透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー
【課題】透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーを提供すること。
【解決手段】本発明は単一の試片または複雑な内部構造を分析するために3方向以上から高い精度の観察が行えるホルダーに係り、試片を支持するクラドルが回転できるだけではなく、前後および左右に移動できるようにして試片の方向を自由に変更して試片を一層正確に3次元的に分析できるようにした透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーに関する。
【解決手段】本発明は単一の試片または複雑な内部構造を分析するために3方向以上から高い精度の観察が行えるホルダーに係り、試片を支持するクラドルが回転できるだけではなく、前後および左右に移動できるようにして試片の方向を自由に変更して試片を一層正確に3次元的に分析できるようにした透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3方向以上から観察可能な透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)の試片ホルダーに係り、さらに詳しくは、試片における観察部分を回転軸中心に移動した後、回転および傾斜するようにして試片の分析を一層正確に行うことのできる透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーに関する。
【0002】
さらに詳しくは、回転ギアを備えて試片クラドルを回転させることはもとより、ギアカバーを水平に移動させてクラドルを回転軸中心に移動できるようにして試片を3軸からいずれも観察できるようにした透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーに関する。
【背景技術】
【0003】
透過電子顕微鏡を利用して、物質の内部構造を分析するためには、電子ビームが透過できるように直径3mm内外の円形状に試片を準備する。 準備 された試片は、分析目的に応じて、適したホルダーに装着した後に透過電子顕微鏡の内部に挿入して観察する。
【0004】
透過電子顕微鏡に用いられるホルダーは、その特性に応じて、傾斜型、回転型、加熱型、冷却型、冷却移動に分類される。このような透過電子顕微鏡ホルダーを用いて物質の内部構造を分析するためには試片を多方向から観察する必要がある。
【0005】
このように試片を多方向から分析するためには、自由に傾斜可能なホルダーを利用して、このホルダーは、透過電子顕微鏡のポールピースの遊隙に応じて異なるが、一般に最大±30°、特別の場合には±70°まで傾斜させることができる。
【0006】
傾斜が±30°であるホルダーの場合には試片クラドルを傾斜させる方式を採用するが、クラドルの傾斜が±30°以上になるとクラドルそのものの厚さにより試片の観察が容易ではない。これに対し、±70°まで傾斜可能なホルダーの場合にはホルダーそのものを傾斜させる方式を採用するが、ポールピースの間隔が広くて、ゴニオメーター(goniometer)の高角傾斜の機能が取りそろった透過電子顕微鏡(TEM)において観察可能である。
【0007】
試片を多方向から観察するために製作された2軸傾斜ホルダーの場合にはクラドル(±30°)とホルダー(±70°)を二つとも利用できる長所があるが、二つの傾斜軸を除く他の方向に対する分析を行うことができないという短所がある。
【0008】
このような短所を補完するために製作されたのが回転ホルダーである。回転ホルダーの場合には観察点が回転軸中心にある場合、360°回転しながら全方向を観察することができる長所がある。しかし万一、観察地点が回転軸中心に置かれていなかった場合にはクラドルを回転させたり傾斜させたりすると、試片が顕微鏡の視界から外れてしまい、高倍率で拡大された状態で視界から外れた試片を顕微鏡の視界内に移動させることに難点がある。例え、視界内に移動させるとしても、試片が置かれた状態が変更されているため観測されたイメージを組み合わせて3次元分析を行うことには多くの難点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記のような従来の技術における諸問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、試料の方向を自由に変更して試料を一層正確に3次元的に分析することのできる透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーを提供するところにある。
【0010】
特に、試片の3次元分析を円滑に行うために、既存の傾斜ホルダーまたは回転ホルダーの短所を補完して開発されたものであり、試片クラドルを水平に移動させて試料が回転軸の中心に移動できることはもとより、回転できるようにして3面を全て観察できるようにした透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明は、試片が装着されるホルダーヘッドと、装着された試片を駆動する制御部と、を備えてなり、ホルダーヘッドに載置された試片を移動させながら観察するためのものであり、
(A)前記ホルダーヘッドは、ヘッド本体に穿設されたクラドル載置孔に設けられて試片を支持する上下クラドルと、前記上下クラドルの間に介装されてこれらを回転させる回転ギアと、前記回転ギアに噛合されて回転ギアを回転させる回転駆動ギアと、前記上クラドルの上部に水平に移動自在に設けられたギアカバーと、前記ギアカバーに設けられたラックギアに噛合されてラックギアを駆動させることによりギアカバーがヘッド本体の長手方向と垂直方向に移動されるようにするラック駆動ギアと、を備え、
(B)前記制御部は、前記回転駆動ギアを回転させるクラドル回転手段と、前記クラドルを水平移動させる前後および左右移動手段と、を備えてなり、前記前後および左右移動手段の駆動により前記ギアカバーを前後および左右に移動させてクラドルを水平に移動させて試料が回転軸を中心に移動できることはもとより、回転できるようにして3軸を全て観察できるようにした透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーを提供する。
【発明の効果】
【0012】
既存の傾斜ホルダーまたは回転ホルダーを構成するクラドルの一方の側にクラドルを水平に移動可能なギアカバーを設け、このギアカバーを前後、左右に移動させることにより 回転軸の中心にくるようにすることによって、クラドルに載置された試片が顕微鏡の視界内において回転したり傾斜したりすることで方向が切り換わり、このようにして方向が切り換わった状態で試片を観察して分析することができることから、一層正確に試片の3次元分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る試料ホルダーの斜視図。
