説明

通信システム及び通信システム制御方法並びにプログラム

【課題】上位システムと端末装置間の通信を中継する中継システムを複数備えた通信システムに対して、電力消費を効果的に削減する。
【解決手段】監視制御装置140は、第2の中継システム120の負荷度を監視し、第2の中継システム120の負荷度が所定の閾値以下になったときに、そのデータ処理部122の処理実行部123の電源供給をオフするように電源制御部124を制御すると共に、第2の中継システム120のカバーエリア160内の各無線通信装置と上位システム間に送受信されるデータのデータ処理が第1の中継システム110のデータ処理部112により行われるように、経路選択部111と、経路選択部121と、スイッチング装置130を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位システムと端末装置間の通信を中継する中継システムを少なくとも2つ備えた通信システムの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信において、端末装置と上位システム間の通信の中継に、Ethernet(登録商標)などのTCP/IPネットワークが利用されており、様々な視点からの技術改良がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、TCP/IPネットワークに接続された携帯端末の接続状態を監視し、監視結果に基づいて該携帯端末の電源断の可否を判断すると共に、電源断可能と判断したときに、携帯端末の電源をオフする技術が開示されている。この技術によれば、TCPの接続を維持したまま、携帯端末の電源断を行うことで携帯端末の消費電力を最小限に抑えることができると考えられている。
【0004】
また、特許文献2には、呼に対して自装置内のリソースの割当てを行う呼処理制御手段と、自装置内の監視及び制御を行う監視制御手段と、ベースバンドの処理を行う複数のベースバンド処理ユニットからベース処理手段とを含む基地局装置を用いて移動通信を行う移動通信システムにおいて、呼処理制御手段と監視制御手段の処理結果を基に複数のベースバンド処理ユニット各々の電源のON/OFF制御を行う技術が開示されている。この技術は、リソースの再分配、及び再分配により電源オフ可能になったリソースの電源オフをすることにより、負荷急変への耐性や処理の分散に優れた消費電力削減を実現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−168937号公報
【特許文献2】特開2007−134840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上位システムと端末装置間の中継システムを複数備えた通信システムについて考える。分かりやすいように、例として、中継システムの数を2とする。この2つ(第1と第2)の中継システムは、同種類例えばEthernetのネットワークにより構成され、自身に接続された携帯端末などの無線端末装置と上位システムとの間の通信を中継する。
【0007】
このような通信システムにおいて、例えば特許文献2の技術を中継システムに利用すれば、第1と第2の中継システム毎に消費電力の削減できると考えられる。ところで、一方の中継システムの処理量が少ないときには、該中継システム内のリソースの再分配をしても、上位システムと無線端末装置間で送受信されるデータを送受信先に合致するように変換する処理など、中継を実現するための各処理を担うリソースを少なくとも1つ電源オンする必要があり、消費電力の削減効果が限られている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上位システムと端末装置間の通信を中継する中継システムを複数備えた通信システムに対して、電力消費をより削減できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、通信システムである。この通信システムは、同種類のネットワークにより構成され、上位システムと端末装置間の通信を中継する第1と第2の中継システムと、端末装置からのデータの出力先を、第1と第2の中継システム間で切り換え可能なスイッチング装置と、監視制御装置とを備える。
【0010】
第1と第2の中継システムは、該中継システムのネットワークの経路選択を行う経路選択部と、スイッチング装置を介して端末装置と接続され、上位システムと端末装置間で送受信されるデータを、送信先に合致するように変換する処理を含むデータ処理を行うデータ処理部とを有する。
【0011】
第2の中継システムのデータ処理部は、上記データ処理を実行する処理実行部と、該処理実行部の電源供給をオン/オフ可能な電源制御部とを有する。
【0012】
監視制御装置は、スイッチング装置と、第1及び第1と第2の中継システムのネットワークに接続され、第2の中継システムの負荷の大小を示す負荷度を監視し、該負荷度が所定の閾値以下になったときに、第2の中継システムの処理実行部の電源をオフするように電源制御部を制御すると共に、データの出力先が第2の中継システムであった端末装置と上位システム間で送受信されるデータのデータ処理が第1の中継システムのデータ処理部により行われように、第1と第2の中継システムの経路選択部と、スイッチング装置を制御する。
