説明

通信端末装置、映像・音声処理方法

【課題】テレビ会議システムなどの通信コミュニケーションの開始に関して、ユーザにとって便宜が図られるようにすることを目的とする。
【解決手段】相手側テレビ会議端末装置からの発信に応じた着信と、映像・音声送受信のための交渉処理を完了した後において、相手側から送信されてくる映像を表示出力させずに、これ以外の映像及び/又は音声を出力させる保留期間を設け、この保留期間終了後において、映像・音声送受信により得られる相手側テレビ会議端末装置側からの映像信号を画像として表示出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテレビ会議システムなどを構成するものとして、映像・音声を送受信することのできる通信端末装置と、この通信端末装置において映像・音声の通信、再生出力などに関する処理を行う映像・音声処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ会議システムにおいては、互いに離れた会議場などの場所ごとにテレビ会議システム対応の端末装置を設け、さらにこの端末装置に撮像装置及びディスプレイ装置を接続する。そして、1つの近端としての或る会議場においては、例えばその会議場に居る会議参加者などを撮像装置により撮像して得た撮像画像を端末装置経由で、遠端となる他の会議場の端末装置に対して送信する。遠端側の端末装置は、近端側から送信されてきた撮像画像を受信し、これを自身に接続されているディスプレイに表示させる。
また、端末装置には、マイクロフォンとスピーカも接続され、近端側のマイクロフォンにより収音して得られる近端話者の音声信号を、端末装置経由で遠端側に送信する。遠端側の端末装置では、受信した音声信号をスピーカから出力する。
これにより、テレビ会議システムによっては、通信相手の会議場の様子をディスプレイ装置に表示させながら会話を行うようにして、会議を進行させていくことができる。
【0003】
このようなテレビ会議システムにおいて端末装置同士を接続するのにあたっては、或る1つの端末装置から、他の端末装置に対して発呼を行い、他の端末装置が着呼により応答する。この後、例えば互いの端末装置間における通信のパラメータについての交渉処理などが行われた後、接続が確立される。このように接続が確立されて以降、撮像画像の映像信号や収音音声の音声信号を送受信することが可能となり、互いに遠端側の端末装置側にて撮像、収音された画像・音声を再生出力させて視聴することができる。つまり、接続が確立されたタイミングから、会議、即ち相互に離れた場所間でのコミュニケーションを実質的に開始させていくことができる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−170505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、例えば上記したようなテレビ会議システムなどを構成する端末を利用したコミュニケーションの開始に関して、ユーザにとって便宜が図られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記した課題を考慮して通信端末装置として次のように構成する。
つまり、他の通信端末装置と通信を行う通信手段と、この通信手段を利用して発着信に対応する所定の発着信対応処理を実行する発着信対応処理実行手段と、発着信対応処理が実行された後において、他の通信端末装置との映像信号及び/又は音声信号の送受信のための映像・音声通信処理に必要とされる準備処理を、他の通信端末装置との間での所定の手順に従った通信により実行する準備処理実行手段と、準備処理が実行された後において映像・音声通信処理を実行させる映像・音声通信制御手段と、映像・音声通信処理により他の通信端末装置から送信される映像信号及び/又は音声信号を受信して、映像信号については画像として、音声信号については音声として再生出力させる再生出力手段と、発着信対応処理を実行したとされるタイミングに応じた所定の時点から、再生出力手段により画像及び/又は音声の再生出力が開始されるものとするタイミングに応じた所定の時点までの待機期間が、発着信対応処理、準備処理、映像・音声通信処理のシーケンスを通常に実行させた場合よりも所定時間だけ延長されるようにして、待機期間内において保留期間を設定する保留期間設定手段とを備えることとした。
【0007】
上記構成による通信端末装置は、発着信対応処理、準備処理を経て映像・音声通信処理を開始するようにされ、映像・音声通信処理により受信して得られる映像信号及び/又は音声信号を再生出力することができるようになっている。そのうえで、発着信対応処理を実行したとされるタイミングから、映像・音声通信処理により受信して得られる映像信号及び/又は音声信号の再生出力を開始するまでのタイミングに対応する待機期間内において保留期間を設定することで、この待機期間を強制的に延長するようにされる。
【発明の効果】
【0008】
上記のようにして、待機期間が延長されることによっては、他の通信端末装置から送信されてきた映像及び/又は音声の再生出力を開始するタイミングが遅延されることになる。これにより、例えば通信端末装置を利用して、他の通信端末装置側にいる者とコミュニケーションを行おうとしているユーザにとっては、発着信があってから、保留期間に対応する時間だけ待って、他の通信端末装置側との実質的なコミュニケーションを開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)としては、テレビジョン会議システム(テレビ会議システム)において備えられる端末装置(テレビ会議端末装置)に本願発明を適用する。
テレビ会議システムは、場所の異なる会議場ごとに通信端末であるテレビ会議端末装置を設置し、このテレビ会議端末装置から、撮像装置により撮影した画像と、マイクロフォンにより収音した音声を他のテレビ会議端末装置に送信させると共に、他のテレビ会議端末装置から送信されてきた画像と音声を受信して、それぞれ、ディスプレイ装置、スピーカから出力させるように構成される。つまり、テレビ会議システムでは、画像を相互に送受信する映像送受信系と、音声を相互に送受信する音声送受信系とを備える。
【0010】
図1は、テレビ会議システムの構成例を示している。
この場合には、互いに離れた2つの場所A、場所Bが会議場とされており、これらの場所A,Bのそれぞれにおいて、テレビ会議端末装置1−1、1−2が設置される。これらのテレビ会議端末装置1−1、1−2は、所定の通信方式に対応する通信回線により接続されて、相互通信が可能なようにされている。
また、場所Aにおいては、テレビ会議端末装置1−1とともに、撮像装置2−1、雲台3−1、ディスプレイ装置4−1、スピーカ6−1、マイクロフォン7−1が備えられる。
撮像装置2−1は、画角調整のためのズーム機構を備え、雲台3−1に取り付けられている。雲台3−1は、パン機構とチルト機構を備えることで、取り付けられた撮像装置の撮像方向(撮像視野)を、所定角度範囲で上下方向及び左右方向に変更することが可能とされている。
また、リモートコントローラ5−1は、テレビ会議端末装置1−1の動作をユーザが遠隔操作するために設けられる。
スピーカ6−1からは、後述するようにして、例えば遠端側のテレビ会議端末装置1−2から送信されてくる音声信号を音声として再生出力させることができる。
マイクロフォン7−1は音声を収音する。この収音によって得られる音声信号は、テレビ会議端末装置1−1により、例えば遠端側のテレビ会議端末装置1−2に対して送信することができる。
