説明

通信制御装置、その制御方法、および制御プログラム

【課題】SIPを用いて同報送信において複数の宛先との通信を並行して行うができ、しかも他のSIPサービスの利用ができない事態を回避する。
【解決手段】SIPサーバ102は送信側端末から受信したSIP接続要求メッセージに応じてSIPセッションを確立する。SIPサーバはSIP接続要求メッセージに含まれるSIPアドレスに関連付けられた宛先に接続要求を送信し、SIP接続要求メッセージに関して予め定められた指定が行われているか否かを判定する。SIPサーバは予め定められた指定が行われていると、宛先の全てから応答メッセージを受けた後送信側端末に接続応答メッセージを返信して1つのSIPセッションで宛先の全てと送信側端末との接続を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続された端末装置間のセッション確立を制御する通信制御装置に関し、特に、SIP(Session Initiation Protocol)に応じてセッション確立を制御する通信制御装置、その制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ネットワークに接続された端末装置との間で仮想的なセッションを確立して、当該セッションが成立している間で通信サービスを保証するプロトコルとしてSIPが知られている。そして、このSIPはIP(Internet Protocol)電話およびIP・FAXなどの通信サービスにおいて利用されている。
【0003】
SIPセッションを確立する際には、まず、送信側端末装置がSIPセッション確立要求(INVITE)を、着信側端末装置に送信する。着信側端末装置では、受信したINVITEに対する成功応答を送信側端末装置に返信する。送信側端末装置では成功応答を受信すると、着信側端末装置にACK(Acknowledgement)を送信して、SIPセッションを確立する。
【0004】
また、SIPセッションで用いられるメディア(Media)を決定する際には、送信側端末装置および着信側端末装置で利用を希望するメディアを受信するためのポート番号などを記述したSDP(Session Description Protocol)を交換する(SDPネゴシエーション)。
【0005】
SDPネゴシエーションでは、送信側端末装置がオファーSDPを含むINVITEを着信側端末装置に送信する。そして、着信側端末装置がアンサーSDPを含む成功応答を送信側端末装置に返信する。
【0006】
SIPにおいては、1つのSIP URI(SIP Uniform Resource Identifier)に対して複数の宛先を登録することが可能である。そして、通信制御装置であるSIPサーバには、SIP URIを用いたフォーク(fork)と呼ばれる機能が備えられており、送信側端末装置が複数の宛先が登録されたSIP URIにSIP接続要求(INVITE)を送信すると、SIPサーバは登録されている宛先の全てにSIP接続要求(INVITE)を送信する。
【0007】
この際、SIPセッションが確立されるのは、最初に成功応答を返信した着信側端末装置のみであり、その他の着信側端末装置に対してはSIPサーバからキャンセルが送信される(例えば。特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−269574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特にSIPを用いて複数の宛先にFAX送信を行う場合に、各宛先との通信を並行して行うことにより、効率良く短時間で送信を完了させたいという要望がある。しかしながら、一方では、SIPセッションを確立するためのリソースに限りがあるといった事情から、同時に確立可能なSIPセッションの数に制限が設けられている場合がある。
【0010】
例えば、SIPにおいて最大同時接続数(SIPセッション数)が3つに制限されている場合、FAXによる同報送信を用いて3つの着信側端末装置にFAX送信すると、3つのSIPセッションが全て占有されてしまうことになる。この結果、IP電話などの他のSIPサービスが利用できなくなってしまう。
【0011】
図10は、従来のSIPによるfork機能を用いた通信の一例を説明するための図である。ここでは、端末装置の一例として通信機能を備えた画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0012】
図示の例では、端末装置の1つである画像形成装置101および103〜106と通信制御装置の1つであるであるSIPサーバ102とがネットワークで接続されている。いま、画像形成装置101が複数の宛先にメディア(media)として画像(image)を送信するものとする。ここでは、SIPを用いて複数の宛先に送信を行う場合、前述のfork機能が用いられる。
【0013】
まず、画像形成装置101が複数の宛先が登録されたSIP URI(ここでは、×××@abc.co.jp)にSIP接続要求メッセージ(INVITE)を送信する(S901)。これに応答して、SIPサーバ102は登録されている宛先の全てに対してSIP接続要求メッセージを送信する(S902)。
【0014】
図示の例では、最大同時接続数(SIPセッション数)=3であり、ここでは、SIPサーバ102は画像形成装置103〜105にSIP接続要求メッセージを送信する。
【0015】
fork機能においては、最初に成功応答を返信した画像形成装置を除く他の画像形成装置との接続はキャンセルされる。図10においては、画像形成装置103が成功応答(OK)を最初にSIPサーバ102に返信しているので(S903)、SIPサーバ102は画像形成装置104および105にキャンセル(CANCEL)を送信する(S904)。そして、その旨がSIPサーバ102から画像形成装置101に返信される。
【0016】
従って、SIPセッションは、最初に応答を返信した画像形成装置103と画像形成装置101との間で確立され、画像形成装置103と画像形成装置101との間でFAX通信が行われることになる(S905)。この結果、画像形成装置は同報送信によって複数の画像形成装置と並行して通信を行うことができない。
【0017】
つまり、画像形成装置101は複数の画像形成装置103〜105と並行して通信を行う際には、複数のSIPセッションを確立する必要がある。そして、複数のSIPセッションが確立されると、SIPセッションの数が制限されている場合には、他のSIPサービスを利用することができないことがある。
【0018】
従って、本発明の目的は、SIPを用いて同報送信によって複数の宛先に送信を行うができ、しかも他のSIPサービスの利用ができない事態を回避することのできる通信制御装置、およびその制御方法、および制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明による通信制御装置は、送信側端末装置からネットワークを介して受信した接続要求メッセージに応じてセッションを確立して、前記送信側端末装置と受信側端末装置との通信を制御する通信制御装置であって、前記接続要求メッセージに含まれるアドレスに関連付けられた宛先に接続要求メッセージを送信する送信手段と、前記接続要求メッセージに関して予め定められた指定が行われているか否かを判定すると判定手段と、前記判定手段によって前記接続要求メッセージに関して前記予め定められた指定が行われていると判定されると、前記宛先の受信側端末装置の全てから応答メッセージを受けた後、前記送信側端末装置に接続応答メッセージを返信して1つのセッションで前記宛先の受信側端末装置の全てと前記送信側端末装置との接続を行うセッション確立手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の受信側端末装置に同報送信する場合でも1つのSIPセッションで複数の受信側端末装置と送信側端末装置とを接続することができる。従って、最大のSIPセッション数が制限される場合であっても、同報送信において複数のSIPセッションが使用されてしまい、他のSIPサービスが利用できなくなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態による通信制御装置の一例であるSIPサーバが接続されたネットワーク構成を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す画像形成装置およびSIPサーバで動作するソフトウェアの一例を示すブロック図である。
【図4】図1に示すネットワークにおけるセッション確立を説明するためのシーケンス図である。
【図5】図1に示す画像形成装置におけるセッション確立を説明するためのフローチャートである。
【図6】図1に示すSIPサーバにおけるセッション確立を説明するためのフローチャートである。
【図7】図3に示すSIP URI記憶部に登録されたSIPアドレスの一例を説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施形態において図3に示すSIP URI記憶部に登録されたSIPアドレスの他の例を説明するための図である。
【図9】本発明の第3の実施形態によるSIPサーバにおけるセッション確立を説明するためのフローチャートである。
【図10】従来のSIPによるfork機能を用いた通信の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態による通信制御装置について図面を参照して説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による通信制御装置の一例であるSIPサーバが接続されたネットワーク構成を示す図である。
【0024】
図1において、端末装置の一つである通信機能を備える画像形成装置101および103〜106がネットワークNET110に接続されている。さらに、ネットワークNET110には通信制御装置の一つであるSIP(Session Initiation Protocol)サーバ102が接続されている。図示の例では、5台の画像形成装置101および103〜106が示されているが、画像形成装置は少なくも3台接続される。
【0025】
画像形成装置101および103〜106の各々はSIP機能を備えている。そして、画像形成装置101および103〜106、SIPサーバは相互に通信可能であって、それぞれSIPアドレスを有している。
【0026】
