説明

通信システム、通信ケーブル及び通信装置

【課題】共通する通信規格に対応する複数の通信ポートが設けられた主装置に対して副装置を接続する場合に、これら複数の通信ポートのうち一部のポートに副装置を接続させないようにさせることができる通信システムを提供する。
【解決手段】主装置10と、通信ケーブル20を介して主装置10と接続される副装置とを含む通信システムであって、通信ケーブル20は、主装置10内に挿入される挿入部21と、通信ケーブル20を挿抜する際に利用者により把持される把持部22と、把持部22の表面から突出して形成された突起部24とを含み、主装置10は、第1通信ポート11及び第2通信ポート12と、主装置10の筐体表面のうち第2通信ポート12に隣接する位置に突出して形成され、挿入部21を第2通信ポート12に挿入しようとした場合に突起部24と干渉する干渉部16と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信ケーブル及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信ケーブルを介して通信可能に接続された二つの通信装置(主装置及び副装置)からなる通信システムがある。このような通信システムにおける通信は、例えばユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus;以下、USBと表記する)などの通信規格に基づいて実現される(例えば特許文献1及び2参照)。具体的に、副装置に接続された通信ケーブル、及び、主装置に設けられた通信ポートの双方が共通する通信規格に対応するよう設計されていれば、通信ケーブルの先端に設けられたコネクタを通信ポートに挿入することで、主装置と副装置とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−112065号公報
【特許文献2】特開2004−289438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、共通する通信規格に対応する複数の通信ポートが設けられた通信装置(主装置)に対して副装置を接続する場合に、これら複数の通信ポートのうち一部のポートに副装置を接続させないようにさせることができる通信システム、並びに当該通信システムを構成する通信装置及び通信ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、通信システムであって、主装置と、通信ケーブルを介して前記主装置に接続される副装置と、を含み、前記通信ケーブルは、前記主装置内に挿入される挿入部と、前記挿入部と通信ケーブル本体との間に設けられ、前記通信ケーブルを挿抜する際に利用者により把持される把持部と、前記把持部の表面から突出して形成された突起部と、を含み、前記主装置は、前記挿入部に対応する形状を備える第1及び第2の通信ポートと、前記主装置の筐体表面のうち、前記第2の通信ポートに隣接する位置に突出して形成され、前記挿入部を前記第2の通信ポートに挿入しようとした場合に前記突起部と干渉する干渉部と、を含むことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の通信システムであって、前記干渉部は、前記主装置の筐体表面に対して、前記通信ケーブルの先端から前記突起部の位置までの長さに応じた高さで形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の通信システムであって、前記干渉部は、前記主装置の筐体表面に対して、前記挿入部内に配置された端子の先端から前記突起部の位置までの長さに応じた高さで形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項記載の通信システムであって、前記干渉部の先端側の面、及び、前記突起部の前記通信ケーブル先端側に向けられた面は、いずれも平面であることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項記載の通信システムであって、前記通信ケーブルは、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)ケーブルであり、前記主装置は、前記第1及び第2の通信ポートを経由するUSB通信を制御する通信制御回路と、前記副装置からの制御信号を受け付ける副装置対応回路と、をさらに含み、前記第1の通信ポートは、前記副装置対応回路を介して前記通信制御回路に接続され、前記第2の通信ポートは、