同様にして、場所Bにおいては、テレビ会議端末装置1−2とともに、撮像装置2−2、雲台3−2、ディスプレイ装置4−2、スピーカ6−2、マイクロフォン7−2が備えられる。
【0011】
なお、以降の説明において、テレビ会議端末装置、撮像装置、雲台、ディスプレイ装置、リモートコントローラ、スピーカ、マイクロフォンなどについて、特に離れた場所にある同一のものを区別する必要のない場合には、テレビ会議端末装置1、撮像装置2、雲台3、ディスプレイ装置4、リモートコントローラ5、スピーカ6、マイクロフォン7などのようにして表記する。
【0012】
この図に示されるテレビ会議システムとしての基本的動作は、例えば次のようになる。
先ず、場所Aにおいて、撮像装置2−1により撮像して得られた映像信号は、テレビ会議端末装置1−1に入力される。テレビ会議端末装置1−1は、入力された映像信号を、通信回線を経由してテレビ会議端末装置1−2に対して送信する。テレビ会議端末装置1−2は、送信されてきた映像信号を受信し、ディスプレイ装置4−1により画像として再生出力させる。
また、同様にして、場所B内の撮像装置2−2により撮像して得られた映像信号は、テレビ会議端末装置1−2によりテレビ会議端末装置1−1に送信される。テレビ会議端末装置1−1では、受信した映像信号を、ディスプレイ装置4−1から出力させる。このときディスプレイ装置には、遠端側となる場所Bの撮像装置2−2により撮像された撮像画像として、例えば動画が表示される。
【0013】
また、場所Aのマイクロフォン7−1により収音して得られた音声信号は、テレビ会議端末装置1−1から場所Bのテレビ会議端末装置1−2に対して通信回線経由で送信する。テレビ会議端末装置1−2では、この送信されてくる音声信号を受信して、スピーカ6−2から音声として再生出力する。同様に、場所Bのマイクロフォン7−2により収音されてテレビ会議端末装置1−2により送信された音声信号は、場所Aのテレビ会議端末装置1−1により受信され、スピーカ6−1から音声として再生出力される。
【0014】
上記のようにして、テレビ会議システムの映像送受信系及び音声送受信系では、それぞれ、映像、音声の双方向通信を行うものであり、これにより、例えば或る1つの場所にいる会議参加者は、ディスプレイ装置4にて表示される他の場所の会議場の様子を見て、視覚的に把握することができる。また、例えば或る1つの場所にいる会議参加者は、他の場所の会議場にいる会議参加者の発言した音声を、スピーカ6から聴くことができる。このようにして、離れた場所にいる会議参加者同士がコミュニケーションをとって、例えば会議を進行させていくことができる。
【0015】
図2は、1つの場所において備えられるテレビ会議システムを、テレビ会議端末装置1の内部構成例とともに示している。なお、図1との対応では、テレビ会議端末装置1−1、1−2は、この図2に示す構成を共通に有するものとして考えればよい。
【0016】
この場合の撮像装置2においては、撮像のための光学系と、撮像光を利用して映像信号を生成する信号処理部とを備えるものとされる。撮像装置2から出力される映像信号(撮像映像信号)は、テレビ会議端末装置1における映像信号処理/表示制御部11に対して入力される。
また、撮像装置2の光学系に対応しては、ズームレンズの位置を移動させて画角を変更するための機構を有して成る、ズーム機構部2aを備える。
また、雲台3は、取り付けられた撮像装置2の撮像視野を左右に変更するための機構であるパン機構部3aと、上記撮像視野を上下に変更するための機構であるチルト機構部3bとを有して成る。
【0017】
映像信号処理/表示制御部11は、入力される映像信号について必要に応じて所定の信号処理を実行するとともに、ディスプレイ装置4に対して画像を表示させるための表示制御を実行する。
【0018】
例えば、映像信号処理/表示制御部11は、撮像装置2から入力される撮像映像信号について必要に応じて所要の信号処理を施したうえでで、映像エンコーダ12に転送する。
【0019】
映像エンコーダ12は、入力される映像信号について所定方式による画像圧縮符号化処理を実行して、通信部14に対して転送する。通信部14は、制御部18の制御に応じて、映像エンコーダ12から転送されてくる圧縮画像データについて、所定の通信方式に従って、通信回線経由で、他のテレビ会議端末装置に対して送信する。
【0020】
また、他のテレビ会議端末装置から送信されてきた圧縮画像データは、通信部14にて受信されて、映像デコーダ13に転送される。
映像デコーダ13は、入力されてくる圧縮画像データについて、画像圧縮符号化に対する復調(デコード)処理を実行して所定形式の映像信号を得る。このようにして得た映像信号を映像信号処理/表示制御部11に転送する。
【0021】
映像信号処理/表示制御部11は、例えば上記のようにして映像デコーダ13から転送される映像信号の画像がディスプレイ装置4にて表示されるようにするための表示制御を実行することができる。これにより、他の会議場において撮影された画像が、ディスプレイ装置4にて表示されることになる。
また、映像信号処理/表示制御部11は、撮像装置2による撮像に基づいて得られる上記撮像映像信号について、ディスプレイ装置4にて所定の態様により表示されるようにして表示制御を実行することも可能とされている。
さらに、映像信号処理/表示制御部11は、制御部18の制御に応じて、各種の操作画像をディスプレイ装置4により表示させるための画像生成処理、表示制御処理を実行可能とされている。
なお、映像信号処理/表示制御部11は、その一部、あるいは全ての機能をDSP(Digital Signal Processor)により構成することができる。
【0022】
また、マイクロフォン7により収音して得られた収音音声信号は、A/Dコンバータ23により例えばPCM(Pulse Code Modulation)形式のデジタル音声信号に変換されて音声信号処理部21に入力される。
音声信号処理部21は、入力される音声信号について、例えばデジタル信号処理による所要の音声信号処理を施す部位とされる。例えば上記A/Dコンバータ23から入力されるデジタル音声信号については、音声信号処理部21は、必要に応じて所定の信号処理を施したうえで、音声エンコーダ13に転送することができる。音声エンコーダ13は、入力されるPCM形式の音声信号について、所定方式による音声圧縮符号化を行い、通信部14に出力する。通信部14は、制御部18の制御に応じて、音声エンコーダ24から転送されてくる圧縮音声信号データについて、通信回線101経由で、接続先の通信端末装置に対して送信する。このようにして近端側の話者音声を、接続先(遠端側)の通信端末装置に対して送信することができる。
【0023】
また、接続先の通信端末装置から送信されてきた圧縮音声信号データは、通信部14にて受信され、音声デコーダ25に対して転送される。音声デコーダ25では、入力されてくる圧縮音声信号データについて、音声圧縮符号化に対する復調(デコード)処理を実行してPCM形式の音声信号を得て、音声信号処理部21に対して転送する。
【0024】
音声信号処理部21は、音声デコーダ25から転送されてくるデジタル音声信号について必要に応じた信号処理を施した上で、D/Aコンバータ22に転送することができる。
D/Aコンバータ22は、入力されるデジタル音声信号をアナログ信号に変換して出力する。このようにして出力された音声信号は、例えば実際においては増幅などを経てスピーカ6に出力される。これにより、スピーカ6からは、接続先の通信端末装置から送信されてきた話者音声が再生出力される。
