説明

透明導電基板並びに透明導電基板を有する静電センサーおよび電子デバイス

【課題】透明導電性高分子を含む透明導電膜を利用しながら、簡単な工程で製造でき、見栄えの良い透明導電基板およびこれを用いた静電センサーなどの電子デバイスを提供すること。
【解決手段】フィルム基材2と導電性高分子を含む透明導電膜1とが積層し、透明導電膜1が検知部となる複数の第1領域11と、その第1領域11より電気抵抗値が高く複数の第1領域11に分かつ第2領域12とからなる透明導電基板10について、第1領域11の部分と第2領域12の部分との色差ΔEが2.6以下であり、かつ次の1)または2)の条件、1)第1領域の表面抵抗が1.0×10Ω/□未満であり、第1領域と第2領域との表面抵抗の差が0.5×10Ω/□以上であること、または2)隣り合う第1領域の間に挟まれた部分の長さ(mm)と第2領域の表面抵抗(Ω/□)との積が1.0×10mm・Ω/□以上であること、を備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が高く、導電部とその周りに色むらのない透明導電基板とその透明導電基板を有する静電センサーおよび電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
透明な基材フィルム上に透明導電膜を積層した透明導電基板が知られており、この透明導電基板は、静電センサーやタッチパネル、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL装置)といった電子デバイスの幅広い用途に利用されている。そして、透明導電基板を形成する透明導電膜の材料には、ITO(酸化インジウムスズ)や透明導電性高分子が知られている。
【0003】
透明導電膜の材料のうち、ITOを蒸着形成したITO膜は、透明性に優れるという利点を有するものの価格が高いという問題がある。一方、透明導電性高分子を含む透明導電膜は、価格は比較的安いもののITO膜よりも透明性に劣り、若干の色味を有するため、回路の有無に沿って色味の有無が生じ、全体の見栄えが悪くなるという問題がある。
【0004】
透明導電性高分子を用いた際の不都合を回避するための工夫としては、例えば、特開2010−105588号公報(特許文献1)に、透明導電性高分子と同じ色の印刷を透明導電性高分子を設けない部分に施し、全体的な色味の均一化を図ることで透明導電性高分子の有無により生じる境界を見え難くする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−105588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特開2010−105588号公報(特許文献1)に記載されたような技術では、色味を揃えるための余分な印刷を行うため、製造手数やコストの点で改良すべき余地がある。
そこで、本発明は、透明導電性高分子を含む透明導電膜を利用しながら、簡単な工程で製造でき、見栄えの良い透明導電基板およびこれを用いた静電センサーなどの電子デバイスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく以下のような構成を提供する。
フィルム基材の表面に導電性高分子を含む透明導電膜が積層しており、この透明導電膜が、導電部となる複数の第1領域と、その第1領域より電気抵抗値が高く複数の第1領域に分かつ第2領域とからなる透明導電基板について、第1領域の部分と第2領域の部分との色差ΔEが2.6以下であり、かつ次の1)または2)の条件
1)第1領域の表面抵抗が1.0×10Ω/□未満であり、第1領域と第2領域との表面抵抗の差が0.5×10Ω/□以上であること、
2)隣り合う第1領域の間に挟まれた部分の長さ(mm)と第2領域の表面抵抗(Ω/□)との積が1.0×10mm・Ω/□以上であること、
のうちの少なくとも何れか一を備えることを特徴とする透明導電基板を提供する。
【0008】
フィルム基材の表面に導電性高分子を含む透明導電膜が積層しており、この透明導電膜が、導電部となる複数の第1領域と、その第1領域より電気抵抗値が高く複数の第1領域に分かつ第2領域とからなる透明導電基板を有することとしたため、透明導電基板の第1領域の上部分に指を近づけることによって静電容量の変化を検出でき静電センサーとして利用できる。
