説明

透明導電性材料

【課題】光透過性が高く、メッシュパターンの細線視認性が低く、かつ支持体側から見た場合の虹状の画像ぼけが低減された透明導電性材料を提供する。
【解決手段】光透過性支持体上に金属メッシュパターンを有し、前記光透過性支持体側から見た金属メッシュパターン部が黒化部および非黒化部から構成され、黒化部の面積に対する非黒化部の面積比が20〜50%であることを特徴とする透明導電性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途に用いることができる透明導電性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途で、透明導電性材料の需要が急速に伸びてきている。電磁波シールド材としてはディスプレイや窓などに使用される場合があり、高い光透過性が求められる。またタッチパネル用途においても、ディスプレイの前面に設置されるため、高い光透過性が求められる。
【0003】
高い光透過性を有する透明導電性材料の製造方法としては、銀、銅、ニッケル、インジウム等の導電性金属をスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法によって光透過性樹脂フィルム上に金属薄膜を形成させる方法が一般的に用いられている。透明導電性材料の需要が拡大する中にあって、インジウム等の鉱物資源の枯渇問題などもあり、低コストで生産性が高い製造方法が求められている。
【0004】
透明導電性材料に求められる性能として導電性と光透過率があるが、金属薄膜を形成させる場合、導電性を高くするにはある程度の膜厚の金属薄膜が必要であり、それによって透過率が低下するという問題がある。従って、導電性が高くかつ光透過率が高い透明導電性フィルムを製造するため、近年の透明導電性材料としては、光透過性支持体上に、金属細線をメッシュパターン状に形成し、金属細線の線幅やピッチ、さらにはパターン形状などを調整することにより、高い光線透過率を維持し、高い導電性を付与した導電性材料が知られている。
【0005】
金属細線メッシュパターンの形状に関しては、各種パターンが紹介されている。特開平10−41682号公報では、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形、円、だ円、星形などを組み合わせた模様でありこれらの単位の単独の繰り返しあるいは2種類以上の組み合わせパターンが開示されている。これらのパターンの中でも、正方形、菱形及び正六角形のパターンが多用されている。
【0006】
通常、これらの金属メッシュパターンの線幅については、金属細線の視認性や導電性や光透過性等を考慮して、1〜50μm程度の線幅を持つ金属細線が用いられる。ピッチについては同じく100〜1000μm程度に設定される。金属メッシュパターンの線幅、ピッチについては、それぞれの用途に応じて適宜調整される。
【0007】
光透過性支持体上にメッシュパターン状の金属細線を有する透明導電性材料を製造する具体的方法としては例えば、1)銅、金、ITO、酸化スズなどの導電性材料で被覆された支持体上に、2)感光性樹脂などのフォトレジスト剤を設け、3)所望のパターンのマスクをかけて紫外線などを照射して、4)フォトレジスト剤を硬化させ、5)未硬化部分を取り除いた後、6)化学エッチングなどによって不要な導電性材料部分を除去し電気回路を形成する方法(サブトラクティブ法)や、1)光透過性支持体上に無電解めっき触媒を付与し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)無電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジストを除去する方法(フルアディティブ法)、あるいは1)光透過性支持体上に無電解めっき触媒を付与し、無電解めっきを施し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジスト等を剥離する方法(セミアディティブ法)なども知られている。
【0008】
また、簡易な工程でメッシュパターンを製造する方法としては金属ペーストを支持体上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、焼結等させることでメッシュパターンを形成する方法や無電解めっき触媒を有するペーストを支持体上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、無電解めっきを施し電気回路を形成する方法が知られている。
【0009】
さらに均一で高精細なパターンを簡易に、かつ安定に作るという観点において、近年導電性材料前駆体としてハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩写真感光材料を使用する方法が提案されている。例えば国際公開第2001/51276号パンフレット、特開2004−221564号公報では銀塩写真感光材料を、1)像露光、現像処理した後、2)金属めっき処理を施すことで導電性材料を製造する方法の提案がなされている。同じく銀塩感光材料を使う方法として銀塩拡散転写法を用いる方法も提案されており、例えば特開2003−77350号公報などがある。これらの方法で得られた導電性材料は銀塩写真法を用いているため、高精細な画線を描くことは容易であり、製造安定性も高く、工程も簡易で、非常に良好な特性を示す。