【図2】本発明に係る試料ホルダーの一部を省略した断面図。
【図3】ホルダーヘッドとコネクタの部分を拡大して示す斜視図。
【図4】ホルダーヘッドのみの拡大斜視図。
【図5】図4のA−Aに沿って切り取ったホルダーヘッドの断面図。
【図6】図5のB部分の拡大図。
【図7】ホルダーヘッドの試片載置部を拡大して示す平面図。
【図8】ホルダーヘッドの分解斜視図。
【図9】ギアカバーとその駆動手段を分解して示す底面分解斜視図。
【図10】制御部の一部を省略した平面図。
【図11】制御部の一部を省略した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、本発明を詳述する。しかしながら、添付図面は本発明の技術的思想の内容と範囲を容易に説明するための例示に過ぎず、これにより本発明の技術的範囲が限定または変更されることはない。なお、このような例示に基づいて本発明の技術的思想の範囲内において種々の変形と変更が可能であることは当業者にとって自明である。
【0015】
本発明の試片ホルダーは、試片が装着されるホルダーヘッド10と、装着された試片を駆動する制御部20と、から構成され、(A)前記ホルダーヘッド10は、ヘッド本体1に穿設されたクラドル載置孔1aに設けられて試片を支持する上下クラドル2、3と、前記上下クラドル2、3の間に介装されてこれらを回転させる回転ギア4と、前記回転ギア4に噛合されて回転ギア4を回転させる回転駆動ギア5と、前記上クラドル3の上部に水平に移動自在に設けられたギアカバー6と、前記ギアカバー6に設けられたラックギア61に噛合されてラックギアを駆動させることによりギアカバー6がヘッド本体の長手方向と垂直方向に移動されるようにするラック駆動ギア62と、から構成され、(B)前記制御部20は、前記回転駆動ギア5を回転させるクラドル回転手段21と、前記クラドル2、3を水平移動させる前後および左右移動手段22、23と、を備えてなる。
【0016】
前記ホルダーヘッド10は、試片が装着されるクラドル2、3が回転されるだけではなく、水平に移動できるように支持するための手段であり、ホルダーの核心的な部分であり、手狭い空間において3軸駆動が可能になるように高い精度で加工して製作することが好ましい。
【0017】
前記ホルダーヘッド10は、図1に示すように、連結手段30により前記制御部20と連結されて制御部20から提供される動力により前記クラドル2、3を回転させ、かつ、水平に移動させる。
【0018】
前記連結手段30は、顕微鏡の外部に設けられた制御部20と内部に挿入されるホルダーヘッド10との間の距離が長い場合に制御部30の動力をホルダーヘッド10に伝達するための手段であり、図1および図2に示すように、ホルダーコネクタ31とホルダー胴体32とから構成される。これらは、図2に示すように、円筒状のハウジング31a、32aの内部に二重に軸を設けることで構成される。すなわち、前記クラドル2、3を回転させるための動力を伝達する内部シャフト31c、32cと、前記内部シャフトの外部に設けられた管体状の外部チューブ31b、32bと、から構成される。
【0019】
上述した前記ホルダーヘッド10は、図8に分解して示すように、ハウジングの役割を果たすヘッド本体1と、ヘッド本体1に穿設されたクラドル載置孔1aに設けられて試片を支持する上下クラドル2、3と、を備えてなる。
【0020】
前記ヘッド本体1に穿設されたクラドル載置孔1aは、図8に示すように、円形に形成されており、その内部に配設される前記クラドル2、3もまた外面が円形をなす柱形状に形成されている。すなわち、前記クラドル2、3は、その上に置かれた試片を顕微鏡で観察するときに電子ビームが通過できるように中央に透過孔2a、3aが穿設され、回転が円滑になされるように円筒状(傾斜面60°)に形成されている。前記クラドル2、3を回転させ、かつ、水平に移動させるための手段として回転手段および水平移動手段が備えられている。
【0021】
クラドル2、3を回転させるための手段としては、前記上下クラドル2、3の間に介装されてこれらを回転させる回転ギア4と、前記回転ギア4に噛合されて回転ギア4を回転させる回転駆動ギア5と、を備えている。
【0022】
前記回転ギア4は、図5、図6および図8に示すように、中央の透過孔4 aに下クラドル2の外周面が嵌着されて一方の端部の外壁に歯41が形成されており、前記回転駆動ギア5には前記回転ギア4の歯に噛合される歯が形成されている。このような回転駆動ギア5は上述した制御部20から動力を伝達されて駆動され、制御部20の動力を回転駆動ギア5に伝達する手段としてギア回転軸51を備えている。
【0023】
すなわち、前記制御部20を構成するクラドル回転手段21から発生された動力はギア回転軸51を介して回転駆動ギア5に伝達され、このように回転する回転駆動ギア5と回転ギア4の回転中心は互いに角をなしているため、前記回転駆動ギア5と回転ギア4は、図6および図8に示すように、ベベルギアから構成されることが好ましい。
【0024】
前記クラドル回転手段21は、図10に示すように、前記ホルダー胴体32に備えられた内部シャフト32cの端部に設けられた軸ギア21aと、前記軸ギア21aに噛合されるモーターギア21bが回転軸に設けられた駆動モーター21cと、から構成され、前記内部シャフト32cは、図5から図8に示すギア回転軸51と継合されて回転駆動ギア5を駆動させる。
【0025】
上述したように、クラドル回転手段21により回転されるクラドル2、3に載置された試片は水平にも移動可能である必要があり、このように試片を水平に移動させるために、前記上下クラドル2、3のうち上クラドル3は水平に移動可能に設けられている。すなわち、図6に示すように、前記上クラドル3の下部は小径に形成されて下クラドル2に穿孔された透過孔2aの内部に嵌め込まれるが、透過孔2aの直径よりも小さな外径を有するように構成して上クラドル3が自由に水平移動できるように構成されており、この上クラドル3は上述した水平移動手段により水平に移動される。
【0026】
前記上クラドル3を水平に移動させるための手段は、前記上クラドル3の上部に水平に移動可能に設けられたギアカバー6と、前記ギアカバー6に設けられたラックギア61に噛合されてラックギアを駆動させることによりギアカバー6がヘッド本体の長手方向と垂直方向に移動されるようにするラック駆動ギア62と、から構成される。前記ラック駆動ギア62は、前記制御部20に設けられた左右移動手段23から動力を伝達されて駆動される。
【0027】