【0013】
なお、上記態様の通信システムを方法や装置に置換えて表現したもの、該通信システムの一部例えば監視制御装置の処理をコンピュータに実行させるプログラム、該プログラムを記録した記録媒体なども、本発明の態様としては有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる技術によれば、上位システムと端末装置間の通信を中継する中継システムを複数備えた通信システムに対して、中継システムを跨いた制御を行うことにより、電力消費をより削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる通信システムを示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態にかかる通信システムを示す図である。
【図3】図2に示す通信システムにおける中継システムのデータ処理制御装置を示す図である。
【図4】図2に示す通信システムにおける中継システムのデータ処理実行装置を示す図である。
【図5】図2に示す通信システムの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。また、以下の図面に示す各装置の構成は、例えば記憶装置に読み込まれたプログラムをコンピュータ(PCや携帯端末装置等)上で実行することにより実現される。また、これらのプログラムは、CD−ROMや光ディスク等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされることになる。
<第1の実施の形態>
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる通信システム100を示す。通信システム100は、図示しない上位システムと端末装置(図1に示す無線通信装置152、154、162)間の通信を中継する第1の中継システム110及び第2の中継システム120と、第1の中継システム110と端末装置間に設けられ、各々の端末装置からのデータの出力先を、第1の中継システム110と第2の中継システム120間で切り換え可能なスイッチング装置130と、監視制御装置140とを備える。
【0018】
以下の説明において、上位システムとの間の通信が第1の中継システム110により担われる各端末装置のエリアを第1の中継システム110のカバーエリアといい、上位システムとの間の通信が第2の中継システム120により担われる各端末装置のエリアを第2の中継システム120のカバーエリアという。図1に示す例では、第1の中継システム110のカバーエリアはカバーエリア150であり、第1の中継システム110は、カバーエリア150に含まれる無線通信装置152、無線通信装置154と上位システム間の通信を担う。また、第2の中継システム120のカバーエリアはカバーエリア160であり、第2の中継システム120は、カバーエリア160に含まれる無線通信装置162と上位システム間の通信を担う。
【0019】
したがって、上位システムから無線通信装置152と無線通信装置154に送信されるデータは、上位システムから第1の中継システム110、スイッチング装置130を介して当該無線通信装置に出力され、無線通信装置152と無線通信装置154から上位システムに送信されるデータは、無線通信装置152と無線通信装置154からスイッチング装置130、第1の中継システム110を介して上位システムに出力される。また、上位システムから無線通信装置162に送信されるデータは、上位システムから第2の中継システム120、スイッチング装置130を介して無線通信装置162に出力され、無線通信装置162から上位システムに送信されるデータは、無線通信装置162からスイッチング装置130、第2の中継システム120を介して上位システムに出力される。
【0020】
第1の中継システム110は、例えば高レートのEthernet(登録商標)などのTCP/IPネットワーク119により構成され、ネットワーク119に接続された経路選択部111とデータ処理部112を有する。
【0021】
経路選択部111は、ネットワーク119の経路選択を行う装置例えばルータである。データ処理部112は、スイッチング装置130と接続されており、上位システムと端末装置間で送受信されるデータを、送信先に合致するように変換する処理を含むデータ処理を行う。具体的には、上位システムからカバーエリア150内の各無線通信装置に送信されるデータは、経路選択部111に入力され、経路選択部111によりデータ処理部112に転送され、データ処理部112により無線端末装置に合致するようにデータ処理が施されてからスイッチング装置130に出力される。カバーエリア150内の各無線通信装置から上位システムに送信されるデータは、スイッチング装置130を介してデータ処理部112に入力され、データ処理部112により上位システムに合致するようにデータ処理が施されてから経路選択部111に出力され、経路選択部111により上位システムに転送される。
【0022】
