説明

透明液状化粧料

【課題】クレンジング力に優れており、洗い流しの際のぬるつき感がなくさっぱりと洗い流せる透明液状化粧料を提供すること。
【解決手段】ポリオキシエチレントリデシルエーテルを含有する事を特徴とする透明液状化粧料であって、ポリオキシエチレントリデシルエーテルが5〜40重量%、イソステアリン酸が0〜35重量%、油剤が40〜75重量%、多価アルコールが0〜19重量%、及び水が1〜10重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明液状化粧料に関し、詳しくはクレンジング力が高く、洗い流しの際のぬるつき感がなくさっぱりと洗い流せる透明液状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品分野において、化粧落としのためのクレンジング化粧料は、形状的にクリーム状、乳液状、液状のものがあり、又、タイプ別には、エマルションタイプ、オイルタイプ、水性タイプがあって、それぞれ使用性に応じて利用されている。しかしながら、オイルを全く配合しないか微量配合した水性タイプのものは、クレンジング後の油性感は少ないがクレンジング力が弱いという問題があった。また油中水型乳化物であるクレンジングクリームやオイルジェルは連続相が油でありメイクとのなじみが良くクレンジング性に優れるが、水で洗い流すことが出来ず使用性に問題があった。そのため、近年ではメイクアップ汚れとの馴染みがよく、かつ容易に水で洗い流すことができる液状のクレンジングオイルが主流となっている。クレンジングオイルは、油性成分と界面活性剤の混合系からなる自己乳化型油性液状組成物である。この様な液状のクレンジングオイルに使用される非イオン活性剤の多くは、ポリグリセリン脂肪酸エステルやイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルやトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルやポリソルベートであった(特許文献1〜3)。従来の液状のクレンジングオイルではクレンジング力を高めるために油を高配合されることが多く、多量の油分を含むクレンジングオイルは塗布時に油っぽさを感じて不快であり、洗い流す際に生じる乳化物も粘性を増しぬるぬるして不快であるなど使用感において十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−249011号公報
【特許文献2】特開2006−176469号公報
【特許文献3】特開2010−001231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記に鑑み、クレンジング力や洗浄後の使用感に優れた透明液状化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、ポリオキシエチレントリデシルエーテルを含有する透明液状化粧料が、クレンジング力や洗浄後の使用感に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明はポリオキシエチレントリデシルエーテルを含有することを特徴とする透明液状化粧料である事を第一の要旨とする。
また、本発明の透明液状化粧料はポリオキシエチレントリデシルエーテルが5〜40重量%、イソステアリン酸が0〜35重量%、油剤が40〜75重量%、多価アルコールが0〜19重量%、及び水が1〜10重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、多量の油分を含むクレンジングオイルと比較しても遜色の無いクレンジング力を有するのみならず、塗布時に感じる油っぽさや、洗い流す際に生じるぬるぬるした不快感などが無い優れた使用感が得られるなどの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例2、比較例3及び比較例4のクレンジング前後の色差を示すグラフである。
【図2】クレンジング前の状態と実施例2、比較例3及び比較例4によるクレンジング後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0009】
本発明で用いられるポリオキシエチレントリデシルエーテルは、トリデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加重合して製造するものであり、エチレンオキサイドの平均付加モル数は特に限定はされないが3〜15モルであり、好ましくは3〜10モルである。付加モル数が3モル未満であれば界面活性剤としての機能不足という問題が生じ、15モルを超える場合は油剤の水への可溶化ができないという問題が生じる。
また、本発明で用いられるポリオキシエチレンドデシルエーテルのHLBは特に限定はされないが5〜15であり、好ましくは8〜14である。HLBが5未満であれば界面活性剤としての機能不足という問題が生じ、15を超える場合は油剤の水への可溶化ができないという問題が生じる。
【0010】
本発明の透明液状化粧料にはポリオキシエチレントリデシルエーテルの他にイソステアリン酸、油剤、多価アルコール、及び水を配合することが好ましい。
【0011】
本発明に使用されるイソステアリン酸は一般的に入手することが可能なものを使用することができる。
【0012】
本発明に使用される油剤は特に限定はされないが、通常、化粧品で利用できる油性成分を主成分とし、それらの1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
それらを例示すると、油剤としては、天然動植物油脂類、及び半合成油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油、動植物や合成の精油成分、脂溶性ビタミン等が挙げられる。具体的には天然動植物油脂類、及び半合成油脂としては、アボガド油、アマニ油アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、月見草油、トウモロコシ油、菜種油、馬脂、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、ラノリン等が挙げられる。炭化水素としては、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、ワセリン等、エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット等が挙げられる。グリセライド油としては、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリテトラデカン酸グリセリル、ジパラメトキシケイ皮酸・モノイソオクチル酸グリセリル等が挙げられる。