図1に示す例では、画像形成装置101のSIPアドレスを”sip:192.168.11.1”とし、SIPサーバ102のSIPアドレスを”sip:192.168.11.2”とする。また、画像形成装置103のSIPアドレスを”sip:192.168.11.3”とし、画像形成装置104のSIPアドレスを”sip:192.168.11.4”とする。そして、画像形成装置105のSIPアドレスを”sip:192.168.11.5”とし、画像形成装置106のSIPアドレスを”sip:192.168.11.6”とする。
【0027】
SIPサーバ102には1つのSIPアドレス(主SIPアドレスともいう)に複数のSIPアドレスが関連付けられている。例えば、主SIPアドレス(例えば、sip:xxx@abc.co.jp)に対して、少なくとも2つのSIPアドレスが関連付けられる。
【0028】
図2は、図1に示す画像形成装置101のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、画像形成装置103〜106の各々も画像形成装置101と同様の構成を備えている。
【0029】
図2において、画像形成装置101は制御部101a、スキャナ213、およびプリンタ部212を有している。スキャナ213は原稿上の画像を光学的に読み取って画像データを出力する。プリンタ部212は制御部101aの制御下で画像データに応じて記録紙上に画像形成を行う。
【0030】
制御部101aはスキャナI/F制御部201を有しており、このスキャナI/F制御部201によってスキャナ213が制御される。CPU202はソフトウェアプログラムを実行して、画像形成装置101の制御を行う。ROM203にはブートプログラムおよび固定パラメータなど格納されている。RAM204はCPU202のワークエリアなどとして用いられる。HDD(ハードディスクドライブ)205は印刷データ(画相データ)など様々なデータの格納に用いられる。
【0031】
プリンタI/F制御部206はプリンタ部212を制御する。NVRAM(不揮発性メモリ)207には画像形成装置101における各種設定値が保存される。パネル制御部208はオペレーションパネル214を制御し、オペレーションパネル214に各種情報を表示するとともに、ユーザからの指示入力を受ける。ネットワークI/F制御部209は、NET110との間でデータの送受信を制御する。
【0032】
なお、制御部101aにおいて、スキャナI/F制御部201、CPU202、ROM203、RAM204、HDD205、プリンタI/F制御部206、NVRAM207、パネル制御部208、およびネットワークI/F制御部209はバス210によって相互に接続されている。
【0033】
図3は、図1に示す画像形成装置101およびSIPサーバ102で動作するソフトウェアの一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置103〜106の各々も画像形成装置101と同様のソフトウェアを有している。また、これらソフトウェアは画像形成装置101が備えるCPU又はSIPサーバ102が備えるCPUで動作する。
【0034】
画像形成装置101において、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)制御部301は、TCP/IP機能およびUDP/IP(User Datagram Protocol/Internet Protocol)機能を備えており、ネットワークNET110上の他の通信機器との間のデータ送受信を制御する。
【0035】
SIP制御部302は、TCP/IP制御部310を介してネットワークNET110上に存在する通信機器との間でSIPパケット(SIPデータともいう)の送受信を行ってSIPセッション確立処理を行う。
【0036】
SIPメッセージ作成部303はSIP接続要求メッセージ(INVITE)などのSIPメッセージ(つまり、SIPパケット)の作成を行う。属性情報付加部304はSIPメッセージに特別な定義を付加する際、SIPメッセージに追加の属性情報を付加する。
【0037】
SIPサーバ102上では、TCP/IP制御部301a、SIP制御部302a、およびSIPメッセージ作成部303aが動作する。これらTCP/IP制御部301a、SIP制御部302a、およびSIPメッセージ作成部303aはそれぞれ前述のTCP/IP制御部301、SIP制御部302、およびSIPメッセージ作成部303と同様の機能を有する。
【0038】
SIPサーバ102において、SIPメッセージ解析部305は、受信したSIPメッセージの解析を行って、SIPメッセージに属性情報が付加されている場合には属性情報解析部306を用いて属性情報の解析を行う。
【0039】
登録判定部307はSIPメッセージ解析部305による解析結果に応じて宛先を示すSIP URIがSIP URI記憶部308に登録されているか否かを判定する。なお、SIP URI記憶部308はSIPサーバ102に備えられたメモリ(記憶手段)である。
【0040】
図4は、図1に示すネットワークにおけるセッション確立を説明するためのシーケンス図である。また、図5は、図1に示す画像形成装置101におけるセッション確立を説明するためのフローチャートである。
【0041】
ここでは、画像形成装置101が画像形成装置103〜105にFAXで同報送信を行いつつ、画像形成装置106にIP電話で通話を行う場合を例に挙げて説明する。なお、ここでは、SIPセッションの数は最大3つに制限されているものとする。