前記ギアカバー6は、図8および図9に示すように、「L」字状に曲げられており、水平部分には試料通過孔6aが穿孔されている。前記試料通過孔6aの直径は前記上クラドル3の外径に等しいかまたはそれよりもわずかに小さいため、上クラドル3が前記試料通過孔6aに嵌め込まれた状態で設けられる(図6参照)。
【0028】
前記ギアカバー6の垂直部分の途中には前記ラックギア61が一体に形成されてもよく、図8および図9に示すように、ギア取付溝6bを凹設し、このギア取付溝6bにラックギア61を着脱可能に設けてもよい。
【0029】
前記ギアカバー6の垂直部分の下段はヘッド本体1に形成されたカバー移動孔1bの内部に水平に移動可能なように設置される。
【0030】
前記ギアカバー6には前記ラック駆動ギア62付きラックギア駆動軸62aが貫通する軸貫通孔6cが軸方向に形成されている。
【0031】
前記左右移動手段23は、図10に示すように、前記ホルダー胴体32に備えられた外部チューブ32bの一方の端部に設けられた軸ギア23aと、前記軸ギア23aと噛合されるモーターギア23bが設けられた駆動モーター23cと、から構成され、前記外部チューブ32bは、図5から図8に示すラック駆動ギア62付きラックギア駆動軸62aと繋合される。もちろん、前記ラックギア駆動軸62aは円筒状のパイプ状に形成されているため、その内部にギア回転軸51が貫設される。
【0032】
上述した左右駆動手段23によりラック駆動ギア62とラックギア61を作動させて移動されるギアカバー6の移動方向は軸と垂直をなす方向であり、ギアカバー6を軸の長手方向に移動させるための手段は前記制御部20に設けられた前後移動手段22である。
【0033】
前記前後移動手段22は、図10および図11に示すように、前記ホルダー胴体32に備えられた外部チューブ32bの一方の端部に外部チューブの長手方向に設けられたラック22aと、前記ラック22aの歯と噛合されるピニオン22bが設けられた駆動モーター22cと、から構成され、前記外部チューブ32bは、ラックギア駆動軸62aと繋合されてラック22aが軸方向に移動されることにより前記ギアカバー6が移動し、ギアカバー6の中央に嵌め込まれた上クラドル3が軸方向に移動される。
【0034】
あるいは、前記前後移動手段22は、例えば、前記外部チューブ32bの一方の端部に設けられて供給される電気により伸縮されて外部チューブを移動させる圧電アクチュエータ(図示せず)から構成されてもよい。
【0035】
上述したように、前後および左右移動手段22、23により水平に移動されるギアカバー6は、上述したように、「L」字状に曲げられ、垂直部分はギア回転軸51が貫通してヘッド本体1に支持されるが、水平部分の自由端部は支持される手段がなく、ヘッド本体1から離れる可能性があるため、これを防止するための支持手段が必要となり、このような支持手段としてカバー支持具7が設けられている。
【0036】
前記カバー支持具7は、図8に示すように、ヘッド本体1のクラドル載置溝1aの一方の側に形成された支持具取付溝1cの内部に水平に移動できるように設けられており、前記ギアカバー6に面する面の上端にはギアカバーの自由端部が引っ掛かる係止爪71が形成されており、反対面に形成されたスプリング固定溝7aにはスプリング8が設けられていてカバー支持具7がギアカバー6に向かって押されてギアカバー6の自由端部を弾性的に支持することになる。
【0037】
また、前記係止爪71の下部に形成された球載置溝7cには球9が設けられており、この球9は前記ギアカバー6が左右方向、すなわち、軸と垂直をなす方向に移動するときに発生するカバー支持具7とギアカバー6との間の摩擦力を極力抑えるためのものである。
【0038】
さらに、前記カバー支持具7は、上述したように、ギアカバー6に向かって移動可能である必要があり、このようにカバー支持具7が水平に移動できるようにするためには、図8に示すように、ヘッド本体1の側壁を貫通して係合ピン摺動孔1dを長く形成し、カバー支持具7にはピン貫通孔7bを形成して、このピン貫通孔7bに嵌め込まれた係合ピン72の両端部が前記係合ピン摺動孔1dの内部において前後に移動できるようにしている。
【0039】
上記のように構成されたホルダーにおいて、前記ホルダーヘッド10に設けられた上クラドル3は中央に観察試片が装着される要素であり、ホルダーが傾斜したときに電子ビームの干渉を減らすために内側面を中心軸に対して60°程度傾けた状態で形成し、試料を装着するときに着脱し易くするために上面に四角溝を形成している。
【0040】
以下、このように構成された本発明の試片ホルダーの組み立て手順を説明する。
【0041】
まず、ホルダーヘッド10の組み立て過程について説明する。
【0042】
1.ホルダーヘッド10のヘッド本体1に長手方向に形成された軸孔に前記ギア回転軸51とラックギア駆動軸62aを設ける。もちろん、前記ギア回転軸51はラックギア駆動軸62aの中心を貫通して設けられ、それぞれには回転駆動ギア5とラック駆動ギア61が設けられており、軸51、62aとギア5、61はボンディング処理する。
【0043】
2.前記下クラドル2の外周面に前記回転ギア4を嵌着し、下クラドル2の中央に形成された透過孔2aに上クラドル3を嵌設する。
【0044】
3.組み立てられたクラドル組立体をヘッド本体1に形成されたクラドル載置孔1aに組み付ける。
【0045】
4.ギアカバー6の後端に設けられたラックギア61と前記ラック駆動ギア62が係合され、回転ギア4に形成されたギアが回転駆動ギア5と係合された状態でギアカバー6をクラドル組立体の上部に設ける。このとき、ギアカバー6の底面に固定板などを設けてギアカバー6がヘッド本体1から外れないようにしてもよい。
【0046】
5.カバー支持具7に形成されたスプリング固定溝7aにスプリング8をはめ込んで固定した後、カバー支持具7をヘッド本体1に形成された支持具取付溝1cに嵌め込み、その後、係合ピン72を係合ピン摺動孔1dとピン貫通孔7bに貫通させて固定する。
【0047】
このようにして組み立てられたホルダーヘッド10はホルダーコネクタ31に連結され、ホルダーコネクタ31はホルダー本体32と連結される。もちろん、ホルダー本体32は制御部20に連結された状態であり、ホルダーコネクタ31とホルダー本体32を構成するハウジング31a、32b、外部チューブ31b、32b、内部シャフト31c、32cが互いに連結され、ホルダーコネクタ31に設けられた外部チューブ31bはホルダーヘッド10に備えられたラックギア駆動軸62aと繋合され、内部シャフト31cはギア回転軸51と継合される。
【0048】
このとき、ホルダーコネクタ31、ホルダー胴体32およびホルダーヘッド10が組み立てられた後に内部の軸51、62aがホルダーヘッド10に向かって押されないように組み立て、最初のセット時には、過度のトルクを受けた場合にラックギア駆動軸62a、 外部チューブ31b、32bやギアのボンディング部分が変形する恐れがあるため、回転量を少なくしてセットする。
