製造例1において、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を添加しない以外は、製造例1と同様の方法で延伸ブロー成形して、平均肉厚0.6mm、内容量250mLの延伸ブローボトルを成形した。
製造例1と同様にして測定した350nm及び450nmの吸光度は、それぞれ0.1及び0.1であった。
【0047】
(実施例1〜29及び比較例1〜10)
−透明容器入り液体口腔用組成物の調製−
表1に示す組成(質量%)からなる、実施例及び比較例の液体口腔用組成物を常法に準じて調製した。なお、得られた各液体口腔用組成物のpHはいずれも5.3であった。
次に、得られた液体口腔用組成物を、表1に示す組み合わせで、容器a〜cに250mL充填して、各透明容器入り液体口腔用組成物を調製した。
【0048】
次に、得られた各透明容器入り液体口腔用組成物について、日光が当たる屋外に放置し、規定量15MJ/m(紫外線照射量計測定積算値)に達するまで保存した。
日光照射し保存後の各透明容器入り液体口腔用組成物について、以下の方法に従って、液体口腔用組成物の有効成分残存量、外観、含嗽時の苦味のなさ、含嗽時の異味のなさ、及び含嗽時の異臭のなさについて評価した。結果を表1に併記する。なお、保存前の各液体口腔用組成物の評価結果は、すべて「◎」であった。
【0049】
<有効成分残存量>
以下の方法にて日光照射し保存後の各透明容器入り液体口腔用組成物中の第4級アンモニウム塩型界面活性剤(殺菌剤)の定量分析を行い、初期配合量を100%とした時の含有量を測定して下記判断基準により、判定した。なお、下記定量方法により判定するが、殺菌剤の種類により、適宜、定量方法を設定し、下記システム適合性に適合した試験方法にて定量を行った。
〔評価基準〕
◎:95%以上(許容範囲内)
○:90%以上95%未満(許容範囲内)
△:80%以上90%未満(許容範囲外)
×:80%未満(許容範囲外)
【0050】
−定量方法(塩化セチルピリジニウムの例)−
保存後の各透明容器入り液体口腔用組成物4mLを、メタノールを加えて50mLとした。この液10mLに内標準溶液10mL及び過塩素酸ナトリウム溶液(7→50)5mLを加えた後、メタノールを加えて50mLとし、メンブランフィルターでろ過して、試料溶液とした。
別に、定量用殺菌剤(注1)(別途水分を測定しておく)約0.1gを量り,メタノールに溶かし、100mLとした。この液10mLを量り、メタノールを加えて50mLとした。更に、この液10mLに内標準溶液10mL及び過塩素酸ナトリウム溶液(7→50)5mLを正確に加えた後、メタノールを加えて50mLとし、メンブランフィルターでろ過して標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液20μLにつき、下記の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、内標準物質のピーク面積QSに対する殺菌剤のピーク面積QTの比(QT/QS)を求め、下記数式1により殺菌剤の量を算出した。
<数式1>
殺菌剤の量(対初期値%)=Ws×(QT/QS)×(1/10)×(100/4)×(100/250(mg))
ただし、前記数式1中、Wsは、脱水物に換算した定量用殺菌剤の採取量(mg)、(1/10)は、希釈係数を表す。(100/4)は、サンプルから4mL採取した際の換算数を表す。(100/250(mg))は、サンプル中に含まれる初期設定配合量(250mg/100mL)の逆数を表す。内標準溶液として、塩化ベンジルセチルジメチルアンモニウム水和物(注2)のメタノール溶液(11→2500)を用いた。
【0051】
〔試験条件〕
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:260nm)
・カラム:内径6mm、長さ15cmのステンレス管に、5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した。
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相:アセトニトリル/過塩素酸ナトリウム溶液(7→50)混液(17:3)
・流量:殺菌剤の保持時間が約8分になるように調整した。
【0052】
−システム適合性−
システムの性能:標準溶液20μLにつき、上記の条件で操作するとき、殺菌剤、内標準物質の順に溶出し、その分離度は2.0以上である。
システムの再現性:標準溶液20μLにつき、上記の条件で試験を6回繰り返すとき、内標準物質のピーク面積QSに対する殺菌剤のピーク面積QTの比(QT/QS)の相対標準偏差は1.0%以下である。
【0053】
(注1)殺菌剤(定量用)
局外規 塩化セチルピリジニウム
(注2)塩化ベンジルセチルジメチルアンモニウム水和物
2546ClN・xHO:一級試薬(東京化成工業株式会社製)又はそれと同等のもの
【0054】
<保存安定性の評価>
各液体口腔用組成物を容器a〜cに各250mL充填し、日光の当たる場所にて規定量15MJ/m(紫外線照射量計測定積算値)に達するまで保存し、以下のようにして、外観、含嗽時の苦味のなさ、含嗽時の異味のなさ、及び含嗽時の異臭のなさを評価した。
【0055】
−外観評価−
日光照射後保存品の外観を観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
日光照射前のサンプルと比較して評価を行った。
