説明

通信端末、中継装置及びこれらを含むパケット通信システム

【課題】通信接続要求を常時受信できる状態にありながらも、平均の消費電力を低減することができる通信端末、中継装置及びこれらを含むパケット通信システムを提供する。
【解決手段】
通信端末は、通信路を介して中継装置から供給される電源電圧の下で動作しつつ、発信元識別データを含むモード切替要求パケットを当該中継装置に送信するとともに、当該電源電圧の極性反転の検出に応じて省電力動作モードにて動作する。中継装置は、当該通信路を介して当該電源電圧を当該通信端末に供給するとともに、到来したパケットが当該モード切替要求パケットであると判別した場合に当該パケットの発信元識別データに対応する通信端末についての当該電源電圧の極性を反転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末、中継装置及びこれらを含むパケット通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば家庭内においてローカルネットワークを構成する場合には、インターネットにルータ装置を接続して、そのルータ装置に例えばインターネット電話端末などの各種の通信端末を接続している。ルータ装置は、IPアドレスを通信端末の各々に割り当て、更に例えばNAPTネットワークアドレスポート変換(NAPT:Network Address Port Translation)などのアドレス変換を行なう。これによって、通信端末の各々がインターネットにアクセスできる。ルータ装置は、通信端末とインターネットとの間でパケットを中継する。例えば特許文献1及び2には、かかるローカルネットワークに関するルータ装置や通信方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−320415号公報
【特許文献2】特開2002−271596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したルータ装置や通信端末は、それぞれ個別に商用電源又はバッテリー等の電源を有し、これらから電力の供給を受けて動作している。一般に、通信端末の省電力化が望まれているが、消費電力を低減するために、通信端末自身が有する電源を個別にオフ状態にした場合には以下のような問題がある。すなわち、ルータ装置は、電源オフ状態の通信端末(以下、電源オフ通信端末と称する)との間でパケットを送受信できないので、当該電源オフ通信端末に対して他の通信端末からの通信接続要求があったとしても、当該電源オフ通信端末に対して当該通信接続要求を中継できないという問題があった。また、かかる問題が生じることを回避するために通信端末の電源を常にオン状態とした場合には、消費電力を低減できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、通信接続要求を受信できる状態にありながらも、平均の消費電力を低減することができる通信端末、中継装置及びこれらを含むパケット通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による通信端末は、中継装置との間で通信路を介してパケットを送受信する通信端末であって、前記通信路を介して供給される電源電圧の下で送受信動作をなす送受信回路と、前記電源電圧の極性の反転を検出する検出回路と、を含み、前記検出回路による極性反転検出に応じて前記送受信回路が省電力動作モードにて動作することを特徴とする。
【0007】
また、本発明による中継装置は、通信端末と通信網との間で通信路を介してパケットを中継する中継装置であって、前記通信路を介して電源電圧を前記通信端末に供給する電源供給部と、到来したパケットがモード切替要求パケットであると判別した場合に当該モード切替要求パケットの発信元識別データに対応する通信端末についての前記電源電圧の極性を反転させる極性反転部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明によるパケット通信システムは、パケットを送受信する通信端末と、前記通信端末と通信網との間で通信路を介して前記パケットを中継する中継装置と、を含むパケット通信システムであって、前記通信端末は、前記通信路を介して前記中継装置から供給される電源電圧の下で送受信動作しつつ、発信元識別データを含むモード切替要求パケットを前記中継装置に送信する送受信回路と、前記電源電圧の極性の反転を検出する検出回路と、を含み、前記検出回路による極性反転検出に応じて前記送受信回路が省電力動作モードにて動作し、前記中継装置は、前記通信路を介して前記電源電圧を前記通信端末に供給する電源供給部と、到来したパケットが前記モード切替要求パケットであると判別した場合に当該モード切替要求パケットの発信元識別データに対応する通信端末についての前記電源電圧の極性を反転させる極性反転部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による通信端末、中継装置及びこれらを含むパケット通信システムによれば、通信接続要求を受信できる状態にありながらも、通信端末の平均の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例であるパケット通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】省電力動作モードへのモード切替処理における動作を示すシーケンス図である。