前記副装置対応回路を介さずに前記通信制御回路に接続されることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、通信ケーブルであって、主装置が有する第1及び第2の通信ポートに対応する形状を備え、副装置を前記主装置に接続する際に前記第1の通信ポート内に挿入される挿入部と、前記挿入部とケーブル本体との間に設けられ、当該ケーブルを挿抜する際に利用者により把持される把持部と、前記把持部の表面から突出して形成され、前記挿入部を前記第2の通信ポートに挿入しようとした場合に、前記第2の通信ポートに隣接して前記主装置の筐体表面から突出する干渉部と干渉する突起部と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、副装置と接続される通信ケーブルの先端に形成された挿入部に対応する形状を備える第1及び第2の通信ポートと、筐体表面のうち、前記第2の通信ポートに隣接する位置に突出して形成され、前記挿入部を前記第2の通信ポートに挿入しようとした場合に、前記通信ケーブルの前記挿入部とケーブル本体との間に設けられた把持部から突出して形成された突起部と干渉する干渉部と、を有する通信装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、6及び7記載の発明によれば、共通する通信規格に対応する複数の通信ポートが設けられた通信装置(主装置)に対して副装置を接続する場合に、これら複数の通信ポートのうち一部のポートに副装置を接続させないようにさせることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、一部の通信ポートに通信ケーブルを挿入しようとした場合に、通信ケーブルの先端が通信ポートに届かないようにすることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、一部の通信ポートに通信ケーブルを挿入しようとした場合に、通信ケーブル内に配置された端子の先端が通信ポートに届かないようにすることができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、突起部と干渉部とが接触する際に、相互に相手を損傷しにくくすることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、主装置がUSB通信規格に沿わない副装置側からの制御信号を受け付ける副装置対応回路を備える場合に、当該副装置対応回路と接続されない通信ポートに副装置を接続させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通信システムの外観の一例を示す斜視図である。
【図2】主装置と副装置との間の接続態様を模式的に示す構成ブロック図である。
【図3】通信ケーブルの一端の形状を示す斜視図である。
【図4】通信ケーブルの一端の形状を示す平面図である。
【図5】主装置の第1及び第2通信ポートが配置された箇所の斜視図である。
【図6】通信ケーブルを第1及び第2通信ポートのそれぞれに挿入しようとしたときの様子を示す斜視図である。
【図7】通信ケーブルを第1及び第2通信ポートのそれぞれに挿入しようとしたときの様子を側方から見たときの図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る通信システムにおける通信ケーブル及び干渉部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信システム1の外観の一例を示す斜視図である。本実施形態に係る通信システム1は、主装置10及び副装置30の二つの通信装置と、通信ケーブル20と、を含んで構成されており、主装置10と副装置30とは、通信ケーブル20を介して相互に通信可能に接続されている。なお、本実施形態において、通信ケーブル20はUSBケーブルであって、主装置10及び副装置30はUSB通信規格に準拠したインタフェースを介して通信ケーブル20と接続されるものとする。また、図1におけるブロック矢印は、主装置10の正面を指し示している。
【0020】
本実施形態では、主装置10は画像の読み取り機能や印刷機能等の機能を備えた画像処理装置であって、USB規格におけるホスト側装置(USBホスト)として機能する。また、副装置30は、主装置10に対してファクシミリ通信機能を提供する拡張モジュールであるものとする。すなわち、副装置30は、通信ケーブル20を介して主装置10から送信される制御信号に応じて、電話回線経由でファクシミリ送信を実行したり、逆に電話回線経由でファクシミリを受信して、当該受信した画像データを主装置10に送信したりする。副装置30は、USB規格におけるデバイス側装置(USBデバイス)として機能する。
