説明

通信端末、および、プログラム

【課題】高調波の発生源がある場合の受信感度劣化を防止する。
【解決手段】CDMAなどの通信電波を受信する通信部120と、ワンセグメント放送などの放送電波を受信する放送受信部130を備えた移動体通信端末1において、候補周波数特定部113により、通信部120が受信している通信電波の周波数帯域に干渉しない動作周波数が複数特定される。放送受信制御部111は、放送受信部130による放送電波についての受信動作を契機に、表示部160で発生している動作周波数が、受信する放送電波の周波数帯域と干渉するか否かを判別し、干渉すると判別した場合、動作周波数選択部114は、特定された複数の動作周波数のうち、放送受信部130が受信する周波数帯域に干渉しない動作周波数を選択する。動作制御部115は、選択された動作周波数で表示部160が動作するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末、および、プログラムに関し、特に、高精細ディスプレイの利用に好適な通信端末、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体通信端末においては、基本機能である通話機能以外に、いわゆるワンセグ放送などのデジタル放送を受信する機能を備えたものがある。このような機能の搭載に伴い、ディスプレイ装置もより高精細なものが求められている。
【0003】
ディスプレイ装置が高精細化すると、その表示用クロックがより高調波となる傾向がある。この場合、ディスプレイ装置の高調波が、デジタル放送の受信で用いている周波数帯域と重なることがあり、受信感度が劣化してしまう問題がある。
【0004】
このような問題を回避するため、受信チャンネル毎に最適な表示用クロックが選択されるようにする技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−65184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、放送についての受信性能の劣化には対応できるが、通話やデータ通信に対するディスプレイ装置の高調波による影響については考慮されていなかった。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、高調波の発生源がある場合であっても、受信感度を劣化させない移動体通信端末、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる通信端末は、
少なくとも2種類以上の電波を受信可能な受信手段を備えた通信端末において、
前記受信手段で受信する一方の電波の周波数帯域に干渉しない高調波となる動作周波数を複数特定する周波数特定手段と、
前記受信手段による他方の電波についての受信動作を契機に、前記周波数特定手段が特定した動作周波数の高調波が、当該受信動作で受信する周波数帯域と干渉するか否かを判別する干渉判別手段と、
前記干渉判別手段が干渉すると判別した場合、前記周波数特定手段が特定した複数の動作周波数のうち、前記他方の電波について受信する周波数帯域に干渉しない高調波となる動作周波数を選択する周波数選択手段と、
前記周波数選択手段が選択した動作周波数で動作するよう前記高調波の発生源を制御する動作制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記通信端末において、
前記他方の電波は放送波であることが望ましく、この場合、
前記干渉判別手段は、前記受信手段による前記放送波の受信を契機に、前記周波数特定手段が特定した動作周波数の高調波が、前記受信手段が受信する当該放送波の周波数帯域と干渉するか否かの判別をおこなうことが望ましい。
【0010】
上記通信端末において、
前記一方の電波は通信電波とすることができ、この場合、
前記周波数特定手段は、前記通信電波の周波数帯域に干渉しない複数の動作周波数を特定することが望ましい。
【0011】
上記通信端末において、
前記周波数選択手段は、選択可能な動作周波数が複数ある場合、より低い周波数を選択することが望ましい。
【0012】
上記通信端末において、
前記動作周波数の発生源は、前記通信端末の表示装置とすることができ、この場合、
前記動作制御手段は、前記表示装置の表示クロック周波数が、前記周波数選択手段が選択した周波数となるよう該表示装置を制御することが望ましい。
【0013】
またこの場合、
前記動作制御手段は、前記表示装置におけるデータバス動作周波数が、前記周波数選択手段が選択した周波数となるよう該表示装置を制御してもよい。
【0014】
上記通信端末は、
