説明

通信システムとこれに用いる主局、従局及び中継局

【課題】 交通無線LANのメンテナンスを行う作業員が、主局を容易に探索できるようにする。
【解決手段】 本発明は、交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANよりなる通信システムに関する。無線LANを構成する各通信ノードは、自局から無線LANのアクセスポイントである主局に至るまでの中継数を特定可能な情報を、ヒューマンリーダブルに出力する出力部(表示部13)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANよりなる通信システムと、この通信システムに好適に使用できる主局、従局及び中継局に関する。
より具体的には、上記無線LANを構成する各通信ノードの通信状態を容易に把握するための方策に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の交差点の信号灯器の灯色を、系統的ないし平面的に制御する交通信号制御が既に行われている。この場合、交通信号制御機同士や、その制御機と車両感知器或いは管制センターの中央装置との間で、必要な交通情報をほぼリアルタイムに伝送する必要がある。
従来、交通信号制御機や車両感知器などの交通設備間の通信は、地下に埋設又は電柱に架設された通信線を用いた有線通信が主流であったが、配線工事のための道路規制をなくしたり、工事費用を削減したりする目的で、その通信を無線LAN(Local Area Network)にて行う場合がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
かかる交通設備間の情報伝送に用いる無線LAN(以下、「交通無線LAN」ということがある。)の場合も、国際電気通信連合(ITU)によって利用目的が指定されたISM(Industry-Science-Medical)バンドに属する、2.4GHz帯(2400〜2500MHz)の電波が使用される。
このため、主に都市部の交通無線LANでは、電波干渉を回避するための周波数の選択や、送信出力を制限するための中継局の設置などの方策を講じることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−067462号公報
【特許文献2】特開2008−205765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記交通無線LANの場合も、アクセスポイントを介して外部ネットワークと通信するインフラストラクチャーモードで運用されるのが通常であり、アクセスポイントである主局と、主局を通じて外部ネットワークと通信可能な従局とを通信ノードとして含む。
また、交通無線LANでは、周囲の景観の制限で大きな高利得アンテナを使用できないため、1つの無線局区間の伝送距離が300m前後であるので、中継局が必要となること多く、この場合、見通し空間(障害物が存在しない空間)でなければ受信レベルが低下するので、ビルなどの障害物を避けるために中継して見通し空間としなければならない。
【0006】
かかる交通無線LANでは、アクセスポイントである主局に設定された各種の情報に基づいて、ネットワーク構成や従局及び中継局のチャンネル設定などを把握する。
従って、交通無線LANのどこかで電波障害が発生したために、現地に赴いてメンテナンス作業を行う場合は、現地に設置されている複数の通信装置のうちで、どれが主局であるかをまず見出す必要がある。
【0007】
しかし、交通無線LANに使用する従来の通信装置では、主局を含む各々の通信ノードが、自局のノード種別などの情報を外部に表示する手段を備えていないので、現地に赴いた作業員が主局を見つけ出すには、各地点に散在している通信装置に順にノート型PCを接続し、主局が見つかるまで総当たり的な探索をせねばならず、現地で主局を見つけるのに非常に手間がかかっていた。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、交通無線LANのメンテナンスを行う作業員が、主局を容易に探索できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の通信システムは、交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANよりなる通信システムであって、前記無線LANを構成する各通信ノードが、自局から前記無線LANのアクセスポイントである主局に至るまでの中継数を特定可能な情報を、ヒューマンリーダブルに出力する出力部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の通信システムによれば、各通信ノードの出力部が、自局から前記無線LANのアクセスポイントである主局に至るまでの中継数を特定可能な情報を、ヒューマンリーダブルに出力するので、かかる出力が行われない従来の通信装置よりなる通信システムの場合に比べて、作業員が行う主局の探索作業が容易になる。従って、交通無線LANのメンテナンス作業を簡略化することができる。