第2の中継システム120は、ネットワーク119と同種のネットワーク129により構成され、ネットワーク129に接続された経路選択部121とデータ処理部122を有する。
【0023】
経路選択部121は、ネットワーク129の経路選択を行う装置例えばルータである。データ処理部122は、スイッチング装置130と接続されており、上位システムと端末装置間で送受信されるデータを、送信先に合致するように変換する処理を含むデータ処理を行う。具体的には、上位システムからカバーエリア160内の各無線通信装置に送信されるデータは、経路選択部121に入力され、経路選択部121によりデータ処理部122に転送され、データ処理部122により無線端末装置に合致するようにデータ処理が施されてからスイッチング装置130に出力される。カバーエリア160内の各無線通信装置から上位システムに送信されるデータは、スイッチング装置130を介してデータ処理部122に入力され、データ処理部122により上位システムに合致するようにデータ処理が施されてから経路選択部121に出力され、経路選択部121により上位システムに転送される。
【0024】
データ処理部122は、上述したデータ処理を実行する処理実行部123と、処理実行部123の電源供給をオン/オフ可能な電源制御部124とを有する。電源制御部124の動作は、監視制御装置140により制御される。
【0025】
監視制御装置140は、制御線142によりスイッチング装置130と接続されていると共に、ネットワーク119およびネットワーク129に接続されている。監視制御装置140は、第2の中継システム120の負荷の大小を示す負荷度を監視し、第2の中継システム120の負荷度が所定の閾値以下になったときに、第2の中継システム120のデータ処理部122における処理実行部123の電源をオフするように電源制御部124を制御すると共に、カバーエリア160内の各端末装置(図1に示す例では無線通信装置162)と上位システム間で送受信されるデータのデータ処理が第1の中継システム110のデータ処理部112により行われるように、経路選択部111、経路選択部121、スイッチング装置130を制御する。
【0026】
このとき、監視制御装置140は、経路選択部111、経路選択部121、スイッチング装置130に対して、具体的には下記のように制御を行う。
【0027】
監視制御装置140は、カバーエリア160の無線通信装置から上位システムへ送信するデータを第1の中継システム110のデータ処理部112に出力するようにスイッチング装置130を制御する。また、経路選択部111と経路選択部121間のリンクを確立させ、上位システムからカバーエリア160内の無線通信装置に送信するデータであって、第2の中継システム120の経路選択部121に入力されたデータを経路選択部111に転送するように経路選択部121を制御すると共に、経路選択部111からのデータをデータ処理部112に転送するように経路選択部111を制御する。
【0028】
これにより、第2の中継システム120のカバーエリアであったカバーエリア160内の無線通信装置と上位システム間で送受信されるデータのデータ処理は第1の中継システム110のデータ処理部112により行われ、第1の中継システム110の処理実行部123は電源オフされる。
【0029】
第2の中継システム120の負荷度は、第2の中継システム120による中継処理の負荷の大小を示すことができればいかなる指標値を用いてもよい。例えば第2の中継システム120のデータ処理部122が処理するデータ量すなわち第2の中継システム120により中継される通信量や、ネットワーク129の混雑度などとすることができる。
【0030】
すなわち、通信システム100は、第2の中継システム120の負荷度が少ないときに、第2の中継システム120のカバーエリア160内の無線通信装置と上位システム間に送受信されるデータのデータ処理を第1の中継システム110により肩代わりにすると共に、第2の中継システム120の処理実行部123の電源をオフする。このように中継システムを跨いた制御を行うことにより、通信システム100全体の電力消費を効果的に削減できる。
【0031】
分かりやすいように、上記において、第2の中継システム120の処理実行部123の処理を第1の中継システム110のデータ処理部112により肩代わりできるように説明したが、通信システム100の第1の中継システム110によるデータ処理を第2の中継システム120のデータ処理部122により肩代わりできるようにしてもよい。すなわち、第2の中継システム120のデータ処理部122と同じように第1の中継システム110のデータ処理部112を構成し、監視制御装置140は、通信システム100の負荷度も監視し、第1の中継システム110の負荷度が所定の閾値以下になったときに、データ処理部112の処理実行部を電源オフするようにすると共に、カバーエリア150内の各無線通信装置と上位システム間に送受信されるデータのデータ処理が第2の中継システム120のデータ処理部122により行われるように制御してもよい。
【0032】