【0021】
次に、主装置10の内部構成について説明する。図2は、主装置10と副装置30との間の接続態様を模式的に示す構成ブロック図である。図2に示されるように、主装置10は、第1通信ポート11と、第2通信ポート12と、通信制御回路13と、通信中継装置14と、副装置対応回路15と、を含んで構成される。
【0022】
第1通信ポート11及び第2通信ポート12は、いずれもUSB規格に対応したレセプタクルであって、主装置10の筐体表面に配置され、USBケーブルを挿入可能に構成されている。具体的に、第1通信ポート11及び第2通信ポート12は、図1に示されるように、主装置10の左側面に配置されている。
【0023】
第1通信ポート11及び第2通信ポート12は、図2に示されるように、いずれも主装置10の内部で通信中継装置14を経由して通信制御回路13と接続されている。ただし、第1通信ポート11は副装置対応回路15を介して通信中継装置14と接続されており、第2通信ポート12は副装置対応回路15を介さずに通信中継装置14と接続されている。
【0024】
通信制御回路13は、第1通信ポート11及び第2通信ポート12のそれぞれを介した主装置10と外部の通信機器との通信を制御する制御回路であって、本実施形態ではUSBホストコントローラである。
【0025】
通信中継装置14は、通信制御回路13と接続される1本の通信路を複数本の通信路に分岐するために用いられる装置であって、本実施形態ではUSBハブである。通信中継装置14を用いることによって、複数の通信ポートを介して複数の通信装置が通信制御回路13に接続されることになる。
【0026】
副装置対応回路15は、副装置30に対応した回路であって、副装置30が送信する固有の制御信号を受信するために用いられる。USB規格においては、USBホスト側からUSBデバイスに対して送信を開始するよう定められており、原則としてUSBデバイス側から送信を開始することができない。しかしながら、本実施形態でUSBデバイスとして機能する副装置30は、ファクシミリ通信モジュールであって、主装置10の動作状態に関わりなく外部からファクシミリの着信を受け付けることがある。ここで、主装置10は、一定時間使用されない場合に待機状態(スリープモード)に移行して電力消費を抑える機能を備えているものとする。この場合、スリープモード中は通信制御回路が通信できないため、通常のUSB通信の手順では、主装置10が待機状態から復帰して副装置30との通信を開始しない限り、副装置30がファクシミリを着信しても主装置10に通知されないことになってしまう。そこで本実施形態では、スリープモードからの復帰要求として、副装置30が信号端子(D+端子)をプルアップし、これにより副装置30から入力される制御信号を副装置対応回路15が受け付けることによって、ファクシミリの着信を検知し、主装置10を待機状態から通常の動作モードに復帰させる制御を行うこととしている。
【0027】
具体的に、この副装置対応回路15は、副装置30からのファクシミリ着信を通知する制御信号を受信し、当該制御信号の検知に応じて主装置10内部の電源制御回路に対して待機状態から動作状態へ復帰させるための制御信号を出力する。なお、副装置対応回路15は、ファクシミリ着信を通知する制御信号を除いて、通信制御回路13と副装置30との間で通常のUSB通信規格に従って送受信される通信データについては、そのまま中継する。
【0028】
副装置対応回路15と接続されるべき通信装置は副装置30だけなので、副装置対応回路15は第1通信ポート11と通信中継装置14との間に配置されており、第2通信ポート12経由の通信には影響しないようになっている。ここで、第1通信ポート11及び第2通信ポート12は同じ通信規格に対応した同型のレセプタクルなので、本来、通信ケーブル20の先端に設けられたUSBコネクタは第2通信ポート12にも接続可能なはずである。しかしながら、通信ケーブル20を介して副装置30を第2通信ポート12に接続してしまうと、副装置30からの制御信号が副装置対応回路15に入力されず、ファクシミリ着信が検知できなくなってしまう。そのため、利用者が通信ケーブル20を主装置10に接続する際には、第2通信ポート12ではなく第1通信ポート11に接続する必要がある。