【図3】通信端末の切替指示による通常動作モードへのモード切替処理における動作を示すシーケンス図である。
【図4】通信網を介して到来した切替指示に応じた通常動作モードへのモード切替処理における動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明の実施例であるパケット通信システム1の構成が示される。
【0013】
ルータ装置10は、通信端末20と通信網30との間でパケットを中継するパケット中継装置である。
【0014】
コネクタ11は、通信網30と送受信部12との間のインターフェースである。
【0015】
送受信部12は、通信網30から到来するパケットを受信してこれを中継部13に供給する機能、及び中継部13から供給されるパケットを通信網30に送出する機能を有する。
【0016】
中継部13は、送受信部12から供給されるパケットを送受信部14に中継する機能、及び送受信部14から供給されるパケットを送受信部12に中継する機能を有する。
【0017】
送受信部14は、ケーブル40を介して到来するパケットを受信してこれを中継部13に供給する機能、及び中継部13から供給されるパケットをケーブル40を介して送出する機能を有する。
【0018】
コネクタ15は、ケーブル40と送受信部14との間のインターフェースである。
【0019】
パケット種別判別部16は、送受信部12又は送受信部14から中継部13に供給されたパケットがモード切替要求パケットであるか否かを判別し、モード切替要求パケットであると判別した場合には、スイッチ18の接続先を切り替える。モード切替要求パケットには、省電力動作モード移行要求パケットと、通常動作モード移行要求パケットとがある。
【0020】
電源供給部17は、正極性の電位V+と負極性の電位V−とを生成し、これらの電位に基づく電力をコネクタ15及びケーブル40を介して通信端末20に供給する。正極性の電位V+は、例えば5Vや12Vである。負極性の電位V−は、例えば0Vすなわち接地電位(GND電位)である。
【0021】
極性反転部であるスイッチ18は、端子a1、a2、b1及びb2を有し、パケット種別判別部16からの指示に応じて、スイッチ接続を、端子a1とa2とからなる組、及び端子b1とb2とからなる組のいずれか一方の組に切り替える。パケット種別判別部16は、中継部13に供給されたパケットが省電力動作モード移行要求パケットであると判別した場合には、スイッチ接続を端子b1とb2とからなる組に切り替える。また、パケット種別判別部16は、中継部13に供給されたパケットが通常動作モード移行要求パケットであると判別した場合には、スイッチ接続を端子a1とa2とからなる組に切り替える。
【0022】
通常動作モードの場合、すなわち端子a1とa2とからなる組にスイッチ接続された場合には、供給路L1に正極性の電位V+が与えられ、供給路L2に負極性の電位V−が与えられる。省電力動作モードの場合、すなわち端子b1とb2とからなる組にスイッチ接続された場合には、供給路L1に負極性の電位V−が与えられ、供給路L2に正極性の電位V+が与えられる。このように、スイッチ18の接続先に応じて、供給路L1及びL2に与えられる電位の極性が反転する。供給路L1及びL2は、コネクタ15に接続されている。後述の受電極性監視部25は、ケーブル40を介して電源電圧の極性の反転を検出することができる。
【0023】
通信端末20は、パケットによるデータ通信機能を有する例えばインターネット電話端末等の端末である。
【0024】
コネクタ21は、ケーブル40と、送受信部22、受電極性監視部25及び電源回路26との間のインターフェースである。
【0025】
送受信部22は、ケーブル40を介して到来するパケットを受信してこれをスイッチ23の接続先応じて通常処理制御部24又は省電力処理制御部28に供給する機能、及び通常処理制御部24又は省電力処理制御部28から供給されるパケットをケーブル40を介して送出する機能を有する。
【0026】
スイッチ23は、端子a及びbを有し、受電極性監視部25からの指示に応じて、スイッチ接続を端子a及び端子bのいずれか一方に切り替える。通常動作モードの場合、すなわち端子aにスイッチ接続された場合には、送受信部22と通常処理制御部24との間でパケットの授受がなされる。省電力動作モードの場合、すなわち端子bにスイッチ接続された場合には、送受信部22と省電力処理制御部28との間でパケットの授受がなされる。