【0025】
なお、上記これまでの説明から分かるように、テレビ会議端システムにおける音声送受信系としては拡声通話系といわれるものとなるが、このような拡声通話系をそのまま使用したのでは、エコー、ハウリングなどの現象を生じることが知られている。つまり、スピーカ6から空間に放出された音は、直接音及び間接音としての空間伝搬経路(エコーパス)を経て、マイクロフォン7に到達する。つまり、接続先の通信端末装置から送信されスピーカ6から放出された相手側話者の声がマイクロフォン2にて収音され、再び、接続先の通信端末装置に送信される。また、接続先の通信端末装置側においてもにおいても、さらにスピーカから放出された音がマイクロフォンで収音されて、こちらの通信端末装置に送信されてくる。即ち、拡声通話系では、一度空間に放出された音が、通信端末装置間で循環するようにして送受信される。これにより、スピーカから放出される音には、自分が今話している声が、或る遅延時間をもってこだまのようにして聴こえるものが含まれることになる。これがエコーであり、ループゲインが1を越えればハウリングとなる。
音声信号処理部21としては、例えば適応処理などにより上記のエコーをキャンセルするための信号処理を実行させるように構成できる。
また、音声信号処理部21についても、その一部、あるいは全ての機能をDSPにより構成することができる。
【0026】
また、このテレビ会議端末装置1は、撮像装置2の撮像視野を可変制御する機能を有するものとされている。ここでの撮像視野の可変は、パン制御、チルト制御、ズーム制御の組み合わせによるものとする。パン制御、チルト制御は、撮像装置の撮像方向(撮像視野)をそれぞれ左右方向、上下方向に可変する制御で、ズーム制御は、撮像装置の画角を変更する制御である。これに対応して、テレビ会議端末装置1は、PTZ(PTZ:Pan(Panning),Tilt(Tilting),Zoom(Zooming))駆動制御部15を備える。
【0027】
PTZ駆動制御部15は、図示するようにして、パン/チルト駆動制御部16とズーム駆動制御部17とを備える。
パン/チルト駆動制御部16は、制御部18からのパン方向における移動量の指示情報に応じて、雲台3が備えるとされるパン機構部3aにおけるパンモータを駆動するための駆動信号を生成して出力する。同様に、制御部18からのチルト方向における移動量の指示情報に応じて、雲台3が備えるとされるチルト機構部3bにおけるチルトモータを駆動するための駆動信号を生成して出力する。これにより、撮像装置2の撮像視野として、左右方向(パン方向)と上下方向(チルト方向)の撮像方向を変更する制御が可能とされる。
また、ズーム駆動制御部17は、制御部19からの画角変更量の指示情報に応じて、撮像装置2の光学系において備えられるズーム機構部2aにおけるズームモータを駆動するための駆動信号を生成して出力する。これにより、撮像視野として、画角を変更する制御が可能になる。
【0028】
制御部18は、例えばCPU、ROM、RAMなどを有して成るマイクロコンピュータなどにより構成されるもので、テレビ会議端末装置1についての全体制御を実行する。
【0029】
記憶部19は、例えば不揮発性の記憶デバイスから成るもので、制御部18が必要な各種のプログラム、データなどを記憶する。本実施の形態に対応しては、必要に応じて、保留期間用データ19aを記憶させるようにして構成することになる。
【0030】
リモートコントローラ5は、テレビ会議端末装置1の動作についての各種の操作をユーザが行うための所要の操作子を備え、これらの操作子に対する操作に応じて、赤外線、あるいは電波などによりコマンド信号を送信する。このコマンド信号は、受信部20にて受信復調されることで操作情報信号に変換されて制御部18に入力される。制御部18は、入力される操作情報信号に応答して所要の制御、処理を実行する。
【0031】
図3は、上記構成によるテレビ会議端末装置1により実現できる、映像・音声送受信のための通信を開始させるまでの手順例を示している。なお、この場合においてテレビ会議端末装置1同士が通信を開始するのにあたっては、先ず、双方の間で発着信が行われることを前提とする。また、この発着信にあたって、着信は自動的に行われるものとする(自動着信)。また、図1との対応に準じて、発信を行う側のテレビ会議端末装置1については発信側テレビ会議端末装置1−1と表記し、着信が行われる側のテレビ会議端末装置1については着信側テレビ会議端末装置1−2とも表記する。
【0032】
先ず、リモートコントローラ5−1に対して、例えば通信相手を指定しての通信開始を指示する操作が行われたとすると、この操作に応じて、発信側テレビ会議端末装置1−1は、ステップS101により発信処理を実行する。つまり、指定された通信相手となる着信側テレビ会議端末装置1−2に対して、発信信号を送信する。
【0033】
この発信信号の送信に応じては、着信側テレビ会議端末装置1−2がステップS202により着信処理を実行する。つまり、送信されてきた発信信号を受信したことに基づき、着信を検知する。そして、着信側テレビ会議端末装置1−2は、上記ステップS201による着信処理に続き、ステップS202により着信応答としての信号(着信応答信号)を送信する。なお、上記ステップS202、S203は、着信処理といえるものであるが、ここでは、自動着信が設定されているものとする。従って、ステップS202の着信応答信号の送信は、ステップS201により着信を検知したことに応じて、直ちに実行するようにされる。
上記ステップS202により送信された着信応答信号は、発信側テレビ会議端末装置1−1により、ステップS0102にて受信する。
【0034】
上記ステップS101、S201、S202、S102により、発信側テレビ会議端末装置1−1と着信側テレビ会議端末装置1−2のそれぞれが、発着信に対応した処理(発着信対応処理)を実行した後は、発信側テレビ会議端末装置1−1のステップS103、及び着信側テレビ会議端末装置1−2のステップS203として示すようにネゴシエーションを実行する。このネゴシエーションは、例えば相互で正常に、映像信号及び音声信号(映像・音声信号)を送受信できる通信環境をはじめとして、必要な設定について、交渉により取り決めを行う処理となる。このネゴシエーションによって、例えば通信プロトコル、通信速度などが設定される。
発信側テレビ会議端末装置1−1のステップS104、及び着信側テレビ会議端末装置1−2のステップS204によりネゴシエーションの完了が確認されると、発信側テレビ会議端末装置1−1及び着信側テレビ会議端末装置1−2は、それぞれ、ステップS105、S205により映像・音声送受信オープン処理を実行させる。この処理は、例えば適宜必要に応じて発信側テレビ会議端末装置1−1と着信側テレビ会議端末装置1−2とで通信を行いながら、上記ネゴシエーションにより取り決められた通信環境などについての設定を実行するものとなる。
【0035】
そして、発信側テレビ会議端末装置1−1のステップS106、及び着信側テレビ会議端末装置1−2のステップS206により、映像・音声送受信オープン処理の完了を確認すると、以降においては、発信側テレビ会議端末装置1−1と着信側テレビ会議端末装置1−2との間で、映像信号及び音声信号の相互送受信(映像・音声送受信)が可能となる。この図では、上記ステップS106、S206により映像・音声送受信オープン処理を完了させたタイミングで、現に、映像・音声送受信を開始させているものとする。