【0011】
(2) 本発明の通信システムにおいて、前記出力部は、更に、前記無線LANにおける自局のノード種別(主局、従局又は中継局のいずれか)を、ヒューマンリーダブルに出力可能であることが好ましい。
この場合、自局から主局までの中継数だけでなく、自局が主局、従局又は中継局のうちのどのノード種別であるかを把握できるので、かかるノード種別が表示されない場合に比べて、主局に辿り着いた事実を作業員が即座に把握することができる。このため、交通無線LANのメンテナンス作業をより簡略化することができる。
【0012】
(3) 本発明の主局は、交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANの、アクセスポイントである主局であって、上述の(1)又は(2)のいずれかに記載した前記出力部を有することを特徴とする。
従って、本発明の主局は、上述の(1)又は(2)のいずれかに記載した、本発明の通信システムと同様の作用効果を奏する。
【0013】
(4) 本発明の従局は、交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANの、アクセスポイントである主局を通じて外部ネットワークと通信可能な従局であって、上述の(1)又は(2)のいずれかに記載した前記出力部を有することを特徴とする。
従って、本発明の従局は、上述の(1)又は(2)のいずれかに記載した、本発明の通信システムと同様の作用効果を奏する。
【0014】
(5) 本発明の中継局は、交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANの、アクセスポイントである主局と、当該主局を通じて外部ネットワークと通信可能な従局との間の無線通信を中継する中継局であって、上述の(1)又は(2)のいずれかに記載した前記出力部を有することを特徴とする。
従って、本発明の中継局は、上述の(1)又は(2)のいずれかに記載した、本発明の通信システムと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
以上の通り、本発明によれば、各通信ノードに設けた出力部が、自局から主局に至るまでの中継数を特定可能な情報をヒューマンリーダブルに出力するので、主局の探索作業が容易になり、交通無線LANのメンテナンス作業を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの斜視図である。
【図2】上記通信システムの接続形態(トポロジー)の一例を示す説明図である。
【図3】通信装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】通信フレームのフォーマットを示す図である。
【図5】主局、従局及び中継局が協同して行うデータ伝送処理の内容を示すシーケンス図である。
【図6】通信装置に設けられた表示部の一例を示す説明図である。
【図7】主局の探索例を示すための道路平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る通信システムの斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の通信システムは、ある交差点Jの近傍の電柱等に設置された通信装置1と、超音波式車両感知器や光ビーコン等よりなる路側センサ4の近傍に設置された通信装置2と、それらの通信装置2,3間の中継地点に設置された通信装置3とを備えている。
【0018】
本実施形態の通信システムで伝送すべき交通情報には、例えば、交通管制センターの中央装置が交通信号制御機宛てに送信する、信号灯色の切り替えタイミングを指示する信号制御指令や、その交通信号制御機が中央装置に事後報告する、当該制御機の動作履歴を表す信号制御実行情報などがある。
また、超音波式の車両感知器から中央装置に送るパルス信号や、中央装置が光ビーコンを介して車両に提供するVICS(「VICS」は登録商標)情報なども、本実施形態の通信システムで伝送すべき交通情報に含まれる。
【0019】
図1に示す通信装置1〜3のうち、通信装置1は、交差点Jに設けられた交通信号制御機(図示せず)の無線通信機であり、通信装置2は、路側センサ4の無線通信機であり、通信装置3は、それらの通信装置1,2間の無線通信を中継する無線通信機である。