【0027】
通常処理制御部24は、通信端末20全体の制御を行なう機能を有する。通常処理制御部24は、例えば、送受信部22から供給されるパケットの内容に応じて音声や映像を出力する出力処理や、通信端末20に設けられているキーボードやプッシュボタン(図示せず)などによる指示入力を受け入れて例えば呼発信等の動作をする入力処理を行うことができる。また、通常処理制御部24は、送受信部22によるパケットの送受信間隔が所定の閾値時間以上になったと判別した場合に、省電力動作モード移行要求パケットを生成しこれを送受信部22に供給する処理もできる。この省電力動作モード移行要求パケットは、例えば通信端末20のIPアドレスなどの発信元識別データを含む。
【0028】
通常処理制御部24は、送受信部22におけるパケットの送受信が完了したと判別した場合に省電力動作モード移行要求パケットを生成する。通常処理制御部24は、例えば、送受信部22が所定の閾値時間に亘ってパケットを送受信しない場合すなわちパケットの送受信間隔が所定の閾値時間に達した場合に、パケットの送受信が完了したと判別する。通信端末20が例えばインターネット電話端末である場合、通話の終了後にはパケットの送受信が一旦途絶えるので、かかる場合に通常処理制御部24はパケットの送受信が完了したと判別する。
【0029】
受電極性監視部25は、ケーブル40を介して電源電圧の極性の反転を検知し、その検知結果に応じて、スイッチ23及びスイッチ27の接続先を切り替える。なお、電源極性は、ルータ装置10のスイッチ18の接続切り替えに応じて反転する。
【0030】
電源回路26は、ケーブル40を介してルータ装置10から供給される電力を、スイッチ27の接続先応じて、通常処理制御部24及び省電力処理制御部28のいずれか一方に対して中継する。電源回路26は、ルータ装置10から供給される電力を必要に応じて電力変換してこれらの制御部24又は28に対して中継することができる。
【0031】
スイッチ27は、端子a及びbを有し、受電極性監視部25からの指示に応じて、スイッチ接続を端子a及び端子bのいずれか一方に切り替える。通常動作モードの場合、すなわち端子aにスイッチ接続された場合には、電源回路26から通常処理制御部24に電力が供給される。省電力動作モードの場合、すなわち端子bにスイッチ接続された場合には、電源回路26から省電力処理制御部28に電力が供給される。このように、スイッチ27は、通常処理制御部24と省電力処理制御部28とを択一的に動作せしめる切替部である。
【0032】
省電力処理制御部28は、通常処理制御部24が実行する処理制御のうちの例えばユーザー入力を受け付ける入力処理などの一部の制御処理や、ユーザー入力に応じて通常動作モード移行要求パケット等の所定のパケットを生成するパケット生成処理のみを実行する。故に、省電力処理制御部28の動作時の消費電力は、通常処理制御部24の動作時の消費電力に比較して大幅に小さい。例えば、通常処理制御部24の消費電力は数ワットであるのに対して、省電力処理制御部28の消費電力は数ミリワットである。例えば、通常処理制御部24をCPUにより構成し、省電力処理制御部28を小型のマイクロプロセッサにより構成し、省電力動作モード移行後に省電力処理制御部28のみを動作させることにより消費電力を低減できる。また、例えば、通常処理制御部24と省電力処理制御部28とを1つのCPUにより構成し、省電力動作モード移行後に省電力処理制御部28の処理制御のみをソフトウェア的に動作させることによっても消費電力を低減できる。この場合には、例えば、受電極性監視部25、スイッチ23及び27についても同一のCPU内に構成して、通常処理制御部24の処理機能と省電力処理制御部28の処理機能との間の切替もソフトウェア的に行なうことが考えられる。
【0033】
以下、送受信部22と、通常処理制御部24と、省電力処理制御部28とをまとめて送受信回路と称する。また、スイッチ23と、スイッチ27と、受電極性監視部25を検出回路とも称する。
【0034】
通信網30は、例えばインターネットである。ケーブル40は、例えばイーサネットケーブル(イーサネットは登録商標)などの通信路である。
【0035】
図2を参照しつつ、省電力動作モードへのモード切替処理におけるパケット通信システム1の動作について説明する。現時点においては、通常動作モードであり、スイッチ18の接続先が端子a1及びa2である。また、スイッチ23及び27の各々の接続先が端子aであり、通常処理制御部24に電力が供給されている前提で説明する。
【0036】
先ず、通信端末20の通常処理制御部24が、送受信部22によるデータの送受信が完了したことを判別する(ステップS11)。通常処理制御部24は、例えば30秒などの所定の閾値時間に亘って送受信部22がデータを送受信していないと判別した場合にデータの送受信が完了したと判別する。