【0036】
ここで、着信側テレビ会議端末装置1−2にて、既に、受信した映像・音声信号をディスプレイ装置4−2及びスピーカ6−2から出力できるように内部動作の設定が行われているものとする。この場合、ステップS206の処理に続くタイミングで、ディスプレイ装置4−2においては、発信側テレビ会議端末装置1−1側の撮像装置2−1により撮像して得られた撮像画像の表示が開始され、スピーカ6−2からは、発信側テレビ会議端末装置1−1側のマイクロフォン7−1により収音して得られた音声の再生出力が行われることになる。つまり、着信側テレビ会議端末装置1−1において、発信側テレビ会議端末装置1−1側にて得た撮像画像及び収音音声の再生出力が開始される。
また、同様にして、発信側テレビ会議端末装置1−1においても、ステップS106の処理を実行した後は、ディスプレイ装置4−1及びスピーカ6−1から、着信側テレビ会議端末装置1−2の側にて得た撮像画像及び収音音声の再生出力が開始される。
【0037】
上記図3に示す手順のシーケンスについて、先ず、ステップS101の発信処理に応じた、S201による着信処理が実行されてから、ステップS205、S206に対応して映像・音声送受信オープン処理が完了するまでの期間は、映像・音声送受信のための通信を確立するまでの準備期間としてみることができるので、接続準備期間T1ということにする。
また、図3の場合においてステップS205、S206が実行されて以降の期間は、上記したように、通信相手側にて得られた撮像画像・音声が再生出力され、また、このような撮像画像・音声の再生出力が、テレビ会議システムにおける通常時の映像・音声再生出力の態様となることに因み、通常画像・音声出力期間T2ということにする。この通常画像・音声出力期間T2に
【0038】
ところで、以前においては、ネゴシエーションなどの処理に比較的多くの時間が必要とされる場合がほとんどであったために、接続準備期間T1も相応に長い時間となっていた。これは、例えば着信側テレビ会議端末装置1−2側の会議参加者(ユーザ)から見れば、ステップS201の着信処理に応じた着信音が得られてから、通常画像・音声出力期間T2に至って、相手側とのコミュニケーションが可能になるまでにも、相応の時間がかかるということになる。しかし、会議参加者等はこのことを承知しているので、むしろ、この接続準備期間T1が或る程度長いことを利用して、その間において、軽く身支度を調えたり、書類を揃えたり、気持ちの切り換えをするなどして、会議(コミュニケーション)に臨む準備をすることができていた。
【0039】
ところが、現状においては、例えば通信速度の高速化であるとか、ネゴシエーション処理のシーケンスの工夫などにより、ネゴシエーションなどの処理に要する時間が相当に短縮されるようになってきており、これに応じて、接続準備期間T1も短縮されてきている傾向にある。一例であるが、接続準備期間T1としての実際の時間長は、以前は数秒を要していたものが、現状では、1秒程度にまで短縮されている。接続準備期間T1が短縮されれば、それだけ通常画像・音声出力期間は早く到来する。つまり、現在では、発着信があってから、相手側の撮像画像及び収音音声が再生出力開始されてコミュニケーションが可能となるまでの待機時間が非常に短縮されている傾向にある。
このために、会議参加者にとっては上記の会議に臨む準備をする時間的余裕が無いという状況が生じてきている。この問題は、特に着信側のほうが大きい。通常、発信側のテレビ会議端末装置1に発信動作を実行させるためには、同じ発信側の会議参加者(ユーザ)がそのための操作を行うので、発信側の会議参加者は、発信操作が行われるときには既に準備ができている状態とすることができる。これに対して着信側の会議参加者は、発信に応じた着信が何時あるのか予期できない。そして、着信があれば、すぐさま相手側の撮像画像が表示されてしまうために、どうしてもとまどいがちになってしまう。
そこで、本実施の形態は、上記の問題を解決するものとして、以降説明するようにしてテレビ会議端末装置1を構成する。なお、以降においては、第1〜第5の実施の形態を挙げるが、図1及び図2に示したテレビ会議システム、及びテレビ会議端末装置1の構成自体は、各実施の形態で共通となる。
【0040】
第1の実施の形態としては、着信側として動作するテレビ会議端末装置1−2が実行する手順が対応するものとなる。
図4は、第1の実施の形態に対応する、発信側テレビ会議端末装置1−1と着信側テレビ会議端末装置1−2との間での、発着信対応処理から映像・音声送受信が開始されるまでの手順(以降、映像・音声通信確立手順ともいうことにする)の一例を示している。
【0041】
この図において、接続準備期間T1において発信側テレビ会議端末装置1−1及び着信側テレビ会議端末装置1−2がそれぞれ実行する、ステップS101〜S106、及びS201〜S206までの手順は、図3と同様であることから、ここでの説明は省略する。
【0042】
この場合においても、ステップS106、S206により映像・音声送受信オープン処理が完了したとされる以降においては、発信側テレビ会議端末装置1−2と着信側テレビ会議端末装置1−2は、相互に映像・音声送受信を実行することが可能なようにして通信接続が確立されている状態にある。
【0043】
そのうえで、第1の実施の形態においては、着信側テレビ会議端末装置1−2側において、ステップS206に続けて、ステップS207により、タイマ20による計時を開始させる(タイマスタート)。タイマ20は、図2に示すようにして制御部18が有する時計機能を利用して、制御部18内において得られる機能部位となる。また、このタイマ20に対しては、図において示される保留期間T1−1としての実時間長に対応するタイマ時間を設定する。
【0044】
また、着信側テレビ会議端末装置1−2は、上記ステップS207によるタイマスタートとともに、ステップS208により、発信側テレビ会議端末装置1−1に対しては、映像・音声信号のうちで、映像信号の送信については停止させ、この結果、音声信号のみが送信される送信動作を設定する。
【0045】
また、接続準備期間T1を終了した後は、発信側テレビ会議端末装置1−1から映像・音声信号が送信されてくる。着信側テレビ会議端末装置1−2は、接続準備期間T1を経過したことで映像・音声送受信の通信が確立されている状態にあるので、通常であれば、この映像・音声信号を受信して画像・音声として再生出力させることになる。しかし、ステップS209により、受信映像・音声信号のうち、映像信号を画像として表示出力(再生出力)させるための処理を停止させ、結果として、受信した音声信号の音声のほうのみがスピーカ6−2から再生出力されるようにする。
なお、上記ステップS207、ステップS208、ステップS209の手順は、例えば人の感覚からすれば、ほとんど同時に実行されるものとしてみることができるので、これらの手順を実行する順序が入れ替わるようにされても、実質的に特に問題はない。
【0046】
そして、上記ステップS209までの手順を実行した後においては、ステップS210により、先のステップS207にてスタートさせたタイマ20が計時するタイマ時間が経過するのを待機し、タイマ時間が経過すると、ステップS211の手順に進む。
【0047】
ステップS211においては、先のステップS208において停止させた映像信号の送信を開始させる。この結果、以降において、発信側テレビ会議端末装置1−1に対して映像・音声信号をともに送信することになる。