【0009】
また、第1領域の部分と第2領域の部分との色差ΔEを2.6以下としている。第1領域の部分と第2領域の部分との色差ΔEを2.6以下としたため、第1領域の部分と第2領域の部分との境界が見えにくく、見栄えの良い静電センサーとすることができる。
【0010】
そして、第1領域と第2領域とは次の1)または2)の条件
1)第1領域の表面抵抗が1.0×10Ω/□未満であり、第1領域と第2領域との表面抵抗の差が0.5×10Ω/□以上であること、
2)隣り合う第1領域の間に挟まれた部分の長さ(mm)と第2領域の表面抵抗(Ω/□)との積が1.0×10mm・Ω/□以上であること、
のうちの少なくとも何れか一を備えることとしている。
こうした1)または2)の何れか一の条件を備えることから、透明導電基板に近接することで静電容量の変化を検知することが可能である。また、導電部が複数ある場合でも、どの導電部の静電容量が変化したか識別することが可能となる。
【0011】
導電インキで形成した電気配線を通じて個々の第1領域に導通する個々の端子電極が集合し、制御用部品に接続する端子となる端子電極部を有し、隣り合う第1領域にそれぞれ通じる端子電極間の絶縁抵抗が10kΩ以上である透明導電基板とすることができる。
導電インキで形成した電気配線を通じて個々の第1領域に導通する個々の端子電極が集合し、制御用部品に接続する端子となる端子電極部を有し、隣り合う第1領域にそれぞれ通じる端子電極間の絶縁抵抗が10kΩ以上であるため、静電容量の変化を識別して検出可能となる。
【0012】
第1領域と第2領域の色相b*が、いずれも負の値(−3.5〜0.0;但し0.0は除く)である透明導電基板とすることができる。第1領域と第2領域の色相b*が、いずれも負の値(−3.5〜0.0;但し0.0は除く)であれば、第1領域と第2領域との間の色むらを認識されず、また、黄変していない状態の色相であるため、見栄えの良い透明導電基板とすることができる。
【0013】
透明導電膜の表面にさらに透明レジスト層を被覆した透明導電基板とすることができる。透明導電膜および電気配線上に透明レジスト層を被覆することで、透明導電基板を他の電子部品等から絶縁することができる。
透明導電膜の厚さは5μm以下とすることができる。透明導電膜の厚さを5μm以下とすることで、透明導電膜の色味を目立たなくすることができる。
【0014】
隣り合う第1領域の間の最短長さは1mm以上とすることができる。隣接する第1領域の間の長さを1mm以上とすることで、第2領域が比較的低抵抗であっても静電センサーとして第1領域上の静電容量変化を検出する機能を発揮させることができる。
【0015】
そして、上記透明導電基板を有する静電センサーや、上記透明導電基板を有するタッチパネルや有機エレクトロルミネッセンス素子等の電子デバイスとすることができる。
こうした静電センサー等の電子デバイスは、上記透明導電基板を備えるため、この透明導電基板の特徴を備えた静電センサー等の電子デバイスである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透明導電基板、およびこれを用いた静電センサー等の電子デバイスによれば、導電性高分子を含む透明導電膜で形成された電気抵抗の異なる第1領域と第2領域との間で色むらが識別されず、見栄えの良い製品であり、簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】透明導電基板を示す平面図である。
【図2】図1のSA−SA線断面図である。
【図3】図1のSB−SB線断面図である。
【図4】試験片の概略平面図である。
【図5】透明導電基板の感度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明について実施形態に基づきさらに詳細に説明する。図1は、静電センサーとして用いられる本実施形態の透明導電基板10の一例を示す平面図であり、図2は、図1のSA−SA線に基づく断面図、図3は、図1のSB−SB線に基づく断面図である。
