説明

逐次比較型AD変換方法および装置

【課題】システム全体でのオフセット補償とダイナミックレンジの確保を可能とするAD変換装置を提供する。
【解決手段】ブリッジセンサB1から非測定検出信号が入力するとき、第1のサイクルにおいて、高利得差動増幅器2の基準電圧VCOMとして初期値をセットして、逐次比較型AD変換本体部3でAD変換データを求める。・・・。第m(mは3以上の正の整数)のサイクルにおいて、第m−1のサイクルで得られたAD変換データの最上位ビットに応じて、AD変換データが零値に近づくように、基準電圧VCOMとして、第m−1の電圧を所定電圧だけ上昇又は下降させた第mの電圧をセットする。センサB1から実測定検出信号が入力するとき、基準電圧VCOMとして第mの電圧をセットしてAD変換データを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理現象の測定値を電気の検出信号として出力するセンサの当該検出信号をAD変換する逐次比較型AD変換方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な逐次比較型AD変換装置は、例えば、図3に示すように構成されている。この逐次比較型AD変換装置は、物理現象の測定結果を電気信号で出力するブリッジセンサB1の実測定検出信号を、マルチプレクサ12を経由して高利得差動増幅器2で基準電圧VCOMと比較増幅して、信号電圧Vopを得、この信号電圧Vopを逐次比較型AD変換本体部3のサンプルホールド回路4でサンプルホールドし、これを、直前のAD変換データをDA変換器7でDA変換した電圧と比較器5で比較し、その比較結果を逐次比較レジスタ6に格納し、同一のサンプルホールド電圧について、その比較器5での比較と逐次比較レジスタ6への格納を繰り返すことで、ブリッジセンサB1の実測定検出信号を所定ビット数のAD変換データとして出力するものである。
【0003】
この逐次比較型AD変換装置では、高利得差動増幅器2のオフセット、および逐次比較型AD変換本体部3のオフセットを補償するために、ブリッジセンサB1の実測定検出信号のAD変換動作に使用に先立って、マルチプレクサ12を波線側に切り替えて、バイアス電圧Vrとして初期バイアス(=0V)を入力し、このとき逐次比較レジスタ6に格納された所定ビット数のAD変換データを基準電圧エンコーダ13アナログ信号に変換し、これをバッファ9を経由して高利得差動増幅器2にオフセット補償用の基準電圧VCOMとして入力させ、ここでオフセット成分をキャンセルしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−166620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ブリッジセンサ等を複数用いた3軸等の多入力AD変換器は、ブリッジセンサのオフセットを含めたシステム全体でのオフセット補償の必要があるが、図3の逐次比較型AD変換装置では、マルチプレクサ12からバイアス電圧Vrとして初期バイアス(=0V)を入力するため、ブリッジセンサB1を含めたシステム全体でのオフセット補正はできなかった。
【0006】
また、ブリッジセンサの検出信号は微弱であるため、図3に示したように高利得差動増幅器2を挿入することが必須となるが、この場合は、ブリッジセンサB1のオフセット、高利得差動増幅器2のオフセット、および逐次比較型AD変換本体部3のオフセットが加わるため、ダイナミックレンジを大きく損なうほどの大きなオフセットが生じる。
【0007】
さらに、図3の逐次比較型AD変換装置では、高精度オフセット補償を行う場合、補正幅(分解能)を細かくとる必要があり、それに応じて基準電圧エンコーダ13を構成する回路素子が多数必要となり、集積回路化する際の面積増大を招く。
【0008】
本発明の第1の目的は、システム全体でのオフセット補償が可能で、ダイナミックレンジを確保することができるようにした逐次比較型AD変換方法および装置を提供することである。また、第2の目的は、回路規模を大きくすることなく、オフセット補償を高精度に実現できるようにした逐次比較型AD変換方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明の逐次変換型AD変換方法は、物理現象の測定値を電気の検出信号として出力するセンサの当該検出信号を基準電圧と比較増幅し、該比較増幅された電圧を逐次比較型でAD変換してAD変換データを得る逐次変換型AD変換方法において、前記センサから非測定検出信号が入力するとき、第1のサイクルにおいて、前記基準電圧として、第1の電圧をセットして、前記AD変換データを求め、第2のサイクルにおいて、前記第1のサイクルで得られたAD変換データの極性ビットに応じて、前記AD変換データが零値に近づくように、前記基準電圧として、前記第1の電圧を所定電圧だけ上昇又は下降させた第2の電圧をセットして、該第2のサイクルのAD変換データを求め、・・・、第m(mは3以上の正の整数)のサイクルにおいて、第m−1のサイクルで得られたAD変換データの極性ビットに応じて、前記AD変換データが零値に近づくように、前記基準電圧として、前記第m−1の電圧を前記所定電圧だけ上昇又は下降させた第mの電圧をセットし、前記センサから実測定検出信号が入力するとき、前記基準電圧として前記第mの電圧をセットして前記AD変換データを求めることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の逐次変換型AD変換方法において、前記センサから非測定検出信号が入力するとき、前記基準電圧として前記第mの電圧をセットしたとき得られた前記AD変換データをオフセットデータとして格納し、該オフセットデータを、前記センサから実測定検出信号が入力するときに得られたAD変換データから減算することを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の逐次変換型AD変換方法において、前記センサが複数個設けられ、該複数のセンサの切り替え毎に、当該センサから実測定検出信号が入力するとき、当該センサの前記第mの電圧が前記基準電圧としてセットされることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項2に記載の逐次変換型AD変換方法において、前記センサが複数個設けられ、該複数のセンサの切り替え毎に、当該センサの前記オフセットデータを、当該センサから実測定検出信号が入力するときに得られたAD変換データから減算することを特徴とする。
請求項5にかかる発明の逐次変換型AD変換装置は、物理現象の測定値を電気の検出信号として出力するセンサと、該センサの検出信号を基準電圧と比較増幅する高利得差動増幅器と、該高利得差動増幅器の出力電圧をAD変換してAD変換データを出力する逐次比較型AD変換本体部とを備えた逐次変換型AD変換装置において、前記センサから非測定検出信号が入力するとき、前記逐次比較型AD変換本体部から出力するAD変換データの極性ビットに応じて、前記基準電圧を所定電圧ピッチで上昇又は下降させる基準電圧エンコーダを設け、該基準電圧エンコーダは、前記センサから非測定検出信号が入力するとき、第1のサイクルにおいて、前記基準電圧として第1の電圧をセットし、第2のサイクルにおいて、前記第1のサイクルで得られたAD変換データの極性ビットに応じて、前記AD変換データが零値に近づくように、前記基準電圧として、前記第1の電圧を所定電圧だけ上昇又は下降させた第2の電圧をセットし、・・・、第m(mは3以上の正の整数)のサイクルにおいて、第m−1のサイクルで得られたAD変換データの極性ビットに応じて、前記AD変換データが零値に近づくように、前記基準電圧として、前記第m−1の電圧を前記所定電圧だけ上昇又は下降させた第mの電圧をセットし、且つ前記センサから実測定検出信号が入力するとき、前記基準電圧として前記第mの電圧をセットする、ことを特徴とする。
請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の逐次比較型AD変換装置において、前記センサから非測定検出信号が入力するとき、前記基準電圧として前記第mの電圧をセットして得られた前記AD変換データをオフセットデータとして格納するオフセットレジスタと、前記センサから実測定検出信号が入力するとき、前記AD変換データから前記オフセットレジスタに格納したオフセットデータを減算するデータ差分器と、を設けたことを特徴とする。
請求項7にかかる発明は、請求項5又は6に記載の逐次比較型AD変換装置において、前記センサを複数個設け、該複数のセンサの各々について、前記基準電圧エンコーダが、当該センサから非測定検出信号が入力するときに求めた前記第mの電圧を、当該センサから実測定検出信号が入力するときに前記基準電圧としてセットするようにしたことを特徴とする。
請求項8にかかる発明は、請求項6に記載の逐次変換型AD変換装置において、前記センサを複数個設け、該複数のセンサの各々について、前記オフセットレジスタと前記データ差分器を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1,5にかかる発明によれば、センサの実測定検出信号の入力時の高利得差動増幅器の出力電圧が中間電圧に近づくように基準電圧がセットされるので、AD変換のダイナミックレンジを最大にすることができる。また、その基準電圧はオフセットに応じて最適値にセットされるので、センサ、高利得差動増幅器、および逐次比較型AD変換本体部を含めたシステム全体のオフセットを補償できる。
【0011】
請求項2,6にかかる発明によれば、実測定検出信号が入力するときのAD変換データからオフセットデータを減算するので、基準電圧の分解能を細かくすることなくオフセット補償を高精度に実現でき、しかも集積回路化する際の面積増大を回避できる。