また、ステップS212により、先のステップS209により停止させていた、受信映像信号の再生出力を開始させる。
なお、上記ステップS211及びステップS212の手順も、例えば人の感覚からすれば、ほとんど同時に実行されるものとしてみることができるので、これらの手順を実行する順序が入れ替わるようにされてもよい。
【0048】
上記の処理手順によると、接続準備期間T1の後において、発信側テレビ会議端末装置1−1と着信側テレビ会議端末装置1−2との間で通常に、通信相手側の撮像画像、及び収音音声の双方の再生出力が開始されるタイミング、即ち、通常画像・音声出力期間が開始されて会議(コミュニケーション)が可能になるタイミングは、ステップS210によりタイマ時間が経過し、ステップS211、S212が実行されるタイミングであるとしてみることができる。
そして、この接続準備期間T1と通常画像・音声出力期間T2との間には、タイマ20のタイマ時間に対応して、接続が確立していながら通常画像・音声の出力が強制的に停止される期間が挿入されることになるが、これが保留期間T1−1となる。
【0049】
保留期間T1−1においては、ステップSS209が実行されていることに応じて、着信側テレビ会議端末装置1−2においては、通信相手である発信側テレビ会議端末装置1−1側の撮像画像は表示されず、収音音声のみが音声として再生出力されることになる。
つまり、着信側テレビ会議端末装置1−2においては、着信に応じて接続準備期間T1が開始されてから保留期間T1−1が終了するまでの期間、相手側の撮像画像が表示されない。
これにより、接続準備期間T1が非常に短い時間長であるとしても、タイマ20のタイマ時間の設定により、着信してから相手側の撮像画像が表示されるまでの期間(待機期間)について、会議参加者が準備を整えられるだけの充分に余裕のある時間長を設定できることになる。これにより、着信側テレビ会議端末装置1−2側の会議参加者は、以前と同様の感覚で、着信があってから準備を整え、それから会議を始めることが可能になる。
【0050】
また、保留期間T1−1においては、ステップS208が実行されることで、通信相手である発信側テレビ会議端末装置1−1においては、着信側テレビ会議端末装置1−2側にて得た撮像画像も表示出力されないことになる。
これにより、発信側テレビ会議端末装置1−1側の会議参加者に、例えば着信側テレビ会議端末装置1−2側の会議参加者等が保留期間T1−1において準備をしている様子を見られることが無くなり、いわゆるプライバシー保護が図られる。
【0051】
また、この場合においては、収音音声については、保留期間T1−1において、既に相互に送受信を行って再生出力させるようにしている。つまり、音声での相互のコミュニケーションは可能となっている。このように音声のみによるコミュニケーションが可能であるとしても、依然として相手側の撮像画像は表示されないから、着信側テレビ会議端末装置1−2の会議参加者に、会議の準備をする充分な余裕を与えることができると考えられる。また、プライバシー保護の点でも、撮像画像が通信相手側にて見えないようにすれば、ほぼその目的は果たされる。
また、本実施の形態の保留期間T1−1は、以前の比較的長時間の接続準備期間T1を強制的に作り出すものとしてみることができるのであるが、例えば保留期間T1−1において映像・音声の両者を再生出力させないものとすると、最近の接続準備期間T1が短いテレビ会議端末装置を使い慣れているユーザは、逆に、通信とかなんらかのトラブルが起きたと勘違いする場合もある。音声だけでも相互に再生出力できるようにしていれば、上記のような勘違いは解消できる。
もちろん、使用環境によって、収音音声も送受信させることが好ましくない、あるいは、収音音声が再生出力されなくとも、上記のような勘違いを生む可能性が無いような状況であれば、収音音声についても撮像画像と同じく相手側にて再生出力されないようなステップS207、S208の処理として、収音音声の再生出力も行われない結果が得られるようにしてよい。
【0052】
次に、第2の実施の形態について説明する。図5は、第2の実施の形態の映像・音声通信確立手順の一例を示している。
この図において、接続準備期間T1において発信側テレビ会議端末装置1−1が実行するステップS101〜S106の手順は図4と同様となる。また、同じ接続準備期間T1において着信側テレビ会議端末装置1−2が実行するステップS301〜S306は、図4のステップS201〜S206と同様となる。
【0053】
この場合の着信側テレビ会議端末装置1−2も、ステップS306に続けて、ステップS307によりタイマ20を起動させる。このタイマスタートに応じたタイミングにより、保留期間T1−1が開始される。
次に、着信側テレビ会議端末装置1−2は、ステップS308により、発信側テレビ会議端末装置1−1に対する映像信号の送信動作を停止させ、音声信号のほうのみが送信できる動作状態とする。また、ステップS309により、受信映像・音声信号のうち、映像信号の再生出力については停止させ、受信した音声信号のみが再生出力されるようにする。
【0054】
本実施の形態のテレビ会議端末装置1は、図2に示すようにして、記憶部19において保留期間用データ19aを記憶している。この保留期間用データ19aは、保留期間に対応して再生出力すべき、所定の再生内容を有する音声信号データ、あるいは静止画若しくは動画による画像データとされる。第2の実施の形態に応じては、保留期間用データ19aは、所定の再生内容を有する音声信号データとなる。これを、ここでは保留期間用音声データ(保留期間用音声信号データ)ともいうことにする。
【0055】
そして、着信側テレビ会議端末装置1−2は、保留期間T1−1において、ステップS310により記憶部19から保留期間用音声データとしての保留期間用データ19aを読み出し、ステップS311により、発信側テレビ会議端末装置1−1に対して送信すべき音声信号(送信音声)として、収音音声信号ではなく、この読み出した保留期間用音声データが送信されるようにして制御を実行する。
【0056】
そして、ステップS312によりタイマ時間が経過したことが判別されると、ステップS313により、ステップS211と同様に映像信号の送信を開始させるとともに、ステップS314により、これまで実行していたとする保留期間用音声データの送信を停止させ、これに代えて、収音音声信号が送信されるようにして制御を実行する。また、ステップS315においては、これまで停止させていた、受信映像信号の再生出力を開始させる。
このようにして、タイマ20のタイマ時間が経過したとするタイミングに応じて、ステップS313〜S315の手順を実行することで、この処理の実行タイミング以降において、通常に相手側から送信されてくる撮像画像、収音音声を相互に再生出力する、画像・音声出力期間T2が開始されるものとして見ることができる。
【0057】
このような着信側テレビ会議端末装置1−2の動作によると、先ずは、保留期間T1−1においては、第1の実施の形態と同様にして、着信側テレビ会議端末装置1−2側では、発信側テレビ会議端末装置1−1側の撮像画像が表示されることがなく、収音音声のみが再生出力される。また、発信側テレビ会議端末装置1−1側においても、着信側テレビ会議端末装置1−2側の撮像画像は表示されない。
【0058】
ただし、第2の実施の形態の保留期間T1−1においては、ステップS310、S311が実行されることに応じて、発信側テレビ会議端末装置1−1において再生出力される音声は、着信側テレビ会議端末装置1−2側にて収音した収音音声ではなく、保留期間用音声データの音声となる。