【0042】
図3〜図5を参照して、画像形成装置101では、まずSIPメッセージ作成部303がFAXの同報送信を行うため、SIP接続要求メッセージ(INVITE)を作成する。この際、SIPメッセージ作成部303はSIPアドレスとして”sip:xxx@abc.co.jp”を宛先に設定するとともに、メディアタイプにm=iamage(画像)を設定する。さらに、属性情報付加部304は追加の属性情報であるキャンセル(CANCEL)を示す属性をオフ(OFF)にしてSIP接続要求メッセージに追加する(ステップS501)。
【0043】
SIP制御部302はTCP/IP制御部301を介してSIP接続要求メッセージをSIPサーバ102に送信する(ステップS502又はS401)。
【0044】
図6は、図1に示すSIPサーバ102におけるセッション確立を説明するためのフローチャートである。
【0045】
SIPサーバ102において、SIP制御部302aは、TCP/IP制御部301aを介してSIP接続要求メッセージを受信する(ステップS601)。続いて、SIPメッセージ解析部305はSIP接続要求メッセージの解析を行う(ステップS602)。
【0046】
この際、追加の属性情報があると、後述するように、属性情報解析部306は属性情報の解析を行う。図示の例では、属性情報解析部306によってCANCELを示す属性がオン又はオフのいずれであるかが判別される。
【0047】
次に、SIPメッセージ解析部305は、SIPメッセージの宛先を示すSIP URIが既に登録されている宛先であるか否かを確認するため登録判定部307に登録判定の指示を行う。登録判定部307はSIP URI記憶部308を参照してSIPメッセージの宛先アドレスが既に登録されているか否かを判定する(ステップS603)。
【0048】
図7は、図3に示すSIP URI記憶部308に登録されたSIPアドレスの一例を説明するための図である。
【0049】
図7に示すように、SIPアドレス=”sip:xxx@abc.co.jp”が登録されており、このSIPアドレス=”sip:xxx@abc.co.jp”に関連付けて、3つのSIPアドレス=”sip:192.168.11.3”、”sip:192.168.11.4”、および”sip:192.168.11.5”が登録されている。
【0050】
登録判定部307によって宛先アドレスが登録されていないと判定されると(ステップS603において、NO)、SIPメッセージ解析部305はセッション確立処理を終了する。
【0051】
一方、登録判定部307によって宛先アドレスが登録されていると判定されると(ステップS603において、YES)、SIP制御部302aはTCO/IP制御部301bを介して3つのアドレスの全てにSIP接続要求メッセージ(INVITE)を送信する(ステップS604又はS402)SIP接続要求メッセージを送信した後、SIPサーバ102は各宛先からの応答メッセージの返信を待つ。
【0052】
続いて、SIPメッセージ解析部305は、属性情報解析部306を用いて画像形成装置101から送信されたSIP接続要求メッセージに付加されたCANCELが示す属性(CANCEL属性)がオフであるか否かを判定する(ステップS605)。
【0053】
CANCEL属性がオフの場合(ステップS605において、YES)、SIPメッセージ作成部303aは全ての宛先(つまり、ここでは3つの宛先)から応答メッセージを受信するまで待つ(ステップS606又はS403)。
【0054】
全ての宛先から応答メッセージ(OK)を受信すると、SIPメッセージ作成部303aは接続応答メッセージを生成する。そして、SIP制御部302aはTCP/IP制御部301aを介して当該接続応答メッセージを画像形成装置101に送信して(ステップS607又はS404)、セッション確立処理を終了する。
【0055】
一方、CANCEL属性がオンであると(ステップS605において、NO)、SIPメッセージ作成部303aは全ての最初の応答メッセージを受信するまで待つ(ステップS608)。そして、最初の応答メッセージを受信した後、SIPメッセージ作成部303aはセッション確立処理をキャンセルするキャンセル要求メッセージを作成する。
【0056】
SIP制御部302aはTCP/IP制御部301aを介して当該キャンセル要求メッセージを、応答メッセージを受信した宛先を除く他の宛先に送信する(ステップS609)。その後、処理はステップS609に進む。
【0057】
図5において、画像形成装置101では、SIP制御部302が接続応答メッセージを受信する(ステップS503)。接続応答メッセージを受信すると、当該接続応答メッセージに応じた接続数(宛先数)n(図示の例では、n=1又は3)で1つのSIPセッションが確立される。
【0058】
画像形成装置101はSIP制御部302およびTCP/IP制御部301によってSIPメディア通信(ここでは、FAX通信)を開始する(ステップS504)。そして、画像形成装置101におけるセッション確立処理が終了する。
【0059】
上述のように、画像形成装置101において、CANCEL属性がオフとされると、SIPサーバ102では接続数=3として1つのSIPセッションを確立することになる。これによって、画像形成装置101は画像形成装置103〜105に対してFAX同報通信を並行して行うことができる(S405)。