ここで、第1通信ポート11及び第2通信ポート12が通信中継装置14を介さずにそれぞれ独立した通信路を経由して直接通信制御回路13に接続されていれば、通信制御回路13はどの通信路(エンドポイント)を経由して副装置30が接続されているか判別できるため、副装置対応回路15が配置された通信ポート(第1通信ポート11)に副装置30が接続されているか否か検知可能である。しかしながら、本実施形態では、第1通信ポート11及び第2通信ポート12はいずれも通信中継装置14(USBハブ)を介して通信制御回路13と接続されている。このように通信中継装置14を介して接続される場合、通信中継装置14内で通信の振り分けが行われるため、通信制御回路13からは、各通信装置がどの通信ポートを介して通信中継装置14に接続されているか判断できない。そのため、第2通信ポート12に副装置30が接続されてしまったとしても、主装置10側ではそのことを検知できなくなってしまう。
【0029】
そこで本実施形態では、主装置10の筐体表面及び通信ケーブル20に、通信ケーブル20の第2通信ポート12への誤挿入を防止するための構造体が形成されている。以下、これらの形状について、詳しく説明する。
【0030】
図3及び図4は、通信ケーブル20の主装置10に接続される側の一端の形状を示す図であって、図3は斜視図、図4は平面図である。これらの図に示されるように、通信ケーブル20のケーブル本体である導線部23の先端には、USBコネクタが取り付けられており、このコネクタは、挿入部21と、把持部22と、を含んで構成されている。
【0031】
挿入部21は、通信ケーブル20を介して副装置30を主装置10に接続する際に、主装置10内(より具体的には、第1通信ポート11内)に挿入される部分であり、第1通信ポート11及び第2通信ポート12の双方に対応する形状を備えている。また、挿入部21の内部には、USB端子が配置されている。
【0032】
把持部22は、挿入部21と導線部23との間に設けられた部分である。把持部22は挿入部21と一体的に形成されており、通信ケーブル20を主装置10に対して挿抜する際には、利用者はこの把持部22を把持して抜き差しを行う。なお、把持部22は、通信ケーブル20の挿入部21が主装置10に挿入された際に、主装置10の筐体内には挿入されず、その外部に露出することになる。
【0033】
さらに本実施形態では、把持部22の表面から突出するように突起部24が形成されている。この突起部24は、図3及び図4に示されるように、平面的に見てT字状になっており、ケーブル先端側から見て矩形状に形成された壁24aと、この壁24aと交差するように壁24aのケーブル本体側に接続された支持部24bと、から構成されている。なお、壁24aのケーブル先端側に向けられた面24cは、平面になっている。壁24aは、支持部24bによって支持されることで、面24c側から力がかかっても撓みにくいようになっている。
【0034】
一方、主装置10の筐体表面には、その第2通信ポート12に隣接する位置に干渉部16が設けられている。本実施形態では、干渉部16は主装置10の筐体とは別体の樹脂製の部材によって構成されている。図5は、主装置10の筐体表面のうち、第1通信ポート11及び第2通信ポート12が配置された箇所の斜視図である。同図に示されるように、干渉部16は、互いに直交する略矩形の板状部材16a及び16bによって構成される断面L字状の部材であって、板状部材16bを貫通するように形成された2つの貫通孔の一方を通るネジ16cによって、主装置10の筐体表面にネジ止め固定されている。なお、主装置10の筐体表面には円盤状の位置決めガイド16dが突出して形成されており、この位置決めガイド16dを板状部材16bに設けられた他方の貫通孔に通すことによって、干渉部16の第2通信ポート12に対する位置が決定されている。また、板状部材16aの先端部分には、その厚みによって平面16eが形成されている。
【0035】
主装置10の筐体表面において干渉部16が設けられている位置は、第2通信ポート12の周囲のうち、通信ケーブル20の把持部22に対して突起部24が設けられた位置と対応する位置である。これにより、第2通信ポート12内に通信ケーブル20の挿入部21を挿入しようとした場合に、突起部24と干渉部16とが互いに接触し、干渉するようになっている。この両者の干渉によって、挿入部21がそれ以上第2通信ポート12内に挿入されることがなくなり、通信ケーブル20の第2通信ポート12への接続が防止される。
【0036】