少なくとも、前記受信手段が受信できる電波についての周波数帯域を示す情報を記憶した周波数情報記憶手段をさらに備えていることが望ましく、この場合、
前記干渉判別手段は、前記周波数情報記憶手段が記憶する情報に基づいて判別をおこなうことが望ましい。
【0015】
この場合、
前記周波数情報記憶手段は、前記動作周波数の逓倍比もしくは分周比のいずれか一方を含んだ情報を記憶することが望ましい。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかるプログラムは、
少なくとも2種類以上の電波を受信可能な受信手段を備えた通信端末を制御するコンピュータに、
前記受信手段で受信する一方の電波の周波数帯域に干渉しない高調波となる動作周波数を複数特定する機能と、
前記受信手段による他方の電波についての受信動作を契機に、前記特定された動作周波数の高調波が、当該受信動作で受信する周波数帯域と干渉するか否かを判別する機能と、
干渉すると判別された場合、前記特定された複数の動作周波数のうち、前記他方の電波について受信する周波数帯域に干渉しない高調波となる動作周波数を選択する機能と、
前記選択された動作周波数で動作するよう前記高調波の発生源を制御する機能と、
を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高調波の発生源がある場合でも、受信感度の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態にかかる移動体通信端末の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した表示部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した制御部によって実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる「動作周波数制御処理」を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1に示した記憶部に格納される情報の例を示す図であり、(a)は「周波数帯域テーブル」の例を示し、(b)は「選択候補周波数テーブル」の例を示す。
【図6】周波数候補を選択する動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる実施形態を、図面を参照して以下に説明する。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態にかかる移動体通信端末1は、基本機能である通話・データ通信機能に加え、付加機能として、テレビ放送受信機能を備えているものとする。この場合の通話・データ通信機能は、いわゆるセルラ通信によるものとする。また、テレビ放送受信機能については、デジタルテレビ放送の一種であるワンセグメント放送が受信可能であるものとする。このような移動体通信端末1の構成を、図1を参照して説明する。図1は、移動体通信端末1の構成を示すブロック図である。
【0021】
図示するように、移動体通信端末1は、制御部110、通信部120、放送受信部130、音声処理部140、操作部150、表示部160、記憶部170、などから構成されている。
【0022】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)やワークエリアとなるRAM(Random Access Memory)などから構成され、所定の動作プログラムを実行することで移動体通信端末1の各部を制御する。すなわち、移動体通信端末1の各構成は制御部110によって制御されるとともに、各構成間の情報伝達などは制御部110を介しておこなわれる。
【0023】
通信部120は、移動体通信端末1が通信(セルラ通信)をおこなう際の無線アクセスにかかる構成であり、例えば、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)方式などの通信方式を用いた通信装置などで構成され、当該通信方式に対応したアンテナ121による無線送受信をおこなうことで、近傍の基地局と無線通信をおこなう。
【0024】
放送受信部130は、例えば、ワンセグメント放送などのようなデジタル放送の受信にかかる構成であり、アンテナ131によって受信した放送波の復号・復調をおこなう受信回路や、視聴するチャンネルを選択するための選局回路(チューナ)などから構成される。
【0025】
