説明

透水性舗装の滑り防止構造

【課題】透水性を損なうことなく滑り抵抗を安定して十分に発揮できる透水性舗装の滑り防止構造を提供すること。
【解決手段】エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂のうちの少なくとも1で形成した合成樹脂と、ビニロン繊維、ロックウール、ガラス繊維、炭素繊維及びアルミ繊維のうちの少なくとも1つで形成した繊維と、ケイ砂、砕石及びセラミック等の無機系骨材とを混練して滑り止め材を形成する。滑り止め材を開粒度アスファルト層2の実質的に全面を被覆して滑り止め層3を形成する。開粒度アスファルト層2の透水性を損なうことなく、車両の走行による開粒度アスファルト層2の骨材の研磨を防止して、滑り抵抗の低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性を有する舗装に設けられる滑り防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道路の舗装として、表面に溜まった雨水によるハイドロプレーニング現象や、路面の視認性悪化を防止するため、表層に開粒度アスファルト混合物を用いた排水性舗装が普及している。排水性舗装は、開粒度アスファルト混合物を用いることにより、表層の空隙率を高めて透水性を与え、表層を浸透させた雨水を下方の不透水層の表面で集めて排水を行うものである。排水性舗装の表層の空隙は、透水性を与える効果のほか、車両の走行音を低減する効果も奏するため、車両交通量の多い道路における騒音防止の目的としても排水性舗装が採用されている。
【0003】
この種の排水性舗装では、表層の骨材相互の結合力が比較的弱いため、車両の走行に伴って表層から骨材が離脱しやすく、表面に不陸が生じやすいという問題がある。また、車両の走行に伴って土砂の粒子が表層の空隙に蓄積され、透水性や騒音防止効果が低下するいわゆる空隙詰まりの問題がある。これら排水性舗装の不陸や空気詰まりの問題を解決するため、従来、排水性舗装の表面の空隙に、充填材を充填する舗装方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この舗装方法では、0.1〜0.5mmのセラミックの骨材とエポキシ樹脂とを混合してなる充填材を、排水性舗装の表面に塗布した後、鏝で均して充填材の表面に排水性舗装の骨材を露出させる。こうして、図2に示すように、充填材10を、排水性舗装の骨材20の1層分程度の深さに、かつ、排水性舗装の表面のレベルから上に殆ど出ないように充填することにより、排水性舗装の骨材を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3196038号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の舗装方法による舗装は、充填材10の表面に露出させた排水性舗装の骨材20の表面が、車両の走行に伴って研磨されて滑面となり、走行車両のスリップを招来するおそれがある。
【0007】
このような問題を回避するには、排水性舗装の表面の全面を充填材で覆うことが考えられるが、この場合、排水性舗装の骨材相互の隙間を実質的に埋めることとなり、舗装の透水性が大幅に低下するおそれがある。
【0008】
また、特許文献1の舗装方法は、充填材10を迅速かつ十分に硬化させるためには、約20℃以上の比較的高い温度条件下で施工する必要があるので、冬季での施工が困難であるという問題がある。施工時の温度条件が20℃を下回ると、車両の通行に耐える程度の硬さに硬化させる時間が非常に長くなるので、充填材10の施工工事のために長時間にわたって車両の通行を規制する必要がある。したがって、冬季に充填材10の施工を行うのは現実的でない。
【0009】
そこで、本発明の課題は、透水性を損なうことなく滑り抵抗性能を安定して十分に発揮できる透水性舗装の滑り防止構造を提供することにある。また、冬季においても安定して施工できる透水性舗装の滑り防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の透水性舗装の滑り防止構造は、