図6及び図7は、通信ケーブル20を第1通信ポート11及び第2通信ポート12のそれぞれに挿入しようとしたときの様子を示す図であって、図6は図5と同様の斜視図、図7は第1通信ポート11及び第2通信ポート12を側方(主装置10の背面側)から見た図である。これらの図に示されるように、通信ケーブル20を第1通信ポート11に挿入しようとした場合には、突起部24は主装置10の筐体と干渉せず、挿入部21は問題なく第1通信ポート11内に挿入される。一方、通信ケーブル20を第2通信ポート12に挿入しようとした場合、突起部24が主装置10の筐体表面から突出する干渉部16と干渉し、挿入部21を最後まで第2通信ポート12内に挿入することができなくなっている。なお、突起部24が設けられていない一般的なUSBケーブルは、干渉部16と干渉することなく第2通信ポート12内に挿入して使用することができる。
【0037】
ここで、既に述べたように、突起部24のケーブル先端側の面24cは平面になっており、この面24cと接触する干渉部16の先端部分にも、平面16eが形成されている。このように、対向する平面同士が接触することで、確実に通信ケーブル20の第2通信ポート12内への挿入を防止するとともに、突起部24及び干渉部16の双方が接触時に互いに相手を損傷しにくいようになっている。
【0038】
また、干渉部16の主装置10筐体表面に対する高さhは、通信ケーブル20の挿入部21先端から面24cまでの長さd1(図4参照)に応じた値であってよい。具体的に、高さhがh>d1を満たせば、面24cと平面16eが接触した状態で挿入部21の先端部分が主装置10筐体表面に配置された第2通信ポート12まで届かず、誤って両者が接続されることがなくなる。
【0039】
ただし、第2通信ポート12には、突起部24が設けられた副装置30用の通信ケーブル20以外の通常のUSBケーブルが挿入される。そのため、干渉部24の大きさは、ケーブル抜き差しの作業性を考慮して、できるだけ小さくすることが望ましい。そこで、干渉部16の高さhは、長さd1ではなく、挿入部21内に配置された端子の先端から面24cまでの長さd2(図4参照)に応じた値としてもよい。具体的に、高さhがh>d2を満たせば、通信ケーブル20を第2通信ポート12に挿入しようとした場合に、挿入部21の先端部分は第2通信ポート12まで届いたとしても、挿入部21内の端子は第2通信ポート12まで届かなくなる。
【0040】
さらに、干渉部16の高さhは、長さd2に加えて、主装置10の筐体表面から第2通信ポート12内に配置された端子の先端までの長さd3(図7参照)にも応じて決まる値としてもよい。具体的に、高さhがh>d2−d3を満たせば、通信ケーブル20を第2通信ポート12に挿入しようとした場合に、挿入部21内の端子の先端部分が第2通信ポート12内まで進入したとしても、第2通信ポート12内の端子までは届かないことになる。このような範囲で高さhを決定することで、利用者が誤って通信ケーブル20を第2通信ポート12に接続しようとした場合に、副装置30が第2通信ポート12経由で主装置10と電気的に接続されてしまうことがなくなる。
【0041】
なお、図4においては、長さd2は、USB規格における電源端子(VBUS端子)及びグランド端子(すなわち、挿入部21の左右方向の両端に配置された端子)の先端から面24cまでの長さとして示されている。一方で、USB規格においてデータ通信に用いられる信号端子(内側に配置された2本の端子)は、電源端子やグランド端子よりも奥側に配置されている。もし第2通信ポート12に挿入部21を挿入しようとした場合に、信号端子だけ第2通信ポート12内の端子と接触しないようにすればよいのであれば、長さd2に代えて、信号端子の先端から面24cまでの長さd4(図4参照)の値を用いて高さhを決定してもよい。こうすれば、高さhをさらに小さくすることが許容される。
【0042】
また、図3及び図4に示されるように、突起部24は把持部22の幅方向における中心線よりずれた位置に形成されている。具体的には、突起部24は、通信ケーブル20の先端側から見て、上面右寄りの位置に形成されている。これは、通信ケーブル20を主装置10の第2通信ポート12に挿入しようとした場合に、下側になる位置である。これに応じて、干渉部16の高さ方向の中心位置も、図5に示されるように、第2通信ポート12の高さ方向の中心位置に対して下寄りになっている。そのため、第2通信ポート12の上端は干渉部16の上端よりも高くなっている。このように第2通信ポート12の高さと干渉部16の高さをずらすことで、主装置10の左側面を背面よりの位置から斜めに見た場合に、第2通信ポート12が完全に干渉部16の陰に隠れてしまうことがなくなり、少なくともその上端は見えるようになる。こうすれば、第2通信ポート12にUSBケーブルを挿入する際に、例えば主装置10の設置位置の都合などにより、主装置10の第2通信ポート12が配置された面(左側面)に正対する位置で利用者が作業できない場合であっても、利用者は斜め方向から見て第2通信ポート12の位置を確認することができ、USBケーブルの挿入作業が容易になる。