なお、この保留期間用データの音声は、例えば音楽のようなものであるとか、人の声によるアナウンスなどを考えることができる。
【0059】
上記のようにして保留期間T1−1において、保留期間用音声データの音声が発信側テレビ会議端末装置1−1にて再生出力されるようにすることで、例えば、その間は、発信側テレビ会議端末装置1−1側の会議参加者に対して、着信側テレビ会議端末装置1−2側の会議参加者の声が聞こえることがなく、プライバシー保護は、より強固なものとすることができる。
【0060】
また、テレビ会議システムは、いわゆる会議のほかにも、多様な形態のコミュニケーションに用いられる。例えば、企業担当者と顧客との間での商談などのようなものにも用いられる。
例えば、このような商談などのシステムにも、第2の実施の形態は有効に適用できる。例えば、保留期間用音声データとして、企業案内、商品案内、注意事項などのアナウンスの音声内容を有するものを用意しておけば、顧客側のテレビ会議端末装置1−1から発信が行われたことに応じては、上記の案内、注意事項などのアナウンス音声を、顧客に聴いてもらうことができる。
【0061】
図6は、第3の実施の形態に対応する、映像・音声通信確立手順の一例を示している。
この図においても、接続準備期間T1において発信側テレビ会議端末装置1−1が実行するステップS101〜S106の手順は図4と同様となる。また、同じ接続準備期間T1において着信側テレビ会議端末装置1−2が実行するステップS401〜S406も、図4のステップS201〜S206と同様となる。
【0062】
この場合の着信側テレビ会議端末装置1−2は、ステップS406に続けて、先ず、ステップS407によりタイマ20を起動させ、保留期間T1−1を開始させる。
次のステップS408によっては、撮像装置2−2により撮像して得られた撮像画像の映像信号を発信側テレビ会議端末装置1−1に対して送信する動作を停止させることで、この段階では、収音音声のみが送信される動作を設定することとしている。ステップS409においては、受信映像・音声信号のうち、映像信号の再生出力については停止させ、受信した音声信号のみが再生出力されるようにする。
【0063】
ここで第3の実施の形態にあっては、保留期間用データ19aとして、画像データを利用するものとする。ここでは、画像データとしての保留期間用データ19aを、保留期間用画像データということにする。
そして、着信側テレビ会議端末装置1−2は、保留期間T1−1において、ステップS410により、記憶部19に対して上記保留期間用画像データの読み出しを実行する。次に、ステップS411により、この保留期間用画像データに基づいて保留期間用画像としての映像信号を生成する。
【0064】
続いて、着信側テレビ会議端末装置1−2は、先ず、ステップS412により、上記保留期間用画像データの映像信号を利用して、自身に接続されたディスプレイ装置4−2にて保留期間用画像が表示されるようにするための表示制御を実行する。
また、これとともにステップS413により、保留期間用画像の映像信号を発信側テレビ会議端末装置1−1に対して送信する。
【0065】
そのうえで、ステップS414にてタイマ時間が経過するのを待機し、タイマ時間が経過したとされると、ステップS415〜S417の手順を実行する。
ステップS415は、これまでの発信側テレビ会議端末装置1−1に対する保留期間用画像データの映像信号の送信を停止させ、これに代えて、撮像画像の映像信号を送信する動作となるようにして制御を実行する。
ステップS416によっては、これまでのディスプレイ装置4−2に対する保留期間用画像データの画像の表示出力を停止させ、ステップS417により、受信映像信号の表示出力が開始されるように制御する。
【0066】
上記の構成では、ステップS413により、保留期間T1−1において、発信側テレビ会議端末装置1−1側にて保留期間用画像がディスプレイ装置4−1に表示される。これにより、例えば保留期間T1−1において、発信側テレビ会議端末装置1−1側では、撮像画像以外で、例えば会議参加者にとって有意な内容の画像を表示させることが可能になるものであって、例えば特に有意な画像を表示させない場合と比較すれば、保留期間T1−1を有効に活用していることになる。
【0067】
また、この場合においては、ステップS412により、同様にして、着信側テレビ会議端末装置1−2側でも、保留期間用画像データの画像をディスプレイ装置4−2に表示させることとしており、着信側においても、保留期間T1−1の有効活用を図ることとしている。
【0068】
上記図6に対応して、発信側テレビ会議端末装置1−1と着信側テレビ会議端末装置1−2において表示される保留期間用画像の表示態様例を、図7に示す。
例えば図7(a)は、ディスプレイ装置4−1、4−2の表示画面部40に表示される保留期間用画像の態様例として、表示開始時に対応するものとされる画像内容を示している。この図においては、例えば「ただいまスタンバイ中」(ここでのスタンバイは保留と同義で用いられている)などのようにして文字画像が示されていることで、現在、会議用の画像(撮像画像)が表示開始されるのを(通常画像・音声出力期間T2が開始されるのを)待機している状態であることが会議参加者に告知されるようになっている。
また、この場合においては、画像の右下に設定した残り時間表示領域41に示されるようにして、会議用の画像(撮像画像)が表示開始されるまでの残り時間を示すこととしている。この残り時間表示領域41にて表示される残り時間(ここでは秒単位となっている)を示す数字は、これ以降、ほぼ1秒が経過するごとに小さくなるようにして変化して表示され、例えば図7(a)の保留期間用画像の表示開始時から、4秒程度が経過した時点では、残り時間表示領域41においては、図7(b)に示すような表示内容に変化していることになる。
そして、例えばこの後、ほぼ1秒が経過して、これとともに、通常画像・音声出力期間T2に至ったとされると、図7(c)に示すようにして、例えば、通信相手側の撮像画像が表示される。
【0069】
なお、残り時間表示領域41を表示させる構成として、1つには、残り時間表示領域41における残り時間を示す数字が時間経過に従って変化するようにして作られた動画に対応する保留期間用画像データを記憶させておき、この保留期間用画像データの映像信号を表示に利用するとが考えられる。また、保留期間用画像データとしては、静止画若しくは、残り時間表示領域41以外の部分が動く動画としての画像データを記憶させておくこととして、映像信号処理/表示制御部11が有する、いわゆるオンスクリーンディスプレイ機能により、残り時間表示領域41に対応する画像データを生成することとしたうえで、この画像データを保留期間用画像データに重畳した映像信号を表示に利用する、という構成も考えられる。
【0070】
また、上記図7に示した保留期間用画像の態様は一例であり、例えばより娯楽性のあるものであるとか、なんらかの有用な情報を提供するものなど、多様に考えられる。また、静止画を表示させてもよいし、時間経過に応じて変化する動画像を表示させるようにして構成してもよい。
【0071】
また、発信側テレビ会議端末装置1−1と、着信側テレビ会議端末装置1−2に表示させる保留期間用画像は、それぞれが異なる内容のものとされてよい。このためには、保留期間用画像データについて、発信側に対応するものと着信側に対応するものとで2種類を用意しておき、ステップS410、S411により、これらの2種類の保留期間用画像データを読み出して、それぞれ映像信号を生成する。そして、ステップS412による保留期間用画像表示には、着信側の映像信号を利用し、ステップS413によっては、発信側の映像信号を送信すればよい。