音声処理部140は、例えば、音声データ用のコーデック回路などから構成され、移動体通信端末1の音声入出力にかかる処理をおこなう。すなわち、通信部120で受信したデジタル音声データをアナログ音声信号に変換してスピーカ141から出力する受話動作や、マイクロフォン142から入力されたユーザの発話音声をデジタル音声データに変換して通信部120に送出する送話動作などをおこなう。また、放送受信部130で放送波を受信している場合には、受信した音声データをスピーカ141などから出力する。
【0026】
操作部150は、例えば、筐体の外面上に構成されたボタンやキーなどから構成され、移動体通信端末1のユーザによって操作される。操作部150は、各ボタンやキーなどと接続された入力回路などを備え、ユーザの操作に応じた入力信号を生成して制御部110に入力する。
【0027】
表示部160は、例えば、液晶表示装置などの表示デバイスや表示デバイスを制御する制御回路などから構成され、制御部110の制御によって画像などを表示出力する。本実施形態にかかる表示部160の構成を、図2を参照して説明する。
【0028】
図示するように、表示部160は、表示制御部161、位相同期回路(PLL:Phase-Locked Loop)162、発振器163、信号線164、表示デバイス165、などから構成されている。
【0029】
表示制御部161は、例えば、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)などから構成され、制御部110から送出される表示データや制御信号に基づいて、表示デバイス165を駆動制御する。この場合、表示制御部161は、表示画像を示すデータを表示デバイス165に伝送する(データバス)。データバスの動作は、いわゆるバス動作周波数に基づいておこなわれ、このバス動作周波数は制御部110の制御により可変であるものとする。
【0030】
表示制御部161には、位相同期回路(PLL)162が含まれており、接続された発振器163の発振動作による発振周波数を、制御部110による制御に基づいて分周・逓倍することで、表示デバイス165の表示クロックを生成する。この発振器163は、例えば、水晶発振子などから構成されており、表示クロックの原振となる。発振器163によって発生する原振周波数を「fref」とする。
【0031】
信号線164は、例えば、フレキシブルケーブル(いわゆる、フレキ)などから構成され、表示制御部161からの画像データや位相同期回路(PLL)162で生成された表示クロック信号を表示デバイス165に伝送する。
【0032】
表示デバイス165は、例えば、液晶表示パネルなどから構成され、信号線164を介して伝送された画像データを表示出力する。この場合、表示デバイス165は、位相同期回路(PLL)162が生成したクロック信号の周波数(表示クロック周波数)で表示動作をおこなう。
【0033】
この場合の表示クロック周波数は、1ピクセルあたりに1クロック出力されるクロック(いわゆる、ピクセルクロック)であるものとし、「(垂直表示画素数+垂直非表示画素数)×(水平表示画素数+水平非表示画素数)×フレームレート」で求められるものとする。例えば、表示デバイス165の解像度が800×480ピクセルで、フレームレートが60〜67fps(Frames Per Second)とした場合、約26MHz〜29MHzの表示クロック周波数となる。このような、表示部160において使用可能な表示クロック周波数の下限を「fmin」、上限を「fmax」とする。
【0034】
図1に戻り、移動体通信端末1の構成説明を続ける。
【0035】
記憶部170は、例えば、フラシュメモリなどの記憶装置から構成され、制御部110が実行する動作プログラムを格納する他、本発明を実現するために必要な種々のデータを格納する。
【0036】
以上が本実施形態にかかる移動体通信端末1の主要な構成であるが、これらは本発明を実現するために必要な構成であり、移動体通信端末の主要機能や付加機能を実現するために必要となるその他の構成については適宜備えられているものとする。
【0037】
以上のような構成の移動体通信端末1の動作を説明する。上述したように、本実施形態にかかる移動体通信端末1は、セルラ通信による通信機能と、ワンセグメント放送の受信機能を備えている。ここで、図2に示したような表示部160の構成では、表示デバイス165が高精細であると、表示クロック周波数やバス動作周波数が高くなるため、これらの高調波がノイズ輻射となって信号線164から放射される。
【0038】
このようなノイズ輻射の周波数が、通信部120がおこなっている通信の受信周波数や放送受信部130が受信している放送波の周波数と重なる(干渉する)と、これらの受信感度を劣化させることがある。よって、本実施形態では、受信感度を劣化させない動作周波数で表示部160が動作するよう制御する。
【0039】