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変成シリコーン、アルキル変成シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、脂溶性ビタミンとしてはトコフェロールやその誘導体、レチノールやその誘導体等が挙げられる。
本発明においては前記油剤のうち特に限定はされないが、エステル油が好ましく、特に好ましくは2-エチルヘキサン酸セチルが挙げられる。
【0013】
本発明における多価アルコールとしては、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、トレハロースなどの1種もしくは2種以上が挙げられるが1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
【0014】
本発明の透明液状化粧料の各成分の配合比率は、ポリオキシエチレントリデシルエーテルが5〜40重量%、イソステアリン酸が0〜35重量%、油剤が40〜75重量%、多価アルコールが0〜19重量%、及び水が1〜10重量%である事が好ましいが、より好ましくはポリオキシエチレントリデシルエーテルが15〜30重量%、イソステアリン酸が0〜20重量%、油剤が50〜65重量%、多価アルコールが0〜10重量%、及び水が1〜5重量%である。各成分の配合比率が前記範囲を外れると白濁や分離という問題が生じる。
【0015】
本発明の透明液状化粧料は、前記成分を攪拌しながら水を添加混合するか、もしくは前記成分及び水を全て配合した後混合することで容易に得られる。
【0016】
本発明の透明液状化粧料は、その全体の粘度が25℃で100,000mPa・s以下に調整されている。100,000mPa・sを超えると取扱いに支障が生じる。尚、本発明における粘度はB型粘度計により測定するものである。
【0017】
本発明の透明液状化粧料には、発明の効果を損なわない範囲であれば前記成分のほかに、前記成分以外の界面活性剤、前記成分以外の油剤、前記成分以外の多価アルコール、香料、色素、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、油性増粘剤、抗炎症剤、植物エキスなど通常化粧料に用いられる原料を適宜配合することができる。
【0018】
このようにして得られた本発明の透明液状化粧料はクレンジングリキッド、クレンジングオイル、バスオイル等に利用可能である。
【実施例】
【0019】
以下に本発明の実施例を挙げてさらに詳しい説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書における配合量は、特に断らなければ重量部を表すものとする。
【0020】
〔評価方法〕
(溶液の状態)
目視により溶液の状態を判定した。判定基準は以下の通り。
○:透明
△:微濁
×:白濁・分離
―:評価せず
(安定性)
溶液を5℃、又は50℃で60日間保存した後の溶液の状態を目視により判定した。判定基準は下記の通り。
○:透明
△:微濁
×:白濁・分離
―:評価せず
(クレンジング力)
(1)被験者5名の前腕内側部に4cm×4cmの被検部位をアイライナーでマーキングし、コニカミノルタ製分光測色計「CM-2600d」で枠内を測定した(n=5)。
(2)被検部位に所定の口紅を0.01g均一に塗布し30分乾燥させた。
(3)透明液状化粧料をそれぞれ0.3gで人指し指と中指の2本で10往復させてクレンジングし、水洗した。
(4)被検部位を測色し、(1)の値との色差(ΔE値)を求めた。
評価基準は下記の通り。
○:ΔE<3
×:ΔE≧3
(なじみの速さ)
上記同様口紅のクレンジングを行い、透明液化粧量を0.3gで人指し指と中指の2本で10往復させてクレンジングしている際の口紅とのなじみ方の早さを官能評価した。
評価基準は下記の通り。
○:2〜3往復で口紅となじむ
△:6〜7往復で口紅となじむ
×:10往復しても口紅となじまない
(洗い流し後の感触)
クレンジング後の肌を手で触り、官能評価を行った。評価基準は下記の通り。
○:べたつかない
△:ややべたつく
×:べたつく
【0021】
〔配合成分の詳細〕
下記表1中の配合成分の詳細は以下の通りである。
・モノステアリン酸ポリグリセリル:日光ケミカルズ(株)製NIKKOLdecaglyn1-SV
・モノステアリン酸テトラグリセリル:日光ケミカルズ(株)製NIKKOLtetraglyn1−SV
・ トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20EO):第一工業製薬(株)製ノイゲンGIS320
・ ポリオキシエチレントリデシルエーテル(3.1EO):第一工業製薬(株)製ノイゲンTDS30
・ ポリオキシエチレントリデシルエーテル(6.6EO):第一工業製薬(株)製ノイゲンTDS70
・ ポリオキシエチレントリデシルエーテル(10EO):第一工業製薬(株)製ノイゲンTDS100
・ イソステアリン酸:高級アルコール工業(株)製イソステアリン酸EX
・ エチルへキサン酸ヘキシルデシル(2-エチルヘキサン酸セチル):高級アルコール工業 (株)製ICEH
・ 流動パラフィン:新日本石油(株)製 ハイホワイト70
【0022】
(透明液状化粧料の製造方法)
実施例1
水6重量部と界面活性剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル(3.1EO)6重量部とポリオキシエチレントリデシルエーテル(6.6EO)16重量部を加えて混合した。前記混合物にイソステアリン酸3重量部、油剤としてエチルへキサン酸ヘキシルデシル16重量部、及び流動パラフィン53重量部を加えて均一になるまで混合し実施例1の透明液状化粧料を得た。
実施例2〜10、比較例1,2
実施例1の各成分を表1の配合比率に変更した以外は実施例1と同様に製造し実施例2〜10及び比較例1,2の透明液状化粧料を得た。
透明液状化粧料の処方と評価結果を下記表1に示した。
【0023】
【表1】

