説明

通信システム、サーバ装置、端末装置およびノード

【課題】端末、他の通信事業者からのノードでのマーキング処理を簡易に実現する。
【解決手段】IPアドレス付与サーバ20は、加入者端末10、11(またはBBルータ32)に対して、パケットの送受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与する。端末10、11(またはBBルータ32)は、送信パケット量を計数し、送信パケット量に基づいてパケットの送信が優先的であるか非優先的であるかを判定し、パケットの送信が非優先的である場合、送信パケットに対して、非優先マーキングを行なう。一方、パケットの送信が優先的である場合、送信先端末がIPアドレス付与サーバ20から取得したIPアドレスを参照して、優先マーキングまたは非優先マーキングを行なう。BBルータ32がマーキングを行なうことも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加入者端末の通信量に応じて、加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信事業者の一部で、Diffservあるいは類似の技術に基づくサービスの差別化 (Differentiation) が行なわれている(非特許文献1)。この技術により、パケットに付加された優先度に従った転送を実現することができる。この技術を用いたネットワーク運用として、次のようなシナリオが考えられる。
(a)VoIPサービスのトラフィックをインターネットアクセスサービスのトラフィックに優先させて転送し輻輳から保護する (サービス別の差別化)。
(b)加入者単位でパケットの優先度を変えて差別化を行なう (加入者別の差別化)。
【0003】
一方、この技術を利用した優先転送を有効に機能させるためには、ネットワークへの流入口となる“入ノード”において、適切なパケット優先度の設定 (マーキング) を行なう必要がある。例えば、加入者別のマーキングをするためには、加入者単位に対応する優先度を決定するための対応表を、何らかの方法によって入ノードが保持する必要がある(図10参照)。
【0004】
また、非特許文献2では、これらのマーキングを前提とした通信品質制御のフレームワークを規定している。しかし、具体的なマーキング方法については、入ノードにおける加入者・フロー毎の対応表の存在が前提とされており、大規模ネットワークでの実現を困難ないし高価にしている。
【0005】
また、非特許文献3および4に開示されている装置は、{IPアドレス (発着)、ポート番号 (発着)、プロトコル番号} (5-tuple) で規定されるフロー毎にマーキングや優先キューイングを行なう。この装置は、同時に数万から数百万フローを扱うことができる。設置形態としては、通信ノード間のリンク上にインラインで挿入する装置となっている。さらに、外部装置と連携したIPアドレス・加入者の動的な対応付けや、ポート番号・パケット内容からサービスを識別する、といった機能も実現している。
【0006】
ここで、通信事業者が提供するインターネットアクセスサービスで、加入者別のマーキングを行なうことを考える。図10は、通信事業者が提供するインターネットアクセスサービスを実現する通信システムの概略構成を示す図である。この通信システムでは、加入者端末10が、自通信事業者が提供するネットワークN上のノード31を介して、通信を行なうことができる。また、加入者端末11は、BBルータ32、ノード31を介して通信を行なうことができる。また、他の通信事業者が提供するネットワークN上には、Webサーバ40〜43が設けられており、ノード45、ノード33を介してネットワークNに接続可能な加入者端末10、11と通信を行なうことができる。ここで、自通信事業者については以下を仮定する。
(ア)加入者の端末、あるいは、端末近傍のブロードバンド(BB)ルータを通信キャリアから制御し、端末が送信するパケットについてマーキングを実施できる。
(イ)端末のIPアドレスは、DHCPやPPP(IPCP)等によりキャリアから付与し、加入者から変更することはできない。
【0007】
また、運用シナリオとして、加入者間のネットワーク利用の公平性確保のため、週ごと・月ごとといった一定期間内に既定量以上の送信 (あるいは受信) を行なった加入者に対して、送信 (あるいは受信) トラフィックに「非優先マーキング」(トラフィック優先度を下げる) を行なうシナリオを考える。以下、本シナリオを「ヘビーユーザ向け非優先運用シナリオ」と呼称する。
【0008】
本シナリオにおいて、自通信事業者内の各端末は、
(A)送受信とも優先 (デフォルト) マーキング、
(B)送信が非優先マーキング、受信が優先マーキング、
(C)受信が非優先マーキング、送信が優先マーキング、
(D)送受信とも非優先マーキング、
の4種類に分類される。また、他の通信事業者の端末は、上記(A)〜(D)のいずれかに固定的に分類することとするが、ここでは(A)と見做すこととする。
【0009】
(B)や(D)の端末から送信するパケットについては、相手に関わらず、自端末側で全パケットに非優先マーキングを設定すれば良く、実現は比較的容易である。しかし、(A)や(C)の端末あるいは他の通信事業者の端末から送信するパケットについては、以下の通り、送信側に近い箇所で、宛先端末の分類に応じたマーキングが求められる。
(α)(A)や(C)の端末から(C)や(D)の端末に送信する場合、(A)や(C)の端末側で非優先マーキングを実施する。
(β)他の通信事業者の端末から(C)や(D)の端末に送信する場合も、自通信事業者への入ノードで非優先マーキングを実施する。