このような動作をおこなうため、記憶部170に格納されている動作プログラムを制御部110が実行することで、図3に示すような機能が実現される。図示するように、制御部110は、放送受信制御部111、通信制御部112、候補周波数特定部113、動作周波数選択部114、動作制御部115、などとして機能する。
【0040】
放送受信制御部111は、操作部150が操作されることによる入力信号などに基づいて、放送受信部130を制御し、放送電波の受信動作(受信開始、受信終了、チャンネル変更、など)を制御する。また、放送受信制御部111は、表示部160を動作させている表示クロック周波数が、放送受信部130に受信させる放送電波のチャンネル(以下、「放送受信ch」とする)で使用される周波数と干渉するか否かを判別する。
【0041】
通信制御部112は、通信部120を制御し、通話・データ通信にかかる通信動作をおこなうとともに、放送受信制御部111によって表示クロック周波数と放送受信chの周波数が干渉すると判別された場合、そのとき通信部120の通信動作で用いている受信周波数帯域を特定する。
【0042】
候補周波数特定部113は、表示部160で使用し得る動作周波数の範囲において、通信制御部112によって特定された通信動作で用いられている受信周波数帯域と干渉しない動作周波数(=表示クロック周波数)を、選択する動作周波数(表示クロック周波数)の候補として特定する。
【0043】
動作周波数選択部114は、候補周波数特定部113によって特定された候補から、少なくとも放送受信chと干渉しない動作周波数(表示クロック周波数)を含んだ複数の動作周波数(表示クロック周波数)を選択する。
【0044】
動作制御部115は、動作周波数選択部114が選択した動作周波数で表示部160が動作するよう表示部160を制御する。本実施形態では、位相同期回路(PLL)162が発生する表示クロック周波数が、動作周波数選択部114が選択した周波数となるよう位相同期回路(PLL)162を制御する。
【0045】
以上のような機能構成によって実行される処理を説明する。ここでは、上述したような構成の移動体通信端末1で画面表示をおこなう際に実行される「動作周波数制御処理」を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。この「動作周波数制御処理」は、例えば、移動体通信端末1が起動したことを契機に開始されるものとする。
【0046】
処理が開始されると、通信制御部112により、現在通信部120の通信動作で使用している受信周波数帯域が特定される(ステップS101)。ここで、記憶部170には、図5(a)に示すような「周波数帯域テーブル」が予め格納されている。この「周波数帯域テーブル」には、図示するように、放送受信部130によって受信する放送電波と、通信部120によって受信する通信電波のそれぞれについて、チャンネル毎の周波数帯域を示す情報が格納されている。すなわち、各チャンネルについて、周波数帯域の下限、センター、上限のそれぞれの周波数値が記録されている。このような「周波数帯域テーブル」を通信制御部112が参照することで、通信部120による通信動作で使用される受信周波数帯域の帯域幅(以下、「通信周波数帯域」とする)が特定される。
【0047】
通信制御部112によって通信周波数帯域が特定されると、候補周波数特定部113が、表示部160の動作に使用できる表示クロック周波数の範囲で、通信周波数帯域と干渉しない複数の表示クロック周波数の候補(以下、「候補周波数」とする)を特定する(ステップS102)。
【0048】
ここでは、図5(b)に示すような、「選択候補周波数テーブル」が記憶部170に格納されているものとし、候補周波数特定部113はまず、この「選択候補周波数テーブル」を参照することで、候補周波数を特定する。
【0049】
ここで、「選択候補周波数テーブル」に記録されている候補周波数は、発振器163による原振周波数frefを逓倍・分周することで得られる複数の表示クロック周波数である。つまり、図5(b)に示すように、「選択候補周波数テーブル」には、複数の逓倍数と分周数の組み合わせから求められる候補周波数が記録されている。ここに記録されている候補周波数は、例えば、「原振周波数fref×逓倍数÷(分周数×2)」によって求められたものである。
【0050】
そして、候補周波数特定部113は、表示部160で用いることができる表示周波数クロックの範囲、すなわち、fmin〜fmaxの範囲内となる周波数を候補周波数として特定する。
【0051】
