説明

透明導電積層体

【課題】透明配線層が目立たない透明導電積層体を提供すること。
【解決手段】絶縁性の透明基材11と、透明基材11の表面に形成され、透明基材11よりも光屈折率の高い高屈折率層12と、高屈折率層12の表面に形成され、高屈折率層12よりも光屈折率の低い低屈折率層13と、低屈折率層13の表面においてパターン形成され、低屈折率層13よりも光屈折率の高い透明配線層14とを有する。低屈折率層13および透明配線層14は、それぞれの表面が凹凸面133、143を構成している。透明配線層14が形成されている領域と形成されていない領域との双方において、ヘーズが0.8〜2.0%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル等に用いられる透明導電積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルに用いられる透明導電積層体として、その一方の面に透明導電膜をパターニングしてなる透明配線層を備えたものがある。
近年、スマートフォン等に搭載されたタッチパネルにおいて、その光学的特性は高くなっている。すなわち、タッチパネルを通して見える画像の色合いを保つと共に、透明配線層の存在が目立たないようにすることが要求されるようになっている。
【0003】
透明配線層の透明性を確保して配線が目立たないようにする技術として、例えば、光学調整層を透明基材と透明導電膜(透明配線層)との間に形成した透明導電積層体が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に開示された透明導電積層体は、光学調整層および透明配線層の厚みおよび屈折率から光学設計を行い、各色度(透過色度a*およびb*、反射色度a*およびb*)の差を小さくすると共に、ヘーズを小さくして全光透過率を向上させることにより、その視認性を向上させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−134464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにヘーズを小さくしすぎると、光学調整層等の膜厚が少し変わるだけで、透明導電積層体の色度に変化が生じやすい。すなわち、精密な光学設計を行うと共に、各相の膜厚を正確に制御しないと、実際には透明配線層を目立たなくすることが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、透明配線層が目立たない透明導電積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、絶縁性の透明基材と、
該透明基材の表面に形成され、該透明基材よりも光屈折率の高い高屈折率層と、
該高屈折率層の表面に形成され、該高屈折率層よりも光屈折率の低い低屈折率層と、
該低屈折率層の表面においてパターン形成され、該低屈折率層よりも光屈折率の高い透明配線層とを有し、
上記低屈折率層および上記透明配線層は、それぞれの表面が凹凸面を構成しており、
かつ、上記透明配線層が形成されている領域と形成されていない領域との双方において、ヘーズが0.8〜2.0%であることを特徴とする透明導電積層体にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記透明導電積層体において、上記低屈折率層および上記透明配線層は、それぞれの表面が凹凸面を構成している。これにより、透明導電積層体を透過する透過光や透明導電積層体において反射する反射光を適度に散乱させることができる。そして、透明導電積層体のヘーズを0.8〜2.0%としている。これにより、透明配線層の配線パターンが目立ちにくくなる。すなわち、透明導電積層体のヘーズが上記のような適度な値をとるように、上記低屈折率層および上記透明配線層の表面に凹凸面を形成することにより、透過光や反射光が適度に散乱する。これにより、透明配線層が形成されている領域と形成されていない領域との境界において、その色度の変化が看者に認識され難くなる。その結果、透明配線層が目立たない透明導電積層体を得ることができる。
【0009】
つまり、上記透明導電積層体は、視認性を向上させる際に従来は小さくすることが常識であったヘーズを、敢えて小さくしすぎず、ある程度の大きさの値に上げることにより、透明配線層が目立たないようにしてその視認性を高めるものである。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、透明配線層が目立たない透明導電積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1における、透明導電積層体の断面説明図。
【図2】実施例2における、透明導電積層体の断面説明図。