合成樹脂と繊維とが混合された樹脂繊維組成物と、骨材とを混練してなる滑り止め材を、透水性を有する舗装の表面の実質的に全面に被覆して透水性滑り止め層を形成したことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、透水性滑り止め層は、樹脂繊維組成物の合成樹脂と繊維との間に微小な隙間を形成した状態で、骨材の相互を結合するので、透水性を発揮しつつ十分な強度が得られる。この滑り止め層が、透水性を有する舗装の表面に、この舗装の実質的に全面を覆うように設置されるので、従来の舗装方法のような、舗装の骨材が車両の走行に伴って研磨されることが無い。その結果、舗装の透水性を損なうことなく、車両の走行に伴う滑り抵抗性能の低下を防止できる滑り防止構造が得られる。さらに、上記滑り止め層は、十分な強度を有するので、車両の走行に伴う破損や磨耗を防止できる。また、上記滑り止め層は、透水性を有する舗装の表面に接する部分が、上記舗装の表面の間隙に入り込んだ状態で固定されるので、車両の走行に伴う剥離を効果的に防止できる。
【0012】
本発明において、透水性を有する舗装とは、透水係数が1×10−2(cm/s)以上10×10−2(cm/s)以下の舗装をいい、例えば、開粒度アスファルト混合物で形成された舗装が該当する。この種の舗装に用いられる開粒度アスファルト混合物の骨材は、例えば2.5mm篩の通過率が15wt%以上30wt%以下の粒度である。また、透水性を有する舗装は、少なくとも表面部分が透水性を有する舗装であればよく、下方に水を導く構造は特に限定されない。すなわち、舗装全体の構造が、路盤まで水を浸透させるものであってもよく、あるいは、表面から浸透した水を、路盤よりも上に形成した排水層によって舗装の幅方向に排出するものであってもよい。
【0013】
一実施形態の透水性舗装の滑り防止構造は、上記滑り止め材の樹脂繊維組成物を形成する合成樹脂は、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン形樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも1つである。
【0014】
上記実施形態によれば、樹脂繊維組成物の合成樹脂として、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン形樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも1つを用いることにより、透水性を有して十分な滑り抵抗性能を有する滑り止め層が得られる。なお、樹脂繊維組成物の合成樹脂として、上記エポキシ系樹脂乃至アクリル系樹脂の群から選んだ2以上の複合体を用いてもよい。
【0015】
一実施形態の透水性舗装の滑り防止構造は、上記滑り止め材の樹脂繊維組成物を形成する繊維は、ビニロン繊維、ロックウール、ガラス繊維、炭素繊維及びアルミ繊維のうちの少なくとも1つである。
【0016】
上記実施形態によれば、樹脂繊維組成物の繊維として、ビニロン繊維、ロックウール、ガラス繊維、炭素繊維及びアルミ繊維のうちの少なくとも1つを用いることにより、滑り止め層の透水性を発揮すると共に、強度を効果的に高めることができ、車両の走行に伴う割れや磨耗を効果的に防止できる。
【0017】
一実施形態の透水性舗装の滑り防止構造は、上記滑り止め材の樹脂繊維組成物を形成する繊維は、径が50μm以上100μm以下であり、長さが0.5mm以上12mm以下であり、樹脂繊維組成物に占める割合が0.5wt%以上5wt%以下である。
【0018】
上記実施形態によれば、径が50μm以上100μm以下であり、長さが0.5mm以上12mm以下の繊維を、0.5wt%以上5wt%以下の割合で樹脂繊維組成物に混合することにより、透水性を発揮しながら耐久性の良好な滑り止め層が得られる。
【0019】
一実施形態の透水性舗装の滑り防止構造は、上記樹脂繊維組成物は、ポリアミン系硬化剤が添加されている。
【0020】
上記実施形態によれば、ポリアミン系硬化剤を用いることにより、比較的低温の環境下で樹脂繊維組成物の合成樹脂の硬化を促進することができ、例えば約5℃の温度条件で、舗装の表面に滑り止め層を形成することができる。
【0021】
一実施形態の透水性舗装の滑り防止構造は、上記滑り止め材の骨材は、1mm篩透過率が95%であり、かつ、0.5mm篩透過率が10%以下の粒度に設定されている。
【0022】
上記実施形態によれば、1mm篩透過率が95%であり、かつ、0.5mm篩透過率が10%以下の粒度に設定された骨材を用いることにより、滑り止め層の透水係数を1×10−2(cm/s)以上10×10−2(cm/s)以下とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態としての透水性舗装の滑り防止構造を示す模式断面図である。
【図2】従来の排水性舗装の表面構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の透水性舗装の滑り防止構造の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、実施形態の透水性舗装の滑り防止構造を示す模式断面図である。本実施形態の滑り防止構造1は、透水性を有する舗装としての開粒度アスファルト層2の表面に、滑り止め層3が配置されて構成されている。
【0026】
開粒度アスファルト層2は、2.5mm以下の粒径のふるい通過率が約20wt%であって細大粒径が10mmの骨材が用いられて、5×10−2(cm/s)の透水係数を有する。この開粒度アスファルト層2は、図示しない路盤及び不透水層の上に設置され、降雨の際、雨水を開粒度アスファルト層2に浸透させて下方へ導き、不透水層の表面に集めて舗装の両側へ排水する、いわゆる排水性舗装を構成している。
【0027】
滑り止め層3は、合成樹脂と繊維とが混合された樹脂繊維組成物と、骨材とを混練してなる滑り止め材により、開粒度アスファルト層2の実質的に全面を被覆して形成されている。
【0028】
樹脂繊維組成物の合成樹脂は、熱硬化性の合成樹脂を用いることができ、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂を用いることができる。合成樹脂は、主剤に硬化剤を混合して硬化させる2液型のものを用いるのが、1液型よりも硬化時間の調節が容易である点で好ましい。
【0029】
ここで、エポキシ系樹脂としては、ビスフェノ−ルA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルF型液状エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルAD型液状エポキシ樹脂等のビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート等のグリシジルエステル型液状エポキシ樹脂、アニリンのグリシジルエ−テル、o−トルイジンのグリシジルエ−テル、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型液状エポキシ樹脂、1,6ヘキサメチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、ネオペンチルグリコ−ルジグリシジルエ−テル、ポリエチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、ポリプロピレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、グリセリンポリグリシジルエ−テル、トリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエ−テルなどのポリグリシジルエ−テル型液状エポキシ樹脂を用いることができる。
【0030】
樹脂繊維組成物の合成樹脂にエポキシ系樹脂を用いる場合、硬化剤として、脂肪族アミン、芳香族アミン、変性アミン、ポリアミド樹脂、3級及び2級アミン、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物類を用いることができる。脂肪族アミン硬化剤として、ジエチルトリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。また、芳香族アミン硬化剤として、メタフェニレンジアミン、ジアミノフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。また、変性アミン硬化剤として、ポリアミンエポキシ樹脂アダクト、ケチミン等が挙げられ、ポリアミンエポキシ樹脂アダクトとしては、例えばスリーボンド株式会社製Three Bond 2102、2131B等を用いることができる。また、ポリアミド樹脂硬化剤として、化合物分子中に反応性の一級及び/又は二級のアミンを含むポリアミドアミン等が挙げられ、スリーボンド株式会社製Three Bond 2105、Three Bond 2105C、Three Bond 2105F、Three Bond 2107等を用いることができる。また、3級及び2級アミン硬化剤として、ピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。また、イミダゾール類硬化剤として、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1-シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、エポキシ−イミダゾールアダクト等が挙げられる。