【0037】
次に、通常処理制御部24は、ケーブル40を介して省電力動作モード移行要求パケットをルータ装置10に送信する(ステップS12)。
【0038】
ルータ装置10のパケット種別判別部16は、中継部13に供給されたパケットが省電力動作モード移行要求パケットであると判別した場合に、スイッチ18の接続先を端子a1及びa2の組から端子b1及びb2の組に切り替える。かかる切り替え処理によって供給電源電圧の極性が反転する(ステップS13)。詳細には、供給路L1に与えられる電位が正極性電位V+から負極性電位V−に変更され、供給路L2に与えられる電位が負極性電位V−から正極性電位V+に変更される。
【0039】
通信端末20の受電極性監視部25は、ケーブル40を介して供給電源電圧の極性の反転を検出した場合に、スイッチ23及び27の各々の接続先を端子aから端子bに切り替える(ステップS14)。かかる切り替え処理によって、通常処理制御部24への電力供給が停止されると共に、省電力処理制御部28への電力供給が開始される。
【0040】
これによって、通常処理制御部24の動作が停止し、省電力処理制御部28が動作開始する(ステップS15)。省電力処理制御部28は、通常処理制御部24の処理制御の一部や所定のパケット生成処理のみを実行するので、通常動作時に比較して消費電力の少ない省電力動作がなされる。省電力処理制御部28は、例えば、通常処理制御部24の処理制御のうちの少なくとも音声や映像の出力処理を休止させる。上記した一連の処理によって、通常動作モードから省電力動作モードへの移行が完了する。また、かかる切り替え処理によって、省電力処理制御部28がケーブル40を介してルータ装置10とパケットを送受信できるようになる。
【0041】
図3を参照しつつ、通信端末20の切替指示による通常動作モードへのモード切替処理におけるパケット通信システム1の動作について説明する。現時点においては、省電力動作モードであり、スイッチ18の接続先が端子b1及びb2である。また、スイッチ23及び27の各々の接続先が端子bであり、省電力処理制御部28に電力が供給されている前提で説明する。
【0042】
先ず、通信端末20の省電力処理制御部28がユーザー入力を検知する(ステップS21)。例えば、通信端末20がインターネット電話端末であり、ユーザーが発呼のために通信端末20に設けられたプッシュボタン(図示せず)を押下したことを省電力処理制御部28が検知する。
【0043】
次に、省電力処理制御部28は、ケーブル40を介して通常動作モード移行要求パケットをルータ装置10に送信する(ステップS22)。通常動作モード移行要求パケットは、例えば通信端末20のIPアドレスなどの発信元識別データを含む。
【0044】
ルータ装置10のパケット種別判別部16は、中継部13に供給されたパケットが通常動作モード移行要求パケットであると判別した場合に、スイッチ18の接続先を端子b1及びb2の組から端子a1及びa2の組に切り替える。かかる切り替え処理によって供給電源電圧の極性が反転する(ステップS23)。詳細には、供給路L1に与えられる電位が負極性電位V−から正極性電位V+に変更され、供給路L2に与えられる電位が正極性電位V+から負極性電位V−に変更される。
【0045】
通信端末20の受電極性監視部25は、ケーブル40を介して供給電源電圧の極性の反転を検出した場合に、スイッチ23及び27の各々の接続先を端子bから端子aに切り替える(ステップS24)。かかる切り替え処理によって、省電力処理制御部28への電力供給が停止されると共に、通常処理制御部24への電力供給が開始される。
【0046】
これによって、省電力処理制御部28の動作が停止し、通信端末20全体の制御を行なう通常処理制御部24が動作開始する(ステップS25)。上記した一連の処理によって、省電力動作モードから通常動作モードへの移行が完了する。このように、通信端末20は、電源極性の更なる反転に応じて省電力動作を解除する。また、かかる切り替え処理によって、通常処理制御部24がケーブル40を介してルータ装置10とパケットを送受信できるようになる。
【0047】
図4を参照しつつ、通信網30を介して到来した切替指示に応じた通常動作モードへのモード切替処理におけるパケット通信システム1の動作について説明する。現時点においては、省電力動作モードであり、スイッチ18の接続先が端子b1及びb2である。また、スイッチ23及び27の各々の接続先が端子bであり、省電力処理制御部28に電力が供給されている前提で説明する。
【0048】
先ず、ルータ装置10の中継部13が、通信網30から到来した通常動作モード移行要求パケットを送受信部12から受け取る(ステップS31)。例えば、通信端末20がインターネット電話端末であり、発呼元の通信端末(図示せず)からの呼接続要求が通常動作モード移行要求パケットにより通信網30を介してルータ装置10に到来する場合が考えられる。通常動作モード移行要求パケットは、例えば通信端末20のIPアドレスなどの発信元識別データを含む。