【図3】実施例3における、透明導電積層体の断面説明図。
【図4】実施例4における、透明導電積層体の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記透明導電積層体は、例えば、静電容量式や抵抗膜式のタッチパネルにおいて用いられる。
上記透明基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネイト(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアクリル(PAC)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂などの可撓性フィルムやこれら2種以上の積層体によって構成することができる。あるいは、上記透明基材として、ガラスを用いることもできる。また、上記透明基材は、その表裏にハードコート層を備えていてもよい。
【0013】
また高屈折率層を構成する材料としては、光屈折率が1.6〜2.3の範囲において、無機材料及び有機材料を任意に用いることができる。無機材料としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化錫、ITO(インジウム錫酸化物)等が挙げられる。有機材料としては、重合組成物の光屈折率が1.6〜1.8である樹脂材料が利用できる。そのような重合組成物として、例えば、ビニルナフタレン、ブロモスチレン、ビニルアントラセン等の芳香族モノマーの重合組成物およびペンタブロモフェニルメタクリレート、ペンタブロモフェニルアクリレート、ペンタブロモベンジルメタリレート、ペンタブロモベンジルアクリレートなどの臭素化芳香族モノマーベースの重合組成物が挙げられる。また、高屈折率層を構成する材料としては、無機材料の微粒子と有機材料とを併用することができるが、この場合には、前述した有機材料以外の組成物をウェットコーティング樹脂として用いることができる。
高屈折率層の膜厚は例えば10〜50nm(光学膜厚)とすることができる。
また、低屈折率層の光屈折率は1.2〜1.5とすることができる。低屈折率層の膜厚は例えば5〜80nm(光学膜厚)とすることができる。
【0014】
また、上記透明配線層は、例えばインジウム、錫、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、アルミニウム、金、銀、銅、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物が用いられる。当該酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属元素や、その酸化物が添加されていてもよい。例えば酸化錫を含有する酸化インジウムや、アンチモンを含有する酸化亜鉛などが好ましく用いられる。
【0015】
また、上記高屈折率層、上記低屈折率層、及び上記透明配線層は、上記透明基材の片面にのみ形成されていてもよいし、上記透明基材の表裏両面に形成されていてもよい。
また、透明導電積層体のヘーズが0.8%未満の場合には、透明配線層が目立ちやすくなるおそれがある。一方、透明導電積層体のヘーズが2.0%を超える場合には、透過光や反射光が散乱しすぎて、上記透明導電積層体をパネル面に設けたタッチパネル等において、その表示の視認性が低下するおそれがある。
【0016】
また、上記凹凸面を形成するための凹凸形成用粒子が、上記低屈折率層又は上記高屈折率層に配置してあることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記凹凸面を容易に形成することができると共に、凹凸面の形状を制御しやすくなる。その結果、容易に所望の凹凸面を得ることができ、透明導電積層体のヘーズを所望の値としやすくなる。また、上記凹凸形成用粒子としては、例えば、コロイダルシリカ微粒子等のシリカ系粒子、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、酸化チタン等の金属酸化物粒子、架橋アクリル系樹脂粒子等の有機物系粒子を用いることができる。
【0017】
また、上記低屈折率層は、上記高屈折率層の表面に形成された第1低屈折率層と、該第1低屈折率層の表面に形成された第2低屈折率層とを有し、該第2低屈折率層は無機材料からなり、上記第1低屈折率層は有機材料に上記凹凸形成用粒子を添加してなることが好ましい(請求項3)。
【0018】
この場合には、上記凹凸面を容易に形成することができると共に、凹凸面の形状を制御しやすくなる。その結果、容易に所望の凹凸面を得ることができ、透明導電積層体のヘーズを所望の値としやすくなる。特に、上記第2低屈折率層を無機材料によって構成することにより、上記低屈折率層の表面に上記凹凸面を容易に形成することができる。つまり、無機材料によって第2低屈折率層を構成することにより、第2低屈折率層の表面形状を、上記凹凸形成用粒子に追従させることができる。それゆえ、上記凹凸形成用粒子によって、第2低屈折率層および透明配線層に形成される凹凸面の大きさ(表面粗さ)を調整しやすい。