このようにして、表示部160で使用可能な表示クロック周波数の候補が特定されると、動作周波数選択部114は、これらの候補周波数の中から、高調波がステップS101で特定された通信周波数帯域と干渉しない表示クロック周波数を特定する。ここでは、原振周波数frefを逓倍・分周することで得られた候補周波数を整数倍した値が、通信周波数帯域と重ならないものを特定する。つまり、図6に示すように、整数倍した値が通信周波数帯域の範囲から外れる周波数αや周波数βなどが、通信周波数帯域と干渉しない表示クロック周波数であるものとし、周波数λのような、整数倍した値が通信周波数帯域の範囲内になる表示クロック周波数は、対象から除外する。
【0052】
動作制御部115は、動作周波数選択部114によって特定された表示クロック周波数のいずれかをデフォルトとして設定し、位相同期回路(PLL)162を制御する(ステップS103)。すなわち、このような表示クロック周波数で表示部160が動作することで、その際に発生する高調波では通信の受信感度劣化は生じないことになる。
【0053】
ここで、移動体通信端末1のユーザが操作部150を操作することなどにより、放送受信動作を開始させる操作がなされると、放送受信制御部111は、操作部150からの入力信号から放送受信動作の開始指示が入力されたと判別する(ステップS104:Yes)。この場合、放送受信制御部111は、動作制御部115に、表示部160の表示クロック周波数を問い合わせ、表示クロック周波数が、放送受信部130に受信させる放送受信chの周波数帯域に干渉するか否かを判別する(ステップS105)。
【0054】
放送受信制御部111は、放送受信部130に受信させる放送受信chについての周波数帯域幅を、記憶部170に格納されている「周波数帯域テーブル」を参照することで特定する。そして、表示部160を動作させている表示クロック周波数を整数倍した値が、当該放送受信chの周波数帯域の範囲内となる場合、干渉すると判別する。
【0055】
表示クロック周波数が放送受信chと干渉する場合(ステップS105:Yes)、動作周波数選択部114は、ステップS102で特定された、高調波が通信周波数帯域と干渉しない表示クロック周波数から、放送受信chとも干渉しない少なくとも1以上の表示クロック周波数を候補として選択する(ステップS106)。
【0056】
ここで、本実施形態で想定しているワンセグメント放送の場合、6MHzおきに13chから62chまでの50chで放送されているため、これらの全てに重ならない表示クロック周波数は極めて少ない。この場合において、2以上の表示クロック周波数が選択可能であり、これらの表示クロック周波数が離間していれば、ワンセグメント放送の受信帯域に重なるchが異なる。よって、少なくとも放送受信chと干渉しない表示クロック周波数を含んだ複数の表示クロック周波数を選択しておき、一方の表示クロック周波数を基本の動作周波数とし、ワンセグ放送の受信帯域に重なるchのみ、もう一方の動作周波数を使用することで、表示クロックによる放送受信時の感度劣化を避けることができる。
【0057】
このようにして表示クロック周波数を選択するにあたり、該当する表示クロック周波数の候補が2以上存在する場合(ステップS107:Yes)、動作周波数選択部114は、より低い周波数を優先的に選択する(ステップS108)。これは、表示クロック周波数が高い程、表示部160の駆動にかかる消費電力が高くなる場合があるので、より低い表示クロック周波数を選択すれば、消費電力の低減を図ることができるためである。
【0058】
動作周波数選択部114によって表示クロック周波数が選択されると、動作制御部115は、選択された表示クロック周波数を発生するよう、位相同期回路(PLL)162を制御する(ステップS109)。このような表示クロック周波数で表示デバイス165を駆動させた際に放射される高調波成分は、放送受信部130によって受信される放送受信chの周波数帯域から外れているので、放送受信にかかる受信感度の劣化を避けることができる。
【0059】
また、通信周波数帯域と干渉しない高調波となる表示クロック周波数から選択されているので、例えば、放送受信動作のバックグラウンドでおこなわれる通信動作(例えば、位置登録動作など)の受信感度が劣化することもない。
【0060】
このように、放送と通信のいずれの受信感度も劣化させない高調波となる表示クロック周波数で表示部160を動作させている間に、所定の終了イベント(例えば、放送受信動作の終了指示など)が発生するまで上記の処理をおこなう(ステップS110:No)。
【0061】
この場合において、移動体通信端末1のユーザが操作部150を操作することで、受信している放送受信chを変更する操作がなされた場合(ステップS104:Yes)、ステップS105〜ステップS109の動作により、変更後の放送受信chの受信感度を劣化させない高調波となる表示クロック周波数が選択される。