【0010】
上記のような方法で光透過性支持体上にメッシュパターン状の金属細線を作製することで、光透過性を犠牲にすることなく導電性を高めることができる。しかしながら、これらのパターンは遠目では認識できないが、例えば50cm程度に近づくとパターンが認識できる場合がある。メッシュパターン状の金属細線が視認されてしまうと、ディスプレイに表示された画像の美観を損ねるため好ましくない。
【0011】
メッシュパターンの金属細線の視認性を下げるためには、メッシュパターンのピッチを狭めることが有効である。しかしながら、メッシュパターンのピッチを狭めると透明導電性材料を介して見た対象物が虹状にぼけて何重にも見えるという現象が生じることがあり(以下、本発明ではこの現象を“虹状の画像ぼけ”と記載する。)、改善が求められていた。
【0012】
一方、ディスプレイ上の金属細線の視認性を下げるため、金属メッシュパターンの金属光沢を低減する黒化処理を行うことが知られている。金属メッシュパターンの表面側の黒化処理は、黒ニッケルなどの黒色めっき処理、銅の亜塩素酸のアルカリ水溶液での表面酸化、銀の硫化物による硫化黒化などの表面処理などによって実施することができる。
【0013】
また、透明導電性材料をディスプレイの前面に支持体側を表面に設置することも多く、この場合は、支持体側の金属メッシュパターン面に黒化処理を施す必要がある。支持体側の金属メッシュパターン表面を黒化するには、黒化した銅、ニッケル、銀などの金属薄膜の黒化された面を光透過性支持体に張り合わせてから、フォトエッチング法などによってメッシュパターンを形成する方法や、特開2000−286594号公報に記載されているように、ある表面粗さを持った金属を支持体に張り合わせてメッシュパターンを形成する方法などが知られている。また、特開2007−087625号公報(特許文献1)、同2008−251274号公報(特許文献2)、同2009−185342号公報(特許文献3)に記載された銀塩拡散転写法を用いる方法は、複雑な工程を経ることなく容易に支持体側の金属メッシュパターンの表面を黒化できるので、支持体側の金属メッシュパターン表面を黒化する方法としては好ましいことが知られている。
【0014】
しかしながら、このようにしてメッシュパターンを黒化した場合においても、金属細線の視認性を下げるためにメッシュパターンのピッチを狭めると、先と同様に虹状の画像ぼけが生じることがあり改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−087625号公報
【特許文献2】特開2008−251274号公報
【特許文献3】特開2009−185342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、光透過性が高く、メッシュパターンの細線視認性が低く、かつ支持体側から見た場合の虹状の画像ぼけが低減された透明導電性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記課題は以下の発明によって達成される。
(1)光透過性支持体上に金属メッシュパターンを有し、前記支持体側から見た金属メッシュパターン部が黒化部および非黒化部から構成され、黒化部の面積に対する非黒化部の面積比が20〜50%であることを特徴とする透明導電性材料。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、光透過性が高く、メッシュパターンの細線視認性が低く、かつ虹状の画像ぼけ現象が低減された透明導電性材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の透明導電性材料は支持体上にメッシュパターン状の金属細線を有する。本発明の透明導電性材料の金属メッシュパターンの形状は、例えば、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、正六角形、正八角形など各種パターンの繰り返しを使用できるが、金属細線の視認性の観点から、正方形の繰り返しパターンが好ましい。
【0020】
本発明の透明導電性材料において、メッシュパターンのピッチの範囲は100〜250μmであることが好ましく、さらに好ましくは150〜225μmである。ピッチが好ましい範囲よりも狭いと十分な光透過性が得られない場合があり、導電性材料を介して見た対象物の画像にじみが強くなる傾向がある。好ましい範囲よりも広いとメッシュパターンの細線視認性が高まり、導電性材料を介して見た対象物の美観を損ねる場合がある。
【0021】
本発明の透明導電性材料において、メッシュパターンの線幅は細い方が好ましいが、導電性との兼ね合いもあるので、20μm以下、さらには17μm以下が好ましい。下限は5μmであることが好ましい。