【0060】
一方、CANCEL属性がオンであると、接続数=1として1つのSIPセッションが確立されることになる。この際には、画像形成装置101は画像形成装置103〜105にFAX送信するためには、宛先毎に1つのSIPのセッションを確立してFAX通信を行うことになる。このため、SIPサーバ102では、CANCEL属性がオンである場合には、画像形成装置101が画像形成装置103〜105にFAX送信するためには3つのSIPセッションを確立する必要がある。
【0061】
ところが、ここでは、SIPセッションの最大数が3に制限されているので、3つのSIPセッションを確立して画像形成装置101が画像形成装置103〜104とFAX通信を行っている際には、別にSIPセッションを確立して、画像形成装置101は画像形成装置106とIP電話通信を行うことはできない。
【0062】
一方、前述のように、CANCEL属性をオフとすれば、画像形成装置101は1つのSIPセッションによって画像形成装置103〜105とFAX通信を並行して行うことができる。そして、画像形成装置101は、FAX通信を行っている際に、Media=Audioとして別にSIPセッションを確立して画像形成装置106とIP電話通信を行うことができる(S406)。
【0063】
上述の説明から明らかなように、属性情報が存在しない場合には、SIPサーバ102において、そのfork機能はSIP URIに複数の宛先が登録されていると、登録されている宛先の全てにSIP接続要求メッセージ(INVITE)を送信する。そして、最初に応答メッセージを受信した宛先以外にはキャンセルメッセージが送信される。
【0064】
第1の実施形態では、属性情報であるCANCEL属性のオン又はオフによってSIPサーバが上記のキャンセルを行うか行わないかを決定するようにしたので、CANCEL属性をオフとすれば複数の宛てに対して1つのSIPセッションを確立して同報通信を並行して行うことができる。
【0065】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態によるSIPサーバについて説明する。なお、第2の実施形態による画像形成装置およびSIPサーバの構成は、図1〜図3に示す例と同様であるので説明を省略する。また、画像形成装置101〜106の各々は属性情報付加部304を特に備えなくともよい。
【0066】
第1の実施形態においては、属性情報であるCANCEL属性がSIP接続要求メッセージ(INVITE)に付加されるが、第2の実施形態においては、SIP URIを登録する際に予め属性情報としてCANCEL属性がSIP URI記憶部308に登録される。
【0067】
図8は、本発明の第2の実施形態において図3に示すSIP URI記憶部308に登録されたSIPアドレスの他の例を説明するための図である。
【0068】
図8において、SIPアドレス”sip:xxx@abc.co.jp”に関連付けてSIPアドレス(SIP URI)として3つの宛先が登録されている。さらに、ここでは、SIPアドレスに関連付けてCANCEL属性が登録されている。
【0069】
第2の実施形態では、画像形成装置101において、FAX通信を行うため、SIP接続要求メッセージを作成する際には、属性情報としてCANCEL属性を付加せず、SIPアドレス(sip:xxx@abc.co.jp)を宛先に設定する。
【0070】
さらに、画像形成装置101では、メディアタイプにm=iamageを設定してSIP接続要求メッセージを作成する。そして、このSIP接続要求メッセージが画像形成装置101からSIPサーバ102に送られる。
【0071】
SIPサーバ102では、TCP/IP制御部301を介してSIP制御部302がSIP接続要求メッセージを受信する。SIPメッセージ解析部305はSIP接続要求メッセージの解析を行う。この際には、SIP接続要求メッセージに属性情報(CANCEL属性)が含まれていないので、属性情報の解析は行われない。
【0072】
続いて、SIPメッセージ解析部305は宛先に関するSIP URIが既に登録されているか否かを確認するため登録判定部307に登録判定を指示する。登録判定部307はSIP URI記憶部308にSIPメッセージの宛先が登録されている否かを判定する。
【0073】
この場合、登録判定部307はSIPアドレス(sip:xxx@abc.co.jp)に関連して、SIPアドレス”sip:192.168.11.3”、”sip:192.168.11.4”、および”sip:192.168.11.5”が登録されていると判定することになる。さらに、登録判定部307はCANCEL属性が登録されていることを確認して、CANCEL属性をSIPメッセージ解析部205に渡す。
【0074】
SIPメッセージ解析部305は、属性情報解析部306によって属性情報であるCANCEL属性の解析を行う。図8に示す例では、CANCEL属性がオフであるので、以後の処理は第1の実施形態で説明したようにして行われる。
【0075】
このように、本発明の第2の実施形態においても、上述の第1の実施形態で説明したように、例えば、FAX同報送信によって複数の宛先に送信を行うことができるばかりでなく、FAX同報通信を行っている際にIP電話通信を行うことができる。
【0076】