また、ポリメルカプタン硬化剤として、液状ポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂等が挙げられ、液状ポリメルカプタンとしてスリーボンド株式会社製Three Bond 2086B、ポリスルフィド樹脂としてスリーボンド株式会社製Three Bond 2104を用いることができる。また、酸無水物類硬化剤として、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等が挙げられ、エチレングリコールビストリメリテートとして新日本理化株式会社製リカレジンTMEG,グリセロールトリメリテートとして新日本理化株式会社製リカレジンTMTA、テトラヒドロ無水フタル酸として新日本理化株式会社製リカシッドTH、エチルテトラヒドロ無水フタル酸としてDIC株式会社製HN−2200又はエピクロンB−570、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸として日本化薬株式会社製カヤハードCD、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸として日本化薬株式会社製カヤハードMCD又は日立化成工業株式会社製無水メチルハイミック酸MHAC−P若しくは無水メチルハイミック酸MHAC−L、ヘキサヒドロ無水フタル酸として新日本理化株式会社製シリカッドHH、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸として新日本理化株式会社製シリカッドMH−700又はDIC株式会社製エピクロンB−650若しくはHN−5500、無水コハク酸として新日本理化株式会社製シリカッドSA、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物としてDIC株式会社製エピクロンEXB−4400、クロレンド酸無水物として日本化薬株式会社製カヤハードCLA、ポリアゼライン酸無水物として新日本理化株式会社製シリカッドPAZ−90を用いることができる。
【0031】
樹脂繊維組成物の合成樹脂としてビニルエステル系樹脂を用いる場合、昭和電工株式会社製リポキシ、DIC株式会社製ディックライト、日本ユピカ株式会社製ネオポール、三井化学株式会社製エスター等を用いることができる。
【0032】
樹脂繊維組成物の合成樹脂にビニルエステル系樹脂を用いる場合、硬化剤として、有機過酸化物が挙げられ、有機過酸化物として日本化薬株式会社製カヤメック又は硬化剤328EMを用いることができる。
【0033】
樹脂繊維組成物の合成樹脂として不飽和ポリエステル系樹脂を用いる場合、不飽和ポリエステル系樹脂として、イソフタル酸系不飽和ポリエステル、ビスフェノール系不飽和ポリエステルが挙げられ、イソフタル酸系不飽和ポリエステルとして日本ユピカ株式会社製ユピカ4516P等を用いることができる。
【0034】
樹脂繊維組成物の合成樹脂に不飽和ポリエステル系樹脂を用いる場合、硬化剤として、有機過酸化物が挙げられ、有機過酸化物として日本油脂株式会社製パーメック又は化薬アクゾ株式会社製カヤメックを用いることができる。
【0035】
樹脂繊維組成物の合成樹脂としてウレタン形樹脂及びアクリル系樹脂を用いる場合、ウレタン形樹脂及びアクリル系樹脂として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオールは日本ポリウレタン工業株式会社から、ポリエステルポリオールは三井化学株式会社から、ポリカーボネートポリオールはDIC株式会社から入手可能である。
【0036】
樹脂繊維組成物の合成樹脂にウレタン形樹脂及びアクリル系樹脂を用いる場合、硬化剤として、トリレンジイソシアネートのプレポリマー、ジフェニルメタンジイソシアネートのプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのプレポリマー等が挙げられ、トリレンジイソシアネートのプレポリマーは日本ポリウレタン工業株式会社から、ジフェニルメタンジイソシアネートのプレポリマーは三井化学株式会社から、ヘキサメチレンジイソシアネートのプレポリマーはDIC株式会社から入手可能である。
【0037】
また、滑り止め材の樹脂繊維組成物を形成する繊維は、無機材料で形成する場合、合成樹脂との付着力を高めるため、合成樹脂で被覆されているのが好ましい。繊維を被覆する合成樹脂は、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂以外では、エポキシ系、ビニルエステル系等の樹脂を用いることができる。また、繊維を被覆する合成樹脂は、滑り止め材を構成する合成樹脂と異なるものでも、同一のものでもよい。