【0049】
パケット種別判別部16は、中継部13に供給されたパケットが通常動作モード移行要求パケットであると判別した場合に、スイッチ18の接続先を端子b1及びb2の組から端子a1及びa2の組に切り替える。かかる切り替え処理によって供給電源電圧の極性が反転する(ステップS32)。詳細には、供給路L1に与えられる電位が負極性電位V−から正極性電位V+に変更され、供給路L2に与えられる電位が正極性電位V+から負極性電位V−に変更される。
【0050】
通信端末20の受電極性監視部25は、ケーブル40を介して供給電源電圧の極性の反転を検出した場合に、スイッチ23及び27の各々の接続先を端子bから端子aに切り替える(ステップS33)。かかる切り替え処理によって、省電力処理制御部28への電力供給が停止されると共に、通常処理制御部24への電力供給が開始される。
【0051】
これによって、省電力処理制御部28の動作が停止し、通信端末20全体の制御を行なう通常処理制御部24が動作開始する(ステップS34)。上記した一連の処理によって、省電力動作モードから通常動作モードへの移行が完了する。このように、通信端末20は、電源極性の更なる反転に応じて省電力動作を解除する。また、かかる切り替え処理によって、通常処理制御部24がケーブル40を介してルータ装置10とパケットを送受信できるようになる。
【0052】
上記したように、本実施例のパケット通信システム1においては、ルータ装置10及び通信端末20の各々が個別の電源を有するのではなく、通信端末20がルータ装置10からケーブル40を介して電源供給を受けると共に、その電源電圧の極性反転を判別することによって、通常動作モードと省電力動作モードとを切り替える。図2を参照して説明したように、通信端末20は、パケットの送受信が完了したと判別した場合にルータ装置10に対して省電力動作モードへの移行通知を発し、ルータ装置10は当該通知に応じて電源電圧の極性を反転させる。省電力動作モードにおいては、通常動作モードにおける処理制御の一部のみを動作させるので、消費電力を大幅に低減できる。
【0053】
また、図3を参照して説明したように、省電力動作モードにおいても、ルータ装置10は通信端末20からの通信接続要求をケーブル40を介して受信することができ、当該要求に応じて通信端末20を通常動作モードに移行させることができる。また、図4を参照して説明したように、省電力動作モードにおいても、ルータ装置10は通信端末20に対する通信接続要求を通信網30を介して受信することができ、当該要求に応じて通信端末20を通常動作モードに移行させることができる。
【0054】
このように、本発明によるパケット通信システム1によれば、通信接続要求を受信できる状態にありながらも、通信端末の消費電力を低減することができる。
【0055】
また、電源電圧の極性反転に応じて通常動作モードと省電力動作モードとを切り替えることによって以下の効果を奏する。例えば、本実施例とは異なり通信プロトコルを用いてモード切替を行なう場合には切り替え処理が煩雑になる。これに対して、電源電圧の極性の反転という物理的な状態の変化に応じてモード切替を行なう本実施例の場合には切り替え処理を簡単にできるという効果を奏する。
【0056】
上記実施例は、1つのルータ装置10に対して1つの通信端末20が接続されている場合の例であるが、ルータ装置10に対して複数の通信端末20が接続されている場合には、以下の動作を行なう。通信端末20は、パケットの送受信間間隔が所定の閾値時間以上であると判別した場合に、例えば自身のIPアドレスなどの発信元識別データを含む省電力動作モード移行要求パケットをルータ装置10に送信する。ルータ装置10は、通信端末20毎にそれぞれ対応するケーブル40を介して電源電圧を個別に供給し、省電力動作モード移行要求パケットが到来したときには、当該パケットに含まれる発信元識別データに対応する通信端末20についての電源電圧の極性を反転させる。かかる動作により、データの送受信間隔が閾値時間以上になった通信端末20についてのみ省電力化することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 パケット通信システム
10 ルータ装置
11 コネクタ
12 送受信部
13 中継部
14 送受信部
15 コネクタ
16 パケット種別判別部
17 電源供給部
18 スイッチ
20 通信端末
21 コネクタ
22 送受信部
23 スイッチ
24 通常処理制御部
25 受電極性監視部
26 電源回路
27 スイッチ
28 省電力処理制御部
30 通信網
40 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継装置との間で通信路を介してパケットを送受信する通信端末であって、