また、2つの中継システムを有する通信システム100を例に説明したが、本発明の技術は、3つ以上の複数の中継システムを有する通信システムに適用することができる。この場合、これらの複数の中継システムのいずれかの負荷度が所定の閾値以下になったときに、該中継システムのカバーエリア内の端末装置と上位システム間で送受信されるデータのデータ処理を他の中継システムにより肩代わりするようにすればよい。肩代わりする中継システムについては、例えば、上記所定の閾値より大きい負荷度を有する中継システムのうちの、最も小さい負荷度の中継システムを選定すればよい。
<第2の実施の形態>
【0033】
図2は、本発明の第2の実施の形態にかかる通信システム200を示す。通信システム200は、第1の中継システム210と、第2の中継システム230と、監視制御装置250と、光スイッチ260、同期装置204を備える。
【0034】
第1の中継システム210は、高レートのEthernet(登録商標)であるローカルネットワーク212により構成され、光スイッチ260を介して接続された、自身のカバーエリア(例えばカバーエリア270)内の各無線通信装置と、通信事業者が提供するATM回線またはIP回線の伝送路網である伝送路網202に接続された図示しない上位システムとの間の通信を中継する。
【0035】
第2の中継システム230は、ローカルネットワーク212と同種のネットワークであるローカルネットワーク232により構成され、光スイッチ260を介して接続された、自身のカバーエリア(例えばカバーエリア280)内の各無線通信装置と、上記上位システムとの間の通信を中継する。
【0036】
光スイッチ260は、光回線インタフェースと無線インタフェースを備え、第1の中継システム210と第2の中継システム230を介して上位システムから無線通信装置に送信されてきたデータを当該無線通信装置に送信すると共に、カバーエリア270とカバーエリア280内の無線通信装置から上位システムに送信されたデータを、該無線通信装置の中継を担う中継システムに送信する。
【0037】
同期装置204は、同期ネットワーク214を介して、システム全体、各中継システムの装置間の同期のコントロールを制御する。具体的には、通信ベンダが用意するIEEE1588による定期的な同期信号を第1の中継システム210と第2の中継システム230に供給する機能を有し、同期プロセスの開始時に、GPS等の外部からのシステムクロックをもとに第1の中継システム210と第2の中継システム230の各装置に同期信号と時刻情報を送信し、各装置からの応答を受信後、最初の同期信号と応答のオフセットの演算を行い、各装置にオフセット値を送信することにより同期制御を行う。
【0038】
カバーエリア270とカバーエリア280内の各無線通信装置(図中無線通信装置272、無線通信装置274、無線通信装置282など)は、光スイッチ260を介して第1の中継システム210または第2の中継システム230からの無線データの無線周波数の電力増幅をして無線端末に送信する。又、無線端末からの無線周波数を必要な受信レベルまで増幅して無線データにして光スイッチ260に送信する。
【0039】
第1の中継システム210と第2の中継システム230の構成について詳細に説明する。
第1の中継システム210は、メインルータ220、データ処理制御装置221、データ処理実行装置222、サブルータ223、伝送路装置224を備える。
【0040】
メインルータ220、データ処理制御装置221、データ処理実行装置222、伝送路装置224は、ユーザデータや制御データなどの通信データが流れるローカルネットワーク212に接続されている。また、これらの各装置は、同期ネットワーク214を介して同期装置204に接続されており、同期装置204により同期制御がなされる。
【0041】
第2の中継システム230は、第1の中継システム210と同様の構成を有し、メインルータ240と、データ処理制御装置241と、データ処理実行装置242と、サブルータ243と、伝送路装置244を備える。
【0042】
メインルータ240、データ処理制御装置241、データ処理実行装置242、伝送路装置244は、通信データが流れるローカルネットワーク232に接続されている。また、これらの各装置は、同期ネットワーク214を介して同期装置204に接続されており、同期装置204により同期制御がなされる。
【0043】
第1の中継システム210の各装置は、第2の中継システム230の各装置と同様であるので、ここで、第2の中継システム230の各装置を代表にして説明する。
【0044】
伝送路装置244は、第2の中継システム230と伝送路網202を接続するための装置であり、伝送路網202から第2の中継システム230に送信されるデータに対して、伝送路網202用のパケットから第2の中継システム230用のIPパケットに変換する一方、第2の中継システム230から伝送路網202に送信するデータに対して、IPパケットから伝送路網202用のパケットに変換する。また、伝送路網202がATM回線により構成されたものである場合には、伝送路装置244は、さらに、ATM網からクロックを注して同期装置204のシステムクロックとして供給する。
【0045】
サブルータ243は、同期装置204からの同期信号を、同期ネットワーク234を介して、データ処理制御装置241、データ処理実行装置242、伝送路装置244に送信する。なお、同期ネットワーク234は、Ethernet(登録商標)のネットワークである。