【0072】
また、保留期間用画像は、発信側テレビ会議端末装置1−1と着信側テレビ会議端末装置1−2のいずれか一方のみの側で表示されるようにしてもよい。このためには、ステップS412とステップS413のいずれか一方の手順を省略すればよい。
【0073】
また、このような保留期間用画像の表示も、会議だけではなく、企業、顧客との間でのコミュニケーションにテレビ会議システムを利用する際に有用となるものである。例えば、顧客側が使用するテレビ会議端末装置からの発信を受けて、企業側が使用するテレビ会議端末装置が、着信に応じて上記の処理を実行することとすれば、顧客側のディスプレイ装置に対して、先に述べた案内や、注意事項を、画像として表示させるということができるからである。
【0074】
図8は、第4の実施の形態に対応する映像・音声通信確立手順の一例を示している。
この図において、接続準備期間T1において発信側テレビ会議端末装置1−1が実行するステップS101〜S106の手順は図4と同様となる。また、同じ接続準備期間T1において着信側テレビ会議端末装置1−2が実行するステップS501〜S506も、図4のステップS201〜S206と同様となる。
【0075】
この場合の着信側テレビ会議端末装置1−2も、ステップS506に続けて、先ず、ステップS507によりタイマ20を起動させることで、接続準備期間T1に続けて保留期間T1−1を設定することになる。
続くステップS508〜S512は、先の第3の実施の形態に対応する図6におけるステップS408〜S407と同様であり、これにより、着信側テレビ会議端末装置1−2側においては保留期間用画像の表示が開始され、発信側テレビ会議端末装置1−1側からの収音音声の再生出力が開始される。また、ここまでの段階においては、着信側テレビ会議端末装置1−2は、発信側テレビ会議端末装置1−1に対して、収音音声の音声信号のみを送信している状態にあるものとされる。
【0076】
そして、ステップS513によっては、ステップS413のようにして発信側テレビ会議端末装置1−1に対して保留期間用画像の映像信号を送信することに代えて、保留期間用画像の表示を要求するコマンドを発信側テレビ会議端末装置1−1に対して送信する。
【0077】
第4の実施の形態に対応しては、発信側テレビ会議端末装置1−1も、記憶部19において保留期間用データ19aとして、保留期間用画像データとしてのデータ内容を有するようにされる。
そして、上記ステップS513に対応して送信されてくる保留期間用画像表示要求の受信したことに応じては、ステップS107により、記憶部19から保留期間用画像データの読み出しを行って、ステップS108により、この保留期間用画像データを利用して保留期間用画像用の映像信号を生成する。そして、この映像信号により、ディスプレイ装置4−1にて保留期間用画像の表示出力を実行させる。
【0078】
着信側テレビ会議端末装置1−2は、上記ステップS513までの手順を実行すると、ステップS514にてタイマ時間が経過するのを待機し、タイマ時間が経過したとされると、ステップS515〜S518の手順を実行する。
ステップS515では、発信側テレビ会議端末装置1−1に対して、保留期間用画像の表示停止を要求するコマンドを送信する。発信側テレビ会議端末装置1−1は、この要求の受信に応答して、ステップS109により、これまでの保留期間用画像の表示出力を停止させる。
ステップS516では、これまで停止させていた撮像画像の映像信号の送信動作が開始されるようにして制御を実行する。これにより、以降は、撮像画像の映像信号及び収音音声の音声威信号が発信側テレビ会議端末装置1−1に対して送信される。
ステップS517によっては、これまでのディスプレイ装置4−2に対する保留期間用画像データの画像の表示出力を停止させ、ステップS518により、受信映像信号の表示出力が開始されるように制御する。
【0079】
図9は、第5の実施の形態に対応する映像・音声通信確立手順の一例を示している。
この図において、接続準備期間T1において発信側テレビ会議端末装置1−1が実行するステップS101〜S106の手順は図4と同様となるが、着信側テレビ会議端末装置1−2にて、次のような手順を接続準備期間T1において実行することで、着信が得られてから通常画像・音声出力期間T2が開始されるまでの待機期間としての時間が、図3の場合よりも延長されるようにする。
【0080】
着信側テレビ会議端末装置1−2は、ステップS201による着信処理として、これまでの実施の形態と同様にして、発信側テレビ会議端末装置1−1からの発信信号を受信検知すると、ステップS202の応答信号の送信を即座に実行するのではなく、ステップS201−1、S20−2として示すように、所定のタイマ時間が設定されたタイマ20の計時をスタートさせて、このタイマ20のタイマ時間が経過するのを待機するという手順を挿入する。そして、タイマ時間が経過したのであれば、ステップS202により応答信号を送信し、以降、例えば図3などと同様にして、ステップS203〜ステップS206までの手順を実行し、以降は、通常画像・音声出力期間T2として、撮像画像の映像信号及び収音音声の音声信号を送受信して、受信映像・音声信号を再生出力する動作を開始させる。
【0081】
このような手順によっては、接続準備期間T1において、着信処理が実行されてから、これに応じた応答信号の送信が実行されるまでの間に、タイマ20に設定されたタイマ時間に相当する遅延が生じることになる。つまり、図9に示す応答遅延期間T11が生じることになる。この結果、これまでの実施の形態と同様にして、着信が得られてから通常画像・音声出力期間T2が開始されるまでの待機期間としての時間が延長される。
【0082】
なお、上記図9に示した第5の実施の形態の変形例としては、ステップS201による着信処理の実行タイミング以降から通常画像・音声出力期間T2が開始されるまでの期間内において、同じ着信側テレビ会議端末装置1−2の側にて、自身の記憶部19に記憶している保留期間用データ19aを利用しての保留期間用音声、保留期間用画像などを再生出力させることが考えられる。
【0083】
また、第2〜第4の実施の形態においては、保留期間用データ19aとして、保留期間用音声データと保留期間用画像データのいずれか一方のみを再生出力するものとされているが、これらの実施の形態の組み合わせにより、保留期間用音声データと保留期間用画像データとを同時に再生出力することで、いわゆる音声付き動画が再生出力されるように構成してよい。
【0084】
また、これまでの実施の形態の説明では、テレビ会議システムにおいて2つのテレビ会議端末装置1−1、1−2が一対一の関係で通信をする場合を示したが、これは、テレビ会議システムとして最もシンプルな形態を例に挙げることで、説明が簡単なものとなることを配慮したものである。実際においては、3以上の音声通信端末装置によりテレビ会議システムを構築して、一対多の通信を行うようにすることも考えられるが、このようなシステム構成においても、本願発明に基づいた構成は、個々の音声通信端末装置に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態に対応するテレビ会議システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態のテレビ会議端末装置の内部構成例を、これと接続される撮像装置、ディスプレイ装置等と共に示す図である。