前記通信路を介して供給される電源電圧の下で送受信動作をなす送受信回路と、
前記電源電圧の極性の反転を検出する検出回路と、を含み、
前記送受信回路は、発信元識別データを含むモード切替要求パケットを前記中継装置に向けて送信し、
前記検出回路による極性反転検出に応じて前記送受信回路が省電力動作モードにて動作することを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記送受信回路は、前記省電力動作モードにおいては、少なくとも出力処理機能を休止させることを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記送受信回路は、第1の処理制御部と、前記第1の処理制御部に比較して消費電力の小さい第2の処理制御部と、を含み、前記省電力動作モードにおいては、前記第2の処理制御部のみを動作させることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記検出回路は、
前記電源電圧の極性の反転を判別する受電極性監視部と、
前記受電極性監視部による判別結果に応じて前記第1の処理制御部と前記第2の処理制御部とを択一的に動作せしめる切替部と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
前記第1の処理制御部は、前記パケットの送受信間隔が閾値時間以上であると判別した場合に、発信元識別データを含むモード切替要求パケットを前記中継装置に送信することを特徴とする請求項3に記載の通信端末。
【請求項6】
前記第2の処理制御部は、ユーザー入力に応じて発信元識別データを含むモード切替要求パケットを前記中継装置に送信することを特徴とする請求項3に記載の通信端末。
【請求項7】
通信端末と通信網との間で通信路を介してパケットを中継する中継装置であって、
前記通信路を介して電源電圧を前記通信端末に供給する電源供給部と、
到来したパケットがモード切替要求パケットであると判別した場合に当該モード切替要求パケットの発信元識別データに対応する通信端末についての前記電源電圧の極性を反転させる極性反転部と、を含むことを特徴とする中継装置。
【請求項8】
パケットを送受信する通信端末と、前記通信端末と通信網との間で通信路を介して前記パケットを中継する中継装置と、を含むパケット通信システムであって、
前記通信端末は、
前記通信路を介して前記中継装置から供給される電源電圧の下で送受信動作しつつ、発信元識別データを含むモード切替要求パケットを前記中継装置に送信する送受信回路と、
前記電源電圧の極性の反転を検出する検出回路と、を含み、
前記検出回路による極性反転検出に応じて前記送受信回路が省電力動作モードにて動作し、
前記中継装置は、
前記通信路を介して前記電源電圧を前記通信端末に供給する電源供給部と、
到来したパケットが前記モード切替要求パケットであると判別した場合に当該モード切替要求パケットの発信元識別データに対応する通信端末についての前記電源電圧の極性を反転させる極性反転部と、を含むことを特徴とするパケット通信システム。
【請求項9】
前記送受信回路は、前記省電力動作モードにおいては、少なくとも出力処理機能を休止させることを特徴とする請求項8に記載のパケット通信システム。
【請求項10】
前記送受信回路は、第1の処理制御部と、前記第1の処理制御部に比較して消費電力の小さい第2の処理制御部と、を含み、前記省電力動作モードにおいては、前記第2の処理制御部のみを動作させることを特徴とする請求項8又は9に記載のパケット通信システム。
【請求項11】
前記検出回路は、
前記電源電圧の極性の反転を判別する受電極性監視部と、
前記受電極性監視部による判別結果に応じて前記第1の処理制御部と前記第2の処理制御部とを択一的に動作せしめる切替部と、を含むことを特徴とする請求項10に記載のパケット通信システム。
【請求項12】
前記第1の処理制御部は、前記パケットの送受信間隔が閾値時間以上であると判別した場合に、発信元識別データを含む前記モード切替要求パケットを前記中継装置に送信することを特徴とする請求項10に記載のパケット通信システム。
【請求項13】
前記第2の処理制御部は、ユーザー入力に応じて発信元識別データを含む前記モード切替要求パケットを前記中継装置に送信することを特徴とする請求項10に記載のパケット通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−257083(P2012−257083A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129099(P2011−129099)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】