【0022】
本発明の透明導電性材料の全光線透過率は70%以上が好ましく、さらに好ましくは75%以上である。
【0023】
本発明の透明導電性材料において、良好な電磁波シールド材としての導電性を得るために必要なメッシュパターンの金属細線の厚みは、3〜10μmが好ましく、さらに好ましくは4〜8μmである。
【0024】
本発明の透明導電性材料において、例えば、電磁波シールド材として適用する場合の導電性は、シート抵抗で2Ω/□以下、さらに好ましくは1Ω/□以下である。
【0025】
本発明において、支持体側から見た金属メッシュパターン部とは、すなわち光透過性支持体を介して反対側から見た金属メッシュパターン部のことであり、支持体に接している側の金属メッシュパターンの面を指す。本発明の透明導電性材料は、支持体側から見た金属メッシュパターン部が黒化部および非黒化部から構成される。
【0026】
本発明の透明導電性材料において、支持体側から見た金属メッシュパターン部の黒化部と非黒化部は、メッシュパターンと同条件で作製した金属べた部をJISZ8722に準拠して支持体側から測定したときのL値で定義する。本発明においては、L値が35以下の場合を黒化部とする。非黒化部は同様に測定したL値が35以上で、さらに黒化部に対して5以上高い部分とする。
【0027】
本発明の透明導電性材料の支持体側から見た金属メッシュパターン部の黒化部、非黒化部の形態は、a)金属メッシュパターン細線の中央部が黒化されており、黒化部の外側(縁の部分)が非黒化部である、b)金属メッシュパターン細線の中央部が非黒化部であり、非黒化部の外側(縁の部分)が黒化部であるような形態があるが、虹状の画像ぼけ現象を低減するという観点から、a)の形態が好ましい。
【0028】
上記a)について説明する。a)は、支持体上に支持体面側が黒化された金属メッシュパターンを形成し、その後、該メッシュパターンにめっき処理を実施することで黒化部と非黒化部を形成する。めっき条件は、支持体面側が黒化された金属の外側に黒化されていない金属を付与するために、例えば、十分な導電性が得られるめっき条件よりもめっき時間を長くするなど、過度の条件でめっきを実施することで非黒化部を形成する。本発明における過度の条件とは、シート抵抗1Ω/□以下の導電性が得られる条件のめっき厚よりも、3倍以上めっき厚を付与することを意味する。
【0029】
上記a)の支持体上に支持体面側が黒化された金属メッシュパターンを形成するには、1)黒化した銅、ニッケル、銀などの金属薄膜の黒化された面を光透過性支持体に張り合わせてから、フォトエッチング法などによってメッシュパターンを形成する、2)予め光透過性支持体上に親水性ポリマーなどから構成される下引き層などを設け、その上に金属ペーストを支持体上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、焼結等させることでメッシュパターンを形成し、黒化液を下引き層から浸透させる、3)ある特定の表面粗さを持った金属を光透過性支持体に貼合した後、フォトエッチング法などによってメッシュパターンを形成する、など種々の方法が可能であるが、容易に、支持体面側が黒化された高精細な金属メッシュパターンが形成できるという観点から、特開2007−087625号公報、特開2008−251274号公報、特開2009−185342号公報などで開示された銀塩拡散転写法を用いる方法が好ましい。
【0030】
上記a)の支持体面側が黒化された金属メッシュパターン上に、めっきにより金属を被覆するには、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、または無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができるが、電解ニッケルめっきが、支持体面側が黒化された金属の外側に黒化されていない金属を比較的容易に付与することができるため好ましい。
【0031】
電解ニッケルめっきについて説明する。電解ニッケルめっきには、ワット浴、スルファミン酸浴などが利用できる。これらの浴には、ニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、及びその調合剤である市販の添加剤を添加してもよい。
【0032】
ワット浴の場合、硫酸ニッケルの濃度として50〜300g/Lが好ましく、さらに好ましくは150〜250g/Lである。硫酸ニッケルの濃度が50g/Lより低いとめっき処理時間が掛かり過ぎてコスト高となる。また、硫酸ニッケルの濃度が300g/Lより高いとめっき液が不安定となり、めっき皮膜が密着不良となる場合がある。塩化ニッケルの濃度は、5〜100g/Lが好ましく、さらに好ましくは20〜50g/Lである。塩化ニッケルの濃度が5g/Lより低いとめっき液が不安定となり、100g/Lより高いとめっき皮膜の応力が高くなり皮膜にクラックが入る場合がある。ホウ酸の濃度としては、10〜80g/Lが好ましく、さらに好ましくは20〜50g/Lである。ホウ酸の濃度が10g/Lより低い場合は、電気分解によるpHの変化を受け易く、80g/Lより高いとホウ酸が結晶化し、製品に付着する場合がある。