【0019】
また、無機材料からなる上記第2低屈折率層によって、真空成膜プロセスにより透明配線層を形成する際に有機材料から発生するガスの放出を低減することができる、従って透明配線層の特性を向上することができる。また、低屈折率層を主に有機材料からなる第1低屈折率層と無機材料からなる第2低屈折率層との2層にすることで第2低屈折率層を薄膜化することができ、クラックの発生を抑制することが可能である、またこれにより、低屈折率層の耐薬品性を向上させるとともに、透明導電積層体の柔軟性を向上させることができる。
【0020】
なお、上記第1低屈折率層における有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられる。上記第2低屈折率層における無機材料としては、フッ化ナトリウム(1.3)、フッ化リチウム(1.36)、フッ化マグネシウム(1.38)、フッ化カルシウム(1.4)、フッ化バリウム(1.3)、酸化シリコン(1.46)などがあげられる。なお、上記の材料名の後の( )内の数値は、その材料の光屈折率を表す。
【0021】
また、上記凹凸形成用粒子の平均粒径は、5〜80nmであることが好ましい(請求項4)。この場合には、適度な大きさの凹凸面を、上記低屈折率層および上記透明配線層に形成することができる。上記凹凸形成用粒子の平均粒径が5nm未満の場合には、透明導電積層体のヘーズが小さくなりすぎて、場合によっては透明配線層が目立ちやすくなるおそれがある。一方、上記凹凸形成用粒子の平均粒径が80nmを超える場合には、透明導電積層体のヘーズが大きくなりすぎて、場合によっては透過光や反射光が散乱しすぎるおそれがある。
【0022】
また、上記低屈折率層および上記透明配線層は、その表面の中心面平均粗さRaが1〜100nmであることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記透明導電積層体のヘーズを0.8〜2.0%としやすくなる。また、透明配線層の形成にあたり、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の金属酸化物を結晶化させる場合、その結晶化速度を向上させやすい。また、透明導電積層体の表面に光学テープを貼り合わせる場合、光学テープとの密着性を確保しやすい。
【0023】
また、上記低屈折率層および上記透明配線層は、その表面の十点平均粗さRzが1〜100nmであることが好ましい(請求項6)。この場合にも、上記透明導電積層体のヘーズを0.8〜2.0%としやすくなる。また、透明配線層の形成にあたり、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の金属酸化物を結晶化させる場合、その結晶化速度を向上させやすい。また、透明導電積層体の表面に光学テープを貼り合わせる場合、光学テープとの密着性を確保しやすい。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
上記透明導電積層体の実施例につき、図1を用いて説明する。
本例の透明導電積層体1は、絶縁性の透明基材11と、透明基材11の表面に形成され、透明基材11よりも光屈折率の高い高屈折率層12と、高屈折率層12の表面に形成され、高屈折率層12よりも光屈折率の低い低屈折率層13とを有する。さらに、透明導電積層体1は、低屈折率層13の表面においてパターン形成され、低屈折率層13よりも光屈折率の高い透明配線層14を有する。
【0025】
低屈折率層13および透明配線層14は、それぞれの表面が凹凸面133、143を構成している。
そして、透明導電積層体1は、透明配線層14が形成されている領域Aと形成されていない領域Bとの双方において、ヘーズが0.8〜2.0%である。
【0026】
本例において、透明基材11は、その表裏にハードコート層111、112を備えている。
上記透明基材11はPET(ポリエチレンテレフタレート)からなり、その光屈折率は1.5〜1.7である。また、透明基材11の厚みは2〜200μmである。また、ハードコート層111、112は、それぞれ1〜8μmの膜厚を有し、その光屈折率は透明基材11と同等である。
【0027】