【0046】
メインルータ240は、ローカルネットワーク232の経路選択を行うものであり、ローカルネットワーク232に接続された各装置間の中継を行う。
【0047】
データ処理制御装置241とデータ処理実行装置242は、無線通信装置と上位システム間で送受信されるデータに対して、送信先に合致する変換処理を含むデータ処理を行う。このデータ処理は、無線回線の設定や解放などの通信データ制御処理と、変調/復調、符号化/復号化、無線データへの変換と逆変換、拡散または逆拡散などの実行処理を含む。データ処理実行装置242は、上記通信データ制御処理を担い、データ処理実行装置242に対して無線回線の設定や解放などの制御を行う。データ処理実行装置242は、上記実行処理を担い、データ処理制御装置241の制御を基に変調/復調や符号化/復号化などを行う。
【0048】
図3に示すように、データ処理制御装置241は、電源制御部302と、複数のユニット304を備える。これらのユニット304は、上述した通信データ制御処理を実行するものであり、電源制御部302は、これらのユニット304への電源供給のオン/オフを制御する。
【0049】
図4に示すように、データ処理実行装置242は、電源制御部312と、複数のユニット314を備える。これらのユニット314は、上述した変調/復調や符号化/復号化などを実行するものであり、電源制御部312は、これらのユニット314への電源供給のオン/オフを制御する。
【0050】
光スイッチ260、第1の中継システム210におけるメインルータ220、データ処理制御装置221とデータ処理実行装置222の電源制御部、第2の中継システム230におけるメインルータ240、データ処理制御装置241とデータ処理実行装置242の電源制御部は、監視制御装置250に制御される。
【0051】
監視制御装置250は、ローカルネットワーク212とローカルネットワーク232に接続され、ローカルネットワーク232を介して、メインルータ220、データ処理制御装置221とデータ処理実行装置222の電源制御部、メインルータ240、データ処理制御装置241とデータ処理実行装置242の電源制御部を制御する。また、監視制御装置250は、制御線252により光スイッチ260を制御する。
【0052】
監視制御装置250は、第1の中継システム210と第2の中継システム230の負荷度を監視し、いずれか一方の中継システムの負荷度が所定の閾値以下になったときに、該一方の中継システムのデータ処理制御装置とデータ処理実行装置内の各ユニットの電源をオフするように電源制御部を制御すると共に、該一方の中継システムのカバーエリア内の各無線装置と上位システム間で送受信されるデータに対するデータ処理が、他方の中継システムのデータ処理制御装置とデータ処理実行装置により行われるように、光スイッチ260、メインルータ220、メインルータ240を制御する。
【0053】
図5を参照して、通信システム200の動作例を説明する。
まず、サブルータ223、サブルータ243は、自身に接続された各装置とのリンクを確立し、メインルータ220、メインルータ240も、自身に接続された各装置とのリンクを確立する(S100、S102)。
【0054】
そして、同期装置204は、同期ネットワーク214に接続された各装置間の同期をとり(S104)、監視制御装置250は、メインルータ220とメインルータ240間のリンクを無効にすると共に、第1の中継システム210と第2の中継システム230の負荷度を監視するために、第1の中継システム210と第2の中継システム230内の各装置に対して処理状態の報告を要求する(S106)。
【0055】
これにより、第1の中継システム210とメインルータ240が自身のカバーエリア内の各無線装置と上位システム間の通信中継を開始する。なお、デフォルトの状態において、第1の中継システム210のカバーエリアがカバーエリア270であり、メインルータ240のカバーエリアがカバーエリア280であるとする。すなわち、上位システムからカバーエリア270の各無線通信装置へ送信するデータは、伝送路網202、伝送路装置224、メインルータ220を経て、データ処理制御装置221とデータ処理実行装置222により処理され、光スイッチ260を介して当該無線通信装置に送信される。上位システムからカバーエリア280の各無線通信装置へ送信するデータは、伝送路網202、伝送路装置244、メインルータ240を経て、データ処理制御装置241とデータ処理実行装置242により処理され、光スイッチ260を介して当該無線通信装置に送信される。また、カバーエリア270内の各無線通信装置から上位システムへ送信するデータは、光スイッチ260によりデータ処理実行装置222に送信され、データ処理実行装置222によるデータ処理制御装置221の制御に従った処理がなされて、メインルータ220、伝送路装置224を経て上位システムに送信される。カバーエリア280内の各無線通信装置から上位システムへ送信するデータは、光スイッチ260によりデータ処理実行装置242に送信され、データ処理実行装置242によるデータ処理制御装置241の制御に従った処理がなされて、メインルータ240、伝送路装置244を経て上位システムへ送信される。
【0056】