これらの通信装置1〜3間の無線通信は、ISMバンドに属する2.4GHz帯を使用している。すなわち、各通信装置1〜3は、通常の無線LAN機器と同様に、IEEE802.11b/g等の規約に従って、使用可能な周波数(2.4000〜2.4835HGz)を14チャンネルに区分したいずれかのチャンネルで無線通信を行う。
【0020】
上記交通情報を無線で伝送する本実施形態の無線LAN(交通無線LAN)では、アクセスポイントを介して外部ネットワークと通信する「インフラストラクチャーモード」で運用されており、通信装置1がそのアクセスポイントとなっている。
すなわち、交通無線LANを構成する複数の通信ノードのうち、通信装置1が、中央装置に通じる外部ネットワークとのアクセスポイントとなる「主局」であり、通信装置2は、その主局を通じて外部ネットワークと通信可能な「従局」である。
【0021】
また、通信装置3は、主局と従局との間の無線通信を中継する「中継局」である。このため、中継局である通信装置3は、WDS(Wireless Distribution System)モードのリピータ機能を備えている。
なお、以下において、通信システムのノード種別によって異なる事項を説明する場合には、「主局1」、「従局2」及び「中継局3」を用いて説明を行い、すべてのノード種別で共通する事項を説明する場合には、「通信装置1〜3」を用いて説明を行う。
【0022】
〔通信システムの接続形態〕
図2は、上記通信システムの接続形態(トポロジー)の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態の通信システムでは、主局1を含む合計7つの通信ノードを含む。通信システムは、4つの伝送経路が主局1に集まるスター型の接続形態となっており、その4つの伝送経路のうちの1つ(ノード1→ノード3→ノード4→ノード5の伝送経路)が、2つの中継局3を含むものとする。
【0023】
すなわち、図2にナンバリングしたノード番号1〜7を用いて説明すると、ノード2の従局2は、ノード1の主局1と直接無線通信が可能な距離に配置され、ノード6とノード7の従局2も、主局1と直接無線通信が可能な距離に配置されている。
これに対して、ノード5の従局2は、主局1から遠方にあるため、無線伝送の出力を極力抑えるために、ノード3とノード4の2つの中継局3を介して、ノード1の主局1と無線通信するようになっている。
【0024】
もっとも、本発明の通信システムの接続形態は、図2に例示した場合に限定されるものではなく、例えば、主局1に集まるすべての伝送経路が中継局3を含まない接続形態や、逆に、その中継局3を含む伝送経路が複数含まれる接続形態であってもよい。
【0025】
〔通信装置の内部構成〕
図3は、通信装置1〜3の内部構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態の通信装置1〜3はいずれも基本的にほぼ同じ内部構成を有する。
【0026】
通信装置1〜3は、制御部10、記憶部11、無線通信部12及び表示部13を備えている。なお、主局1は、更に入力部14を備えているが、従局2と中継局3は入力部14を備えていなくてもよい。
制御部10は、情報処理が可能なCPU(Central Processing Unit)等よりなる。制御部10は、記憶部11に記憶されたコンピュータプログラムを読み出し、後述する通信制御や測定データの共有処理などの各種の処理を実行する。
【0027】
記憶部11は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )やフラッシュメモリ等よりなり、制御部10が実行するコンピュータプログラムの他、制御部10が用いる制御情報や交通情報などを一時的に記憶する。
無線通信部12は、時分割多重通信の電波を送受信するアンテナ、RF送受信回路、変復調回路及び変調・拡散・符号化処理回路、及び、使用周波数の選局回路を内部に備えている(いずれも図示せず)。
【0028】
無線通信部12は、無線LAN用の周波数帯域におけるCh1〜Ch14までのいずれかのチャンネルを選局し、選局したチャンネルにて他局と無線通信を行う。
主局1の入力部14は、作業員による情報入力を受け付けるインタフェースであり、人為的操作を直接受け付けるスイッチ、或いは、ノート型PC等からの入力信号を受け付ける入力インタフェースで構成されている。入力部14には、例えば、通信装置1〜3で使用する「チャンネル情報」と、交通無線LANにおける通信ノードの「位置付け情報」を入力することができる。
【0029】
主局1の制御部10は、入力部14に「チャンネル情報」と「位置づけ情報」が入力されると、その情報を含む管理用フレームを生成し、生成したフレームを交通無線LANに属する従局2と中継局3に送信する。
管理用フレームを受信した従局2又は中継局3の制御部10は、主局1で指定されたチャンネルに無線通信部12の選局回路の周波数を合わせるとともに、管理用フレームに記された各々の通信ノードの位置付け情報を、自装置の記憶部11に記憶させる。
【0030】
このように、本実施形態の通信システムでは、主局1の入力部14に対する情報入力により、従局2及び中継局3が使用する周波数の設定及び切り替えと、交通無線LANのトポロジーにおける各通信ノードの位置付け情報の通知を行うことができる。
上記「位置付け情報」は、「経路番号」と「局種別番号」からなる。このうち、経路番号は、主局1に繋がる伝送経路ごとに付与される識別番号であり、局種別番号は、交通無線LANを構成するノード種別の識別番号である。
【0031】
なお、ある伝送経路において、末端の従局2に到達するまでに複数の中継局3が介在する場合(図2のノード3とノード4の場合)は、主局1に近い順から1つインクリメントした値を各中継局3の経路番号に設定するものとする。
従って、図2に示すトポロジーにおいて、ノード1とノード2の経路番号を「0」、ノード3の経路番号を「2」、ノード6の経路番号を「5」、ノード7の系列番号を「7」と定義し、主局1の局種別番号を「0」、従局2の局種別番号を「1」、中継局の局種別番号を「2」と定義すると、各々のノード1〜7の位置付け情報は、次のようになる。
【0032】
ノード1の位置付け情報=(0,0)
ノード2の位置付け情報=(0,2)
ノード3の位置付け情報=(2,1)
ノード4の位置付け情報=(3,1)
ノード5の位置付け情報=(3,2)
ノード6の位置付け情報=(5,2)
ノード7の位置付け情報=(7,2)
【0033】
〔主局と従局のデータ伝送処理〕
主局1の制御部10は、交通情報を含む通信フレーム(以下、「データフレーム」という。)の上り送信を要求する制御フレーム(以下、「要求フレーム」という。)を、所定のサイクルごとに、ネットワークに含まれる各従局2にそれぞれ送信する。
また、要求フレームを受信した従局2の制御部10は、その要求に応答して、自局で取得した所定の交通情報を格納したデータフレーム(以下、「応答フレーム」という。)を生成し、主局1に上り送信する。
【0034】
以下、主局1と複数の従局2との間で行われる、要求フレームと応答フレームの送受信を繰り返す一連の通信制御を、「データ伝送処理」という。
また、中継局3の制御部10は、上位側の通信ノードから要求フレームを受信すると、同じ伝送経路の下位側の通信ノードに要求フレームをそのまま中継し、逆に、下位側の通信ノードから応答フレームを受信すると、同じ伝送経路の上位側の通信ノードにその応答フレームをそのまま中継する通信制御を行う。
【0035】
なお、主局1の制御部10は、従局2に伝送すべき交通情報がある場合には、自局から送信する上記要求フレームに、その交通情報を含めることもできる。
本実施形態では、上記のデータ伝送処理に用いる要求フレームと応答フレームに、交通無線LANに含まれる各々の通信ノードが、自局で使用しているチャンネル(Ch1〜Ch14のいずれかのチャンネル)の受信電界強度の測定データを格納して測定データの共有処理を行うが、この処理の詳細については後述する。
【0036】
〔通信フレームのフォーマット〕
図4は、通信フレームのフォーマットを示す図である。
図4に示すように、通信装置1〜3の無線通信に用いる通信フレームは、物理ヘッダとMACフレームとから構成されている。
物理ヘッダには、PLCP(Physical Layer Convergence Protocol/Procedure )プリアンブルとPLCPヘッダとが含まれる。
【0037】
PLCPプリアンブルは、通信フレームの先頭に物理層で付加される同期信号のビット列であり、PLCPヘッダは、変調方式やデータなどの情報が物理層で記されるヘッダ部である。
MACフレームは、ヘッダ部とデータ部(ペイロード)とFCS(Frame Check Sequence)とが含まれる。このうち、ヘッダ部には、IEEE802.11の規約に従う管理用フレームや制御フレームの種別を指定するフィールドや、複数種類のMACアドレスを指定するフィールドが含まれる。
【0038】
また、MACフレームのデータ部には、各々の通信ノードが測定した受信電界強度の測定データを格納するためのフィールドが、ノード番号ごとに割り当てられている。
主局1の制御部10は、要求フレームを送信する場合には、MACフレームのデータ部に割り当てられた自局用の所定フィールドに、自局で測定した受信電界強度の測定データを格納する。
【0039】
一方、従局2の制御部10は、応答フレームを送信する場合に、MACフレームのデータ部に自局で取得した交通情報を格納するとともに、そのデータ部に割り当てられた自局用の所定フィールドに、自局で測定した受信電界強度の測定データを格納する。
また、中継局3の制御部10は、要求フレームを中継する場合には、MACフレームのデータ部に割り当てられた自局用の所定フィールドに、自局で測定した受信電界強度の測定データを格納する。
【0040】
〔測定データの共有処理〕
図5は、主局1、従局2及び中継局3が協同して行うデータ伝送処理の内容を示すシーケンス図である。
本実施形態の主局1、従局2及び中継局3は、図5に示す通信フレームのやり取りを経て、各ノード1〜7が使用中のチャンネルごとの受信電界強度の測定データを、それぞれ各ノード1〜7が共有するための共有処理を行う。
【0041】
なお、図5において、「C」は、繰り返して行われるデータ伝送処理のサイクル時間であり、主局1、従局2及び中継局3は、1つのサイクル時間Cごとに当該データ伝送処理を実行する。
また、図5のノード番号1〜7は、図2のノード番号1〜7と対応させてあるので、以下において、ノード番号1〜7を用いて通信フレームのシーケンスを説明する。
【0042】
まず、ノード1は、要求フレームR2をノード2に送信し、ノード2は、要求フレームR2に対応する応答フレームA2をノード1に送信する。この際、ノード1は、自局で測定した受信電界強度の測定データを要求フレームR2に含め、ノード2は、自局で測定した受信電界強度の測定データを応答フレームA2に含める。
これにより、ノード1とノード2は、互いに相手方の受信電界強度の測定データを取得し、それぞれ自局の記憶部11に記憶させる。
【0043】
次に、ノード1は、ノード5のための要求フレームR5をノード3に送信し、ノード3は、受信した要求フレームR5を下位側のノード4に中継し、ノード4は、受信した要求フレームR5を、下位側のノード5に中継する。この際、ノード1は、自局の受信電界強度と既得のノード2の受信電界強度の測定データを要求フレームR5に含める。
これにより、ノード3は、自局で測定した受信電界強度の測定データの他に、ノード1とノード2の受信電界強度の測定データを取得し、自局の記憶部11に記憶させる。
【0044】
また、ノード3は、要求フレームR5をノード4に中継する際に、自局で測定した受信電界強度の測定データを要求フレームR5に含める。
これにより、ノード4は、自局で測定した受信電界強度の測定データの他に、ノード1、ノード2及びノード3の受信電界強度の測定データを取得し、自局の記憶部11に記憶させる。
【0045】
更に、ノード4は、要求フレームR5をノード5に中継する際に、自局で測定した受信電界強度の測定データを要求フレームR5に含める。
これにより、ノード5は、自局で測定した受信電界強度の測定データの他に、ノード1、ノード2、ノード3及びノード4の受信電界強度の測定データを取得し、自局の記憶部11に記憶させる。
【0046】
一方、ノード5は、要求フレームR5に対応する応答フレームA5をノード4に送信し、ノード4は、受信した応答フレームA5を上位側のノード3に中継し、ノード3は、受信した応答フレームA5を上位側のノード1に中継する。
この際、ノード5は、自局で測定した受信電界強度の測定データを応答フレームA5に含める。
【0047】
これにより、ノード4は、ノード5から受信する応答フレームA5から、ノード5の受信電界強度の測定データを更に取得し、自局の記憶部11に記憶させる。
また、ノード3は、ノード4から受信する応答フレームA5から、ノード4とノード5の受信電界強度の測定データを更に取得し、自局の記憶部11に記憶させる。
【0048】
次に、ノード1は、要求フレームR6をノード6に送信し、ノード6は、要求フレームR6に対応する応答フレームA6をノード1に送信する。
この際、ノード1は、既得のノード1〜ノード5までの受信電界強度の測定データを要求フレームR6に含め、ノード6は、自局で測定した受信電界強度の測定データを応答フレームA6に含める。
【0049】
これにより、ノード6は、自局で測定した受信電界強度の測定データの他に、ノード1〜ノード5までの受信電界強度の測定データを取得し、自局の記憶部11に記憶させる。
また、ノード1は、ノード6からの応答フレームA6から、ノード6の受信電界強度の測定データを新たに取得し、これを自局の記憶部11に記憶させる。
【0050】
更に、ノード1は、要求フレームR7をノード7に送信し、ノード7は、要求フレームR7に対応する応答フレームA7をノード1に送信する。
この際、ノード1は、既得のノード1〜ノード6までの受信電界強度の測定データを要求フレームR7に含め、ノード7は、自局で測定した受信電界強度の測定データを応答フレームA7含める。
【0051】
これにより、ノード7は、自局で測定した受信電界強度の測定データの他に、ノード1〜ノード6までの受信電界強度の測定データを取得し、自局の記憶部11に記憶させる。
また、ノード1は、ノード7からの応答フレームA7から、ノード7の受信電界強度の測定データを新たに取得し、これを自局の記憶部11に記憶させる。
【0052】
上記のように、今回のサイクルC中に送受信される要求フレームR2,R5,R6,R7と応答フレームA2,A5,A6,A7により、ノード1は、他のノード2〜7の受信電界強度の測定データをすべて取得する。
そこで、ノード1は、次回のサイクルCで送信する要求フレームR2,R5,R6,R7に、今回のサイクルCで取得したすべてのノード1〜7の受信電界強度の測定データを含める。
【0053】
これにより、主局1以外のノード2〜7は、次回のサイクルC以後に取得する要求フレームR2,R5,R6,R7により、他局で測定された受信電界強度の測定データを取得することができる。
なお、主局1を含む各ノード1〜7は、次回のサイクルC以後に要求フレームや応答フレームを受信すると、その受信フレームに記された、過去の自局の受信電界強度と現時点の自局の受信電界強度とを比較し、その差が所定値以上である場合には、現時点の受信電界強度の値に更新し、更新した測定データを送信フレームに格納する。
【0054】
〔表示部の構成〕
図6は、通信装置1〜3に設けられた表示部13の一例を示す説明図である。
図6に示すように、本実施形態の表示部13は、接続状態表示部20と、通信状態表示部21と、切り替えスイッチ22とを備え、これらの部材20〜22はすべての通信装置1〜3の制御基板に取り付けられている。
【0055】
図6の接続状態表示部20は、複数の発光素子(例えば、LED)を縦横に2次元配列してなる電光表示器よりなり、図6の例では、発光素子の配列数は縦横いずれも16個である。
また、接続状態表示部20の縦列番号は前記経路番号に相当し、横列番号は前記局種別番号に相当しており、制御部10は、記憶部11に記憶された位置付け情報の経路番号と局種別番号に対応する格子点に位置する発光素子を点灯させ、記憶部11に記憶された位置付け情報のノード1〜7が、交通無線LANに含まれることを表示する。
【0056】
例えば、縦列番号と横列番号の座標を(x,y)とすると、図6の発光素子L1の座標は(0,0)であるから、発光素子L1の点灯はノード1の存在を表す。
また、発光素子L2の座標は(0,2)であるから、発光素子L2の点灯はノード2の存在を表す。以下同様に、発光素子L3〜L7の点灯は、それぞれ、ノード3〜ノード7が交通無線LANに含まれていることを表す。
【0057】
また、通信装置1〜3の制御部10は、他局の位置付け情報を表す発光素子については、それを点灯させるだけであるが、自局の位置付け情報を表す発光素子については、それを点滅させるようになっている。例えば、図6の例では、(5,2)の発光素L6が点灯しているので、自局が、経路番号が「5」でかつ局種別番号が「2」の通信装置(図2のノード6)であることを表している。
このように、本実施形態の接続状態表示部20は、交通無線LANのトポロジーにおける自局と他局の位置付け情報を、ヒューマンリーダブルに表示する機能を有する。
【0058】
このため、任意の通信装置1〜3に組み込まれた接続状態表示部20を目視すれば、交通無線LANの全体のトポロジーが、図2に示す接続形態となっていることを把握することができる。
また、点滅している発光素子の位置付け情報から、自局の通信装置1〜3が、交通無線LANにおける、主局1、従局2又は中継局3のうちのどの種別の通信ノードであるかと、自局から主局1に至るまでの中継数を把握することもできる。
【0059】
一方、図6の通信状態表示部21は、各チャンネル(Ch1〜Ch14)に対応する発光素子(例えば、LED)を横一列に配列してなる電光表示器よりなる。
それらの発光素子は、発光色によって受信電界強度の概略値を表すようになっており、例えば、発光色と強度レベルとの対応関係は次のように設定されている。
【0060】
赤色(R):−20dbm以上
黄色(Y):−30〜−20dbm未満
紫色(P):−40〜−30dbm未満
緑色(G):−50〜−40dbm未満
水色(A):−60〜−50dbm未満
青色(B):−70dbm未満
【0061】
通信装置1〜3の制御部10は、記憶部11に記憶されたチャンネルごとの受信電界強度の測定データを読み出し、読み出した測定データの値を上記対応関係に当てはめて、通信状態表示部21に配列された各発光素子の発光色を決定する。
図6の切り替えスイッチ22は、接続状態表示部20の縦列数と横列数に対応する接点数(図例では、いずれも16接点)を有する一対のロータリースイッチ22A,22Bよりなる。
【0062】
通信装置1〜3の制御部10は、両スイッチ22A,22Bの接点に対応する位置付け情報のノード1〜7を特定するとともに、そのノード1〜7が使用しているチャンネル(Ch1〜Ch14)に対応する通信状態表示部21の発光素子を点滅させる。