[第3の実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態によるSIPサーバの一例について説明する。なお、第3の実施形態による画像形成装置およびSIPサーバの構成は図1〜図3に示す例と同様であるので説明を省略する。
【0077】
上述の第1および第の実施形態では、CANCEL属性を用いて当該CANCEL属性がオン又はオフであるかによって、SIPサーバ102がSIPセッションを確立する際の処理を異ならせた。
【0078】
第3の実施形態では、SIP接続要求メッセージ(INVITE)の他に、特別のALLSEND(全送付)メッセージを定義する。ここでは、SIPメッセージについてINVITEの他にALLSENDを定義して、SIPサーバ102は複数の宛先を含むALLSENDメッセージを受信すると、全ての宛先からの応答メッセージを待ってキャンセルを発行しないようにする。
【0079】
図9は、本発明の第3の実施形態によるSIPサーバのセッション確立を説明するためのフローチャートである。
【0080】
まず、画像形成装置101では、SIP接続要求メッセージを作成する際に属性情報は付加せずSIPアドレス(sip:xxx@abc.co.jp)を宛先に設定する。
【0081】
さらに、画像形成装置101では、メディアタイプにm=iamageを設定して、SIP接続要求メッセージを作成する。この際、メソッド(METHOD)のタイプとしてINVITEではなく、ALLSENDが指定される。そして、画像形成装置101は当該SIP接続要求メッセージをSIPサーバ102に送信する。
【0082】
SIPサーバ102では、SIP制御部302aがTCP/IP制御部301aを介してSIP接続要求メッセージを受信する(ステップS801)。そして、SIPメッセージ解析部305は、SIP接続要求メッセージの解析を行う(ステップS802)。SIP接続要求メッセージの解析の際には、SIP接続要求メッセージには属性情報が含まれていないので、属性情報の解析は行われない。
【0083】
SIPメッセージ解析部305は、宛先のSIP URIが登録されているか否かを確認するため、登録判定部307に登録判定の指示を行う。登録判定部307はSIP URI記憶部308にSIP接続要求メッセージの宛先アドレスが登録されているか否かを判定する(ステップS803)。
【0084】
登録判定部307によって宛先アドレスが登録されていないと判定されると(ステップS803において、NO)、SIPメッセージ解析部305はセッション確立処理を終了する。
【0085】
ここでは、SIP URI記憶部308にSIPアドレス”sip:xxx@abc.co.jp”が登録され、さらに、宛先アドレス”sip:192.168.11.3”、”sip:192.168.11.4”、および”sip:192.168.11.5”が登録されている。
【0086】
従って、登録判定部307は宛先アドレスが登録されている判定することになる(ステップS803において、YES)。そして、SIPメッセージ作成部303はこれら宛先アドレスにSIP接続要求メッセージ(INVITE)を送信する(ステップS804)。
【0087】
第3の実施形態では、ALLSENDが指定されていると、SIPサーバ102は、前述のCANCEL属性がオフである場合と同様の処理を行う。そして、SIPメッセージ作成部303aは全ての宛先から応答メッセージの返信を受けるまで待つ(ステップS805)。
【0088】
全ての宛先から応答メッセージ(OK)の返信を受信すると、SIPメッセージ作成部303aは接続応答メッセージを生成する。そして、SIP制御部302aはTCP/IP制御部301aを介して当該接続応答メッセージを画像形成装置101に送信して(ステップS806)、セッション確立処理を終了する。
【0089】
このように、第3の実施形態では、METHODとしてALLSENDが指定された場合にのみ、宛先アドレスで指定された複数の接続を1つのSIPセッションで行うようにしたので、例えば、FAX同報送信によって複数の宛先に送信を行うことができるばかりでなく、FAX同報通信中にIP電話通信を行うことができる。
【0090】
上述の説明から明らかなように、図1に示す例では、画像形成装置101が送信側端末装置であり、画像形成装置103〜106の各々が受信側端末装置である。
【0091】
また、図3において、SIP制御部302aおよびTCP/IP制御部301aが送信手段として機能する。さらに、SIPメッセージ解析部305および属性情報解析部306が判定手段として機能する。そして、SIPメッセージ作成部303a、登録判定部307、SIP制御部302a、およびTCP/IP制御部301aがセッション確立手段として機能する。
【0092】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0093】
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法をSIPサーバに実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを制御プログラムとして、この制御プログラムをSIPサーバが備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
【0094】