【0049】
このように構成された試料ホルダーの駆動は、以下の手順に従い行われる。
【0050】
1.駆動前に、まず、ホルダーヘッド10の機械的に摩擦を引き起こす部分に異物がないかどうか、および真空グリースが適量塗布されているかどうかを確認する。
【0051】
2.透過電子顕微鏡(TEM)専用に製作された試片をホルダーヘッド10に設けられたクラドル2、3に装着する。
【0052】
3.試料が装着された試料ホルダーを透過電子顕微鏡(TEM)の内部に挿入する。
【0053】
4.制御部20と駆動用制御コンピュータ(図示せず)との間に制御ケーブルを連結する。
【0054】
5.制御コンピュータのモーター駆動プログラムを用いて3台の駆動モーター21c、22c、23cの駆動を制御して低倍率から観察対象を検索する。
【0055】
6.観察の対象が定まると、試料ホルダーの中心軸、すなわち、顕微鏡の視界の内部に試片が移動されるように前後移動手段22と左右移動手段23を駆動させてクラドルを移動させる。
【0056】
7.低倍率から高倍率へと顕微鏡の倍率を調節しながら試片が顕微鏡の視界から外れないように精度よく調整する。
【0057】
8.高倍率上においても離脱現象を確認後に実験を行う。
【0058】
9.駆動モーターとゴニオメーター(TEMカラム)のみを用いて試料を観察する。
【0059】
上記のように構成された本発明の試片ホルダーは、既存の傾斜ホルダーまたは回転ホルダーを構成するクラドルを、ギアカバーを用いて水平に移動させて試片が常に顕微鏡の視界内に位置するようにすることにより、試片を一層容易かつ正確に観察して分析することができる。
【符号の説明】
【0060】
10:ホルダーヘッド、
1:ヘッド本体、
1a:クラドル載置孔、
1b:カバー移動孔、
1c:支持具取付溝、
1d:係合ピン摺動孔、
2、3:クラドル、
2a、3a、4a:透過孔、
4:回転ギア、
41:ベベルギアの歯、
5:回転駆動ギア、
51:ギア回転軸、
6:ギアカバー、
6a:試料通過孔、
6b:ギア取付溝、
6c:軸貫通溝、
61:ラックギア、
62:ラック駆動ギア、
62a:ギア駆動パイプ、
7:カバー支持具、
7a:スプリング固定溝、
7b:ピン貫通孔、
7c:球載置溝、
71:係止爪、
72:係合ピン、
8:スプリング、
9:球、
20:制御部、
21:クラドル回転手段、
21a:軸ギア、
21b:モーターギア、
21c、22c、23c:駆動モーター、
22:前後移動手段、
22a:ラック、
22b:ピニオン、
23:左右移動手段、
23a:軸ギア、
23b:モーターギア、
30:連結手段、
31:ホルダーコネクタ、
32:ホルダー胴体、
31a、32a:ハウジング、
31b、32b:外部チューブ、
31c、32c:内部シャフト、
【技術分野】
【0001】
本発明は3方向以上から観察可能な透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)の試片ホルダーに係り、さらに詳しくは、試片における観察部分を回転軸中心に移動した後、回転および傾斜するようにして試片の分析を一層正確に行うことのできる透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーに関する。
【0002】
さらに詳しくは、回転ギアを備えて試片クラドルを回転させることはもとより、ギアカバーを水平に移動させてクラドルを回転軸中心に移動できるようにして試片を3軸からいずれも観察できるようにした透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーに関する。
【背景技術】
【0003】
透過電子顕微鏡を利用して、物質の内部構造を分析するためには、電子ビームが透過できるように直径3mm内外の円形状に試片を準備する。 準備 された試片は、分析目的に応じて、適したホルダーに装着した後に透過電子顕微鏡の内部に挿入して観察する。
【0004】
透過電子顕微鏡に用いられるホルダーは、その特性に応じて、傾斜型、回転型、加熱型、冷却型、冷却移動に分類される。このような透過電子顕微鏡ホルダーを用いて物質の内部構造を分析するためには試片を多方向から観察する必要がある。
【0005】
このように試片を多方向から分析するためには、自由に傾斜可能なホルダーを利用して、このホルダーは、透過電子顕微鏡のポールピースの遊隙に応じて異なるが、一般に最大±30°、特別の場合には±70°まで傾斜させることができる。
【0006】
傾斜が±30°であるホルダーの場合には試片クラドルを傾斜させる方式を採用するが、クラドルの傾斜が±30°以上になるとクラドルそのものの厚さにより試片の観察が容易ではない。これに対し、±70°まで傾斜可能なホルダーの場合にはホルダーそのものを傾斜させる方式を採用するが、ポールピースの間隔が広くて、ゴニオメーター(goniometer)の高角傾斜の機能が取りそろった透過電子顕微鏡(TEM)において観察可能である。
【0007】
試片を多方向から観察するために製作された2軸傾斜ホルダーの場合にはクラドル(±30°)とホルダー(±70°)を二つとも利用できる長所があるが、二つの傾斜軸を除く他の方向に対する分析を行うことができないという短所がある。
【0008】
このような短所を補完するために製作されたのが回転ホルダーである。回転ホルダーの場合には観察点が回転軸中心にある場合、360°回転しながら全方向を観察することができる長所がある。しかし万一、観察地点が回転軸中心に置かれていなかった場合にはクラドルを回転させたり傾斜させたりすると、試片が顕微鏡の視界から外れてしまい、高倍率で拡大された状態で視界から外れた試片を顕微鏡の視界内に移動させることに難点がある。例え、視界内に移動させるとしても、試片が置かれた状態が変更されているため観測されたイメージを組み合わせて3次元分析を行うことには多くの難点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記のような従来の技術における諸問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、試料の方向を自由に変更して試料を一層正確に3次元的に分析することのできる透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーを提供するところにある。
【0010】
特に、試片の3次元分析を円滑に行うために、既存の傾斜ホルダーまたは回転ホルダーの短所を補完して開発されたものであり、試片クラドルを水平に移動させて試料が回転軸の中心に移動できることはもとより、回転できるようにして3面を全て観察できるようにした透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明は、試片が装着されるホルダーヘッドと、装着された試片を駆動する制御部と、を備えてなり、ホルダーヘッドに載置された試片を移動させながら観察するためのものであり、