めっき処理液のpHとしては、1〜10が好ましく、さらに好ましくは4〜6である。pHが1より低いとめっき皮膜にムラが発生し、pHが10より高いと密着不良となる場合がある。めっき処理液の温度は、20〜80℃が好ましく、さらに好ましくは40〜70℃である。めっき処理液の温度が20℃より低いとめっき析出が不安定となる場合があり、80℃より高いとエネルギーコストが高くつく。電解めっきの電流密度としては、0.1〜20A/cmが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10A/cmである。電解めっきの電流密度が0.1A/cmより低いと、めっき時間が長くなりコストアップとなる。また、電解めっきの電流密度が20A/cmより高いと、密着不良及び製品にスパークが発生するから好ましくない。
【0033】
上記a)の黒化部、非黒化部の形態のさらに外側を黒化部とすることもできる。すなわち、非黒化部として金属めっきにより形成された金属の表面を黒化処理することで黒化部を形成する。黒化処理は例えば、銅の亜塩素酸のアルカリ水溶液での表面酸化、銀の硫化物による硫化黒化などの表面処理、黒色ニッケルめっき、黒色クロムめっき、黒色ロジウムめっきなどの黒色めっき処理で実施することができる。例えば、ニッケル表面上に黒化するのであれば黒色ニッケルめっきが好ましい。
【0034】
黒色ニッケルめっきについて説明する。めっき浴には、硫酸ニッケル(60〜80g/L)、硫酸ニッケルアンモニウム(35〜50g/L)、硫酸亜鉛(20〜35g/L)、チオシアン酸ナトリウムが含有される。めっき処理液のpHとしては、1〜10が好ましく、さらに好ましくは4〜6である。pHが1より低いとめっき皮膜にムラが発生し、pHが10より高いと密着不良となる場合がある。めっき処理液の温度は、20〜80℃が好ましく、さらに好ましくは50〜60℃である。めっき処理液の温度が20℃より低いとめっき析出が不安定となる場合があり、80℃より高いとエネルギーコストが高くつく。電解めっきの電流密度としては、0.1〜5A/cmが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.5A/cmである。
【0035】
上記b)について説明する。b)は支持体上に金属メッシュパターンを形成し、その後、メッシュパターンを黒化処理することにより達成される。
【0036】
上記b)の支持体上に金属メッシュパターンを形成するには、1)金属薄膜が被覆された支持体を、フォトエッチング法などを用いることによってメッシュパターンを形成する、2)金属ペーストを支持体上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、焼結等させることでメッシュパターンを形成する、3)無電解めっき触媒を有するペーストを支持体上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、無電解めっきを施しメッシュパターンを形成する、4)国際公開第2001/51276号パンフレット、特開2004−221564号公報に記載された銀塩写真感光材料を用いて、メッシュパターンを形成する、5)特開2008−251274号公報の実施例(導電性材料前駆体12)に記載された銀塩拡散転写法を用いて形成することができる。
【0037】
上記b)のメッシュパターンを黒化処理する方法としては、上記a)で記載したような黒色ニッケルめっきなどの黒色めっき処理を過度の条件で実施することで非黒化部を形成することができる。
【0038】
本発明において、黒化部の面積に対する非黒化部の面積比(非黒化部の面積/黒化部の面積。以下、非黒化率と記載する)は、光学顕微鏡で支持体側からのメッシュパターン部を撮影し、画像解析することで求めることができる。
【0039】
本発明において、非黒化率は、20〜50%である。この範囲から外れるとメッシュパターンの視認性が上がったり、また虹状の画像ぼけが発生し好ましくない。
【0040】
本発明の透明導電性材料の光透過性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、などの光透過性支持体を用いる。ここで光透過性とは全光線透過率が80%以上であることを意味する。これらは本発明の目的を妨げない程度に着色していても良く、さらにこれら各種光透過性支持体を単体で使うこともできるが、これらを組み合わせた積層体であっても良い。光透過性支持体の厚みは、5〜300μmが好ましい。
【0041】
本発明の導電性材料の金属細線パターンに使用される金属としては、特に限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタンなどの金属の内の1種または2種以上の金属、あるいは2種以上を組み合わせた合金を使用することができる。
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。
【実施例】
【0043】
(比較例1)