【0012】
請求項3,4,7,8にかかる発明によれば、複数のセンサを用いる場合であっても、個々のセンサに応じた基準電圧のセットやオフセットデータの格納が行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例の逐次比較型AD変換装置の機能ブロック図である。
【図2】図1の逐次比較型AD変換装置の動作説明図である。
【図3】従来の逐次比較型AD変換装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に本発明の実施例の逐次比較型AD変換装置を示す。1は多入力マルチプレクサであり、nチャネルのブリッジセンサB1〜Bnの検出信号の出力を切り替えるスイッチS1〜Snを備える。2は高利得差動増幅器であり、演算増幅器OPと抵抗R1〜R4からなり、多入力マルチプレクサ1で選択されたブリッジセンサB1〜Bnのいずれか1つの検出信号を基準電圧VCOMと比較増幅する。
【0015】
3は逐次比較型AD変換本体部であり、サンプルホールド回路4、比較器5、逐次比較レジスタ6、およびDA変換器7からなる。サンプルホールド回路4は、高利得差動増幅器2の出力信号Vopをサンプリングし、1つのAD変換データを得るための複数回の逐次比較AD変換動作が終了するまでホールドする。比較器5は、DA変換器7から出力するアナログ電圧とサンプルホールド回路4の出力電圧を比較する。逐次比較レジスタ6は、比較器5の複数回の比較結果に応じてレジスタ内容を更新決定する。
【0016】
8はnチャネル分の基準電圧エンコーダであり、各チャネルについて、逐次比較型AD変換本体部3から出力するAD変換データの最上位ビット(極性ビット)MSBが“1”(極性が負)のときは出力電圧を現在値よりも100mVだけ上昇させ、“0”(極性が正)のときは100mVだけ低下させる。9はバッファであり、基準電圧エンコーダ7の出力電圧を入力して基準電圧VCOMを出力する。ただし、基準電圧VCOMは最大値が300mV、最低値が−300mVに制限されている。
【0017】
10はnチャネル分のオフセットレジスタを備えたオフセットレジスタ群であり、非測定検出信号(つまり、オフセット信号)を入力してAD変換した各チャネルのAD変換データ(つまり、オフセットデータ)が格納される。11はnチャネル分のデータ差分器であり、各チャネル毎に逐次比較型AD変換本体部3から出力するAD変換データからオフセットレジスタ群10の当該チャネルのオフセットデータを減算して、当該チャネルの最終的なAD変換データを出力する。
【0018】
さて、本実施例の逐次比較型AD変換装置では、ブリッジセンサB1〜Bnの実測定検出信号を入力して行う逐次比較AD変換動作に先立って、非測定検出信号を入力して、基準電圧VCOMのセットとオフセットレジスタ群10の各チャネルのオフセットデータのセットを行う。図2に、ブリッジセンサがB1〜B3の3チャネルの場合について、ブリッジセンサB1の非測定検出信号入力時の高利得差動増幅器の出力電圧Vopが500mV、ブリッジセンサB2の非測定検出信号入力時の高利得差動増幅器の出力電圧Vopが300mV、ブリッジセンサB3の非測定検出信号入力時の高利得差動増幅器の出力電圧Vopが−200mVの、各場合についての動作説明図を示す。
【0019】
まず、基準電圧VCOMを初期状態(ここでは0V)にセットして、オフセット測定の第1サイクル目を開始する。このときは、多入力マルチプレクサ1の第1チャネルのスイッチS1のみをオンして、ブリッジセンサB1の非測定検出信号を増幅した高利得差動増幅器2の出力電圧Vop(=500mV)を逐次比較型AD変換本体部3によりAD変換して、そのときのAD変換データをオフセットレジスタ群10の第1チャネル用のオフセットレジスタに格納する。次に、多入力マルチプレクサ1の第2チャネルのスイッチS2のみをオンして、ブリッジセンサB2の非測定検出信号を増幅した高利得差動増幅器2の出力電圧Vop(=300mV)を逐次比較型AD変換本体部3によりAD変換して、そのときのAD変換データをオフセットレジスタ群10の第2チャネル用のオフセットレジスタに格納する。次に、多入力マルチプレクサ1の第3チャネルのスイッチS3のみをオンして、ブリッジセンサB3の非測定検出電圧を増幅した高利得差動増幅器2の出力電圧Vop(=−200mV)を逐次比較型AD変換本体部3によりAD変換して、そのときのAD変換データをオフセットレジスタ群10の第3チャネル用のオフセットレジスタに格納する。
【0020】
以上のようにして、非測定検出信号の入力時の全3チャネル分の高利得差動増幅器2の出力電圧VopのAD変換が完了し、各AD変換データがオフセットレジスタ群10にオフセットデータとして格納されたら、次にオフセット測定の第2サイクル目が開始される。
【0021】
