説明

透明導電性フィルムおよびタッチパネル

【課題】ペン書き耐久性を高めるとともに、光透過率も改善する透明導電性フィルムおよびタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明基材2の少なくとも一方の面に透明導電膜4が設けられた透明導電性フィルム1において、前記透明導電膜4は前記透明基材2から順に非晶質膜である第一のITO層4aと結晶化膜である第二のITO層4bとを積層してなり、前記第一のITO層4aの屈折率n1と前記第二のITO層4bの屈折率n2はn1>n2の関係を満たすことを特徴とする透明導電性フィルム1。該フィルム1を用いるタッチパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極、タッチパネル、電磁波遮蔽膜として有用な透明導電膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、導電性と光学的な透明性とを合わせ持つという特性を有しているため、産業的には、透明電極、電磁波遮蔽膜、面状発熱膜、反射防止膜等として使用されており、近年ではタッチパネル向け電極として注目を集めている。
【0003】
タッチパネルには静電容量結合式や光学式等、多様な方式が存在する。その中で、透明導電膜が使用されるのは、上下の電極が接触することでタッチ位置を特定する、抵抗膜式や、静電容量の変化を感知する静電容量結合方式である。特に前者は、ペン入力が可能であり、比較的安価であることから、携帯用端末、携帯ゲーム機等幅広く利用されている。この方式は動作原理上導電膜同士の接触がさけられず、そのため、タッチパネルの打点寿命を延ばすため、打点耐久性の高い透明導電性フィルムの開発が進められてきている。
また、ディスプレイの外付けとして使用されることから、高い光透過性が望まれている。
なお、上記背景技術文献としては、下記特許文献1が挙げられる。
【特許文献1】特許第4086132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶パネルの細額縁化や使用環境の多様化により、ディスプレイに組み込まれるタッチパネルの高耐久化が求められている。そのためには、電極となる透明導電性フィルムの高耐久化が必要不可欠である。
【0005】
本発明は上記のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、ペン書き耐久性を高めるとともに、光透過率も改善する透明導電性フィルムおよびタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、透明基材の少なくとも一方の面に透明導電膜が設けられた透明導電性フィルムにおいて、
前記透明導電膜は前記透明基材から順に非晶質膜である第一のITO層と結晶化膜である第二のITO層とを積層してなり、前記第一のITO層の屈折率n1と前記第二のITO層の屈折率n2はn1>n2の関係を満たすことを特徴とする透明導電性フィルムである。
請求項2に記載の発明は、前記透明基材と透明導電膜の間に、金属又は無機化合物からなる密着層を有することを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記第一のITO層と第二のITO層の膜厚の総和が10nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性フィルムである。
請求項4に記載の発明は、前記第一のITO層のスズ含有量は5重量%〜20重量%であり、第二のITO層のスズ含有量は1重量%〜4重量%であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の透明導電性フィルムである。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の透明導電性フィルムを用いることを特徴とするタッチパネルである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ペン書き耐久性を高めるとともに、光透過率も改善する透明導電性フィルムおよびタッチパネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付け、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、本発明の透明導電性フィルムの一実施形態の断面図である。図1において、透明導電性フィルム1は、透明基材2の一方の面に密着層3、密着層3上に非晶質膜である第一のITO層4a、ITO層4a上に結晶化膜である第二のITO層4bを備えている。
【0010】
本発明の実施の形態に係わる透明導電性フィルム1は、非晶質膜である第一のITO層4aと、その上に結晶化膜である第二のITO層4bを備えている。非晶質膜である第一のITO層4a上に結晶化膜である第二のITO層4bを備えることにより、透明導電性フィルム1をタッチパネルに搭載したときの、ペン書き耐久性及び光透過性を高めることができる。
【0011】
とくに、タッチパネルに結晶化膜である第二のITO層4bを設けることで耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明では、非晶質膜である第一のITO層4aの屈折率n1と、結晶化膜である第二のITO層4bの屈折率n2との関係は、n1>n2である必要がある。この関係を満たすことで、透過率を向上させることができる。