【0038】
滑り止め材の樹脂繊維組成物を形成する繊維は、ビニロン繊維、ロックウール、ガラス繊維、炭素繊維及びアルミ繊維のうちの少なくとも1つで形成することができる。
【0039】
樹脂繊維組成物を形成する繊維は、径が50μm以上100μm以下であり、長さが0.5mm以上12mm以下である。塵の発生防止や、強度の確保や、透水性の確保や、混練及び敷き均し作業の効率化の観点から、骨材の最大粒径が1mmの場合に、繊維の長さが0.5mm以上1mm以下であるのが好ましい。
【0040】
上記繊維の樹脂繊維組成物に対する混合量は、樹脂繊維組成物の全重量に対して、0.5wt%以上5wt%以下の割合に設定する。好ましくは、十分な耐久性が得られると共に、適切な粘性を確保する点で、0.5wt%以上3wt%以下である。
【0041】
滑り止め材を形成する骨材は、滑り防止効果を高めるため、1mm篩透過率が95%であり、かつ、0.5mm篩透過率が10%以下の粒度のものを用いることができる。骨材としては、ケイ砂、砕石及びセラミック等の無機系骨材を用いることができる。ここで、滑り止め材によって形成される滑り止め層は、結合材である合成樹脂及び繊維の混合体に形成される微細な空隙により、透水性を発揮するので、アスファルト混合材を用いて透水性を得る場合のように、骨材の粒度分布を開粒度に設定して骨材相互間の空隙を大きくする必要がない。したがって、粒度分布が密粒度の骨材を用いることができる。また、骨材相互間の空隙を小さく設定できるので、空隙詰まりの問題を効果的に防止できる。
【0042】
上記滑り止め材で形成された滑り止め層3は、開粒度アスファルト層2の実質的に全面を被覆するので、従来の舗装方法のような、開粒度アスファルト層2の骨材が車両の走行に伴って研磨されることが無い。その結果、この滑り防止構造1は、開粒度アスファルト層2の透水性を損なうことなく、車両の走行に伴う滑り抵抗性能の低下を防止できる。
【0043】
さらに、上記滑り止め層3は、十分な強度を有するので、車両の走行に伴う破損や磨耗を防止できる。また、上記滑り止め層3は、開粒度アスファルト層2の表面に接する部分が、開粒度アスファルト層2の表面の間隙に入り込んだ状態で固定される。詳しくは、開粒度アスファルト層2の表面の間隙に、繊維が食い込んだ状態で合成樹脂が硬化するので、滑り止め層3を開粒度アスファルト層2の表面に強固に固定することができる。その結果、滑り止め層3の剥離を効果的に防止できる。
【0044】
上記滑り止め層3の厚みは、骨材の粒径に応じて種々の値に設定できるが、開粒度アスファルト層2の表面を被覆するため、少なくとも最大粒径に相当する値に設定するのが好ましい。また、滑り止め層3の強度を確保する点から、厚みを3mm以上に設定するのが好ましい。
【0045】
本発明の透水性舗装の滑り防止構造は、上記合成樹脂により繊維と骨材を固定して構成されるので、開粒度アスファルト層2の表面を被覆して3mm以上の厚みに敷設しても、割れや摩耗を生じることのない十分な強度を有する。
【0046】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂(新日鉄化学社製YD128シリーズ)100重量部に、ビニロン繊維(クラレ社製ケービック)1〜3重量部を混合し、硬化剤として変性ポリオキシポリアミンとモノアルキルアミンの混合物(新日鉄化学社製LEX1152シリーズ)50重量部を添加して攪拌して樹脂繊維組成物を形成した。これに、骨材として酸化マグネシウム及び酸化アルミニウム粒(美州興産社製セラクロンB)2000重量部を混合し、モルタルミキサーにて攪拌し、滑り止め材を得た。上記ビニロン繊維は、平均径が80μmであり、平均長さは0.5mmである。上記酸化マグネシウム及び酸化アルミニウム粒は、1mm篩通過率が95%、かつ、0.8mm篩透過率が10%以下の粒度分布である。
【0048】
上記滑り止め材を、既存の排水性舗装の表面に、3mmの目標仕上げ厚さで敷き均し、コンバインドローラにて転圧を行い、養生を行って滑り防止構造を得た。
【0049】
(比較例)
ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製EP−827)100重量部に、硬化剤として変性ポリオキシポリアミンとモノアルキルアミンの混合物(大都産業社製ダイトクラールJ−5409B)50重量部を添加し、攪拌して樹脂組成物を形成した。これに、骨材として酸化マグネシウム及び酸化アルミニウム粒(美州興産社製セラクロンB)を混合し、攪拌して、比較例の滑り止め材を得た。上記酸化マグネシウム及び酸化アルミニウム粒は、最大粒径が1mmであり、0.4mm篩通過率が8%、0.8mm篩透過率が95%である。