【0062】
この場合、そのとき設定されている表示クロック周波数の高調波が変更後の放送受信chの周波数帯域に干渉する場合(ステップS105:Yes)、上述したような動作がおこなわれる。すなわち、放送受信chの変更がトリガとなって、放送電波の受信感度を劣化させない高調波の表示クロック周波数が選択される。これは、通常、通信動作に用いる周波数は移動体通信端末1側で任意に変更できないが、放送受信chは、移動体通信端末1のユーザによって任意に変更できるためである。
【0063】
そして、所定の終了イベントの発生により、本処理は終了する(ステップS110:Yes)。
【0064】
(実施形態2)
上記実施形態1では、放送と通信の受信感度を劣化させない表示クロック周波数が選択される場合を示したが、同様の動作により、受信感度を劣化させないデータバスの動作周波数が選択されるようにしてもよい。
【0065】
一般的に、データバスの動作周波数は、表示クロック周波数の1/2程度とされているが、動作周波数が低い程、高調波成分が多くなるので、適切なデータバス周波数(最大動作周波数)を選択することで、高調波による受信感度の劣化をより効果的に防止することができる。
【0066】
以上説明したように、本発明を上記実施形態の如く適用することにより、高精細なディスプレイ装置などで生じる高調波による受信感度の劣化を効果的に防止することができる。
【0067】
すなわち、通話やデータ通信などに用いられる周波数帯域と、デジタルテレビ放送などの放送の受信に用いられる周波数帯域のいずれにも干渉しない動作周波数が選択されるので、異なる2種類以上の電波を受信可能な移動体通信端末においても、ディスプレイ装置などの高調波による受信感度の劣化を効果的に防止することができる。
【0068】
この場合において、任意に変更可能な放送電波の受信チャンネルが変更されたことを契機に、受信感度を劣化させない動作周波数の選択動作がおこなわれるので、効率的に受信感度の劣化を防止することができる。
【0069】
ここで、選択可能な動作周波数が複数ある場合には、より低い周波数を選択するので、消費電力の低減を図ることができる。
【0070】
また、高調波が発生しやすい表示装置の表示クロック周波数について、放送および通信に用いられる周波数帯域に干渉しない周波数を選択するので、受信感度の劣化を効果的に防止することができる。
【0071】
さらに、より高調波の発生しやすいデータバス周波数について、放送および通信に用いられる周波数帯域に干渉しない周波数を選択することで、受信感度の劣化をより効果的に防止することができる。
【0072】
また、受信可能な電波についての周波数帯域幅や選択候補となる周波数を予め記憶しておくことで、最適な動作周波数の選択を迅速におこなうことができる。
【0073】
この場合、逓倍比や分周比を用いた周波数を選択候補として記憶しておくことで、表示デバイスの解像度変更などの場合にも容易に対応することができる。
【0074】
上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0075】
上記実施形態では、本発明にかかる通信端末を、携帯電話などのような移動体通信端末によって実現した場合を例示したが、移動体通信端末に限られず、種々の通信端末に本発明を適用することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、異なる2種類の電波として、CDMAなどの通信電波と、ワンセグメント放送などの放送電波を例示したが、これらに限らず、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)などの受信を対象としてもよい。あるいは、CDMAとLTE(Long Term Evolution)などのように、異なる2種類の通信電波を受信可能な通信端末に本発明を適用してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、高調波の発生源が表示装置である場合を例示したが、これに限らず、受信感度劣化の起因となる高調波の発生源の動作周波数制御に本発明を適用することができる。
【0078】
また、本発明にかかる構成を予め備えた通信端末だけでなく、既存の通信端末にプログラムを適用することで、本発明にかかる通信端末として機能させることができる。
【0079】