(A)前記ホルダーヘッドは、ヘッド本体に穿設されたクラドル載置孔に設けられて試片を支持する上下クラドルと、前記上下クラドルの間に介装されてこれらを回転させる回転ギアと、前記回転ギアに噛合されて回転ギアを回転させる回転駆動ギアと、前記上クラドルの上部に水平に移動自在に設けられたギアカバーと、前記ギアカバーに設けられたラックギアに噛合されてラックギアを駆動させることによりギアカバーがヘッド本体の長手方向と垂直方向に移動されるようにするラック駆動ギアと、を備え、
(B)前記制御部は、前記回転駆動ギアを回転させるクラドル回転手段と、前記クラドルを水平移動させる前後および左右移動手段と、を備えてなり、前記前後および左右移動手段の駆動により前記ギアカバーを前後および左右に移動させてクラドルを水平に移動させて試料が回転軸を中心に移動できることはもとより、回転できるようにして3軸を全て観察できるようにした透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダーを提供する。
【発明の効果】
【0012】
既存の傾斜ホルダーまたは回転ホルダーを構成するクラドルの一方の側にクラドルを水平に移動可能なギアカバーを設け、このギアカバーを前後、左右に移動させることにより 回転軸の中心にくるようにすることによって、クラドルに載置された試片が顕微鏡の視界内において回転したり傾斜したりすることで方向が切り換わり、このようにして方向が切り換わった状態で試片を観察して分析することができることから、一層正確に試片の3次元分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る試料ホルダーの斜視図。
【図2】本発明に係る試料ホルダーの一部を省略した断面図。
【図3】ホルダーヘッドとコネクタの部分を拡大して示す斜視図。
【図4】ホルダーヘッドのみの拡大斜視図。
【図5】図4のA−Aに沿って切り取ったホルダーヘッドの断面図。
【図6】図5のB部分の拡大図。
【図7】ホルダーヘッドの試片載置部を拡大して示す平面図。
【図8】ホルダーヘッドの分解斜視図。
【図9】ギアカバーとその駆動手段を分解して示す底面分解斜視図。
【図10】制御部の一部を省略した平面図。
【図11】制御部の一部を省略した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、本発明を詳述する。しかしながら、添付図面は本発明の技術的思想の内容と範囲を容易に説明するための例示に過ぎず、これにより本発明の技術的範囲が限定または変更されることはない。なお、このような例示に基づいて本発明の技術的思想の範囲内において種々の変形と変更が可能であることは当業者にとって自明である。
【0015】
本発明の試片ホルダーは、試片が装着されるホルダーヘッド10と、装着された試片を駆動する制御部20と、から構成され、(A)前記ホルダーヘッド10は、ヘッド本体1に穿設されたクラドル載置孔1aに設けられて試片を支持する上下クラドル2、3と、前記上下クラドル2、3の間に介装されてこれらを回転させる回転ギア4と、前記回転ギア4に噛合されて回転ギア4を回転させる回転駆動ギア5と、前記上クラドル3の上部に水平に移動自在に設けられたギアカバー6と、前記ギアカバー6に設けられたラックギア61に噛合されてラックギアを駆動させることによりギアカバー6がヘッド本体の長手方向と垂直方向に移動されるようにするラック駆動ギア62と、から構成され、(B)前記制御部20は、前記回転駆動ギア5を回転させるクラドル回転手段21と、前記クラドル2、3を水平移動させる前後および左右移動手段22、23と、を備えてなる。
【0016】
前記ホルダーヘッド10は、試片が装着されるクラドル2、3が回転されるだけではなく、水平に移動できるように支持するための手段であり、ホルダーの核心的な部分であり、手狭い空間において3軸駆動が可能になるように高い精度で加工して製作することが好ましい。
【0017】
前記ホルダーヘッド10は、図1に示すように、連結手段30により前記制御部20と連結されて制御部20から提供される動力により前記クラドル2、3を回転させ、かつ、水平に移動させる。
【0018】
前記連結手段30は、顕微鏡の外部に設けられた制御部20と内部に挿入されるホルダーヘッド10との間の距離が長い場合に制御部30の動力をホルダーヘッド10に伝達するための手段であり、図1および図2に示すように、ホルダーコネクタ31とホルダー胴体32とから構成される。これらは、図2に示すように、円筒状のハウジング31a、32aの内部に二重に軸を設けることで構成される。すなわち、前記クラドル2、3を回転させるための動力を伝達する内部シャフト31c、32cと、前記内部シャフトの外部に設けられた管体状の外部チューブ31b、32bと、から構成される。
【0019】
上述した前記ホルダーヘッド10は、図8に分解して示すように、ハウジングの役割を果たすヘッド本体1と、ヘッド本体1に穿設されたクラドル載置孔1aに設けられて試片を支持する上下クラドル2、3と、を備えてなる。
【0020】
前記ヘッド本体1に穿設されたクラドル載置孔1aは、図8に示すように、円形に形成されており、その内部に配設される前記クラドル2、3もまた外面が円形をなす柱形状に形成されている。すなわち、前記クラドル2、3は、その上に置かれた試片を顕微鏡で観察するときに電子ビームが通過できるように中央に透過孔2a、3aが穿設され、回転が円滑になされるように円筒状(傾斜面60°)に形成されている。前記クラドル2、3を回転させ、かつ、水平に移動させるための手段として回転手段および水平移動手段が備えられている。
【0021】
クラドル2、3を回転させるための手段としては、前記上下クラドル2、3の間に介装されてこれらを回転させる回転ギア4と、前記回転ギア4に噛合されて回転ギア4を回転させる回転駆動ギア5と、を備えている。
【0022】
前記回転ギア4は、図5、図6および図8に示すように、中央の透過孔4 aに下クラドル2の外周面が嵌着されて一方の端部の外壁に歯41が形成されており、前記回転駆動ギア5には前記回転ギア4の歯に噛合される歯が形成されている。このような回転駆動ギア5は上述した制御部20から動力を伝達されて駆動され、制御部20の動力を回転駆動ギア5に伝達する手段としてギア回転軸51を備えている。
【0023】
すなわち、前記制御部20を構成するクラドル回転手段21から発生された動力はギア回転軸51を介して回転駆動ギア5に伝達され、このように回転する回転駆動ギア5と回転ギア4の回転中心は互いに角をなしているため、前記回転駆動ギア5と回転ギア4は、図6および図8に示すように、ベベルギアから構成されることが好ましい。