例えば、ロータリースイッチ22A,22Bによって座標(5,2)が指定されると、制御部10は、位置付け情報が(5,2)のノード6で使用中のチャンネル(例えば、Ch7とする。)を読み出し、チャンネルCh7の発光素子を点滅させる。
【0063】
このように、ロータリースイッチ22A,22Bを切り替えることにより、特定のノード1〜7が使用中のチャンネルの発光素子を点滅させることができる。
このため、作業員がロータリースイッチ22A,22Bを切り替えることにより、妨害電波などによって通信状態が悪くなっているチャンネル(図6の例では、Ch7)を使用している通信ノードの位置付け情報を、特定することができる。
【0064】
〔主局の探索例〕
図7は、接続状態表示部20による電光表示を参照して行う、主局1の探索例を示すための道路平面図である。
図7において、地点A〜Gは、それぞれ、交通無線LANを構成する図2のノード1〜7のいずれかが、実際に現地に設置されている地点であるとし、地点A〜Gとノード1〜7の対応関係は不明であるものとする。なお、図7のハッチング部分は建物である。
【0065】
ここで、従来の通信装置では、地点A〜Gに設置されている通信装置のノード種別と、その通信装置から主局1に至るまでの中継数とを外部に表示する機能を有していない。
従って、現地に赴いた作業員が、交通無線LANのメンテナンス作業を行うために主局1を探索する場合には、地点A〜Gに設置されている各々の通信装置に、例えばノート型PCなどの設定機器をそれぞれ順番に接続し、どれが主局1であるかを総当たり的に探索せねばならず、主局1を見つけ出すのに非常に手間がかかっていた。
【0066】
これに対して、本実施形態の通信システムでは、交通無線LANを構成するすべての通信装置1〜3が前述の接続状態表示部20を有するので、どの通信装置1〜3にアクセスしても、自局が、主局1,従局2又は中継局3のいずれであるかと、自局から主局1に至るまでの中継数とを作業員が把握できるので、現地で主局1を探索する作業が大幅に軽減される。
例えば、作業員が地点Eの通信装置に最初にアクセスし、その通信装置に設けられた接続状態表示部20により、地点Eの通信装置がノード3であると判明したとする。
【0067】
この場合、ノード3は、主局1と直接無線通信する中継局3であるから、図7に示す道路線形における各通信装置の配置を考慮すれば、地点C又は地点Fの通信装置が、主局1であると推測することができる。
その理由は、地点Bは、地点Eから見て地点Cよりも遠いので、主局1の設置位置としては不自然であり、地点A、地点D、地点Gは、地点Eとの間に建物があり、地点Eと直接無線通信を行うのが殆ど不可能だからである。
【0068】
また、地点C又は地点Fの通信装置にも接続状態表示部20が設けられているので、いずれかの地点C,Fの通信装置の接続状態表示部20の表示から、当該通信装置が主局1であることが判明すれば、交通無線LANの主局1に辿り着いたことが分かる。
なお、仮に、作業員が現地で最初にアクセスした通信装置が偶然に主局1であった場合には、それ以降の探索は不要となる。
【0069】
〔通信システムの効果〕
以上の通り、本実施形態の通信システムによれば、交通無線LANを構成する各通信装置1〜3が、自局から主局1に至るまでの中継数を特定可能な情報をヒューマンリーダブルに表示する接続状態表示部20を有するので、交通無線LANのメンテナンスを行うために現地に赴いた作業員が、各通信装置1〜3の接続状態表示部20の表示を利用して、主局1を容易に探索することができる。このため、交通無線LANのメンテナンス作業を簡略化することができる。
【0070】
また、本実施形態の通信システムによれば、上記接続状態表示部20が、自局から主局1までの中継数を特定可能な情報だけでなく、自局が主局1、従局2又は中継局3のうちのどのノード種別であるかをヒューマンリーダブルに表示するので、かかるノード種別が表示されない場合に比べて、主局1に辿り着いた事実を作業員が即座に把握することができ、この点においても、交通無線LANのメンテナンス作業が簡略化される。
【0071】
本実施形態の通信システムによれば、交通無線LANを構成する各通信装置1〜3が、ネットワーク中のすべての通信ノードで使用中のチャンネルの受信電界強度の測定データを取得でき、取得した受信電界強度をヒューマンリーダブルに表示する通信状態表示部21を有するので、交通無線LANのメンテナンスを行うために現地に赴いた作業員は、通信状態表示部21の表示内容により、チャンネルごとの受信電界強度を把握できる。
このため、交通無線LANにおいて使用中のチャンネルごとの受信電界強度を、人手を要することなく簡単に把握することができ、交通無線LANのメンテナンス作業を簡略化することができる。
【0072】