透明導電基板10は、図2で示すように、透明なフィルム基材2の上面に導電性高分子を含む透明導電膜1を積層しており、さらにその上面に電気絶縁性を付与する透明レジスト層4を積層している。このうち透明導電膜1は、導電部となる複数の第1領域11と、その第1領域11より電気抵抗値が高く複数の第1領域を分かつ第2領域12とから形成されている。換言すれば、図1で示すように、第2領域12からなる海の中に第1領域11が島状に配置した構成となっており、本実施形態では3つの第1領域11を有している。
【0019】
透明導電基板10の中央端には、複数の端子電極13が並ぶように集合し、制御用部品に接続する端子となる端子電極部14を形成している。一の端子電極13は、導電インキで形成された電気配線3を通じて一の第1領域11と導通されている。この電気配線3にも透明レジスト層4が積層されている。
【0020】
透明導電膜1の第1領域11は、電気抵抗値が比較的低い低抵抗領域である。第1領域11の電気抵抗値(表面抵抗)は、0より大きく、1.0×10Ω/□未満とすることが好ましい。一方、第2領域12は、第1領域11より電気抵抗値が高い高抵抗領域であり、第1領域11と第2領域12との電気抵抗値の差が0.5×10Ω/□以上であることが好ましい。この差が0.5×10Ω/□より少なければ隣り合う検出部の間の絶縁性が弱く、静電容量の変化の検出が困難である。そして、第2領域12の電気抵抗値は、好ましくは第1領域11の電気抵抗値の10倍以上、より好ましくは10倍以上である。第2領域12の電気抵抗値を、第1領域11の電気抵抗値の10倍以上とすることによって、隣り合う検出部の間の絶縁性を高め、どの検出部が静電容量の変化をしたのか検出が容易となり、10倍以上とすることでさらに容易となるからである。但し、第2領域12の電気抵抗値は、1.0×10Ω/□未満とすることが好ましい。第2領域の表面抵抗が1.0×10Ω/□以上とすると、その第2領域12を形成する導電性高分子が黄変して周囲との色むらが生じてしまうからである。
【0021】
また、隣り合う第1領域11,11の間に挟まれた部分の長さ(距離:mm)と第2領域12の表面抵抗(Ω/□)との積が1.0×10mm・Ω/□以上であることが好ましい。隣り合う第1領域11,11の間に挟まれた第2領域12の電気抵抗値(表面抵抗)は低いほど、また、隣り合う第1領域11,11の間の長さが狭いほど電流が流れやすくなるからであり、この積が1.0×10mm・Ω/□以上であれば、隣り合う検出部の間の絶縁性を高め、どの検出部が静電容量の変化をしたのか検出が容易となるからである。
【0022】
したがって、この隣り合う第1領域11,11の間に挟まれた部分の長さと第2領域12の表面抵抗の関係から、第1領域11,11間の最短距離が1mm以上離れたものであれば、第2領域12の絶縁性が比較的低くても(例えば、第2領域12の表面抵抗が1.0×10Ω/□程度であっても)静電容量変化を検出可能な静電センサーとすることができる。この場合でも、第1領域11の表面抵抗は小さい方が好ましく、1.0×10Ω/□以下であることがより好ましい。
【0023】
こうした表面抵抗を有する第1領域11と第2領域12としたため、隣り合う第1領域11,11が電気配線3を通じてそれぞれ繋がる端子電極13,13間の絶縁抵抗は10kΩ以上となる。10kΩ以上であれば、どの導電部が静電容量の変化をしたのか検出可能となるが、検出精度の向上のためにはこの絶縁抵抗が20kΩ以上であることが好ましい。
【0024】
透明導電膜1は導電性高分子を含む材料からなり、導電性高分子としては、ポリチオフェン系、ポリアセチレン系、ポリパラフェニレン系、ポリアニリン系、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリピロール系などの導電性高分子があり、なかでも透明性のある導電性高分子として、ポリスチレンスルホン酸(PPS)、ポリビニルスルホン酸(PVS)、あるいは、p−トルエンスルホン酸(TsO)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、いわゆるPEDOT/PSSやPEDOT/PVS、PEDOT/TsOなどが知られている。
【0025】
こうした導電性高分子のうち透明導電膜1に含まれる導電性高分子は、紫外線の照射によって電気抵抗値が上昇する性質を有する導電性高分子であって、ポリチオフェン系導電性高分子が好ましい。ポリチオフェン系導電性高分子は、透明性、導電性、印刷性、成膜性、耐熱性、耐湿性、耐光性に優れている点で好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、例えば、次の化学式で示すポリチオフェン系高分子からなる主鎖を有する未ドープの高分子に、ヨウ素等のハロゲン、あるいは他の酸化剤をドープして、これにより前記高分子を部分酸化して、カチオン構造を形成させたもの等を用いることができる。
【0026】
【化1】




【0027】
上記化学式において、基R、Rは、それぞれ互いに独立に選択することができ、選択肢としては、水素原子;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;シアノ基;メチル、エチル、プロピル、ブチル(n−ブチル)、ペンチル(n−ペンチル)、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチルなどの分枝のあるアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどの直鎖もしくは分枝のあるアルコキシ基;ビニル、プロペニル、アリル、ブテニル、オレイルなどのアルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニルなどのアルキニル基;メトキシメチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、3−エトキシプロピルなどのアルコキシアルキル基;CO(CHCHO)CHCH基(mは1以上の整数)、CHO(CHCHO)CHCH基(mは1以上の整数)などのポリエーテル基;フルオロメチル基等、前記置換基のフッ素等のハロゲン置換誘導体等が例示できる。
【0028】
このポリチオフェン系導電性高分子の中でも、3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が好ましい。特に、PEDOTをポリスチレンスルホン酸(PSS)でドーピングしたPEDOT−PSSが、透明性が高く低抵抗であるため好ましい。
市販品としては、H.C.スタルク社製、BaytronPおよびCleviosSV3や、ナガセケムテックス社製、Denatron#5002LA、アグファゲバルト社製OrgaconS300やOrgacon3040などを挙げることができる。
【0029】
上記材料でなる透明導電膜1のうち、後述する紫外線照射を受けて高抵抗となった部分が第2領域12となり、紫外線照射を受けずに残った部分が第1領域11となる。前述したような所望の電気抵抗値を得るためには、塗膜の厚さや、紫外線照射量、雰囲気温度等を調整することで行う。
また、上述の導電性高分子を含む透明導電膜1は薄い青色を呈しているが、紫外線照射によりその青色が少なくなることで、紫外線を照射する第2領域12と、紫外線を照射しない第1領域11とで色差ΔEが生じる。この色差ΔEが2.6以下であれば、第1領域11と第2領域12との色の違いを視認し難くなる。ところが、色差ΔEが2.6を越えて大きくなると、第1領域11と第2領域12との色の違いが視認できるようになり、得られる透明導電基板10の見栄えが悪くなる。この色差ΔEは、2.0以下であると、色の差を全く感じなくなる。そのため、第1領域11の部分と第2領域12の部分との色差ΔEを2.6以下、好ましくは2.0以下としている。
【0030】
第1領域11と第2領域12の色相b*は、いずれも負の値(−3.5〜0.0;但し0.0は除く)であることが好ましい。色相b*が正の値となると、黄色味が強くなるため、見栄えが悪くなるからである。
【0031】
透明導電膜1の厚さは、均一にすることができるため、光透過性を均一にすることができる。透明導電膜1の厚さは、5μm以下であることが好ましい。5μmを越えると、透明導電膜1の色味が目立つようになるからである。
このように、透明導電膜1や透明導電基板10という場合の「透明」には無色透明の他、有色透明であってもよく、また、やや曇りのある透明であっても良いが、曇りが無い完全透明に近い透明であることが好ましい。
【0032】
上記透明導電膜1のベースとなるフィルム基材2は、透明性の高い樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などからなり、板状またはフィルム状に形成した材料を用いているが、樹脂以外にガラス板を用いることも可能である。
【0033】
透明レジスト層4は、第1領域11や第2領域12、電気配線3が導電性を有するため、これらを周囲の部品等から絶縁するために設けられる。こうした透明レジスト層4には、透明導電膜1に対して接着性が良く絶縁性の樹脂で形成することができる。
透明レジスト層4には、紫外線吸収剤を含めることが好ましい。紫外線吸収材を含有すれば、経時による紫外線の受光から第1領域11や第2領域12を保護することができ、それぞれの抵抗値を安定維持させることができるからである。
一方、フィルム基材2の反対側(下側)から紫外線が照射される可能性がある場合には、フィルム基材2に紫外線対策をしておく必要がある。この場合には、フィルム基材2に紫外線吸収剤を含有させたり、フィルム基材2の下側に別途紫外線吸収剤を含む保護層を設けることが好ましい。
【0034】
電気配線3は、透明導電性高分子を印刷形成して設けてもよいが、銀やカーボン粉末を含有する導電性インキにより形成してもよい。透明性の無い導電性インキを用いる場合は、電気配線3の形が見えないように、静電センサーを組みつけている機器の外観から筐体等によって隠れる位置に配線することが好ましい。
端子電極13も電気配線3と同一の材料で形成することができる。
【0035】
透明導電基板10を製造する一例を説明する。
フィルム基材2上に導電性高分子を含む塗液をディップコート、スピンコート、バーコート、スクリーン印刷、グラビア印刷等の種々の方法で塗布し、ほぼ一定厚さの透明導電膜1を形成する(成膜工程)。
この透明導電膜1に対し、第1領域11となる部分を非透過部とし、第2領域12となる部分を透過部とするマスクを施し、マスクを介して紫外線を照射する(紫外線照射工程)。マスクには紫外線を透過しない金属板や遮光膜、紫外線遮蔽フィルムなどを利用する。照射する紫外線の波長は、例えば230nm〜280nmであり、強度は5mW/cm以上であり、照射時間は3分以上15分以下である。マスクの透過部を通して紫外線が照射された部分(照射部)は、導電性が低下し、高抵抗領域である第2領域12となる。非透過部によって紫外線が遮られた部分(非照射部)は、導電性の低下が起こらず、低抵抗領域である第1領域11となる。
【0036】
次に、銀インキ等の導電インキを用い、端子電極13および端子電極13と第1領域11とを繋ぐ電気配線3を印刷等の方法で形成する。その後、さらに電気絶縁性を付与する透明レジスト層を塗布形成する。こうして、透明導電基板10が得られる。
透明導電基板10を静電センサーとして利用するには、静電容量の変化を判別するため、端子電極13を制御用IC部品に接続する。
【0037】
この透明導電基板10によれば、単一の透明導電膜1から第1領域11と第2領域12とを形成するため、透明導電膜1を薄く形成でき、従って、透明導電膜1の光透過性を高めることができる。また、透明導電膜1の表面が平坦になり、第1領域と第2領域とを別途設ける従来技術に比べ、電気配線を多層化することが容易である。
【実施例】
【0038】
試験片の透明導電基板の製造
次の実施例1〜6,比較例1で示す条件で試験片となる透明導電基板を作製した。この透明導電基板に対し、種々の評価を行った。以下説明する。
【0039】
実施例1: フィルム基材(2)として厚さ100μmの透明PETフィルムに、ポリチオフェン系導電性高分子(H.C.スタルク社製「CleviosTM SV3」)をスクリーン印刷により塗布、乾燥(80℃〜90℃×40分)して厚さ5μmの透明導電膜(1)を形成した。