【0043】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に係る通信システム1における通信ケーブル20及び干渉部16を示す斜視図である。本実施形態では、通信ケーブル20に形成された突起部24の位置、及び第2通信ポート12に対する干渉部16の位置が、前述した第1実施形態とは相違している。しかしながら、その他の点については第1実施形態と同様であるので、対応する要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明については、省略する。
【0044】
本実施形態では、突起部24が、把持部22の幅方向における中心線に対して、第1実施形態とは逆に左寄りの位置に設けられている。そのため、通信ケーブル20を主装置10に接続しようとする際には、突起部24は把持部22の上寄りに位置することになる。
【0045】
一方、干渉部16は、第1実施形態の場合よりも上方にずれた位置に配置されている。より具体的には、干渉部16の高さ方向の中心が、上下方向に並んだ第1通信ポート11及び第2通信ポート12の中間位置と同程度の高さになる位置に配置されている。これにより、干渉部16は、第1通信ポート11の下側半分、及び第2通信ポート12の上側半分と隣接するように形成されている。
【0046】
このような位置に突起部24及び干渉部16を設けることにより、図8に示されるように、通信ケーブル20を第1通信ポート11に挿入しようとした場合には、突起部24が主装置10と干渉することなく、挿入部21は第1通信ポート11内に挿入される。逆に通信ケーブル20を第2通信ポート12に挿入しようとした場合、第1実施形態の場合と同様に、突起部24が干渉部16と干渉し、挿入部21を最後まで第2通信ポート12内に挿入できなくなっている。
【0047】
さらに本実施形態では、図3及び図4に示したような、ケーブル先端側から見て上面右寄りの位置に突起部24が形成された通信ケーブル(第2通信ケーブル20′とする)は、通信ケーブル20とは逆に、第2通信ポート12には問題なく挿入可能である。一方で、この第2通信ケーブル20′を第1通信ポート11に挿入しようとした場合には、把持部22の下側に位置する突起部24が干渉部16の上側と干渉し、挿入することができない。そこで、第2通信ポート12と通信中継装置14との間に、副装置30とは別の副装置(第2副装置30′とする)に対応する副装置対応回路(第2副装置対応回路15′とする)が接続されている場合、第2副装置30′用の第2通信ケーブル20′が確実に第1通信ポート11ではなく第2通信ポート12に接続されるようにすることができる。すなわち、本実施形態に係る通信システム1によれば、副装置30用の通信ケーブル20は第1通信ポート11に、第2副装置30′用の第2通信ケーブル20′は第2通信ポート12に、それぞれ接続させることで、いずれも対応する副装置対応回路と接続されるようになり、一つの干渉部16だけで、第2通信ケーブル20′の第1通信ポート11への接続、及び通信ケーブル20の第2通信ポート12への接続の両方が防止される。また、副装置30及び第2副装置30′のいずれか、または両方が主装置10に接続されない場合には、第1通信ポート11や第2通信ポート12に通常のUSBケーブルを介して他のUSBデバイスを接続し、利用することが可能となっている。
【0048】
なお、本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えば以上の説明においては、通信ケーブル20はUSBケーブルであって、第1通信ポート11及び第2通信ポート12はいずれもUSB規格に対応した通信ポートであることとしたが、これ以外の通信規格に基づくケーブル及び通信ポートであってもよい。通信ポートがUSB規格に対応しているか否かに関わらず、例えば以下のような事情がある場合には、本発明を適用することで、2つの通信ポートの一方に副装置30を接続することを制限することが有用である。すなわち、主装置10が有する2つの通信ポートのそれぞれに副装置30に対応した制御回路が設けられているが、電力消費を抑制するために、そのうちの一方に対して、不使用時に電力供給を一時停止する制御を行うことが考えられる。このような場合、前述したような突起部24を通信ケーブル20に設けるとともに、電力供給の停止制御を行う側の制御回路が接続された通信ポートに隣接する位置に前述したような干渉部16を設けることとすれば、電力供給が停止されない方の制御回路に副装置30を接続させることができる。
