説明

透湿シートおよびその製造方法

【課題】ピンホールの発生を抑制し、効率よく透湿シートを製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂25〜55質量%、及び無機充填剤45〜75質量%を含むポリオレフィン系樹脂成分100質量部に対して、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステル1〜30質量部と、脂肪酸またはその金属塩0.5〜5質量部とを含む樹脂組成物を成形してなるシートを、1軸または2軸延伸法で、面積を2倍以上に延伸処理し、坪量を10〜25g/mとする透湿シートの製造方法であって、無機充填剤の比表面積S(cm/g)及び含有量A(質量%)と、脂肪酸またはその金属塩の含有量B(質量%)が
180万>(A×S)÷B>140万
を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液不透過性であるが水蒸気透過性である透湿シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂からなる液不透過性で且つ水蒸気透過性の透湿シートが種々知られている。この種の透湿シートは、ポリオレフィン樹脂と無機充填剤とを主とした組成物からなるシート(フィルム)を一軸又は二軸方向に延伸することで、シートに微細な透孔が形成され、透湿性が付与される。例えば、特許文献1には、無機充填剤として、比表面積が16000〜24000cm/gであるものをポリオレフィン系樹脂100質量部に対して100〜300質量部用いると、透湿性が高く耐水性も高く、且つ十分な強度のシートが得られることが記載されている。
【0003】
しかし、上記の透湿シートを製造する場合、従来の製造方法では、製造されたシートに100μm〜1cm程度の微小な孔径のピンホールが発生する場合があった。このピンホールが発生したシートは、その部分に孔が開いているため、例えばオムツなど吸収性部材の防漏シートに用いることができない。製造されるシートの坪量が一般に30g/mを超えるものであると、シートの厚みが大きくなり、実質的に上記のピンホールの課題は発生しない。しかし、坪量が大きすぎると、柔軟性や透湿性が低下することがある。そのため、高い柔軟性や透湿性が求められる透湿シートの製造工程においては、ピンホールの有る部分を排出するためのセンサー用検知マークを取り付けたり、ピンホールの有るシートやオムツを廃棄する必要があった。このことは、生産性を低下させ、生産コストの増大の原因となっていた。
【特許文献1】特開2004−99665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はピンホールの発生を抑制し、効率よく透湿シートを製造する方法を提供することを目的とするものである。また、ピンホール発生を抑制した液不透過性透湿シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、原材料中の無機充填剤の比表面積及び添加量と、前記脂肪酸またはその金属塩の含有量が成形時のピンホールの発生に関係し、これらのファクターが特定の関係にあるとき前記目的を達成し得ることを見出した。
【0006】
本発明は前記知見に基づきなされたもので、ポリオレフィン樹脂25〜55質量%、及び無機充填剤45〜75質量%を含むポリオレフィン系樹脂成分100質量部に対して、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステル1〜30質量部と、脂肪酸またはその金属塩0.5〜5質量部とを含む組成物を成形してなるシートを、1軸または2軸延伸法で、面積を2倍以上に延伸処理し、坪量を10〜25g/mとする透湿シートの製造方法であって、前記無機充填剤の比表面積及び含有量と、前記脂肪酸またはその金属塩の含有量が下記関係式を満たす透湿シートの製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
180万>(A×S)÷B>140万
(式中、Aは無機充填剤の前記組成物中の含有量(質量%)を表し、Sは無機充填剤の比表面積(cm/g)を表し、Bは脂肪酸またはその金属塩の前記組成物中の含有量(質量%)を表す。)
また、本発明は上記の製造方法で生産された透湿シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透湿シートの製造方法においては、ピンホールの発生を抑制でき、この結果、効率よく安価に透湿シートを生産することができる。
また、本発明の透湿シートは、ピンホールの発生が著しく低減され液不透過性なのでオムツなど吸収性部材の防漏シートとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の透湿シートの製造方法は、ポリオレフィン樹脂25〜55質量%、及び無機充填剤45〜75質量%を含むポリオレフィン系樹脂成分100質量部に対して、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステル1〜30質量部と、脂肪酸またはその金属塩0.5〜5質量部とを含む樹脂組成物を成形してなるシートを、1軸または2軸延伸法で、面積を2倍以上に延伸処理し、坪量を10〜25g/mとするものであって、前記無機充填剤の比表面積及び含有量と、前記脂肪酸またはその金属塩の含有量が下記関係式を満たすものである。
180万>(A×S)÷B>140万
(式中、Aは無機充填剤の樹脂組成物中の含有量(質量%)を表し、Sは無機充填剤の比表面積(cm/g)を表し、Bは脂肪酸またはその金属塩の樹脂組成物中の含有量(質量%)を表す。)。
【0009】
本発明においては、ポリオレフィン樹脂及び無機充填剤を含むポリオレフィン系樹脂成分100質量部と、特定のポリエステル1〜30質量部と、脂肪酸またはその金属塩0.5〜5質量部とを含む樹脂組成物を原料とするものである。
【0010】
本発明において用いられるポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のモノオレフィン重合体及び共重合体を主成分とするものをいい、例えば線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの混合物が挙げられる。なかでもLLDPEがしなやかで強靭であるため好ましい。
【0011】
また、メルトインデックス(以下、MIともいう)が1〜5g/10min、密度が0.920〜0.935g/cmのLLDPEと、MIが6〜15g/10min、密度が0.910〜0.930g/cmのLDPEを、LLDPEの配合量を80〜99質量%、LDPEの配合量を1〜20質量%とする混合物を用いることも、シートの成形性が良好で、幅方向及び流れ方向の厚みムラが少なく、外観上の見栄えが良好で、透湿性と強度、柔軟性のバランスが優れた透湿シートすることができるので好ましい。
【0012】
本発明において、ポリオレフィン樹脂と共に用いられる無機充填剤は、本発明の透湿シートを多孔質にして透湿性を付与するために用いられるものである。無機充填剤としては例えば、炭酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、カーボンブラック、アルミニウム粉、鉄粉などの粉粒体が挙げられる。これらは一種又は二種以上を併用できる。各種無機充填剤のうち、炭酸カルシウムや硫酸バリウムを用いることが好ましく、特に炭酸カルシウムを用いることが好ましい。得られる透湿シートの強度確保や製造時のシート破れの防止の点から、これらの無機充填剤はその平均粒径が0.3〜8μmで最大粒径が20μm以下であることが好ましく、平均粒径が0.5〜5μmで最大粒径が15μm以下であることが更に好ましい。
【0013】
本発明において、無機充填剤の比表面積が、好ましくは20000〜22000cm/g、さらに好ましくは20500〜22000cm/gである。比表面積が大きすぎても、小さすぎても、透湿性が高く耐水性も高いシート、即ち、緻密な孔が多数開いていて液がにじみにくく、且つ十分な強度のシートを得ることができない。本発明において、無機充填剤の比表面積は、温度23℃、湿度50%の測定環境において、ブレーン法(JIS R 5201に準拠)により測定する。例えば、測定器は筒井理化化学器械株式会社のブレーン空気透過粉末度測定器を用いて測定できる。標準資料は(社)セメント協会・研究所の粉末度測定用標準物質102Kを用い、濾紙は筒井理化化学器械株式会社のブレーン法用濾紙No.5−Aを用いる。測定試料は、分量2.15g、比重ρを2.7g/cm、ポロシチーeを0.5とし、JIS R 5201記載の一般の式により算出する。測定サンプルとして500gの無機充填剤を用意し、そこから3つの測定試料(1試料は2.15g)についてそれぞれ比表面積を測定し、各試料の測定値の平均値を無機充填剤の比表面積とした。
【0014】
本発明において、用いる無機充填剤で比表面積の分布が狭いことが、ピンホールの発生を抑えることができるので好ましい。例えば、上記のブレーン法による比表面積の測定において、3つの測定試料の測定値のうち最大値をMAX、最小値をMINとすると、その差MAX−MINのR値が、好ましくは500cm/g以内、さらに好ましくは300cm/g以内である。
【0015】
本発明で用いられる無機充填剤は、予め分散剤で表面処理した処理品でも良いし、未処理品でも良いが、処理品である場合は、未処理品より、より少ない含有量で透湿シートのピンホールの発生を抑制できるので好ましい。無機充填剤の表面処理剤としては、無機充填剤の表面を疎水化できるものが好ましく、例えば、後述する脂肪酸またはその金属塩が上げられる。
【0016】
無機充填剤と、ポリオレフィン樹脂との含有比は、ポリオレフィン樹脂:無機充填剤(質量比)で25:75〜75:45、好ましくは30:70〜60:40、更に好ましくは35:65〜45:55である無機充填剤の量がポリオレフィン樹脂に対して少なすぎると得られるシートの透湿性が不十分となってしまい、多すぎるとシートの耐水性が低下し、液がにじみやすくなり、更には、強度が低下し、また、成形性も悪くなってしまう。
【0017】
本発明で用いられる樹脂組成物には、上記の無機充填剤を均一に分散させることを目的として、脂肪酸またはその金属塩を含有させる。本発明に用いられる脂肪酸またはその金属塩としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。脂肪酸またはその金属塩は、上記ポリオレフィン系樹脂成分100質量部に対して0.5〜5質量部、好ましくは0.5〜4.0質量部、さらに好ましくは1.0〜3.0質量部含有されるものである。
【0018】
本発明においては、上記無機充填剤の樹脂組成物中の含有量(質量%)をA、無機充填剤の比表面積(cm/g)をS、脂肪酸またはその金属塩の樹脂組成物中の含有量(質量%)Bとして場合、下記式を満たすものである。
180万>(A×S)÷B>140万
上記(A×S)÷Bは、
180万>(A×S)÷B>145万
を満たすことが好ましく、
180万>(A×S)÷B>150万
を満たすことがさらに好ましい。
【0019】
本発明においては、脂肪酸等と無機充填材の含有量及びその比表面積が上記の関係式を満たすことで、製造されるシートのピンホールを減少させる理由については、まだ定かではないが、次のように考えられる。すなわち、シート成形中の樹脂の溶融粘度が変動すると、冷却硬化前の樹脂が安定せずに、揺れや振動が発生し、この揺れや振動により、溶融状態のシートが変形するとその部分に孔が開きピンホールになる。これに対し、本発明では、上記式を満たすことで、無機充填材表面に吸着する脂肪酸等の量及び樹脂中に残存する脂肪酸の等の量が適正範囲にコントロールされ、シート(フィルム)成形中(例えば、後述するインフレーション成形のための溶融物としたとき)、溶融状態の組成物の溶融粘度が一定に管理され、冷却硬化前の樹脂の揺れや振動の現象を防ぐことでピンホールを減少させるものと推定される。
【0020】
本発明で用いられる樹脂組成物においては、前述したポリオレフィン系樹脂、無機充填剤、及び脂肪酸またはその金属塩に加えて、しなやかな風合いを与え、延伸性を向上させるために、特定のポリエステルを配合する。このポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステルである。このポリエステルを配合することで、得られる透湿シートはしなやかな風合いとなる。また、延伸性が良好となるため、均一にムラなく白化し、外観上見栄えの良いものとなり、微小開孔が多数開くことで透湿性が得られる。このポリエステルを構成する各成分の組み合わせは、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤との親和性のバランスから、ポリエステル一定質量中のエステル基数及び炭化水素鎖の分岐度を考慮して選択される。
【0021】
前記ポリエステルにおける一塩基酸としては、炭素数14〜22の長鎖炭化水素のモノカルボン酸等が用いられる。多塩基酸としてはジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等が用いられる。一価アルコールとしては炭素数12〜22の長鎖炭化水素のモノアルコール等が用いられる。多価アルコールとしてはジオール類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等が用いられる。一塩基酸の炭素数が12以下、又は一価アルコールの炭素数が10以下の場合、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤への親和性のバランスがずれ、フィルム成形時にポリエステルが部分的に集中して延伸時にむらが生じたり、タテ裂け強度が低下することがある。
【0022】
前記ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られるポリエステルであり、末端がカルボン酸の場合、その大部分がステアリルアルコール、オレイルアルコール、ゲルベアルコール等の長鎖炭化水素のモノアルコールでエステル化されていることが好ましい。末端がアルコールの場合、その大部分がステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の長鎖炭化水素のモノカルボン酸でエステル化された末端封鎖ポリエステルであることが好ましい。しかし、これらの場合でも全ての末端が封鎖されている必要はない。エステル構成成分として分岐の酸又はアルコールを含んだエステルは更に好ましい。
【0023】
好ましい具体的なポリエステルの例は、ジエチレングリコールとダイマー酸とのポリエステルの両末端のカルボン酸又はアルコールをステアリルアルコール又はステアリン酸で部分的に又は全部を封鎖したポリエステル、1,3−ブタンジオールとアジピン酸とのポリエステルの両末端をヒドロキシステアリン酸で封鎖したポリエステル、トリメチロールプロパン−アジピン酸−ステアリン酸からなるヘキサエステル、ペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアリン酸からなるオクタエステル、ジペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアリン酸からなるドデカエステル、前記ポリエステルの構成成分であるアジピン酸の代わりにダイマー酸又は水添ダイマー酸を用いたポリエステル、及びステアリン酸の代わりにイソステアリン酸を用いたポリエステル等である。
【0024】
前記ポリエステルは、前記ポリオレフィン系樹脂成分100質量部に対して1〜30質量部、特に2〜20質量部配合されることが、しなやかな風合い、延伸性の向上の点から好ましい。
【0025】
本発明で用いられる樹脂組成物には、前述した各成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを配合してもよい。
【0026】
本発明の透湿シートの製造方法においては、上記の樹脂組成物を用いて、例えば、以下のように透湿シートを製造する。
上記の樹脂組成物を構成する各成分を、ヘンシェルミキサやスーパーミキサを用いて予備混合した後、一軸又は二軸押出機で混練して溶融状態の樹脂組成物とする。
次に、溶融状態の樹脂組成物を、成形機を用いて成膜しフィルムを得る。このとき、溶融状態の樹脂の粘度は、メルトインデックス(MI)は、10g/10min以下であることが好ましく、9g/10min以下であることがさらに好ましい。なお、MIはASTM D−1238−57T(E)に規定される方法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件下に測定される。成膜時の温度は、特に制限するものではないが140〜200℃が好ましい。また、フィルムの坪量は20〜70g/mに成形することが好ましい。
【0027】
成形機としては、溶融した樹脂組成物をフィルムにするには、通常用いられているTダイ成形又はインフレーション成形を用いることができる。得られたフィルムを一軸又は二軸延伸して、樹脂と無機充填剤との界面剥離を生じさせ多孔質化し、本発明の透湿シートを得る。延伸にはロール法やテンター法が用いられる。延伸倍率としては、2倍以上であり、好ましくは2〜4倍であり、とりわけ2.0〜3.5倍延伸することが好ましい。
【0028】
本発明の透湿シートはその透湿度が好ましくは3600〜8400g/(m・24h)、より好ましくは4000〜8400g/(m・24h)、更に好ましくは5000〜8400g/(m・24h)となる。
【0029】
本発明の透湿シートはその坪量が10〜25g/mである。後述するように、その一面に不織布などの繊維シートと貼り合わせた複合シートの形態においては、透湿シートの坪量は、好ましくは15〜25g/mであり、更に好ましくは17〜23g/mである。坪量が少なすぎるとシートの強度が低下し、搬送性が問題となったり、また、穴あきによる耐水性の低下が問題となってしまう。また、坪量が多すぎると柔軟性が低下したり、透湿性が低下したシートとなってしまう。
【0030】
本発明の透湿シートは、例えば衛生材料、医療用材料、衣料用材料などとして用いられる。また、本発明の透湿シートは、その一面に不織布などの繊維シートと貼り合わせた複合シートの形態で前記の材料として用いることもできる。特に、本発明の透湿シートは、水を通すピンホールを抑制する一方、液は通さないが水蒸気は通す透湿性の微細な透孔を緻密に存在させせることができるので、これをそのまま、或いは繊維シートと貼り合わせた複合シートとして、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の構成材料として用いると、着装内の湿度上昇を防止することができ、着用者の肌にかぶれが発生することを効果的に防止することができる。これらの吸収性物品は一般に液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シートおよび両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を備えており、本発明の透湿シート又はこれを繊維シートと貼り合わせてなる複合シートは、例えば、前記裏面シートとして用いられる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、以下の例中、特に断らない限り「部」は「質量部」を意味する。
【0032】
〔実施例1〜6及び比較例1〜3〕
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の調製
以下の表1に示す材料を表1に示す組成で配合した原材料を、ヘンシェルミキサで予備混合し、次いで二軸押出機で過熱混合し、溶融状態の樹脂組成物のマスターバッチ(MI=8)を製造した。二軸押出機の設定温度は180℃とした。
【0033】
(2)透湿シートの成形
このマスターバッチを用い、インフレーション成形装置で、シートを成形した。サーキュラーダイスの設定温度は160℃とし、ブロー比は2.5とした。
得られたシートを一軸延伸機を用いてシートの流れ方向に2.6倍に延伸し、坪量20g/mの透湿シートを製造した。延伸温度は70℃、アニール温度は80℃とした。またアニールでの戻し率は10%とした。
また、実施例及び比較例の透湿シートはJIS Z 0208に準じ、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHの環境下で、測定された透湿度が、いずれも約2.6g/100cm・hであった。また、JIS K 7128−2 エルメンドルフ引裂法に準じて測定した機械方向(MD)の引裂強度は、いずれも約9cNを示した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示す各材料は以下のとおりである。
(1)ポリオレフィン樹脂:(株)プライムポリマー製、「UZ2520F(商品名)」
(2)炭酸カルシウムA:三共精粉(株)製、「エスカロン♯2000(商品名)」を分級処理したもの(平均粒径1μm)
比表面積分布のMAX−MIN=300cm/g
(3)炭酸カルシウムB:三共精粉(株)製、「エスカロン♯2000(商品名)」
比表面積分布のMAX−MIN=650cm/g
(4)ポリエステル:花王(株)製、「エキセパールTM20−AS(商品名)」
(5)脂肪酸:花王(株)製、「ルナックS−40(商品名)」
また、表1において、「部」は質量部を表す。また、比表面積の単位はcm/gである。
また、式1は次のとおりである。
(a×s)÷b (式1)
ただし、a:樹脂組成物中の炭酸カルシウムの配合量(質量%)、s:炭酸カルシウムの比表面積(cm/g)、b:樹脂組成物中の脂肪酸の配合量(質量%)
【0036】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた透湿シートについて、透湿シート10000mごとにピンホールの有無でカウントし、ピンホール有りの数を有りの数と無しの数で除することにより液透過性のピンホール(孔径0.2mm以上)発生率を測定し、生産性を◎、○、△、×の4段階で示した。△以上のものが実用上、問題なく生産できるレベルである。これらの結果を以下の表2に示す。表2中ピンホール発生率は、透湿シートを10000mあたりのピンホール発生率を示すものである。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示す結果から明らかなように、実施例の透湿シート(本発明品)は、ピンホールの発生率がいずれも50%以下であり、生産性に優れていることが判る。これに対して比較例の透湿シートでは、ピンホールの発生率が50%を超えるものであり、工業的生産の上で、問題となるレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂25〜55質量%、及び無機充填剤45〜75質量%を含むポリオレフィン系樹脂成分100質量部に対して、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステル1〜30質量部と、脂肪酸またはその金属塩0.5〜5質量部とを含む樹脂組成物を成形してなるシートを、1軸または2軸延伸法で、面積を2倍以上に延伸処理し、坪量を10〜25g/mとする透湿シートの製造方法であって、前記無機充填剤の比表面積及び含有量と、前記脂肪酸またはその金属塩の含有量が下記関係式を満たすことを特徴とする透湿シートの製造方法。
180万>(A×S)÷B>140万
(式中、Aは無機充填剤の樹脂組成物中の含有量(質量%)を表し、Sは無機充填剤の比表面積(cm/g)を表し、Bは脂肪酸またはその金属塩の樹脂組成物中の含有量(質量%)を表す。)
【請求項2】
前記無機充填剤の比表面積における最大値と最小値との差が500cm/g以内であることを特徴とする請求項1記載の透湿シートの製造方法。
【請求項3】
前記無機充填剤の比表面積が20000〜22000cm/gであることを特徴とする請求項1または2記載の透湿シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で製造された透湿シート。

【公開番号】特開2008−163153(P2008−163153A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353240(P2006−353240)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】