また、高屈折率層12を構成する材料としては、光屈折率が1.6〜2.3の範囲において、無機材料及び有機材料を任意に用いることができる。無機材料としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化錫、ITO等の微粒子が挙げられる。有機材料としては、重合組成物の光屈折率が1.6〜1.8である樹脂材料が利用できる。そのような重合組成物として、例えば、ビニルナフタレン、ブロモスチレン、ビニルアントラセン等の芳香族モノマーの重合組成物およびペンタブロモフェニルメタクリレート、ペンタブロモフェニルアクリレート、ペンタブロモベンジルメタリレート、ペンタブロモベンジルアクリレートなどの臭素化芳香族モノマーベースの重合組成物が挙げられる。また、高屈折率層12を構成する材料としては、無機材料の微粒子と有機材料とを併用することができるが、この場合には、前述した有機材料以外の組成物をウェットコーティング樹脂として用いることができる。高屈折率層12の膜厚は例えば10〜50nm(光学膜厚)とすることができる。
【0028】
また、低屈折率層13は、例えば、酸化シリコン、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等によって構成することができ、その光屈折率は1.3〜1.5である。低屈折率層13の膜厚は10〜80nm(光学膜厚)とすることができる。
また、透明配線層14の光屈折率は、1.9〜2.1であり、その膜厚は30〜70nm(光学膜厚)とすることができる。
【0029】
透明配線層14は、例えば互いに平行な複数の直線状の配線パターンからなるものとすることができる。
そして、本例の透明導電積層体1は、タッチパネルに利用することができ、その場合、例えば、2枚の透明導電積層体1を、両者間に所定の間隔を設けながら透明配線層14同士を向い合せにして重ね合わせるように配置することにより、タッチパネルを構成することができる。
【0030】
また、透明導電積層体1は、図1に示すごとく、凹凸面133、143を形成するための凹凸形成用粒子2が、高屈折率層12に配置してある。すなわち、高屈折率層12の内部に、多数の凹凸形成用粒子2が埋設された状態にある。凹凸形成用粒子2の平均粒径は、5〜80nmである。凹凸形成用粒子2としては、例えば、コロイダルシリカ微粒子等のシリカ系粒子、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、酸化チタン等の金属酸化物粒子、架橋アクリル系樹脂粒子等の有機物系粒子を用いることができる。
【0031】
上記のように凹凸形成用粒子2を高屈折率層12に配置することにより、低屈折率層13の表面および透明配線層14の表面に、適度な大きさの凹凸面133、143が形成される。
すなわち、低屈折率層13および透明配線層14は、その表面(凹凸面133、143)の中心面平均粗さRaが1〜100nmである。
【0032】
上記透明導電積層体1の製造方法の一例を示す。
まず、表裏両面にハードコート層111、112を備えたPETからなる透明基材11の表面に、高屈折率層12を形成するためのアクリル系樹脂液をワイヤーバーコート法によって塗布する。このアクリル系樹脂液には、予め酸化ジルコニウムからなる凹凸形成用粒子2を約30重量%添加しておく。これにより、高屈折率層12の表面に凹凸面が形成される。
【0033】
そして、この高屈折率層12の表面に、スパッタリングによって、低屈折率層13を形成するための酸化シリコンを成膜する。これにより、表面に凹凸面133が形成された低屈折率層13が形成される。
さらに、スパッタリングによって、低屈折率層13の表面(凹凸面133)に、透明配線層14を形成するためのITOを成膜する。次いで、アニーリングによってITOを結晶化させた後、このITO膜をエッチングによってパターニングすることにより、透明配線層14が形成される。この透明配線層14は、低屈折率層13の凹凸面133に追従して形成されるため、その表面には凹凸面143が形成される。
なお、高屈折率層12を形成するにあたっては、ワイヤーバーコート法に代えて、ディップコート法、エアーナイフコート法、ローラーコート法を用いることもできる。
【0034】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記透明導電積層体1において、低屈折率層13および透明配線層14は、それぞれの表面が凹凸面133、143を構成している。これにより、透明導電積層体1を透過する透過光や透明導電積層体1において反射する反射光を適度に散乱させることができる。そして、透明導電積層体のヘーズを0.8〜2.0%としている。これにより、透明配線層14の配線パターンが目立ちにくくなる。すなわち、透明導電積層体1のヘーズが上記のような適度な値をとるように、低屈折率層13および透明配線層14の表面に凹凸面133、143を形成することにより、透過光や反射光が適度に散乱する。これにより、透明配線層14が形成されている領域Aと形成されていない領域Bとの境界において、その色度の変化が看者に認識され難くなる。その結果、透明配線層14が目立たない透明導電積層体1を得ることができる。
【0035】