この際、制御方法および制御プログラムの各々は、少なくとも送信ステップ、判定ステップ、およびセッション確立ステップを有することになる。
【0095】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記録媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0096】
101,103〜106 画像形成装置
102 SIPサーバ
301,301a TCP/IP制御部
302,302a SIP制御部
303,303a SIPメッセージ作成部
304 属性情報付加部
305 SIPメッセージ解析部
306 属性情報解析部
307 登録判定部
308 SIP URI記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側端末装置からネットワークを介して受信した接続要求メッセージに応じてセッションを確立して、前記送信側端末装置と受信側端末装置との通信を制御する通信制御装置であって、
前記接続要求メッセージに含まれるアドレスに関連付けられた宛先に接続要求メッセージを送信する送信手段と、
前記接続要求メッセージに関して予め定められた指定が行われているか否かを判定すると判定手段と、
前記判定手段によって前記接続要求メッセージに関して前記予め定められた指定が行われていると判定されると、前記宛先の受信側端末装置の全てから応答メッセージを受けた後、前記送信側端末装置に接続応答メッセージを返信して1つのセッションで前記宛先の受信側端末装置の全てと前記送信側端末装置との接続を行うセッション確立手段とを有することを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記セッション確立手段は前記セッションをSIPに応じて確立することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記判定手段によって前記接続要求メッセージに関して前記予め定められた指定が行われていないと判定されると、セッション確立手段は、前記宛先の受信側端末装置のから最初に応答メッセージを受けた後、前記送信側端末装置に前記接続応答メッセージを返信して1つのセッションで最初に応答メッセージを受けた受信側端末装置と前記送信側端末装置との接続を行うことを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記送信側端末装置は前記予め定められた指定を前記接続要求メッセージに設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記アドレスに関連付けて前記宛先を記憶する記憶手段を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記アドレスに関連付けて前記宛先を記憶するとともに、前記指定が記憶された記憶手段を有し、前記判定手段は前記接続要求メッセージに含まれるアドレスに基づいて前記記憶手段を参照して前記指定が行われているか否かを判定すること特徴とする請求項2又は3に記載の通信制御装置。
【請求項7】
送信側端末装置からネットワークを介して受信した接続要求メッセージに応じてセッションを確立して、前記送信側端末装置と受信側端末装置との通信を制御する通信制御装置の制御方法であって、
前記接続要求メッセージに含まれるアドレスに関連付けられた宛先に接続要求メッセージを送信する送信ステップと、
前記接続要求メッセージに関して予め定められた指定が行われているか否かを判定すると判定ステップと、
前記判定ステップによって前記接続要求メッセージに関して前記予め定められた指定が行われていると判定されると、前記宛先の受信側端末装置の全てから応答メッセージを受けた後、前記送信側端末装置に接続応答メッセージを返信して1つのセッションで前記宛先の受信側端末装置の全てと前記送信側端末装置との接続を行うセッション確立ステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
送信側端末装置からネットワークを介して受信した接続要求メッセージに応じてセッションを確立して、前記送信側端末装置と受信側端末装置との通信を制御する通信制御装置で用いられる制御プログラムであって、
前記通信制御装置が備えるコンピュータに、
前記接続要求メッセージに含まれるアドレスに関連付けられた宛先に接続要求メッセージを送信する送信ステップと、
前記接続要求メッセージに関して予め定められた指定が行われているか否かを判定すると判定ステップと、
前記判定ステップによって前記接続要求メッセージに関して前記予め定められた指定が行われていると判定されると、前記宛先の受信側端末装置の全てから応答メッセージを受けた後、前記送信側端末装置に接続応答メッセージを返信して1つのセッションで前記宛先の受信側端末装置の全てと前記送信側端末装置との接続を行うセッション確立ステップとを実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−58846(P2013−58846A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195043(P2011−195043)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】