【0049】
また、以上の説明においては、主装置10は画像処理装置であって、副装置30は主装置10にファクシミリ通信機能を提供する拡張モジュールであることとしたが、主装置10及び副装置30は通信ケーブル20を介して接続される各種の通信装置であってよい。
【符号の説明】
【0050】
1 通信システム、10 主装置、11 第1通信ポート、12 第2通信ポート、13 通信制御回路、14 通信中継装置、15 副装置対応回路、16 干渉部、20 通信ケーブル、21 挿入部、22 把持部、23 導線部、24 突起部、30 副装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主装置と、通信ケーブルを介して前記主装置に接続される副装置と、を含み、
前記通信ケーブルは、
前記主装置内に挿入される挿入部と、
前記挿入部と通信ケーブル本体との間に設けられ、前記通信ケーブルを挿抜する際に利用者により把持される把持部と、
前記把持部の表面から突出して形成された突起部と、
を含み、
前記主装置は、
前記挿入部に対応する形状を備える第1及び第2の通信ポートと、
前記主装置の筐体表面のうち、前記第2の通信ポートに隣接する位置に突出して形成され、前記挿入部を前記第2の通信ポートに挿入しようとした場合に前記突起部と干渉する干渉部と、
を含むことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記干渉部は、前記主装置の筐体表面に対して、前記通信ケーブルの先端から前記突起部の位置までの長さに応じた高さで形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記干渉部は、前記主装置の筐体表面に対して、前記挿入部内に配置された端子の先端から前記突起部の位置までの長さに応じた高さで形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項4】
前記干渉部の先端側の面、及び、前記突起部の前記通信ケーブル先端側に向けられた面は、いずれも平面である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の通信システム。
【請求項5】
前記通信ケーブルは、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)ケーブルであり、
前記主装置は、前記第1及び第2の通信ポートを経由するUSB通信を制御する通信制御回路と、前記副装置からの制御信号を受け付ける副装置対応回路と、をさらに含み、
前記第1の通信ポートは、前記副装置対応回路を介して前記通信制御回路に接続され、
前記第2の通信ポートは、前記副装置対応回路を介さずに前記通信制御回路に接続される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の通信システム。
【請求項6】
主装置が有する第1及び第2の通信ポートに対応する形状を備え、副装置を前記主装置に接続する際に前記第1の通信ポート内に挿入される挿入部と、
前記挿入部とケーブル本体との間に設けられ、当該ケーブルを挿抜する際に利用者により把持される把持部と、
前記把持部の表面から突出して形成され、前記挿入部を前記第2の通信ポートに挿入しようとした場合に、前記第2の通信ポートに隣接して前記主装置の筐体表面から突出する干渉部と干渉する突起部と、
を有することを特徴とする通信ケーブル。
【請求項7】
副装置と接続される通信ケーブルの先端に形成された挿入部に対応する形状を備える第1及び第2の通信ポートと、
筐体表面のうち、前記第2の通信ポートに隣接する位置に突出して形成され、前記挿入部を前記第2の通信ポートに挿入しようとした場合に、前記通信ケーブルの前記挿入部とケーブル本体との間に設けられた把持部から突出して形成された突起部と干渉する干渉部と、
を有する通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−23278(P2011−23278A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168829(P2009−168829)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】