また、本実施形態の通信システムによれば、切り替えスイッチ22を操作することにより、通信装置1〜3のトポロジー上の位置付けに対応する受信電界強度を、通信状態表示部21に表示させることができるので、チャンネルごとの受信品質が、現地に存在するどの通信装置1〜3の測定データであるかを推定することができる。
このため、表示された受電電界強度がどの通信装置1〜3のものであるかが不明である場合に比べて、交通無線LANのメンテナンス作業を簡略化することができる。
【0073】
更に、本実施形態の通信システムによれば、各通信装置1〜3の制御部10が、要求フレームR2,R5,R6,R7とその応答フレームA2,A5,A6,A7にそれぞれ自局の受信電界強度の測定データを格納するので、各通信ノードが測定した受信電界強度の測定データを、主局1が迅速に収集できる。
このため、受信電界強度の各通信ノードに対する通知が遅延するのを未然に防止することができる。
【0074】
また、本実施形態の通信システムによれば、各通信装置1〜3の通信状態表示部21が、使用中のすべてのチャンネルの受信品質を同時に表示するので、どのチャンネルが妨害電波の影響を受けているかを作業員が一目で判断でき、通信品質が悪化しているチャンネルを容易に特定することができるという利点もある。
【0075】
〔その他の変形例〕
上述の実施形態は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、通信装置1〜3の制御部10が受信電界強度を測定しているが、通信フレームの受信誤り率(ビットエラーレート)などの、電波の受信品質と表すその他の測定データを採用することにしてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態では、接続状態表示部20が、自局のノード種別と、自局から主局1に至るまでの中継数を特定可能な情報とを、ヒューマンリーダブルに表示しているが、そのうちの中継数のみを、例えば数値で直接的に表示するようにしてもよい。
この場合でも、接続状態表示部20が表示する中継数に基づいて、主局1が自局からどの程度の距離にあるかを概ね推定できるので、主局1の探索作業が容易になる。
【0077】
更に、上述の実施形態では、接続状態表示部20と通信状態表示部21を通信装置1〜3に設けているが、通信装置1〜3の制御部10が、それらの表示部20,21の表示に必要なデータを、ディスプレイ機能を有するノート型PCなどの外部装置に出力し、その外部装置によって表示部20,21と実質的に等価な表示を行うことにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 通信装置(主局)
2 通信装置(従局)
3 通信装置(中継局)
10 制御部(測定部、通信制御部)
11 記憶部
12 無線通信部
13 表示部(出力部)
14 入力部
20 接続状態表示部
21 通信状態表示部
22 切り替えスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANよりなる通信システムであって、
前記無線LANを構成する各通信ノードが、自局から前記無線LANのアクセスポイントである主局に至るまでの中継数を特定可能な情報を、ヒューマンリーダブルに出力する出力部を有することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記出力部は、更に、前記無線LANにおける自局のノード種別を、ヒューマンリーダブルに出力可能である請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANの、アクセスポイントである主局であって、
請求項1に記載の前記出力部を有することを特徴とする主局。
【請求項4】
交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANの、アクセスポイントである主局を通じて外部ネットワークと通信可能な従局であって、
請求項1に記載の前記出力部を有することを特徴とする従局。
【請求項5】
交通信号制御に用いる交通情報を無線で伝送するための無線LANの、アクセスポイントである主局と、当該主局を通じて外部ネットワークと通信可能な従局との間の無線通信を中継する中継局であって、
請求項1に記載の前記出力部を有することを特徴とする中継局。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−51496(P2013−51496A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187463(P2011−187463)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】