【0024】
前記クラドル回転手段21は、図10に示すように、前記ホルダー胴体32に備えられた内部シャフト32cの端部に設けられた軸ギア21aと、前記軸ギア21aに噛合されるモーターギア21bが回転軸に設けられた駆動モーター21cと、から構成され、前記内部シャフト32cは、図5から図8に示すギア回転軸51と継合されて回転駆動ギア5を駆動させる。
【0025】
上述したように、クラドル回転手段21により回転されるクラドル2、3に載置された試片は水平にも移動可能である必要があり、このように試片を水平に移動させるために、前記上下クラドル2、3のうち上クラドル3は水平に移動可能に設けられている。すなわち、図6に示すように、前記上クラドル3の下部は小径に形成されて下クラドル2に穿孔された透過孔2aの内部に嵌め込まれるが、透過孔2aの直径よりも小さな外径を有するように構成して上クラドル3が自由に水平移動できるように構成されており、この上クラドル3は上述した水平移動手段により水平に移動される。
【0026】
前記上クラドル3を水平に移動させるための手段は、前記上クラドル3の上部に水平に移動可能に設けられたギアカバー6と、前記ギアカバー6に設けられたラックギア61に噛合されてラックギアを駆動させることによりギアカバー6がヘッド本体の長手方向と垂直方向に移動されるようにするラック駆動ギア62と、から構成される。前記ラック駆動ギア62は、前記制御部20に設けられた左右移動手段23から動力を伝達されて駆動される。
【0027】
前記ギアカバー6は、図8および図9に示すように、「L」字状に曲げられており、水平部分には試料通過孔6aが穿孔されている。前記試料通過孔6aの直径は前記上クラドル3の外径に等しいかまたはそれよりもわずかに小さいため、上クラドル3が前記試料通過孔6aに嵌め込まれた状態で設けられる(図6参照)。
【0028】
前記ギアカバー6の垂直部分の途中には前記ラックギア61が一体に形成されてもよく、図8および図9に示すように、ギア取付溝6bを凹設し、このギア取付溝6bにラックギア61を着脱可能に設けてもよい。
【0029】
前記ギアカバー6の垂直部分の下段はヘッド本体1に形成されたカバー移動孔1bの内部に水平に移動可能なように設置される。
【0030】
前記ギアカバー6には前記ラック駆動ギア62付きラックギア駆動軸62aが貫通する軸貫通孔6cが軸方向に形成されている。
【0031】
前記左右移動手段23は、図10に示すように、前記ホルダー胴体32に備えられた外部チューブ32bの一方の端部に設けられた軸ギア23aと、前記軸ギア23aと噛合されるモーターギア23bが設けられた駆動モーター23cと、から構成され、前記外部チューブ32bは、図5から図8に示すラック駆動ギア62付きラックギア駆動軸62aと繋合される。もちろん、前記ラックギア駆動軸62aは円筒状のパイプ状に形成されているため、その内部にギア回転軸51が貫設される。
【0032】
上述した左右駆動手段23によりラック駆動ギア62とラックギア61を作動させて移動されるギアカバー6の移動方向は軸と垂直をなす方向であり、ギアカバー6を軸の長手方向に移動させるための手段は前記制御部20に設けられた前後移動手段22である。
【0033】
前記前後移動手段22は、図10および図11に示すように、前記ホルダー胴体32に備えられた外部チューブ32bの一方の端部に外部チューブの長手方向に設けられたラック22aと、前記ラック22aの歯と噛合されるピニオン22bが設けられた駆動モーター22cと、から構成され、前記外部チューブ32bは、ラックギア駆動軸62aと繋合されてラック22aが軸方向に移動されることにより前記ギアカバー6が移動し、ギアカバー6の中央に嵌め込まれた上クラドル3が軸方向に移動される。
【0034】
あるいは、前記前後移動手段22は、例えば、前記外部チューブ32bの一方の端部に設けられて供給される電気により伸縮されて外部チューブを移動させる圧電アクチュエータ(図示せず)から構成されてもよい。
【0035】
上述したように、前後および左右移動手段22、23により水平に移動されるギアカバー6は、上述したように、「L」字状に曲げられ、垂直部分はギア回転軸51が貫通してヘッド本体1に支持されるが、水平部分の自由端部は支持される手段がなく、ヘッド本体1から離れる可能性があるため、これを防止するための支持手段が必要となり、このような支持手段としてカバー支持具7が設けられている。
【0036】
前記カバー支持具7は、図8に示すように、ヘッド本体1のクラドル載置溝1aの一方の側に形成された支持具取付溝1cの内部に水平に移動できるように設けられており、前記ギアカバー6に面する面の上端にはギアカバーの自由端部が引っ掛かる係止爪71が形成されており、反対面に形成されたスプリング固定溝7aにはスプリング8が設けられていてカバー支持具7がギアカバー6に向かって押されてギアカバー6の自由端部を弾性的に支持することになる。
【0037】
また、前記係止爪71の下部に形成された球載置溝7cには球9が設けられており、この球9は前記ギアカバー6が左右方向、すなわち、軸と垂直をなす方向に移動するときに発生するカバー支持具7とギアカバー6との間の摩擦力を極力抑えるためのものである。
【0038】
さらに、前記カバー支持具7は、上述したように、ギアカバー6に向かって移動可能である必要があり、このようにカバー支持具7が水平に移動できるようにするためには、図8に示すように、ヘッド本体1の側壁を貫通して係合ピン摺動孔1dを長く形成し、カバー支持具7にはピン貫通孔7bを形成して、このピン貫通孔7bに嵌め込まれた係合ピン72の両端部が前記係合ピン摺動孔1dの内部において前後に移動できるようにしている。
【0039】
上記のように構成されたホルダーにおいて、前記ホルダーヘッド10に設けられた上クラドル3は中央に観察試片が装着される要素であり、ホルダーが傾斜したときに電子ビームの干渉を減らすために内側面を中心軸に対して60°程度傾けた状態で形成し、試料を装着するときに着脱し易くするために上面に四角溝を形成している。
【0040】
以下、このように構成された本発明の試片ホルダーの組み立て手順を説明する。
【0041】
まず、ホルダーヘッド10の組み立て過程について説明する。
【0042】
1.ホルダーヘッド10のヘッド本体1に長手方向に形成された軸孔に前記ギア回転軸51とラックギア駆動軸62aを設ける。もちろん、前記ギア回転軸51はラックギア駆動軸62aの中心を貫通して設けられ、それぞれには回転駆動ギア5とラック駆動ギア61が設けられており、軸51、62aとギア5、61はボンディング処理する。
【0043】
2.前記下クラドル2の外周面に前記回転ギア4を嵌着し、下クラドル2の中央に形成された透過孔2aに上クラドル3を嵌設する。
【0044】
3.組み立てられたクラドル組立体をヘッド本体1に形成されたクラドル載置孔1aに組み付ける。
【0045】
4.ギアカバー6の後端に設けられたラックギア61と前記ラック駆動ギア62が係合され、回転ギア4に形成されたギアが回転駆動ギア5と係合された状態でギアカバー6をクラドル組立体の上部に設ける。このとき、ギアカバー6の底面に固定板などを設けてギアカバー6がヘッド本体1から外れないようにしてもよい。
【0046】
5.カバー支持具7に形成されたスプリング固定溝7aにスプリング8をはめ込んで固定した後、カバー支持具7をヘッド本体1に形成された支持具取付溝1cに嵌め込み、その後、係合ピン72を係合ピン摺動孔1dとピン貫通孔7bに貫通させて固定する。
【0047】
このようにして組み立てられたホルダーヘッド10はホルダーコネクタ31に連結され、ホルダーコネクタ31はホルダー本体32と連結される。もちろん、ホルダー本体32は制御部20に連結された状態であり、ホルダーコネクタ31とホルダー本体32を構成するハウジング31a、32b、外部チューブ31b、32b、内部シャフト31c、32cが互いに連結され、ホルダーコネクタ31に設けられた外部チューブ31bはホルダーヘッド10に備えられたラックギア駆動軸62aと繋合され、内部シャフト31cはギア回転軸51と継合される。
【0048】
このとき、ホルダーコネクタ31、ホルダー胴体32およびホルダーヘッド10が組み立てられた後に内部の軸51、62aがホルダーヘッド10に向かって押されないように組み立て、最初のセット時には、過度のトルクを受けた場合にラックギア駆動軸62a、 外部チューブ31b、32bやギアのボンディング部分が変形する恐れがあるため、回転量を少なくしてセットする。
【0049】
このように構成された試料ホルダーの駆動は、以下の手順に従い行われる。
【0050】
1.駆動前に、まず、ホルダーヘッド10の機械的に摩擦を引き起こす部分に異物がないかどうか、および真空グリースが適量塗布されているかどうかを確認する。
【0051】
2.透過電子顕微鏡(TEM)専用に製作された試片をホルダーヘッド10に設けられたクラドル2、3に装着する。
【0052】
3.試料が装着された試料ホルダーを透過電子顕微鏡(TEM)の内部に挿入する。
【0053】
4.制御部20と駆動用制御コンピュータ(図示せず)との間に制御ケーブルを連結する。
【0054】
5.制御コンピュータのモーター駆動プログラムを用いて3台の駆動モーター21c、22c、23cの駆動を制御して低倍率から観察対象を検索する。
【0055】
6.観察の対象が定まると、試料ホルダーの中心軸、すなわち、顕微鏡の視界の内部に試片が移動されるように前後移動手段22と左右移動手段23を駆動させてクラドルを移動させる。
【0056】
7.低倍率から高倍率へと顕微鏡の倍率を調節しながら試片が顕微鏡の視界から外れないように精度よく調整する。
【0057】
8.高倍率上においても離脱現象を確認後に実験を行う。
【0058】
9.駆動モーターとゴニオメーター(TEMカラム)のみを用いて試料を観察する。
【0059】
上記のように構成された本発明の試片ホルダーは、既存の傾斜ホルダーまたは回転ホルダーを構成するクラドルを、ギアカバーを用いて水平に移動させて試片が常に顕微鏡の視界内に位置するようにすることにより、試片を一層容易かつ正確に観察して分析することができる。
【符号の説明】
【0060】
10:ホルダーヘッド、
1:ヘッド本体、
1a:クラドル載置孔、
1b:カバー移動孔、
1c:支持具取付溝、
1d:係合ピン摺動孔、
2、3:クラドル、
2a、3a、4a:透過孔、
4:回転ギア、
41:ベベルギアの歯、
5:回転駆動ギア、
51:ギア回転軸、
6:ギアカバー、
6a:試料通過孔、
6b:ギア取付溝、
6c:軸貫通溝、
61:ラックギア、
62:ラック駆動ギア、
62a:ギア駆動パイプ、
7:カバー支持具、
7a:スプリング固定溝、
7b:ピン貫通孔、
7c:球載置溝、
71:係止爪、
72:係合ピン、
8:スプリング、
9:球、
20:制御部、
21:クラドル回転手段、
21a:軸ギア、
21b:モーターギア、
21c、22c、23c:駆動モーター、
22:前後移動手段、
22a:ラック、
22b:ピニオン、
23:左右移動手段、
23a:軸ギア、
23b:モーターギア、
30:連結手段、
31:ホルダーコネクタ、
32:ホルダー胴体、
31a、32a:ハウジング、
31b、32b:外部チューブ、
31c、32c:内部シャフト、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試片が装着されるホルダーヘッド(10)と、装着された試片を駆動する制御部(20)と、を備えてなり、
(A)前記ホルダーヘッド(10)は、
ヘッド本体(1)に穿設されたクラドル載置孔(1a)に設けられて試片を支持する上下クラドル(2、3)と、
前記上下クラドル(2、3)の間に介装されてこれらを回転させる回転ギア(4)と、
前記回転ギア(4)に噛合されて回転ギア(4)を回転させる回転駆動ギア(5)と、
前記上クラドル(3)の上部に水平移動自在に設けられたギアカバー(6)と、
前記ギアカバー(6)に設けられたラックギア(61)に噛合されてラックギアを駆動させることによりギアカバー(6)がヘッド本体の長手方向と垂直方向に移動されるようにするラック駆動ギア(62)と、
を備え、
(B)前記制御部(20)は、
前記回転駆動ギア(5)を回転させるクラドル回転手段(21)と、
前記クラドル(2、3)を水平移動させる前後および左右移動手段(22、23)と、
を備えてなることを特徴とする透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項2】
前記ホルダーヘッド(10)と制御部(20)との間には連結手段(30)が介設されており、
前記連結手段(30)は、前記ヘッド本体(1)と継合されたホルダーコネクタ(31)と、前記ホルダーコネクタ(31)と制御部(20)との間に介設されたホルダー胴体(32)と、から構成され、
前記ホルダーコネクタ(31)とホルダー胴体(32)は、
ハウジング(31a、32a)の内部に配設され、前記移動手段(22、23)の軸と繋合された外部チューブ(31b、32b)と、
前記外部チューブ(31b、32b)の内部に配設され、前記クラドル回転手段(21)の軸と継合されて動力を前記回転駆動ギア(5)に伝達する内部シャフト(31c、32c)と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項3】
前記ヘッド本体(1)に設けられるギアカバー(6)は、スプリング(8)により弾性的に支持されるカバー支持具(7)により支持されることを特徴とする請求項1または2に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項4】