【0010】
従来の手法では、端末ならびに他の通信事業者からの入ノード全てで非優先端末毎の対応表の生成・保持が必要となる。対応表を生成する方法としては、下記が考えられる。
(1)3GPPで規定されるHSS (Home Subscriber Server) 等に保持された加入者情報から、非優先端末の一覧表を作成する。
(2)端末間で、全ての通信に先立ちSIP (Session Initiation Protocol) 等の呼制御プロトコルを利用して、優先・非優先を交渉し、非優先端末の対応表を動的に生成・保持する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】K. Nichols, et.al. “Definition of the Differentiated Services Field (DS Field) in the IPv4 and IPv6 Headers,” RFC2474, Dec. 1998.
【非特許文献2】臼井他, “IMS/MMDへの適用を考慮したトラフィック収容方式の検討,” TM 研究会, 2008年3月.
【非特許文献3】http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/sce/sce8000/index.html
【非特許文献4】http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/sce/sce8000/prodlit/data_sheet_c78-492987.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、(1)を採用した場合は非優先端末毎の対応表の処理破綻が問題となる。すなわち、大規模な通信事業者では、端末ならびに他の通信事業者からの入ノード全てで100〜1000万オーダの対応表エントリを用意することとなり、例えば、他の通信事業者からの各入ノード付近に高価な外部装置の導入が必要になるなど、実現が困難である。また、対応表検索は、IPアドレスやTCPポート番号など各パケットに含まれる情報をキーとした検索となる。対応表にエントリすべきIPアドレスは動的に変化することが考えられ、これに追随するための制御オーバヘッドが大きい点も問題となる。
【0013】
また、DHCP環境では、「IPアドレスと加入者の対応」が動的に変化する可能性がある。さらに、ヘビーユーザ向け非優先運用シナリオでは、個々の加入者に対するマーキングが動的に変化する。
【0014】
一方、上記(2)については、既存のデータ通信も含めて、本手順を一斉に導入することは事実上不可能である点が問題となる。更に、(β)については、(1)と同様に膨大な対応表の保持が必要となる点も問題となる。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、端末や(他の通信事業者からの)入ノードでのマーキング処理を簡易に実現することができる通信システム、サーバ装置、端末装置およびノードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の通信システムは、加入者端末の通信量に応じて、前記加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムであって、加入者端末に対して、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与するIPアドレス付与サーバと、送信パケット量を計数する機能、前記送信パケット量に基づいて、パケットの送信が優先的であるか非優先的であるかを判定する機能、前記判定の結果、パケットの送信が非優先的である場合、送信パケットに対して、パケットの送信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう一方、前記判定の結果、パケットの送信が優先的である場合、送信先端末が前記IPアドレス付与サーバから取得したIPアドレスを参照して、パケットの受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの受信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう機能を有する端末と、を備えることを特徴としている。
【0017】
このように、送信パケット量を計数し、送信パケット量に基づいて、パケットの送信が優先的であるか非優先的であるかを判定し、判定の結果、パケットの送信が非優先的である場合、送信パケットに対して、パケットの送信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう。その一方、判定の結果、パケットの送信が優先的である場合、送信先端末がIPアドレス付与サーバから取得したIPアドレスを参照して、パケットの受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの受信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう。この構成により、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。
【0018】