【0050】
上記比較例の滑り止め材を、既存の排水性舗装の表面に、3mmの目標仕上げ厚さで敷き均し、タイヤローラにて転圧を行った後、排水性舗装の表面レベルから上の部分を削り取った。この後、養生を行って、比較例の排水性舗装の表面構造を得た。
【0051】
上記実施例1の滑り防止構造と、比較例の表面構造について、滑り抵抗性能の試験を行った。滑り抵抗性能は、BPN値とDFT値の両方により評価した。BPN値は、日本道路協会編の舗装試験法便覧の「舗装路面のすべり抵抗の測定方法」に準拠するスキッドレジスターによるすべり抵抗値である。DFT値は、日本道路協会編の舗装試験法便覧別冊の「暫定試験方法」に準拠する回転式すべり抵抗測定器による動的摩擦係数であり、60km/Hrの時のwetμ値である。滑り抵抗の試験結果は、表1に示すとおりである。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から分かるように、実施例1の滑り防止構造は、従来の表面構造と比較して、十分な滑り抵抗性能を有する。
【0054】
次に、実施例1の滑り防止構造と比較例の表面構造について、耐久性を評価するため、テーバー摩耗試験を行った。テーバー摩耗試験は、JIS K7204に準拠し、100mm×100mm×5mmの板状供試体に、9.8Nの荷重を作用させたH22摩耗輪を毎分60回転の回転数で1000回転接触させた。摩擦強度は、板状供試体の質量の減少量により評価する。テーバー摩耗試験の結果は、表3に示すとおりである。
【0055】
【表2】

【0056】
表2から分かるように、実施例1の滑り防止構造は、比較例の表面構造と比較して、摩耗強度が高く、十分な耐久性を有する。したがって、比較例の表面構造よりも、長期間にわたって滑り止め効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 滑り防止構造
2 開粒度アスファルト層
3 滑り止め層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂と繊維とが混合された樹脂繊維組成物と、骨材とを混練してなる滑り止め材を、透水性を有する舗装の表面の実質的に全面に被覆して透水性滑り止め層を形成したことを特徴とする透水性舗装の滑り防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の透水性舗装の滑り防止構造において、
上記滑り止め材の樹脂繊維組成物を形成する合成樹脂は、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン形樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも1つであることを特徴とする透水性舗装の滑り防止構造。
【請求項3】
請求項1に記載の透水性舗装の滑り防止構造において、
上記滑り止め材の樹脂繊維組成物を形成する繊維は、ビニロン繊維、ロックウール、ガラス繊維、炭素繊維及びアルミ繊維のうちの少なくとも1つであることを特徴とする透水性舗装の滑り防止構造。
【請求項4】
請求項1に記載の透水性舗装の滑り防止構造において、
上記滑り止め材の樹脂繊維組成物を形成する繊維は、径が50μm以上100μm以下であり、長さが0.5mm以上12mm以下であり、樹脂繊維組成物に占める割合が0.5wt%以上5wt%以下であることを特徴とする透水性舗装の滑り防止構造。
【請求項5】
請求項1に記載の透水性舗装の滑り防止構造において、
上記樹脂繊維組成物は、ポリアミン系硬化剤が添加されていることを特徴とする透水性舗装の滑り防止構造。
【請求項6】
請求項1に記載の透水性舗装の滑り防止構造において、
上記滑り止め材の骨材は、1mm篩透過率が95%であり、かつ、0.5mm篩透過率が10%以下の粒度に設定されていることを特徴とする透水性舗装の滑り防止構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−127070(P2012−127070A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277625(P2010−277625)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(508061549)阪神高速技術株式会社 (20)
【出願人】(510329062)株式会社デルフィーニ・ジャパン (1)
【Fターム(参考)】