つまり、透明導電積層体1は、視認性を向上させる際に従来は小さくすることが常識であったヘーズを、敢えて小さくしすぎず、ある程度の大きさの値に上げることにより、透明配線層14が目立たないようにしてその視認性を高めるものである。
【0036】
また、凹凸形成用粒子2が高屈折率層12に配置してあるため、低屈折率層13及び透明配線層14に凹凸面133、143を容易に形成することができると共に、凹凸面133、143の形状を制御しやすくなる。その結果、容易に所望の凹凸面133、143を得ることができ、透明導電積層体1のヘーズを所望の値としやすくなる。
【0037】
また、凹凸形成用粒子2の平均粒径は、5〜80nmであるため、適度な大きさの凹凸面133、143を、低屈折率層13および透明配線層14に形成することができる。
【0038】
また、低屈折率層13および透明配線層14の表面(凹凸面133、143)の中心面平均粗さRaが1〜100nmである。透明導電積層体1のヘーズを0.8〜2.0%としやすくなる。また、透明配線層14の形成にあたり、ITOを結晶化させる場合、その結晶化速度を向上させやすい。また、透明導電積層体1の表面に光学テープを貼り合わせる場合、光学テープとの密着性を確保しやすい。
【0039】
以上のごとく、本例によれば、透明配線層が目立たない透明導電積層体を提供することができる。
【0040】
なお、上記実施例1においては、上記凹凸面133、143の表面粗さを、中心面平均粗さRaにて規定し、その値を1〜100nmとしたが、十点平均粗さRzによって規定することもできる。この場合、Rzを1〜100nmとすることが好ましい。
【0041】
(実施例2)
本例は、図2に示すごとく、低屈折率層13が、高屈折率層12の表面に形成された第1低屈折率層131と、第1低屈折率層131の表面に形成された第2低屈折率層132とを有する二層構造である透明導電積層体1の例である。
第2低屈折率層132は無機材料からなる。
また、第1低屈折率層131は有機材料に上記凹凸形成用粒子2を添加してなる。すなわち、凹凸形成用粒子2は、高屈折率層12には添加せず、第1低屈折率層131に添加している。
【0042】
具体的に、第1低屈折率層131における有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられ、その光屈折率は1.3〜1.5である。第1低屈折率層131の膜厚は10〜50nm(光学膜厚)とすることができる。
【0043】
また、第2低屈折率層132は、例えば、酸化シリコン、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等によって構成することができ、その光屈折率は1.3〜1.5である。第2低屈折率層132の膜厚は4〜25nm(光学膜厚)とすることができる。
その他の層の材質や膜厚は、実施例1に示したものと同様とすることができる。
【0044】
次に、本例における透明導電積層体1の製造方法の一例を示す。
まず、表裏両面にハードコート層111、112を備えたPETからなる透明基材11の表面に、高屈折率層12を形成するためのアクリル系樹脂液をワイヤーバーコート法によって塗布する。
【0045】
次いで、高屈折率層12の表面に、第1低屈折率層131を形成するためのアクリル系樹脂液をワイヤーバーコート法によって塗布する。このアクリル系樹脂液には、予め酸化シリコンからなる凹凸形成用粒子2を約30重量%添加しておく。これにより、第1低屈折率層131の表面に凹凸面が形成される。
【0046】
そして、この第1低屈折率層131の表面に、スパッタリングによって、第2低屈折率層13を形成するための酸化シリコンを成膜する。これにより、表面に凹凸面133が形成された第2低屈折率層132が形成される。
さらに、スパッタリングによって、第2低屈折率層132の表面(凹凸面133)に、透明配線層14を形成するためのITOを成膜する。次いで、アニーリングによってITOを結晶化させた後、このITO膜をエッチングによってパターニングすることにより、透明配線層14が形成される。この透明配線層14は、低屈折率層13の凹凸面133に追従して形成されるため、その表面には凹凸面143が形成される。
なお、高屈折率層12および第1低屈折率層131を形成するにあたっては、ワイヤーバーコート法に代えて、ディップコート法、エアーナイフコート法、ローラーコート法を用いることもできる。
その他は、実施例1と同様である。
【0047】