(2)また、本発明の通信システムは、加入者端末の通信量に応じて、前記加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムであって、加入者端末に対して、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与するIPアドレス付与サーバと、受信パケット量を計数する機能、前記受信パケット量に基づいて、パケットの受信が優先的であるか非優先的であるかを判定する機能、前記判定の結果、パケットの受信が非優先的である場合、前記IPアドレス付与サーバからパケットの受信が非優先的であることを示すIPアドレスを取得する一方、前記判定の結果、パケットの受信が優先的である場合、前記IPアドレス付与サーバからパケットの受信が優先的であることを示すIPアドレスを取得する機能を有する端末と、を備えることを特徴としている。
【0019】
このように、受信パケット量を計数し、受信パケット量に基づいて、パケットの受信が優先的であるか非優先的であるかを判定し、判定の結果、パケットの受信が非優先的である場合、IPアドレス付与サーバからパケットの受信が非優先的であることを示すIPアドレスを取得する。その一方、判定の結果、パケットの受信が優先的である場合、IPアドレス付与サーバからパケットの受信が優先的であることを示すIPアドレスを取得する。この構成により、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。
【0020】
(3)また、本発明の通信システムは、自通信事業者のネットワークと他の通信事業者のネットワークとを接続点に設けられ、前記他の通信事業者のネットワークから前記自通信事業者のネットワークへ流入するパケットについて、前記IPアドレスと、前記優先マーキングおよび非優先マーキングとの対応表に基づいて、優先マーキングまたは非優先マーキングを行なうノードをさらに備えることを特徴としている。
【0021】
この構成により、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。
【0022】
(4)また、本発明のサーバ装置は、加入者端末の通信量に応じて、前記加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムに適用されるサーバ装置であって、加入者端末に対して、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与することを特徴としている。
【0023】
この構成により、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。
【0024】
(5)また、本発明の端末装置は、通信量に応じて、送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムに適用される端末装置であって、送信パケット量を計数する機能と、前記送信パケット量に基づいて、パケットの送信が優先的であるか非優先的であるかを判定する機能と、前記判定の結果、パケットの送信が非優先的である場合、送信パケットに対して、パケットの送信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう一方、前記判定の結果、パケットの送信が優先的である場合、送信先端末が、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与するIPアドレス付与サーバから取得したIPアドレスを参照して、パケットの受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの受信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう機能と、を備えることを特徴としている。
【0025】
この構成により、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。
【0026】
(6)また、本発明の端末装置は、通信量に応じて、送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムに適用される端末装置であって、受信パケット量を計数する機能と、前記受信パケット量に基づいて、パケットの受信が優先的であるか非優先的であるかを判定する機能と、前記判定の結果、パケットの受信が非優先的である場合、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与するIPアドレス付与サーバからパケットの受信が非優先的であることを示すIPアドレスを取得する一方、前記判定の結果、パケットの受信が優先的である場合、前記IPアドレス付与サーバからパケットの受信が優先的であることを示すIPアドレスを取得する機能と、を備えることを特徴としている。
【0027】
この構成により、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。
【0028】
(7)また、本発明のノードは、加入者端末の通信量に応じて、前記加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムに適用されるノードであって、自通信事業者のネットワークと他の通信事業者のネットワークとを接続点に設けられ、前記他の通信事業者のネットワークから前記自通信事業者のネットワークへ流入するパケットについて、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスと、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示す非優先マーキングとの対応表に基づいて、優先マーキングまたは非優先マーキングを行なうことを特徴としている。
【0029】
この構成により、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。さらに、端末装置および他の通信事業者からの入ノードでは複雑な呼制御手順の実装・一斉展開や、膨大な非優先端末毎の対応表を生成・保持を必要とすることなく、品質差別化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】加入者端末の概略構成を示すブロック図である。
【図3】ノードの概略構成を示す図である。
【図4】IPアドレス付与サーバの概略構成を示す図である。
【図5】加入者端末10の送信動作を示すフローチャートである。
【図6A】加入者端末10の受信動作を示すフローチャートである。
【図6B】加入者端末10のモード切り替えの概要を示すフローチャートである。
【図7】加入者端末10のアドレス取得動作を示すフローチャートである。
【図8】ノードの動作を示すフローチャートである。
【図9】IPアドレス付与サーバの動作を示すフローチャートである。
【図10】通信事業者が提供するインターネットアクセスサービスを実現する通信システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る通信システムの概略構成を示す図である。この通信システムでは、加入者端末10が、自通信事業者が提供するネットワークN上のノード31を介して、通信を行なうことができる。また、加入者端末11は、BBルータ32、ノード31を介して通信を行なうことができる。また、他の通信事業者が提供するネットワークN上には、Webサーバ40〜43が設けられており、ノード45、ノード33を介してネットワークNに接続可能な加入者端末10、11と通信を行なうことができる。また、ネットワークN上には、IPアドレス付与サーバ20が設けられている。IPアドレス付与サーバ20は、加入者端末10、11に対して、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与する。
【0033】
図2は、加入者端末の概略構成を示すブロック図である。加入者端末10は、送信パケット量および受信パケット量を計数するパケット量計数機能10aと、送信パケット量および受信パケット量に基づいて、パケットの送信または受信が優先的であるか非優先的であるかを判定する優先度分類機能10bとを備えている。また、優先度分類機能10bによる判定の結果、パケットの送信が非優先的である場合、送信パケットに対して、パケットの送信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう自端末送信優先度選択機能10dを備えている。また、優先度分類機能10bによる判定の結果、パケットの送信が優先的である場合、送信先端末がIPアドレス付与サーバ20から取得したIPアドレスを参照して、パケットの受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの受信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう送信マーキング機能10eを備えている。
【0034】
また、加入者端末10は、優先度分類機能10bによる判定の結果、パケットの受信が非優先的である場合、IPアドレス付与サーバ20からパケットの受信が非優先的であることを示すIPアドレスを取得するIPアドレス選択利用機能10cを備えている。IPアドレス選択利用機能10cは、優先度分類機能10bによる判定の結果、パケットの受信が優先的である場合、IPアドレス付与サーバ20からパケットの受信が優先的であることを示すIPアドレスを取得する。
【0035】
図3は、ノードの概略構成を示す図である。このノード33は、送信マーキング機能33aを備えており、自通信事業者のネットワークNと、他の通信事業者のネットワークNとを接続点に設けられる。そして、他の通信事業者のネットワークNから自通信事業者のネットワークNへ流入するパケットについて、IPアドレスと、優先マーキングおよび非優先マーキングとの対応表に基づいて、優先マーキングまたは非優先マーキングを行なう。
【0036】
図4は、IPアドレス付与サーバの概略構成を示す図である。IPアドレス付与サーバ20は、複数IPアドレス候補提示・付与機能20aを備えている。そして、加入者端末10、11に対して、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与する。
【0037】
図5は、加入者端末10の送信動作を示すフローチャートである。加入者端末10において、パケット送信要求が生ずると(ステップS0)、送信非優先モードであるかどうかを判断する(ステップS1)。この判断の結果、送信非優先モードである場合は、送信パケットに対して、非優先マーキングを行ない(ステップS2)、ステップS5へ遷移する。一方、ステップS1において、送信非優先モードでない場合、宛先が非優先IPアドレスであるかどうかを判断する(ステップS3)。この判断の結果、宛先が非優先IPアドレスである場合は、送信パケットに対して、非優先マーキングを行ない(ステップS2)、ステップS5へ遷移する。
【0038】
一方、ステップS3において、宛先が非優先IPアドレスでない場合は、送信パケットに対して、優先マーキングを行ない(ステップS4)、パケットを送信する(ステップS5)。次に、一定量以上のパケットの送信を行なったかどうかを判断し(ステップS6)、一定量以上のパケットの送信を行なった場合は、送信非優先モードに遷移する(ステップS7)。一方、ステップS6において、一定量以上のパケットの送信を行なっていない場合は、送信優先モードの状態を維持する(ステップS8)。
【0039】
図6Aは、加入者端末10の受信動作を示すフローチャートである。加入者端末10は、パケットを受信すると(ステップS9)、一定量以上のパケットの受信を行なったかどうかを判断する(ステップS10)。この判断の結果、加入者端末10は、一定量以上のパケットの受信を行なった場合、受信非優先モードに遷移する(ステップS11)。一方、ステップS10において、一定量以上のパケットの受信を行なっていない場合は、受信優先モードの状態を維持する(ステップS12)。
【0040】
図6Bは、加入者端末10のモード切り替えの概要を示すフローチャートである。加入者端末10は、一定期間が経過すると(ステップS13)、受信優先モードの状態となり(ステップS14)、さらに、送信優先モードの状態となる(ステップS15)。
【0041】
図7は、加入者端末10のアドレス取得動作を示すフローチャートである。まず、アドレス取得要求および更新タイムアウトが発生すると(ステップS16)、アドレスを新規に取得するかどうかを判断する(ステップS17)。アドレスを新規に取得する場合は、ステップS19へ遷移する。一方、ステップS17において、アドレスを新規に取得しない場合は、受信モードの変更があるかどうかを判断する(ステップS18)。受信モードの変更が無い場合は、ステップS22へ遷移する。一方、ステップS18において、受信モードの変更がある場合は、DCHP DISCOVERを送信する(ステップS19)。次に、DCHP OFFERを受信し(ステップS20)、IPアドレスを選択して(ステップS21)、DCHP REQUEST送信等を行なう(ステップS22)。
【0042】
図8は、ノードの動作を示すフローチャートである。まず、パケットを受信すると(ステップS30)、宛先のIPアドレスが優先であるかどうかを判断する(ステップS31)。宛先のIPアドレスが優先である場合は、送信パケットに対して優先マーキングを行ない(ステップS32)、パケットを送信する(ステップS35)。一方、ステップS31において、宛先のIPアドレスが優先でない場合は、宛先のIPアドレスが非優先であるかどうかを判断する(ステップS33)。宛先のIPアドレスが非優先でない場合は、マーキング処理対象外であるとして、パケットを送信する(ステップS35)。一方、ステップS33において、宛先のIPアドレスが非優先である場合は、送信パケットに対して、非優先マーキングを行ない(ステップS34)、パケットを送信する(ステップS35)。
【0043】
図9は、IPアドレス付与サーバの動作を示すフローチャートである。まず、DHCP DISCOVERを受信すると(ステップS40)、DHCP OFFERを送信する(ステップS41)。このときは、非優先のIPアドレスを送信することとなる。次に、DHCP OFFERを送信する(ステップS42)。このときは、優先のIPアドレスを送信する。最後に、DHCP REQUEST受信・ACK/NACK等の送信を行なう(ステップS43)。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、送信パケット量を計数し、送信パケット量に基づいて、パケットの送信が優先的であるか非優先的であるかを判定し、判定の結果、パケットの送信が非優先的である場合、送信パケットに対して、パケットの送信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう。その一方、判定の結果、パケットの送信が優先的である場合、送信先端末がIPアドレス付与サーバから取得したIPアドレスを参照して、パケットの受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの受信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう。この構成により、自通信事業者の加入者別の品質差別化を、異なる通信事業者に跨った通信を含めて実現することが可能となる。なお、図1において、BBルータ32が、加入者端末11の代わりにマーキングを行なうことも可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 加入者端末
10a パケット量計数機能
10b 優先度分類機能
10c IPアドレス選択利用機能
10d 自端末送信優先度選択機能
10e 送信マーキング機能
11 加入者端末
20 IPアドレス付与サーバ
20a 複数IPアドレス候補提示・付与機能
31 ノード
32 BBルータ
33 ノード
33a 送信マーキング機能
40〜43 Webサーバ
45 ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加入者端末の通信量に応じて、前記加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムであって、
加入者端末に対して、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与するIPアドレス付与サーバと、
送信パケット量を計数する機能、前記送信パケット量に基づいて、パケットの送信が優先的であるか非優先的であるかを判定する機能、前記判定の結果、パケットの送信が非優先的である場合、送信パケットに対して、パケットの送信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう一方、前記判定の結果、パケットの送信が優先的である場合、送信先端末が前記IPアドレス付与サーバから取得したIPアドレスを参照して、パケットの受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの受信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう機能を有する端末と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
加入者端末の通信量に応じて、前記加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムであって、
加入者端末に対して、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与するIPアドレス付与サーバと、
受信パケット量を計数する機能、前記受信パケット量に基づいて、パケットの受信が優先的であるか非優先的であるかを判定する機能、前記判定の結果、パケットの受信が非優先的である場合、前記IPアドレス付与サーバからパケットの受信が非優先的であることを示すIPアドレスを取得する一方、前記判定の結果、パケットの受信が優先的である場合、前記IPアドレス付与サーバからパケットの受信が優先的であることを示すIPアドレスを取得する機能を有する端末と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項3】
自通信事業者のネットワークと他の通信事業者のネットワークとを接続点に設けられ、前記他の通信事業者のネットワークから前記自通信事業者のネットワークへ流入するパケットについて、前記IPアドレスと、前記優先マーキングおよび非優先マーキングとの対応表に基づいて、優先マーキングまたは非優先マーキングを行なうノードをさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
加入者端末の通信量に応じて、前記加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムに適用されるサーバ装置であって、
加入者端末に対して、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与することを特徴とするサーバ装置。
【請求項5】
通信量に応じて、送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムに適用される端末装置であって、
送信パケット量を計数する機能と、
前記送信パケット量に基づいて、パケットの送信が優先的であるか非優先的であるかを判定する機能と、
前記判定の結果、パケットの送信が非優先的である場合、送信パケットに対して、パケットの送信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう一方、前記判定の結果、パケットの送信が優先的である場合、送信先端末が、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与するIPアドレス付与サーバから取得したIPアドレスを参照して、パケットの受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの受信が非優先的であることを示す非優先マーキングを行なう機能と、を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項6】
通信量に応じて、送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムに適用される端末装置であって、
受信パケット量を計数する機能と、
前記受信パケット量に基づいて、パケットの受信が優先的であるか非優先的であるかを判定する機能と、
前記判定の結果、パケットの受信が非優先的である場合、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスのいずれかを付与するIPアドレス付与サーバからパケットの受信が非優先的であることを示すIPアドレスを取得する一方、前記判定の結果、パケットの受信が優先的である場合、前記IPアドレス付与サーバからパケットの受信が優先的であることを示すIPアドレスを取得する機能と、を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項7】
加入者端末の通信量に応じて、前記加入者端末が送信するパケットまたは受信するパケットに優先度を設定する通信システムに適用されるノードであって、
自通信事業者のネットワークと他の通信事業者のネットワークとを接続点に設けられ、前記他の通信事業者のネットワークから前記自通信事業者のネットワークへ流入するパケットについて、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示すIPアドレスまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示すIPアドレスと、パケットの送信若しくは受信が優先的であることを示す優先マーキングまたはパケットの送信若しくは受信が非優先的であることを示す非優先マーキングとの対応表に基づいて、優先マーキングまたは非優先マーキングを行なうことを特徴とするノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−226427(P2010−226427A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71500(P2009−71500)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】