第2サイクル目では、オフセットレジスタ群10の第1〜第3チャネルのオフセットレジスタのオフセットデータの最上位ビットMSBが基準電圧エンコーダ8に読み込まれる。第1,第2チャネルのときは、前回のサイクル時の出力電圧Vopが500mV,300mVであったので、いずれもMSB=“0”となるが、第3チャネルのときは前回のサイクル時の出力電圧Vopが−200mVであるので、MSB=“1”となる。基準電圧エンコーダ8は、MSB=1のときはバッファ9から出力する基準電圧VCOMを100mVだけ上昇させ、MSB=0のときは同基準電圧VCOMを100mVだけ下降させるので、第1,第2チャネルのときの基準電圧VCOMは、いずれも−100mVになるが、第3チャネルのときの基準電圧VCOMは100mVになる。この結果、第1,第2チャネルのときの出力電圧Vopは、いずれも400mVになり、第3チャネルのときの出力電圧Vopは−100mVとなる。
【0022】
このようにして、チャネル毎に基準電圧VCOMを切り替え、全3チャネル分の高利得差動増幅器2の出力電圧VopのAD変換を行い、そのAD変換データを、オフセットレジスタ群10の各チャネルのオフセットレジスタに第2サイクル目のオフセットデータとして更新して格納する。以後、オフセット測定の第3〜第5サイクル目まで同様の動作を繰り返す。なお、第5サイクル目では、第1チャネルのときの基準電圧VCOMが前回の第4サイクル目のときの−300mVから変化していないが、これは、−300mVが限界値となっているからである。
【0023】
以上によって、高利得差動増幅器2の出力電圧Vopが0V付近に近づくことになる。つまり、出力電圧Vopが高電圧側、あるいは負電圧側に張り付くことが防止され、AD変換のダイナミックレンジを改善できる。また、オフセットレジスタ群10の各チャネルのオフセットレジスタの内容は、より零値に近づくように更新される。
【0024】
本実施例では、オフセット測定を5サイクルまで繰り返しており、5サイクル目で終了する場合は、そのときのオフセットレジスタ群10の各チャネルのオフセットレジスタに格納したAD変換データが最終的なオフセットデータとなる。このオフセットデータは、各チャネルについて、ブリッジセンサのオフセット、高利得差動増幅器2のオフセット、逐次変換型AD変換器本体部3のオフセットを加算したものとなる。
【0025】
次にブリッジセンサB1〜B3の実測定検出信号をAD変換する際は、基準電圧VCOMが各チャネル毎に最終サイクル目(上記では5サイクル目)で得られた電圧値にセットされ、オフセットレジスタ群10の各チャネルのオフセットレジスタに格納されたオフセットデータがデータ差分器11に入力される。よって、逐次比較型AD変換本体部3から各チャネルの実測定検出信号のAD変換データが出力すると、各チャネルのAD変換データから各チャネルのオフセットデータが減算され、最終的にオフセットが補償されたAD変換データが出力することとなる。
【0026】
なお、基準電圧エンコーダ8において調整する基準電圧VCOMのピッチは、本実施例で説明した100mVに限られるものはない。この調整電圧を100mVよりも小さくすれば小さくするほど、高利得差動増幅器2の出力電圧Vopを中間電位(=0V)にするための最適な基準電圧VCOMをより精度高く設定することができ、理想的にはオフセットレジスタ群10を設ける必要が無くなる。ただし、基準電圧エンコーダ8からの出力電圧の種類が増加するので、面積増大を招く。
【0027】
本実施例によれば、設定した基準電圧VCOMによって、ブリッジセンサの非測定検出信号の入力時の出力電圧Vopが中間電圧に近づくので、実測定検出信号の入力時に得られる出力電圧Vopが高電位電源電圧側あるいは低電位電圧側に張り付くことが防止され、AD変換のダイナミックレンジを最大にすることができる。
【0028】
また、各チャネルのブリッジセンサに応じて高利得差動増幅器2の基準電圧VCOMが最適値にセットされるので、ブリッジセンサ、高利得差動増幅器2、および逐次比較型AD変換本体部3を含めたシステム全体のオフセットを補償できる。

さらに、基準電圧VCOMの調整に加えて、オフセットレジスタ群10の各チャネルのオフセットレジスタにオフセットデータを格納して実測定検出信号が入力するときのAD変換データから減算するようにすれば、完全に近いオフセット補償ができるので、この場合は基準電圧の分解能を細かくする必要が無く、集積回路化する際の面積増大を回避できる。
【符号の説明】
【0029】
1:多入力マルチプレクサ
2:高利得差動増幅器
3:逐次比較型AD変換本体部
4:サンプルホールド回路
5:比較器
6:逐次比較レジスタ
7:DA変換器
8:基準電圧エンコーダ
9:バッファ
10:オフセットレジスタ群
11:データ差分器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理現象の測定値を電気の検出信号として出力するセンサの当該検出信号を基準電圧と比較増幅し、該比較増幅された電圧を逐次比較型でAD変換してAD変換データを得る逐次変換型AD変換方法において、