◎:ほとんど変化のない透明外観(許容範囲内)
○:かすかに退色変化ある透明外観(許容範囲内)
△:やや退色変化ある透明外観(許容範囲外)
×:明らかに退色が認められる透明外観又は白濁外観(許容範囲外)
【0056】
−含嗽時の苦味のなさ、含嗽時の異味のなさ、及び含嗽時の異臭のなさの評価−
日光照射後保存品の含嗽時の苦味のなさ、含嗽時の異味のなさ、及び含嗽時の異臭のなさについて、下記の評価基準と判定基準で評価した。
日光照射後保存品から1mL取り出して水道水にて50倍希釈した水溶液を調製し、その内15mLで30秒間含嗽し、吐き出したときに口の中に残る苦味のなさ、異味のなさ、及び異臭のなさを評価した。専門パネル10名により官能評価し、その結果の平均値を算出し、下記基準で評価した。
〔含嗽時の苦味のなさの評価基準〕
5点:全く苦味がない(許容範囲内)
4点:ほとんど苦味がない(許容範囲内)
3点:わずかに苦味がある(許容範囲内)
2点:苦味がある(許容範囲外)
1点:かなり苦味がある(許容範囲外)
〔含嗽時の苦味のなさの評点平均値の判定基準〕
◎:4.0点以上、5.0点以下
○:3.0点以上、4.0点未満
△:2.0点以上、3.0点未満
×:1.0点以上、2.0点未満
【0057】
〔含嗽時の異味のなさの評価基準〕
5点:全く異味がない(許容範囲内)
4点:ほとんど異味がない(許容範囲内)
3点:わずかに異味がある(許容範囲内)
2点:異味がある(許容範囲外)
1点:かなり異味がある(許容範囲外)
〔含嗽時の異味のなさの評点平均値の判定基準〕
◎:4.0点以上、5.0点以下
○:3.0点以上、4.0点未満
△:2.0点以上、3.0点未満
×:1.0点以上、2.0点未満
【0058】
〔含嗽時の異臭のなさの評価基準〕
5点:全く異臭がない(許容範囲内)
4点:ほとんど異臭がない(許容範囲内)
3点:わずかに異臭がある(許容範囲内)
2点:異臭がある(許容範囲外)
1点:かなり異臭がある(許容範囲外)
〔含嗽時の異臭のなさの評点平均値の判定基準〕
◎:4.0点以上、5.0点以下
○:3.0点以上、4.0点未満
△:2.0点以上、3.0点未満
×:1.0点以上、2.0点未満
【0059】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【0060】
表1中の(*1)〜(*9)は、以下のとおりの意味を表す。
(*1):和光純薬工業株式会社製:一般式(A2)において、Rのアルキル鎖長はC1633、ZはCl:塩化セチルピリジニウム(局外規グレード)
(*2):日油株式会社製:一般式(A1)において、Rのアルキル鎖長はC1225/C1429=63/37(質量比)、ZはCl:日局ニッサンカチオンF2−50E
(*3):松本油脂製薬株式会社製:一般式(A2)において、Rのアルキル鎖長はC1829、ZはCl:塩化ベンゼトニウム(日局グレード)
(*4):昭和電工株式会社製:PG−P(日本薬局方)
(*5):新日本理化株式会社製:グリセリン(日本薬局方)
(*6):旭電化工業株式会社製:ソルビトール(日本薬局方)
(*7):丸善製薬株式会社製:局外規グリチルリチン酸二カリウム
(*8):高砂香料工業株式会社製:l−メントール(日本薬局方)
(*9):日本テルペン化学株式会社製:ユーカリ油(15改正日本薬局方)
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の液体口腔用組成物は、第4級アンモニウム塩型界面活性剤を配合しても、苦味及び刺激を大幅に抑制して使用時の香味の嗜好性を高くできると共に、紫外線、日光に長期間照射されても内容液である液体口腔用組成物の薬効成分が分解することにより薬効性能が低下したり、内容液である液体口腔用組成物に配合した水溶性色素が退色や変色を起こしたり、使用時及びすすぎ後に苦味・異臭を感じないので、例えば含嗽液、口中清涼液、洗口液等として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第4級アンモニウム塩型界面活性剤と、
多価アルコール及び糖アルコールの少なくともいずれかを40質量%〜80質量%と、
酢酸エステル類及びラクトン類の少なくともいずれかを0.001質量%〜0.5質量%と、
セスキテルペンアルコールを0.00001質量%〜0.01質量%と、を含有してなる液体口腔用組成物であって、
前記液体口腔用組成物が、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなる透明容器に充填されてなることを特徴とする液体口腔用組成物。
【請求項2】
酢酸エステル類が、酢酸エチル、酢酸ブチル及び酢酸メンチルの少なくともいずれかであり、
ラクトン類が、ガンマーノナラクトン、ガンマーデカラクトン、及びガンマーウンデカラクトンから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
セスキテルペンアルコールが、エレモール、レドール及びビリディフロロールから選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の液体口腔用組成物。

【公開番号】特開2010−235457(P2010−235457A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82555(P2009−82555)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】