このようなプログラムの適用方法は任意であり、例えば、CD−ROMやメモリカードなどの記憶媒体に格納して適用できる他、例えば、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1…移動体通信端末、110…制御部、111…放送受信制御部、112…通信制御部、113…候補周波数特定部、114…動作周波数選択部、115…動作制御部、120…通信部、121…アンテナ、130…放送受信部、131…アンテナ、140…音声処理部、141…スピーカ、142…マイクロフォン、150…操作部、160…表示部、161…表示制御部、162…位相同期回路(PLL)、163…発振器、164…信号線、165…表示デバイス、170…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類以上の電波を受信可能な受信手段を備えた通信端末において、
前記受信手段で受信する一方の電波の周波数帯域に干渉しない高調波となる動作周波数を複数特定する周波数特定手段と、
前記受信手段による他方の電波についての受信動作を契機に、前記周波数特定手段が特定した動作周波数の高調波が、当該受信動作で受信する周波数帯域と干渉するか否かを判別する干渉判別手段と、
前記干渉判別手段が干渉すると判別した場合、前記周波数特定手段が特定した複数の動作周波数のうち、前記他方の電波について受信する周波数帯域に干渉しない高調波となる動作周波数を選択する周波数選択手段と、
前記周波数選択手段が選択した動作周波数で動作するよう前記高調波の発生源を制御する動作制御手段と、
を備えることを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記他方の電波は放送波であり、
前記干渉判別手段は、前記受信手段による前記放送波の受信を契機に、前記周波数特定手段が特定した動作周波数の高調波が、前記受信手段が受信する当該放送波の周波数帯域と干渉するか否かの判別をおこなう、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記一方の電波は通信電波であり、
前記周波数特定手段は、前記通信電波の周波数帯域に干渉しない複数の動作周波数を特定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記周波数選択手段は、選択可能な動作周波数が複数ある場合、より低い周波数を選択する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信端末。
【請求項5】
前記動作周波数の発生源は、前記通信端末の表示装置であり、
前記動作制御手段は、前記表示装置の表示クロック周波数が、前記周波数選択手段が選択した周波数となるよう該表示装置を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信端末。
【請求項6】
前記動作制御手段は、前記表示装置におけるデータバス動作周波数が、前記周波数選択手段が選択した周波数となるよう該表示装置を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信端末。
【請求項7】
少なくとも、前記受信手段が受信できる電波についての周波数帯域を示す情報を記憶した周波数情報記憶手段をさらに備え、
前記干渉判別手段は、前記周波数情報記憶手段が記憶する情報に基づいて判別をおこなう、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の通信端末。
【請求項8】
前記周波数情報記憶手段は、前記動作周波数の逓倍比もしくは分周比のいずれか一方を含んだ情報を記憶する、
ことを特徴とする請求項7に記載の通信端末。
【請求項9】
少なくとも2種類以上の電波を受信可能な受信手段を備えた通信端末を制御するコンピュータに、
前記受信手段で受信する一方の電波の周波数帯域に干渉しない高調波となる動作周波数を複数特定する機能と、
前記受信手段による他方の電波についての受信動作を契機に、前記特定された動作周波数の高調波が、当該受信動作で受信する周波数帯域と干渉するか否かを判別する機能と、
干渉すると判別された場合、前記特定された複数の動作周波数のうち、前記他方の電波について受信する周波数帯域に干渉しない高調波となる動作周波数を選択する機能と、
前記選択された動作周波数で動作するよう前記高調波の発生源を制御する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−183300(P2010−183300A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24298(P2009−24298)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】