前記カバー支持具(7)とギアカバー(6)が相対向する端部には摩擦防止用球(9)が設けられることを特徴とする請求項3に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項5】
前記クラドル回転手段(21)は、
前記内部シャフト(32c)の端部に設けられた軸ギア(21a)と、
前記軸ギア(21a)に噛合されるモーターギア(21b)が回転軸に設けられた駆動モーター(21c)と、
から構成されることを特徴とする請求項4に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項6】
前記左右移動手段(23)は、
前記外部チューブ(32b)の一方の端部に設けられた軸ギア(23a)と、
前記軸ギアと噛合されるモーターギア(23b)が設けられた駆動モーター(23c)と、
から構成されることを特徴とする請求項5に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項7】
前記前後移動手段(22)は、
前記外部チューブ(32b)の一方の端部に外部チューブの長手方向に設けられたラック(22a)と、
前記ラックの歯と噛合されるピニオン(22b)が設けられた駆動モーター(22c)と、
から構成されることを特徴とする請求項6に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項8】
前記前後移動手段(22)は、前記外部チューブ(32b)の一方の端部に設けられ供給される電気により伸縮されて外部チューブを移動させる圧電アクチュエータであることを特徴とする請求項6に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項1】
試片が装着されるホルダーヘッド(10)と、装着された試片を駆動する制御部(20)と、を備えてなり、
(A)前記ホルダーヘッド(10)は、
ヘッド本体(1)に穿設されたクラドル載置孔(1a)に設けられて試片を支持する上下クラドル(2、3)と、
前記上下クラドル(2、3)の間に介装されてこれらを回転させる回転ギア(4)と、
前記回転ギア(4)に噛合されて回転ギア(4)を回転させる回転駆動ギア(5)と、
前記上クラドル(3)の上部に水平移動自在に設けられたギアカバー(6)と、
前記ギアカバー(6)に設けられたラックギア(61)に噛合されてラックギアを駆動させることによりギアカバー(6)がヘッド本体の長手方向と垂直方向に移動されるようにするラック駆動ギア(62)と、
を備え、
(B)前記制御部(20)は、
前記回転駆動ギア(5)を回転させるクラドル回転手段(21)と、
前記クラドル(2、3)を水平移動させる前後および左右移動手段(22、23)と、
を備えてなることを特徴とする透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項2】
前記ホルダーヘッド(10)と制御部(20)との間には連結手段(30)が介設されており、
前記連結手段(30)は、前記ヘッド本体(1)と継合されたホルダーコネクタ(31)と、前記ホルダーコネクタ(31)と制御部(20)との間に介設されたホルダー胴体(32)と、から構成され、
前記ホルダーコネクタ(31)とホルダー胴体(32)は、
ハウジング(31a、32a)の内部に配設され、前記移動手段(22、23)の軸と繋合された外部チューブ(31b、32b)と、
前記外部チューブ(31b、32b)の内部に配設され、前記クラドル回転手段(21)の軸と継合されて動力を前記回転駆動ギア(5)に伝達する内部シャフト(31c、32c)と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項3】
前記ヘッド本体(1)に設けられるギアカバー(6)は、スプリング(8)により弾性的に支持されるカバー支持具(7)により支持されることを特徴とする請求項1または2に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項4】
前記カバー支持具(7)とギアカバー(6)が相対向する端部には摩擦防止用球(9)が設けられることを特徴とする請求項3に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項5】
前記クラドル回転手段(21)は、
前記内部シャフト(32c)の端部に設けられた軸ギア(21a)と、
前記軸ギア(21a)に噛合されるモーターギア(21b)が回転軸に設けられた駆動モーター(21c)と、
から構成されることを特徴とする請求項4に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項6】
前記左右移動手段(23)は、
前記外部チューブ(32b)の一方の端部に設けられた軸ギア(23a)と、
前記軸ギアと噛合されるモーターギア(23b)が設けられた駆動モーター(23c)と、
から構成されることを特徴とする請求項5に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項7】
前記前後移動手段(22)は、
前記外部チューブ(32b)の一方の端部に外部チューブの長手方向に設けられたラック(22a)と、
前記ラックの歯と噛合されるピニオン(22b)が設けられた駆動モーター(22c)と、
から構成されることを特徴とする請求項6に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【請求項8】
前記前後移動手段(22)は、前記外部チューブ(32b)の一方の端部に設けられ供給される電気により伸縮されて外部チューブを移動させる圧電アクチュエータであることを特徴とする請求項6に記載の透過電子顕微鏡の3次元分析のための3軸駆動が可能な試片ホルダー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−109115(P2012−109115A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256958(P2010−256958)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(509115605)コリア ベイシック サイエンス インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(509115605)コリア ベイシック サイエンス インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】
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