【図3】実施の形態のテレビ会議システムの構成の下で実現できる、映像・音声通信確立手順例を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態に対応する映像・音声通信確立手順例を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に対応する映像・音声通信確立手順例を示すフローチャートである。
【図6】第3の実施の形態に対応する映像・音声通信確立手順例を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態に対応する保留期間用画像の表示態様例を示す図である。
【図8】第4の実施の形態に対応する映像・音声通信確立手順例を示すフローチャートである。
【図9】第5の実施の形態に対応する映像・音声通信確立手順例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
1(1−1、1−2) テレビ会議端末装置、2(2−1、2−2) 撮像装置、2a ズーム機構部、3a パン機構部、3b チルト機構部、4(4−1、4−2) ディスプレイ装置、5(5−1、5−2) リモートコントローラ、11 映像信号処理/表示制御部、12 エンコーダ、13 デコーダ、14 通信部、15 PTZ駆動制御部、16 パン/チルト駆動制御部、17 ズーム駆動制御部、18 制御部、19 記憶部、19a 保留期間用データ、20 タイマ、21 音声信号処理部、24 音声エンコーダ、25 音声デコーダ、40 表示画面部、41 残り時間表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信端末装置と通信を行う通信手段と、
上記通信手段を利用して発着信に対応する所定の発着信対応処理を実行する発着信対応処理実行手段と、
上記発着信対応処理が実行された後において、上記他の通信端末装置との映像信号及び/又は音声信号の送受信のための映像・音声通信処理に必要とされる準備処理を、上記他の通信端末装置との間での所定の手順に従った通信により実行する、準備処理実行手段と、
上記準備処理が実行された後において、上記映像・音声通信処理を実行させる映像・音声通信制御手段と、
上記映像・音声通信処理により上記他の通信端末装置から送信される映像信号及び/又は音声信号を受信して、映像信号については画像として、音声信号については音声として再生出力させる再生出力手段と、
上記発着信対応処理を実行したとされるタイミングに応じた所定の時点から、上記再生出力手段により画像及び/又は音声の再生出力が開始されるものとするタイミングに応じた所定の時点までの待機期間が、上記発着信対応処理、上記準備処理、上記映像・音声通信処理のシーケンスを通常に実行させた場合よりも所定時間だけ延長されるようにして、上記待機期間内において保留期間を設定する保留期間設定手段と、
を備えることを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
上記保留期間において、所定の画内容を有する保留期間用画像が再生出力されるようにして制御する保留期間対応画像再生出力手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項3】
上記保留期間対応画像再生出力手段は、時間経過に応じて保留期間が終了するまでの残り時間が所定の態様により示される画内容を有する上記保留期間用画像が表示出力されるようにして制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信端末装置。
【請求項4】
上記保留期間が上記映像・音声通信処理の実行可能期間内に設定される場合に、この保留期間において、所定の画内容を有する画像の映像信号を、上記映像・音声通信制御手段により、上記他の通信端末装置に対して送信させる映像送信制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項5】
上記通信手段による通信を利用して、上記保留期間において、所定の画内容を有する画像が上記他の通信端末装置側にて表示出力されるようにするための制御を実行する画像表示制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項6】
上記保留期間が、上記映像・音声通信処理の実行可能期間内に設定される場合に、この保留期間において、所定の音声内容を有する音声信号データである保留期間用音声信号データを基にして得られる音声信号を、上記映像・音声通信手制御手段により、上記他の通信端末装置に対して送信させる映像送信制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項7】
上記保留期間が、上記映像・音声通信処理の実行可能期間内に設定される場合に、この保留期間において、上記所定の使用目的に応じて他の通信端末装置に対して送信すべき映像信号と音声信号のうち、音声信号のみを上記映像・音声通信手制御手段により送信させる音声送信制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項8】
上記発着信対応処理実行手段は、
上記発着信対応処理として、着信応答を、発信元となる他の通信端末装置に対して送信する着信応答処理を実行するものとされ、
上記する保留期間設定手段は、上記発信の受信に応答して上記着信応答処理を開始するタイミングを遅延させた応答遅延期間を形成することで、この応答遅延期間を保留期間として設定するようにされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項9】
他の通信端末装置と通信を実行する通信実行手順と、
上記通信実行手順を利用して発着信に対応する所定の発着信対応処理を実行する発着信対応処理実行手順と、
上記発着信対応処理が実行された後において、上記他の通信端末装置との映像信号及び/又は音声信号の送受信のための映像・音声通信処理に必要とされる準備処理を、上記他の通信端末装置との間での所定の手順に従った通信により実行する準備処理実行手順と、
上記準備処理が実行された後において、上記映像・音声通信処理を実行させる映像・音声通信制御手順と、
上記映像・音声通信処理により上記他の通信端末装置から送信される映像信号及び/又は音声信号を受信して、映像信号については画像として、音声信号については音声として再生出力させる再生出力手順と、
上記発着信対応処理を実行したとされるタイミングに応じた所定の時点から、上記再生出力手順により画像及び/又は音声の再生出力が開始されるものとするタイミングに応じた所定の時点までの待機期間が、上記発着信対応処理、上記準備処理、上記映像・音声通信処理のシーケンスを通常に実行させた場合よりも所定時間だけ延長されるようにして、上記待機期間内において保留期間を設定する保留期間設定手順と、
を実行することを特徴とする映像・音声処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−182428(P2009−182428A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17856(P2008−17856)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】