監視制御装置250は、第2の中継システム230の負荷度が所定の閾値以下になった場合に、カバーエリア280の無線通信装置と上位システム間に送受信されるデータのデータ処理が第1の中継システム210のデータ処理制御装置221とデータ処理実行装置222により行われ、データ処理制御装置241とデータ処理実行装置242の各ユニットの電源供給がオフされるように、制御を行う(S108)。具体的には、まず、メインルータ220とメインルータ240間のリンクを有効にする。そして、カバーエリア280内の各無線通信装置が上位システムへ送信するデータの出力先を、データ処理実行装置242からデータ処理実行装置222に切り換えるように光スイッチ260を制御する。また、データ処理制御装置241の各ユニット304と、データ処理実行装置242の各ユニット314の電源供給をオフするように電源制御部302と電源制御部312を制御する。また、伝送路装置244経て上位システムからカバーエリア280内へ送信するデータがデータ処理実行装置222に転送されるように、メインルータ240とメインルータ220のアドレステーブルを変更する。
【0057】
これにより、上位システムと、カバーエリア270内の無線通信装置との間に送受信されるデータの転送ルートが変らないが、上位システムからカバーエリア280内の無線通信装置へ送信するデータは、伝送路装置244、メインルータ240、メインルータ220を経て、データ処理制御装置221とデータ処理実行装置222により処理され、光スイッチ260を介して当該無線通信装置に送信される。また、カバーエリア280内の無線通信装置から上位システムへ送信するデータは、光スイッチ260によりデータ処理実行装置222に送信され、データ処理実行装置222によるデータ処理制御装置221の制御に従った処理がなされて、メインルータ220、伝送路装置224を経て上位システムに送信される。
【0058】
なお、カバーエリア280内の各無線通信装置と上位システム間の通信量が増え、第2の中継システム120の負荷度が第1の中継システム110の処理能力を超えそうになったとき、監視制御装置250は、データ処理制御装置241とデータ処理実行装置242の各ユニットの電源供給がオンされ、カバーエリア280の無線通信装置と上位システム間に送受信されるデータのデータ処理がデフォルト時通りにメインルータ240のデータ処理制御装置241とデータ処理実行装置242により行われるように制御を行う。
【0059】
すなわち、通信システム200は、第2の中継システム240の負荷度が少ないときに、第2の中継システム230のカバーエリア280内の無線通信装置と上位システム間に送受信されるデータのデータ処理を第1の中継システム210により肩代わりにすると共に、第2の中継システム240のデータ処理制御装置241とデータ処理実行装置242の各ユニットの電源供給をオフする。このように中継システムを跨いた制御を行うことにより、通信システム200全体の電力消費を効果的に削減できる。
【0060】
また、本実施の形態の通信システム200の第1の中継システム210とメインルータ240において、伝送路装置224、メインルータ220、サブルータ223、データ処理制御装置や、データ処理実行装置などは、それぞれ別個の装置として設けられている。中継システム内の各装置がベンダ固有のものである場合が多いため、このように機能毎に別個の装置として設けることにより、個別に増設や修理などのメンテナンスができ、メンテナンスにかかるコストを削減すると共に、メンテナンスの迅速化を図ることができる。
【0061】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、上述各実施の形態に対して、さまざまな変更、増減、組合せを加えてもよい。これらの変更、増減、組合せが加えられた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0062】
例えば、上述した各実施の形態において、一方の中継システムの負荷度が所定の閾値以下になったときに、該中継システムにおいてデータ処理を担う部分の電源をオフすると共に、該中継システムにより担われていたデータ処理を他方の中継システムにより肩代わりするようにしている。例えば、通信システム200において、一方の中継システムの伝送路装置が故障した場合において、該中継システムにより行われていた全ての処理を他方の中継システムにより肩代わりするようにしてもよい。この場合、伝送路装置が故障した中継システムのデータ処理制御装置と伝送路装置の各ユニットの電源供給をオフすることにより、システム全体の消費電力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 通信システム 110 第1の中継システム
111 経路選択部 112 データ処理部
119 ネットワーク 120 第2の中継システム
121 経路選択部 122 データ処理部
123 処理実行部 124 電源制御部
129 ネットワーク 130 スイッチング装置
140 監視制御装置 142 制御線
150 カバーエリア 152 無線通信装置
154 無線通信装置 160 カバーエリア
162 無線通信装置 200 通信システム