【0013】
また本発明において、非晶質膜である第一のITO層4aの膜厚と、結晶化膜である第二のITO層4bの膜厚の総和が10nm以上50nm以下であるのが好ましい。透明導電膜の膜厚が10nm未満であると、成膜制御を良好に行うことができなくなる恐れがある。また50nmを超えると、抵抗値が低くなりすぎ、タッチパネルとしての検出性能が低下する恐れがある。
【0014】
また、透明導電性フィルム1は、透明基材2と非晶質膜である第一のITO層4aとの間に密着層3を備えている。密着層3を備えることにより、透明導電性フィルム1の密着性が向上され、タッチパネルに搭載したときの、ペン書き耐久性を高めることができる。
【0015】
透明基材2の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;ポリイミド;ポリアリレート;ポリカーボネート;ポリアクリレート;ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、これらの共重合体の無延伸あるいは延伸されたプラスチックフィルムを用いることが出来る。また、透明性の高い他のプラスチックフィルムを用いることもできる。その厚さは基材の可撓性を考慮し、10〜200μm程度のものが用いられる。この内ポリエチレンテレフタレートなどが好ましく用いられる。
【0016】
これらの透明基材2は、一方又は両方の面にハードコートなどのプライマー層が積層されているものが好ましく用いられる。
【0017】
これらの透明基材2は、易接着処理、プラズマ処理、コロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0018】
密着層3を形成する材料としては、金属またはその酸化物、硫化物、フッ化物等の無機化合物を用いることができる。実用上は酸化珪素、酸化アルミニウムなどが特に好適に用いられる。
【0019】
密着層3の膜厚としては5〜30nmが好適に用いられる。膜厚が5nm未満になると、膜の均一性が得にくくなり、また30nmを超える厚さでは透明性の低下が起こる。
【0020】
ITO層4a及び4bの導電性材料には、必要に応じて、Al、Zr、Ga、Si、W等の添加物を含有させることができる。
【0021】
本発明の密着層3およびITO層4a、4bの製造方法については特に限定はないが、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の真空成膜法を用いて好ましく製造することができる。なお、第一のITO層4a及び第二のITO層4bを成膜した後、150℃〜200℃で1時間以上加熱することにより、第二のITO層4bを結晶化させることができる。
【0022】
本発明では、非晶質膜である第一のITO層4aのスズ含有量は5重量%〜20重量%であり、結晶化膜である第二のITO層4bのスズ含有量は1重量%〜4重量%であることが好ましい。
ITO層4aのスズ含有量が5重量%〜20重量%であると、良好な耐久性を付与することができ、同時に、ITO層4bのスズ含有量が1重量%〜4重量%であると、良好な透過率を得ることができる。
【0023】
図4に示すように、本発明の実施の形態に係るタッチパネル10は、透明基材2の両方の面にハードコート層5、一方のハードコート層5の上に密着層3、密着層3上に非晶質膜である第一のITO層4a、その上に結晶化膜である第二のITO層4bを備える透明導電性フィルム1、透明導電性フィルム1の結晶化膜である第二のITO層4bにスペーサ8を介して対向配置された透明導電膜6及び基板7を備えている。
【0024】
本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルム1は、タッチパネルの中でも抵抗膜方式のタッチパネルに好適に用いることができる。抵抗膜方式のタッチパネル10にあっては、本発明の実施の形態に係わる透明導電性フィルム1の透明導電膜4と対向配置するように透明導電層6及び基板7を備えている。透明導電膜4と透明導電層6とは、スペーサ8により接触しない距離が保たれる。透明導電性フィルム1のハードコート層5側が、タッチパネル10の前面となり、ペン9により文字等が入力される。
【0025】
本発明の実施の形態に係るタッチパネル10において、ペン9とハードコート層5とがタッチしていない状態では、スペーサ8により2枚の電極(透明導電膜4と透明導電層6)が接触していないために電流は流れない。一方、ペン9によりハードコート層5をタッチすると、圧力により透明導電性フィルム1がたわみ、基板7(ガラス面)側の電極(透明導電層6)と接触して電流が流れる。このとき、透明導電性フィルムの1の透明導電膜4と基板7の透明導電層6との抵抗による分圧比を測定することで、ペン入力された位置を検出することができる。
【0026】