第1領域(11)となる箇所が隠れ、第2領域(12)となる箇所が開口しているアルミニウム板製のマスクを用いて、透明導電膜(1)の上を覆ってから、紫外線を照射した。紫外線は、波長230〜280nmの短波長紫外線で、強度12mW/cm、照射時間10分とした。これによって、一の透明導電膜の中に電気抵抗値(表面抵抗)の異なる第1領域(11)と第2領域(12)を形成した。
導電性銀ペーストからなる導電インキを用いて第1領域(11)から線状に伸びるように印刷形成して、電気配線(3)の引き回しをした。
【0040】
さらにそれらの全表面にレジストインクを塗布して、透明レジスト層(4)を形成した。最後にフィルム基材(2)の外周を裁断して透明導電基板(10)を得た。
ここで、検出部である第1領域(11)は直径12.4mmの円形状とし、第1領域(11)間の最短距離を5mmとした。また、第1領域(11)の表面抵抗が2.74×10Ω/□であり、第1領域(11)と第2領域(12)との色差ΔEが1.4であり、隣り合う第1領域(11,11)にそれぞれ接続する端子電極(13,13)間の絶縁抵抗が64kΩであった。
【0041】
実施例2〜6: 短波長紫外線の照射時間を3分、5分、15分、20分、22分と変更した以外は実施例1と同じ条件で、実施例2〜実施例6の透明導電基板(10)を得た。
【0042】
比較例1: 短波長紫外線の照射時間を25分と変更した以外は実施例1と同じ条件で、比較例1の透明導電基板を得た。
【0043】
上記各実施例、比較例では同じものを3つ作製して評価した。評価結果を表1に示す。第1領域や第2領域の「表面抵抗」は、JIS−K6911 7194に準拠して、抵抗率計(三菱化学社製 ロレスタGP MCP−T610)で測定した。
また、「第2領域の色」、「色差ΔE」については、色彩色差計CR−100(ミノルタ社製)を用いて測定した。さらに、「第1領域間の絶縁抵抗」については、アドバンテスト社 デジタル超高抵抗/微少電流計 R8340A を用いてオートレンジレベルにて測定した。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1〜実施例6の透明導電基板(10)は、色差ΔEが2.6以下であり、第1領域(11)と第2領域(12)との色の違いは分かりにくかった。そうした一方で、比較例1の透明導電基板は、第1領域と第2領域の色差ΔEが2.8であり、第2領域の方がやや黄色く視認された。
【0046】
上記の実施形態や実施例の説明は本発明の一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更や組み合わせは可能であって、こうした変更等も本発明の技術的思想の範囲に含まれるものである。
【0047】
感度の測定
上記実施例1で用いた材料と同じ材料を用いて感度測定用の試料片となる透明導電基板を作製した。
この透明導電基板(10)は、第1領域(11)の大きさを半径約6.2mmの円とし、隣接する第1領域(11,11)間の最短距離を約5mm、隣接する第1領域(11,11)の中心間の距離を17.4mmとして、直線上に4つ第1領域(11)を並列させた試験片とした。この試験片の概略平面図を図4に示す。
また、対照として、紫外線を照射させずに、第2領域の無い試験片を作製した。
そして、この両試験片の端子電極部(14)をPSoC IC(サイプレス社製マイコン CY8C24894)に接続して感度(Diff)を測定した。
PSoC ICのパラメータ設定は、Resolution(分解能)を13bit(8192)、Ref Valueを2、Rb抵抗を3.3KΩ、フィンガースレッシュホールドを感度測定したピーク値の75%、ヒステリシスをピーク値の15%、ノイズスレッシュホールドをピーク値の40%、ネガティブノイズスレッシュホールドをノイズスレッシュホールドの1/2とする。
【0048】
感度は、左端の第1領域(11)の中心を基準点として、基準点から隣接する他の第1領域(11)の方向に向かってピッチ間隔1mmごとに、直径8mmの円柱形状の導電ゴムからなる測定子(押し子)を指の代わりに試験片に押し当てていき、左端の第1領域(11)から伸びる端子電極(13)から得られる静電容量の変化量を測定した。
基準点からの測定子の中心の位置(mm)と感度(Diff)との関係を図5に示す(図5では、第2領域(12)を有する試験片を「照射後」とし、第2領域の無い試験片を「未照射」として図示している)。
【0049】
短波長紫外線を照射した試験片は感度のピーク値が2000、対照として未照射の試験片は感度のピーク値が2500であった。
図4からわかるように、上記表面抵抗を有する半径約6.2mmの第1領域(11)となるように、上記高抵抗の第2領域(12)を形成した試験片は、第1領域から測定子の外縁が外れる、測定子中心の位置10mmを越えるに従って、感度が急激に低下してノイズスレッシュホールド以下の値で出力される。
よって、測定子が押し当てる第1領域の内側と外側とを区別するように、隣接する第1領域に測定子が近接してONの検出をする際には左端の第1領域からの出力はOFFとして検出することができるので、それぞれの第1領域への指の近接を識別してスイッチのON−OFFとする静電センサーとして利用できることがわかる。
一方で、第2領域を形成しない試験片は基準点から離れるに従いほぼ一様に緩やかに感度が低下するため、一の第1領域に相当する位置から遠く離れた位置で測定子を押し当てても、ノイズスレッシュホールドよりも高い感度で検出してしまう。
そのため、左端の第1領域とそれに隣接する第1領域とに相当する位置のどちらに測定子が近接しているのか、識別する検出ができなくなってしまい、静電センサーとしては利用し難いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の透明導電基板は、制御用IC部品に接続するなどして静電センサーとして利用できることを示したが、液晶ディスプレイやEL装置などの表示装置、タッチパネルなどの電子デバイスとして利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 透明導電膜
2 フィルム基材
3 電気配線
4 透明レジスト層
10 透明導電基板
11 第1領域
12 第2領域
13 端子電極
14 端子電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材の表面に導電性高分子を含む透明導電膜が積層しており、この透明導電膜が、導電部となる複数の第1領域と、その第1領域より電気抵抗値が高く複数の第1領域に分かつ第2領域とからなる透明導電基板において、
第1領域の部分と第2領域の部分との色差ΔEが2.6以下であり、かつ次の1)または2)の条件
1)第1領域の表面抵抗が1.0×10Ω/□未満であり、第1領域と第2領域との表面抵抗の差が0.5×10Ω/□以上であること、
2)隣り合う第1領域の間に挟まれた部分の長さ(mm)と第2領域の表面抵抗(Ω/□)との積が1.0×10mm・Ω/□以上であること、
のうちの少なくとも何れか一を備えることを特徴とする透明導電基板。
【請求項2】
導電インキで形成した電気配線を通じて個々の第1領域に導通する個々の端子電極が集合し、制御用部品に接続する端子となる端子電極部を有し、隣り合う第1領域にそれぞれ通じる端子電極間の絶縁抵抗が10kΩ以上である請求項1記載の透明導電基板。
【請求項3】
第1領域と第2領域の色相b*が、いずれも負の値(−3.5〜0.0;但し0.0は除く)である請求項1または請求項2記載の透明導電基板。
【請求項4】
透明導電膜の表面にさらに透明レジスト層を被覆した請求項1〜請求項3何れか1項記載の透明導電基板。
【請求項5】
透明導電膜の厚さが5μm以下である請求項1〜請求項4何れか1項記載の透明導電基板。
【請求項6】
隣り合う第1領域の間の最短長さが1mm以上である請求項1〜請求項5何れか1項記載の透明導電基板。
【請求項7】
請求項1〜請求項6何れか1項記載の透明導電基板を有する静電センサー。
【請求項8】
請求項1〜請求項6何れか1項記載の透明導電基板を有する電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97877(P2013−97877A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236755(P2011−236755)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】