透明導電性材料(シート抵抗1Ω/□以下の光透過性電磁波シールド用フィルム)を作製するために導電性材料前駆体を作製した。光透過性支持体として、塩化ビニリデンを含有する層により易接着加工が施された、全光線透過率が90%、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0044】
次に、硫化パラジウムゾル液を下記のようにして作製し、得られたゾルを用いて物理現像核液を作製した。
【0045】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0046】
<物理現像核液組成/1mあたり>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08mL
10質量%SP−200水溶液 0.5mg
(日本触媒(株)製ポリエチレンイミン;平均分子量10,000)
【0047】
この物理現像核液を硫化パラジウムが固形分で0.4mg/mになるように、下引き層の上に塗布し、乾燥した。
【0048】
続いて、上記物理現像核層を塗布した側と反対側の面に下記組成の裏塗り層を塗布した。
<裏塗り層組成/1mあたり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
【0049】
【化1】

【0050】
【化2】

【0051】
続いて、支持体に近い方から順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層、及び最外層を上記物理現像核層の上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い、金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0052】
<中間層組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
【0053】
<ハロゲン化銀乳剤層組成/1mあたり>
ゼラチン 1.0g
ハロゲン化銀乳剤 4.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0054】
<最外層組成/1mあたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0055】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターでピッチ175μm、線幅12μmのメッシュパターンを有する透過原稿を密着させて露光した。露光量は透明導電性材料のメッシュ細線幅が透過原稿の細線幅と同じになる露光量で行った。
【0056】
その後、露光した導電性材料前駆体を下記現像液中に20℃で60秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層、中間層、最外層および裏塗り層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。露光したサンプルからはメッシュパターン状に銀薄膜が形成された透明導電性材料を得た。得られたメッシュパターン画像の細線幅、ピッチを光学顕微鏡で確認したところ、露光用マスクの細線幅、ピッチを再現していた。また、未露光の導電性材料前駆体も同時に現像処理し、支持体上に均一な銀画像を有する銀べたフィルムを得た。
【0057】
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000mLとする。
pH=12.2に調整する。
【0058】
上記のようにして得られたメッシュパターン状銀薄膜が形成された透明導電性材料及び銀べたフィルムの後処理として、15質量%塩化ナトリウム水溶液を用いて60℃で60秒処理を実施した。
【0059】
続いて、メッシュパターンおよび銀べたフィルムに、下記のめっき液を用いて、液温60℃、電流密度2A/cm、めっき時間3分の条件下で電解ニッケルめっきを実施した。めっき後のメッシュパターンのシート抵抗は0.9Ω/□であり、十分なシールド性能が得られることを確認した。共焦点顕微鏡(レーザーテック社製、オプテリクスC130)により、測定したメッシュパターンのめっき厚は1μm、線幅は13μmであった。
【0060】
<めっき液>
硫酸ニッケル 240g
塩化ニッケル 45g
ホウ酸 30g
全量を水で1000mLとする。
pH=4.6に調整する。
【0061】
銀べた部の表面(金属ニッケル面)および裏面(金属銀面)のL値を日本電色(株)色差計ZE−200を用い、JIS−Z8722に従い測定した。金属ニッケル面は、裏面側からの測定値の代用とするために、上記の物理現像核層塗設済みの光透過性支持体を挟んで測定した。結果、金属ニッケル面のL値は49.5、金属銀面のL値は20.0であり、黒化部および非黒化部が形成されていることを確認した。
【0062】
上記のようにして得られた金属メッシュパターンが形成された透明導電性材料について下記の評価を実施した。
【0063】
(1)表面抵抗率