202 伝送路網 204 同期装置
210 第1の中継システム 212 ローカルネットワーク
214 同期ネットワーク 220 メインルータ
221 データ処理制御装置 222 データ処理実行装置
223 サブルータ 224 伝送路装置
230 第2の中継システム 232 ローカルネットワーク
234 同期ネットワーク 240 メインルータ
241 データ処理制御装置 242 データ処理実行装置
243 サブルータ 244 伝送路装置
250 監視制御装置 252 制御線
260 光スイッチ 270 カバーエリア
272 無線通信装置 274 無線通信装置
280 カバーエリア 282 無線通信装置
302 電源制御部 304 ユニット
312 電源制御部 314 ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種類のネットワークにより構成され、上位システムと端末装置間の通信を中継する第1と第2の中継システムと、
端末装置からのデータの出力先を、第1と第2の中継システム間で切り換え可能なスイッチング装置と、
スイッチング装置と、第1及び第2の中継システムのネットワークに接続された監視制御装置とを備え、
第1と第2の中継システムは、
該中継システムのネットワークの経路選択を行う経路選択部と、
スイッチング装置を介して端末装置と接続され、上位システムと端末装置間で送受信されるデータを、送信先に合致するように変換する処理を含むデータ処理を行うデータ処理部とを有し、
第2の中継システムのデータ処理部は、
前記データ処理を実行する処理実行部と、
該処理実行部の電源供給をオン/オフ可能な電源制御部とを有し、
監視制御装置は、
第2の中継システムの負荷の大小を示す負荷度を監視し、
該負荷度が所定の閾値以下になったときに、
第2の中継システムの処理実行部の電源をオフするように電源制御部を制御すると共に、データの出力先が第2の中継システムであった端末装置と上位システム間で送受信されるデータのデータ処理が第1の中継システムのデータ処理部により行われように、第1と第2の中継システムの経路選択部と、スイッチング装置を制御することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記端末装置は、無線端末装置であり、
前記ネットワークは、TCP/IPネットワークであることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
同種類のネットワークにより構成され、上位システムと端末装置間の通信を中継する第1と第2の中継システムと、端末装置からのデータの出力先を、第1と第2の中継システム間で切り換え可能なスイッチング装置とを有し、第1と第2の中継システムが、該中継システムのネットワークの経路選択を行う経路選択部と、スイッチング装置を介して端末装置と接続され、上位システムと端末装置間で送受信されるデータを、送信先に合致するように変換する処理を含むデータ処理を行うデータ処理部とを有し、第2の中継システムのデータ処理部が、データ処理を実行する処理実行部と、該処理実行部の電源供給をオン/オフ可能な電源制御部とを有する通信システムにおける第2の中継システムの負荷の大小を示す負荷度を監視し、
該負荷度が所定の閾値以下になったときに、
第2の中継システムの処理実行部の電源をオフするように電源制御部を制御すると共に、データの出力先が第2の中継システムであった端末装置と上位システム間で送受信されるデータのデータ処理が第1の中継システムのデータ処理部により行われように、第1と第2の中継システムの経路選択部と、スイッチング装置を制御することを特徴とする通信システム制御方法。
【請求項4】
前記端末装置は、無線端末装置であり、
前記ネットワークは、TCP/IPネットワークであることを特徴とする請求項3に記載の通信システム制御方法。
【請求項5】
同種類のネットワークにより構成され、上位システムと端末装置間の通信を中継する第1と第2の中継システムと、端末装置からのデータの出力先を、第1と第2の中継システム間で切り換え可能なスイッチング装置とを有し、第1と第2の中継システムが、該中継システムのネットワークの経路選択を行う経路選択部と、スイッチング装置を介して端末装置と接続され、上位システムと端末装置間で送受信されるデータを、送信先に合致するように変換する処理を含むデータ処理を行うデータ処理部とを有し、第2の中継システムのデータ処理部が、データ処理を実行する処理実行部と、該処理実行部の電源供給をオン/オフ可能な電源制御部とを有する通信システムにおける第2の中継システムの負荷の大小を示す負荷度を監視し、
該負荷度が所定の閾値以下になったときに、
第2の中継システムの処理実行部の電源をオフするように電源制御部を制御すると共に、データの出力先が第2の中継システムであった端末装置と上位システム間で送受信されるデータのデータ処理が第1の中継システムのデータ処理部により行われように、第1と第2の中継システムの経路選択部と、スイッチング装置を制御することをコンピュータに実行せしめることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate