透磁率測定装置及びそれを用いた透磁率測定方法
【課題】被測定物の透磁率テンソルの非対角成分を含む各成分を、容易に切り分けて測定することができる透磁率測定装置及び透磁率測定方法を提供すること。
【解決手段】この透磁率測定装置1は、被測定物Aに磁界を印加して被測定物Aの透磁率を測定するための透磁率測定装置であって、Y軸方向に交流磁界Hを発生させる磁界発生源3と、被測定物Aを内部に固定可能なループ状のコイル11を含み、コイル11のループ面14の法線とY軸方向との成す角を変更可能に構成された検出部4とを備える。
【解決手段】この透磁率測定装置1は、被測定物Aに磁界を印加して被測定物Aの透磁率を測定するための透磁率測定装置であって、Y軸方向に交流磁界Hを発生させる磁界発生源3と、被測定物Aを内部に固定可能なループ状のコイル11を含み、コイル11のループ面14の法線とY軸方向との成す角を変更可能に構成された検出部4とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透磁率測定装置及びそれを用いた透磁率測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁性体等の試料の透磁率を測定する装置が種々知られている。下記特許文献1には、断面矩形状の帯状コイルからなる磁界発生用コイルと、測定用試料を挿入するための貫通孔が設けられ、その磁界発生用コイルの内部に配置可能な測定用コイルとを有し、測定用試料を挿入した状態及び挿入していない状態で測定用コイルに発生する誘起電圧を測定することにより、試料の透磁率を演算する装置が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、3枚の金属板により構成されるセル状の磁界発生源の内部に測定用コイルが固定された装置が記載されている。一方、下記非特許文献1には、測定用コイルを必要としない測定装置として、Wave Guide法を採用した装置が開示されている。
【特許文献1】特開平7−104044号公報
【特許文献2】特開2004−69337号公報
【非特許文献1】Y. Ding, et al., ”A coplanar waveguide permeameter for studyinghigh-frequency properties of soft magnetic materials”, Journal of AppliedPhysics, vol.96 No.5, 1 September 2004, pp.2969
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような測定用コイルを利用した従来の透磁率測定装置では、磁界発生用コイルと測定用コイルとの位置関係が一定であり、特に、試料に印加する磁界の方向と測定する試料の磁化の方向がほぼ同一であった。そのため、測定可能な透磁率テンソルは、対角成分のみに限定されていた。ましてや、Wave Guide法によっては、試料に印加される磁界が一様でなく、測定用コイルも利用しないため、透磁率テンソルの成分までも測定することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、被測定物の透磁率テンソルの非対角成分を含む各成分を、容易に切り分けて測定することができる透磁率測定装置及び透磁率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の透磁率測定装置は、被測定物に磁界を印加して被測定物の透磁率を測定するための透磁率測定装置であって、所定の方向に交流磁界を発生させる磁界発生源と、被測定物を内部に固定可能なループ状のコイルを含み、コイルのループ面の法線と所定の方向との成す角を変更可能に構成された検出部とを備える。
【0007】
このような透磁率測定装置においては、被測定物に印加する磁界の方向に対して、被測定物の磁化の測定方向を変更することができるので、磁化の測定方向を2種類に変化させた状態で被測定物の透磁率を測定することで、透磁率テンソルの対角成分と非対角成分とを切り分けて測定することが可能になる。
【0008】
磁界発生源は、平板状の絶縁板と、絶縁板の主面上に直線状に形成された導体部とを有し、検出部は、主面上の導体部に対向して設けられていることが好ましい。
【0009】
こうすれば、磁界発生源を容易に製作することができるとともに、検出部のコイルを磁界発生源により発生する磁界中に配置する際の余計な加工が不要である。併せて、磁界発生源の外側に検出部が配置されているので、磁界発生源の中に検出部を配置するための加工により磁界を擾乱してしまうことに比較して、磁界の一様性が保たれ、透磁率の成分の測定精度が向上する。
【0010】
或いは、本発明の透磁率測定方法は、被測定物に磁界を印加して被測定物の透磁率を測定する透磁率測定方法であって、磁界発生源を用いて所定の方向に交流磁界を発生させる第1のステップと、被測定物をループ状のコイルの内部において第1の配置方向に固定させた状態で、コイルを、ループ面の法線と所定の方向とがほぼ平行になるように、交流磁界中に配置する第2のステップと、コイルの内部に被測定物が存在しない状態で、コイルを、第2のステップにおける方向と同一の方向を向くように、交流磁界中に配置する第3のステップと、第2及び第3のステップによって配置されたそれぞれのコイルの両端に発生する出力電圧に基づいて、被測定物の透磁率の対角成分を測定する第4のステップと、被測定物をコイルの内部において第1の配置方向に固定させた状態で、法線と所定の方向との成す角が変化するように、コイルを移動させる第5のステップと、コイルの内部に被測定物が存在しない状態で、コイルを、第5のステップにおける方向と同一の方向を向くように、交流磁界中に配置する第6のステップと、第5及び第6のステップによって配置されたコイルの両端に発生する出力電圧に基づいて、被測定物の透磁率の非対角成分を測定する第7のステップとを備える。
【0011】
このような透磁率測定方法によれば、被測定物に印加する磁界の方向に対して被測定物の磁化の測定方向を、磁界の方向に対して平行な方向とその方向から変化させた方向との2種類の方向で測定することで、被測定物の第1の配置方向に対応する透磁率テンソルの対角成分及び非対角成分を容易に切り分けて測定することが可能になる。なお、上記第5のステップでいう「移動」とは、回転のようにコイルの姿勢のみを変化させる操作をも含む概念である。
【0012】
被測定物を、コイルの内部において第1の配置方向に対して直角に回転された第2の配列方向に固定させる第8のステップと、第8のステップによって配置された被測定物を対象にして、被測定物の透磁率の対角成分及び非対角成分を測定する第9のステップとをさらに備えることが好ましい。
【0013】
この場合、被測定物の第2の配置方向に対応する透磁率テンソルの対角成分及び非対角成分を更に切り分けて測定することが可能になる。
【0014】
また、第1のステップでは、平板状の絶縁板の主面上に直線状に導体部が形成された磁界発生源を用いて交流磁界を発生させ、第2〜第7のステップでは、前記コイルを前記磁界発生源に対向して配置させることが好ましい。
【0015】
このような手順によれば、磁界発生源を容易に準備することができるとともに、検出部のコイルを磁界発生源により発生する磁界中に配置する際の余計な加工が不要である。併せて、磁界発生源の外側に検出部が配置されるので、磁界発生源の中に検出部を配置するための加工により磁界を擾乱してしまうことに比較して、磁界の一様性が保たれ、透磁率の成分の測定精度が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透磁率測定装置及び透磁率測定方法によれば、被測定物の透磁率テンソルの非対角成分を含む各成分を、容易に切り分けて測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る透磁率測定装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る透磁率測定装置1の概略構成を示す一部破断斜視図である。同図に示すように、透磁率測定装置1は、直方体形状の筐体2内に磁界発生源3、検出部4、及びサンプルホルダー5を備えて構成される。この透磁率測定装置1は、磁界発生源3により印加される磁界に応じて生じる被測定物の磁化の方向を、検出部4により検出し、検出の結果をネットワークアナライザ等の測定器6によって解析することにより被測定物の透磁率を測定するための装置である。図1においては、筐体2の底面に沿ってXY平面を、筐体2の側面に沿ってYZ平面を定義する。
【0019】
(透磁率測定装置)
まず、透磁率測定装置1の各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
磁界発生源3は、筐体2の底板を構成する誘電体等の絶縁材料からなる平板状の絶縁板7に、金属膜(導体部)8とグランド層9とが形成されてなる。金属膜8は、絶縁板7の内面(主面)7a上の一端から他端にかけて、主面7aの縁部に沿って(図1のX軸方向に沿って)、直線状に形成されている。詳細には、この金属膜8は、被測定物の幅よりも大きい幅を有するように帯状をなし、一方の端部に向けて狭くなるようなテーパ部がさらに形成されている。このテーパ部が、筐体2の側面に貫通して設けられたコネクタ10を介して測定器6と電気的に接続されることにより、金属膜8のテーパ部側の端部に電圧信号が印加可能にされている。グランド層9は、絶縁板7の外面7b上の全面にわたって形成された金属膜であり、金属膜8の他方の端部において金属膜8と一体化されて形成されることにより、金属膜8の他方の端部と電気的に接続されている。このグランド層9は、コネクタ10、ケーブル16及び測定器6を介してグランドに接続される。
【0021】
このような磁界発生源3は、測定器6からの交流電圧信号の入力に応じて、金属膜8においてX軸方向に沿った交流電流を発生させることにより、金属膜8の内面7a側の表面近傍においてY軸方向に沿った交流磁界を印加する。ここで、金属膜8には、一方の端部側においてテーパ部が形成されるとともに、他方の端部側においては絶縁板7の全面に形成されたグランド層9と一体的に接続されているので、電圧印加により幅方向(Y軸方向)に亘って一様な交流電流が発生し、その結果、Y軸方向に発生する磁界の方向及び強度も金属膜8の表面全体においてほぼ一様になる。さらに、磁界発生源3は、磁界と同時に発生する電界の影響を被測定物が受けにくい構造となっている。
【0022】
検出部4は、ループ状のコイル11と、コイル11を支持する支持棒12と、支持棒12の一端に取り付けられた取っ手部13とを含んでいる。支持棒12は、その他端において、コイル11のループ面14の中央線の延長線上に支持棒12が位置するような状態で、コイル11を支持する。そして、支持棒12は、その長手方向がZ軸に対して平行になり、且つ、コイル11が金属膜8の表面に接触しない状態で金属膜8に対向するように、筐体2の外側に設けられた取っ手部13に取り付けられる。従って、コイル11のループ面14は、XY平面、すなわち、金属膜8の表面に対して常に垂直となる。さらに、コイル11は、その両端子が支持棒12及び取っ手部13を貫通するケーブル16に接続されており、このケーブル16を介して測定器6と電気的に接続される。
【0023】
上記構成を有する検出部4は、取っ手部13を回転操作することにより、支持棒12を回転軸として、つまり、ループ面14の中央線を回転軸としてコイル11を回転可能にされる。言い換えれば、検出部4は、コイル11のループ面14の法線と、磁界発生源3によって印加される磁界の方向(Y軸方向)との成す角を変更可能に構成される。
【0024】
この磁界発生源3と検出部4との間にはサンプルホルダー5が設けられている。サンプルホルダー5は、平板状のアクリル樹脂等の絶縁材料からなる部材であり、上面部には直角に交わる2本の直線状の溝部15が形成されている。このようなサンプルホルダー5は、その溝部15に検出部4のコイル11の下端部が挿入された状態で、磁界発生源3の金属膜8上に載置される。また、サンプルホルダー5は、被測定物をコイル11のループの内側に挿入した状態で保持する。図2及び図3は、サンプルホルダー5に被測定物Aが搭載された状態を示す図である。このようにサンプルホルダー5は、図2に示すように、矩形状の被測定物Aが溝部15を跨ってその上面に載置されることにより、被測定物Aをその主面がXY平面に対して平行になるようにコイル11のループ内に固定された状態で保持する。また、サンプルホルダー5は、図3に示すように、被測定物Aを溝部15内に挿入された状態で保持することによって、主面がXY平面に対して垂直になるようにコイル11のループ内に被測定物Aを固定することも可能である。この場合は、被測定物Aは、溝部15に挿入される向きに応じて、被測定物Aの主面がコイル11のループ面14に沿った状態、又はループ面14に対して垂直になるような状態のいずれかの状態で固定されることになる。
【0025】
このようなサンプルホルダー5は、図4に示すように、溝部15内にコイル11が挿入された状態で検出部4が支持棒12を回転軸として回転された場合に、この検出部4の回転に伴って一緒に回転可能にされている。すなわち、サンプルホルダー5は、検出部4の回転の際に、絶縁板7の表面を摺動することによってコイル11と一体で回転する。その結果、被測定物Aは、コイル11に対する相対的な位置が固定されたままで、支持棒12を回転軸として回転されることになる。また、サンプルホルダー5は、アクリル等の樹脂材料によって形成されているので、磁界発生源3と検出部4との間に位置していても磁界発生源3によって印加される磁界を乱すことはない。
【0026】
次に、上述した透磁率測定装置1を用いた透磁率測定方法について説明する。
【0027】
(透磁率テンソルの対角成分の測定方法)
まず、透磁率の測定対象の被測定物Aとして薄膜状の磁性薄膜を想定し、図5に示すように、その被測定物Aの主面の各辺に平行にX0軸、Y0軸を定義し、主面に対して垂直な方向にZ0軸を定義する。
【0028】
最初に、被測定物Aをサンプルホルダー5から外した状態、つまり、被測定物Aがコイル11のループ内に存在しない状態で、磁界発生源3に交流電圧を印加して金属膜8の上部近傍にY軸方向に平行な磁界Hを発生させる。そして、取っ手部13を操作してコイル11のループ面14の法線がY軸に対して平行になるように回転させることにより、磁界Hがループ面14をほぼ垂直に貫くようにする。その後、コイル11の両端に発生する出力電圧V0outを測定器6によって測定する。
【0029】
図6は、コイル11を貫く磁界Hによって発生する出力電圧V0outを説明するための概念図、図7は、図6のコイル11を等価回路で表した概念図である。これらの図に示すように、磁界Hの印加によってコイル11には誘起電圧V0が発生し、この誘起電圧V0が測定器6において出力電圧V0outとして検出される。ここで、検出される出力電圧V0outは、コイル11の負荷抵抗をR、コイル11のインピーダンスをZ0とすると、下記式(1);
V0out={R/(Z0+R)}V0 …(1)
によって表される。また、コイル11に生じる誘起電圧V0は、ループ面内における平均磁界の振幅をHave、被測定物Aを配置しない場合の透磁率をμ0、ループ面の面積をSとすると、下記式(2);
V0=−iωμ0HaveeiωtS …(2)
によって求められる。
【0030】
次に、被測定物Aを、そのX0軸が測定系のY軸に平行になるように(第1の配置方向)、サンプルホルダー5上のコイル11のループ内部に固定する。この状態では、磁界Hがループ面14をほぼ垂直に貫くと同時に、被測定物をX0軸方向に貫くことになる。その後、コイル11の両端に発生する出力電圧VMoutを測定器6によって測定する。
【0031】
図8は、被測定物Aを搭載した状態でコイル11を貫く磁界Hによって発生する出力電圧VMoutを説明するための概念図、図9は、図8のコイル11を等価回路で表した概念図である。これらの図に示すように、ループ面に平行な方向の厚さt、幅wの被測定物Aを配置した状態での磁界Hの印加によってコイル11には誘起電圧VMが発生し、この誘起電圧VMが測定器6において出力電圧VMoutとして検出される。ここで、検出される出力電圧VMoutは、コイル11の負荷抵抗をR、コイル11のインピーダンスをZMとすると、下記式(3);
VMout={R/(ZM+R)}VM …(3)
で表される。また、誘起電圧VMは、被測定物Aを配置しない場合の被測定物Aの断面積t×wを貫く磁束が与える誘起電圧をV01、透磁率μ0μrxxを有する被測定物Aによって生じる誘起電圧をVM1とすると、下記式(4);
VM=V0−V01+VM1 …(4)
によって与えられる。μrxxは、被測定物AにおけるX0軸方向の磁界印加に対するX0軸方向の比透磁率を示している。ここで、被測定物Aはコイル11のループ面14における平均磁界Haveを与えるような高さに配置されており、被測定物Aの厚さの範囲では磁界はHaveで一様であると考える。そうすると、誘起電圧V01,VM1は、それぞれ、下記式(5)及び(6)によって計算される。
V01≒−iωμ0Haveeiωtwt …(5)
VM1≒−iωμ0μrxxHaveeiωtwt …(6)
【0032】
以上の関係式(1)〜(6)を用いて、コイル11の自己インダクタンス等が被測定物Aの有無により変化しない(つまり、Z0=ZM)と仮定すると、下記式(7);
μrxx={S/(wt)}(VMout/V0out−1)+1 …(7)
が導かれ、この式(7)を計算することによって、被測定物Aの透磁率テンソルの対角成分μrxxを求めることができる。また、測定器6として、ネットワークアナライザを用いれば、同様な計算式で透磁率テンソルの対角成分μrxxの複素数成分も求めることができる。
【0033】
同様にして、被測定物Aをサンプルホルダー5上において直角に回転させ、そのY0軸が測定系のY軸に平行になるように(第2の配置方向)固定させる。このときの出力電圧VMoutを検出して、上記式(7)を用いることによって透磁率テンソルの対角成分μryyを求めることができる。
【0034】
さらに、被測定物を第1又は第2の配置方向から直角に回転させ、そのZ0軸が測定系のY軸に平行になるように(第3の配置方向、図3参照)配置する。そして、このときの出力電圧VMoutを検出することによって、透磁率テンソルの対角成分μrzzを求めることもできる。すなわち、被測定物Aによってコイル11のループ面14の全面が覆われていると想定すると、誘起電圧VMは、下記式(8);
VM=−iωμ0μrzzHaveeiωtS …(8)
により表される。従って、式(2)を用いて、透磁率μrzzは、下記式(9);
μrzz=VMout/V0out …(9)
により求められる。
【0035】
(透磁率テンソルの非対角成分の測定方法)
次に、被測定物Aの透磁率テンソルの非対角成分μrxyを測定する方法について説明する。非対角成分μrxyとは、被測定物Aに対してY0軸方向に磁界を印加した場合のX0軸方向の透磁率を示す。このような非対角成分μrxyを測定する場合には、コイル11のループ面が印加磁界Hに対して平行になるように配置することが考えられる。しかしながら、その場合は印加磁界Hはコイル11のループを貫かないので、測定器6で検出される出力電圧V0out=0となるため、式(7)又は(9)を用いても評価できない。そこで、本実施形態では、以下のようにして透磁率テンソルの非対角成分を測定する。
【0036】
すなわち、被測定物Aをサンプルホルダー5から外した状態、つまり、被測定物Aがコイル11のループ内に存在しない状態で、磁界発生源3によって磁界Hを発生させる。そして、取っ手部13を操作してコイル11のループ面14の法線がY軸に対して45度になるまで検出部4のコイル11を回転移動させる。その後、コイル11の両端に発生する出力電圧V0outを測定器6によって測定する。
【0037】
このとき、磁界発生源3によって印加される平均磁界Haveは、コイル11をZ軸方向から見た図10に示すように、コイル11のループ面14に平行な成分HavePとループ面14に垂直な成分HaveVとに分解できる。被測定物Aを搭載しない場合の出力電圧V0outに寄与する磁束密度B0Vは、下記式(10);
B0V=μ0HaveV …(10)
により表されるので、V0out≠0となる。
【0038】
次に、被測定物Aをサンプルホルダー5上において上述した第1の配置方向に固定させる。ここでも、取っ手部13を操作することによって、ループ面14の法線と磁界Hの方向との成す角が45度になるように、コイル11及び被測定物Aの角度を調整する。その後、コイル11の両端に発生する出力電圧VMoutを測定器6によって測定する。
【0039】
このとき、磁界発生源3によって印加される平均磁界Haveは、コイル11をZ軸方向から見た図11に示すように、コイル11のループ面14に平行な成分HavePとループ面14に垂直な成分HaveVとに同様に分解できる。被測定物Aを搭載した場合の出力電圧VMoutに寄与する磁束密度BMVは、下記式(11);
BMV=μ0μrxxHaveV+μ0μrxyHaveP=μ0μr45HaveV …(11)
により与えられる(μr45=μrxx+μrxy)。従って、式(7)と同様な式を用いてμr45を測定した後に、既に求められている対角成分の比透磁率μrxxを減算することによって、非対角成分μrxyを測定することができる。
【0040】
さらに、被測定物Aを上述した第2の配置方向に固定した状態で、上記の手順と同様にして、ループ面14の法線と磁界Hの方向との成す角が45度になるように調整した後に出力電圧VMoutを測定することで、透磁率テンソルの非対角成分μryxを求めることができる。
【0041】
また、被測定物Aを上述した第3の配置方向のうちのY0軸が測定系のZ軸に平行になるような方向に固定させると、次のようにして、非対角成分μrzxを求めることができる。具体的には、ループ面14の法線と磁界Hの方向との成す角が45度になるように調整して、式(9)を用いて比透磁率μr45を計算する。そして、既に求められているμrzzを利用して、下記式(12);
μrzx=μr45−μrzz …(12)
により算出することができる。同様にして、被測定物Aを第3の配置方向のうちのX0軸が測定系のZ軸に平行になるような方向に固定させると、非対角成分μrzyを求めることができる。
【0042】
また、被測定物Aのコイル11に対する配置方向としては、上述した第1〜第3の配置方向以外にも、図12に示すように、被測定物Aの主面がループ面14に垂直になり、且つ、その主面が金属膜8の表面に垂直になるような配置方向(第4の配置方向)を採用すると、比透磁率の残りの非対角成分μrxz,μryzを測定することができる。
【0043】
具体的には、上記の配置方向に被測定物Aを配置し、検出部4を印加磁界Hに対して45度傾けることで、比透磁率の別の非対角成分μrxzを測定することができる。まず、被測定物Aを配置しない場合のコイル11の誘起電圧V0は、下記式(13);
V0=−iωμ0HaveVeiωtS …(13)
により表される。これに対して、被測定物Aを配置した場合の誘起電圧VMは、式(4)で表され、誘起電圧V01,VM1は、それぞれ、下記式(14)及び(15)によって計算される(Lはループ面14の水平方向の幅)。
V01=−iωμ0HaveVeiωt(tS/L) …(14)
VM1=−iωμ0μr45HaveVeiωt(tS/L) …(15)
従って、式(4)、(13)〜(15)により、比透磁率μr45は、コイル11の出力電圧VMout,V0outに基づいて、下記式(16);
μr45=(L/t)(VMout/V0out−1)+1 …(16)
によって与えられる。その結果、既に求めてあるμrzzから、下記式(17):
μrxz=μr45−μrzz …(17)
より比透磁率の非対角成分μrxzを求めることができる。被測定物Aをコイル11に対して直角に回転して固定することにより、同様の手順で、比透磁率の非対角成分μryzを求めることもできる。このようにすれば、被測定物Aの透磁率テンソルの9成分の全てを求めることができる。
【0044】
(透磁率テンソルの測定例)
上述した透磁率測定装置1及び透磁率測定方法を用いた測定例について以下に記述する。
【0045】
被測定物Aとしては、Siウェハ上にCoZrTa合金の膜をスパッタ法により膜厚0.5μmで形成し、その後Siウェアを6mm四方で切断したものを用いた。図13〜図15は、それぞれ、交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの対角成分μrxx,μryy,μrzzの測定結果を示すグラフ、図16は、交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの非対角成分μryx,μrxyの測定結果を対角成分μrxxと対比して示すグラフである。
【0046】
これらの結果により、透磁率テンソルの各対角成分μrxx,μryy,μrzzは、周波数が10〜500MHzの範囲で安定して測定されている。また、対角成分のうちのμryyがμrxxよりも1桁以上小さいという結果は、被測定物Aが一軸異方性をもっていることを表しており、比透磁率が正しく測定できていることを裏付けている。一方、μrzzがほぼ1になることは理論的にも説明できるので、測定結果に矛盾がないことがわかる。さらに、比透磁率の非対角成分μryx,μrxyについては、対角成分μrxxに対して無視できない程度の値を有することがわかり、精度のよい磁性薄膜の設計には非対角成分を考慮しなくてはならないという今までにない重要な知見を与えている。
【0047】
以上説明した透磁率測定装置1によれば、被測定物Aに印加する磁界Hの方向に対して、被測定物Aの磁化の測定方向を変更することができるので、磁化の測定方向を2種類に変化させた状態で被測定物Aの比透磁率μrを測定することで、透磁率テンソルの対角成分と非対角成分とを切り分けて測定することが可能になる。
【0048】
また、磁界発生源3は、平板状の絶縁板7と、絶縁板7の主面上に直線状に形成された金属膜8とを有し、検出部4は、金属膜8に対向して設けられているので、磁界発生源3を容易に製作することができるとともに、検出部4のコイル11を磁界発生源3により発生する磁界H中に配置するための余計な加工が不要である。併せて、磁界発生源3の外側に検出部4が配置されているので、磁界発生源3の中に検出部を配置するための加工により磁界を擾乱してしまうことに比較して、磁界Hの一様性が保たれ、透磁率の成分の測定精度が向上する。
【0049】
本実施形態による透磁率測定方法によれば、被測定物Aに印加する磁界Hの方向に対して被測定物Aの磁化の測定方向を、磁界Hの方向に対して平行な方向とその方向から変化させた方向との2種類の方向で測定することで、被測定物Aの透磁率テンソルの対角成分μrxx及び非対角成分μrxyを容易に切り分けて測定することが可能になる。
【0050】
さらに、被測定物Aを第2の配列方向に固定させて測定することで、被測定物Aの透磁率テンソルの対角成分μryy及び非対角成分μryxを更に切り分けて測定することが可能になる。同様な手順を繰り返すことにより、被測定物Aの比透磁率の各対角成分及び非対角成分を測定することができる。
【0051】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、透磁率測定時における検出部4及び被測定物Aの配置方向としては特定の向きには限定されない。一例を挙げると、比透磁率の非対角成分を測定する際は、コイル11のループ面14の法線がY軸に対して任意の角度を成した状態で測定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る透磁率測定装置の概略構成を示す一部破断斜視図である。
【図2】図1のサンプルホルダーに被測定物が搭載された状態を示す図である。
【図3】図1のサンプルホルダーに被測定物が搭載された状態を示す図である。
【図4】図1のサンプルホルダーが検出部と共に回転された状態を示す斜視図である。
【図5】被測定物の斜視図である。
【図6】図1のコイルを貫く磁界によって発生する出力電圧を説明するための概念図である。
【図7】図6のコイルを等価回路で表した概念図である。
【図8】被測定物を搭載した状態でコイルを貫く磁界によって発生する出力電圧を説明するための概念図である。
【図9】図8のコイルを等価回路で表した概念図である。
【図10】図1のコイルを貫く磁界を示す平面図である。
【図11】被測定物を搭載した状態で図1のコイルを貫く磁界を示す平面図である。
【図12】図1のコイルの内部に被測定物が搭載された状態を示す正面図である。
【図13】交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの対角成分の測定結果を示すグラフである。
【図14】交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの対角成分の測定結果を示すグラフである。
【図15】交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの対角成分の測定結果を示すグラフである。
【図16】交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの非対角成分の測定結果を対角成分と対比して示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
A…被測定物、1…透磁率測定装置3…磁界発生源、4…検出部、7…絶縁板、7a…主面、8…金属膜(導体部)、11…コイル、14…ループ面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透磁率測定装置及びそれを用いた透磁率測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁性体等の試料の透磁率を測定する装置が種々知られている。下記特許文献1には、断面矩形状の帯状コイルからなる磁界発生用コイルと、測定用試料を挿入するための貫通孔が設けられ、その磁界発生用コイルの内部に配置可能な測定用コイルとを有し、測定用試料を挿入した状態及び挿入していない状態で測定用コイルに発生する誘起電圧を測定することにより、試料の透磁率を演算する装置が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、3枚の金属板により構成されるセル状の磁界発生源の内部に測定用コイルが固定された装置が記載されている。一方、下記非特許文献1には、測定用コイルを必要としない測定装置として、Wave Guide法を採用した装置が開示されている。
【特許文献1】特開平7−104044号公報
【特許文献2】特開2004−69337号公報
【非特許文献1】Y. Ding, et al., ”A coplanar waveguide permeameter for studyinghigh-frequency properties of soft magnetic materials”, Journal of AppliedPhysics, vol.96 No.5, 1 September 2004, pp.2969
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような測定用コイルを利用した従来の透磁率測定装置では、磁界発生用コイルと測定用コイルとの位置関係が一定であり、特に、試料に印加する磁界の方向と測定する試料の磁化の方向がほぼ同一であった。そのため、測定可能な透磁率テンソルは、対角成分のみに限定されていた。ましてや、Wave Guide法によっては、試料に印加される磁界が一様でなく、測定用コイルも利用しないため、透磁率テンソルの成分までも測定することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、被測定物の透磁率テンソルの非対角成分を含む各成分を、容易に切り分けて測定することができる透磁率測定装置及び透磁率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の透磁率測定装置は、被測定物に磁界を印加して被測定物の透磁率を測定するための透磁率測定装置であって、所定の方向に交流磁界を発生させる磁界発生源と、被測定物を内部に固定可能なループ状のコイルを含み、コイルのループ面の法線と所定の方向との成す角を変更可能に構成された検出部とを備える。
【0007】
このような透磁率測定装置においては、被測定物に印加する磁界の方向に対して、被測定物の磁化の測定方向を変更することができるので、磁化の測定方向を2種類に変化させた状態で被測定物の透磁率を測定することで、透磁率テンソルの対角成分と非対角成分とを切り分けて測定することが可能になる。
【0008】
磁界発生源は、平板状の絶縁板と、絶縁板の主面上に直線状に形成された導体部とを有し、検出部は、主面上の導体部に対向して設けられていることが好ましい。
【0009】
こうすれば、磁界発生源を容易に製作することができるとともに、検出部のコイルを磁界発生源により発生する磁界中に配置する際の余計な加工が不要である。併せて、磁界発生源の外側に検出部が配置されているので、磁界発生源の中に検出部を配置するための加工により磁界を擾乱してしまうことに比較して、磁界の一様性が保たれ、透磁率の成分の測定精度が向上する。
【0010】
或いは、本発明の透磁率測定方法は、被測定物に磁界を印加して被測定物の透磁率を測定する透磁率測定方法であって、磁界発生源を用いて所定の方向に交流磁界を発生させる第1のステップと、被測定物をループ状のコイルの内部において第1の配置方向に固定させた状態で、コイルを、ループ面の法線と所定の方向とがほぼ平行になるように、交流磁界中に配置する第2のステップと、コイルの内部に被測定物が存在しない状態で、コイルを、第2のステップにおける方向と同一の方向を向くように、交流磁界中に配置する第3のステップと、第2及び第3のステップによって配置されたそれぞれのコイルの両端に発生する出力電圧に基づいて、被測定物の透磁率の対角成分を測定する第4のステップと、被測定物をコイルの内部において第1の配置方向に固定させた状態で、法線と所定の方向との成す角が変化するように、コイルを移動させる第5のステップと、コイルの内部に被測定物が存在しない状態で、コイルを、第5のステップにおける方向と同一の方向を向くように、交流磁界中に配置する第6のステップと、第5及び第6のステップによって配置されたコイルの両端に発生する出力電圧に基づいて、被測定物の透磁率の非対角成分を測定する第7のステップとを備える。
【0011】
このような透磁率測定方法によれば、被測定物に印加する磁界の方向に対して被測定物の磁化の測定方向を、磁界の方向に対して平行な方向とその方向から変化させた方向との2種類の方向で測定することで、被測定物の第1の配置方向に対応する透磁率テンソルの対角成分及び非対角成分を容易に切り分けて測定することが可能になる。なお、上記第5のステップでいう「移動」とは、回転のようにコイルの姿勢のみを変化させる操作をも含む概念である。
【0012】
被測定物を、コイルの内部において第1の配置方向に対して直角に回転された第2の配列方向に固定させる第8のステップと、第8のステップによって配置された被測定物を対象にして、被測定物の透磁率の対角成分及び非対角成分を測定する第9のステップとをさらに備えることが好ましい。
【0013】
この場合、被測定物の第2の配置方向に対応する透磁率テンソルの対角成分及び非対角成分を更に切り分けて測定することが可能になる。
【0014】
また、第1のステップでは、平板状の絶縁板の主面上に直線状に導体部が形成された磁界発生源を用いて交流磁界を発生させ、第2〜第7のステップでは、前記コイルを前記磁界発生源に対向して配置させることが好ましい。
【0015】
このような手順によれば、磁界発生源を容易に準備することができるとともに、検出部のコイルを磁界発生源により発生する磁界中に配置する際の余計な加工が不要である。併せて、磁界発生源の外側に検出部が配置されるので、磁界発生源の中に検出部を配置するための加工により磁界を擾乱してしまうことに比較して、磁界の一様性が保たれ、透磁率の成分の測定精度が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透磁率測定装置及び透磁率測定方法によれば、被測定物の透磁率テンソルの非対角成分を含む各成分を、容易に切り分けて測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る透磁率測定装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る透磁率測定装置1の概略構成を示す一部破断斜視図である。同図に示すように、透磁率測定装置1は、直方体形状の筐体2内に磁界発生源3、検出部4、及びサンプルホルダー5を備えて構成される。この透磁率測定装置1は、磁界発生源3により印加される磁界に応じて生じる被測定物の磁化の方向を、検出部4により検出し、検出の結果をネットワークアナライザ等の測定器6によって解析することにより被測定物の透磁率を測定するための装置である。図1においては、筐体2の底面に沿ってXY平面を、筐体2の側面に沿ってYZ平面を定義する。
【0019】
(透磁率測定装置)
まず、透磁率測定装置1の各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
磁界発生源3は、筐体2の底板を構成する誘電体等の絶縁材料からなる平板状の絶縁板7に、金属膜(導体部)8とグランド層9とが形成されてなる。金属膜8は、絶縁板7の内面(主面)7a上の一端から他端にかけて、主面7aの縁部に沿って(図1のX軸方向に沿って)、直線状に形成されている。詳細には、この金属膜8は、被測定物の幅よりも大きい幅を有するように帯状をなし、一方の端部に向けて狭くなるようなテーパ部がさらに形成されている。このテーパ部が、筐体2の側面に貫通して設けられたコネクタ10を介して測定器6と電気的に接続されることにより、金属膜8のテーパ部側の端部に電圧信号が印加可能にされている。グランド層9は、絶縁板7の外面7b上の全面にわたって形成された金属膜であり、金属膜8の他方の端部において金属膜8と一体化されて形成されることにより、金属膜8の他方の端部と電気的に接続されている。このグランド層9は、コネクタ10、ケーブル16及び測定器6を介してグランドに接続される。
【0021】
このような磁界発生源3は、測定器6からの交流電圧信号の入力に応じて、金属膜8においてX軸方向に沿った交流電流を発生させることにより、金属膜8の内面7a側の表面近傍においてY軸方向に沿った交流磁界を印加する。ここで、金属膜8には、一方の端部側においてテーパ部が形成されるとともに、他方の端部側においては絶縁板7の全面に形成されたグランド層9と一体的に接続されているので、電圧印加により幅方向(Y軸方向)に亘って一様な交流電流が発生し、その結果、Y軸方向に発生する磁界の方向及び強度も金属膜8の表面全体においてほぼ一様になる。さらに、磁界発生源3は、磁界と同時に発生する電界の影響を被測定物が受けにくい構造となっている。
【0022】
検出部4は、ループ状のコイル11と、コイル11を支持する支持棒12と、支持棒12の一端に取り付けられた取っ手部13とを含んでいる。支持棒12は、その他端において、コイル11のループ面14の中央線の延長線上に支持棒12が位置するような状態で、コイル11を支持する。そして、支持棒12は、その長手方向がZ軸に対して平行になり、且つ、コイル11が金属膜8の表面に接触しない状態で金属膜8に対向するように、筐体2の外側に設けられた取っ手部13に取り付けられる。従って、コイル11のループ面14は、XY平面、すなわち、金属膜8の表面に対して常に垂直となる。さらに、コイル11は、その両端子が支持棒12及び取っ手部13を貫通するケーブル16に接続されており、このケーブル16を介して測定器6と電気的に接続される。
【0023】
上記構成を有する検出部4は、取っ手部13を回転操作することにより、支持棒12を回転軸として、つまり、ループ面14の中央線を回転軸としてコイル11を回転可能にされる。言い換えれば、検出部4は、コイル11のループ面14の法線と、磁界発生源3によって印加される磁界の方向(Y軸方向)との成す角を変更可能に構成される。
【0024】
この磁界発生源3と検出部4との間にはサンプルホルダー5が設けられている。サンプルホルダー5は、平板状のアクリル樹脂等の絶縁材料からなる部材であり、上面部には直角に交わる2本の直線状の溝部15が形成されている。このようなサンプルホルダー5は、その溝部15に検出部4のコイル11の下端部が挿入された状態で、磁界発生源3の金属膜8上に載置される。また、サンプルホルダー5は、被測定物をコイル11のループの内側に挿入した状態で保持する。図2及び図3は、サンプルホルダー5に被測定物Aが搭載された状態を示す図である。このようにサンプルホルダー5は、図2に示すように、矩形状の被測定物Aが溝部15を跨ってその上面に載置されることにより、被測定物Aをその主面がXY平面に対して平行になるようにコイル11のループ内に固定された状態で保持する。また、サンプルホルダー5は、図3に示すように、被測定物Aを溝部15内に挿入された状態で保持することによって、主面がXY平面に対して垂直になるようにコイル11のループ内に被測定物Aを固定することも可能である。この場合は、被測定物Aは、溝部15に挿入される向きに応じて、被測定物Aの主面がコイル11のループ面14に沿った状態、又はループ面14に対して垂直になるような状態のいずれかの状態で固定されることになる。
【0025】
このようなサンプルホルダー5は、図4に示すように、溝部15内にコイル11が挿入された状態で検出部4が支持棒12を回転軸として回転された場合に、この検出部4の回転に伴って一緒に回転可能にされている。すなわち、サンプルホルダー5は、検出部4の回転の際に、絶縁板7の表面を摺動することによってコイル11と一体で回転する。その結果、被測定物Aは、コイル11に対する相対的な位置が固定されたままで、支持棒12を回転軸として回転されることになる。また、サンプルホルダー5は、アクリル等の樹脂材料によって形成されているので、磁界発生源3と検出部4との間に位置していても磁界発生源3によって印加される磁界を乱すことはない。
【0026】
次に、上述した透磁率測定装置1を用いた透磁率測定方法について説明する。
【0027】
(透磁率テンソルの対角成分の測定方法)
まず、透磁率の測定対象の被測定物Aとして薄膜状の磁性薄膜を想定し、図5に示すように、その被測定物Aの主面の各辺に平行にX0軸、Y0軸を定義し、主面に対して垂直な方向にZ0軸を定義する。
【0028】
最初に、被測定物Aをサンプルホルダー5から外した状態、つまり、被測定物Aがコイル11のループ内に存在しない状態で、磁界発生源3に交流電圧を印加して金属膜8の上部近傍にY軸方向に平行な磁界Hを発生させる。そして、取っ手部13を操作してコイル11のループ面14の法線がY軸に対して平行になるように回転させることにより、磁界Hがループ面14をほぼ垂直に貫くようにする。その後、コイル11の両端に発生する出力電圧V0outを測定器6によって測定する。
【0029】
図6は、コイル11を貫く磁界Hによって発生する出力電圧V0outを説明するための概念図、図7は、図6のコイル11を等価回路で表した概念図である。これらの図に示すように、磁界Hの印加によってコイル11には誘起電圧V0が発生し、この誘起電圧V0が測定器6において出力電圧V0outとして検出される。ここで、検出される出力電圧V0outは、コイル11の負荷抵抗をR、コイル11のインピーダンスをZ0とすると、下記式(1);
V0out={R/(Z0+R)}V0 …(1)
によって表される。また、コイル11に生じる誘起電圧V0は、ループ面内における平均磁界の振幅をHave、被測定物Aを配置しない場合の透磁率をμ0、ループ面の面積をSとすると、下記式(2);
V0=−iωμ0HaveeiωtS …(2)
によって求められる。
【0030】
次に、被測定物Aを、そのX0軸が測定系のY軸に平行になるように(第1の配置方向)、サンプルホルダー5上のコイル11のループ内部に固定する。この状態では、磁界Hがループ面14をほぼ垂直に貫くと同時に、被測定物をX0軸方向に貫くことになる。その後、コイル11の両端に発生する出力電圧VMoutを測定器6によって測定する。
【0031】
図8は、被測定物Aを搭載した状態でコイル11を貫く磁界Hによって発生する出力電圧VMoutを説明するための概念図、図9は、図8のコイル11を等価回路で表した概念図である。これらの図に示すように、ループ面に平行な方向の厚さt、幅wの被測定物Aを配置した状態での磁界Hの印加によってコイル11には誘起電圧VMが発生し、この誘起電圧VMが測定器6において出力電圧VMoutとして検出される。ここで、検出される出力電圧VMoutは、コイル11の負荷抵抗をR、コイル11のインピーダンスをZMとすると、下記式(3);
VMout={R/(ZM+R)}VM …(3)
で表される。また、誘起電圧VMは、被測定物Aを配置しない場合の被測定物Aの断面積t×wを貫く磁束が与える誘起電圧をV01、透磁率μ0μrxxを有する被測定物Aによって生じる誘起電圧をVM1とすると、下記式(4);
VM=V0−V01+VM1 …(4)
によって与えられる。μrxxは、被測定物AにおけるX0軸方向の磁界印加に対するX0軸方向の比透磁率を示している。ここで、被測定物Aはコイル11のループ面14における平均磁界Haveを与えるような高さに配置されており、被測定物Aの厚さの範囲では磁界はHaveで一様であると考える。そうすると、誘起電圧V01,VM1は、それぞれ、下記式(5)及び(6)によって計算される。
V01≒−iωμ0Haveeiωtwt …(5)
VM1≒−iωμ0μrxxHaveeiωtwt …(6)
【0032】
以上の関係式(1)〜(6)を用いて、コイル11の自己インダクタンス等が被測定物Aの有無により変化しない(つまり、Z0=ZM)と仮定すると、下記式(7);
μrxx={S/(wt)}(VMout/V0out−1)+1 …(7)
が導かれ、この式(7)を計算することによって、被測定物Aの透磁率テンソルの対角成分μrxxを求めることができる。また、測定器6として、ネットワークアナライザを用いれば、同様な計算式で透磁率テンソルの対角成分μrxxの複素数成分も求めることができる。
【0033】
同様にして、被測定物Aをサンプルホルダー5上において直角に回転させ、そのY0軸が測定系のY軸に平行になるように(第2の配置方向)固定させる。このときの出力電圧VMoutを検出して、上記式(7)を用いることによって透磁率テンソルの対角成分μryyを求めることができる。
【0034】
さらに、被測定物を第1又は第2の配置方向から直角に回転させ、そのZ0軸が測定系のY軸に平行になるように(第3の配置方向、図3参照)配置する。そして、このときの出力電圧VMoutを検出することによって、透磁率テンソルの対角成分μrzzを求めることもできる。すなわち、被測定物Aによってコイル11のループ面14の全面が覆われていると想定すると、誘起電圧VMは、下記式(8);
VM=−iωμ0μrzzHaveeiωtS …(8)
により表される。従って、式(2)を用いて、透磁率μrzzは、下記式(9);
μrzz=VMout/V0out …(9)
により求められる。
【0035】
(透磁率テンソルの非対角成分の測定方法)
次に、被測定物Aの透磁率テンソルの非対角成分μrxyを測定する方法について説明する。非対角成分μrxyとは、被測定物Aに対してY0軸方向に磁界を印加した場合のX0軸方向の透磁率を示す。このような非対角成分μrxyを測定する場合には、コイル11のループ面が印加磁界Hに対して平行になるように配置することが考えられる。しかしながら、その場合は印加磁界Hはコイル11のループを貫かないので、測定器6で検出される出力電圧V0out=0となるため、式(7)又は(9)を用いても評価できない。そこで、本実施形態では、以下のようにして透磁率テンソルの非対角成分を測定する。
【0036】
すなわち、被測定物Aをサンプルホルダー5から外した状態、つまり、被測定物Aがコイル11のループ内に存在しない状態で、磁界発生源3によって磁界Hを発生させる。そして、取っ手部13を操作してコイル11のループ面14の法線がY軸に対して45度になるまで検出部4のコイル11を回転移動させる。その後、コイル11の両端に発生する出力電圧V0outを測定器6によって測定する。
【0037】
このとき、磁界発生源3によって印加される平均磁界Haveは、コイル11をZ軸方向から見た図10に示すように、コイル11のループ面14に平行な成分HavePとループ面14に垂直な成分HaveVとに分解できる。被測定物Aを搭載しない場合の出力電圧V0outに寄与する磁束密度B0Vは、下記式(10);
B0V=μ0HaveV …(10)
により表されるので、V0out≠0となる。
【0038】
次に、被測定物Aをサンプルホルダー5上において上述した第1の配置方向に固定させる。ここでも、取っ手部13を操作することによって、ループ面14の法線と磁界Hの方向との成す角が45度になるように、コイル11及び被測定物Aの角度を調整する。その後、コイル11の両端に発生する出力電圧VMoutを測定器6によって測定する。
【0039】
このとき、磁界発生源3によって印加される平均磁界Haveは、コイル11をZ軸方向から見た図11に示すように、コイル11のループ面14に平行な成分HavePとループ面14に垂直な成分HaveVとに同様に分解できる。被測定物Aを搭載した場合の出力電圧VMoutに寄与する磁束密度BMVは、下記式(11);
BMV=μ0μrxxHaveV+μ0μrxyHaveP=μ0μr45HaveV …(11)
により与えられる(μr45=μrxx+μrxy)。従って、式(7)と同様な式を用いてμr45を測定した後に、既に求められている対角成分の比透磁率μrxxを減算することによって、非対角成分μrxyを測定することができる。
【0040】
さらに、被測定物Aを上述した第2の配置方向に固定した状態で、上記の手順と同様にして、ループ面14の法線と磁界Hの方向との成す角が45度になるように調整した後に出力電圧VMoutを測定することで、透磁率テンソルの非対角成分μryxを求めることができる。
【0041】
また、被測定物Aを上述した第3の配置方向のうちのY0軸が測定系のZ軸に平行になるような方向に固定させると、次のようにして、非対角成分μrzxを求めることができる。具体的には、ループ面14の法線と磁界Hの方向との成す角が45度になるように調整して、式(9)を用いて比透磁率μr45を計算する。そして、既に求められているμrzzを利用して、下記式(12);
μrzx=μr45−μrzz …(12)
により算出することができる。同様にして、被測定物Aを第3の配置方向のうちのX0軸が測定系のZ軸に平行になるような方向に固定させると、非対角成分μrzyを求めることができる。
【0042】
また、被測定物Aのコイル11に対する配置方向としては、上述した第1〜第3の配置方向以外にも、図12に示すように、被測定物Aの主面がループ面14に垂直になり、且つ、その主面が金属膜8の表面に垂直になるような配置方向(第4の配置方向)を採用すると、比透磁率の残りの非対角成分μrxz,μryzを測定することができる。
【0043】
具体的には、上記の配置方向に被測定物Aを配置し、検出部4を印加磁界Hに対して45度傾けることで、比透磁率の別の非対角成分μrxzを測定することができる。まず、被測定物Aを配置しない場合のコイル11の誘起電圧V0は、下記式(13);
V0=−iωμ0HaveVeiωtS …(13)
により表される。これに対して、被測定物Aを配置した場合の誘起電圧VMは、式(4)で表され、誘起電圧V01,VM1は、それぞれ、下記式(14)及び(15)によって計算される(Lはループ面14の水平方向の幅)。
V01=−iωμ0HaveVeiωt(tS/L) …(14)
VM1=−iωμ0μr45HaveVeiωt(tS/L) …(15)
従って、式(4)、(13)〜(15)により、比透磁率μr45は、コイル11の出力電圧VMout,V0outに基づいて、下記式(16);
μr45=(L/t)(VMout/V0out−1)+1 …(16)
によって与えられる。その結果、既に求めてあるμrzzから、下記式(17):
μrxz=μr45−μrzz …(17)
より比透磁率の非対角成分μrxzを求めることができる。被測定物Aをコイル11に対して直角に回転して固定することにより、同様の手順で、比透磁率の非対角成分μryzを求めることもできる。このようにすれば、被測定物Aの透磁率テンソルの9成分の全てを求めることができる。
【0044】
(透磁率テンソルの測定例)
上述した透磁率測定装置1及び透磁率測定方法を用いた測定例について以下に記述する。
【0045】
被測定物Aとしては、Siウェハ上にCoZrTa合金の膜をスパッタ法により膜厚0.5μmで形成し、その後Siウェアを6mm四方で切断したものを用いた。図13〜図15は、それぞれ、交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの対角成分μrxx,μryy,μrzzの測定結果を示すグラフ、図16は、交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの非対角成分μryx,μrxyの測定結果を対角成分μrxxと対比して示すグラフである。
【0046】
これらの結果により、透磁率テンソルの各対角成分μrxx,μryy,μrzzは、周波数が10〜500MHzの範囲で安定して測定されている。また、対角成分のうちのμryyがμrxxよりも1桁以上小さいという結果は、被測定物Aが一軸異方性をもっていることを表しており、比透磁率が正しく測定できていることを裏付けている。一方、μrzzがほぼ1になることは理論的にも説明できるので、測定結果に矛盾がないことがわかる。さらに、比透磁率の非対角成分μryx,μrxyについては、対角成分μrxxに対して無視できない程度の値を有することがわかり、精度のよい磁性薄膜の設計には非対角成分を考慮しなくてはならないという今までにない重要な知見を与えている。
【0047】
以上説明した透磁率測定装置1によれば、被測定物Aに印加する磁界Hの方向に対して、被測定物Aの磁化の測定方向を変更することができるので、磁化の測定方向を2種類に変化させた状態で被測定物Aの比透磁率μrを測定することで、透磁率テンソルの対角成分と非対角成分とを切り分けて測定することが可能になる。
【0048】
また、磁界発生源3は、平板状の絶縁板7と、絶縁板7の主面上に直線状に形成された金属膜8とを有し、検出部4は、金属膜8に対向して設けられているので、磁界発生源3を容易に製作することができるとともに、検出部4のコイル11を磁界発生源3により発生する磁界H中に配置するための余計な加工が不要である。併せて、磁界発生源3の外側に検出部4が配置されているので、磁界発生源3の中に検出部を配置するための加工により磁界を擾乱してしまうことに比較して、磁界Hの一様性が保たれ、透磁率の成分の測定精度が向上する。
【0049】
本実施形態による透磁率測定方法によれば、被測定物Aに印加する磁界Hの方向に対して被測定物Aの磁化の測定方向を、磁界Hの方向に対して平行な方向とその方向から変化させた方向との2種類の方向で測定することで、被測定物Aの透磁率テンソルの対角成分μrxx及び非対角成分μrxyを容易に切り分けて測定することが可能になる。
【0050】
さらに、被測定物Aを第2の配列方向に固定させて測定することで、被測定物Aの透磁率テンソルの対角成分μryy及び非対角成分μryxを更に切り分けて測定することが可能になる。同様な手順を繰り返すことにより、被測定物Aの比透磁率の各対角成分及び非対角成分を測定することができる。
【0051】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、透磁率測定時における検出部4及び被測定物Aの配置方向としては特定の向きには限定されない。一例を挙げると、比透磁率の非対角成分を測定する際は、コイル11のループ面14の法線がY軸に対して任意の角度を成した状態で測定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る透磁率測定装置の概略構成を示す一部破断斜視図である。
【図2】図1のサンプルホルダーに被測定物が搭載された状態を示す図である。
【図3】図1のサンプルホルダーに被測定物が搭載された状態を示す図である。
【図4】図1のサンプルホルダーが検出部と共に回転された状態を示す斜視図である。
【図5】被測定物の斜視図である。
【図6】図1のコイルを貫く磁界によって発生する出力電圧を説明するための概念図である。
【図7】図6のコイルを等価回路で表した概念図である。
【図8】被測定物を搭載した状態でコイルを貫く磁界によって発生する出力電圧を説明するための概念図である。
【図9】図8のコイルを等価回路で表した概念図である。
【図10】図1のコイルを貫く磁界を示す平面図である。
【図11】被測定物を搭載した状態で図1のコイルを貫く磁界を示す平面図である。
【図12】図1のコイルの内部に被測定物が搭載された状態を示す正面図である。
【図13】交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの対角成分の測定結果を示すグラフである。
【図14】交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの対角成分の測定結果を示すグラフである。
【図15】交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの対角成分の測定結果を示すグラフである。
【図16】交流磁界の周波数を変化させた場合の透磁率テンソルの非対角成分の測定結果を対角成分と対比して示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
A…被測定物、1…透磁率測定装置3…磁界発生源、4…検出部、7…絶縁板、7a…主面、8…金属膜(導体部)、11…コイル、14…ループ面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に磁界を印加して前記被測定物の透磁率を測定するための透磁率測定装置であって、
所定の方向に交流磁界を発生させる磁界発生源と、
前記被測定物を内部に固定可能なループ状のコイルを含み、前記コイルのループ面の法線と前記所定の方向との成す角を変更可能に構成された検出部と、
を備えることを特徴とする透磁率測定装置。
【請求項2】
前記磁界発生源は、平板状の絶縁板と、前記絶縁板の主面上に直線状に形成された導体部とを有し、
前記検出部は、前記主面上の前記導体部に対向して設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の透磁率測定装置。
【請求項3】
被測定物に磁界を印加して前記被測定物の透磁率を測定する透磁率測定方法であって、
磁界発生源を用いて所定の方向に交流磁界を発生させる第1のステップと、
前記被測定物をループ状のコイルの内部において第1の配置方向に固定させた状態で、前記コイルを、ループ面の法線と前記所定の方向とがほぼ平行になるように、前記交流磁界中に配置する第2のステップと、
前記コイルの内部に前記被測定物が存在しない状態で、前記コイルを、前記第2のステップにおける方向と同一の方向を向くように、前記交流磁界中に配置する第3のステップと、
前記第2及び第3のステップによって配置されたそれぞれの前記コイルの両端に発生する出力電圧に基づいて、前記被測定物の透磁率の対角成分を測定する第4のステップと、
前記被測定物を前記コイルの内部において前記第1の配置方向に固定させた状態で、前記法線と前記所定の方向との成す角が変化するように、前記コイルを移動させる第5のステップと、
前記コイルの内部に前記被測定物が存在しない状態で、前記コイルを、前記第5のステップにおける方向と同一の方向を向くように、前記交流磁界中に配置する第6のステップと、
前記第5及び第6のステップによって配置された前記コイルの両端に発生する出力電圧に基づいて、前記被測定物の透磁率の非対角成分を測定する第7のステップと
を備えることを特徴とする透磁率測定方法。
【請求項4】
前記被測定物を、前記コイルの内部において第1の配置方向に対して直角に回転された第2の配列方向に固定させる第8のステップと、
前記第8のステップによって配置された前記被測定物を対象にして、前記被測定物の透磁率の対角成分及び非対角成分を測定する第9のステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の透磁率測定方法。
【請求項5】
前記第1のステップでは、平板状の絶縁板の主面上に直線状に導体部が形成された前記磁界発生源を用いて交流磁界を発生させ、
前記第2〜第7のステップでは、前記コイルを前記磁界発生源に対向して配置させる、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の透磁率測定方法。
【請求項1】
被測定物に磁界を印加して前記被測定物の透磁率を測定するための透磁率測定装置であって、
所定の方向に交流磁界を発生させる磁界発生源と、
前記被測定物を内部に固定可能なループ状のコイルを含み、前記コイルのループ面の法線と前記所定の方向との成す角を変更可能に構成された検出部と、
を備えることを特徴とする透磁率測定装置。
【請求項2】
前記磁界発生源は、平板状の絶縁板と、前記絶縁板の主面上に直線状に形成された導体部とを有し、
前記検出部は、前記主面上の前記導体部に対向して設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の透磁率測定装置。
【請求項3】
被測定物に磁界を印加して前記被測定物の透磁率を測定する透磁率測定方法であって、
磁界発生源を用いて所定の方向に交流磁界を発生させる第1のステップと、
前記被測定物をループ状のコイルの内部において第1の配置方向に固定させた状態で、前記コイルを、ループ面の法線と前記所定の方向とがほぼ平行になるように、前記交流磁界中に配置する第2のステップと、
前記コイルの内部に前記被測定物が存在しない状態で、前記コイルを、前記第2のステップにおける方向と同一の方向を向くように、前記交流磁界中に配置する第3のステップと、
前記第2及び第3のステップによって配置されたそれぞれの前記コイルの両端に発生する出力電圧に基づいて、前記被測定物の透磁率の対角成分を測定する第4のステップと、
前記被測定物を前記コイルの内部において前記第1の配置方向に固定させた状態で、前記法線と前記所定の方向との成す角が変化するように、前記コイルを移動させる第5のステップと、
前記コイルの内部に前記被測定物が存在しない状態で、前記コイルを、前記第5のステップにおける方向と同一の方向を向くように、前記交流磁界中に配置する第6のステップと、
前記第5及び第6のステップによって配置された前記コイルの両端に発生する出力電圧に基づいて、前記被測定物の透磁率の非対角成分を測定する第7のステップと
を備えることを特徴とする透磁率測定方法。
【請求項4】
前記被測定物を、前記コイルの内部において第1の配置方向に対して直角に回転された第2の配列方向に固定させる第8のステップと、
前記第8のステップによって配置された前記被測定物を対象にして、前記被測定物の透磁率の対角成分及び非対角成分を測定する第9のステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の透磁率測定方法。
【請求項5】
前記第1のステップでは、平板状の絶縁板の主面上に直線状に導体部が形成された前記磁界発生源を用いて交流磁界を発生させ、
前記第2〜第7のステップでは、前記コイルを前記磁界発生源に対向して配置させる、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の透磁率測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−58242(P2008−58242A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238037(P2006−238037)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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