本例の場合には、第2低屈折率層132の表面および透明配線層14の表面に、凹凸面133、143を容易に形成することができると共に、凹凸面133、143の形状を制御しやすくなる。その結果、容易に所望の凹凸面133、143を得ることができ、透明導電積層体1のヘーズを所望の値としやすくなる。特に、第2低屈折率層132を無機材料によって構成することにより、低屈折率層13の表面に凹凸面133、143を容易に形成することができる。つまり、無機材料によって第2低屈折率層132を構成することにより、第2低屈折率層132の表面形状を、凹凸形成用粒子2に追従させることができる。それゆえ、凹凸形成用粒子2によって、第2低屈折率層132および透明配線層14に形成される凹凸面133、143の大きさ(表面粗さ)を調整しやすい。
【0048】
また、無機材料からなる第2低屈折率層132によって、成膜時に第1低屈折率層131から発生するガスを抑制することができる。また、低屈折率層13を二層化することにより、第1低屈折率層131および第2低屈折率層132の薄膜化を図ることができ、クラックの発生を抑制することもできる。また、低屈折率層13の二層化により、低屈折率層13の耐薬品性を向上させることができると共に、透明導電積層体1の柔軟性を向上させることもできる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0049】
(実施例3)
本例は、図3に示すごとく、透明基材11の表裏両面に、高屈折率層12、低屈折率層13、及び透明配線層14を形成した透明導電積層体1の例である。
その他は、実施例1と同様である。
【0050】
本例の場合には、例えば、上記透明導電積層体1をタッチパネルのパネル面に用いる際、1枚の透明導電積層体1によって賄うことができる。つまり、透明基材11の一方の面側(表面側)と他方の面側(裏面側)にそれぞれ形成される透明配線層14を、互いに直交する方向の配線パターンとする。これにより、一方の透明配線層14をX軸用の配線パターン、他方の透明配線層14をY軸用の配線パターンとすることができる。その結果、一枚の透明導電積層体1によって、タッチパネルのパネル面を構成することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0051】
(実施例4)
本例は、図4に示すごとく、透明基材11の表裏両面に、高屈折率層12、二層構造の低屈折率層13、及び透明配線層14を形成した透明導電積層体1の例である。
上記二層構造の低屈折率層13は、実施例2において示した二層構造の低屈折率層13と同様であり、第1低屈折率層131と第2低屈折率層132とからなる。
その他は、実施例3と同様である。
本例の場合には、実施例3と同様の作用効果に加え、実施例2と同様の作用効果をも奏することができる。
【0052】
(実験例)
本例は、透明導電積層体の視認性の評価を行った例である。
すなわち、上記実施例2に示した層構成と同様の層構成の透明導電積層体を、各層の厚みや凹凸形成用粒子の有無、粒径等を種々変更して、10種類、試料として用意した。
ここで、透明基材11はPETからなり、その厚みは100μmである。高屈折率層12および第1低屈折率層131は、アクリル系樹脂からなる。また、第2低屈折率層132は、酸化シリコンからなる。透明配線層14はITOからなる。
【0053】
そして、高屈折率層12の厚みt12、第1低屈折率層131の厚みt131、第2低屈折率層132の厚みt132、透明配線層14の厚みt14は、それぞれ、表1に示すとおりである。
また、試料3および試料8以外において、第1低屈折率層131には凹凸形成用粒子2を添加してある。そして、その平均粒径dは、表1に示すとおりである。つまり、凹凸形成用粒子2の平均粒径によって、透明導電積層体のヘーズを調整した。また、第1低屈折率層131における凹凸形成用粒子2の添加量は、30重量%である。
なお、試料3および試料8については、第1低屈折率層131を、フッ素化モノマーベース素材(シグマアルドリッチ社製、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル)によって構成した。
【0054】
【表1】

【0055】
これらの試料について、ヘーズの測定を行った。ヘーズの測定は、スガ試験機株式会社社製HZ−2を用い、JIS
K 7136に基づいて行った。そして、ヘーズの測定結果を表1に示す。
【0056】
また、各試料について、透明配線層14の形成領域Aと、透明配線層14が形成されていない領域B(第2低屈折率層132が露出した領域)との間における色差を調べた。ここで、色差としては、色差としてはCIE(1976)L色空間で定義される(a,b)において、領域A、領域Bそれぞれの透過色度(A透過a、A透過b、B透過a、B透過b)、反射色度(A反射a、A反射b、B反射a、B反射b)を測定し、透過Δa=|A透過a−B透過a|、透過Δb=|A透過b−B透過b|、反射Δa=|A反射a−B反射a|、反射Δb=|A反射b−B反射b|によって算出した。
なお、a値、b値の測定は、スガ試験機株式会社製の測色計「Colour Cute i」を用いて、JIS K 8722に従って測定した。