前記センサから非測定検出信号が入力するとき、第1のサイクルにおいて、前記基準電圧として、第1の電圧をセットして、前記AD変換データを求め、第2のサイクルにおいて、前記第1のサイクルで得られたAD変換データの極性ビットに応じて、前記AD変換データが零値に近づくように、前記基準電圧として、前記第1の電圧を所定電圧だけ上昇又は下降させた第2の電圧をセットして、該第2のサイクルのAD変換データを求め、・・・、第m(mは3以上の正の整数)のサイクルにおいて、第m−1のサイクルで得られたAD変換データの極性ビットに応じて、前記AD変換データが零値に近づくように、前記基準電圧として、前記第m−1の電圧を前記所定電圧だけ上昇又は下降させた第mの電圧をセットし、
前記センサから実測定検出信号が入力するとき、前記基準電圧として前記第mの電圧をセットして前記AD変換データを求める
ことを特徴とする逐次変換型AD変換方法。
【請求項2】
請求項1に記載の逐次変換型AD変換方法において、
前記センサから非測定検出信号が入力するとき、前記基準電圧として前記第mの電圧をセットしたとき得られた前記AD変換データをオフセットデータとして格納し、該オフセットデータを、前記センサから実測定検出信号が入力するときに得られたAD変換データから減算することを特徴とする逐次変換型AD変換方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の逐次変換型AD変換方法において、
前記センサが複数個設けられ、該複数のセンサの切り替え毎に、当該センサから実測定検出信号が入力するとき、当該センサの前記第mの電圧が前記基準電圧としてセットされることを特徴とする逐次変換型AD変換方法。
【請求項4】
請求項2に記載の逐次変換型AD変換方法において、
前記センサが複数個設けられ、該複数のセンサの切り替え毎に、当該センサの前記オフセットデータを、当該センサから実測定検出信号が入力するときに得られたAD変換データから減算することを特徴とする逐次変換型AD変換方法。
【請求項5】
物理現象の測定値を電気の検出信号として出力するセンサと、該センサの検出信号を基準電圧と比較増幅する高利得差動増幅器と、該高利得差動増幅器の出力電圧をAD変換してAD変換データを出力する逐次比較型AD変換本体部とを備えた逐次変換型AD変換装置において、
前記センサから非測定検出信号が入力するとき、前記逐次比較型AD変換本体部から出力するAD変換データの極性ビットに応じて、前記基準電圧を所定電圧ピッチで上昇又は下降させる基準電圧エンコーダを設け、
該基準電圧エンコーダは、前記センサから非測定検出信号が入力するとき、第1のサイクルにおいて、前記基準電圧として第1の電圧をセットし、第2のサイクルにおいて、前記第1のサイクルで得られたAD変換データの極性ビットに応じて、前記AD変換データが零値に近づくように、前記基準電圧として、前記第1の電圧を所定電圧だけ上昇又は下降させた第2の電圧をセットし、・・・、第m(mは3以上の正の整数)のサイクルにおいて、第m−1のサイクルで得られたAD変換データの極性ビットに応じて、前記AD変換データが零値に近づくように、前記基準電圧として、前記第m−1の電圧を前記所定電圧だけ上昇又は下降させた第mの電圧をセットし、且つ前記センサから実測定検出信号が入力するとき、前記基準電圧として前記第mの電圧をセットする、
ことを特徴とする逐次比較型AD変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の逐次比較型AD変換装置において、
前記センサから非測定検出信号が入力するとき、前記基準電圧として前記第mの電圧をセットして得られた前記AD変換データをオフセットデータとして格納するオフセットレジスタと、
前記センサから実測定検出信号が入力するとき、前記AD変換データから前記オフセットレジスタに格納したオフセットデータを減算するデータ差分器と、
を設けたことを特徴とする逐次比較型AD変換装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の逐次比較型AD変換装置において、
前記センサを複数個設け、該複数のセンサの各々について、前記基準電圧エンコーダが、当該センサから非測定検出信号が入力するときに求めた前記第mの電圧を、当該センサから実測定検出信号が入力するときに前記基準電圧としてセットするようにしたことを特徴とする逐次変換型AD変換装置。
【請求項8】
請求項6に記載の逐次変換型AD変換装置において、
前記センサを複数個設け、該複数のセンサの各々について、前記オフセットレジスタと前記データ差分器を設けたことを特徴とする逐次変換型AD変換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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