透明導電性フィルム1の材料は前述しているために省略し、基板7及び透明導電層6の材料について述べる。基板7の材料は、ガラスに限らず透明であれば使用でき、さらに、前述した透明基材2と同じ材料及び同じ形成方法を用いることができる。透明導電層6の導電性材料としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛等の酸化物及びその混合酸化物等を用いることができ、透明導電性フィルム1の透明導電膜4と同一製造方法を用いることができる。また、その膜厚は膜の均一性を失わない範囲で、10nmから50nmまで任意に用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0028】
実施例1
図1の層構成の透明導電膜性フィルム1を作成した。両面にハードコートを塗布した188μm厚のPETフィルムを透明基材2とし、透明基材2の一方の面に、密着層3を、直流マグネトロンスパッタリング法にて成膜し形成した。この時、密着層3に酸化珪素を使用した。また、膜厚を10nmとした。
【0029】
非晶質膜である第一のITO層4aを密着層3の上に、直流マグネトロンスパッタリング法にて成膜することにより形成した。この時、スパッタリングターゲットとして、酸化スズを10重量%含有のITOを使用した。また、膜厚を10nmとした。
【0030】
結晶化膜である第二のITO層4bを非晶質膜である第一のITO層4aの上に、直流マグネトロンスパッタリング法にて成膜することにより形成した。この時、スパッタリングターゲットとして、酸化スズを3重量%含有のITOを使用した。また、膜厚を10nmとした。
【0031】
実施例2
図2の層構成の透明導電性フィルム1を作成した。すなわち、非晶質膜である第一のITO層4aを透明基材2上に直接成膜することにより形成した以外は、実施例1と同様にして形成した。
【0032】
比較例1
図3の層構成の透明導電性フィルム1を作成した。すなわち、両面にハードコートを塗布した188μm厚のPETフィルムを透明基材2とし、その一方の面に、非晶性である透明導電膜4を、直流マグネトロンスパッタリング法にて成膜することにより形成した。この時、スパッタリングターゲットとして、酸化スズを10重量%含有のITOを使用した。また、膜厚を20nmとした。
【0033】
以上の実施例及び比較例について、透過特性及び抵抗値を測定した。また、図4に示すように、タッチパネル10を形成して、ペン書き耐久性の評価を行った。ペン書きのペン9には、ポリアセタールからなるペン先半径0.8mmのタッチペンを用いて、ハードコート層上面から、プロッターにより250g加重、アからンまでのカタカナ文字を10万字の筆記を行い、リニアリティの測定を行った。その結果を表1に示す。
【0034】
透過特性は分光光度計でD65光源2度視野にて測定した。
【0035】
抵抗値は四探針法で測定した。
【0036】
リニアリティは電極間に5V印加し、各ポイントにおける電圧値を測定し、理想値(直線性)とのずれを計算した。
【0037】
[表1]

【0038】
表1に示す結果から、結晶性の異なる二層のITO層を有する実施例1及び2は、比較例1に比べ、光透過性及び、ペン書き耐久性に優れていることがわかる。また、密着層を有する実施例1は、密着層を持たない実施例2に比べてさらにペン書き耐久性が優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の透明導電性フィルムの一実施形態の断面図である。
【図2】本発明の透明導電性フィルムの一実施形態の断面図である。
【図3】比較例の透明導電性フィルムの断面図である。
【図4】本発明のタッチパネルの一実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 透明導電性フィルム
2 透明基材
3 密着層
4 透明導電膜
4a 非晶質膜である第一のITO層
4b 結晶化膜である第二のITO層
5 ハードコート層
6 透明導電層
7 基材
8 スペーサー
9 ペン
10 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面に透明導電膜が設けられた透明導電性フィルムにおいて、
前記透明導電膜は前記透明基材から順に非晶質膜である第一のITO層と結晶化膜である第二のITO層とを積層してなり、前記第一のITO層の屈折率n1と前記第二のITO層の屈折率n2はn1>n2の関係を満たすことを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記透明基材と透明導電膜の間に、金属又は無機化合物からなる密着層を有することを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記第一のITO層と第二のITO層の膜厚の総和が10nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記第一のITO層のスズ含有量は5重量%〜20重量%であり、第二のITO層のスズ含有量は1重量%〜4重量%であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の透明導電性フィルムを用いることを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−61942(P2010−61942A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225535(P2008−225535)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】