そして、色差の測定結果を表1に示す。
【0057】
また、実際に、各試料において、透明配線層14がどの程度目立つかを評価した。この透明配線層14の目立ちやすさを便宜的に「骨見え」との表現を用い、目視で透明配線層14が認識できる場合を「骨見えがある」といい、ほとんど見えない場合を「骨見えがほぼない」といい、全く見えない場合を「骨見えが全くない」というものとする。
【0058】
そして、この骨見えの評価は、線幅100μm、線間1mmに透明配線層(ITO)をパターニングしたフィルムを太陽光にかざし、目視にて確認することにより行った。
そして、骨見えの評価結果を表1に示す。同表において、骨見えがあるものを×、骨見えがほぼないものを○、骨見えが全くないものを◎とした。
【0059】
表1から分かるように、凹凸形成用粒子2を第1低屈折率層131に添加しなかった試料3、試料8においては、ヘーズが0.5%と小さい。そして、骨見えはあった。
その他の試料については、ヘーズが0.8%以上あり、骨見えはほぼなしか、全くなしであった。
【0060】
また、色差については、骨見えがあった試料3、試料8と同程度もしくはより大きい試料2、5、7、10であっても、骨見えがほぼないという結果であった。つまり、色差が0.1〜5程度の間であれば、骨見えには大きな影響はなく、むしろ、骨見えにはヘーズが大きく影響していると言える。
【0061】
ただし、色差が骨見えに全く影響を与えていないわけではなく、骨見えが全くない試料1、4、6、9が、骨見えがほぼない試料2、5、7、10に比べて色差が小さいことを考慮すると、ヘーズをある程度大きくした(0.8%以上とした)うえで、色差を小さくすることは、骨見えをより無くす効果をもたらすものと考えられる。
【0062】
いずれにしても、本例によれば、視認性を向上させる際に従来は小さくすることが常識であったヘーズを、敢えて小さくしすぎず、ある程度の大きさの値(0.8%以上)に調整することにより、透明配線層が目立たなくなり、透明導電積層体の視認性を高めることができることが分かる。
【符号の説明】
【0063】
1 透明導電積層体
11 透明基材
12 高屈折率層
13 低屈折率層
131 第1低屈折率層
132 第2低屈折率層
133 凹凸面
14 透明配線層
143 凹凸面
2 凹凸形成用粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の透明基材と、
該透明基材の表面に形成され、該透明基材よりも光屈折率の高い高屈折率層と、
該高屈折率層の表面に形成され、該高屈折率層よりも光屈折率の低い低屈折率層と、
該低屈折率層の表面においてパターン形成され、該低屈折率層よりも光屈折率の高い透明配線層とを有し、
上記低屈折率層および上記透明配線層は、それぞれの表面が凹凸面を構成しており、
かつ、上記透明配線層が形成されている領域と形成されていない領域との双方において、ヘーズが0.8〜2.0%であることを特徴とする透明導電積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電積層体において、上記凹凸面を形成するための凹凸形成用粒子が、上記低屈折率層又は上記高屈折率層に配置してあることを特徴とする透明導電積層体。
【請求項3】
請求項2に記載の透明導電積層体において、上記低屈折率層は、上記高屈折率層の表面に形成された第1低屈折率層と、該第1低屈折率層の表面に形成された第2低屈折率層とを有し、該第2低屈折率層は無機材料からなり、上記第1低屈折率層は有機材料に上記凹凸形成用粒子を添加してなることを特徴とする透明導電積層体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の透明導電積層体において、上記凹凸形成用粒子の平均粒径は、5〜80nmであることを特徴とする透明導電積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電積層体において、上記低屈折率層および上記透明配線層は、その表面の中心面平均粗さRaが1〜100nmであることを特徴とする透明導電積層体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明導電積層体において、上記低屈折率層および上記透明配線層は、その表面の十点平均粗さRzが1〜100nmであることを特徴とする透明導電積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107214(P2013−107214A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251658(P2011−251658)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】