(株)ダイアインスツルメンツ社製、ロレスターGP/ESPプローブによってJIS−K7194に準拠して測定した。測定場所は30cm四方の正方形の四隅(左上、左下、右上、右下)及び中心部の5箇所とした。測定結果の平均値(Ω/□)を表1に示す。
【0064】
(2)全光線透過率
スガ試験機(株)製、ヘーズコンピューターHZ−2によって、JIS K 7361−1に従い測定した。測定結果を表1に示す。
【0065】
(3)非黒化部の黒化部に対する面積比(非黒化率)
共焦点顕微鏡(レーザーテック社製、オプテリクスC130)により、支持体側から見た電解ニッケルめっき後のメッシュパターン部を撮影し、画像解析処理により非黒化率を算出した。算出した結果を表1に示す。
【0066】
(4)金属細線の視認性
得られた透明導電性材料をライトテーブル上で50cm離れた位置から目視し、金属細線の視認性を評価した。5段階で評価し、1:金属細線をほとんど視認できない最も良いレベル、2:凝視することで金属細線を僅かに視認できるレベル、3:凝視することで金属細線が視認できるレベル、4:一目で金属細線が視認できるレベル、5:金属細線の視認性が高い最も悪いレベルと規定した。1、2を可、3〜5を不可レベルと規定した。この結果を表1に示す。
【0067】
(5)虹状の画像ぼけ
得られた透明導電性材料をディスプレイ上に支持体面を外側に向けて設置し、夜景の画像を5秒間隔で表示し、目視にて虹状の画像ぼけを評価した。5段階で評価し、1:虹状の画像ぼけが認識できないレベル、2:凝視すると若干虹状の画像ぼけが認識できるレベル、3:凝視すると虹状の画像ぼけが認識できるレベル、4:一目で虹状の画像ぼけが認識できるレベル、5:虹状の画像ぼけが強く最も悪いレベル、と規定した。同じく1、2を可、3〜5を不可レベルと規定した。この結果を表1に示す。
【0068】
(比較例2)
前記比較例1において、電解ニッケルめっきのめっき時間を5分に延長した。共焦点顕微鏡(レーザーテック社製、オプテリクスC130)により、測定しためっき厚は2μm、線幅は14μmであった。その他は比較例1と同様に透明導電性材料を作製し、比較例1と同様に評価を実施した。金属ニッケル面のL値は49.8、金属銀面のL値は20.5であり、黒化部および非黒化部が形成されていることを確認した。この結果を表1に示す。
【0069】
(実施例1)
前記比較例1において、電解ニッケルめっきのめっき時間を10分に延長した。共焦点顕微鏡(レーザーテック社製、オプテリクスC130)により、測定しためっき厚は4μm、線幅は15μmであった。その他は比較例1と同様に透明導電性材料を作製し、比較例1と同様に評価を実施した。金属ニッケル面のL値は50.0、金属銀面のL値は21.0であり、黒化部および非黒化部が形成されていることを確認した。この結果を表1に示す。
【0070】
(実施例2)
前記比較例1において、電解ニッケルめっきのめっき時間を20分に延長した。共焦点顕微鏡(レーザーテック社製、オプテリクスC130)により、測定しためっき厚は8μm、線幅は18μmであった。その他は比較例1と同様に透明導電性材料を作製し、比較例1と同様に評価を実施した。金属ニッケル面のL値は50.0、金属銀面のL値は20.5であり、黒化部および非黒化部が形成されていることを確認した。この結果を表1に示す。
【0071】
(比較例3)
前記比較例1において、電解ニッケルめっきのめっき時間を30分に延長した。共焦点顕微鏡(レーザーテック社製、オプテリクスC130)により、測定しためっき厚は12μm、線幅は21μmであった。その他は比較例1と同様に透明導電性材料を作製し、比較例1と同様に評価を実施した。金属ニッケル面のL値は49.8、金属銀面のL値は21.0であり、黒化部および非黒化部が形成されていることを確認した。この結果を表1に示す。
【0072】
(比較例4)
黒化部のない金属メッシュパターンを作製するために導電性材料前駆体の作製で用いた物理現像核液組成を下記の処方に変更した。その他は実施例1と同様に透明導電性材料を作製し、比較例1と同様に評価を実施した。裏面(金属銀面)のL値は37であり黒化部が形成されていないことを確認した。この結果を表1に示す。
【0073】
<物理現像核液組成/1mあたり>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08mL
【0074】
【表1】

【0075】
表1の結果から、本発明の有効性が理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性支持体上に金属メッシュパターンを有し、前記光透過性支持体側から見た金属メッシュパターン部が黒化部および非黒化部から構成され、黒化部の面積に対する非黒化部の面積比が20〜50%であることを特徴とする透明導電性材料。

【公開番号】特開2012−195443(P2012−195443A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58219(P2011−58219)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】