上記表1より、ポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例1,2)に替えてポリオキシエチレントリデシルエーテルを使用した場合(実施例1〜10)は、溶液の状態、保存安定性、クレンジング力、使用感に優れた透明液状化粧料が得られた。
実施例6,10より、HLBの高いもの(13.8)を併用しても良好なものが得られた。また、実施例4よりイソステアリン酸を使用しなくても単独でも良好なものが得られた。実施例7〜10より多価アルコールを配合しても安定性や、クレンジング力に問題なく良好なものが得られた。
【0024】
〔口紅に対するクレンジング力の評価〕
(評価方法)
実施例1〜10、比較例1,2の透明液状化粧料を下記のクレンジングオイルに変更した以外は前記のクレンジング力、なじみの速さ及び洗い流し後の感触と同様の評価を行った。評価結果を下記表2および図1に示す。
(クレンジングオイル)
・実施例2
・比較例3:市販のクレンジングオイルA(界面活性剤成分:イソステアリン酸PEG-8グリセリル)
・比較例4:市販品のクレンジングオイルB(界面活性剤成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10、オクタイソノナン酸ポリグリセリル−20、ヘキサカプリル酸ポリグリセリル−20)
【表2】

上記表2および図1に示すように実施例2は市販のクレンジングオイル2種と同等のクレンジング力を示し、さらに、なじみの速さ及び洗い流し後の感触に優れていることが判明した。
【0025】
〔マスカラに対するクレンジング力の評価〕
(評価方法)
(1)スライドガラス上に直径2cmの円に市販マスカラ(ウォータープルーフタイプ)を20mg塗布し、24時間乾燥させた。
(2)(1)に下記のクレンジングオイル0.2gを塗布し、40回マッサージして汚れを浮かせティッシュペーパーでふきとった。
なじみの速さは前記を同じ評価基準により評価した。
クレンジングオイルは口紅に対するクレンジング力の評価に使用したものと同じものを使用した。
評価結果を下記表3及び図2に示す。
【表3】

上記表3及び図2に示すとおり、実施例2は市販のクレンジングオイル2種のどれよりもクレンジング力及びなじみの速さにおいて優れている。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、クレンジングリキッド、クレンジングオイル、バスオイルなどに好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレントリデシルエーテルを含有することを特徴とする透明液状化粧料。
【請求項2】
ポリオキシエチレントリデシルエーテルが5〜40重量%、イソステアリン酸が0〜35重量%、油剤が40〜75重量%、多価アルコールが0〜19重量%、及び水が1〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の透明液状化粧料。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−116810(P2012−116810A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270164(P2010−270164)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】